説明

加熱定着装置

【課題】 定着フィルムとして金属スリーブを使用したフィルム加熱定着装置において耐久後に生じるトルクアップ、スリップジャムを防止する。
【解決手段】 金属スリーブと摺動するヒータ面の摺動層に含有率10%以下で耐磨耗材を含有させ、その対磨耗材の平均粒径が2.0μm以下であるとともに密度が摺動層のベース材より高く、硬度が金属スリーブ基層より高いことを特徴とする加熱定着装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリにおける画像形成装置に用いられる加熱定着装置で、特に耐熱性の定着フィルムを介して発熱体により未定着トナーを記録紙に加熱定着させる加熱定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機、プリンタ等の多くは定着手段として熱効率、安全性が良好な接触加熱型の熱ローラ定着方式や、スタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた方法、詳しくはヒータ部と加圧ローラの間に薄肉のフィルムを介して記録材上のトナー像を定着する省エネルギータイプのフィルム加熱方式を採用している。フィルム加熱方式による加熱定着方法の1例が特開昭63−313182号公報・特開平2−157878号公報・特開平4−44075号公報・特開平4−204980公報等に提案されている。図9にフィルム加熱方式の1例の概略構成を示した。すなわち図9において、ステイホルダー(支持体)1に固定支持させた加熱部材(加熱体、以下ヒータと記す)2と、該ヒータ2に耐熱性の薄肉フィルム(以下、定着フィルムと記す)3を挟んで後述する加圧手段により所定のニップ幅のニップ部(定着ニップ部)を形成させて圧接させた弾性加圧ローラ4を有する。ヒータ2は通電により所定の温度に加熱・温調される。定着フィルム3は不図示の駆動伝達手段あるいは加圧ローラ4の回転力により、定着ニップ部においてヒータ2面に密着・摺動しつつ矢印の方向に搬送移動される、円筒状あるいはエンドレスベルト状、もしくはロール巻きの有端ウエブ状の部材である。
【0003】
ヒータ2を所定の温度に加熱・温調させ、定着フィルム3を矢印の方向に搬送移動させた状態において、定着ニップ部の定着フィルム3と加圧ローラ4との間に被加熱材としての未定着トナー像を形成担持させた記録材を導入すると、記録材は定着フィルム3の面に密着して該定着フィルム3と一緒に定着ニップ部を挟持搬送される。この定着ニップ部において、記録材・トナー像がヒータ2により定着フィルム3を介して加熱されて記録材上のトナー像が加熱定着される。定着ニップ部を通った記録材部分は定着フィルム3の面から剥離して搬送される。
【0004】
ステイホルダー1は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ2を保持するとともに定着フィルム3の搬送ガイドも兼ねている。よって定着フィルム3との摺動性を高めるために、定着フィルム3とヒータ2やステイホルダー1の外周面の間に耐熱性の高いグリース等を介在させてある。また、加圧部材4は芯金6の外部にシリコンゴムを成形した弾性層あるいはシリコンゴムを発泡して成るスポンジ弾性層7、さらにその外層に定着ローラと同様のPTFEあるいはPFA、FEP等の離型性層8をチューブ状に、あるいはコーティング塗工して形成して成る。
【0005】
定着フィルム3は、定着ニップ部においてヒータ2の熱を効率よく被加熱材としての記録材に与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。定着フィルム3はフィルム基層、導電性プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、フィルム基層側がヒータ側であり、離型性層が加圧ローラ側である。フィルム基層は絶縁性の高いポリイミド、ポリアミドイミド、PEEKまたはSUS等の金属であり、耐熱性、高弾性を有しており、可撓性のある厚み15〜60μm程度で形成されている。また、フィルム基層により定着フィルム3全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。導電性プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されており、定着フィルム全体のチャージアップを防止するため、電気的にアースに接続されている。離型性層は定着フィルム3に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み5〜15μm程度に被覆して形成してある。また、定着フィルム3表面のチャージアップを軽減し、静電オフセットを防止するため、離型性層中には比抵抗が10Ωcm〜10Ωcm程度のカーボンブラック等の導電部材が混入されている。
【0006】
