説明

加熱調理器

【課題】誤検知を防止し、水位検知の精度の維持を図ることができる加熱調理器を得る。
【解決手段】光を点滅させて発する発光手段80及び発光手段80に係る光を受けて、光の強さに基づく信号を送信する受光手段81を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える水タンク7の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段8と、発光手段80の点灯時における光の強さを表す値と消灯時における光の強さを表す値との差を算出し、算出した差及び判別閾値に基づいて、水タンク7の水が所定の位置に達したかどうかを判断する処理を行う制御処理手段100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯などの調理により発生する水蒸気を回収することができる加熱調理器に関するものである。特に回収した水蒸気に係る水を貯える貯水手段の水位検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、炊飯器等の加熱調理器は、水と米とを加熱して炊飯調理を行っている。このとき、加熱により水蒸気等(以下、蒸気という)が発生する。従来の加熱調理器では、蒸気孔を設け、加熱により発生する蒸気を調理器本体外に排出し、不要な水分の除去、圧力調整等をはかっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−305518号公報(第1―2頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した加熱調理器では、調理中(炊飯中)に発生する蒸気を蒸気孔から外部へ排出していたため、部屋内の湿度の増大を招いていた。また、蒸気に係る水分が天井、家具、電気製品等において結露することにより、寿命を短くしたり、汚したりしていた。そこで、加熱調理器外部に蒸気を排出しないように、水を貯めるためのタンク(以下、水タンクという)に、発生した蒸気を導いて貯留させた水に通過させることで、蒸気を水に戻す(回収する)調理器もある。
【0004】
ここで、調理(炊飯)をする際、蒸気を水に戻すために、水タンクには最低限の水量を貯留させておく必要がある。また、蒸気を水に戻すことにより水タンク内の水量が増えるため、調理中又は調理後において、水タンクから水があふれないようにするための配慮が必要となる。そのため、上述の水量判断に係る水位検知を少なくとも行うための水位検知手段を設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、様々な要因により、水位検知手段による検知が正確に行えなくなり、誤検知が発生することがある。例えば、光学式の水位検知手段の場合は、外光が入射することで、検知に係る値が変化するため、水位が達したかどうかを正確に判断できなくなる可能性がある。そこで、本発明においては、誤検知を防止し、水位検知の精度の維持を図ることができる加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る加熱調理器は、光を点滅させて発する発光手段及び発光手段に係る光を受けて、光の強さに基づく信号を送信する受光手段を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段と、発光手段の点灯時における光の強さを表す値と消灯時における光の強さを表す値との差を算出し、算出した差及び判別閾値に基づいて、貯水手段の水が所定の位置に達したかどうかを判断する処理を行う制御処理手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る加熱調理器によれば、制御処理手段が、発光手段の点灯時における光の強さを表す値と点灯時における光の強さを表す値とから算出した差に基づいて、所定の位置に水が達しているかどうかを判断するようにしたので、発光手段が発する光以外の外光の影響を除いた上での水位検知の判断を行うことができ、外光による誤検知を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の内部構成の概略を表す図である。ここでは、炊飯を行う炊飯器を加熱調理器の例として説明する。図1において、加熱調理器となる炊飯器の機器本体1は、被加熱物(米、水等)を入れて加熱するための着脱自在の炊飯釜2を内部に収納する空間を有している。また、機器本体1は、開閉自在になるように一端を軸支した蓋体3を上部に有している。蓋体3には、炊飯中に発生する蒸気を通過させるための蒸気パイプ6を配設している。蓋体3は内蓋4を着脱自在に取り付けられるようにしている。内蓋4は、蓋体3が機器本体1の上面開口部を覆った際に、炊飯釜2の上面開口部を覆って内部を密閉状態にするものである。
