説明

加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器

【課題】加熱調理器において調理物の内部に水分や旨みが十分に残るようにすること。
【解決手段】調理皿2上に載せた調理物3を収容する調理室1と、調理室に調理物を出し入れする扉12と、調理物の上面を加熱する上面加熱手段4と、調理皿を加熱する調理皿加熱手段5とを備えた加熱調理器9において、調理皿が第1の到達時間から調理終了までは第1の到達温度を維持するように制御することで、調理物の下面は調理皿が第1の到達時間までは上昇を続けて、調理物の表面だけが急速に焼け始め、調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り内部に含まれる水分や旨み成分の蒸発を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な食材等の調理物の加熱調理を最適に行うための手段を有した加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は調理物を上下のヒータからの輻射熱で加熱調理する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の加熱調理器を示すものである。図8に示すように、従来の加熱調理器は調理室21内の上側に設けられた上ヒータ22と、調理室21内の下側に設けられた下ヒータ23と、上ヒータ22及び下ヒータ23の間に設けられた加熱調理容器24の容器支持部25と、加熱調理の対象となる食品26を収容し、容器支持部25に載置される透明耐熱ガラス製の加熱調理容器24とを備え、上ヒータ22及び下ヒータ23に通電することにより、加熱調理容器24内の食品26を上下からの輻射熱で加熱調理するように構成されている。また加熱調理容器24は、容器本体と蓋部からなり、蓋部に開口部27が形成されている。
【特許文献1】特開2003−210334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、通常の調理時間で調理を行うためには調理開始から調理終了まで、上面加熱手段と下面加熱手段は制御を行わずに連続で入力するため、調理途中で調理物からの油が下面加熱手段に滴下したときに発火し、さらに受け皿温度が高くなるため受け皿に溜まった油に着火し調理物を焦がすという課題を有していた。
【0005】
また、上面加熱手段と下面加熱手段を制御して調理を行う方法もあるが、最適な制御を行っていないため調理時間が長くなり、調理物からの水分と油の減少が多く、調理物が乾燥気味になるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るように調理することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
調理物の下面を加熱する調理皿加熱手段が調理皿の下に存在することによって、調理物の下面を加熱する調理皿加熱手段に調理物からの油が滴下することは無い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、調理皿上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする開閉扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理皿を加熱する調理皿加熱手段と、前記調理室の上部の一部または前記開閉扉を除く側部の一部に設けた排気口と、前記排気口から調理室の外部に向かう排気通路とを備えた加熱調理器であって、前記調理皿が調理開始から第1の到達時間までに第1の到達温度に到達するように、前記調理皿加熱手段は調理開始から第2の到達時間まで第2の到達温度に到達し維持する制御を行い、前記上面加熱手段は調理開始から第3の到達時間まで第3の到達温度に到達する制御を行い、前記調理皿が前記第1の到達時間から調理終了までは前記第1の到達温度を維持するように前記調理皿加熱手段と前記上面加熱手段を制御したものである。
【0008】
これによって、調理皿上に載せた調理物の上面は上面加熱手段により調理開始から調理
終了まで均一に加熱することができる。一方、調理物の下面は調理皿加熱手段によって、調理皿が第1の到達時間まで上昇を続けて初期の調理が行われるので、調理物の表面だけが急速に焼け始め、調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り、内部に含まれる水分や旨み成分の蒸発を抑制することができる。
【0009】
次に、第1の到達時間から調理終了までは調理皿加熱手段の入力を停止または断続的に入力することにより、調理皿の温度を一定に保つことで調理物の温度上昇は緩やかになり、調理物の表面から内部に徐々に熱が浸透しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器は、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るように調理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、調理皿上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする開閉扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理皿を加熱する調理皿加熱手段と、前記調理室の上部の一部または前記開閉扉を除く側部の一部に設けた排気口と、前記排気口から調理室の外部に向かう排気通路とを備えた加熱調理器であって、前記調理皿が調理開始から第1の到達時間まで第1の到達温度に到達するように、前記調理皿加熱手段は調理開始から第2の到達時間まで第2の到達温度に到達し維持する制御を行い、前記上面加熱手段は調理開始から第3の到達時間まで第3の到達温度に到達する制御を行い、前記調理皿が前記第1の到達時間から調理終了までは前記第1の到達温度を維持するように前記調理皿加熱手段と前記上面加熱手段を制御した加熱調理器とすることにより、調理皿上に載せた調理物の上面は上面加熱手段により調理開始から調理終了まで均一に加熱することができる。
【0012】
