説明

加熱調理器

【課題】
調理庫内の受皿の水あり、水なし等の状況を判断して上、下発熱体の出力をある一定時間後から補正することにより、調理物の仕上がりを均一に保つことができるようにする。
【解決手段】
調理庫3内に調理物4を加熱する上、下発熱体5、6と、調理庫3内の温度を検出する温度検知手段A2と、調理物4を載せる焼網7と、焼網7を載置し、調理庫4から着脱可能な受皿8と、受皿8の温度を検出する温度検知手段B9と、調理庫3と外気を連絡する排気通路10と、温度検知手段A2、B9の検出温度により上、下発熱体5、6の出力を制御する制御回路15を備えた加熱調理器において、加熱調理の開始から一定時間経過後、前記温度検知手段A2、B9の検出温度と予め設定した基準温度とを比較し、制御回路15により上、下発熱体5、6の出力を補正するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の調理物を調理庫内に入れてヒータ等の発熱体により加熱調理するグリルやオーブン等の加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加熱調理器においては、受皿内に焼網を載置し、その焼網上に魚等の調理物を載せ、それらを調理庫内に収納して調理庫内の上下に設けた上、下ヒータにより加熱して調理物を焼き上げるのが一般的であった。
【0003】
このような加熱調理器においては、調理中に魚等の調理物から出る油が受皿に溜まり、調理庫内の温度が上昇すると臭気を発生したり、発煙や引火する恐れがあるため、それらを防ぐ目的で、受皿に水を張ることが行われている。
【0004】
しかし、近年では、受皿に水を張ることの煩わしさや、受皿に水を張ったり、受皿を出し入れする際に周囲に水をこぼしてしまう等の問題があることから、特許文献1及び特許文献2に示すように、調理庫の外側にモータと、このモータの駆動によって回転するファンを設け、受皿の下にファンに連なる冷却通路を形成し、モータの駆動によってファンから冷却通路に外気を流通させて受皿の温度が油の引火温度まで上がらないようにするとともに、調理庫の上部又は上面に設けた排気出口に空気浄化用触媒を設け、これによって受皿に水を張らなくとも調理できるようにするとともに、調理中に発生する煙や臭気をこの空気浄化用触媒により浄化することが行われている。
【0005】
また一方、使用者は、受皿の水の有無にかかわらず、調理後の受皿の清掃を容易にするため、市販のアルミ箔などを焼網と受皿の間に設置して調理したり、受皿に遠赤外線効果や調理物から滴下する水分や油分などを吸収し、発火等を防止する天然石などを主成分とするグリル石などを敷詰めて調理する場合があった。
【0006】
【特許文献1】特開平9−164080号公報
【特許文献2】特開平8−107828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の加熱調理器において、受皿に水を入れることを前提としたものでは、発火などの危険性はないが、受皿の移動時に水をこぼす恐れがあるとともに、万が一、水を入れないで使用された場合は発火する等の問題がある。
【0008】
また、受皿に水を入れないことを前提としたものでは、今まで水を入れる習慣が付いていたなどの理由で誤って水を入れて調理した場合、受皿の水分が蒸発することで、調理庫内の温度が上がりにくく、調理物の仕上がりが悪くなるなどの問題がある。
【0009】
さらに、通常、取扱説明書などで禁止されているアルミ箔やグリル石などを調理庫内に設置した場合においても、調理庫内の温度が変化し、調理物の仕上がりが均一化せず、焼け過ぎる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、請求項1では、調理庫内に調理物を加熱する上、下発熱体と、調理庫内の温度を検出する温度検知手段Aと、調理物を載せる焼網と、焼網を載置し、調理庫から着脱可能な受皿と、受皿の温度を検出する温度検知手段Bと、調理庫と外気を連絡する排気通路と、温度検知手段A、Bの検出温度により上、下発熱体の出力を制御する制御回路を備えた加熱調理器において、加熱調理の開始から一定時間経過後、前記温度検知手段A、Bの検出温度と、予め設定した基準温度とを比較し、制御回路により上、下発熱体の出力を補正するようにしたものである。
【0011】
また、請求項2では、調理庫と外気を連絡する排気通路に、空気浄化用触媒体と、この触媒体を加熱する加熱ヒータと、調理庫内の空気を排出するための排気ファンを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、温度検知手段A、Bの検出温度と、予め設定した基準温度との比較により上、下発熱体の出力を補正するようにしたので、調理庫内の状況を判断して上、下発熱体の出力をある一定時間後から補正することにより、調理物を均一に加熱でき、調理物の仕上がりを均一に保つことができる。
【0013】