加熱部材としてのヒータ2には一般にセラミックヒータが使用される。例えば、窒化アルミ等の電気絶縁性・良熱伝導性・低熱容量のセラミック基板の面(定着フィルム3と対面しない側の面)に基板長手(図面に垂直の方向)に沿って銀パラジューム(Ag/Pd)・Ta2N等の通電発熱抵抗層をスクリーン印刷等で形成具備させ、さらに該発熱抵抗層形成面を薄肉のガラス保護層で覆っている。また、セラミック基板の定着フィルム3と接する面には定着フィルム3が摺擦によって受けるダメージを軽減するために摺動層が設けてある。定着フィルム3と摺擦する部分の摺動層は、定着フィルムの基層がポリイミドなどの樹脂からなる場合は一般的にガラスが用いられる。しかし、定着フィルムの基層がSUS等の金属からなる場合はガラス摺動層では耐久性が低下する。したがって定着フィルム3の基層が金属の場合はヒータ2の摺動面の摺動層をポリイミドやポリアミドイミドなどの樹脂により形成する方法が特開2003−57978に開示されている。
【0007】
このセラミックヒータ2は通電発熱抵抗層に通電がなされることにより該通電発熱抵抗層が発熱してセラミック基板・摺動層を含むヒータ全体が急速昇温する。このヒータ2の昇温がヒータ背面に設置された温度検知手段5により検知されて不図示の通電制御部へフィードバックされる。通電制御部は温度検知手段5で検知されるヒータ温度が所定のほぼ一定温度(定着温度)に維持されるように通電発熱抵抗層に対する給電を制御する。すなわちヒータ2は所定の定着温度に加熱・温調される。
【特許文献1】特開2003−57978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒータの熱をより効率的に記録材に伝えるために定着フィルムの基層の熱伝導性を良くする必要がある。樹脂製の定着フィルムの場合、熱伝導性フィラーを混入することで熱伝導性をアップさせることは可能であるが、熱伝導性フィラーの大量混入は定着フィルムの引裂き強度を低下させ、耐久中にフィルムが裂けてしまう等の弊害が生じる。一方、定着フィルムの基層を金属スリーブにした場合、熱伝導性や引裂き強度の問題を解決できるが、特開2003−57978に開示されているように耐久性を満足させるためにヒータの摺動層をポリイミド等の樹脂にする必要がある。しかし、更なる画像形成装置の高速化を達成するために更に定着性を向上させようとした場合、定着ニップにおける加圧力のアップ、定着時のヒータ温度アップ、ヒータの摺動層であるポリイミド樹脂の厚みダウン等を実施すれば定着性は向上するが、加圧力アップ、ヒータ温度アップはヒータの摺動層の磨耗を促進させる傾向にある。ヒータの摺動層が耐久により磨耗すると磨耗により生じた削り粉がヒータ表面と金属スリーブの間に塗られた摺動性グリスと混ざり合うことで所望の粘度、潤滑性を損ない、摩擦抵抗を増大させトルクアップの原因になる。加圧ローラの搬送力が低下するような状況下、すなわち水分を多量に含む記録材Pを加熱定着させ、大量の水蒸気が放出される場合、上記の摩擦抵抗が大きくなると金属フィルムを滑らかに従動搬送することが困難となり記録材Pのジャムを引き起してしまう。
【0009】
また、ヒータの摺動層であるポリイミド樹脂の厚みを小さくすると耐久によりポリイミド樹脂が磨耗し、セラミックヒータの基板が露出する恐れがある。セラミックヒータの基板が露出した部分は潤滑性が失われているため、トルクアップしてしまい、その結果、ジャムを引き起こしてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、未定着画像が形成された記録材を、加圧部材と加熱部材とを互いに圧接してなる定着ニップ間を通過させることにより、上記未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる加熱定着装置において、上記加熱部材は、表層に離型層が形成された金属製のスリーブと、その金属スリーブ内周面に接触するように固定配置された板状の加熱ヒータと、その加熱ヒータを保持する耐熱性の保持部材からなり、上記加熱ヒータの金属スリーブと接触する表面には、厚みが10μm以下の摺動層がコーティングされており、上記摺動層は耐磨耗材を含有しており、上記耐磨耗材の含有率が10%以下、平均粒径が2.0μm以下であるとともに密度が摺動層のベース材より高く、硬度が金属スリーブ基層より高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、定着ヒータの摺動層に含有させる耐磨耗剤の含有量を10%以下、密度を摺動層のベース材以上とすることにより摺動層の表面粗さを小さくすることができる。また、平均粒径を2μm以下、硬度を金属スリーブ以上とすることにより、耐久により定着フィルムとの摺擦で磨耗するのを抑制することができる。
【0012】
また、耐磨耗材の形状を鱗片状にすることにより耐磨耗材と摺動層のベース材の接する面積を大きくすることができるためさらに摺動層の強度を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
(1)画像形成装置例の説明
図1は本実施例における画像形成装置の構成略図である。本例の画像形成装置は電子写真プロセス利用のレーザプリンタである。
【0014】
