説明

加熱機器

【課題】ヒータが異常加熱した場合の安全性を確保する。
【解決手段】外装体10の内部に被加熱物を収容する有底筒状の容器22を配設し、該容器22の底に内部の被加熱物を加熱する底ヒータ34を配設した加熱機器において、前記容器22の側部に胴ヒータ44を更に配設し、前記容器22の側部と外装体10との間に、前記胴ヒータ44の外周部を覆う筒状をなす金属製の遮熱部材72を配設するとともに、該遮熱部材72に、前記胴ヒータ44の上方を覆う上カバー部73を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ポット、加湿器および炊飯器などの加熱機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱機器は、被加熱物を収容する容器を備え、該容器に加熱手段としてヒータを配設することにより、前記容器を介して被加熱物を加熱するものである。具体的には、電気ポットでは、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、所定温度に保温する。加湿器では、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、その蒸気を室内に供給することにより、室内を加湿する。炊飯器では、着脱可能な容器(鍋)の内部に被加熱物として米と水とが収容され、容器を本体の収容部(容器)にセットしてヒータを動作することにより、水を沸騰させ、米を炊き上げる。
【0003】
そして、この加熱機器では、前記ヒータは、容器の底に配設されている。
【特許文献1】特開平10−14768号公報
【0004】
この特許文献1の加熱機器では、ヒータによる加熱量を大きくするには、底ヒータの形状が大きくなるため、大幅な設計変更が必要になる。そこで、筒状をなす容器の側部に新たなヒータ(胴ヒータ)を配設する構成が考えられる。
【0005】
しかしながら、この加熱機器では、マイコンが故障(暴走)することによりヒータで加熱し続けるという異常加熱状態になると、その熱が容器を介して樹脂製の外装体に伝わって溶損させ、その溶融した樹脂が、容器の表面を伝って胴ヒータに付着するという不具合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、ヒータが異常加熱した場合の安全性を確保できる加熱機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の加熱機器は、外装体の内部に被加熱物を収容する有底筒状の容器を配設し、該容器の底に内部の被加熱物を加熱する底ヒータを配設した加熱機器において、前記容器の側部に胴ヒータを更に配設し、前記容器の側部と外装体との間に、前記胴ヒータの外周部を覆う筒状をなす金属製の遮熱部材を配設するとともに、該遮熱部材に、前記胴ヒータの上方を覆う上カバー部を設けた構成としている。
【0008】
この加熱機器によれば、容器の側部に胴ヒータを配設しているため、大幅な設計変更をすることなく、加熱容量を増大することができる。また、胴ヒータの外周部を覆うように遮熱部材を配設しているため、胴ヒータの加熱により周囲の樹脂部品が溶損することを防止できる。しかも、遮熱部材には、前記胴ヒータの上方を覆う上カバー部を設けているため、底ヒータおよび胴ヒータが異常加熱状態になり、容器を介して樹脂製の外装体などが溶損しても、その溶融樹脂が容器を伝って胴ヒータに付着することを防止できる。
【0009】
この加熱機器では、前記遮熱部材は、金属板を打ち抜いて形成したもので、その両側縁に軸方向に沿った位置ズレを防止するための位置決め部を設け、前記容器に対して胴ヒータの取付後に、前記容器の底側から取付可能とすることが好ましい。このようにすれば、組立作業性を向上できる。
【0010】
また、前記上カバー部は、軸方向に沿って延びる複数のスリットを備え、上方に向けて直径が漸次小さくなるように縮径した略円錐筒形状をなすことが好ましい。このようにすれば、金属板を打ち抜いて形成する場合に上カバー部を簡単かつ確実に形成することができる。
【0011】
さらに、前記遮熱部材の上カバー部は、前記容器との間に溶融樹脂が通過不可能な隙間が形成される寸法で形成されていることが好ましい。このようにすれば、容器の熱による遮熱部材の昇温を抑制できるうえ、胴ヒータへの溶融樹脂の付着を確実に防止できる。
【0012】
