説明

加熱殺菌処理済食品及びその製造方法

【課題】解決しようとする問題点は、加熱殺菌処理済食品では、レトルト等の加熱殺菌処理及び保存時において香辛料の香味が揮散し、良好な香味品質を保持できない点である。
【解決手段】流動部に油脂で焙煎処理したJIS標準篩目開きで3000μmPASS、200μmONの粒度範囲の香辛料粗砕物を0.2〜10質量%含有することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品。香辛料を油脂とともに100〜180℃に加熱処理し、ついで、油脂と分離した香辛料を粗砕して香辛料粗砕物を得て、該香辛料粗砕物を含んで加熱殺菌処理済流動状食品を製造することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱殺菌処理済食品に関し、具体的には、優れた香味を有する加熱殺菌処理済食品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌処理により保存性を付与されたレトルト食品、チルド食品等の加熱殺菌処理済食品が知られており、これらの品質を改善するための技術も種々提案されている。
特許文献1には、種子香辛料を油脂とともに80〜180℃に加熱処理し、ついで磨砕することを特徴とする、カレー用香味増強組成物の製造法が開示されている。特許文献1には、上記組成物をレトルトカレー等に配合すること、組成物の磨砕条件の一例として、JIS標準篩目開きで37〜177μmの範囲で篩過されるように磨砕することについて記載されている(段落番号0008、0025)。さらに、実施例として、キャロットシードとマスタードシードを精製牛脂とともに加熱処理して40μmで篩過されるように磨砕した組成物を、1質量部含有するレトルトカレーについて記載している(段落番号0012、0016)。
【0003】
特許文献1に記載されたカレー用香味増強組成物を用いてレトルトカレー等を製造した場合には、ある程度の香味増強作用が得られる。しかしながら、この技術でも、レトルト加熱過程及び保存時における香味の保持効果は十分とはいえない。また、ソース部分の油分が比較的低いレトルトカレー等では、油脂分に由来する香味が不足し、全体の香味を調整することが難しい。
【特許文献1】特開2000−224969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、加熱殺菌処理済食品では、レトルト等の加熱殺菌処理及び保存時において香辛料の香味が揮散し、良好な香味品質を保持できない点である。また、別の問題点は、油脂分の低い加熱殺菌処理済食品において、香味が不足し、全体の香味の調整が難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記の課題を解決するために、油脂で焙煎処理された比較的大きい特定の粒度範囲の香辛料粗砕物を、特定量含有して加熱殺菌処理済流動状食品を調製することを最も主要な特徴とする。
本発明は、流動部に油脂で焙煎処理したJIS標準篩目開きで3000μmPASS、200μmONの粒度範囲の香辛料粗砕物を0.2〜10質量%含有することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品を要旨とする。また、本発明は、香辛料粗砕物がJIS標準篩目開きで3000μmPASS、350μmONの粒度範囲のものである上記の加熱殺菌処理済食品を別の要旨とする。また、香辛料を油脂とともに100〜180℃に加熱処理し、ついで、油脂と分離した香辛料を粗砕して香辛料粗砕物を得て、該香辛料粗砕物を含んで加熱殺菌処理済流動状食品を製造することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品の製造方法を別の要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱殺菌処理済流動状食品は、レトルト等の加熱殺菌処理及び保存時において香辛料の香味が保持され、優れた香味を有するという利点がある。別の態様では、これと共に香辛料の“荒引き感”のある特有の食感を有するという利点がある。別の態様では、油脂分の低い加熱殺菌処理済食品において、良好な香味を達成することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