【0009】
また、機器本体1は、炊飯釜2を加熱するための加熱体5を底部上方に有している。そして、炊飯釜2の脇には、蒸気パイプ6を通過した水蒸気を回収し、貯留する貯留手段となる水タンク7を設置する。
【0010】
図2は水タンク7の構成例を表す図である。図2(a)は外観の斜視図を表し、図2(b)は構成を分解した図を表す。水タンク7においては、タンク本体7Aの開口部分を水タンク蓋7Bが蓋をしている。タンク本体7Aと水タンク蓋7Bとの間から水が漏れないように、シール部材となるパッキン7Cをタンク本体7A又は水タンク蓋7Bの一方に設けている。ここで、本実施の形態では、後述するように、光学式の水位検知を行う際、タンク本体7Aの同一面側において発光及び受光を行えるように、プリズム等の反射部材(図示せず)を同一形成するものとする。ただ、本発明の内容は同一面側からの発光及び受光を行うものに限定するものではない。ここで、少なくともタンク本体7Aに関しては、経年劣化による変色(黄変化)ができる限り生じないように例えばポリサルフォン樹脂(polysulfone :PSF)、ポリスチレン樹脂、ガラス等の原材料を用いてタンクを形成するものとする。
【0011】
また、水タンク蓋7Bは、蒸気パイプ6との接続孔7D及びこの接続孔7Dから下方に垂下する蒸気導入パイプ7Eを有している。そして、蓋体3を開けた状態にしたときは、蒸気パイプ6が蒸気導入パイプ7Eから離れ、閉じた状態にしたときは、蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7Eとが接続する。ここで、図1に示すように、蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7Eとの接続部分には、蒸気が漏れないようにするためのシール部材となるパッキン6Aを蒸気パイプ6側に設けている。
【0012】
さらに、水タンク7において、通常の使用では水位が達することのない蒸気導入パイプ7Eの上端部分の位置に貫通孔7Fを設け、さらにフラップからなる逆止弁7Gを貫通孔上に設ける。例えば調理中等、炊飯釜2における圧力が高く、蒸気パイプ6側から水タンク7側に発生した蒸気が流れる場合には、逆止弁7Gが貫通孔を塞ぐ。一方、炊飯釜2側が負圧になると、貫通孔から、タンク本体7Aの上端部分における空気を流入させることで、水タンク7内の水が炊飯釜2側に逆流することを防止する。
【0013】
図3は実施の形態1に係る制御処理手段100を中心とした水位検知の判断処理に係る構成を表す図である。本実施の形態の加熱調理器においては、水タンク7の水位(水が貯まっているかどうか)を検知するため、LED等の発光手段80、フォトダイオード等の受光手段81及び増幅器82とを有する光センサである水位検知手段8を機器本体1内に設ける。
【0014】
図1に示すように、上下(鉛直)方向に対しては、水位検知手段8を検知しようとする水位に対応した位置に配設する。本実施の形態では、水タンク7の3箇所における水位検知を行うため、3つの水位検知手段8A、8B及び8Cを備えている。水位検知手段8Aは、蒸気を水に戻すために必要最小限の水が水タンク7内にあるかどうかを検知するために設けている。また、水位検知手段8Bは、水の廃棄を促すための水位(第1段階の水位)に達したかどうかを検知するために設けており、第1段階の水位以上で炊飯を行えば、水タンク7から水が漏れることになるものとする。そして、水位検知手段8Cは、満水位(第2段階の水位)を検知するために設けている。水位検知手段8Cの検知に係る水位は、通常の使用において達することがない水位であり、小さな衝撃を受けただけで水タンク7から水があふれ出るようなレベルの水位である。この水位に達している段階で炊飯を行えば、水タンク7から水が漏れることになるものとする。したがって、調理前の段階で水位検知手段8Bの検知に係る水位に水が達していると判断すると、加熱調理を実行しないようにする。
