説明

加熱調理器および電磁誘導加熱式調理器

【課題】加熱調理器において調理室側面に付着する油煙等のお手入れを向上すること。
【解決手段】親水性処理を施した機能性側面体及び機能性底面体は調理室内側から外へ取り外すことができる構成をとっている。調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が調理室内側に置かれた機能性側面体や機能性底面体に付着するが、調理室内側から機能性側面体や機能性底面体を取外し効果的にまた親水性処理を施しているため水に浸すだけで簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体と機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を清潔な状態で継続して利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な食材等の調理物の加熱調理を最適に行い、調理後のお手入れを手軽に簡単に行うための手段を有した加熱調理器、およびそれを搭載した電磁誘導加熱式調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は調理室の側面等の調理室内壁面にフッ素コートを塗布し、調理物から発生する油等の付着物を簡単に除去するという手段が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に示された従来の加熱調理器は、フッ素材料系微粒子を共析させた複合メッキ被膜を備えた調理器具用部材およびその様な調理器具用部材を使用するもので、非粘着性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性などに優れ、また、手入れが容易であるため、長時間の使用後にも、初期の優れた特性を維持し得る被膜を備えるために、調理器具において特に汚れの激しい天板、コンロ汁受け皿、焼き網などの部材上にフッ素化合物微粒子を分散含有する複合メッキ被膜を形成させている。つまり、平均粒径2μm以下のフッ素化合物微粒子を分散含有する複合メッキ被膜を備えた調理器としている。
【0004】
また、特許文献2に示された従来の加熱調理器は、加熱調理器内面のステンレス素材に透明非粘着コーティングを施し、透明非粘着コーティングに使用するコーティング剤が、紫外線硬化性樹脂およびフッ素系表面改質剤とからなり、紫外線硬化樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびシリコーン樹脂のなかから選ばれた少なくとも1種以上の紫外線硬化性樹脂であり、フッ素系表面改質剤が、エポキシ変性シリコーン、アクリル変性シリコーンおよび有機・無機シリコーン樹脂のなかから選ばれた少なくとも1種以上からなり、フロロアルキル基およびフロロアクリル基のなかから選ばれた少なくとも1種以上のフッ化アルキル基を有するフッ素系表面改質剤からなる加熱調理器としている。
【0005】
また、この種の加熱調理器として調理室の上面や側面等の調理室内壁面に遠赤外線放射材を塗布し、調理物に遠赤外線を放射するという手段も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
図3は、特許文献3に記載された従来の加熱調理器を示すものである。図3に示すように、従来の加熱調理器は食材を内部に配置するための加熱室と、食材を加熱するためのシーズヒータ31が取り付けられており、32は遠赤外線を放射する遠赤外線放射板で、シーズヒータ31の背面側つまり調理室の上面に取り付けられている。シーズヒータ31は通電されることにより熱せられ、近くに設置された遠赤外線放射板32を加熱する。加熱された遠赤外線放射板32はその表面から遠赤外線を放射し、食材を加熱する。
【特許文献1】特開平7−23862号公報
【特許文献2】特開2001−78894号公報
【特許文献3】特開昭62−131490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、調理室の側面等の調理室内壁面にフッ素系塗料が塗布されているだけであり、初期の壁面が汚染されていない状態であれば利用する上で問題は起こらないが、調理器を使用することによって調理物から発生する油煙等が壁面に付着することにより、フッ素系塗料が油煙等で覆われるため機器の使用とともに壁面が汚染
されたときにお手入れをするために、調理室内壁面に付着した油煙等を取り除くために壁面を拭取れば良いが、調理物を加熱するための加熱手段等が存在しており作業性が極めて悪く、付着物を取り除くことが困難であるという課題を有していた。
【0008】
