説明

加熱冷却ユニット

【課題】 冷却時の均熱性を維持しながら、温度変更速度を速めるとともに、冷却終了後にヒータの温度を安定させるまでに要する時間を短縮することによって、被処理物を速やかに載置することができるようにし、スループットの向上を図る。
【解決手段】 被処理物を載置して処理するための載置面を有した好適にはセラミックス製のヒータ基板1と、このヒータ基板1を冷却する冷却ブロック2とを備えたヒータユニット10であって、ヒータ基板1と冷却ブロック2との間に一定高さの介在層6が存在している。この介在層6は、ヒータ基板1の加熱時に相対的に高温部となる領域が、相対的に低温部となる領域に比べて高密度となるような密度分布をもって配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体基板やフラットディスプレイパネル基板を加熱する際に用いるヒータユニットおよびそれを搭載した製造・検査装置に関するものであり、特にフォトリソグラフィ工程やプローバ検査工程で用いる加熱処理装置、または半導体基板の最終検査工程で用いる加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被加熱物を載置してこれを加熱処理できる装置は数多く開発されており、このうち特に被加熱物の温度分布の均一性(以下、均熱性とも称する)が要求されるものとして、半導体装置やフラットディスプレイパネルの生産において半導体基板やガラス基板などの加熱に利用されるヒータユニットが挙げられる。このヒータユニットは、例えばリソグラフィ工程において基板上に塗布したレジスト液を加熱乾燥するために用いられたり、あるいは基板の検査工程を所望の温度で行うための昇温に用いられたりしている。
【0003】
このように複数の処理工程を1台のヒータユニットを用いて処理する場合は、通常、以下のような手順で行われる。まず、低温状態にあるヒータユニットの発熱体回路に通電して昇温した後、被加熱物をヒータユニットの載置面に載置して被加熱物を昇温する。所定の温度に到達すると、この温度を維持しながら被加熱物の処理を行う。この処理が終わると、載置面から被加熱物を取り出し、次の被加熱物を載置面に載置する。所定枚数の処理が完了すると、別工程の処理を行うため、ヒータユニットの温度条件を変更する。変更後の温度条件が安定すると、別工程の被加熱物をヒータ基板上に搭載し、以降は同様に処理を行う。
【0004】
ところで、半導体装置やフラットディスプレイパネルの生産では、連続操業による大量生産によって製品を低価格化することが競われており、製造・検査装置ではタクトタイムの短縮化が要望されている。従って、1台のヒータユニットを用いて複数の工程を処理しながら高いスループットを得るには、温度維持時間中の被処理物の処理時間はもちろんのこと、処理条件の変更に伴うヒータ温度の変更に要する時間(昇温時間、冷却時間)を短くしていく必要がある。
【0005】
このため、すでに本発明者らは、ヒータ基板と冷却ブロックとからなるヒータユニットにおいて、所定の熱容量を有する冷却ブロックをヒータ基板に対して相対的に移動可能とすることによって、加熱時は冷却ブロックをヒータ基板から分離させて急速昇温し、冷却時は加熱されたヒータ基板に冷却ブロックを当接させてヒータ基板およびこのヒータ基板に載置した被加熱物を急速冷却する発明を行なった(特許文献1)。これにより加熱処理に要する時間を低減することができた。
【0006】
上記発明によって、被加熱物の温度を短時間で冷却することが可能になったものの、冷却後に次の被加熱物をヒータ基板に載置するには、冷却時に生じる載置面内の温度ばらつきが収束してヒータ基板の温度が載置面の全面に亘ってほぼ均一になるまで待つ必要があった。
【0007】
そこで、本発明者らは冷却ブロックとヒータ基板の間に介在層を配置することにより、上記した温度変更時におけるヒータ基板の載置面内の温度ばらつきを少なくし、所定の温度に達した後に速やかに次の処理条件で被処理物を加熱処理することができる発明を行った(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開第2004−014655号公報
【特許文献2】特開第2007−059178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、介在層を冷却ブロックとヒータ基板の間に配置すると、この介在層が冷却の際に熱抵抗となり、冷却所要時間が長くかかることがあった。また、給電のための給電端子や被処理物を支持する支持ピンなどを実装または挿通するために冷却ブロック及びヒータ基板には穴などが設けられており、これらの部位はヒータ基板に物理的に当接しないため効果的に冷やすことができず、冷却時に生じる載置面内での温度ばらつきの低減には限界があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、冷却時の均熱性を従来と同様、あるいは従来よりも良好に維持しながら温度変更速度を速めるとともに、冷却終了後にヒータの温度を安定させるまでに要する時間を短縮することによって次の被処理物を速やかに載置することができるようにし、スループットの向上を図ることを目的としている。
【0011】
その改善により、特に半導体装置やフラットディスプレイパネルの製造プロセスにおいて、温度条件変更後に速やかに次の条件で加熱処理を実施すること、また、高い面内均熱性を達成することで、半導体プロセスにおいて、例えばフォトレジスト工程での膜厚や線幅のばらつきを低減することを目的としている。更には、この加熱処理工程を経て製造される半導体装置やフラットディスプレイパネルの生産性、性能、歩留まり、信頼性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒータ基板と冷却ブロックとを備えたヒータユニットにおいてこれら冷却ブロックとヒータ基板の間に一定高さの介在層を配置するに際し、介在層を面内で密度分布をもって配置することによって、面内の均熱性を阻害することなく且つ冷却所要時間を犠牲にすることなく速やかに温度を変更し、温度変更後に被処理物を載置し得るまでに要する時間を短縮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明が提供するヒータユニットは、被処理物を載置して処理するための載置面を有したヒータ基板と、前記ヒータ基板を冷却する冷却ブロックとを備えており、前記ヒータ基板と前記冷却ブロックとの間に介在層が存在しており、前記介在層は、前記ヒータ基板の加熱時に相対的に高温部となる領域が、相対的に低温部となる領域に比べて高密度となるような密度分布をもって配置されていることを特徴としている。
