説明

加熱調理器

【課題】連続調理を行う場合でも、水有り無しを精度よく検知できるようにする。
【解決手段】庫内温度センサにより庫内温度を検知し、皿用温度センサにより、水を入れる受け皿の温度を検知する。制御装置は、まず、調理開始初期の皿用温度センサの検知温度tが40℃以上か否かにより、常温調理か高温調理(連続調理)かを判定する(ステップS1,S2,S6)。常温調理の際は、水有り無し検知時間ΔS2の間に皿用温度センサの検知温度tの上昇値Δtが基準値(10℃)以上か否かを判定し(S3)、以上である場合には水無し調理と判定し、そうでない場合は水有り調理であると判定する(S4,S5)。高温調理の際は、基準値を5℃と低く設定して判定する。このような構成とすることで、連続調理のような場合でも、水の有り無しを精度よく検知することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚などの被調理物を発熱体の発熱により加熱調理する構成の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器においては、被調理物として例えば魚を焼く場合において、加熱室内に出し入れ可能に収納される受け皿内に水を貯留した状態で加熱調理を行う、いわゆる水有り調理と、受け皿内に水を入れないで加熱調理を行う、いわゆる水無し調理を行うことができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいては、調理を開始する前に使用者が水有り調理と水無し調理をキーにより選択し、そのキー操作に基づき制御装置が、発熱体である電気ヒータを制御することで、選択された水有り調理或いは水無し調理を実行する。このとき、加熱室内の底部には、受け皿の温度を検出するために皿用温度センサが設けられていて、その皿用温度センサにより受け皿の温度を検知することに基づき、受け皿内に水が有るか無いかを検知する構成となっている。そして、使用者により水有り調理が選択されたにもかかわらず、受け皿に水が無いと判定した場合には、制御装置は、水無し判定を優先し、水無し調理に変更して加熱制御を実行し、また、逆に、水無し調理が選択されたにもかかわらず、受け皿に水が有ると判定した場合には、制御装置は、水有り判定を優先し、水有り調理に変更して加熱制御を実行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4171750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の加熱調理器においては、1回目の加熱調理を終了した後、2回目の加熱調理を連続的に行う場合があるが、上記した特許文献1のものでは、調理を連続して行う場合については考慮されていない。調理を連続して行う場合、前回の余熱の影響で加熱室内の温度が高い状態で次の調理が開始されることになるため、水有り無し判定で誤判定しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続調理を行う場合でも、水有り無しを精度よく検知することができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の加熱調理器は、被調理物を収容する加熱室と、この加熱室に対して出し入れ可能に収納され、水を貯留することが可能な受け皿と、前記被調理物を前記受け皿の上方となる位置で支持するように設けられた載置台と、前記被調理物を加熱する発熱体と、前記受け皿の温度を検知するように設けられた皿用温度センサと、調理開始初期における水有り無し検知時間の間に前記皿用温度センサの検知温度の上昇値が基準値以上である場合に前記受け皿に水が無いと判定する水有り無し検知手段と、この水有り無し検知手段の判定結果に基づいて前記発熱体を通断電制御する制御手段とを備え、前記水有り無し検知手段は、調理開始初期における前記皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、前記基準温度以下の場合に比べて前記基準値を低く設定することを特徴とする。
【0008】
前記水有り無し検知手段は、調理開始初期における水有り無し検知時間の間に皿用温度センサの検知温度の上昇値が基準値以上であると判断した場合に、受け皿に水が無いと判定する。ここで、連続調理を行う場合、2回目以降の調理開始初期の加熱室内の温度は、前回の調理の余熱で高くなっている。加熱室内の温度が高い状態で次の加熱調理を開始すると、皿用温度センサの検知温度の上昇値は、常温の状態で調理を開始する場合に比べて小さくなる。
【0009】