さらに特許文献3に記載されているような構成であれば、調理室の上面や側面等の調理室内壁面に遠赤外線放射材が塗布されているだけであり、初期の壁面が汚染されていない状態であれば遠赤外線を効率よく放射することができるが、調理器を使用することによって調理物から発生する油煙等が壁面に付着することにより、遠赤外線放射材が油煙等で覆われるため機器の使用とともに遠赤外線の放射量が低下するという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、親水性処理を施した機能性側面体や機能性底面体を調理室外へ取り外すことができる。調理器を使用することによって調理物から発生する油煙等が機能性側面体や機能性底面体に付着するが、調理室からそれらを取外し水に浸すことで効果的に洗浄することができる。洗浄後の機能性側面体や機能性底面体を調理室に戻すことで、防汚性能を維持することができ、調理室内部を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器を提供することを目的とする。また、調理室内側の天面に遠赤外線放射材を担持することによって、調理物の上から遠赤外線の効果を得ることができる、さらに遠赤外線の放射材として触媒作用を有する材料を含有することで、調理室内側の天面に付着した油煙等を分解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、受け皿を備えた焼き網上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理物の下面を前記焼き網の下から加熱する下面加熱手段と、前記調理室内側の側面に親水性処理を施した機能性側面体と、前記調理室内側の底面に親水性処理を施した機能性底面体とを備え、前記機能性側面体及び前記機能性底面体は調理室外へ取り外すことを可能としたものである。
【0011】
これによって、親水性処理を施した機能性側面体や機能性底面体を調理室内部から外へ取り外すことができる。調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が調理室の側面や底面に置かれた機能性側面体や機能性底面体に付着するが、調理室内側から機能性側面体や機能性底面体を取外し水に浸すことで効果的にまた簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体や機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理器または電磁誘導加熱式調理器は、上面加熱手段と下面加熱手段からの輻射熱によって調理物を加熱する構成をとっており、調理室内側の側面に親水性処理を施した機能性側面体と、調理室内側の底面に親水性処理を施した機能性底面体とを備えることによって、調理室内のお手入れ性を向上することができる。また機能性側面体と機能性底面体は調理室外へ取り外すことが可能な構成とすることで、調理室内側から機能性側面体と機能性底面体を取外し水に浸すことで、親水性処理を施した機能性側面体と機能性底面体の表面に付着した油煙汚れは、親水性処理をした表面と油煙汚れの間に水が入り込むため、容易に表面から効果的に落とすことができる。機能性側面体と機能性底面体を調理室内に設置すれば、初期の清潔な状態であればお手入れをする必要もないが、調理器を使用することによって調理物から発生する油煙等が機能性側面体や機能性底面体に付着することにより、調理器内部の側面や底面が油煙等で覆われ、機器の使用とともに調理室内部が汚染される。そこで、調理室から機能性側面体や機能性底面体を取外して洗浄することで、付着した油煙等を洗い落とし調理室内側に戻すことにより、初期と同様に調理室内を清潔な状態で利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、受け皿を備えた焼き網上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理物の下面を前記焼き網の下から加熱する下面加熱手段と、前記調理室内側の側面に親水性処理を施した機能性側面体と、前記調理室内側の底面に親水性処理を施した機能性底面体とを備え、前記機能性側面体及び前記機能性底面体は調理室外へ取り外すことを可能とした加熱調理器とすることにより、親水性処理を施した機能性側面体と機能性底面体を調理室内側から外へ取り外すことができる。調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が調理室内側の側面に置かれた機能性側面体や、調理室内側の底面に置かれた機能性底面体に付着するが、調理室内側から機能性側面体と機能性底面体を取り外して水に浸すことで効果的にまた簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体と機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の受け皿が少なくとも内面に防汚処理を施した加熱調理器とすることにより、調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が受け皿の内面に付着するが、受け皿の内面に防汚処理を施していることで効果的にまた簡単に洗浄することができ、初期だけでなく受け皿を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の調理室が内側の天面に遠赤外線放射材を担持した加熱調理器とすることにより、天面の遠赤外線放射材が上面加熱手段からの熱を吸収し調理物に向けて遠赤外線を放射することができる。