【0014】
上記本発明のヒータユニットにおいては、前記冷却ブロックにおいて前記ヒータ基板に対向する面に形成されたざぐり穴または貫通孔近傍には、前記介在層が相対的に高密度に存在していることが好ましい。
【0015】
また、上記本発明のヒータユニットにおいては、前記冷却ブロックは、前記ヒータ基板の冷却時には前記ヒータ基板に接触し、前記ヒータ基板の加熱時には前記ヒータ基板から離間することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷却所要時間を犠牲にすることなく冷却時に生じる載置面内の温度ばらつきを低減することが可能となる上、温度変更後に被処理物を載置するまでの時間を短縮することが可能となるので、スループットの向上を図ることができる。
【0017】
その結果、特に半導体装置やフラットディスプレイパネルの製造プロセスにおいては、温度条件変更後に速やかに次の処理条件で加熱処理することができる。また高い面内均熱性を達成することで、半導体プロセスにおいて、例えばフォトレジスト工程での膜厚や線幅のばらつきを低減することができる。このように、本発明のヒータユニットを用いて半導体装置やフラットディスプレイパネルなどの被処理物を製造した場合は、生産性、性能、歩留まり、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のヒータユニットの一具体例を示す概略の断面図である。
【図2】図1のヒータユニットの離間及び当接状態を模式的に示す概略の断面図である。
【図3】本発明のヒータユニットが有する介在層の一配置例を示す平面図である。
【図4】冷却ブロックの貫通孔周りに介在層を密に配置した例を示す部分断面図である。
【図5】本発明のヒータユニットが有する介在層の他の配置例を示す平面図である。
【図6】発熱体回路の発熱密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のヒータユニット10の一具体例を示す概略の断面図であり、半導体ウエハなどの被処理物を載置して処理するための載置面1aを有したヒータ基板1と、このヒータ基板1を冷却する冷却ブロック2とを備えている。
【0020】
ヒータ基板1には、被処理物が載置される載置面1aに対して反対側の面(以下、ヒータ基板1の裏面と称する)に発熱体回路3が設けられており、この発熱体回路3に給電するための給電配線(図示せず)や、ヒータ基板1の温度をモニタするための温度センサ(図示せず)が接続されている。発熱体回路3は、例えばステンレスやニッケル−クロム箔をエッチングすることによって渦巻状等のヒータパターンで配設される。
【0021】
この発熱体回路3は、ヒータ基板1の面内で密度分布をもって配設することができる。例えば、被処理物の反りなどにより、ヒータ基板1の載置面1aと被処理物との間に空隙が生じることが予想される場合は、当該空隙が生じる領域の単位面積当たりの発熱量(以降、発熱密度と称する)が他の領域に比べて高くなるように発熱体回路3を配設することで、面内の温度分布を均一化させることができる。
【0022】
また、ヒータ基板1は、載置面1a上の被処理物が載置されない領域や側面からの放熱が比較的多いため、その放熱を補うために外周部の発熱密度が高くなるように配設することによっても、面内の温度分布を均一化させることができる。このように発熱密度を局所的に異なるように発熱体回路3を配置することは、単一の発熱体回路3だけでも実現可能であるが、裏面上に複数の発熱体回路3を、例えば内周部と外周部に分けて設けたり、内周部や外周部を更に周方向に分割して設けたりすることでも実現可能である。
【0023】
ヒータ基板1の裏面側には、更に電気絶縁シート4および押さえ板としての背面板5が配設されている(以降、これらヒータ基板1、発熱体回路3、電気絶縁シート4および背面板5をまとめてヒータモジュールと称する)。比較的強度のある背面板5とヒータ基板1は、電気絶縁シート4をこれらの間に介在させて例えばねじ等を用いて機械的に連結されている。電気絶縁シート4は可能な限り高熱伝導率のものを使用することが望ましい。電気絶縁シート4の熱伝導率が高ければ、発熱体回路3の構造や環境などの要因により生じる面内の温度分布を小さくすることができ、均熱性の高いヒータユニット10を提供することができるからである。
【0024】
また、発熱体回路3の熱をヒータ基板1の裏面側で良好に拡散させるため、電気絶縁シート4には柔軟な材質を用いることが好ましい。電気絶縁シート4がヒータ基板1や背面板5に比較して柔軟であれば、それぞれの平面度などにより生じる僅かな空隙を埋めることができ、局所的な熱抵抗を排除することで背面板5の熱伝導、熱容量の効果を最大限に引き出し、均熱性が高く、環境などの外乱に対して安定性のあるヒータユニット10を提供することができるからである。尚、面の平面度とは、当該面を間に挟む互いに平行な2つの平面の内、それらが離間する距離が最も短い2平面を想定したときの、その2平面間の距離のことをいう。
【0025】
電気絶縁シート4は、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、セラミックス繊維シート、マイカなどから選択することができる。シリコーン樹脂は前述の通り柔軟性を活かしたヒータ特性の向上に寄与することができ、フッ素樹脂やポリイミド樹脂、セラミックス繊維シート、マイカなどは200℃を超える温度域であっても用いることができる。特にマイカは500℃を越える温度域であっても用いることができる上、電気絶縁性に優れることから高温域で用いるのに好適である。
【0026】
この場合、マイカと発熱体回路3は熱圧着により一体化させることができる。一体化することにより、互いの密着性が増し、これらの界面での熱抵抗を下げることができる。すなわち、局所的な熱抵抗を排除することで背面板5の熱伝導、熱容量の効果を最大限に引き出すことが可能となる。更に、一体化することによって、発熱体回路3が熱的な環境負荷の影響を受けて膨張収縮を繰り返す状況にあっても、平面方向の位置ずれなどが生じにくくなり、信頼性の高いヒータユニット10を提供することができる。尚、電気絶縁シート4は、ヒータ基板1の裏面に配設された例えば渦巻状の発熱体回路3の上にコーティングすることによって形成しても良い。