また、上記の効果は、調理庫と外気を連絡する排気通路に、空気浄化用触媒体と、この触媒体を加熱する加熱ヒータと、調理庫内の空気を排出するための排気ファンとモータを備えた加熱調理器においても同様に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例を示す加熱調理器の断面図、図2は、同上、下発熱体の出力を補正する前の調理時の温度検知手段A、Bの温度特性図である。図3は、同上、下発熱体の出力を補正した後の調理時の温度検知手段A、Bの温度特性図である。図4は、同温度検知手段A、Bの検知温度の組合せによる温度補正の一例の説明図である。図5は、本発明の他の実施例を示す加熱調理器の断面図である。
【0016】
図1において、1はグリルやオーブン等の加熱調理器の本体である。3は前面が開口した箱型の調理庫で、内部の上、下にシーズヒータ等よりなる上発熱体5、下発熱体6が設置され、後方上部に排気出口3aを設けている。
【0017】
8は受皿で、調理庫3内にその前面開口部から出し入れ自在に収納されており、前面に前記開口部を塞ぐドア16とハンドル17が取り付けられ、中に焼網7が載置されている。4は焼網7の上に載せられた魚等の調理物である。
【0018】
11は空気浄化用触媒体で、調理庫3内で発生する煙や臭いを浄化するものであり、排気出口3aの近傍に取り付けられている。10は排気通路で、その入口側は排気出口3aに接続されており、出口には排気口18が設けられている。
【0019】
12は空気浄化用触媒体11を加熱するための触媒加熱ヒータで、調理庫3内で空気浄化用触媒体11の近傍に設置されており、この空気浄化用触媒体11を加熱するものである。
【0020】
2はサーミスタ等の温度検知手段Aで、調理庫8内の温度を検知するものであり、調理庫8の前面開口部側の上部に設けられている。
【0021】
9は同じくサーミスタ等の温度検知手段Bで、受皿8の温度を検知するものであり、受皿8の外側底面の略中央部付近に設けられている。
【0022】
本発明は上記の構成よりなるもので、次にその動作について簡単に説明する。
【0023】
使用者がドア16のハンドル17を手前に引き、受皿8及び焼網7を調理庫3から引き出し、焼網7上に魚等の調理物4を載せ、ドア16のハンドル17を押し込み、受皿8及び焼網7を調理庫3内に収納する。
【0024】
その後、操作部(図示せず)を操作すると、制御回路15により上、下発熱体5、6および触媒加熱ヒータ12に通電され、調理が開始する。
【0025】
調理中、魚等の調理物4から発生する煙や臭気は調理庫3の後方上部に設けられた排気出口3aから空気浄化用触媒体11を通る間に脱煙、脱臭され、排気通路10を通して本体1の後部上面の排気口18から外部(室内)に排出される。
【0026】
調理が終了した後は、ドア16のハンドル17を手前に引き、受皿8及び焼網7を調理庫3から引き出し、焼網7上の調理物4を皿に移し、再び、ドア16のハンドル17を押し込み、受皿8及び焼網7を調理庫3内に収納する。
【0027】
図2は、上記の調理において、上、下発熱体5、6の出力を夫々1.2kwに設定し、受皿8に水を入れた場合と、水を入れない場合及び受皿8にアルミ箔を設置した場合の温度検知手段A2と温度検知手段B9の時間と温度との関係を示したものである。
【0028】
上、下発熱体5、6の出力及び時間−温度曲線は、受皿8に水を入れた場合に良好に仕上がるように設定されており、そのときの温度検知手段A2と温度検知手段B9の検知温度は実線で示される通りである。これは、受皿8からの水分の蒸発量が多く、調理庫3内の温度を下げるとともに、受皿8の温度も上がりにくいためである。本実施例では、これを通常の加熱調理ができる基準曲線としている。これに対して、受皿8に水を入れない場合とアルミ箔を設置した場合の温度検知手段A2と温度検知手段B9の検知温度は点線で示される通りであり、何れの場合も水を入れた場合より水分の蒸発が少ないため、調理庫3内の温度が早く立ち上がり、時間と共にその温度が受皿8に水を入れた場合の実線より高くなる。特に、アルミ箔を設置した場合には、アルミ箔により下発熱体6の輻射熱が遮られ、温度検知手段B9の検知温度は水なし時よりは低く、水を入れた場合より高くなるが、アルミ箔により調理庫3内が上下に仕切られるため、調理庫3内の空間容積が小さくなり、温度検知手段A2の検知温度は、水なし時よりさらに高くなる。
【0029】
このため、調理庫3内の焼網7上に載せた魚等の調理物4の焼き上がりにバラツキが生じ、総じて焼け過ぎの状態で仕上がる。この状態はアルミ箔を設置した場合に顕著となる。
【0030】
そこで、本発明においては、図3及び図4に示すように、加熱調理の開始から調理庫3内の温度にバラツキが出始める一定時間(図では約3分)経過後、温度検知手段A2、B9の検知温度を予め設定された基準温度と比較して上、下発熱体5、6の出力を制御回路15により調節し、実線の基準曲線に沿って温度上昇するように温度補正を行う。