遠赤外線の効果を受けた調理物は油煙等の発生量が多く、調理器を使用する毎に調理室内側の側面に置かれた機能性側面体に一層付着するが、調理室内側から機能性側面体を取り外すことで効果的にまた簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第3の発明の遠赤外線放射材をマンガンとクロムと銅の少なくとも1種の酸化物を主成分とする組成とした加熱調理器とすることにより、上面加熱手段からの熱を天面の遠赤外線放射材が吸収し、調理物に向けて一層効率良く遠赤外線を放射することができ、さらに遠赤外線の放射材として触媒作用を有する材料を含有しているため、調理室内側の天面に付着した油煙等を分解することができるので、調理物に遠赤外線の効果が一層得られる加熱調理器とすることができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第3の発明の遠赤外線放射材を少なくともマンガンとクロムと銅の複合酸化物を主成分とする組成とした加熱調理器とすることにより、上面加熱手段からの熱を天面の遠赤外線放射材が吸収し、調理物に向けて一層効率良く遠赤外線を放射することができ、さらに遠赤外線の放射材として触媒作用を有する材料を含有しているため、調理室内側の天面に付着した油煙等を分解することができるので、調理物に遠赤外線の効果が一層得られる加熱調理器とすることができる。
【0018】
第6の発明は、特に、第3〜5の発明の遠赤外線放射材を少なくとも白金またはパラジウムを含有する組成とした加熱調理器とすることにより、上面加熱手段からの熱を天面の遠赤外線放射材が吸収し、調理物に向けて一層効率良く遠赤外線を放射することができ、さらに遠赤外線の放射材として触媒作用を有する材料を含有しているため、調理室内側の天面に付着した油煙等を分解することができるので、調理物に遠赤外線の効果が一層得られる加熱調理器とすることができる。
【0019】
第7の発明は、特に、第3〜6のいずれか1つの発明の遠赤外線放射材が琺瑯処理をした加熱調理器とすることにより、天面の遠赤外線放射材が上面加熱手段からの熱を吸収し調理物に向けて遠赤外線を放射することができる。さらに調理器を使用することによって調理物から発生する油煙等が遠赤外線放射材に付着することにより、遠赤外線放射材が油煙等で覆われ、機器の使用とともに遠赤外線の放射量が低下するが、琺瑯処理を行っていれば遠赤外線放射材を傷つけることなく洗浄することで油煙等を除去することができる。洗浄後の遠赤外線放射材を使用すれば初期だけでなく調理物に遠赤外線の効果が継続して得られる加熱調理器とすることができる。
【0020】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の機能性側面体及び機能性底面体を基材と、前記基材に親水性材料を担持する構成とした加熱調理器とすることにより、調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が調理室内側の側面に置かれた機能性側面体や、調理室内側の底面に置かれた機能性底面体に付着するが、一層効果的にまた簡単に洗浄することができる。さらに洗浄後の機能性側面体と機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を一層清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0021】
第9の発明は、特に、第8の発明の基材をステンレス、アルミニウム鋼板の中から選ばれた1種類とした加熱調理器とすることにより、機能性側面体及び機能性底面体が油煙等で覆われ、機器の使用とともに汚染されるが、基材が前記基材であれば機能性側面体及び機能性底面体を傷つけることなく洗浄することで油煙等を除去することができる。さらに洗浄後の機能性側面体と機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を一層清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0022】
第10の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の機能性側面体及び機能性底面体を琺瑯処理した基材と、前記琺瑯処理した基材に親水性材料を担持する構成とした加熱調理器とすることにより、調理器を使用する毎に調理物から発生する油煙等が調理室内側の側面に置かれた機能性側面体や、調理室内側の底面に置かれた機能性底面体に付着するが、一層効果的にまた簡単に洗浄することができる。さらに洗浄後の機能性側面体と機能性底面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を一層清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器とすることができる。
【0023】
第11の発明は、特に、第1〜10のいずれか1つの発明の加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器とすることにより、天面の遠赤外線放射材が上面加熱手段からの熱を吸収し調理物に向けて遠赤外線を放射することができる。遠赤外線の効果を受けた調理物は油煙等の発生量が多く、調理器を使用する毎に調理室内側の側面に置かれた機能性側面体に一層付着するが、調理室内側から機能性側面体を取り外すことで効果的にまた簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体を調理室内側に戻すことで、初期だけでなく調理室内を清潔な状態で継続して利用できる加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器とすることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の構成図を示すものである。