【0027】
電気絶縁シート4と背面板5との間、または発熱体回路3とヒータ基板1との間にヒータ基板1や背面板5に比較して柔軟で平面方向の熱伝導率が高い高熱伝導シート(図示せず)を配置しても良い。この高熱伝導シートには、例えば、熱伝導率100〜250W/m・Kのアルミシート、熱伝導率400W/m・Kの銅シート、熱伝導率200〜1700W/m・Kのグラファイトシートを用いることができる。
【0028】
尚、ヒータ基板1が導電性である場合、若しくは前述した高熱伝導シートが導電性材料で形成され且つ発熱体回路3とヒータ基板1との間に配置される場合は、発熱体回路3との絶縁を確保するための絶縁シートを、前者の場合は発熱体回路3とヒータ基板1の間、後者の場合は発熱体回路3と高熱伝導シートの間に装填することになる。
【0029】
ヒータ基板1の厚さは、熱容量を低減して温度変更に掛かる所要時間を短縮化するため、薄く形成されている。このように、ヒータ基板1を薄く形成することによって温度変更の高速化を図ることができるものの、載置面1aでの均熱性が損なわれることがある。そのため、ヒータ基板1と発熱体回路3の真下に設けられる背面板5は、特に熱伝導性の良いものが望ましい。また、前述したヒータ基板1と背面板5とを連結させるねじにはベアリングを備えることが好ましい。
【0030】
これにより、当該ねじの軸方向では、ヒータ基板1と背面板5とが相対的に移動することのないように固定されるとともに、軸方向に交差する方向では、ベアリングによってヒータ基板1と背面板5とが互いに滑動自在となるため、ヒータ基板1と背面板5の熱膨張差を吸収することができ、ヒータ基板1と背面板5が互いの熱膨張差で平面度に反りなどの変化を発生させることがなくなり、良好な熱伝導が保たれる。
【0031】
背面板5に使用する熱伝導性の良い材質には、例えば、熱伝導率100〜240W/m・Kのアルミニウム板、熱伝導率400W/m・Kの銅板、またはそれらの何れかを含む熱伝導率200〜700W/m・Kの合金などの金属や、熱伝導率100〜200W/m・Kの窒化アルミニウム、熱伝導率200〜300W/m・Kの炭化ケイ素などのセラミックス、またはこれらセラミックスと金属からなるセラミックス金属複合体などがある。
【0032】
ヒータ基板1の主成分は窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、銅、アルミニウム、ニッケル、シリコンからなる群から選択することが好ましい。この中では、できればセラミックスが好ましい。金属を用いた場合は、デバイス製造プロセスの微細加工プロセスで忌避されるパーティクルが発生し、ウエハ上に付着するおそれがあるからである。更に、セラミックスは加工精度が高いため、被処理物を載置する載置面1aの平面度を精度良く仕上げることができるからである。
【0033】
セラミックスの中では、均熱性を重視するならば、熱伝導率の高い窒化アルミニウムや炭化ケイ素が好ましい。一方、信頼性を重視するならば、窒化アルミニウムや窒化ケイ素が高強度で熱衝撃にも強いので好ましい。また、コストを重視するのであれば、酸化アルミニウムが好ましい。更に、ヒータ基板1が絶縁性であれば発熱体回路3との間に前述した絶縁シートを介在させる必要がなくなるため、コスト面や熱抵抗の観点からみると絶縁性である窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、または窒化ケイ素が好ましい。
【0034】
本発明は、温度変更時の均熱性ならびに加熱/冷却時間の短縮を課題としているので、上記材料の中で、均熱性のための高熱伝導性と、温度変更に耐え得るための耐熱衝撃性、更には熱抵抗を少なくすることのできる絶縁性を有した材料である窒化アルミニウムが好適である。
【0035】
ヒータユニット10は、必要であれば、冷却ブロック2とヒータ基板1とを相対的に移動させて互いに当接/分離させる機構(図示せず)を取り入れても良い。例えば、冷却ブロック2のヒータ基板1に対向する面の反対側に、エアシリンダなどからなる昇降機構(図示せず)を設け、これを用いて冷却ブロック2を上下に移動させても良い。これにより、ヒータ基板1と冷却ブロック2とを、図2の(a)に示すように互いに分離させたり、図2の(b)に示すように互いに当接させたりすることができる。
【0036】
上記エアシリンダなどの昇降機構は、ヒータユニット10の設置環境や許容される重量や寸法などの制約下で、なるべくヒータ基板1に接触する向きに働く推力が大きいことが好ましい。これにより、冷却ブロック2と背面板5の間の当接面に生じる熱抵抗を小さくすることができ、冷却所要時間が短縮されることはもちろん、局所的な熱抵抗を排除することで載置面1aにおける均熱化が可能となる。具体的には、このエアシリンダなどの昇降機構の推力は、冷却ブロック2の重量以上であることが好ましい。
【0037】
冷却ブロック2の主成分は熱伝導性の良い銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、またはこれらを主成分とする合金(またはステンレス)からなる群から選択することが好ましい。特に銅は熱容量が大きいため、前述した当接/分離する構造を採用する場合に被冷却物から奪う熱量が大きく、高速に冷却するのに好適である。また、冷却ブロック2を構成する基体には、必要に応じて表面処理を行っても良い。かかる表面処理としては、耐食性、耐酸化性の高いニッケルめっきが望ましい。
【0038】
冷却ブロック2には冷媒流路(図示せず)が形成されており、ここに冷媒を流通させることができる。この冷媒流路の形成方法には、金属製のパイプを用い、該パイプを冷却ブロック2を構成する基体と取付部品とを連結しているねじ等を用いて冷却ブロック2に機械的に連結させる方式(以下、パイプ方式と称する)がある。
【0039】
その他、冷却ブロック2を構成する基体の片面に機械加工により流路となる溝を形成し、この流路を覆うように該基体と同成分の別の基体を重ね、これらの基体同士を例えばロウ付けなどの手段で一体化する方式もある。後者の方式では、流路となる溝を、互いに重ね合わせる2個の基体の内の片方にのみ加工しても良いし、向かい合う両方に加工しても良い。尚、パイプ方式に比べ流路となる溝を加工する方式の方が、冷媒が直接冷却ブロック2の基体に接するため、熱交換効率が高く高速に冷却するので好適である。
【0040】
