説明

加熱装置

【課題】定形・不定形の固形燃材を、乾燥させていない状態であっても直接投入して燃料として用いることが可能な加熱装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る加熱装置1は、固形燃材2を燃焼させる燃焼炉10を備え、燃焼炉10は筒状に形成され、側面もしくは上面には固形燃材2を投入する燃材投入口11が設けられ、燃焼炉10の底部には、固形燃材2を載置して燃焼させる燃焼板30が配設され、燃焼炉10の側面には、燃焼板30の上面位置よりも所定距離上方の位置に、加熱空気を燃焼炉10内に吹き込む空気吹き込み口12が設けられ、空気吹き込み口12から加熱空気を燃焼炉10内に吹き込んで、燃材投入口11から投入されて燃焼板30の上に載置された固形燃材2に加熱空気を当てると共に、固形燃材2を燃焼させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関し、さらに詳細には、固形燃材を燃料とする加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、木質系固形燃材を燃料とした加熱装置があらためて注目されている。木質系固形燃材の例として、木質ペレットがあり、これを燃料とする加熱装置の例として、暖房用のペレットストーブが実用化されている。
ここで、木質ペレットとは、間伐材あるいは製材廃材のおが屑、樹皮等を粉砕、圧縮し、成形した固形燃材であり、例えば、長さ5〜20[mm]、直径6〜12[mm]の円筒形状のものが一般的である。木質ペレットは、石炭や石油等の化石燃料と比べて、NOxやSOxを殆ど排出しない等、環境に優しいクリーンな燃料である。
【0003】
木質ペレットを用いる加熱装置(ここでは暖房装置)の例として、特許文献1に記載のペレットストーブが提案されている。当該ペレットストーブにおける燃材(木質ペレット)供給方式はスクリュ−方式と呼ばれるものであるが、この供給方式は、定形の木質ペレットの供給は可能であるが、燃材の形状・大きさのばらつきに対応することが難しく、また、不定形燃材、粉状燃材に対応できないという課題があった。
【0004】
例えば、粉状燃材の例として、コーヒー抽出粕を用いることが可能なペレットストーブが特許文献2に記載されている。しかし、当該ペレットストーブにおいても、粉状燃材をそのまま燃焼させる訳ではなく、圧縮して固形化を行った後、燃料として用いており、その点では従来の木質ペレットを用いるペレットストーブと同様といえる。
【0005】
一方、定形燃材の木質ペレット、および不定形燃材の例である薪の何れも用いることが可能なペレットストーブが特許文献3に記載されている。
しかし、当該ペレットストーブは、それらの燃材の不完全燃焼の防止、清掃の容易化を課題とする技術であって、不定形燃材の供給機構については触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−121337号公報
【特許文献2】特開2006−3032号公報
【特許文献3】特開2008−107005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のペレットストーブに例示される木質系固形燃材を燃料とした加熱装置の需要が高まりつつある背景下、成形加工により製造される木質ペレットのような定形の固形燃材以外にも、建築廃材もしくは間伐材を切断もしくは粉砕して小片化した不定形の固形燃材(木材片)、あるいは、キノコ栽培用培地、籾殻、蕎麦殻、おが屑、コーヒー抽出粕等の粉状燃材を木質ペレットに加工せずに、そのままの状態で用いることが可能な加熱装置の実現が要請されている。
【0008】
特に、おが屑、キノコ栽培用培地として使用された後の廃培地、あるいは間伐材から切断されたばかり木材片等は、含有する水分量が非常に多いために、乾燥させなければ燃料として用いることができないという課題があった。例えば、水分量80[wt%]の木材片を水分量60[wt%]まで自然乾燥させるためには、一年間程度、放置させることが必要であり、非常に利用効率が悪かった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、定形・不定形の固形燃材を、乾燥させていない状態であっても直接投入して燃料として用いることが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