【0026】
図1において、本発明の加熱調理器11は、受け皿7を備えた焼き網2上に載せた調理物3を収容する調理室1内に、調理物3の上面を加熱する上面加熱手段4と、下面を加熱する下面加熱手段5と、調理室1の側面に調理室1の外へ取り外すことが可能な機能性側
面体6を設け、調理室1の底面に調理室1の外へ取り外すことが可能な機能性底面体10を設けた構成としている。本実施の形態1では、調理室1内の温度検知手段8及び調理室1の底面温度を検知する底温度検知手段9は、Kタイプの熱伝対をセラミックスなどの絶縁材で電気的に絶縁されたものを、ステンレスなどの金属により被覆したものを用いた。上面加熱手段4及び下面加熱手段5は温度検知手段8及び底温度検知手段9で計測された温度にしたがって図示しない制御手段の調理工程プログラムによって制御される。
【0027】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
まず、加熱調理器で調理を行う際、使用者が取っ手を引き出すと、それと連動して焼き網2、受け皿7が調理室1からスライドして引き出される。そこで焼き網2に魚等の調理物3を載せ、取っ手を押し、スライドさせて調理室1内に収納する。その後、図示しない操作部を操作することにより、調理物3を加熱する第1調理工程が開始する。第1調理工程が開始すると、図示しない制御手段が上面加熱手段4と下面加熱手段5に通電する工程が行われる。この工程では、調理室1内の空気温度は加熱時間に応じて高くなり、調理物3が加熱され始める。また底面の温度も加熱時間に応じて高くなる。そして、底面の温度が上限温度Taになると、第2調理工程が開始する。この工程では、制御手段は下面加熱手段5を底面の温度がTaとなるように制御し、上面加熱手段4は通電し続ける。調理室1内の空気温度は上昇を続けるため、調理物3はさらに加熱される。この段階では調理物3から油煙等が発生しはじめ、調理室1の側面に置かれた機能性側面体6に油煙等が付着し始める。そして、調理室1内の温度が上限温度Tbになると、第3調理工程が開始する。この工程では、制御手段は上面加熱手段4と下面加熱手段5を調理室1内の温度が、Tbとなるように制御するとともに、下面加熱手段5を底面の温度がTaとなるように制御し、調理物3は一定の温度で加熱される。この段階ではすでに調理物3から大量の油煙が発生しており、調理室1の側面に置かれた機能性側面体6には油煙等が大量に付着し、さらに調理室1の底面に置かれた機能性底面体10にも油煙等が付着する。また調理室1内の温度も高いため、付着した油煙等がこびりつく部分もできる。
【0029】
調理工程の時間が所定時間t1になるまで、調理工程が行われると、制御手段は上面加熱手段4及び下面加熱手段5への通電を終了し、調理工程を終了する。そして、使用者は、取っ手を調理室1から引き出すことにより、加熱調理された調理物3を取り出すことができる。
【0030】
なお、調理工程の経過時間は制御手段に接続された図示しないタイマーでカウントするものである。
【0031】
このように本実施の形態1によれば、調理物3を調理する工程において、調理物3から発生する油煙等が必ず調理室1内の側面に置かれた機能性側面体6や、調理室1内の底面に置かれた機能性底面体10に付着するものであり、高温のため油煙等がこびりつく部分も存在するが、機能性側面体6や機能性底面体10は調理室1外へ取り外すことができる。よって油煙等が付着した機能性側面体6や機能性底面体10は使用者が効果的にまた簡単に洗浄することができ、洗浄後の機能性側面体6を調理室1の内側に戻すことで、調理室内を清潔な状態で継続して利用することができる。
【0032】
また、機能性側面体6や機能性底面体10は200℃以上になってくると、油煙等の付着物が表面にこびりついて洗浄が難しくなってくるが、このとき表面に親水性処理を施しているため、油煙等の付着物がこびりついた部分を水に浸すことによって水が親水性処理面に拡がり、親水性処理面と付着物との間に水が入り込む。入り込んだ水は親水性処理面と付着物との結合を切断するため、油煙等の付着物がこびりついた機能性側面体6や機能性底面体10は簡単に洗浄することができる。
【0033】
また、機能性側面体6や機能性底面体10の表面温度が250℃以上になってくると、油煙等がこびりついた部分には食塩等の腐食性化合物も付着するが、このとき基材として、ステンレスやアルミニウム鋼板のような耐食性が高い基材や、琺瑯処理をした基材を用いれば、腐食性の化合物が付着した場合でも基材の腐食を抑制することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の構成図を示すものである。
【0035】
図2において、本発明の加熱調理器21は、調理室1の内側の天面に遠赤外線放射材22を担持した構成としており、それ以外は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0036】