19は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
【0015】
感光ドラム19は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ20によって一様帯電される。
【0016】
次に、その回転感光ドラム19の一様帯電面に対してレーザスキャナユニット21によりレーザビーム走査露光Lが施されて画像情報の静電潜像が形成される。感光ドラム19に対するレーザビーム走査露光Lは画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームがレーザスキャナユニット21内で回転するポリゴンミラーにより反射されてなされる。
【0017】
この静電潜像は現像装置22で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0018】
可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ23により、不図示の給紙機構部から所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム19上より転写される。ここで感光ドラム19上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ24にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム19と転写ローラ23に一定の加圧力で挟持搬送される。
【0019】
このトナー像が転写された記録材Pは加熱定着装置25へと搬送され、永久画像として定着される。
【0020】
一方、感光ドラム19上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置26により感光ドラム19表面より除去される。
【0021】
(2)加熱定着装置25
図2は加熱定着装置25の概略構成模型図である。本例の加熱定着装置25は、特開平4−44075〜44083、4−204980〜204984号公報等に開示の、移動部材として円筒状(エンドレスベルト状)・可撓性の定着フィルムを用いた、フィルム加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。
【0022】
1)装置25の全体的構成
27は加熱部材(定着ユニット、定着フィルムアセンブリ)、18は加圧部材としての加圧ローラであり、両者27・18の圧接により定着ニップ部Nを形成させている。
【0023】
加熱部材27は図面に垂直方向を長手とする部材であり、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するステイホルダー(支持部材)17と、このステイホルダー17の下面に、該部材の長手に沿って設けた凹溝部に嵌め入れて固定して配設した、加熱体としてのセラミックヒータ15と、該ヒータ15を取り付けたステイホルダー17にルーズに外嵌した移動部材としての、熱容量の小さな、円筒状の可撓性・耐熱性の金属スリーブ14等からなる。
【0024】
加圧ローラ18は、芯金29と、該芯金上に同心一体に形成具備させたシリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコンゴムを発泡して形成された弾性層30とから成る回転体である。弾性層30上にはPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂などから成る耐熱離型性層31を形成してあってもよい。
【0025】
より具体的に、加圧ローラ18は芯金29の外部にシリコンゴムを成形した弾性層あるいはシリコンゴムを発泡して成るスポンジ弾性層30、さらにその外層にPTFEあるいはPFA、FEP等の離型性層31をチューブ状に、あるいはコーティング塗工して形成して成る。
【0026】
加圧ローラ18は芯金29の両端部を装置シャーシー(不図示)の手前側と奥側の側板間に軸受部材を介して回転自由に軸受保持させて配設してある。
【0027】
加熱部材27は、この加圧ローラ18の上側に、ヒータ15側を下向きにして加圧ローラ18に並行に配置し、ステイホルダー17の両端部を不図示のバネ等の加圧手段にて加圧ローラ18の軸線方向に附勢することで、ヒータ15の下向き面を金属スリーブ14を介して加圧ローラ18の弾性層30に該弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。加圧ローラ18側を加圧手段にて加熱部材27の下面に押し上げ附勢して所定幅の定着ニップ部Nを形成する装置構成にすることもできる。
【0028】
加圧ローラ18は駆動手段Mにより矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ18の回転駆動による該加圧ローラ18の外面と金属スリーブ14との、定着ニップ部Nにおける圧接摩擦力により円筒状の金属スリーブ14に回転力が作用して該金属スリーブ14がその内面側がヒータ15の下向き面に密着して摺動しながらステイホルダー17の外回りを矢印の時計方向に従動回転状態になる。