背面板5と冷却ブロック2の間には一定高さの介在層6が存在している。介在層6は、冷却ブロック2とヒータ基板1とが互いに当接する面(以降、当接面と称する)内で密度分布をもって配置されている。すなわち、介在層6は当接面の面方向に均一に配置されているのではなく、場所に応じて配置されていたり、配置されていなかったりしている(以降、このような面内の配置の度合いを配置密度とも称する)。例えば、ヒータ基板1の冷却においては、ヒータ基板1の内周部の表面積よりも外周部の表面積の方が広く熱放散し易いため、内周部に比較して外周部の方が早く冷える傾向にあるので、介在層6は特に外周部に比較して内周部が密になるように配置することが好ましい。
【0041】
また、冷却ブロック2には、被処理物を支持するための支持ピンや、前述した温度センサを装着または挿通するざぐり穴や貫通孔(図示せず)が設けられているため、介在層6は、これらざぐり穴や貫通孔の周りが密になるように配置することが好ましい。なぜなら、冷却ブロック2にこれらざぐり穴や貫通孔が開いている場合、ヒータ基板1において当該ざぐり穴や貫通孔に対応する箇所は、冷却ブロック2に接触せずに局所的に冷えない部位となるため、それを相殺するためにざぐり穴や貫通孔周辺領域には他の領域よりも介在層6が密になるように配置することが好ましいからである。これにより、他の領域と同等の冷却速度が実現し、ウエハの載置面1a内の温度ばらつきが抑えられる。
【0042】
更に冷却ブロック2には、前述した給電端子を挿通する貫通孔(図示せず)が設けられているため、介在層6は、これら貫通孔の周りも密になるように配置することが好ましい。なぜなら、ヒータ加熱時における給電端子からの熱逃げを相殺することを目的として給電部位の発熱密度は高く設計されているため、被処理物が載置された時や冷却終了後の温度安定化の際の過渡的な発熱時において、当該給電部位が他部位に比較して相対的に発熱量が増えるからである。すなわち、給電端子を挿通する貫通孔周辺に介在層6を密に配置することにより、上記過渡的な発熱量を相殺することが可能となる。
【0043】
介在層6の形状は、適切な密度分布をもって一定高さで配置することができるのであれば特に限定されるものでなく、円形や四角形であっても良いし、リング状やその他の形状であっても良い。密度分布は、例えば複数の円形状の介在層6を面内でドット状に分散させたり、1枚のシート状の介在層6に1個または複数個の穴を開けたりすることで実現可能となる。あるいはこれらドット状の介在層6とシート状の介在層6を組み合わせても良い。上記ドットや穴の大きさは、その設置場所に応じて適宜変更することができる。
【0044】
例えば、図3には、貫通孔周りを除く内周部に円形のシート状介在層6aを一枚配置し、貫通孔周りを除く外周部に扇形や三角形のシート状介在層6bを複数枚配置し、温度センサを挿通する貫通孔周りに介在層6cを、支持ピンを挿通する貫通孔周りに介在層6dを、給電端子を挿通する貫通孔周りに介在層6eをそれぞれ密に配置した例が示されている。また、図4には、これら貫通孔周りに介在層が一定高さで密に配置されている様子を示す概略の部分断面図を、介在層6dを例にとって示している。
【0045】
また、図5には、貫通孔周りを除く内周部に円形のシート状介在層6aを一枚配置し、貫通孔周りを除く外周部にドット形のシート状介在層6fを複数枚配置した例が示されている。図5にも図3と同様に介在層6cおよび介在層6dが配置されているが、給電端子を挿通する貫通孔周りには扇形の介在層6gが配置されている。尚、介在層6の形状や密度分布の状態などは図3および図5に示すものに限定されず、発熱体回路3の発熱密度や外部環境などによって適宜変更することができる。
【0046】
介在層6を配置する場所は、冷却ブロック2上の背面板5に対向する面でも良いし、背面板5上の冷却ブロック2に対向する面でも良い。あるいは、その両面でも良い。好ましい配置場所は、冷却ブロック2上の背面板5に対向する面である。なぜなら、背面板5上の冷却ブロック2に対向する面では、介在層6に常に発熱体回路3から熱負荷が加わるので、熱履歴によって介在層6が損耗し易いからである。また、発熱体回路3の使用温度によっては、連続的に使用される介在層6の耐熱性の観点から、介在層6の仕様やその取り付け方法が特定のものに限定されてしまうからである。
【0047】
介在層6の材質は、発泡金属あるいは金属メッシュ、グラファイトシート、フッ素樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂等の耐熱性を有するものが好ましい。また、介在層6は熱伝導率が高いことが望ましい。特に、熱伝導率は1W/m・K以上であることが好ましい。1W/m・K未満であれば、熱抵抗が大きくなり冷却速度が遅くなってしまうためである。尚、例えばカーボンなどの熱伝導フィラーを含有した樹脂を用いることが好ましく、これにより熱抵抗が小さくなり高速に冷却することができる。
【0048】
更に、介在層6は柔軟性を有していることが好ましい。柔軟性がなければ、冷却ブロック2を背面板5に当接させた際、両当接面の平面度に起因して良好に密着できず、局所的に空隙が残ることになり、結果的に冷却時の温度ばらつきを抑えることができなくなるからである。これに対して、介在層6が柔軟性を有していれば、背面板5および冷却ブロック2の当接面の平面度や、機械加工によって発生する部分的な凹凸、突起、傷、ばり、かえり、異物などの表面状態を吸収することができる。このような材質としては、上述した中でも特にシリコーン樹脂が好ましい。
【0049】
介在層6の厚みは、ヒータモジュール上の冷却ブロック2に対向する面の平面度と、冷却ブロック2上のヒータモジュールに対向する面の平面度の和よりも厚いことが好ましく、0.1mm〜3mm以内であれば更に好ましい。0.1mmを下回ると、ヒータモジュール上の冷却ブロック2に対する面の平面度および冷却ブロック2上のヒータモジュールに対向する面の平面度の総和を0.1mm未満にしなければ局所的な空隙を生じさせることになり好ましくない上、このように平面度に厳密な管理が必要であることは、機械加工精度やコストの観点から量産性に適さないからである。また、介在層6自体の厚みも薄くなりすぎてハンドリングが困難になるなど、安定して製造することに支障をきたすためである。一方、3mmを越えると冷却時の熱抵抗が増え過ぎ、冷却速度が遅くなる上、ヒータユニット10をコンパクトにする上で律速となり得るためである。
【0050】