開示の加熱装置は、燃料となる固形燃材を燃焼炉内で燃焼させて熱を発生させる加熱装置において、前記燃焼炉は筒状に形成され、側面もしくは上面には前記固形燃材を該燃焼炉内に投入する燃材投入口が設けられ、前記燃焼炉の底部には、前記固形燃材を載置して燃焼させる燃焼板が配設され、前記燃焼炉の側面には、前記燃焼板の上面位置よりも所定距離上方の位置に、加熱空気を該燃焼炉内に吹き込む空気吹き込み口が設けられ、前記空気吹き込み口から加熱空気を前記燃焼炉内に吹き込んで、前記燃材投入口から投入されて前記燃焼板の上に載置された前記固形燃材に該加熱空気を当てると共に、該固形燃材を燃焼させることを要件とする。
【発明の効果】
【0012】
開示の加熱装置によれば、定形・不定形の固形燃材を、乾燥させた状態はもちろんのこと、乾燥させていない状態であっても直接投入することができ、当該固形燃材を燃料として用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る加熱装置の例を示す上面図である。
【図2】図1の加熱装置の構成を示す正面断面図である。
【図3】図1の加熱装置の燃焼板および灰排出板の構成を示す斜視図である。
【図4】図1の加熱装置の灰掻き部材の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る加熱装置の例を示す上面図である。
【図6】図1の加熱装置の構成を示す正面断面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る加熱装置の例を示す上面図である。
【図8】本発明の第四の実施形態に係る加熱装置の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る加熱装置1の例を示す上面図(概略図)であり、図2は、その加熱装置1の正面断面図(概略図)である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
図1に示すように、加熱装置1は、燃料となる固形燃材2を内部で燃焼させて熱を発生させる燃焼炉10を備えている。本実施形態における燃焼炉10は円筒状に形成されているが、これに限定されるものではない。加熱装置1を構成する基本鋼材にはスチールを用いる。この加熱装置1は、固形燃材2を燃焼炉10内で燃焼させて発熱作用を得ることができるため、これを熱交換器等によって取り出して、家庭内、農業用ビニールハウス内、工場内等の暖房用の熱源として用いることができるのはもちろんのこと、温水を発生させる熱源として給湯用に用いることができ、さらに、蒸気を発生させる熱源として発電用に用いることができる等、様々な用途に供することが可能である。
【0016】
燃焼炉10の内部には、燃焼板20が配設されている。ここで、燃焼板20を下面方向から視た斜視図(概略図)を図3に示す。なお、同図3中の符号25は後述の灰排出板である。当該燃焼板20は上面に固形燃材2を載置して、燃焼させるための部材である。また、図1、2に示すように、燃焼板20は軸部材21によって回転可能に軸支されており、駆動源24の駆動力をチェーン23を介して軸部材21に連結されたスプロケット22に伝達させて、当該燃焼板20を回転駆動させる構成となっている。本実施形態における燃焼板20は、一例として直径1[m]、厚さ5[mm]程度の鉄板を用いて、回転面内における形状が円板状に形成されている。これによれば、燃焼板20を回転させながら、当該燃焼板20上で固形燃材2を燃焼させることが可能となる。また、燃焼板20には、上面と下面とを貫通する貫通孔20aが設けられており、燃焼板20上で固形燃材2を燃焼させることにより発生した灰を、当該貫通孔20aを通過させて燃焼板20の下方へ排出させる作用が得られる。
【0017】
なお、本実施形態においては、駆動源24として、燃焼炉10の外部に設けられた電気モータを用いている。ただし、電気モータに限定されるものではない。駆動源(電気モータ)24は、制御部(不図示)によって回転数が可変に制御される。これによれば、固形燃材2の水分量・投入量等に応じて回転数を適切に設定することができる。一例として、燃焼板20の回転数が1[rpm]程度に設定されている。
【0018】
また、燃焼炉10は、側面に固形燃材2を炉内に投入する燃材投入口11が設けられている。なお、燃材投入口11は燃焼炉10の上面に設ける構成とすることも考えられる(不図示)。本実施形態において、燃材投入口11は、炉内に向かって下降傾斜するように配設されており、固形燃材2は重力落下によって炉内に投入される。なお、燃焼板20を回転させながら、燃焼炉10内に固形燃材2を投入すれば、燃焼板20上における周方向に沿って均一に固形燃材2を載置することができるため、固形燃材2の偏りを防止して、安定した燃焼が可能となるという効果が得られる。もちろん、燃焼板20が回転停止した状態で、固形燃材2を燃焼炉10内に投入することも可能である。