また、調理物の下面は調理皿加熱手段によって調理皿が第1の到達時間までは上昇を続けて初期の調理が行われ、調理物の表面だけが急速に焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り、内部に含まれる水分や旨み成分の蒸発を抑制することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の第1の到達温度が250℃以下とすることにより、第1の到達温度になる第1の到達時間まで初期の調理が行われ、調理物の表面だけが一層焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り内部に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。また調理皿の温度が250℃以下で制御されるため、調理皿に防汚処理を行った場合でも、防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の第1の到達温度が200℃以上250℃以下とすることにより、第1の到達温度になる第1の到達時間まで初期の調理が行われ、調理物の表面だけが一層焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り内部に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。また、調理皿の温度が250℃以下で制御されるため、調理皿に防汚処理を行った場合でも防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の第2の到達温度が600℃以下とすることにより、第2の到達温度になり維持する制御を行うことで、調理皿に置かれた調理物は、表面だけが一層焼け始め、調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り、内部に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。
【0016】
また、調理皿加熱手段の温度が600℃以下で制御されるため、短時間の調理においては、調理皿に防汚処理を行った場合でも防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の第2の到達温度が500℃以上700℃以下とすることにより、第2の到達温度になり維持する制御を行うことで、調理皿に置かれた調理物は、表面だけが一層焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り、内部に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。
【0018】
また、調理皿加熱手段の温度が700℃以下で制御されるため、短時間の調理においては、調理皿に防汚処理を行った場合でも、防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0019】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の第1の到達時間が8分以下とすることにより、第1の到達温度になる第1の到達時間まで初期の調理が行われ、調理皿の温度が8分以下で第1の到達温度になるように制御されるため、調理物の表面だけが一層焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り内部に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。
【0020】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の第3の到達温度を600℃以下とすることにより、上面加熱手段を600℃以下で制御されるため、調理物の表面から内部に徐々に熱が浸透しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るようにすることができる。
【0021】
また、上面加熱手段の温度が600℃以下で制御されるため、調理皿に防汚処理を行った場合でも防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0022】
第8の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の第3の到達温度を500℃以上700℃以下とした加熱調理器とすることにより、上面加熱手段を500℃以上700℃以下として制御することにより、調理物の表面から内部に徐々に熱が浸透しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るようにすることができる。
【0023】
また、上面加熱手段の温度が700℃以下で制御されるため、調理皿に防汚処理を行った場合でも防汚処理が熱によって劣化することが無いため、調理物が調理皿に焦げつくことを無くすことができる。
【0024】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明の加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器とすることにより、調理皿上に載せた調理物の上面は、上面加熱手段により調理開始から調理終了まで均一に加熱することができる。
【0025】
一方、調理物の下面は調理皿加熱手段によって、調理皿が第1の到達時間までは上昇を続けて初期の調理が行われ、調理物の表面だけが急速に焼け始め、調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り、内部に含まれる水分や旨み成分の蒸発を抑制することができる。
【0026】
また、第1の到達時間から調理終了までは調理皿加熱手段の入力を停止または断続的に入力することにより、調理皿の温度を一定に保つことで調理物の温度上昇は緩やかになり
、調理物の表面から内部に徐々に熱が浸透しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残すことができる加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器とすることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器の構成図を示すものである。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器の調理皿、上面加熱手段、調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフである。