本実施の形態2によれば、調理物3を調理する工程において、上面加熱手段2は調理物3を加熱すると同時に、遠赤外線放射材22も加熱し調理物3に向けて遠赤外線を放射する。遠赤外線を受けた調理物3は表面の調理性能が早くなり、また遠赤外線は調理物3の内部にまで浸透するので、上面加熱手段4と下面加熱手段5からの輻射熱と合わせて調理される。
【0037】
また、加熱調理器の調理室に実際に秋刀魚4匹を入れ、調理開始から秋刀魚表面に適切な焼色が着くまでの調理時間を天面に遠赤外線放射材が有る場合と無い場合で測定を行った。秋刀魚の表面に焼色が着く指標として、秋刀魚表面の色彩を測定し、L値を求めた。L値とは焼色の指標として用いられる値であり、調理を行っていない生の秋刀魚であればL値は70、炭であればL値は20である。秋刀魚の焼色として適切な値としてL値は30〜40であれば良く、本実施の形態2では秋刀魚表面のL値が30〜40になるまでの調理時間を求めた結果、遠赤外線放射材が有る場合は13.8分で、無い場合は18分であった。このことから、天面に遠赤外線放射材を担持した場合は秋刀魚表面に焼色の着くまでの時間が短いことがわかる。
【0038】
また、遠赤外線放射材は繰り返し使用するとともに、表面に油煙等が付着して遠赤外線の放射量が少なくなってくるが、このとき遠赤外線放射材として油煙分解機能を有するマンガンやクロムや銅の酸化物、あるいはそれらの複合酸化物を用いた場合は、油煙等の付着を抑制することができ、繰り返し調理を行ったときも秋刀魚表面に焼色の着くまでの時間を短くすることができる。
【0039】
さらに遠赤外線放射材の中に油煙分解機能を有する白金やパラジウムを含有することで、一層油煙等の付着を抑制することができ、繰り返し調理を行ったときも秋刀魚表面に焼色の着くまでの時間を短くすることができる。
【0040】
なお、本実施の形態の加熱調理器を電磁誘導加熱式調理器に搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、特に調理器の方式に関係なく適用することができ、また大型の調理器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成を示す構成図
【図3】従来の加熱調理器の構成を示す構成図
【符号の説明】
【0043】
1 調理室
2 焼き網
3 調理物
4 上面加熱手段
5 下面加熱手段
6 機能性側面体
7 受け皿
8 温度検知手段
9 底温度検知手段
10 機能性底面体
11、21 加熱調理器
22 遠赤外線放射材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け皿を備えた焼き網上に載せた調理物を収容する調理室と、前記調理室に調理物を出し入れする扉と、前記調理物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記調理物の下面を前記焼き網の下から加熱する下面加熱手段と、前記調理室内側の側面に親水性処理を施した機能性側面体と、前記調理室内側の底面に親水性処理を施した機能性底面体とを備え、前記機能性側面体及び前記機能性底面体は調理室外へ取り外すことを可能とした加熱調理器。
【請求項2】
受け皿は少なくとも内面に親水性処理を施した請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
調理室は前記調理室内側の天面に遠赤外線放射材を担持した請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
遠赤外線放射材はマンガンとクロムと銅の少なくとも1種の酸化物を主成分とする組成とした請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
遠赤外線放射材は少なくともマンガンとクロムと銅の複合酸化物を主成分とする組成とした請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項6】
遠赤外線放射材は少なくとも白金またはパラジウムを含有する組成とした請求項3〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
遠赤外線放射材は琺瑯処理をした請求項3〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
機能性側面体及び機能性底面体は基材と、前記基材に親水性材料を担持する構成とした請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
基材はステンレス、アルミニウム鋼板の中から選ばれた1種類とした請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
機能性側面体及び機能性底面体は琺瑯処理をした基材と、前記琺瑯処理をした基材に親水性材料を担持する構成とした請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の加熱調理器を搭載した電磁誘導加熱式調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−63526(P2010−63526A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230793(P2008−230793)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】