背面板5上の冷却ブロック2に対向する面の平面度と、冷却ブロック2上の背面板5に対向する面の平面度は、各々0.5mm以下にすることが好ましい。0.5mmを超えると、介在層6との接触性の維持が困難なことと、接触性を維持するために介在層6を厚くすることがかえって熱抵抗を増大させ、冷却速度が遅くなる恐れがあるためである。尚、背面板5上の冷却ブロック2に対向する面の平面度と、冷却ブロック2上の背面板5に対向する面の平面度の総和が0.1mm以下であれば好適である。このようにすることにより、介在層6の厚みは理論上0.1mmまで薄くすることができ、そうすることで熱抵抗が小さく高速で冷却できるようになるためである。
【0051】
更に、介在層6を配置する領域の面積は冷却ブロック2上のヒータ基板1に対向する面の面積の10%以上90%以下であることが好ましい。これは10%未満であれば当接面積が小さくなりすぎて冷却速度が遅くなるためである。また、90%を超える場合においては、面内で必要な配置分布を実現することが困難になるためである。
【0052】
介在層6の取り付け方法としては、固定できるのであれば特に制約はないが、例えば、接着剤、両面テープ、粘着性樹脂などの接着手段を用いて取り付けることができる。これら接着手段の中でも、薄く、熱伝導率が高く、熱抵抗が小さいものが望ましい。また、シート等ある程度の大きさを有するものの場合は、ねじ止めなどの結合手段により機械的に固定しても構わない。
【0053】
次に、本発明のヒータ基板1の製造方法を、窒化アルミニウムの場合を例にとり詳述する。AlNの原料粉末は、比表面積が2.0〜5.0m/gのものが好ましい。比表面積が2.0m/g未満の場合は、窒化アルミニウムの焼結性が低下する。また、5.0m/gを越えると、粉末の凝集が非常に強くなるので取り扱いが困難になる。更に、原料粉末に含まれる酸素量は、2wt%以下が好ましい。酸素量が2wt%を越えると、焼結体の熱伝導率が低下する。
【0054】
また、原料粉末に含まれるアルミニウム以外の金属不純物量は、2000ppm以下が好ましい。金属不純物量がこの範囲を超えると、焼結体の熱伝導率が低下する。特に、金属不純物として、SiなどのIV族元素や、Feなどの鉄族元素は、焼結体の熱伝導率を低下させる作用が高いので、これらの含有量は、それぞれ500ppm以下であることが好ましい。
【0055】
AlNは難焼結性材料であるので、AlN原料粉末に焼結助剤を添加することが好ましい。添加する焼結助剤は、希土類元素化合物が好ましい。希土類元素化合物は、焼結中に窒化アルミニウム粉末粒子の表面に存在するアルミニウム酸化物あるいはアルミニウム酸窒化物と反応して、窒化アルミニウムの緻密化を促進するとともに、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を低下させる原因となる酸素を除去する働きもあるので、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を向上させることができる。
【0056】
希土類元素化合物は、特に酸素を除去する働きが顕著であるイットリウム化合物が好ましい。その添加量は、0.01〜5wt%が好ましい。0.01wt%未満であると、緻密な焼結体を得ることが困難であるとともに、焼結体の熱伝導率が低下する。また、5wt%を超えると、窒化アルミニウム焼結体の粒界に焼結助剤が存在することになるので、腐食性雰囲気で使用する場合、この粒界に存在する焼結助剤がエッチングされ、脱粒やパーティクルの原因となる。更に、好ましい焼結助剤の添加量は、1wt%以下である。1wt%以下であれば、粒界の3重点にも焼結助剤が存在しなくなるので、耐食性が向上する。
【0057】
また、希土類元素化合物には、酸化物、窒化物、フッ化物、ステアリン酸化合物などが使用できる。この中で、酸化物は安価で入手が容易であり好ましい。また、ステアリン酸化合物は、有機溶剤との親和性が高いので、窒化アルミニウム原料粉末と焼結助剤などを有機溶剤で混合する場合には、混合性が高くなるので特に好適である。
【0058】
次に、これら窒化アルミニウム原料粉末や焼結助剤粉末に、所定量の溶剤、バインダー、更には必要に応じて分散剤や邂逅剤を添加し、混合する。混合方法は、ボールミル混合や超音波による混合等が可能である。このような混合によって、原料スラリーを得ることができる。得られたスラリーを成形し、焼結することによって窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。その方法には、コファイアー法とポストメタライズ法の2種類の方法が可能である。
【0059】
先ず、ポストメタライズ法について説明する。前記スラリーをスプレードライヤー等の手法によって乾燥させて顆粒を作製する。この顆粒を所定の金型に挿入し、プレス成形を施す。この時、プレス圧力は9.8MPa以上であることが望ましい。9.8MPa未満の圧力では、成形体の強度が充分に得られないことが多く、ハンドリングなどで破損し易くなる。
【0060】
成形体の密度は、バインダーの含有量や焼結助剤の添加量によって異なるが、1.5g/cm以上であることが好ましい。1.5g/cm未満であると、原料粉末粒子間の距離が相対的に大きくなるので、焼結が進行しにくくなる。また、成形体の密度は、2.5g/cm以下であることが好ましい。2.5g/cmを超えると、次工程の脱脂処理で成形体内のバインダーを充分除去することが困難となる。このため、前述のように緻密な焼結体を得ることが困難となる。
【0061】
次に、前記成形体を非酸化性雰囲気中で加熱し、脱脂処理を行う。大気等の酸化性雰囲気で脱脂処理を行うと、AlN粉末の表面が酸化されるので、焼結体の熱伝導率が低下する。非酸化性雰囲気ガスとしては、窒素やアルゴンが好ましい。脱脂処理の加熱温度は、500℃以上、1000℃以下が好ましい。500℃未満の温度では、バインダーを充分除去することができないので、脱脂処理後の積層体中にカーボンが過剰に残存するので、その後の焼結工程での焼結を阻害する。また、1000℃を超える温度では、残存するカーボンの量が少なくなり過ぎるので、AlN粉末表面に存在する酸化被膜の酸素を除去する能力が低下し、焼結体の熱伝導率が低下する。
【0062】
また、脱脂処理後の成形体中に残存する炭素量は、1.0wt%以下であることが好ましい。1.0wt%を超える炭素が残存していると、焼結を阻害するので、緻密な焼結体を得ることができない。
【0063】