【0030】
図1において、加熱調理器9は、調理皿2上に載せた調理物3を収容する調理室1内に、調理物3の上面を加熱する上面加熱手段4と、調理皿2を加熱する調理皿加熱手段5を設けた構成としている。また、調理皿2を加熱する調理皿加熱手段5と、調理室1の上部の一部または開閉扉12を除く側部の一部に設けた排気口10と、排気口10から調理室1の外部に向かう排気通路11とを構成している。
【0031】
本実施の形態1では、調理室1内の庫内温度検知手段6、及び調理皿2の温度を検知する調理皿温度検知手段7、及び調理室1の底面温度を検知する底温度検知手段8は、Kタイプの熱電対をセラミックスなどの絶縁材で電気的に絶縁されたものを、ステンレスなどの金属により被覆したものを用いた。
【0032】
上面加熱手段4及び調理皿加熱手段5は、庫内温度検知手段6及び調理皿温度検知手段7及び底温度検知手段8で計測された温度にしたがって、図示しない制御手段の調理工程プログラムによって制御される。
【0033】
図2において、本発明の加熱調理器9における調理皿2、上面加熱手段4、調理皿加熱手段5の調理経過時間における温度変化を示したもので、調理皿2は調理開始点Sから第1の到達時間t1まで第1の到達温度T1になり、第1の到達時間t1から調理終了点Eまで第1の到達温度T1を保持するように上面加熱手段4と調理皿加熱手段5を制御する。
【0034】
調理皿加熱手段5は、調理開始点Sから第2の到達時間t2まで第2の到達温度T2になり、第2の到達時間t2から第1の到達時間t1まで第2の到達温度T2を保持するように制御し、第1の到達時間t1から調理終了点Eまで調理皿2が第1の到達温度T1を保持するように制御する。
【0035】
上面加熱手段4は調理開始点Sから第3の到達時間t3まで第3の到達温度T3になり、第3の到達時間t3から調理終了点Eまで調理皿2が第1の到達温度T1を保持するように制御する。
【0036】
なお、本実施の形態では第1の到達時間t1から調理終了点Eまで調理皿加熱手段5は入力を停止しているが、調理皿2が第1の到達温度T1を保持するように制御してもかまわない。
【0037】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0038】
まず、加熱調理器9で調理を行う際、使用者が取手を引き出すと、それと連動して調理皿2が調理室1からスライドして引き出される。そこで調理皿2に魚等の調理物3を載せ、取手を押し、スライドさせて調理室1内に収納する。その後、図示しない操作部を操作することにより、調理物3を加熱する調理工程が開始する。
【0039】
調理工程が開始すると、図示しない制御手段が上面加熱手段4と調理皿加熱手段5に通電する工程が行われる。
【0040】
この工程では、調理室1内の空気温度と調理皿2は加熱時間に応じて高くなり、調理物3が加熱され始める。また底面の温度も加熱時間に応じて高くなる。そして、調理皿加熱手段5の温度が第2の到達温度T2になる第2の到達時間t2になると、制御手段は調理皿加熱手段5の温度がT2を維持するように制御する。
【0041】
次に調理皿2の温度が第1の到達温度T1になると、制御手段は調理皿加熱手段5を調理皿2の温度がT1となるように制御し、上面加熱手段4はまだ通電し続け調理室1内の空気温度は上昇を続けるため、調理物3はさらに加熱される。
【0042】
この段階では調理物3から油煙等が発生しはじめ、調理皿2に油等が付着し始める。そして、上面加熱手段4の温度が第3の到達温度T3になる第3の到達時間t3になると、制御手段は上面加熱手段4の温度がT3を維持するように制御する。
【0043】
次に、制御手段は上面加熱手段4と調理皿加熱手段5を調理皿2の温度が、T1となるように制御し、調理物3は一定の温度で加熱される。この段階ではすでに調理物3は一定の温度で加熱されており、調理室1の壁面には油煙等が付着するが、調理皿2の温度はT1で一定に保たれているため油煙が大量に発生することはない。
【0044】
調理工程の時間が調理終了点Eになるまで、調理工程が行われると、制御手段は上面加熱手段4及び調理皿加熱手段5への通電を終了し、調理工程を終了する。そして、使用者は、取手を調理室1から引き出すことにより、加熱調理された調理物3を取り出すことができる。
【0045】
なお、調理工程の経過時間は制御手段に接続された図示しないタイマーでカウントするものである。
【0046】
(実験1)
本実施の形態の加熱調理器として、図1の加熱調理器を用いた。本実施の形態の加熱調理器1A(実験1の条件に設定)は、調理皿の温度を制御して第1の到達温度が220℃〜250℃となるように、上面加熱手段と調理皿加熱手段としてシーズヒータを用いた。
【0047】
比較として上面加熱手段と下面加熱手段を有する従来の加熱調理器1Bを用いた。従来の加熱調理器1Bの構成は図8と同様である。
【0048】
加熱調理器1A、1Bについて以下の手段を用いて評価を行った。加熱調理器の調理室に秋刀魚4匹を入れ、それぞれの加熱調理器で同じ調理性能となるように秋刀魚の焼き具合を調整して調理時間を決めた。調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、調理皿の温度と調理皿加熱手段の温度と下面加熱手段の温度と受け皿の温度を測定し、また調理開始前後の秋刀魚の重量を測定し、4匹の重量減少率の平均を求めた。
【0049】
測定の結果を図3、図4に示す。図3は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器1Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を
示すグラフである。
図4は、従来の加熱調理器1Bの下面加熱手段と受け皿の温度変化を示すグラフである。
【0050】
本実施の形態の加熱調理器1Aでは秋刀魚の重量減少率(図示せず)は23.4%で、従来の加熱調理器1Bでは秋刀魚の重量減少率は32.9%で、明らかに本実施の形態の加熱調理器1Aの方が、従来の加熱調理器1Bよりも重量減少率が低く、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残っていることがわかる。
【0051】
また、図3から明らかなように、本実施の形態の加熱調理器1Aは18分で調理が終了するが、調理皿の温度は魚の油の発火点よりも低いため調理皿から着火することは無い。一方、図4から明らかなように、従来の加熱調理器1Bは20分で調理が終了するが、調理中盤以降受け皿に溜まった油に着火し調理物が焦げた。