そこで、本発明においては、前記水有り無し検知手段は、調理開始初期における皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、前記基準温度以下の場合に比べて前記基準値を低く設定する。調理開始初期における皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、連続調理の可能性が高く、このような場合は、皿用温度センサの上昇値が小さくても、水が有るか無いか検知することができる。したがって、調理開始初期における皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、前記基準温度以下の場合に比べて前記基準値を低く設定することで、連続調理のような場合でも、水の有り無しを精度よく検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
調理開始初期における皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、前記基準温度以下の場合に比べて前記基準値を低く設定することで、連続調理のような場合でも、水の有り無しを精度よく検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す水有り無し判定のフローチャート
【図2】扉を除いた状態で示す加熱調理器の正面図
【図3】扉を閉じた状態での加熱調理器の縦断右側面図
【図4】電気的構成を示すブロック図
【図5】(a)は水有り調理のタイムチャート、(b)は水無し調理のタイムチャート、(c)はドライアップ調理のタイムチャート
【図6】水有り無し検知の際の基本動作を示す図
【図7】常温スタート時の温度変化の一例を示す図
【図8】連続水無し調理を行った際の温度変化の一例を示す図
【図9】連続水有り調理を行った際の温度変化の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
まず、図2及び図3において、加熱調理器1の外箱2は、矩形箱状をなしている。この外箱2内に、前面に開口部3aを有した内箱3が設けられていて、この内箱3内を加熱室4としている。内箱3と外箱2との間には空間部5が形成されている。外箱2の前面部には、加熱室4の開口部3aを開閉する扉6(図3参照)が回動可能に設けられていると共に、右横に操作パネル7(図2参照)が設けられている。
【0013】
加熱室4内の上部には上ヒータ10が設けられ、加熱室4内の下部には下ヒータ11が設けられている。これら上ヒータ10及び下ヒータ11は、加熱調理用の発熱体を構成する。加熱室4内の底部には、受け皿12が出し入れ可能に収納されている。この受け皿12は、矩形の浅底容器状をなし、内部に水を貯留できるようになっていて、加熱室4内において下ヒータ11の下方に配置されるようになっている。受け皿12内には、線材を組み合わせて構成された載置台13が出し入れ可能に配置されている。
【0014】
この載置台13は、受け皿12内の底部に配置される脚部13aと、この脚部13aの上方に設けられて下ヒータ11と上ヒータ10との間に配置される棚状の載置部13bとを有していて、その載置部13b上に、魚などの被調理物14を載置できるようになっている。従って、載置部13b上に載置された被調理物14は、下ヒータ11と上ヒータ10との間に配置される。
【0015】
加熱室4内の右上部には、加熱室4内の温度を検出する庫内温度センサ15(図2参照)が設けられている。また、加熱室4の底部を構成する内箱3の底部3bの下面には、加熱室4の底部に配置される受け皿12の温度を検知する皿用温度センサ16が設けられている。この皿用温度センサ16は、内箱3の底部3bを介して受け皿12の温度を間接的に検知するようになっている。庫内温度センサ15及び皿用温度センサ16は、共にサーミスタにより構成されている。
【0016】
前記操作パネル7には、上部に報知手段を構成する表示部20が設けられていると共に、この表示部20の下方に位置させて設定部21が設けられている。設定部21には、丸身キー22、切身キー23、小魚キー24、メニューキー25が設けられている。これらのキーのうち丸身キー22、切身キー23、小魚キー24は、被調理物の形態を選択するキーと、調理を開始させるスタートキーを兼ねている。
【0017】
操作パネル7の裏側には、マイクロコンピュータを主体に構成された制御装置30(図4参照)が設けられていると共に、報知手段を構成するブザー31が設けられている。制御装置30は、加熱調理器1の動作全般を制御する機能を備えていて、上記設定部21の各キー22〜25からの信号、庫内温度センサ15及び皿用温度センサ16からの信号と、予め備えた制御プログラムに基づき、表示部20、上ヒータ10、下ヒータ11、並びにブザー31を制御する。この制御装置30は、本発明の制御手段、水有り無し検知手段、第2の水有り無し検知手段、第3の水有り無し検知手段として機能する。
