説明

加熱溶融型舗装用材料

【課題】十分な滑り止め効果を保持しつつ、夜間における高い再帰反射性を備えた加熱溶融型舗装用材料を提供する。
【解決手段】滑り止め骨材により十分な滑り止め効果が確保されると共に、ガラスビーズが配合されていることで夜間における高い再帰反射性を得ることができる。更には材料中にガラスビーズが配合されていることで、舗装後の摩耗による再帰反射性の低下が抑えられ、長期に亘って高い再帰反射性を維持することができる。
【参照図】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に施される滑り止め舗装の形成に用いられる、加熱溶融型の舗装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バインダーとなる合成樹脂材料中に骨材を配合して滑り止め舗装用の材料としたものとしては、例えば特許文献1に、熱硬化性樹脂100重量部に対し平均粒径1〜150μmの粉末100〜1000重量部を配合した滑り止め材料が開示されている。
【0003】
また特許文献2において、樹脂または歴青質からなる結合材層内に、植物性粒状体を一部分は結合材層の表面に残し他の部分は結合材層の内部に埋め込んだすべり止め舗装体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−125105号公報
【特許文献2】特開平10−280308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に示される等の従来の滑り止め舗装用材料では、夜間における視認性は配合された骨材等の光輝性による再帰反射に依拠するものであり、夜間における高い再帰反射性が得られずカーブ地点といった危険箇所の注意喚起等が十分に行われない恐れがあった。
【0006】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、十分な滑り止め効果を保持しつつ、夜間における高い再帰反射性を備えた加熱溶融型舗装用材料を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる加熱溶融型舗装用材料は、熱可塑性合成樹脂からなるバインダー100重量部に対して、粒径0.5mm〜5mmの滑り止め骨材を100〜500重量部配合し、更にガラスビーズが5〜500重量部配合されていることを特徴とするものである。
【0008】
ここでバインダーとして用いられる熱可塑性合成樹脂は、石油樹脂、ロジン、アクリル樹脂等、一般の加熱溶融型舗装材料に用いられているものを用いることができる。滑り止め骨材についても、セラミック、ボーキサイト、鉱物石等の、一般の加熱溶融型舗装用材料に用いられているものを用いることができる。滑り止め骨材は、バインダー100重量部に対して配合する量が100重量部を下回ると滑り止め骨材がバインダーに埋没して十分な滑り止め効果を得ることができず、500重量部を上回ると溶融時の流動性が悪化して施工性の低下を招くこととなる。
【0009】
ガラスビーズについては、JIS R3301−1に規定される汎用のガラスビーズを用いることができるが、真球度が高く、異形混入率が低いガラスビーズを用いれば、配合するガラスビーズの量を少なくして高い再帰反射性を得ることができ好ましい。配合するガラスビーズは、バインダー100重量部に対して5重量部を下回ると十分な再帰反射性が得られなくなり、500重量部を上回ると流動性の悪化による施工性の低下を招くと共に、表面に顕在するガラスビーズの割合が大きくなりすぎ、滑り止め効果を低下させることに繋がる。
【0010】
またその他に、一般の加熱溶融型舗装材料と同様に、炭酸カルシウム等の充填材、流動性を高める可塑剤、着色を行う顔料、その他の添加剤等を、要求される用途や施工性に応じて適宜配合することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる加熱溶融型舗装用材料によれば、滑り止め骨材により十分な滑り止め効果が確保されると共に、ガラスビーズが配合されていることで夜間における高い再帰反射性を得ることができる。更には材料中にガラスビーズが配合されていることで、舗装後の摩耗による再帰反射性の低下が抑えられ、長期に亘って高い再帰反射性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係わる最良の実施の形態について、以下の実施例と比較例との比較に基づきに説明する。
【実施例】
【0013】
表1に示す材料及び重量部にて配合を行い、実施例1〜3及び比較例1〜3の加熱溶融型舗装用材料を得た。
【0014】
【表1】