【0052】
これにより、本発明の加熱調理器は、調理皿温度の最適な制御を行うことにより、従来の加熱調理器よりも調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るよう調理され、また、調理皿に溜まる油に着火することも無いため、調理初期から終了まで調理物を焦がすことがなく調理できることがわかる。
【0053】
(実験2)
本実施の形態の加熱調理器として、図1の加熱調理器を用いた。本発明の加熱調理器2A(実験2の条件に設定)は調理皿の温度を制御して第1の到達温度が220℃〜250℃となるように、調理皿加熱手段の制御として第2の到達温度が580℃〜600℃となるように、上面加熱手段と調理皿加熱手段としてシーズヒータを用いた。
【0054】
加熱調理器2Aについて以下の手段を用いて評価を行った。加熱調理器の調理室に秋刀魚4匹を入れ、実験1と同じ調理性能となるように秋刀魚の焼き具合を調整して調理時間を決めた。
【0055】
調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、調理皿の温度と調理皿加熱手段の温度を測定し、また調理開始前後の秋刀魚の重量を測定し、4匹の重量減少率の平均を求めた。測定の結果を図5に示す。図5は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器2Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフである。
【0056】
本実施の形態の加熱調理器2Aでは秋刀魚の重量減少率(図示せず)は25.1%で、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残っていることがわかる。また図5から明らかなように、本発明の加熱調理器1Aは18分で調理が終了するが、調理皿の温度は魚の油の発火点よりも低いため調理皿から着火することは無い。
【0057】
これにより本発明の加熱調理器は、調理皿温度の最適な制御を行うことにより、従来の加熱調理器よりも調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るよう調理され、調理皿に溜まる油に着火することも無いため、調理初期から終了まで調理物を焦がすことがなく調理できることがわかる。
【0058】
(実験3)
本実施の形態の加熱調理器として、図1の加熱調理器を用いた。本実施の形態の加熱調理器3A(実験3の条件に設定)は調理皿の温度を制御して第1の到達時間が8分以下で、第1の到達温度が220℃〜250℃となるように、調理皿加熱手段の制御として第2の到達温度が580℃〜600℃となるように、上面加熱手段と調理皿加熱手段としてシーズヒータを用いた。
【0059】
加熱調理器3Aについて以下の手段を用いて評価を行った。加熱調理器の調理室に秋刀魚4匹を入れ、実験1と同じ調理性能となるように秋刀魚の焼き具合を調整して調理時間を決めた。調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、調理皿の温度と調理皿加熱手段の温度を測定し、また調理開始前後の秋刀魚の重量を測定し、4匹の重量減少率の平均を求めた。測定の結果を図6に示す。図6は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器3Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフである。
【0060】
本実施の形態の加熱調理器3Aでは秋刀魚の重量減少率(図示せず)は22.6%で、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残っていることがわかる。
【0061】
また図6から明らかなように、本実施の形態の加熱調理器1Aは18分で調理が終了するが、調理皿の温度は魚の油の発火点よりも低いため調理皿から着火することは無い。これにより本実施の形態の加熱調理器は、調理皿温度の最適な制御を行うことにより、従来の加熱調理器よりも調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るよう調理され、調理皿に溜まる油に着火することも無いため、調理初期から終了まで調理物を焦がすことがなく調理できることがわかる。
【0062】
(実験4)
本実施の形態の加熱調理器として、図1の加熱調理器を用いた。本実施の形態の加熱調理器4A(実験3の条件に設定)は、調理皿の温度を制御して第1の到達時間が10分以下で、第1の到達温度が220℃〜250℃となるように、調理皿加熱手段の制御として第2の到達温度が580℃〜600℃となるように、上面加熱手段の制御として第3の到達温度が580℃〜600℃となるように、上面加熱手段と調理皿加熱手段としてシーズヒータを用いた。
【0063】
加熱調理器4Aについて以下の手段を用いて評価を行った。加熱調理器の調理室に秋刀魚4匹を入れ、実験1と同じ調理性能となるように秋刀魚の焼き具合を調整して調理時間を決めた。調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、調理皿の温度と調理皿加熱手段の温度と上面加熱手段の温度を測定し、また調理開始前後の秋刀魚の重量を測定し、4匹の重量減少率の平均を求めた。
測定の結果を図7に示す。図7は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器4Aの調理皿と調理皿加熱手段と上面加熱手段の温度変化を示すグラフである。
【0064】
本実施の形態の加熱調理器4Aでは秋刀魚の重量減少率(図示せず)は21.8%で、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残っていることがわかる。また図7から明らかなように、本実施の形態の加熱調理器1Aは18分で調理が終了するが、調理皿の温度は魚の油の発火点よりも低いため調理皿から着火することは無い。
【0065】