次いで焼結を行う。焼結は、窒素やアルゴンなどの非酸化性雰囲気中で1700〜2000℃の温度で行う。この時、使用する窒素などの雰囲気ガスに含有する水分は、露点で−30℃以下であることが好ましい。これ以上の水分を含有する場合、焼結時にAlNが雰囲気ガス中の水分と反応して酸窒化物が形成されるので、熱伝導率が低下する可能性がある。また、雰囲気ガス中の酸素量は、0.001vol%以下であることが好ましい。酸素量が多いと、AlNの表面が酸化して、熱伝導率が低下する可能性がある。
【0064】
更に、焼結時に使用する治具は、窒化ホウ素(BN)成形体が好適である。このBN成形体は、前記焼結温度に対し充分な耐熱性を有するとともに、その表面に固体潤滑性があるので、焼結時に焼結体が収縮する際の治具と焼結体との間の摩擦を小さくすることができるので、歪の少ない焼結体を得ることができる。得られた焼結体は、必要に応じて加工を施す。これにより、ヒータ基板1となるセラミックス焼結体が得られる。
【0065】
尚、被処理物を載置する載置面の表面粗さはRaで5μm以下が好ましい。Raで5μmを超えると、ヒータ基板1と被処理物との摩擦によって、AlNの脱粒が多くなることがある。この時、脱粒した粒子はパーティクルとなり、被処理物上への成膜やエッチングなどの処理に対して悪影響を与えることになる。この表面粗さは、Raで1μm以下であれば更に好適である。
【0066】
発熱体回路3を形成する場合は、上記セラミックス燒結体に、例えばスクリーン印刷により導電ペーストを塗布し、脱脂後、焼成する。導体ペーストは、金属粉末と、必要に応じて酸化物粉末と、バインダーと、溶剤とを混合することにより得ることができる。また、形成した発熱体回路3の絶縁性を確保するために電気絶縁シート4を形成する場合は、発熱体回路3の上に、例えばスクリーン印刷により結晶化ガラス等をペースト状にしたものを塗布し、必要に応じて脱脂後、焼成する。
【0067】
次に、コファイアー法について説明する。前述した原料スラリーをドクターブレード法によりシート形成する。シート形成に関して特に制約はないが、シートの厚みは、乾燥後で3mm以下が好ましい。シートの厚みが3mmを超えると、スラリーの乾燥収縮量が大きくなるので、シートに亀裂が発生する確率が高くなる。
【0068】
上述したシート上に所定形状の電気回路となる金属層を、導体ペーストをスクリーン印刷などの手法により塗布することにより形成する。導体ペーストは、ポストメタライズ法で使用するものと同じものを用いることができる。但し、コファイアー法では、導体ペーストに酸化物粉末を添加しなくても支障はない。
【0069】
次に、回路形成を行ったシートおよび回路形成をしていないシートを積層する。積層の方法は、各シートを所定の位置にセットし、重ね合わせる。この時、必要に応じて各シート間に溶剤を塗布しておく。重ね合わせた状態で、必要に応じて加熱する。加熱する場合、加熱温度は150℃以下であることが好ましい。これを超える温度に加熱すると、積層したシートが大きく変化する。そして、重ね合わせたシートに圧力を加えて一体化させる。加える圧力は、1〜100MPaの範囲が好ましい。1MPa未満の圧力では、シートが充分に一体化せず、その後の工程中に剥離することがある。また、100MPaを超える圧力を加えると、シートの変化量が大きくなりすぎる。
【0070】
この積層体を、前述のポストメタライズ法と同様に、脱脂処理および焼結を行う。脱脂処理や焼結の温度や、炭素量等はポストメタライズ法と同じである。前述した導体ペーストをシートに印刷する際に、複数の電気回路を有する通電発熱ヒータを作製することも可能である。このようにして、ヒータ基板1および発熱体回路3からなるセラミックス積層焼結体を得ることができる。
【0071】
尚、発熱体回路3などの電気回路が、セラミックス積層体の最外層に形成されている場合は、電気回路の保護および絶縁性、並びに酸化防止などを目的として、前述のポストメタライズ法と同様に、電気回路の上に電気絶縁シート4を形成することができる。
【0072】
以上説明した本発明によるヒータユニットは、半導体製造・検査装置、またはフラットディスプレイパネルの製造・検査装置に搭載することが好ましい。これにより、従来の装置よりも高速に昇降温させることができ、且つヒータの温度分布がより均一になり、半導体やフラットディスプレイパネルの性能、歩留まり、信頼性の向上が図れる。また、従来の装置よりも熱処理工程の所要時間が短縮化され、半導体やフラットディスプレイパネルの生産性向上が図れる。
【0073】
以上、本発明のヒータユニットを実施形態に基づいて説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲の種々の態様で実施可能であることを理解すべきである。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲およびその均等物に及ぶものである。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
本発明に係る実施例として、図1に示したヒータユニット10を以下の方法で作製した。セラミック製のヒータ基板1としては、100重量部の窒化アルミニウム粉末と、0.5重量部のY粉末を混合し、ポリビニルブチラールをバインダー、ジブチルフタレートを溶剤として、それぞれ10重量部、5重量部混合して、スプレードライヤーにより顆粒を作製後、プレス成形し、700℃窒素雰囲気下で脱脂し、窒素雰囲気中において1850℃で焼結し、窒化アルミニウム焼結体を作製した。尚、窒化アルミニウム粉末は、平均粒径0.6μm、比表面積3.4m/gのものを使用した。前記窒化アルミニウム焼結体を加工し、直径330mm、厚さ6mmとした。
【0075】
また、発熱体回路3にはステンレス箔をエッチングによりパターニングしたものを用い、電気絶縁シート4にはマイカを用いた。背面板5にはタフピッチ銅に加工を施し、直径330mm、厚さ3mmとした上でNiめっきを施した。尚、発熱体回路3のパターンは、図6の(a)に示すような、発熱密度が外周に比較して内周が密なセンターホットパターンとした。これらを平面方向への2つのプレートの熱膨張吸収のためのベアリングを備えたねじを用いて機械的に連結し、ヒータモジュールとした。
【0076】
次に、冷却ブロック2として、直径330mm、厚さ4mmと8mmの無酸素銅の金属板を用意した。この内、8mmの銅板に流路となる溝加工を施し、更には給電端子やセンサ、ウエハ支持ピンを挿通させる貫通孔などを設けた。厚さ4mmの銅板についても溝加工を除いて同様の加工を施した上で、これら2枚をロウ付けにより一体化した。その際、流路の出入り口となる部位に、系外の流路と連結させるためのコネクタとして、ステンレスに加工を施した部品をロウ付けにより設けた。