【0019】
なお、燃材投入口11が燃焼炉10の煙突として作用してしまうことを防止するために、燃焼炉10内から燃焼炉10外へ連通して排気を行う煙突を設けておくことが好適である(不図示)。
【0020】
また、燃焼炉10の側面には、燃焼板20の上面位置よりも所定距離L1上方の位置に、加熱空気を燃焼炉内に吹き込む空気吹き込み口12が設けられている。なお、所定距離L1は、固形燃材2の形状・材質・堆積量等を考慮して適宜設定される。これによれば、燃焼板20を回転させながら、当該空気吹き込み口12から加熱空気を燃焼炉10内に吹き込んで、燃焼板20の上に載置された固形燃材2に当該加熱空気を当てることができる。その結果、高温の加熱空気(詳細は後述)によって、固形燃材2を乾燥させることができるため、水分量が多い固形燃材2を乾燥させる工程を経ずに直接、炉内に投入することが可能となる。したがって、これまでは別途乾燥工程を設ける必要があった、形成直後の木材生チップ(一例として水分量80[wt%])、おが屑、あるいはキノコ栽培用培地(廃培地)等を、乾燥させない状態のまま、直接、炉内に投入することができるため、手間もかからず、別途の乾燥工程削減によるコストダウンが可能となる。さらに、廃棄処分していた廃材(廃培地等)も燃料として利用可能となるため、廃棄処理費の削減と燃料代の削減という相乗効果を得ることが可能となる。
【0021】
本実施形態においては、空気吹き込み口12を複数個所(一例として4箇所であるが、これには限定されない)設けられており、これによって、固形燃材2に加熱空気が吹き当てられる回数・時間を長くすることができるため、固形燃材2の乾燥作用が高められる。なお、本実施形態においては、燃焼板20を回転させながら、当該空気吹き込み口12から加熱空気を燃焼炉10内に吹き込むことによって、固形燃材2を乾燥させ、同時に固形燃材2の燃焼を行っている。
【0022】
ここで、前述の加熱空気を発生させるための構成について説明する。図1、2に示すように、燃焼炉10は、側面の外側に隣接する位置に、空気を加熱する空間部である第1の空気加熱室14が設けられると共に、当該第1の空気加熱室14の外側に隣接する位置に、外部に開口する空気取入口13によって空気(外気)を導入して予備加熱する空間部である第2の空気加熱室15が設けられている。なお、第2の空気加熱室15は、燃焼炉10の側面の外側に隣接する位置に設ける構成とすることも考えられる(不図示)。また、第2の空気加熱室15と第1の空気加熱室14との間には空気配管16を介して連通するようにブロアー17が連結されている。当該ブロアー17の送風作用によって、第2の空気加熱室15で予備加熱された空気が吸引されて第1の空気加熱室14へ送出される。さらに、当該第1の空気加熱室14で加熱された空気(加熱空気)が、当該第1の空気加熱室14から空気吹き込み口12を通って燃焼炉10内へ吹き込まれる。
上記構成によれば、燃焼炉10内で固形燃材2を燃焼させることによって発生した熱を利用して、高温の加熱空気を発生させることが可能となる。例えば、燃焼炉10内の燃焼温度が600[℃]程度となっている場合、当該燃焼炉10の側面に隣接する第1の空気加熱室14内の室内温度が400〜500[℃]程度となり、当該第1の空気加熱室14に隣接する第2の空気加熱室15内の室内温度が200〜300[℃]程度となる。したがって、空気取入口13から取り入れた空気(外気)を、先ず第2の空気加熱室15に導入することによって、200〜300[℃]程度まで予備加熱された加熱空気を得ることができ、次いで当該加熱空気を第1の空気加熱室14に導入することによって、最終的に400〜500[℃]程度の高温に加熱された状態の加熱空気を得ることができる。このように、二層構造の第1の空気加熱室14および第2の空気加熱室15を備えることによって、高温の加熱空気を発生させることができるため、当該加熱空気を吹き当てることで前述の固形燃材2の乾燥作用を高めることが可能となる。発生熱を効果的に利用することが可能となるだけでなく、燃焼炉10で発生した熱の放熱を遮熱するという相乗効果も得られる。
【0023】
また、図1、2に示すように、燃焼炉10の底面には、灰を排出する灰排出口18が設けられている。なお、灰排出口18は、燃焼炉10の側面に設ける構成とすることも考えられる(不図示)。