【0031】
具体的には、温度検知手段A2の基準温度を150℃、温度検知手段B9の基準温度を60℃に設定する。そして、受皿8に水が入っている場合には温度検知手段A2、温度検知手段B9とも基準温度の150℃、60℃まで達していないため、上、下発熱体5、6の出力を夫々最大出力の1.2kwのままで加熱調理を行う。これによって、調理庫3内のその後の時間−温度曲線は実線の状態となり、魚等の調理物は良好に仕上がる。
【0032】
一方、受皿8に水が入っていない場合には、温度検知手段A2は基準温度の150℃とほぼ同じになるが、温度検知手段B9は基準温度の60℃を超えている。そこで、この場合には上、下発熱体5、6の出力を夫々1.1kw、0.9kwに下げて加熱調理を行う。これによって、調理庫3内のその後の時間−温度曲線は水が入っている実線の状態とほぼ同じ曲線で上昇し、水有りと同様に調理物は良好に仕上がり、焼き過ぎを防止できる。
【0033】
また、受皿8にアルミ箔が設置されている場合には、温度検知手段A2は基準温度の150℃より高くなり、温度検知手段B9は基準温度の60℃とほぼ同じになる。この場合にも上、下発熱体5、6の出力を夫々1.0kw、0.7kwに下げて加熱調理を行う。これによって、調理庫3内のその後の時間−温度曲線は水が入っている実線の状態とほぼ同じ曲線で上昇し、水有りと同様に調理物は良好に仕上がり、焼き過ぎを防止できる。
【0034】
このように本発明によれば、調理庫3内の温度を検出する温度検知手段A2と、受皿8の温度を検出する温度検知手段B9の検出温度を加熱調理の開始から一定時間後に予め設定された基準温度と比較し、調理庫3内の状況を判断して上、下発熱体5、6の出力を補正することにより、調理物4は受皿8が水がない場合やアルミ箔を設置した場合でも水有りの場合と同様に均一に仕上がり、焼き過ぎを防止できる。
【0035】
次に図5は本発明の他の実施例を示すもので、図1の加熱調理器において、さらに、空気浄化用触媒体11より後の排気通路10内に排気ファン13と、このファン13を駆動するモータ14を設け、このモータ14によりファン13を回転させ、調理庫8内で発生する臭いや煙を空気浄化用触媒16を通して強制的に排気通路10から排気口18に排気するようにしたものである。
【0036】
この調理器においても、調理庫3内の受皿8の状況により上記実施例と同様に上、下発熱体5、6の出力を補正し、調理物を均一に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例を示す加熱調理器の断面図である。
【図2】同上、上、下発熱体の出力を補正する前の温度検知手段A、Bの温度特性図である。
【図3】同上、上、下発熱体の出力を補正した後の温度検知手段A、Bの温度特性図である。
【図4】同上、温度検知手段A、Bの検知温度の組合せによる温度補正の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施例を説明するための加熱調理器の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
2 温度検知手段A
3 調理庫
4 調理物
5 上発熱体
6 下発熱体
7 焼網
8 受皿
9 温度検知手段B
10 排気通路
11 空気浄化用触媒体
12 触媒加熱ヒータ
13 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫内に調理物を加熱する上、下発熱体と、調理庫内の温度を検出する温度検知手段Aと、調理物を載せる焼網と、焼網を載置し、調理庫から着脱可能な受皿と、その受皿の温度を検出する温度検知手段Bと、調理庫と外気を連絡する排気通路と、温度検知手段A、Bの検出温度により上、下発熱体の出力を制御する制御回路とを備えた加熱調理器において、加熱調理の開始から一定時間経過後、前記温度検知手段A、Bの検出温度と予め設定した基準温度とを比較し、前記制御回路により前記上、下発熱体の出力を補正するようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記調理庫と外気を連絡する排気通路に、空気浄化用触媒体と、この触媒体を加熱する触媒加熱ヒータと、調理庫内の空気を排出するための排気ファンを備えたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−76047(P2008−76047A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278280(P2007−278280)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【分割の表示】特願2005−254297(P2005−254297)の分割
【原出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】