【0015】
さらに、本実施の形態においては、水タンク7の配設位置よりも内側(炊飯釜2側)となる位置に水位検知手段8を配設する。光学式の水位検知を行うために、タンク本体7Aにおいて光路となる部分があるが、水位検知手段8を水タンク7の配設位置よりも機器本体1の内側に配設することで、光路となる部分も機器本体1の内側に存在することになる。そのため、光路として用いる部分に関しては、外部からの太陽光(紫外線)等に晒される機会を減らすことができる。また、受光手段81が受光する(受光手段81における感度が高い)光の波長特性については450nm以上960nm以下となるようにする。したがっておよそ可視光〜近赤外線の光を用いて水位検知を行うこととなる。例えば、本実施の形態においては、約940nmの波長を有する近赤外線を用いるものとする。
【0016】
制御処理手段100は加熱調理器内の各手段を制御する処理を行う。本実施の形態においては、特に水タンク7の水位検知に係る制御処理を行う。例えば、発光命令信号を送信して発光手段80を発光させ、また、発光命令信号を送信して受光手段81に受光させる。そして、水位検知手段8の検知に係る信号(受光した光の強さを電圧等に変換し、増幅器82で増幅した信号)に基づいて、水タンク7内の水が所定の水位に達しているかどうかを判断する処理を行う。また、水位検知手段8からの信号に係るデータ、処理手順等、制御処理手段100が処理を行うために必要なデータを一時的、長期的に記憶する記憶手段101を有しているものとする。例えば、制御処理手段100は、記憶手段101に記憶されたプログラムに基づく手順により、加熱調理器に関する処理を実行するものとする。また、ここでは用いないものの、調理時間等を計測するための調理タイマ等も有している。報知手段200は、例えば表示手段、音発生手段等からなり、制御処理手段100からの報知信号に基づいて、水タンク7の水が所定の水位に達したことを、例えば表示、音発生等して、視覚、聴覚的に報知する。
【0017】
図4は通常時の水位検知手段8の検知に係る信号等を表す図である。図4(a)に示す実線は水位が達していないときの信号を表し、点線は水位が達したときの信号を表す。本実施の形態において、制御処理手段100は、発光手段80を点滅させるようにパルス(方形)状の発光命令信号を送信する。発光手段80が発光命令信号に基づいて光を点滅させることにより、受光手段81の受光に係る信号はパルス(方形)状の信号となる。ここで、発光手段80の点灯時に係る出力値(受光手段81の受光に係る光の強さに対応した電圧値)をVonとし、消灯時に係る出力値をVoffとする。
【0018】
そして、加熱調理器の使用環境において干渉が生じないように、家電機器において用いられている周波数及びこの周波数の高調波に係る周波数とならないような周期で発光手段80を点滅させるようにする。そのため、例えば蛍光灯の点滅周波数(50Hz、60Hz)、テレビ等の赤外線リモートコントローラが発する周波数38kHz等の周波数、高調波とならないようにする。
【0019】
図5は制御処理手段100による水位検知に係る処理を行うフローチャートを表す図である。まず、水位検知処理を開始すると、水位検知手段8からの検知に係る信号を入力し、各水位検知手段8A、8B、8Cの発光手段80の点灯時に係る出力値Vonと消灯時に係る出力値をVoffとを読み取る(S1)。
【0020】
そこで、制御処理手段100は、水位検知手段8A、8B、8Cの検知に係る出力差D1、D2、D3を算出する(S2)。出力差Dは発光手段80の点灯時に係る出力値Vonと消灯時に係る出力値Voffとの差(Von−Voff)により算出する。例えば、太陽光等による外光が受光手段81に入射することで、バイアス電圧が出力値に含まれ、信号における全体的に出力値が上昇する。そのため、出力値Vonから、バイアス電圧が支配的な出力値Voffを引くことで、外光による影響をなくした出力差Dを算出し、水位検知の判断に利用することで、水位検知の精度を維持することができる。
【0021】