【0029】
加圧ローラ18が回転駆動され、それに伴って円筒状の金属スリーブ14が従動回転状態になり、またヒータ15に通電がなされ、該ヒータ15が昇温して所定の温度に立ち上がり温調された状態において、定着ニップ部Nの金属スリーブ14と加圧ローラ18との間に未定着トナー像を担持した記録材Pが耐熱性の定着入口ガイド32に沿って案内されて導入され、定着ニップ部Nにおいて記録材Pのトナー像担持面側が金属スリーブ14の外面に密着して金属スリーブ14と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、ヒータ15の熱が金属スリーブ14を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像が記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。
【0030】
また、定着ニップN内で記録材Pが搬送されている間は金属スリーブ14に接している不図示の給電ブラシからトナーと同極性のバイアスが印加されオフセットや後方トナー飛び散りを抑制している。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは耐熱性の定着排紙ガイド33に案内されて不図示の排出トレイ上に排出される。
【0031】
2)ステイホルダー17
ステイホルダー17は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ15を保持するとともに金属スリーブ14の搬送ガイドも兼ねている。よって金属スリーブ14との摺動性を高めるために、金属スリーブ14とヒータ15やステイホルダー17の外周面の間に耐熱性の高いグリース等を介在させてある。
【0032】
より具体的に、ステイホルダー17はヒータ15を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されており、金属スリーブ14が余裕をもってルーズに外嵌されていて、矢印の方向に回転自在に配置されている。金属スリーブ14は内部のヒータ15およびステイホルダー17に摺擦しながら回転するため、ヒータ15およびステイホルダー17と金属スリーブ14の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このためヒータ15およびステイホルダー17の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を介在させてある。これにより金属スリーブ14はスムーズに回転することが可能となる。
【0033】
3)金属スリーブ14
移動部材としての金属スリーブ14は熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、膜厚を総厚100μm以下、好ましくは60μm以下とするのがよい。さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆したものである。
【0034】
より具体的には、金属スリーブ14は、定着ニップ部Nにおいてヒータ15の熱を効率よく記録材に与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。金属スリーブ14は基層、導電性プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、基層側がヒータ側であり、離型性層が加圧ローラ側である。
【0035】
基層は熱伝導の良いSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の純金属または合金であり、耐熱性、高弾性を有しており、可撓性のある厚み15〜60μm程度で形成されている。また、基層により金属スリーブ14全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。
【0036】
導電性プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されており、金属スリーブ表面に一部露出している。静電オフセット等を防止するため、金属スリーブ表面に露出した導電性プライマー層には導電ブラシが接しており、プリント中は電源からトナーと同極性のバイアス(定着バイアス)を印加している。本例ではトナーの帯電極性はマイナスであり、電源からはマイナスの帯電バイアスが印加される。帯電バイアスの印加は加圧ローラ18にトナーと逆極性のバイアスを印加しても良いし、これらを併用しても良い。
【0037】
離型性層は金属スリーブ14に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み5〜15μm程度に被覆して形成してある。また、金属スリーブ14表面のチャージアップを軽減し、静電オフセットを防止するため、離型性層中には比抵抗が10Ωcm〜10Ωcm程度のカーボンブラック等の導電部材が混入されている。