【0018】
図5には、(a)水有り調理と、(b)水無し調理と、(c)ドライアップ調理の各加熱制御例が示されている。また、図6には、調理開始から水有り無し検知までの基本動作を表で示している。これらの制御は制御装置30が行う。
【0019】
(水有り調理)
まず、水有り調理の制御例について説明する。水有り調理は、受け皿12内に水を貯留して加熱調理を行う調理である。この場合、水有り調理も、後述する水無し調理も、ドライアップ調理も、調理の開始から水有り無し検知までの基本動作はすべて同じである。すなわち、調理開始から60秒間の余熱時間ΔS1は、上ヒータ10及び下ヒータ11は共に通電し、発熱させる。このとき、制御装置30は、加熱室4内(庫内)の目標温度を55℃に設定して、上ヒータ10及び下ヒータ11を制御する。加熱室4内の温度は庫内温度センサ15により検知する。水有り無し検知時間ΔS2は受け皿12内に水が有るか無いかを検知するための時間(60秒後から180秒後までの時間)であり、この水有り無し検知の具体例については後述する。水有り無し検知時間ΔS2では、制御装置30は、加熱室4内(庫内)の目標温度を180℃に設定して、上ヒータ10及び下ヒータ11を制御する。図5において、ΔSは、調理開始から水有り無し検知時間の終了までの時間である。
【0020】
制御装置30は、水有り無し検知時間ΔS2が経過した後は、加熱室4内の目標温度を230℃に設定し、下ヒータ11は通電したまま、上ヒータ10を通断電制御する。そして、調理開始から予め設定された設定時間、この場合12分経過したら、上ヒータ10及び下ヒータ11を断電し、調理を終了する。調理が終了したら、ブザー31を鳴動させて報知する。
【0021】
(水無し調理)
水無し調理は、受け皿12内に水を入れないで加熱調理を行う調理である。調理の開始から水有り無し検知までの基本動作は、上記水有り調理の場合と同じである。制御装置30は、水有り無し検知時間ΔS2が経過した後は、加熱室4内の目標温度を、前記水有り調理の場合よりも低い180℃に設定し、上ヒータ10及び下ヒータ11を通断電制御する。そして、予め設定された設定時間、この場合調理開始から10分経過したら、加熱室4内の目標温度を200℃に変更し、上ヒータ10及び下ヒータ11を通断電制御する。そして、調理開始から予め設定された設定時間、この場合20分経過したら、上ヒータ10及び下ヒータ11を断電し、調理を終了する。調理が終了したら、ブザー31を鳴動させて報知する。
【0022】
(ドライアップ調理)
ドライアップ調理は、水有り調理の途中で受け皿12内の水が無くなった場合の調理である。したがって、調理開始から調理途中までは前記水有り調理の場合と同様の動作となる。加熱調理の途中で受け皿12内の水が無くなったと判断した場合(この例では、調理開始から10分後)、加熱室4内の目標温度を200℃に下げて、下ヒータ11は通電したままで、上ヒータ11を通断電制御する。そして、調理終了の時間になったら、上ヒータ10及び下ヒータ11を断電し、調理を終了する。調理が終了したら、ブザー31を鳴動させて報知する。
【0023】
図7は、加熱室4内が常温(約20℃)の状態で加熱調理を開始した場合の庫内温度センサ15の検知温度(庫内温度)と、受け皿12に水を入れた状態での皿用温度センサ16の検知温度(水有り)と、受け皿12に水を入れない状態での皿用温度センサ16の検知温度(水無し)の変化の一例を示している。この場合、前述したように調理開始から60秒までの余熱時間ΔS1は、目標温度を55℃に設定して上ヒータ10及び下ヒータ11を制御し、60秒後から180秒までの水有り無し検知時間ΔS2は、目標温度を180℃に設定して上ヒータ10及び下ヒータ11を制御する。これに伴い、庫内温度は徐々に上昇する。また、水が入っていない場合の受け皿12の温度も、庫内温度より上昇度合は低いが徐々に上昇する(水無し)。これに対して、受け皿12に水が入っている場合には、180秒間では受け皿12の温度は殆ど上昇しない(水有り)。このため、この水有り無し検知時間ΔS2における皿用温度センサ16の検知温度の上昇値Δtを検出し、その上昇値Δtと、予め設定された基準値とを比較することで、水有り無しの判定が可能になる。
【0024】
図8は、水無し調理を連続して行った場合の庫内温度センサ15の検知温度(庫内温度)と、皿用温度センサ16の検知温度(受け皿12の温度)の変化の一例を示している。この場合、前回の調理が終了した時点では、庫内温度が約200℃、皿用温度センサ16の検出温度は約150℃となっている。そして、扉6を開放し、受け皿12及び調理された被調理物14を一旦取り出した後、受け皿12と次の被調理物14を加熱室4内に収容し、扉6を閉鎖してキーを操作して調理を開始させることになる。
【0025】