ここで、本実施の形態における水位検知は、空気と水との屈折率の違い(空気1.00、水1.33)を利用し、屈折に関するスネルの法則及び反射、透過に関するフレネルの公式に基づいて行う。例えば、反射面(界面)における媒質が空気の場合は、発光手段80の発光により、タンク本体7A(プリズム)に入射した光は、タンク本体7A内で反射を繰り返し、ほぼ減衰することなくタンク本体7Aから出て受光手段81に入る。一方、反射面における媒質が水の場合は、タンク本体7Aに入射した光のほとんどが水側に進行してしまって受光手段81には光がほとんど入らない。
【0022】
そこで、出力差D1と、あらかじめ定めておいて記憶手段101に記憶しておいた判別閾値Tとを比較し、出力差D1の方が判別閾値Tよりも小さいかどうかを判断する(S3)。判別閾値Tよりも小さくないもの(判別閾値T以上)と判断すると、最低限必要な水位に達していないもの(水不足)として(S6)、報知手段200に報知信号を送信し、例えば、水タンク7内の水の追加を促す報知を行わせる(S7)。ここで、例えば水位検知を定期的に行い、水不足であると判断している間は、炊飯(加熱調理)等を行えないようにしてもよい。
【0023】
一方、S3において、出力差D1の方が判別閾値Tよりも小さいものと判断すると、出力差D2と判別閾値Tとを比較し、出力差D2の方が判別閾値Tより小さいかどうかを判断する(S4)。出力差D2の方が判別閾値Tよりも小さくないもの(判別閾値T以上)と判断すると、水位検知手段8Bの検知に係る水位まで達していないことになるため、水位検知に係る処理を終了する。
【0024】
一方、S4において、出力差D2の方が判別閾値Tよりも小さいものと判断すると、さらに、出力差D3と判別閾値Tとを比較し、出力差D3の方が判別閾値Tより小さいかどうかを判断する(S5)。
【0025】
出力差D3が判別閾値Tよりも小さくないもの(判別閾値T以上)と判断すると、水位検知手段8Cの検知に係る水位まで達していないため、水タンク7内の水の廃棄を促す第1段階の水位には達したものとして(S8)、報知手段200に報知信号を送信し、例えば、水タンク7内の水の廃棄を促す報知を行わせる(S9)とともに、炊飯(加熱調理)前には、炊飯等を行えないように調理開始を停止させる(S10)。
【0026】
S5において、出力差D3が判別閾値Tよりも小さいものと判断すると、水タンク7から水があふれ出るような第2段階の水位に達しているものとして(S11)、報知手段200に報知信号を送信し、例えば、第1段階の水位に達した場合とは異なる、早急に水タンク7内の水の廃棄を促す報知を行わせ(S12)、調理開始を停止させる(S13)。場合によっては、例えば炊飯(加熱調理)等を行えないように調理を停止させる。
【0027】
図6は表面傷、汚れ付着等時の水位検知手段8の検知に係る信号等を表す図である。図4と同様に、実線は水位が達していないときの信号を表し、点線は水位が達したときの信号を表す。図6に示すように、水タンク7に汚れが付着等している場合、特に水位が達していない場合には、出力値Vonが著しく減少する。そこで、本実施の形態では、傷等判別閾値T11を、あらかじめ定めておいて記憶手段101に記憶しておく。そして、制御処理手段100は、通常では水が達しない水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonと傷等判別閾値T11とを比較し、出力値Vonが傷等判別閾値T11より低いと判断すれば、報知手段200に報知信号を送信し、例えば、水タンク7の交換、洗浄等を促す報知を行わせるようにする。これにより、汚れ、傷等による誤検知を防止する。
【0028】
以上のように実施の形態1の加熱調理器によれば、発光手段80を所定の周期で点滅させ、制御処理手段100は、発光手段80の点灯時に係る出力値と消灯時に係る出力値をVoffとの差である出力差Dを算出し、判別閾値Tと比較することにより、水が達しているかどうかを判断するようにしたので、発光手段80が発する光以外の外光の影響を除いた上での水位検知の判断を行うことができる。そのため、外光による誤検知を防止することができる。このとき、点滅の周期に係る周波数については、家電機器において用いられている周波数及びこの周波数の高調波となる周波数とならないようにしたので、干渉、ノイズの混入等を防ぐことができるため、誤検知を防止することができる。
【0029】
また、水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonが傷等判別閾値T11より低いと判断すれば、例えば、水タンク7の交換、洗浄等を促す報知を行わせるようにしたので、誤検知を防止するための対応を素早く行うことができる。