【0038】
4)ヒータ15
図3は本例における加熱体としてのセラミックヒータ15の構造模型図である。(a)は裏面模型図、(b)は拡大横断面模型図である。
【0039】
このヒータ15は、
1.通紙方向と直交する方向を長手とする横長の、窒化アルミ等の耐熱性、高絶縁性・良熱伝導性・低熱容量の部材からなるヒータ基板15a、
2.上記のヒータ基板15aの裏面側に長手に沿ってスクリーン印刷等により線状あるいは帯状に塗工した、電流が流れることにより発熱する銀パラジウム(Ag/Pd)、RuO2、Ta2Nなどの電気抵抗材料の、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の発熱層(通電発熱抵抗層)15b、
3.上記の発熱層bに対する給電パターンとして、同じくヒータ基板aの裏面側に銀ペーストのスクリーン印刷等によりパターン形成した電極部15c・15d・15e、
4.発熱層15bと温度検知素子28、サーモスイッチとの絶縁性を確保するためにそれ等の上に形成した、厚み50μm程度の薄肉のガラスコート15f、
5.ヒータ基板15aの表面側に設けた金属スリーブ14との摺動に絶え得る摺動層としてのポリイミド等の樹脂コート15g、
等からなる。
【0040】
上記のヒータ15は表面側を下向きに露呈させてステイホルダー17に固定して支持させてある。
【0041】
上記ヒータ15の電極部15c・15d・15eには給電用コネクタが装着される。
【0042】
不図示のヒータ駆動回路部から上記の給電用コネクタを介して電極部15c・15d・15eに給電されることで発熱層15bが発熱してヒータ15が迅速に昇温する(ACライン)。
【0043】
そのヒータ15の温度がサーミスタ28により検知され、検知温度の電気的情報がヒータ駆動回路部に入力される(DCライン)。
【0044】
ヒータ駆動回路部はサーミスタ28の検知温度が所定の設定温度(定着温度)に維持されるように給電回路部の出力電力を、電圧のデューティー比や波数等を適切に制御する。これにより、定着ニップ部Nにおいて金属スリーブ14の表面温度を定着可能な温度に保つ。すなわち、定着ニップ部Nでの温調温度を略一定に保ち記録材上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。
【0045】
ここで定着ヒータに於いて金属スリーブ14と摺動する面の摺動層15gの詳細について説明する。
【0046】
摺動層15gはディッピング塗工、あるいはスプレーによる塗装やスクリーン印刷によりコーティングされ、焼成工程を経て形成される。本実施例ではポリイミド等の樹脂に窒化珪素等の耐磨耗性樹脂を含有することを特徴とする。以下のようにポリイミドに耐磨耗物質を所定量混ぜたペーストをスクリーン印刷するが、製造時において以下の条件に従ってコートすることが望ましい。
【0047】
一つは、コート前の基板表面をサンドペーパーで研磨する、あるいはシランカップリング剤等のカップリング剤を塗布する等の前処理を施すことによって、基板とコート剤の密着性を高めることである。これは、研磨によって表面の油脂やゴミなどを除去する、あるいはカップリング処理により接着効果を高める働きを狙っている。これらの前処理はポリイミド摺動層15gのみならず、他のコート材料に対しても同様に効果が得られるものと考えられる。次に、コート後のポリイミド層は100℃〜200℃程度の温度で30分以上の充分な乾燥工程を経た後、350℃以上450℃以下の高温度で焼成を行う必要が有る。これは、十分な乾燥工程により徐々に溶剤成分を気化させ、焼成によりイミド化反応を完全に進行させておくためである。これにより、より耐磨耗性に優れた摺動層15gを得ることができる。この焼成温度や乾燥温度及びそれらに要する時間は、使用するポリイミドの種類やメーカ、更には焼成炉の出力や大きさ等により異なるものであり、上記範囲の温度域に限定されるものではない。
【0048】
上記方法で摺動層を形成するが、耐久性の良い摺動剤として、どのような特性を持つ耐磨耗剤が好適であるか、含有量(質量%)、粒子径、形状、比重、硬度という観点から比較検討を行った。
【0049】
1.含有量
上記方法で耐磨耗物質としてSiを用い、含有量が1質量%、5質量%、10質量%のポリイミドペーストと何も含有しないポリイミドペーストをスクリーン印刷したヒータを作成した。この時のポリイミドの膜厚は5μmに統一した。またこの時のSiの平均粒子径は0.7μmである。
【0050】
上記4つのヒータについて初期の摺動面の表面粗さを測定した後、加熱定着装置に組み込み、駆動トルク、定着性の測定を行った。その後、記録材を20万枚プリントして耐久した後、駆動トルクの測定、摺動層15gの厚み測定を行った。駆動トルクとは金属スリーブ14を摺動回転させるために加圧ローラに必要なトルクである。
【0051】