また、前記遮熱部材を、前記容器の底と外装体との間に配設する底遮熱部材に固定することが好ましい。このようにすれば、遮熱部材の回転および変形を防止できる。しかも、上カバー部と容器との隙間を安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加熱機器では、容器の側部に胴ヒータを配設しているため、大幅な設計変更をすることなく、加熱容量を増大することができる。また、胴ヒータの外周部を覆うように遮熱部材を配設しているため、胴ヒータの加熱により周囲の樹脂部品が溶損することを防止できる。しかも、遮熱部材には、前記胴ヒータの上方を覆う上カバー部を設けているため、底ヒータおよび胴ヒータが異常加熱状態になり、容器を介して樹脂製の外装体などが溶損しても、その溶融樹脂が容器を伝って胴ヒータに付着することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す。この電気ポットは、外装体10の内部に被加熱物である水を収容する有底筒状の容器22を配設し、この容器22内の水を沸騰ヒータ34,44で加熱するとともに、給湯ポンプ26を動作させることにより、揚水管28を介して吐出部30からお湯を吐出するものである。
【0016】
前記外装体10は、筒状をなす胴体11と、該胴体11の上部に装着された肩体17と、該肩体17に開閉可能に取り付けた蓋体21を備えている。
【0017】
前記胴体11は、その下端開口部が下板12により閉塞されている。また、胴体11には、正面に外向きに突出するノーズ部13が設けられ、その先端近傍に下向きに開口した吐出用開口部14が設けられている。さらに、胴体11の正面側には、矩形状の開口部15が設けられ、この開口部15に内部を透視可能な透明の窓部材16が配設されている。
【0018】
前記肩体17は樹脂(ポリプロピレン)製であり、前記胴体11の上端開口と一致する下端形状をなし、その背面側には蓋体21を着脱可能でかつ回動可能に取り付けるためのヒンジ接続部18が設けられている。この肩体17は、ノーズ部13の上側に位置する部分が先端に向けて下向きに湾曲した形状をなし、その部分に操作パネル部19が設けられている。この操作パネル部19の背面側には、下向きに窪む蓋配設部20が設けられ、この蓋配設部20に容器22の内部を露出させる開口部(図示せず)が設けられている。
【0019】
前記蓋体21は、肩体17の蓋配設部20と同一形状をなし、ヒンジ接続部18に軸着されることにより、容器22の上端開口を開閉可能に密閉するものである。この蓋体21は、肩体17に開放不可能な状態にロックし、開放操作によりロックを解除する操作部材(図示せず)を備えている。
【0020】
前記容器22は、肩体17の開口部に装着される円筒状の容器胴体23と、該容器胴体23の下端開口を閉塞する容器底体24とからなる金属製(ステンレス(SUS436L))のものである。容器底体24には、給湯ポンプ26を接続する接続孔25が設けられている。また、給湯ポンプ26には、略L字形状をなす継手部材27を介して窓部材16の背部に位置する揚水管28が接続されている。そして、この揚水管28の上端には、転倒時の漏水を防止するための弁セット29が接続され、この弁セット29に吐出用開口部14内に配置される吐出部30が設けられている。また、容器22には、容器底体24における接続孔25を除く位置に容器22内に向けて上向きに窪むヒータ取付部31が設けられ、このヒータ取付部31の中心に更に円形状をなすように上向きに窪むセンサ配設部32が設けられている。
【0021】
そして、前記容器22のヒータ取付部31には、容器22内に貯留された水を沸騰および保温するための加熱手段として底ヒータユニット33が配設されている。また、本実施形態の容器22には、側部下端である容器胴体23の外周部に、水を沸騰させる加熱手段として胴ヒータユニット43が更に配設されている。なお、本発明の胴ヒータとは、後述する実質的な胴沸騰ヒータ44を含む、胴ヒータユニット43を含む。
【0022】
前記底ヒータユニット33は、図2に示すように、底沸騰ヒータ34と、底保温ヒータ35と、各ヒータ34,35間および両端を絶縁する絶縁板38と、これらを内部に積層配置するヒータカバー39とを備えている。底沸騰ヒータ34は、沸騰処理時に動作(通電)されるもので、例えば905Wの出力が可能なものである。底保温ヒータ35は、保温処理時に動作されるもので、例えば65Wの出力が可能なものである。これらヒータ34,35は、中央に貫通孔36aを備えたマイカ板36にニクロム線37(電熱線)を巻回したものである。絶縁板38は、中央に貫通孔38aを備えたマイカ板である。ヒータカバー39は金属(アルミ)製であり、内部のヒータ34,35の発熱を平均化して容器底体24に供給する放熱板の役割をなすもので、ヒータ取付部31より僅かに小さい形状をなすベース板部40と、折り曲げにより該ベース板部40と略同形状をなす3枚の折曲板部41a,41b,41cとを備えている。この底ヒータユニット33は、ヒータ取付部31に収容するように配設され、その表面(底側)が金属製の被覆部材42によって離脱不可能に接合されている。
【0023】