【0077】
これらヒータモジュールと冷却ブロック2を所定形状の容器に取り付けた。冷却ブロック2上の背面板5に対向する面には、後述する介在層6を配置できるようにした。更に冷却ブロック2には、ヒータモジュールの背面板5に対して当接、分離可能とするため、エアシリンダを取り付けた。ここで、容器の枠部の真円度を機械加工により0.1mm以下まで仕上げた。
【0078】
ヒータモジュールは容器の中心にセットし、ヒータモジュールと容器の枠部との同軸度を0.1mm以内になるようにした。このようにすることにより、ヒータモジュールの熱が局所的に容器に奪われて均熱性を阻害するようなことをなくした。また、容器は上記ヒータモジュール並びに冷却ブロック2を取り付けても歪まないように機械的強度のあるステンレス製とした。更に、ヒータに通電するための給電端子並びにケーブル、温度センサを取り付けた。
【0079】
介在層6には厚み0.5mmのシリコーン樹脂シートを使用した。これを加工して、下記表1に示すように、面方向の密度分布が互いに異なる5種類の介在層6を作製した。これら5種類の介在層6をそれぞれ冷却ブロック2に配置した5ケース(ケース1〜5)について、後述する方法でヒータユニットを評価した。更に、比較のため、介在層6を配置しないケース(ケース6)と、介在層6を内外周問わず全面に配置したケース(ケース7)についても同様の評価を行った。尚、表1において、内周部とは中心〜直径240mm(45240mm)の領域をいい、外周部とは直径240mm〜直径328mm(39260mm)の領域をいう。
【0080】
先ず、冷却ブロック2をヒータモジュールから分離させた状態でヒータに通電し、180℃まで加熱した。その状態で、公知のウエハ温度計をヒータモジュールのウエハ載置面に載置しウエハ面内の温度分布を計測した。
【0081】
温度が安定した状態になると、エアシリンダを利用して冷却ブロック2をヒータモジュールの背面板5に当接させて冷却し、ヒータモジュールに取り付けられた温度センサの指示値が130℃となった瞬間に冷却ブロック2をヒータモジュールから分離するようにした。そして、130℃に到達した後、ヒータを安定させるためにヒータモジュールに電力を印加し、30秒後の均熱レンジ(載置面の最高温部と最低温部の温度差)を測定し、介在層6の面方向の配置密度分布(冷却ブロック2と背面板5の接触密度分布)と均熱性の相関についてデータを取得した。これらの結果を下記の表1に示す。尚、表1〜3の評価欄における○は均熱性が比較例に比べて優れていることを示し、◎は極めて優れていることを示す。
【0082】
【表1】

【0083】
この結果から分るように、比較例のケース6では130℃に到達後、ヒータ温度を安定させるための電力を印加してから30秒後のウエハ面内均熱レンジは16.2℃と大きかった。これは、その面内分布は、ヒータモジュール上の冷却ブロック2に対向する面の平面度と、冷却ブロック2上のヒータモジュールに対向する面の平面度に依存して、これらが互いに接触する箇所は過度に冷え、空隙が生じる領域は冷えずに温度が高いことによる。すなわち、製造ばらつきなどにより当接面の平面度が変われば、冷却終了中、また終了後の面内温度分布もばらつくことを意味する。
【0084】
また、比較例のケース7のウエハ面内均熱レンジは6.1℃であり、本実施例の温度分布はセンターホットであったことから、冷却中に外周部が内周部に比較してよく冷えていることが分る。これは、冷却ブロック2の当接に伴うヒータ基板1の冷却には、ヒータ基板1から冷却ブロック2への熱移動のほかに、ヒータからの放熱があり、特に表面積が広い外周部が内周部に比較してより多く放熱することによるものと考えられる。
【0085】
これらに対し、介在層6の配置密度が内外周で異なるケース1〜5においては、内周部に比較して外周部の配置密度を低くすることで、均熱レンジの減少が認められた。特に、外周部の配置密度が面積比率で70〜80%となるように配置したケース3および4については、均熱レンジが1.3〜1.7℃と非常に良好な値を示した。尚、この時の温度分布はセンターホットでもセンタークールでもなく、被処理物を支持する支持ピンや温度センサを挿通する貫通孔、また給電のための給電配線を挿通する貫通孔近傍が相対的に低い温度を示していた。
【0086】
[実施例2]
発熱体回路3のパターンを、図6の(b)に示すような、内周部の発熱密度に比較して外周部の発熱密度が密なセンタークールパターンとした以外は実施例1と同様にして、介在層6の面方向の密度分布が互いに異なる5ケース(ケース8〜12)、並びに比較のため介在層6を配置しないケース(ケース13)および介在層6を内外周問わず全面に配置したケース(ケース14)について評価を行った。これらの結果を下記の表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
この結果から分るように、比較例のケース13ではセンターホットパターンのときと同様に、均熱レンジは極めて大きく、その温度分布はヒータモジュール上の冷却ブロック2に対向する面の平面度と、冷却ブロック2上のヒータモジュールに対向する面の平面度に依存していた。すなわち、これらが互いに接触する箇所は過度に冷え、空隙が生じる領域は冷えずに温度が高かった。比較例のケース14においても、センターホットパターンのときと同様の結果であったが、センターホットパターンに比較して僅かに均熱レンジが減少しているのは、冷却中にヒータの特に表面積の大きい外周部からの熱放散を補うように外周の発熱密度が高く設計されていることによるものと思われる。
【0089】
これらに対し、介在層6を配置密度を内外周で分布させたケース8〜12においては、外周部に比較して内周部の配置密度を低くすることで、均熱レンジの減少が認められた。特に、内周部の配置密度が面積比率で70〜80%となるように配置したケース10および11については、均熱レンジが1.2〜1.5℃と非常に良い値を示した。尚、この時の温度分布はセンターホットパターンのときと同様に、センターホットでもセンタークールでもなく、被処理物を支持する支持ピンや温度センサを挿通する貫通孔、また給電のための給電配線線を挿通する貫通孔近傍が相対的に低い温度を示していた。
【0090】
[実施例3]