結果を下表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1のように耐磨耗性粒子である窒化珪素を含有しないものは初期評価の表面粗さ、駆動トルク、定着性は良好な結果であるが、耐久後の膜厚減少量は大きい。これは図4(a)に示されるように金属スリーブ14の内面が摺動層15g表面を摺擦しながら回転するため摺動層15g表面に矢印で示されるような力が働き、耐久により摺動層15g表面のポリイミドが少しずつ解離しているためである。また、耐久後の駆動トルクも上昇している。これは耐久により解離したポリイミドの削れ粉と潤滑剤であるグリスが混ざることによりグリスの潤滑性が失われたためであると考えられる。
【0054】
一方、窒化珪素の含有量が1%及び5%のものは耐久後の膜厚減少量が窒化珪素を含有しないものと比較して少ない。これは図4(b)に示されるように摺動層15g最表面のポリイミドは金属スリーブとの摺擦により力を受け、少しずつ摺動層15gから解離しているが、耐磨耗剤である窒化珪素粒子が摺動層15gに含有されている場合、窒化珪素粒子とポリイミドの界面におけるアンカー効果により窒化珪素粒子とポリイミドとの接着力が強く、窒化系素粒子近傍のポリイミドが摺動層15gから解離するのを抑制しているためであると考えられる。
【0055】
しかし、窒化珪素の含有量が10質量%になると摺動層15g表面近傍の窒化系素粒子が原因となり摺動層15g表面粗さが大きくなる。これにより金属スリーブ内面と摺動層15gの摩擦力が大きくなり、駆動トルクも大きくなった。さらに駆動トルクの小さい窒化珪素の含有量が1質量%、5質量%のものと比較して金属スリーブ14との摺擦による力が大きいため耐磨耗物質が多いにもかかわらず耐久によりポリイミドの磨耗量が多くなり摺動層膜厚の減少量が多くなった。また、摺動層15gから解離したポリイミド、窒化珪素が潤滑剤であるグリスと混ざり、大きい摺擦力で耐久されてグリスの劣化が促進されたため耐久後の駆動トルクも大きくなったと思われる。
【0056】
以上の結果より耐磨耗剤の含有量は駆動トルク、耐久性を考慮すると10%以下が適当であると考えられる。またポリイミドコート後の表面粗さはRzが5μm以下が適当である。
【0057】
2.粒径
耐磨耗物質である窒化珪素の含有量を1質量%、平均粒径を0.7μm、2.0μm、4.0μmとしたポリイミドペーストを膜厚5μmとなるようにスクリーン印刷したヒータを作成した。上記ヒータをそれぞれ加熱定着装置にセットして初期状態での駆動トルクを測定した。さらに20万枚の通紙耐久を行った後、駆動トルク、ポリイミド膜厚の測定を行った結果を下表に示す。
【0058】
初期駆動トルクは平均粒径が大きくなってもほとんど変化は無かった。これは含有量を1質量%としているため、平均粒径が大きいと耐磨耗物質の数が少なくなりポリイミド摺動層と定着フィルム間の摩擦力は大きくならないためであると考えられる。しかし、耐久性を比較すると、平均粒径が0.7μmのペーストの耐久後駆動トルクは耐久前と比べてほとんど上昇することは無く、耐久後の膜厚減少量も少ないが、平均粒径が2.0μmになると耐久後の駆動トルクが若干上昇し、耐久後の膜厚減少量も平均粒径0.7μmより多い。さらに、平均粒径が4.0μmになると耐久後の駆動トルクは窒化珪素を含有しないものよりもはるかに上昇している。すなわち、耐磨耗物質の平均粒径が小さい程、耐久後の駆動トルクが小さい、またポリイミドの膜厚低下量も小さく耐久性が良い事が分かる。
【0059】
【表2】

【0060】
これは、耐久が進むとポリイミドが磨耗して耐磨耗物質が露出していくが平均粒子径が大きいと図5(a)のように耐磨耗物質が露出している部分とそうでない部分の段差が大きくなり全体的に表面粗さが大きくなる。その結果、摩擦力が大きくなり駆動トルクの上昇や磨耗が促進される。また、ポリイミド摺動面から耐磨耗物質がはがれた場合、耐磨耗物質がはがれた凹みの位置で磨耗が促進されるが、耐磨耗物質の粒径が大きいと図5(a)のように凹みが大きいため耐磨耗物質がはがれた位置での磨耗量が大きい。一方耐磨耗物質の粒径が比較的小さいと図5(b)のように耐磨耗物質がはがれた位置での磨耗量が小さい。また、耐磨耗物質の粒径が大きい方が摺動層からはがれた後に摺動層にダメージを与えると考えられる。また、初期摺動層膜厚より耐磨耗物質の平均粒径が大きい場合は図5(c)のように耐磨耗物質が露出しており摩擦力も高いため摺動層に適さないのは当然である。
【0061】
以上の結果より耐磨耗物質の平均粒径は2.0μm以下、且つ摺動層の厚み以下とする。
【0062】
3.形状
耐磨耗物質である窒化珪素の含有量を1質量%、平均粒径を約0.7μmとしたポリイミドペーストを膜厚5μmとなるようにスクリーン印刷したヒータを作成した。耐磨耗物質の形状として球状と鱗片状の2種類とした。上記ヒータをそれぞれ加熱定着装置にセットして初期状態での駆動トルクを測定した。さらに20万枚の通紙耐久を行った後、駆動トルク、ポリイミド膜厚の測定を行った結果を下表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