前記胴ヒータユニット43は、図3に示すように、矩形(バンド)状をなす胴沸騰ヒータ44と、平面視C字形状をなす保持枠47と、胴沸騰ヒータ44を保護する保護部材51とを備えている。胴沸騰ヒータ44は、沸騰処理時に動作されるもので、例えば底沸騰ヒータ34と合わせて1200Wとなるように295Wの出力が可能なものである。この胴沸騰ヒータ44は、板状をなすマイカ板45に対して螺旋状をなすようにニクロム線46(電熱線)を巻回したものである。保持枠47は、金属(アルミ)製であり、放熱板の役割をなすもので、内面部48と外面上枠部49と外面下枠部50とを備えた断面略C字形状をなす。保護部材51は、金属(鉄)製であり、容器胴体23の外形より僅かに小さい直径のものである。この保護部材51の両端には、先端縁からU字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝52aを有する被締付部52A,52Bが外向きに突出するように設けられている。また、保護部材51には、内側に位置する胴沸騰ヒータ44の接続部46aを露出させる露出孔53が設けられている。
【0024】
前記胴ヒータユニット43は、図4および図5に示すように、容器22の側部下端に固定金具54によってネジ締めされることにより装着される。この固定金具54は、図6に示すように、一対の板状部材55,60からなる。第1板状部材55は、ネジ軸を挿通する挿通孔56aを有する挿通部56と、該挿通部56の外端縁から屈曲したカバー部57とを有する平面視L字形状のものである。挿通部56の内端縁には、一対の突片58が内向きに突出するように設けられている。また、挿通部56の外面には、座金板59が固着されている。第2板状部材60は、挿通部56と同一形状をなす長方形状のものである。この第2板状部材60には、ネジ67を締め付けるためのネジ孔61が設けられている。また、第1板状部材55と同様に、内端縁には一対の突片62が内向きに突出するように設けられている。
【0025】
そして、本実施形態では、図4および図5に示すように、前記固定金具54に、胴ヒータユニット43の表面に該胴ヒータユニット43および前記底ヒータユニット33の異常加熱を防止する1個の温度ヒューズ68を配設するための取付金具63が、共締めにより一体的に取り付けられている。この取付金具63は、図6に示すように、弾性を有する金属(ステンレス)板からなる。この取付金具63は、温度ヒューズ68を保持する保持部64と、固定金具54に対して固定するための取付部65とを備えている。取付部65には、保護部材51のネジ挿通溝52aと同様に、先端縁からU字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝66が設けられている。
【0026】
前記固定金具54および取付金具63は、容器22の側部の所定位置に胴ヒータユニット43を位置決めした状態で、被締付部52Aに対して取付部65が重畳するように位置決し、ネジ67を仮締めした状態の固定金具54を各挿通溝52a,66に挿通させてネジ67を締め付ける。これにより、一対の被締付部52A,52Bを近接させ、内側に位置する胴沸騰ヒータ44および保持枠47を一緒に容器22の側部を圧接し、胴ヒータユニット43を容器22に対して固定する。また、同時に、取付金具63の取付部65が締め付けられることにより、保持部64に保持させた温度ヒューズ68が、胴沸騰ヒータ44を被覆(保護)している保護部材51に向けて弾性的に付勢される。この温度ヒューズ68により本実施形態では、並列に接続した底沸騰ヒータ34と胴沸騰ヒータ44の分岐接続部の上流側に介設され、両方の沸騰ヒータ34,44が正常な状態は勿論、いずれかの沸騰ヒータ34,44が断線した状態でも、異常加熱を防止できる。
【0027】
この電気ポットには、図1に示すように、容器22を介して内部の水温を検出するための温度検出手段であるサーミスタ69が、底ヒータユニット33を貫通してセンサ配設部32に接触するように配設されている。また、容器22と外装体10の底(下板12)との間には、容器の底を覆うように金属製の底遮熱部材70が配設され、制御基板ケース71に対する底ヒータユニット33の熱を遮断するように構成している。さらに、容器22の側部と外装体10の胴体11との間には、容器胴体23の下部に配設した胴ヒータユニット43を覆うように金属製の胴遮熱部材72が配設され、揚水管28などの近接した樹脂製品に対する胴ヒータユニット43の熱を遮断するように構成している。
【0028】
前記胴遮熱部材72は、図1および図7に示すように、筒状をなし、その上部には、胴ヒータユニット43の上方を覆うように、上方に向けて直径が漸次小さくなるように縮径した略円錐筒形状の上カバー部73が設けられている。この胴遮熱部材72は、平坦な金属板を打ち抜いた後、絞り加工を施すことにより円筒状に形成され、その後に容器22に組み付けることにより筒状に形成されている。この胴遮熱部材72の内径は、組付状態の胴ヒータユニット43の外径より大きく、該胴ヒータユニット43から突出した固定金具54の外端までの寸法より小さいものである。また、上カバー部73は、その内端縁に筒状をなすように上向きに突出する内筒部74を備えている。そして、この内筒部74の内径は、容器胴体23の外径より僅かに大きく、これらの間に所定間隔の隙間が形成されるように設定する。この隙間は、容器22を固定した肩体17の溶融樹脂が表面張力の作用により通過不可能な寸法(本実施形態では1.5mm)に設定されている。