ここで、扉6を開放してから次の調理を開始させるまでの間(ΔS0)は、庫内温度及び皿用温度センサ16の検知温度は徐々に低下する。そして、キーを操作して調理を開始させても、調理開始から60秒までの予熱時間ΔS1では庫内温度の目標温度が55℃であるのに対し、皿用温度センサ16の検知温度は150℃付近であるため、上ヒータ10及び下ヒータ11は通電されないことになる。このため、予熱時間ΔS1では、庫内温度及び皿用温度センサ16の検知温度はさらに低下することになる。そして、予熱時間ΔS1が経過すると、庫内温度の目標温度が180℃に変更されるため、上ヒータ10及び下ヒータ11が共に通電されて発熱する。これに伴い、庫内温度も、皿用温度センサ16の検知温度も次第に上昇するようになる。
【0026】
図9は、水有り調理を連続して行った場合の庫内温度センサ15の検知温度(庫内温度)と、皿用温度センサ16の検知温度(受け皿12の温度)の変化の一例を示している。この場合、前回の調理が終了した時点では、庫内温度が約230℃、皿用温度センサ16の検出温度は100℃よりやや低くなっている。そして、扉6を開放し、受け皿12及び調理された被調理物14を一旦取り出し、必要に応じて受け皿12に水を加えた後、その受け皿12と次の被調理物14を加熱室4内に収容し、扉6を閉鎖してキーを操作して調理を開始させることになる。
【0027】
ここで、扉6を開放してから次の調理を開始させるまでの間(ΔS0)は、庫内温度は徐々に低下するが、皿用温度センサ16の検知温度は上昇する。これは、受け皿12を引き出したことで、皿用温度センサ16が加熱室4内に露出するような状態になり、加熱室4内の温度の影響を直接受け易くなるためである。水が入った受け皿12が加熱室4内に再度セットされることに伴い、皿用温度センサ16の検知温度は徐々に低下するようになる。そして、キーを操作して調理を開始させても、調理開始から60秒までの予熱時間ΔS1では庫内温度の目標温度が55℃であるのに対し、庫内温度センサ15の検知温度は200℃付近であるため、上ヒータ10及び下ヒータ11は通電されないことになる。このため、予熱時間ΔS1では、庫内温度及び皿用温度センサ16の検知温度はさらに低下することになる。そして、予熱時間ΔS1が経過すると、庫内温度の目標温度が180℃に変更されるが、庫内温度が180℃以上あれば上ヒータ10及び下ヒータ11は通電されないことになる。このため、水有り無し検知時間ΔS2でも、庫内温度及び皿用温度センサ16の検知温度はさらに低下することになる。なお、水有り無し検知時間ΔS2が経過した後は、庫内温度の目標温度は230℃に変更されるため、庫内温度センサ15の検知温度に応じて上ヒータ10及び下ヒータ11は通断電制御されるようになる。
【0028】
さて、図1は、制御装置30の水有り無し判定のためのフローチャートを示している。水有り無しの判定の仕方について、主にこの図1を参照して説明する。なお、図1は水有り無しの判定のためだけのフローチャートであり、加熱調理のためのメインルーチンは別のプログラムで実行することになる。
【0029】
加熱調理をする場合、使用者は、まず水有り調理か水無し調理かを自分で決め、水有り調理を行いたい場合には、受け皿12に水を入れた状態で受け皿12を加熱室4内に入れ、水無し調理を行いたい場合には、受け皿12には水を入れない状態で受け皿12を加熱室4内に入れる。また、加熱調理する対象の被調理物14を載置台13に載せて加熱室4内に入れる。そして、扉6を閉じた状態で、使用者は、設定部21のキーのうち、被調理物14の形態にあったキー、例えば丸身キー22を押圧操作する。すると、制御装置30は、前記した基本動作(予熱動作と水有り無し検知動作)を行う。
【0030】
図1において、水有り無しの判定を行う場合、まず、皿用温度センサ16により加熱調理開始時の受け皿12の温度を検知するとともに、庫内温度センサ15により加熱調理開始時の加熱室4内の温度を検知する。そして、皿用温度センサ16の検知温度tが、予め設定された基準温度、この場合常温調理か高温調理(連続調理)かを判別するための基準温度、例えば40℃以下か否かを判断する(ステップS1)。その結果、皿用温度センサ16の検知温度tが基準温度の40℃以下であると判定された場合には、「YES」に従ってステップS2へ移行し、常温調理(常温で調理がスタート)であると判定する。
【0031】
次に、ステップS3では、水有り無し検知時間ΔS2(調理開始から60秒〜180秒間)において、皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δt(図7参照)が、予め設定された基準値、この場合10℃以上か否かを判断する。上昇値Δtが10℃以上あると判定した場合には、水無し調理であると判定し(ステップS4)、メインルーチンへ戻る。また、ステップS3において、上昇値Δtが10℃より小さいと判定した場合には、「NO」に従ってステップS5へ移行し、水有り調理であると判定する。