【0024】
また、燃焼炉の内部には、回転可能で且つ回転方向と直交する面内において所定の幅と高さを有する板状の灰排出板25が、燃焼板20よりも下方の位置で、底面上に所定の隙間L2を設けて配設されている。
本実施形態における灰排出板25は、図1〜3に示すように、四枚の長方形の板が十字状に配設されて燃焼板20の下面に連結された構成を備えている。当該灰排出板25は、駆動源24によって軸部材21が回転駆動されることによって、燃焼板20と共に回転する。なお、変形例として、非連結構造とすることにより、燃焼板20と灰排出板25とを、別々に回転駆動する構成も考えられる(不図示)。
さらに、燃焼炉10内が600[℃]程度まで上昇した際に、厚さ5[mm]程度の燃焼板20は熱変形によって大きく歪もうとするが、灰排出板25が連結される構造によって、当該灰排出板25が強度部材として作用して熱変形が防止でき、燃焼板20を平面状に維持することが可能となる。
【0025】
上記構成によれば、燃焼板20の貫通孔20aを通過して落下して燃焼炉10の底面上に堆積した灰を、回転駆動される灰排出板25が周方向に押し集めて、灰排出口18から落下させて燃焼炉10外へ排出させる作用が得られる。したがって、固形燃材2の燃焼によって発生した灰を、灰排出板25の回転に伴って自動的に灰排出口18から排出することが可能となる。人手等によって灰を掻き集める作業が不要となるため、加熱装置1のメンテナンス作業が非常に容易となる。
なお、前述の所定の隙間L2は、燃焼炉10の底面の変形量・灰の堆積量等を考慮して適宜設定されるものであるが、当該隙間L2が設けられる構成によって、燃焼炉10の底面上に一定量の灰を意図的に残すことが可能となり、燃焼炉10内の温度低下を防ぎ、高温環境に維持することが可能となる。
【0026】
また、図2に示すように、燃焼炉10の内部には、燃焼板20上の灰を貫通孔20aへ誘導する灰掻き部材26が設けられている。本実施形態における灰掻き部材26は、複数個設けられ、内壁に固定された支持棒27によって可動(少なくとも燃焼板20の回転方向に沿ってブランコ状に揺動可能)に支持されている。隣接する灰掻き部材26間が所定距離L3で離間するように配設されている。なお、灰掻き部材26は、図2中では三個で例示してあるが、これに限定されるものではない。ここで、図4に灰掻き部材の斜視図(部分拡大図)を示す。図4中の白抜矢印は灰掻き部材26の揺動方向を表している。
灰掻き部材26間が所定距離L3で離間する構成によって、当該離間部分に固形燃材2を集めて火力を高めることができる。また、燃焼板20上に一定量の灰を意図的に残すことが可能となり、燃焼炉10内の温度低下を防ぎ、高温環境に維持することが可能となる。
【0027】
上記構成によれば、燃焼板20の上面に対して所定拒理L4で離間して配設される灰掻き部材26の間を、灰が通過する際に、当該灰掻き部材26に灰が接触して、ならされると共に、貫通孔20a内へ誘導される作用が生じる。したがって、固形燃材2の燃焼によって発生した灰を、燃焼板20の回転に伴って自動的に貫通孔20aから排出することが可能となる。人手等によって灰を掻き集める作業が不要となるため、加熱装置1のメンテナンス作業が非常に容易となる。
【0028】
なお、着火時、および固形燃材2を使い果たした時のために、燃焼炉10(例えば、点検口19内)には、石油もしくはガスを燃焼させるバーナー(不図示)を設けておくことが好適である。また、当該バーナーを固形燃材2の燃焼中にも併用して燃焼補助を行えば、燃焼をより安定化させる作用が生じ得る。
【0029】
また、例えば、燃焼炉10の上部に熱交換器(不図示)および送風機(不図示)を設ける構成とすれば、温風を発生させて農業の促成栽培のハウス内の加温に利用することが可能となる。あるいは、燃焼炉10の上部にボイラー(不図示)を設ける構成とすれば、温水もしくは水蒸気を発生させて給湯、暖房、発電等に利用することが可能となる。
【0030】
続いて、図1、2を参照して、上記構成を備える加熱装置1を用いて固形燃材2を燃焼させる動作について説明する。なお、図中における実線矢印は空気の流通方向を示し、破線矢印は燃焼板20の回転方向を示す。
【0031】
先ず、駆動源24によって燃焼板20を回転させながら、燃材投入口11から燃焼炉10内に固形燃材2を投入する。
【0032】
次いで、バーナー(不図示)によって、固形燃材2に点火をする。これによって、固形燃材2の燃焼が開始する。点火時および点火直後は、乾燥された燃え易い固形燃材を使用することが好適である。