加熱殺菌処理済流動状食品とは、流動状食品を容器に収容して加熱殺菌処理したり、殺菌処理した流動状食品を無菌充填処理して調製した食品等である。加熱殺菌処理の条件は、レトルト加熱、チルド流通用のもの、UHT、HTST等限定されないが、特にレトルト加熱(食品衛生法に規定された加熱加圧殺菌)による場合は、加熱殺菌処理及び長期間の保存時において香辛料の香味が失われやすく、特に本発明が有用になる。
【0008】
流動状食品としては、カレー、デミグラスソース、ホワイトソース、トマトソース、シチュー、ドレッシングが挙げられる。一般には、これらの流動状食品に必要に応じて肉類、野菜類などの具材を加えて煮込み、前記の加熱殺菌処理を施す。本発明は、多様な香辛料の香味が求められるカレーに適用される場合に極めて有効な技術となる。なお、本発明において、流動状食品の「流動部」とは、流動状食品に占める具材を除いた部分、例えばソース部分を指す。
【0009】
本発明の加熱殺菌処理済流動状食品は、油脂で焙煎処理した香辛料を粗砕した香辛料粗砕物を含有して調製される。
香辛料粗砕物は、次のようにして調製することができる。
香辛料としては、ターメリック、スターアニス、カルダモン、クミン、コリアンダー、唐辛子、胡椒、メッチ、マスタード、フェンネル、ガーリック、ジンジャー、ディルシード、ナットメッグ、クローブ、シナモン、アニスシード、アジャワン、セージ、タイルスパイス、桂皮、オレガノ、タラゴン、陳皮、ローレル、シナモン、ローリエ、カレーリーフからなる群から選ばれた1以上を用いることができる。特に、カルダモン、クミン、コリアンダー、胡椒、メッチ、マスタード、クローブ、シナモン、ローリエ、カレーリーフからなる群から選ばれた1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特にカルダモン、クミン、マスタード及びメッチを組合わせて用いることができる。また、所謂カレーパウダーに用いる香辛料を、混合して用いることができる。以上の態様で香辛料を用いる場合に、本発明の香味改善効果が有効に達成される。
油脂としては、豚脂、牛脂、バター、植物油などの各種油脂があげられる。
【0010】
香辛料粗砕物は、香辛料を油脂と共に焙煎処理した後、香辛料を粗砕して調製することができる。焙煎処理に用いる香辛料としては、ホール状等の本発明で規定する粒度範囲より大きい粒度のものを用いることができる。焙煎処理した後油脂と分離した香辛料を粗砕することができる。
【0011】
焙煎処理は、例えば、質量比で香辛料1に対して油脂2〜10を用いて、香辛料及び油脂の品温が100℃〜180℃、好ましくは120℃〜170℃となる条件で行うことができる。100℃に満たない場合には、流動状食品の香味保持効果が十分に得られない傾向があり、180℃を超える場合は、流動状食品の香味品質に焦げ風味が生じる傾向がある。したがって、上記の条件範囲で焙煎処理することで、香辛料に好ましいローストした香味を付与することができる。また、香辛料の粒度が大きい場合は、食品に“荒引き感”のある特有の食感を付与し得るものに調製することができる。焙煎処理は、香辛料及び油脂の品温を、前記温度範囲に達温させて行えばよいが、前記温度範囲で1〜30分間保持して行うこともできる。
【0012】
前記のように焙煎処理をした香辛料を粗砕する。粗砕はコミトロールや各種ミル等の、粗砕時に処理物に熱がかかり難い粉砕機等を用いて行えばよく、油脂と分離して粗砕する場合は、水分等を加えて粗砕適性を確保してもよい。本発明では、このようにして得た香辛料粗砕物の内、粒度範囲がJIS標準篩目開きで3000μmPASS、200μmON、好ましくは3000μmPASS、350μmON、さらに好ましくは3000μmPASS、500μmONの粒度のものを用いる。
【0013】
香辛料粗砕物の粒度範囲が、200μmONの大きさに満たない場合には、流動状食品の香味保持効果が十分とはいえず、3000μmONを超える場合は、食品にザラつきのある食感が生じやすい。したがって、上記の粒度範囲の香辛料粗砕物を流動状食品に含有させることによって、加熱殺菌処理及び保存時において香辛料の香味が保持され、優れた香味を有する加熱殺菌処理済食品を調製することが可能となる。