【0032】
ここで、常温、例えば20℃で調理を開始した場合において、受け皿12に水が無い場合には、受け皿12の温度が上昇しやすいため、皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δtは10℃以上となる。また、受け皿12に水が有る場合には、受け皿12内の水の温度が徐々に上昇するが上昇幅は小さいため、皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δtは10℃より小さくなる。
【0033】
前記ステップS1において、皿用温度センサ16の検知温度tが基準温度40℃を超えていると判定した場合には、「NO」に従ってステップS6へ移行し、高温調理(高温で調理がスタート)であると判定する。皿用温度センサ16の検知温度tが基準温度40℃を超えている場合には、連続調理の可能性が高い。次に、ステップS7では、水有り無し検知時間ΔS2(調理開始から60秒〜180秒間)において、皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δtが、予め設定された基準値、この場合5℃以上か否かを判断する。ここで、高温調理の際の基準値は、前記常温調理の際の基準値である10℃より低く設定している。これは、高温状態で調理を開始した場合、受け皿12に水を入れた場合でも、水を入れない場合でも、上記水有り無し検知時間ΔS2における皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δtが、常温で開始する場合に比べて小さいためである。
【0034】
ステップS7において、上昇値Δtが5℃以上あると判定した場合には、「YES」に従ってステップS4へ移行し、水無し調理であると判定する。ステップS7において、上昇値Δtが5℃より小さいと判定した場合には、「NO」に従ってステップS8へ移行する。ここで、ステップS3とステップS7が本発明の水有り無し検知手段に相当する。
【0035】
ステップS8では、調理開始時の皿用温度センサ16の検知温度tが70℃以上で、かつ90℃未満の場合において、前記水有り無し検知時間ΔS2における皿用温度センサ16の検知温度tが最低温度から2℃上昇したか否かを判定する。受け皿12に水が有る場合は、この温度帯では最低温度から2℃以上は上昇しないため、2℃以上上昇したと判定した場合には、「YES」に従ってステップS4へ移行し、水無し調理と判定する。
【0036】
ステップS8で「NO」の場合には、ステップS9へ移行する。ステップS9では、調理開始時の皿用温度センサ16の検知温度tが90℃以上の場合において、前記水有り無し検知時間ΔS2における皿用温度センサ16の検知温度tが最低温度から1℃上昇したか否かを判定する。受け皿12に水が有る場合は、この温度帯では最低温度から1℃以上は上昇しないため、1℃以上上昇したと判定した場合には、「YES」に従ってステップS4へ移行し、水無し調理と判定する。
【0037】
ここで、ステップS8では、調理開始時の皿用温度センサ16の検知温度tが70℃〜90℃の場合において、最低温度からの差の基準値を2℃に設定し、ステップS9では、調理開始時の皿用温度センサ16の検知温度tが90℃以上の場合において、最低温度からの差の基準値を1℃に設定していて、調理開始時の皿用温度センサ16の検知温度tが基準温度(この場合90℃)より高い場合は、基準温度(90℃)より低い場合に比べて基準値を低く設定している。
【0038】
上記ステップS9で「NO」の場合には、ステップS10へ移行する。ステップS10では、前記水有り無し検知時間ΔS2の経過時点(調理開始から180秒後の時点)での皿用温度センサ16の検知温度tが第1の設定温度、この場合105℃以上か否かを判定する。受け皿12に水が有る場合は、105℃以上は上昇しないため、105℃以上あると判定した場合には、「YES」に従ってステップS4へ移行し、水無し調理と判定する。105℃より低いと判定された場合には、「NO」に従ってステップS5へ移行して水有り調理と判定し、メインルーチンへ戻る。ここで、ステップS10の判定が、本発明の第2の水有り無し検知手段に相当する。
【0039】
そして、図1の水有り無し判定で水有り調理と判定し、水有り調理を実行中(水有り無し検知時間ΔS2終了後から調理終了までの間)において、皿用温度センサ16の検知温度tが、第2の設定温度、この場合101℃を超えて1℃上昇したと判定した場合には、受け皿12の水が無くなったと判定する。この判定が、本発明の第3の水有り無し検知手段に相当する。このような判定をした場合には、図5の(c)に示したように、水有り調理からドライアップ調理に変更し、目標定温度を230℃から200℃に下げて加熱調理を続ける。