【0015】
まずバインダーに用いられる合成樹脂としては、一般に石油樹脂が使用されるが、生ロジン、マレイン化ロジン、マレイン化ロジンエステル、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂等の熱可塑性樹脂が使用されてもよい。粘結樹脂の配合量は10〜20重量部が好ましい。この配合量は、10重量部以下では塗料の流動性、接着性に劣り、20重量部以上では塗膜の耐汚染性が悪くなることから10〜20重量部が好ましい。
【0016】
JISガラスビーズは、JIS R3301−1に規定され、道路用標示塗料に用いられる汎用のガラスビーズで、粒径は特に限定されるものではないが、106〜850μm程度のものが材料の流動性に悪影響を及ぼすことが少なく好適に用いることができる。大粒径真球ガラスビーズは、例えば真球度90%以上、異形混入率1%未満で、舗装用材料に散布や混入することでJISガラスビーズより高い再帰反射性を備えることができるものである。大粒径真球ガラスビーズについては粒径600〜800μm程度のものを好適に用いることができる。ガラスビーズは多量に混入することで再帰反射性は高められるが、コスト高、表面の滑り抵抗値の低下等に繋がることから、配合量の上限はバインダー100重量部に対して500重量部以下が好ましく、より好ましくは300重量部以下である。配合量の下限としては、バインダー100重量部に対して5重量部程度であるが、十分な反射輝度を得るにはJISガラスビーズを用いる際には50重量部以上配合するのが好ましい。大粒径真球ガラスビーズについては、5重量部以上、好ましくは20重量部以上である。更にまた、JISガラスビーズと大粒径真球ガラスビーズとを併用してもよい。
【0017】
着色磁器質骨材である例えばセラペブル(商品名)を好適に用いることができるが、他にも、セラミック、ボーキサイト、鉱物石等の、一般の加熱溶融型舗装用材料に用いられているものを用いることができる。滑り止め骨材は、バインダー100重量部に対して配合する量が100重量部を下回ると滑り止め骨材がバインダーに埋没して十分な滑り止め効果を得ることができず、500重量部を上回ると溶融時の流動性が悪化して施工性の低下を招くこととなる。より好適には100〜300重量部程度の範囲である。
【0018】
更に充填剤としては、炭酸カルシウム、珪砂、寒水砂、タルク等が使用される。充填剤の配合量は10〜45重量部が好ましい。この配合量は、10重量部以下では塗膜の耐汚染性や耐磨耗性に劣り、45重量部以上では塗膜の接着性の低下、クラック発生が起こることから10〜45重量部が好ましい。
【0019】
このほか添加剤として酸化防止剤や沈降防止剤のワックス、あるいは植物油、植物油変性アルキド樹脂、フタル酸エステル等の可塑剤、二酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の白色顔料、黄鉛、チタンイエロー等の黄色顔料等の顔料などを、必要に応じて適宜量配合することができる。
【0020】
上述の加熱溶融型舗装用材料の実施例及び比較例について、加熱溶融型舗装用材料を170℃にて溶融施工して形成した舗装面において、湿潤状態での滑り抵抗値の測定、塗布直後とブラスト後の反射輝度値の測定、施工時における施工性の検証、及び付着強さの測定を行う。
【0021】
湿潤状態での滑り抵抗値は、施工した舗装面を湿潤状態とさせ、ポータブルスキッドテスター(英国道路交通研究所開発。WF Stanley社製)を用いて滑り抵抗値(BPN値)の測定を行ったものである。滑り抵抗値(BPN値)については、湿潤状態でのBPN値に応じて英国道路交通研究所(Road Research Laboratory)の指針において数値に対応する状況が示されており、その状況を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
反射輝度値の測定は、舗装面が乾燥状態で、輝度計(ミロラックス7。ポッターズバロティーニ社製)を用い、入射角86.5゜、観測角1.5゜にて前方の舗装面に照射された投光器からの光が更に前方の受光器により受光されることで舗装面の輝度が測定されるようになされている。ブラスト後の反射輝度値の測定については、エアブラストマシン(PM−02型試験器。ニッチュー社製)を用いて投射角度90゜、投射圧力0.5MPa、投射距離100mmで粒状炭酸カルシウムを舗装面に投射し舗装面を0.5mmの厚さだけ削除する。その削除された部分の舗装面について、上記輝度計を用いて測定を行うものである。
【0024】
施工性の評価は、施工速度1.2km/hで厚さ2.5mm、幅15cmに施工した際に、施工時における施工機への負荷が許容範囲内であるか、かすれ等の不具合が生じないかを目視にて確認したものである。
【0025】
付着強さは、コンクリート平板上に道路標示塗料を170℃で塗布し、23℃で18時間放置後、オートグラフによりテストスピード5mm/minで引張試験を行い、剥離までの最大荷重を測定したものである。
【0026】
これらの項目について、得られた結果を表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
比較例1は汎用の加熱溶融型の白色道路標示用塗料であるが、実施例1〜3はいずれも塗布直後の反射輝度値は比較例1と同程度であり、十分な再帰反射性が得られていることが示されている。また比較例2は、一般にカーブ等にゼブラ状に舗装されて用いられる骨材混入型滑り止め舗装であるが、実施例1〜3はいずれも比較例2と大差ない滑り抵抗値を示しており、滑り止め舗装として十分な性能を発現していることが示され、またブラスト後の反射輝度値、滑り抵抗値についても著しい低下が見られず、長期に亘る使用において摩耗が生じた場合でも高い再帰反射性及び滑り止め効果を維持できることが顕わされている。また、ガラスビーズの配合による施工性の悪化や、路面への付着力の低下も見られず、通常の施工装置を用いて、施工後の剥離の恐れも小さい舗装材が得られていることが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂からなるバインダー100重量部に対して、粒径0.5mm〜5mmの滑り止め骨材を100〜500重量部配合し、更にガラスビーズが5〜500重量部配合されていることを特徴とする加熱溶融型舗装用材料。

【公開番号】特開2006−28850(P2006−28850A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208056(P2004−208056)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】