【0033】
点火直後は、暫く、バーナーによって補助燃焼を行う。本実施形態では、燃焼炉10内の温度を検知する温度センサ(不図示)を設けて、炉内が所定温度(一例として400[℃])になった時点でバーナーの燃焼を停止させ、同時にブロアー17を起動させることとしている。
【0034】
次いで、燃焼板20を回転させながら、当該燃焼板20の上に載置された固形燃材2に対して、空気吹き込み口12から加熱空気を吹き当てる。これによって、固形燃材2の乾燥を行うことが可能となる。このとき、空気吹き込み口12の設置数が多いほど、回転移動が行われる固形燃材2への加熱空気の吹き当て回数が増加することとなり、より乾燥が促進される効果が得られる。なお、燃焼が安定してくると、燃焼炉10内の温度が上昇するため、前述のように高温の加熱空気が得られるようになる。
【0035】
次いで、燃焼が安定するにつれて、水分量の多い未乾燥の固形燃材2(例えば、木材生チップ、廃培地等)を燃焼炉10内に投入して、燃焼させることができる。
【0036】
このように、燃焼炉10内で燃焼が行われている間、発生する熱を熱交換器等(不図示)を用いて取り出して、利用することが可能となる。
【0037】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の第二の実施形態に係る加熱装置1について説明する。第二の実施形態に係る加熱装置1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、特に、燃材移動板35(詳細は後述)を備える点、燃焼板30が固定式である点等において相違する。以下、図面を参照して、本実施形態について当該相違点を中心に詳しく説明する。
ここで、図5は、本実施形態に係る加熱装置1の例を示す上面図(概略図)であり、図6は、その加熱装置1の正面断面図(概略図)である。
【0038】
本実施形態に係る加熱装置1における燃焼板30は、図5,6に示すように、燃焼炉10の底部に固定されて設けられている。当該燃焼板30は、耐熱性材料を用いて形成されている。当該耐熱性材料の例としては、耐熱コンクリート、セラミック、耐熱合金等が考えられる。
【0039】
また、燃焼炉10の内部には、燃焼板30の上面と平行な面内方向に回転可能で且つ回転方向と直交する面内において所定の幅と高さを有する板状の燃材移動板35が、燃焼板30の上面に対して所定の隙間L5を設けて配設されている。
本実施形態における燃材移動板35は、前述の灰排出板25(図3参照)と同様の形状、すなわち、四枚の長方形の板が十字状に配設された構成を備えており、図5、6に示すように、軸部材31によって回転可能に軸支されて、スプロケット32およびチェーン33を介して駆動源34によって回転駆動される。なお。前記同様に駆動源34は一例として電気モータであって、制御部(不図示)によって回転数が可変に制御され、固形燃材2の水分量・投入量等に応じて回転数が適切に設定される。
【0040】
また、図5に示すように、空気吹き込み口12が燃焼板30の上面位置よりも所定距離L1上方の位置に設けられている。なお、所定距離L1は、固形燃材2の形状・材質・堆積量等を考慮して適宜設定される。
ここで、所定距離L1すなわち空気吹き込み口12の配設位置を上下に移動可能な構造、具体的にはスライドプレートに当該空気吹き込み口12を設けて当該スライドプレートを上下にスライドさせる構造とすることが考えられる(不図示)。さらに、スライドプレートを二枚重ねてそれぞれにスライド可能な構造(不図示)とすれば、空気吹き込み口12の形状(開口の大きさ)を可変にすることが可能となる。このようにして、より一層、広範な種類の固形燃材2を燃料として用いることができる。
【0041】
上記構成によれば、駆動源34によって燃材移動板35を回転させて、固形燃材2を燃焼板30上で移動させながら、当該固形燃材2に空気吹き込み口12からの加熱空気を吹き当てることができると共に、当該固形燃材2を燃焼させることができる。
したがって、前述の第一の実施形態と同様の効果、特に、高温の加熱空気によって、固形燃材2を乾燥させることができるため、水分量が多い固形燃材2を乾燥させる工程を経ずに直接、炉内に投入して燃焼させることができる効果が得られる。
【0042】
なお、燃焼板30と燃材移動板35との間に所定隙間L5が設けられる構成によって、燃焼板30上に一定量の灰を意図的に残すことが可能となり、燃焼炉10内の温度低下を防ぎ、高温環境に維持することが可能となる。