【0030】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2に係る制御処理手段100を中心とした水位検知の判断処理に係る構成を表す図である。図7において、図3と同じ番号を付した手段は、実施の形態1において説明したことと同様の動作を行う。また、加熱調理器の構成については、図1を用いて説明する。
【0031】
図7に示すように、本実施の形態においては、水位検知手段8において、増幅器82のほかに、増幅器83を設けるものとする。ここで、増幅器82と増幅器83とは、光の強さの変換に係る電圧の増幅率が異なり、増幅器83の方が増幅率が高い。そのため、傷、汚れ等により吸収、散乱することで、弱くなった光を変換した電圧を増幅させることにより、水位に達したときと達していないときの出力値Vonの差を広げる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、増幅器切り替え用閾値T21を、あらかじめ定めておいて記憶手段101に記憶しておく。そして、制御処理手段100は、通常では水が達しない水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonと増幅器切り替え用閾値T21とを比較し、出力値Vonが増幅器切り替え用閾値T21より低いと判断すれば、増幅器82から増幅器83に切り替えて水位検知の判断処理を行うようにする。ここで、本実施の形態では、2種類の増幅器を設け、増幅器の切り替えを行って増幅率の変更を行っているが、増幅率を一定の範囲で任意に変更可能な可変の増幅器を設けることにより増幅率の変更を行うようにしてもよい。
【0033】
以上のように実施の形態2の加熱調理器によれば、水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonが増幅器切り替え用閾値T21よりも低いと判断すれば、増幅器を切り替えて水位検知の判断処理を行うようにしたので、水タンク7の汚れ、傷等により検知に係る電圧の低さをカバーし、誤検知を防止することができる。
【0034】
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3に係る発光手段80に送信する発光命令信号を表す図である。上述した実施の形態2においては、増幅器82及び83により受光手段81に係る電圧の増幅率を変更させて、傷、汚れ等により生じる光の弱さを補うようにした。本実施の形態は、発光手段80が発する光の強さを変更して補うようにしたものである。
【0035】
そのため、制御処理手段100は、発光手段80を点滅させる、例えば周期を10msとしたパルス状の発光命令信号を送信する際、パルス幅(デューティ比)を変更するようにする。例えば、通常の場合の水位検知においては、パルス幅を変更し、Duty比が20%となるように発光命令信号を送信して発光させる。
【0036】
そして、上述の実施の形態2と同様に、水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonが定めた切り替え用閾値よりも小さくなると、例えばDuty比を50%、80%、90%と大きくしていくようにパルス幅を変更する。このようにDuty比を大きくしていくことにより、水タンク7の汚れ、傷等により検知に係る光が弱くなってしまわないようにして誤検知を防止することができる。
【0037】
ここで、例えば、出荷時(新品時)における水タンク7に対する出力値Vonの初期値Vonfを試験等を行うことにより定めておき、そのデータを記憶手段101に記憶させておく。そして、出力値Vonと初期値Vonfとの比を算出し、その逆数がDuty比となるパルス状の発光命令信号を送信するようにしてもよい。
【0038】
以上のように実施の形態3の加熱調理器によれば、水位検知手段8Cの検知に係る出力値Vonが傷等により低くなっているものと判断すれば、発光手段80を点滅させる際のパルスにおけるDuty比を変更して光の強さを変更して発光させるようにしたので、水タンク7の汚れ、傷等により受光手段81の検知に係る光が弱くなってしまわないようにして誤検知を防止することができる。
【0039】
実施の形態4.