香辛料粗砕物として、前記の好ましい、より大きい粒度範囲である3000μmPASS、350μmON、好ましくは3000μmPASS、500μmONの粒度のものを用いる場合には、流動状食品に、優れた香味を好適に達成し、かつ、香辛料粗砕物の食感に基づく“荒引き感”のある特有の食感を付与することができる。香辛料粗砕物に調製の際の油脂等が混入する場合等、粗砕物の粒度がわかりにくい場合には、粗砕物に湯及び/又はエタノールをかけて、油脂を除いて粗砕物の粒度を求めることができる。
なお、焙煎処理をした香辛料を、油脂と分離して粗砕することが望ましい。このようにして得た香辛料粗砕物は、これに含まれる以外の余分な油脂分を含まない状態であるため、対象の食品に応じて、該粗砕物の含有量を調整して、加熱殺菌処理済流動状食品の香味を自在に調整し得るものとなる。
【0014】
本発明では、流動部に前記のようにして得た特定の粒度範囲の香辛料粗砕物を0.2〜10%、好ましくは0.5〜5%、さらに好ましくは1〜3%含有して加熱殺菌処理済流動状食品を調製する。香辛料粗砕物の含有量が0.2%に満たない場合には、流動状食品の香味保持効果が十分とはいえず、10%を超える場合は、食品に香辛料のザラついた食感が生じやすい。したがって、流動状食品に上記の範囲で香辛料粗砕物を含有させることによって、加熱殺菌処理及び保存時において香辛料の香味が保持され、優れた香味を有する加熱殺菌処理済食品を調製することが可能となる。
また、前記の3000μmPASS、350μmON、好ましくは3000μmPASS、500μmONの大きい粒度範囲の香辛料粗砕物を、0.5〜5%、好ましくは1〜3%含有して流動状食品を調製する場合には、“荒引き感”のある香辛料が流動状食品中に分散される。つまり、大さじスプーン一杯等量(約15cc)当り、30〜750mg、好ましくは150〜450mg程度の荒引香辛料が分散して含まれる。したがって、流動状食品を口に含んで咀嚼する場合に、香辛料粗砕物の食感に基づく“荒引き感”のある特有の食感が奏される。
【0015】
なお、香辛料を水分と一緒に粗砕して粗砕物を調製した場合は、水分を除いた香辛料の質量が前記数値範囲となるように含有させる。香辛料粗砕物を調製する過程で生じる、焙煎に用いた油脂、本発明の粒度範囲から外れる香辛料の粉砕物を流動状食品に用い得ることは勿論である。粗砕して得た香辛料粗砕物は、篩別することなく流動状食品に用いてもよいが、本発明の粒度範囲のものが前記含有量となるようにする。
【0016】
ここで、本発明で優れた加熱殺菌処理済流動状食品の香味保持作用が達成される根拠としては、次のことが考えられる。すなわち、油脂で焙煎処理された比較的大きい特定の粒度範囲の香辛料粗砕物は、ローストした香味を有すると共に、内部に香辛料の精油分、及び焙煎に用いた油脂分を抱いた状態となる。このような香辛料粗砕物を、流動状食品に特定量含有することで、流動状食品の香味形成に寄与する油分として、香辛料粗砕物が抱く油分が多くの割合を占めることになる。同時に、特定粒度の香辛料粗砕物が抱く油分は、加熱殺菌処理による香味のダメージを受けにくく、殺菌後の保存中も粗砕物中で香味がキープされる。したがって、喫食時に香辛料粗砕物由来の油分が作用することで、流動状食品の優れた香味品質を達成することが可能となる。
【0017】
加熱殺菌処理済流動状食品は、流動部に油分を3〜11%、好ましくは3〜8%、さらに好ましくは3〜5%含有することが好ましい。つまり、3%に満たない場合には、本発明により香辛料粗砕物を含有させた場合でも、流動状食品の香味が弱くなる傾向があり、一方11%超える場合は、油っぽい食品になる傾向がある。同時に、流動部に香辛料粗砕物由来の油分を0.06〜0.6%、好ましくは0.1〜0.4%含有することが好ましい。
上記の範囲で油分を含有する流動状食品によれば、香辛料粗砕物由来の油分が良好に作用する効果と相まって、トータルの油分に基づく優れた香味品質が達成される。なお、前記油分の数値範囲は、特に、カレー、シチュー等に適したものである。これらの流動状食品において、前記の油分を達成する場合は、油脂と小麦粉と必要により香辛料を焙煎して調製する所謂小麦粉ルウを、2.5〜8%含有することが好ましい。なお、本発明において、油分は全てソックスレー抽出法にしたがって測定した数値を指す。
【0018】