【0043】
ここで、燃焼板30には、上面と下面とを貫通する貫通孔30aが設けられている。したがって、燃材移動板35を回転させる動作によって、固形燃材2の燃焼で燃焼板30上に生じた灰を、燃材移動板35上で移動させて当該貫通孔30aを通過させて燃焼板30の下方へ排出させる作用が得られ、さらに当該貫通孔30aに連通して設けられる燃焼炉10底面の灰排出口18から外方へ排出させる作用が得られる。
【0044】
続いて、図5、6を参照して、上記構成を備える加熱装置1を用いて固形燃材2を燃焼させる動作について説明する。ただし、基本的な動作および作用・効果は、前述の第一の実施形態と同様であるため説明を省略する場合がある。なお、図中における実線矢印は空気の流通方向を示し、一点差線矢印は燃材移動板35の回転方向を示す。
【0045】
先ず、駆動源34によって燃材移動板35を回転させながら、燃材投入口11から燃焼炉10内に固形燃材2を投入する。
【0046】
次いで、バーナー(不図示)によって、固形燃材2に点火をする。これによって、固形燃材2の燃焼が開始する。点火時および点火直後は、乾燥された燃え易い固形燃材を使用することが好適である。
【0047】
点火直後は、暫く、バーナーによって補助燃焼を行う。本実施形態では、燃焼炉10内の温度を検知する温度センサ(不図示)を設けて、炉内が所定温度(一例として400[℃])になった時点でバーナーの燃焼を停止させ、同時にブロアー17を起動させることとしている。
【0048】
次いで、燃材移動板35を回転させることによって、燃材投入口11から投入された固形燃材2を燃焼板30上において当該回転方向に移動させながら、当該固形燃材2に対して空気吹き込み口12から加熱空気を吹き当てる。これによって、固形燃材2の乾燥を行うことが可能となる。このとき、空気吹き込み口12の設置数が多いほど、回転方向に移動が行われる固形燃材2への加熱空気の吹き当て回数が増加することとなり、より乾燥が促進される効果が得られる。なお、燃焼が安定してくると、燃焼炉10内の温度が上昇するため、前述のように高温の加熱空気が得られるようになる。
【0049】
次いで、燃焼が安定するにつれて、水分量の多い未乾燥の固形燃材2(例えば、木材生チップ、廃培地等)を燃焼炉10内に投入して、燃焼させることができる。
【0050】
このように、燃焼炉10内で燃焼が行われている間、発生する熱を熱交換器等(不図示)を用いて取り出して、利用することが可能となる。
【0051】
(第三の実施形態)
続いて、本発明の第三の実施形態に係る加熱装置1について説明する。第三の実施形態に係る加熱装置1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、特に、加熱空気を発生させる空気加熱室の構成において相違する。以下、図面を参照して、本実施形態について当該相違点を中心に詳しく説明する。
ここで、図7は、本実施形態に係る加熱装置1の例を示す上面図(概略図)である。
【0052】
本実施形態に係る加熱装置1において、加熱空気を発生させるための構成について説明する。図7に示すように、燃焼炉10は、側面の外側に隣接する位置に、空気を加熱して前述の加熱空気を発生させる空間部である空気加熱室が燃焼炉10の径方向に多重に且つ隣接する空間部同士が連通して設けられている。本実施形態においては、一例として、燃焼炉10の外側に第1の空気加熱室14、さらにその外周(径方向外側)に第2の空気加熱室15を備えた二重構造としているが、これに限定されるものではなく、さらにその外周(径方向外側)に適宜、第3、第4、・・・の空気加熱室を設ける構成としても良い。
【0053】
同図7に示すように、最内周の空気加熱室(ここでは、第1の空気加熱室14)は、空気吹き込み口12を介して燃焼炉10に連通している。また、隣接する空気加熱室同士すなわち第1の空気加熱室14と第2の空気加熱室15とは連通孔(ここでは、連通孔14a)を介して連通している。さらに、最外周の空気加熱室(ここでは、第2の空気加熱室15)には、ブロアー17が空気配管16を介して連結されている。
【0054】