以上のように、本実施の形態においては調理皿温度の最適な制御を行うことにより、従来の加熱調理器よりも調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るよう調理され、調理皿に溜まる油に着火することも無くなり、調理初期から終了まで調理物を焦がすこともなく調理することができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態においては、調理皿上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする開閉扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理皿を加熱する調理皿加熱手段とを備え、前記調理皿が調理開始から第1の到達時間まで第1の到達温度に到達するように、前記調理皿加熱手段は調理開始から第2
の到達時間まで第2の到達温度に到達し維持する制御を行い、前記上面加熱手段は調理開始から第3の到達時間まで第3の到達温度に到達する制御を行い、前記調理皿が前記第1の到達時間から調理終了までは前記第1の到達温度を維持するように前記調理皿加熱手段と前記上面加熱手段を制御した加熱調理器とすることにより、調理皿上に載せた調理物の上面は上面加熱手段により調理開始から調理終了まで均一に加熱することができる。
【0067】
また、調理物の下面は調理皿加熱手段によって調理皿が第1の到達時間までは上昇を続けて初期の調理が行われ、調理物の表面だけが急速に焼け始め調理物を構成する蛋白質成分が調理物の表面で薄い膜を作り内部に含まれる水分や旨み成分の蒸発を抑制することができる。
【0068】
また、第1の到達時間から調理終了までは調理皿加熱手段の入力を停止または断続的に入力することにより、調理皿の温度を一定に保つことで、調理物の温度上昇は緩やかになり、調理物の表面から内部に徐々に熱が浸透しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るようにすることができる。
【0069】
また、下面加熱手段は皿を加熱する手段であれば電磁誘導加熱を利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器は、調理皿加熱手段と上面加熱手段が調理開始から調理終了まで最適な制御により、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油が十分に残るように調理することができるので、特に一般家庭用調理器、大型の調理器などに有効である
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器の構成を示す構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器の調理皿、上面加熱手段、調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフ
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器1Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフ
【図4】従来の加熱調理器1Bの下面加熱手段と受け皿の温度変化を示すグラフ
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器2Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器3Aの調理皿と調理皿加熱手段の温度変化を示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態1における加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器の加熱調理器4Aの調理皿と調理皿加熱手段と上面加熱手段の温度変化を示すグラフ
【図8】従来の加熱調理器の構成図
【符号の説明】
【0072】
1 調理室
2 調理皿
3 調理物
4 上面加熱手段
5 調理皿加熱手段
6 庫内温度検知手段
7 調理皿温度検知手段
8 底温度検知手段
9 加熱調理器
10 排気口
11 排気通路
12 開閉扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理皿上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする開閉扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理皿を加熱する調理皿加熱手段と、前記調理室の上部の一部または前記開閉扉を除く側部の一部に設けた排気口と、前記排気口から調理室の外部に向かう排気通路とを備えた加熱調理器であって、前記調理皿が調理開始から第1の到達時間まで第1の到達温度に到達するように、前記調理皿加熱手段は調理開始から第2の到達時間まで第2の到達温度に到達し維持する制御を行い、前記上面加熱手段は調理開始から第3の到達時間まで第3の到達温度に到達する制御を行い、前記調理皿が前記第1の到達時間から調理終了までは前記第1の到達温度を維持するように前記調理皿加熱手段と前記上面加熱手段を制御するとした加熱調理器。
【請求項2】
第1の到達温度は250℃以下とした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
第1の到達温度は200℃以上250℃以下とした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
第2の到達温度は600℃以下とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
第2の到達温度は500℃以上700℃以下とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
第1の到達時間は8分以下とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
第3の到達温度は600℃以下とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
第3の到達温度は500℃以上700℃以下とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−223466(P2010−223466A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69489(P2009−69489)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】