初期駆動トルクについては耐磨耗物質の形状差はほとんど見られなかった。しかし、耐久後を比較すると膜厚の減少量が鱗片状のものは0.5μmであるのに対し、球状のものは0.9μmと多かった。また、鱗片状のものは駆動トルクが初期からほとんど上昇していないのに対し、球状のものは大きく上昇している。これは、球状は体積に対する表面積の割合が鱗片状と比較して小さいため、ポリイミドと接触している面積が小さく、アンカー効果によりポリイミドが摺動層から解離するのを防止する作用が小さいためであると考えられる。
【0065】
以上の結果より耐磨耗物質の形状は、体積に対する表面積比の大きくなる形状、例えば鱗片状とするのが望ましい。
【0066】
4.密度
密度の異なる耐磨耗材を含有したポリイミドを膜厚5μmとなるようにスクリーン印刷したヒータを作成した。耐磨耗材として窒化珪素(3.2g/cm)と窒化ホウ素(2.3g/cm)を使用した。この時のポリイミドの密度は1.1g/cmであり、耐磨耗材の平均粒径は0.7μm、また含有率は1.0質量%である。上記2種類のヒータについて摺動層表面粗さ、初期駆動トルクを比較した結果を下表に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
密度の低い窒化ホウ素を耐磨耗材として用いた方が表面粗さは大きくなっている。これは耐磨耗材の密度に関係しており、ポリイミドペーストをヒータ面に塗って焼成させるまでの間に密度の高い窒化珪素のほうがポリイミド下方に沈み込むと考えられる。その結果、窒化珪素では図6(a)に示されるように摺動層表面近傍の耐磨耗材量が比較的少ないため摺動層表面粗さに大きな影響を与えないと考えられる。一方、窒化ホウ素では図6(b)に示されるように摺動層表面近傍に耐磨耗剤が多く存在し、摺動層表面が耐磨耗材に影響を受けると考えられる。また、表面粗さが大きくなり金属スリーブ14との摩擦力が大きくなったため耐磨耗材として窒化ホウ素を用いたものは若干駆動トルクが高くなっている。
【0069】
耐久初期においては摺動層表面に塗布された潤滑性グリスが金属スリーブ内周にまんべんなく行き渡り馴染んでいないため金属スリーブ14が摺動回転しづらい傾向がある。したがって、摺動層の初期表面粗さは金属スリーブ14の摺動回転においては非常に重要である。すなわち、摺動層の初期表面が耐磨耗材により粗くなっている場合、駆動トルクが高くなり、潤滑性グリスが馴染んでいないことと相まって金属スリーブ14が安定して摺動回転できない可能性もある。
【0070】
以上の結果より耐磨耗材の密度は大きい方がよく、少なくとも摺動層のベースとなる樹脂の密度より大きく、2倍以上が望ましい。
【0071】
5.硬度
耐磨耗材の硬度が金属スリーブ14の硬度より低かった場合、金属スリーブ14との摺動により容易に削れてしまい耐磨耗材としての役割を果たさなくなってしまう。したがって、耐磨耗材の硬度は金属スリーブ14との摺動に耐え得るため金属スリーブ14の硬度より高いものを使用する。
【0072】
(実施例2)
以下に本発明の第2の実施例について説明する。本実施例に関する画像形成装置全体の構成及び加熱定着装置全体の構成は、それぞれ前記第1の実施例で説明した図1、図2と同様であるため説明を省く。
【0073】
図7に第2の実施例に関わる加熱ヒータ近傍の詳細図を示す。本実施例では、加熱ヒータ15は表面加熱タイプの細板状のセラミックヒータである。すなわち、加熱ヒータ15の通電発熱抵抗層15bをヒータ基板の定着ニップN側に設け、その抵抗層15bを保護するためのガラスコート15fを設ける。更にその上から金属スリーブ14との摺動性を向上させるための摺動層15gを設ける構成とした。
【0074】
保護層としてのガラスコートの厚みは、摺動層15gが磨耗した場合でも、発熱体15bと金属スリーブ14の絶縁性を完全に確保する必要があるため、30μm以上の厚みが必要である。逆に厚すぎると、金属スリーブ14への熱伝導性を損なうことになるため100μm以下の厚みが適当である。従って、保護ガラスコート層15fの厚みとしては30μm以上100μm以下の厚みが適当である。摺動層15gには第1の実施例と同様に、ポリイミドやポリアミドイミドなどの樹脂に耐磨耗性物質を含有させたものをコーティングする。
【0075】
本実施例では、例えば加熱ヒータ15のヒータ基板15aにアルミナを用いた場合、前記第1の実施例の背面加熱タイプの加熱ヒータのようにヒータ基板aの反ニップ側に発熱抵抗層15bを配置させるよりも、ヒータ基板15aのニップ面側に通電発熱抵抗層15bを配置させ保護ガラスコート15fを介してニップ方向に熱を伝える方が熱効率が良い。すなわち、熱伝導率で比較すれば、ガラスよりもアルミナのほうが優れているが、通常加熱ヒータ15の強度を持たせるためにアルミナ基板は0.5〜1.0mmの厚みを有する。それに対してガラスコートは20〜60μmであることから、熱容量を加味した熱抵抗で比較すると、本実施例の表面加熱タイプの加熱ヒータのようにヒータ基板15aの表面に発熱抵抗層15bを形成した方が、熱伝導性に優れた構成となる。これは、ヒータ基板がアルミナ以外の材質であっても、そのヒータ基板15aの厚み、ガラスコート15fの厚みによっては、本実施例のように表面で加熱した方が優位な場合が生じる。