また、流動状食品を、具材を含む全体として、油分を3〜5%含有するものとして構成することができる。このような食品は、所謂低油脂、低カロリーの食品となり、全体としては風味形成に寄与する油分が少ないにも拘らず、香辛料粗砕物由来の油分に基づいて、優れた香味品質を有するものとなる。
【0019】
香辛料粗砕物由来のもの以外の油分は、流動状食品に一般的に用いられる油脂、原料由来の油分、香味油等で構成されればよい。流動部に香辛料の精油、香辛料抽出物等である香味油(本発明で、香辛料粗砕物を調製する過程で焙煎に用いた油脂が含まれる)を、これら由来の油分が0.4〜3%となるように含有することが、流動状食品に優れた香味と、香味のバリエーションを付与する上で望ましい。
流動状食品には、肉類、野菜類などの具材の他に、香辛料、調味料等を含むことができるのは勿論である。
本発明では、以上のように、香辛料粗砕物を含有する基本態様と、流動部の油分の調整、香味油、香辛料等の使用を任意に組合わせて、流動状食品の多様な香味のバリエーションを達成できるという利点がある。
以下実施例に基づいて本発明について説明するが、これに限らず種々応用変形をなし得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
(香辛料粗砕物の調製)
加熱焙煎釜でラード20質量部を150℃に加熱し、これに香辛料としてカルダモン、クミン、マスタード及びメッチ(これら四者で10質量部)を加えて混合し、さらに原料を130℃に加熱達温させた。原料を100℃に冷却して、ラードと分離した香辛料と水10質量部の混合物を、コミトロールで粗砕した(以下、得られたものを「粗砕物ペースト」という)。
この場合に、粗砕物ペーストに湯及びエタノールをかけ、含まれる香辛料の粒度を測定したところ、ほぼ全量が、JIS標準篩目開き2000μmの篩をPASSし、目開き200μmの篩にONする粒度範囲のものであった。
【0021】
(レトルトカレーの調製)
(香辛料粗砕物の粒度が小さく、所謂低油脂、低カロリーの食品)
前記の粗砕物ペースト4質量部(水を除く、油脂で焙煎処理した香辛料粗砕物が2質量部含まれる)、ラードと小麦粉と焙煎して得た小麦粉ルウ4.5質量部、ソテーオニオン6質量部、カレーパウダー1.5質量部、水135質量部を煮込み、角切り牛肉15質量部、ニンジン12質量部、馬鈴薯25質量部を加えてレトルトパウチに密封し、レトルト加熱殺菌処理を施してレトルトカレーを調製した。
上記のレトルトカレーは、流動部(オニオン、牛肉、ニンジン、馬鈴薯を除くソース部分)に油分をトータル4%含有し、油脂で焙煎処理した香辛料粗砕物由来の油分を0.5%含有するものであった。
【0022】
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、優れた香味を有し、かつ、ソース部分は香辛料粗砕物の食感に基づく“荒引き感”のある特有の食感を有するものであった。
【0023】
(比較例1)
(香辛料粗砕物の粒度が本発明の範囲に満たない場合)
コミトロールの刃の目開きを変えて粗砕条件を変え、前記の測定方法にしたがって、ほぼ全量が、JIS標準篩目開きで40μmの篩をPASSする粒度範囲に調製した粗砕物ペーストを用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、実施例1のものと比べて、香味が弱く、全体の風味が薄すぎるものであった。
【0024】
(比較例2)
(香辛料粗砕物の粒度が本発明の範囲を超える場合)
コミトロールの刃の目開きを変えて粗砕条件を変え、前記の測定方法にしたがって、ほぼ全量が、JIS標準篩目開きで3500μmの篩にONする粒度範囲に調製した粗砕物ペーストを用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、実施例1のものと香味は同等であるが、香辛料のザラついた食感を生じたものであった。
【0025】
(比較例3)
(本発明の粒度範囲の香辛料粗砕物が、本発明の含有量に満たない場合)
粗砕物ペースト0.2質量部(水を除く、油脂で焙煎処理した香辛料粗砕物が0.1質量部含まれる)、小麦粉ルウ8質量部を用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、実施例1のものと比べて、香味が弱く、全体の風味が薄すぎるものであった。
【0026】
(比較例4)
(本発明の粒度範囲の香辛料粗砕物が、本発明の含有量を超える場合)