【0029】
この胴遮熱部材72のブランクは、図8に示すように、横長の長方形板の両端下部に、胴ヒータユニット43の固定金具54および取付金具63を露出させるための切欠部75a,75bを形成したものである。このブランクには、縮径した前記上カバー部73を形成するために、上端縁から下向きに延び、組立状態で軸方向に沿って延びる複数のスリット76が打ち抜きにより設けられている。このスリット76は、上カバー部73を円錐筒状に絞り加工する際に、余剰部分をオーバーラップさせるためのものである。また、切欠部75a,75bを除くブランクの両側縁には、筒状とした状態で軸方向に沿った位置ズレを防止するための位置決め部として、互いに噛み合う凹部77および凸片78が設けられている。さらに、切欠部75a,75bを除くブランクの下端縁には、ネジ挿通孔79aを備えた固定片79が突設され、この固定片79を底遮熱部材70にネジ止め固定して装着するように構成している。
【0030】
組付前の胴遮熱部材72は、前述のように、絞り加工により円筒状をなしている。そして、組付時には、図4に示すように、温度ヒューズ68を含む胴ヒータユニット43を装着した状態の容器22に対して底側から差し込む。この際、円筒状をなす胴遮熱部材72の両側縁間を離間させて平面視C字形状をなすように広げる。この状態で、その間に固定金具54が位置するようして、固定金具54を通過させる。その後、図9および図10に示すように、固定金具54が切欠部75a,75b内に位置すると、離反したブランクの両側縁を近接させ、凹部77と凸片78とを噛み合わせる。この状態で、容器22の底側に底遮熱部材70を配設し、該底遮熱部材70と胴遮熱部材72の固定片79とをネジ止めにより固定する。
【0031】
このように、本実施形態の電気ポットは、胴ヒータユニット43の周囲を被覆する胴遮熱部材72を、金属板を打ち抜いて形成し、容器22の底側から取付可能としているため、組立作業性を向上できる。また、胴遮熱部材72は、底遮熱部材70にネジ止めして固定されるため、両側縁を突き合わせた筒状に確実に維持できるとともに、軸方向に沿った回転および変形を防止できる。しかも、上カバー部73と容器22との隙間を安定させることができる。
【0032】
なお、このように構成した電気ポットは、制御基板ケース71内に電源ユニットを含む制御基板80が配設され、この制御基板80に実装した制御手段であるマイコンにより、予め記憶されたプログラムに従って沸騰処理、再沸騰処理および保温処理が実行される。具体的には、ユーザが電源コードを商用電源に接続したことを検出すると、または、サーミスタ69によって保温処理中にユーザが水を継ぎ足すことにより10℃以上の温度低下を検出すると、沸騰処理を実行した後、続いて保温処理を実行する。また、操作パネル部19のスイッチ操作に従って再沸騰処理を実行し、続いて保温処理を実行する。さらに、スイッチ操作に従って給湯ポンプ26を動作させて給湯処理を実行する。
【0033】
そして、再沸騰を含む沸騰処理時には、本実施形態では、胴沸騰ヒータ44を配設しているため、底沸騰ヒータ34のみを搭載した従来の電気ポットと比較すると、加熱容量が大きく、水を沸騰させるのに要する時間を短縮できる。しかも、底ヒータユニット33は、従来と何ら設計変更をする必要がないため、製造コストの増大を抑えることができる。また、胴沸騰ヒータ44の周囲には胴遮熱部材72を配設しているため、加熱により揚水管28などの周囲の樹脂部品が溶損することを防止できる。さらに、本実施形態では、胴遮熱部材72には容器22の外周面に近接する上カバー部73が形成されているが、この上カバー部73と容器22との間には所定の隙間が設けられているため、容器22の熱による遮熱部材の昇温を抑制できる。
【0034】
一方、この沸騰処理時にマイコンが故障するなどの原因で、沸騰ヒータ34,44が異常加熱した場合には、通常では、両方の沸騰ヒータ34,44の熱で容量が小さい温度ヒューズ68が溶損(遮断)し、両方の沸騰ヒータ34,44が加熱不可能となる。
【0035】
しかし、温度ヒューズ68が何らかの原因で溶損しなかった場合には、沸騰ヒータ34,44が加熱され続ける。そして、これらによる過熱は、容器22を介して該容器22を固定した樹脂部品である肩体17に伝わり、該肩体17を溶損させる。この場合には、その溶融した樹脂は、容器22を伝って胴沸騰ヒータ44の表面に付着するが、本実施形態では、容器22に上カバー部73を有する胴遮熱部材72を配設しているため、その溶融樹脂が容器22を伝って胴沸騰ヒータ44は勿論、胴ヒータユニット43に付着することを防止できる。この際、本実施形態の上カバー部73には、容器22との間に隙間が形成されているが、この隙間は溶融樹脂が通過不可能な寸法で設定されているため、確実に安全性を確保できる。