【0040】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
まず、調理開始初期における水有り無し検知時間ΔS2の間に皿用温度センサ16の検知温度tの上昇値Δtが基準値(10℃)以上である場合に受け皿12に水が無いと判定する水有り無し検知手段を備えていて、前記水有り無し検知手段は、調理開始初期における前記皿用温度センサ16の検知温度tが基準温度(40℃)より高い場合は、前記基準温度(40℃)以下の場合に比べて前記基準値を低く設定(この場合、5℃)する構成とした(図1のステップS3,S7参照)。このような構成とすることで、連続調理のような場合でも、水の有り無しを精度よく検知することが可能となる。
【0041】
水有り無し検知手段により水有り無し検知を行う場合において、特に高温状態から調理を開始した場合には、前回の調理の余熱や、新たに加えた水、食材(被調理物14)など、それぞれの温度がばらばらに存在しているため、調理開始直後の温度は多様に変化するが、ある程度の時間経過すれば、各部の温度は落ち着いてくる。そこで、水有り無し検知手段による水有り無し検知を、調理開始後、所定時間(本実施形態では予熱時間ΔS1の60秒)経過後から実行することで、調理開始初期の不安定な部分のデータを省くことになり、温度検出対象の受け皿12や庫内の温度を、皿用温度センサ16及び庫内温度センサ15により極力正確に検知することが可能になり、水有り無し検知を一層正確に行うことができるようになる。
【0042】
制御装置30は、調理を開始して予熱時間ΔS1(60秒)経過するまでの加熱室4内の目標温度(55℃)を、前記予熱時間ΔS1(60秒)経過以降の目標温度(180℃)より低く設定して上ヒータ10及び下ヒータ11を制御する構成とした(図6参照)。ここで、上記したように高温の状態で調理を開始した場合は、調理開始初期は各部の温度の調和が取れ難く、このために一定時間上ヒータ10及び下ヒータ11を断電しておけば、庫内各部の温度の調和が次第に取れ、その後水有り無し検知の際の判別がしやすくなることが考えられる。しかし、常温から調理を開始する場合は、すでに各部の温度は調和が取れているので、上ヒータ10及び下ヒータ11を断電しておく必要はない。このため、庫内温度の目標温度を、調理を開始して予熱時間ΔS1(60秒)経過するまでは低く設定(55℃)しておくことで、高温で調理を開始したときのみ上ヒータ10及び下ヒータ11を断電しておくことができる。また、水有り無し判定をしたい時間帯(60秒〜180秒)で庫内の温度が上昇しきってしまうと、判定に必要な上昇値Δtが得られなくなってしまうおそれがあるが、それを防止できる。これにより、水有り無し判定を行うための時間ΔS(予熱時間ΔS1と水有り無し検知時間ΔS2)における上ヒータ10及び下ヒータ11の通電時間を長くすることができ、判定に必要な温度上昇値を得やすくできる。
【0043】
水有り無し検知時間ΔS2の経過時点(180秒後)における皿用温度センサ16の検知温度tが第1の設定温度(105℃)以上である場合に受け皿12に水が無いと判定する第2の水有り無し検知手段を備えている(図1のステップS10参照)。例えば、水有り調理を連続して行う場合において、その調理間隔が非常に短い場合、図9に示すように、調理開始時の庫内温度は200℃を超えている。このような高温の場合、上ヒータ10及び下ヒータ11の動作にかかわらず、庫内温度センサ15及び皿用温度センサ16の検知温度は、所定時間は下がり続ける。そこで、受け皿12に水が有る場合に、所定時間(180秒)経過したときに皿用温度センサ16が検知できる限界温度(第1の設定温度:105℃)を定め、その温度以上になった場合、すべて水無し調理と判定できる。受け皿12に水が有れば、105℃以上にはならない。これによれば、水の有り無し判定の難しい温度領域でも、確実に判定することができる。
【0044】
発熱体は、被調理物14の上方に存するように設けられた上ヒータ10と下方に存するように設けられた下ヒータ11とを備え、制御装置30は、前記水有り無し検知時間ΔS2中において加熱室4内が目標温度に到達するまでは前記上ヒータ10及び下ヒータ11を同時に連続で加熱する構成とした(図5、図6参照)。これによれば、加熱スピードを上げて温度上昇速度を上げることで、短時間で水が無いときの温度が上昇するので、水の有り無しを確実に判断することができる。
【0045】
図1のステップS8、S9を判断することで、高温の状態で調理が開始された場合の、わずかな温度変化でも水の有り無しを一層正確に判定することができる。