上記ブロアー17を動作させることによって、外部に開口する空気取入口13から空気(外気)が取り込まれる。取り込まれた空気はブロアー17によって最外周の空気加熱室(ここでは、第2の空気加熱室15)から最内周の空気加熱室(ここでは、第1の空気加熱室14)に向けて送出される。このとき、例えば、燃焼炉10内の燃焼温度が600[℃]程度となっている場合、当該燃焼炉10の側面に隣接する第1の空気加熱室14内の室内温度が400〜500[℃]程度となっており、当該第1の空気加熱室14に隣接する第2の空気加熱室15内の室内温度が200〜300[℃]程度となっている。したがって、最外周の空気加熱室(ここでは、第2の空気加熱室15)から最内周の空気加熱室(ここでは、第1の空気加熱室14)に向けて送出される空気は段階的に加熱されることとなり、最終的に、最内周の空気加熱室(ここでは、第1の空気加熱室14)において所定の温度まで加熱され、前述の加熱空気として空気吹き込み口12から燃焼炉内10へ吹き込まれることとなる。
なお、二重よりも多重の空気加熱室を設ける構成(不図示)とすれば、加熱空気の高温化、風量増等に対応させることが可能となる。
【0055】
上記構成によれば、前述の実施形態と同様に、燃焼炉10内で固形燃材2を燃焼させることによって発生した熱を利用して、高温の加熱空気を発生させることが可能となる。
一方、前述の実施形態と相違して、ブロアー17に直接、低温の外気を取り込む構成とすることによって、ブロアー17が高温の空気を取り込むことによって生じる熱害の課題や、耐熱ブロアーとして高温に対応可能な規格品が無いといった課題を解決することが可能となる。
【0056】
(第四の実施形態)
続いて、本発明の第四の実施形態に係る加熱装置1について説明する。ここで、図8は、本実施形態に係る加熱装置1の例を示す上面図(概略図)である。
第四の実施形態に係る加熱装置1は、前述の第二の実施形態に対して第三の実施形態における加熱空気発生構造を適用した構成であり、それぞれの構成については前述の通りであるため、繰り返しの説明を省略する。
【0057】
本実施形態によれば、前述の第三の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、燃焼炉10内で固形燃材2を燃焼させることによって発生した熱を利用して、高温の加熱空気を発生させることが可能となる。
また、ブロアー17に直接、低温の外気を取り込む構成とすることによって、ブロアー17が高温の空気を取り込むことによって生じる熱害、あるいは耐熱ブロアーとして高温に対応可能な規格品が無いといった課題を解決することが可能となる。
【0058】
以上説明した通り、開示の加熱装置によれば、定形・不定形の固形燃材を、乾燥させた状態はもちろんのこと、乾燥させていない状態であっても直接投入することができ、当該固形燃材を燃料として用いることが可能となる。
【0059】
特に、前記固形燃材として、建築廃材もしくは間伐材を切断もしくは粉砕して小片化した不定形の木材片、生ゴミを除く可燃ゴミ、キノコ栽培用培地、籾殻、蕎麦殻、おが屑、もしくはコーヒー抽出粕、またはそれらの混合物を利用することが可能となる。上記の通り、乾燥工程を省略することができるため、設備・人件費の両面において大幅なコストダウンが可能となる。
【0060】
前記粉状物は、これまで、焼却ゴミとして焼却廃棄が行われており、あるいは、木質ペレット等の定形燃材とするための乾燥、圧縮成形加工が行われた後、固形燃材として用いられていたものであった。これに対し、本実施の形態に係る加熱装置においては、それらの粉状物を、加工せずにそのままの状態で固形燃材の一部として燃焼させることが可能となる。すなわち、廃棄対象物を燃料として使用できる点で画期的である。一方、燃料化が可能であった粉状物に対しても、乾燥工程、圧縮成形工程が不要となり、加工コストが大幅に削減できる。
【0061】
さらに、上記固形燃材に重油、機械油、食用油等を3〜5[wt%]混合すれば、燃焼効率をより一層、向上させることも可能である。
【0062】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 加熱装置
2 固形燃材
10 燃焼炉
11 燃材投入口
12 空気吹き込み口
13 空気取入口
14 第1の空気加熱室
15 第2の空気加熱室
17 ブロアー
18 灰排出口
20 燃焼板
21 軸部材
24 駆動源
25 灰排出板
26 灰掻き部材
30 燃焼板
34 駆動源
35 燃材移動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料となる固形燃材を燃焼炉内で燃焼させて熱を発生させる加熱装置において、
前記燃焼炉は筒状に形成され、側面もしくは上面には前記固形燃材を該燃焼炉内に投入する燃材投入口が設けられ、
前記燃焼炉の底部には、前記固形燃材を載置して燃焼させる燃焼板が配設され、