【0036】
なお、本発明の加熱機器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態では、胴遮熱部材72には、軸方向に沿った位置ズレを防止するための位置決め部として凹部77と凸片78を設けたが、図11に示すように、一方の側部に位置決め孔81を設け、他方の側縁に位置決め片82を突設し、該位置決め片82を位置決め孔81に挿入する構成としてもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、胴遮熱部材72は、上部の上カバー部73を一体に設けたが、図12に示すように、別部材で設けてもよい。なお、この場合には、上カバー部73は、両側縁に外方に突出する取付片を設け、ネジによって締め付けて固定することが好ましい。このようにすれば、カバー部73を取り付けた後に、胴ヒータユニット43を配設し、その後に、胴遮熱部材72の本体部分を装着することが可能であり、取付作業に関する自由度を向上できる。
【0039】
さらに、前記実施形態では、胴ヒータ44および遮熱部材72を増設する機器として電気ポットを例に挙げて説明したが、加湿器や炊飯器など、容器22に加熱手段であるヒータを取り付ける加熱機器であればいずれでも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す断面図である。
【図2】容器の底に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図3】容器の側部に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図4】容器に胴ヒータを配設した状態を示す正面図である。
【図5】図4の部分拡大底面図である。
【図6】図4の部分拡大分解斜視図である。
【図7】容器に胴遮熱部材を配設した状態を示す斜視図である。
【図8】胴遮熱部材のブランクを示す平面図である。
【図9】容器に胴遮熱部材を配設した状態を示す正面図である。
【図10】図9の底面図である。
【図11】胴遮熱部材の変形例のブランクを示す平面図である。
【図12】胴遮熱部材の他の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
10…外装体
11…胴体
12…下板
17…肩体
21…蓋体
22…容器
33…底ヒータユニット
34…底沸騰ヒータ
35…底保温ヒータ
43…胴ヒータユニット
44…胴沸騰ヒータ
54…固定金具
63…取付金具
70…底遮熱部材
72…胴遮熱部材
73…上カバー部
74…内筒部
75a,75b…切欠部
76…スリット
77…凹部(位置決め部)
78…凸片(位置決め部)
79…固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体の内部に被加熱物を収容する有底筒状の容器を配設し、該容器の底に内部の被加熱物を加熱する底ヒータを配設した加熱機器において、
前記容器の側部に胴ヒータを更に配設し、
前記容器の側部と外装体との間に、前記胴ヒータの外周部を覆う筒状をなす金属製の遮熱部材を配設するとともに、該遮熱部材に、前記胴ヒータの上方を覆う上カバー部を設けたことを特徴とする加熱機器。
【請求項2】
前記遮熱部材は、金属板を打ち抜いて形成したもので、その両側縁に軸方向に沿った位置ズレを防止するための位置決め部を設け、前記容器に対して胴ヒータの取付後に、前記容器の底側から取付可能としたことを特徴とする請求項1に記載の加熱機器。
【請求項3】
前記上カバー部は、軸方向に沿って延びる複数のスリットを備え、上方に向けて直径が漸次小さくなるように縮径した略円錐筒形状をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱機器。
【請求項4】
前記遮熱部材の上カバー部は、前記容器との間に溶融樹脂が通過不可能な隙間が形成される寸法で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の加熱機器。
【請求項5】
前記遮熱部材を、前記容器の底と外装体との間に配設する底遮熱部材に固定するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の加熱機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−279316(P2009−279316A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136593(P2008−136593)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】