水有り調理と判定し、水有り調理を実行中に皿用温度センサ16の検知温度が第2の設定温度(101℃)から所定温度(1℃)上昇したことを検知した場合に受け皿12に水が無いと判定する第3の水有り無し検知手段を備えている。これにより、水有り調理の実行中に水が無くなったことを検知でき、それ以降の加熱を制御することで、発火などの危険を確実に防止できる。本実施例においては、水有り調理の実行中に水が無くなったことを検知した場合には、水無し調理に切り替えるのではなく、目標温度を下げてドライアップ調理(下ヒータ11は連続通電、上ヒータ10は断続通電)に切り替える(図5(c)参照)ので、危険を防止しながらも、水無し調理に切り替える場合に比べて調理を早く終了することが可能になり、加熱調理を良好に行うことができる。
【0046】
制御装置30は、水無し調理の際に、上ヒータ10及び下ヒータ11を断続通電し、かつ加熱室4内の目標温度を途中から上げる制御を行うようにしている(図5(b)参照)。これにより、被調理物14に焼き色を付けることが可能になる。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1は加熱調理器、4は加熱室、10は上ヒータ(発熱体)、11は下ヒータ(発熱体)、12は受け皿、13は載置台、14は被調理物、15は庫内温度センサ、16は皿用温度センサ、30は制御装置(制御手段、水有り無し検知手段、第2の水有り無し検知手段、第3の水有り無し検知手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する加熱室と、
この加熱室に対して出し入れ可能に収納され、水を貯留することが可能な受け皿と、
前記被調理物を前記受け皿の上方となる位置で支持するように設けられた載置台と、
前記被調理物を加熱する発熱体と、
前記受け皿の温度を検知するように設けられた皿用温度センサと、
調理開始初期における水有り無し検知時間の間に前記皿用温度センサの検知温度の上昇値が基準値以上である場合に前記受け皿に水が無いと判定する水有り無し検知手段と、
この水有り無し検知手段の判定結果に基づいて前記発熱体を通断電制御する制御手段とを備え、
前記水有り無し検知手段は、調理開始初期における前記皿用温度センサの検知温度が基準温度より高い場合は、前記基準温度以下の場合に比べて前記基準値を低く設定することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記水有り無し検知手段による水有り無し検知は、調理開始後、所定時間経過後から実行することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱室内の温度を検知する庫内温度センサを備え、
前記制御手段は、調理を開始して前記所定時間経過するまでの前記加熱室内の目標温度を、前記所定時間以降の目標温度より低く設定して前記発熱体を制御することを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記水有り無し検知時間の経過時点における前記皿用温度センサの検知温度が第1の設定温度以上である場合に前記受け皿に水が無いと判定する第2の水有り無し検知手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記発熱体は、前記載置台に載置される前記被調理物の上方及び下方に存するように設けられた上発熱体と下発熱体とを備え、
前記制御手段は、前記水有り無し検知時間中において前記加熱室内が目標温度に到達するまでは前記上発熱体及び下発熱体を同時に連続で加熱することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記基準値は、前記水有り無し検知時間における前記皿用温度センサの検知温度のうちの最低温度からの差であることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記水有り無し検知時間内の判定で水有りと判定した場合において、前記水有り無し検知時間終了後から調理終了までに前記皿用温度センサの検知温度が第2の設定温度から所定温度上昇したことを検知した場合に前記受け皿に水が無いと判定する第3の水有り無し検知手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御手段は、水無し調理の際に、前記発熱体を断続通電し、かつ前記加熱室内の目標温度を途中から上げることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−201060(P2010−201060A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51965(P2009−51965)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】