前記燃焼炉の側面には、前記燃焼板の上面位置よりも所定距離上方の位置に、加熱空気を該燃焼炉内に吹き込む空気吹き込み口が設けられ、
前記空気吹き込み口から加熱空気を前記燃焼炉内に吹き込んで、前記燃材投入口から投入されて前記燃焼板の上に載置された前記固形燃材に該加熱空気を当てると共に、該固形燃材を燃焼させること
を特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記燃焼炉は、側面の外側に隣接する位置に、空気を加熱して前記加熱空気を発生させる空間部である空気加熱室が該燃焼炉の径方向に多重に且つ隣接する空間部同士が連通して設けられ、
最内周の前記空気加熱室は、前記空気吹き込み口を介して前記燃焼炉に連通し、
最外周の前記空気加熱室に連通して、外部から導入した空気を送り込むブロアーが設けられ、
前記ブロアーによって、外部から導入した空気が最外周の前記空気加熱室から最内周の前記空気加熱室に向けて段階的に加熱されながら送出され、前記加熱空気として前記空気吹き込み口から前記燃焼炉内へ吹き込まれること
を特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記燃焼板は、耐熱性材料を用いて形成され、前記燃焼炉の底部に固定されており、
前記燃焼炉の内部には、前記燃焼板の上面と平行な面内方向に回転可能で且つ回転方向と直交する面内において所定の幅と高さを有する板状の燃材移動板が、前記燃焼板上に所定の隙間を設けて配設され、
前記燃焼炉の外部に設けられた駆動源によって前記燃材移動板を回転させて、前記固形燃材を前記燃焼板上で移動させながら前記加熱空気を当てると共に燃焼させること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記燃焼板には、上面から下面へ貫通する貫通孔が設けられ、
前記燃焼炉の底面には、灰を排出する灰排出口が前記貫通孔に連通して設けられていること
を特徴とする請求項3記載の加熱装置。
【請求項5】
前記燃焼板は、前記燃焼炉の底面と平行な面内方向に回転可能で且つ回転面内における形状が円板状に形成され、
前記燃焼炉の外部に設けられた駆動源によって前記燃焼板を回転させながら、該燃焼板の上に載置された前記固形燃材に前記加熱空気を当てると共に燃焼させること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の加熱装置。
【請求項6】
前記燃焼板には、上面から下面へ貫通する貫通孔が設けられ、
前記燃焼炉の内部には、揺動可能に支持されて、前記燃焼板上の灰を前記貫通孔へ誘導する灰掻き部材が設けられていること
を特徴とする請求項5記載の加熱装置。
【請求項7】
前記灰掻き部材は、複数個設けられ、隣接する該灰掻き部材間が所定距離で離間するように配設されていること
を特徴とする請求項6記載の加熱装置。
【請求項8】
前記燃焼炉の底面もしくは側面には、灰を排出する灰排出口が設けられ、
前記燃焼炉の内部には、該燃焼炉の底面と平行な面内方向に回転可能で且つ回転方向と直交する面内において所定の幅と高さを有する板状の灰排出板が、前記燃焼板よりも下方の位置で、該底面上に所定の隙間を設けて配設され、
前記灰排出板は、前記駆動源によって回転駆動されること
を特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の加熱装置。
【請求項9】
前記灰排出板は、前記燃焼板の下面に連結されていること
を特徴とする請求項8記載の加熱装置。
【請求項10】
前記燃焼炉は、石油もしくはガスを燃焼させて前記固形燃材の点火もしくは燃焼補助を行うバーナーを備えること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の加熱装置。
【請求項11】
前記固形燃材は、建築廃材もしくは間伐材を切断もしくは粉砕して小片化した不定形の木材片、生ゴミを除く可燃ゴミ、キノコ栽培用培地、籾殻、蕎麦殻、おが屑、もしくはコーヒー抽出粕、またはそれらの混合物であること
を特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225530(P2012−225530A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91070(P2011−91070)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(507174134)有限会社ナリタ (3)
【Fターム(参考)】