発熱体回路3のパターンを、図6の(c)に示すような、内周部と外周部とで発熱密度が同等な均等パターンとした以外は実施例1と同様にして、介在層6の面方向の密度分布が互いに異なる5ケース(ケース15〜19)、並びに比較のため介在層6を配置しないケース(ケース20)および介在層6を内外周問わず全面に配置したケース(ケース21)について評価を行った。これらの結果を下記の表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
この結果から分るように、比較例のケース20については、均熱レンジ、温度分布ともに実施例1および2のケース6および13とほぼ同様の結果であった。比較例のケース21においても実施例1および2のケース7および14とほぼ同様の結果であった。
【0093】
これに対し、介在層6の配置密度が内外周で異なるケース15〜19においては、内周部に比較して外周部の配置密度を低くすることで、均熱レンジの減少が認められた。これは、実施例1および2のケース7および14と同様のメカニズムと想定されるが、冷却中にヒータの特に表面積の大きい外周部からの熱放散することから、冷却中は相対的に内周部よりも外周部がよく冷えることが分っている。そのため、介在層6の配置密度を相対的に外周部よりも内周部を密にする(内周部よりも外周部を疎にする)ことで、均衡を保つ結果になったと思われる。
【0094】
[実施例4]
実施例1〜3では、発熱体回路3の発熱密度分布を相殺するように、すなわち発熱密度が面内において相対的に高い領域においては介在層6の配置密度を相対的に密に、発熱密度が面内において相対的に低い領域においては介在層6の配置密度を相対的に疎にすることにより、冷却終了後にヒータ温度を安定させるために電力を印加した後の均熱レンジが減少することが分った。
【0095】
ここで、更なる均熱性の向上のため、実施例1〜3で発熱体回路3の密度分布と介在層6の配置密度分布を凡そ最適化した結果、支持ピンや温度センサを挿通する貫通孔、および給電配線を挿通する貫通孔近傍の温度が相対的に低くなった点に着目し、内外周の密度分布の他に、前述した貫通孔近傍の配置密度分布を変えることで温度変更直後の均熱特性の向上を図るための検証をした。
【0096】
実施例1で発熱体回路3をセンターホットパターンとし、介在層6の配置密度分布を内周部を100%、外周部を80%としたケース4の構造を基準にして、介在層6の配置密度を局所的に変更したヒータモジュールを作製し(ケース22〜28)、実施例1と同じ評価を実施した。密度の局所的な変更箇所は、図3に示すように、温度センサを挿通する貫通孔近傍、被処理物を支持ピンを挿通する貫通孔近傍、給電端子および給電配線を挿通する貫通孔近傍の3箇所とした。
【0097】
これら3箇所は何れも冷却ブロック2を背面板5に当接した際、物理的に接触することのない箇所である。そのため、当該箇所は貫通孔などが設けられていない他の接触領域に比較して相対的に冷却中の温度が高くなり、面内温度分布を阻害する要因となり得るのである。
【0098】
そして、実施例1と同様の評価をし、各々の貫通孔近傍の配置密度の増減と、ヒータを安定させるためにヒータユニットに電力を印加してから30秒後の均熱レンジを測定した結果を下記の表4に示す。尚、評価欄の評価はケース4の均熱レンジを基準にしており、○はケース4に比べて優れていることを、◎はケース4に比べて極めて優れていることを、△はケース4に比べて若干劣っていることを示す。
【0099】
【表4】

【0100】
この結果から分るように、何れも当接する冷却ブロック2に各部品を挿通するための貫通孔が設けられていて、当該箇所は物理的にヒータ基板1の冷却ブロック2との当接面には接触しないことから、冷却時に他の箇所と比較して冷え難い。そのため、何れの実験においても、貫通孔近傍の配置密度を増やすことで、ヒータユニットの温度を安定させるための電力印加後の均熱レンジは僅かに減少した。更に、これらを組み合わせたケース28では、電力印加30秒後の均熱レンジが0.3℃と大幅に減少させることができた。
【0101】
これは、各貫通孔近傍の配置密度を高めることで、物理的に接触せずに冷却時に冷え難かった領域、特にこの現象が顕著である上記3箇所の貫通孔近傍全てを積極的に冷却するようにできたことによるものと、電力印加後の局所的に過度に発熱する部位、例えば、給電端子近傍を予め過度に冷却しておくことで、これを相殺することができたものと考えられる。なぜなら、給電端子は一定の熱容量を持つ上、電力印加のための動力線などを介してヒータユニット系外の電源装置に接続されるため、この動力線などを介して間接的に外気に触れることでより多く熱放散する。このような熱逃げを考慮して、予め給電端子近傍の発熱パターンは発熱密度を上げて作製されているため、この部位周りの介在層6の配置密度を高めることが、均熱化の点において効果的であったと考えられる。
【符号の説明】
【0102】
1 ヒータ基板
2 冷却ブロック
3 発熱体回路
4 電気絶縁シート
5 背面板
6 介在層
10 ヒータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を載置して処理するための載置面を有したヒータ基板と、前記ヒータ基板を冷却する冷却ブロックとを備えたヒータユニットにおいて、前記ヒータ基板と前記冷却ブロックとの間に一定高さの介在層が存在しており、前記介在層は、前記ヒータ基板の加熱時に相対的に高温部となる領域が、相対的に低温部となる領域に比べて高密度となるような密度分布をもって配置されていることを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
前記冷却ブロックにおいて前記ヒータ基板に対向する面に形成されたざぐり穴または貫通孔近傍に、前記介在層が相対的に高密度に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記冷却ブロックは、前記ヒータ基板の冷却時には前記ヒータ基板に接触し、前記ヒータ基板の加熱時には前記ヒータ基板から離間することを特徴とする、請求項1または2に記載のヒータユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−170815(P2010−170815A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11626(P2009−11626)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】