【0076】
また、第1の実施例の背面加熱タイプ加熱ヒータの場合、温度検知素子28は通電発熱抵抗層15bとの絶縁性を十分に確保するために温度検知素子28の周囲を耐熱性の絶縁保護テープ等で包囲する必要がある。その為に、加熱ヒータ15の温度検知の応答性が損なわれ、電力のオーバーシュートが大きくなるなどの弊害が生じる。それに対して、本実施例の表面加熱タイプの加熱ヒータのように通電発熱抵抗層15bを表面に配置させれば、ヒータ基板15a自体が絶縁層の役割を持つので、温度検知素子28は基板裏に直接当接あるいは接着させることができる。従って、温度検知の応答性に優れ、加熱ヒータ15の温調制御がコントロールしやすくなるという利点を持つ。
【0077】
また、本実施例のようにガラスコート層15fの上に摺動層15gを設ける構成では、図8に示すように、加熱ヒータのヒータ基板15aとしてセラミックの替わりにSUS等の金属基板を用い、金属基板の一面に絶縁性の保護ガラスコート層15fを設けた後に、通電発熱抵抗層15b、さらに第2の保護ガラスコート層15f、そしてその上に摺動層15gを設けるような構成の加熱ヒータにすることも可能である。このような熱伝導性に優れた金属板をヒータ基板材料として用いることで、セラミック基板よりも長手方向の温度を均一にすることができ、定着ムラや光沢ムラの少ない良好な画像を得ることができる。また加熱ヒータの急激な昇温時に生じる熱ストレスに対して基板の破壊等も防止することができる。
【0078】
以上に説明したように、本実施例では通電発熱抵抗層をヒータ基板の表面に配置させた場合でも、その上から保護ガラスコート層さらに摺動層を設けることにより金属スリーブとの摺動性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1及び2における画像形成装置の構成略図
【図2】実施例1及び2における加熱定着装置の構成略図
【図3】実施例1におけるセラミックヒータの構成模型図
【図4】実施例における摺動層の耐磨耗メカニズムを説明する図
【図5】実施例における耐磨耗材粒径違いによる磨耗度差を説明する図
【図6】実施例における耐磨耗材密度違いによる表面粗さを説明する図
【図7】実施例2におけるセラミックヒータの構成模型図
【図8】実施例2における別のセラミックヒータの構成模型図
【図9】従来例における加熱定着装置の構成略図
【符号の説明】
【0080】
14 金属スリーブ
15 加熱ヒータ
15b 発熱抵抗層
15f 保護層
15g 摺動層
17 ステイホルダー
25 加熱定着装置
28 温度検知素子
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像が形成された記録材を、加圧部材と加熱部材とを互いに圧接してなる定着ニップ間を通過させることにより、上記未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる加熱定着装置において、
上記加熱部材は、表層に離型層が形成された金属製のスリーブと、その金属スリーブ内周面に接触するように固定配置された板状の加熱ヒータと、その加熱ヒータを保持する耐熱性の保持部材からなり、
上記加熱ヒータの金属スリーブと接触する表面には、厚みが10μm以下の摺動層がコーティングされており、上記摺動層は耐磨耗材を含有しており、上記耐磨耗材の含有率が10%以下、平均粒径が2.0μm以下であるとともに密度が摺動層のベース材より高く、硬度が金属スリーブ基層より高いことを特徴とする加熱定着装置。
【請求項2】
上記耐磨耗材の形状が鱗片状であることを特徴とした請求項1に記載の加熱定着装置。
【請求項3】
上記耐磨耗材が窒化珪素であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の加熱定着装置。
【請求項4】
上記加熱ヒータに設ける摺動層が、耐熱性、潤滑性、耐磨耗性を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の加熱定着装置。
【請求項5】
上記樹脂材料は、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂であり、ディッピング塗工、スプレー塗装、あるいはスクリーン印刷によりコートされた後に、300度以上の温度で焼成し、完全にイミド化させることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の加熱定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−84821(P2006−84821A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269959(P2004−269959)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】