粗砕物ペースト24質量部(水を除く、油脂で焙煎処理した香辛料粗砕物が12質量部含まれる)、小麦粉ルウ2.5質量部、水129質量部を用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、実施例1のものと比べて、全体の香味のバランスが悪いものであった。
【0027】
(比較例5)
(香辛料粗砕物の代わりに乾燥香辛料粗砕物を用いる場合)
粗砕物ペーストの代わりに、乾燥ホールを用いて、ほぼ全量がJIS標準篩目開き2000μmの篩をPASSし、目開き200μmの篩にONする粒度範囲に粗砕されたカルダモン、クミン、マスタード及びメッチ(これら四者で2質量部)、香辛料粗砕物を調製する際に焙煎加熱の後香辛料と分離したラード2質量部、小麦粉ルウ6質量部、水131.5質量部を用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月常温で保存後の何れにおいても、実施例1のものと比べて、香味が弱く、香り立ちが不足するもので、香辛料のザラついた食感を生じたものであった。
【0028】
(実施例2)
(香味油を併用する場合)
香辛料粗砕物を調製する際に焙煎加熱の後香辛料と分離したラード2質量部、小麦粉ルウ5.4質量部を用いる以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを調製した。
上記のレトルトカレーは、流動部(オニオン、牛肉、ニンジン、馬鈴薯を除くソース部分)に油分をトータル7%含有し、油脂で焙煎処理した香辛料粗砕物由来の油分を0.25%、焙煎加熱の後香辛料と分離したラードを2%含有するものであった。
【0029】
得られたレトルトカレーは、製造直後及び12カ月間常温で保存後の何れにおいても、優れた香味を有し、かつ、ソース部分は香辛料粗砕物の食感に基づく“荒引き感”のある特有の食感を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、高品質の加熱殺菌処理により保存性を付与されたレトルト食品、チルド食品等の加熱殺菌処理済食品の製造技術として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動部に油脂で焙煎処理したJIS標準篩目開きで3000μmPASS、200μmONの粒度範囲の香辛料粗砕物を0.2〜10質量%含有することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品。
【請求項2】
香辛料粗砕物がJIS標準篩目開きで3000μmPASS、350μmONの粒度範囲のものである請求項1に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項3】
流動部に油分を3〜11質量%含有する請求項1又は2に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項4】
流動部に油分を3〜8質量%含有する請求項1又は2に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項5】
流動部に油分を3〜5質量%含有する請求項1又は2に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項6】
レトルト食品である請求項1〜5の何れか1項に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項7】
食品がカレーである請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱殺菌処理済食品。
【請求項8】
香辛料を油脂とともに100〜180℃に加熱処理し、ついで、油脂と分離した香辛料を粗砕して香辛料粗砕物を得て、該香辛料粗砕物を含んで加熱殺菌処理済流動状食品を製造することを特徴とする加熱殺菌処理済流動状食品の製造方法。

【公開番号】特開2008−295413(P2008−295413A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147452(P2007−147452)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】