図9は本発明の実施の形態4に係る通常時と結露時の水位検知手段8の検知に係る信号の概略等を表す図である。図9(a)は通常時と結露時の水位に達する前後の境界部分における出力値Vonについて表しており、図9(b)は、図9(a)の状態1と状態2における様子を表に表したものである。
【0040】
例えば、通常の炊飯調理等を行っている場合には、蒸気の圧力が高いため、蒸気は水タンク7内の水を通過する。しかし、パッキン6A、パッキン7Cが破損、パッキン6Aが接続孔7Dにきちんと嵌らない、逆止弁7Gが作用しない等、異常が発生した場合には、貫通孔7F等から水タンク7内に蒸気が漏れ、水タンク7内が結露する場合がある。また、場合によっては、粥等を炊飯するモードのように発生する蒸気圧が低い場合も蒸気が漏れることもある。
【0041】
水タンク7内が結露すると、くもりが生じ、受光手段81が受ける光が急激に弱くなるため、例えば、水が達していないのに、結露により水が達したものと判断してしてしまうことがある。そこで、本実施の形態は、誤検知を防ぐために結露であるかどうかの判断を行う。
【0042】
図9に示すように、通常時における、水位に達する前後の境界部分では、徐々に水が貯まっていくことから、水の貯まり具合に応じて緩やかに出力値Vonが減少していく(図9(a)では詳細に示していないが、実際には、泡等の発生により水面が振動するため、減少過程においては出力値Vonも変動する)。
【0043】
一方、結露時においては、漏れた蒸気の水タンク7内での拡がり方が激しいため、異常が生じるとすぐに粒径が小さい水滴が水タンク7内壁面に付着する。そして、その水滴が集まっていき、約1秒後には、水位に達した場合と同様の出力値Vonとなる(約80mV/secの速さで出力値Vonが減少することになる)。
【0044】
ここで、炊飯する米の量等によっても異なるが、例えば、一般的な炊飯では、1回の炊飯(約40分)において、蒸気が約50mlの水に戻り、水タンク7に貯まる。水タンク7の大きさによっても異なるが、約10mm水位が上昇する。したがって、水位検知手段8Bの検知に係る水位と水位検知手段8Cの検知に係る水位とに同時に水が達することはありえない。そのため、水位検知手段8Bの検知に係る出力値と水位検知手段8Cの検知に係る出力値が同時に減少することはない。
【0045】
一方で、結露時においては、水タンク7内での蒸気が拡散するため、水タンク7内が瞬間的にくもり、水位検知手段8Bの検知に係る出力値と水位検知手段8Cの検知に係る出力値が同時に減少する。そこで、制御処理手段100は、水位検知手段8Bの検知に係る出力値と水位検知手段8Cの検知に係る出力値との減少により、同時又は通常では不可能な時間間隔により、2箇所の水位で水が達したものと判断すると、(実際には水が達したわけではなく)結露が生じたものと判断する。そして、例えば報知手段200に報知信号を送信し、結露に係る報知として、例えば使用者に対してモード確認の旨の報知を行わせる。
【0046】
ここで、水タンク7に結露が発生したものと判断した場合でも、調理中に水タンク7から水があふれ出る危険性は低いため、加熱調理は中断せずに行うものとする。そして、終了後に、報知手段200に報知信号を送信し、結露に係る報知として、例えばパッキン6A、パッキン7C、逆止弁7G等の確認を促す旨の報知をおこなうようにしてもよい。
【0047】
ここでは、2箇所の水位においてほぼ同時に水が達したものと判断すると結露と判断するようにしたが、例えば減少に係る出力値の傾きが大きく異なるため、出力値Vonの減少する速度に基づいて、結露であるかどうかを判断するようにしてもよい。また、ここでは出力値Vonに基づいて結露に係る判断を行うようにしているが、例えば、実施の形態1のように、算出した出力差Dに基づいて結露に係る判断を行うようにしてもよい。
【0048】
以上のように実施の形態4の加熱調理器によれば、水位検知手段8Bの検知に係る出力値と水位検知手段8Cの検知に係る出力値とに基づいて、2箇所の水位で水が達したものと判断すると、結露が生じたものと判断するようにしたので、結露による水位の誤検知を防止することができる。このとき、結露を発生させ得る原因となる、モード違い、パッキン6A、パッキン7C、逆止弁7G等の破損等に係る確認を促す報知を報知手段200により行うようにしたので、使用者に素早い対応を促すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した実施の形態では、加熱調理器として炊飯器への適用について説明した。本発明は炊飯器に限定することなく、例えば調理時において蒸気が多量に発生する他の加熱調理器(蒸し器等)にも適用することができる。
【0050】
また、加熱調理器だけでなく、水位検知を行う様々な装置への適用が可能である。例えば家電機器では、除湿機、加湿器等に配設した水タンクの水位検知などがある。また、水でなくても、屈折率や透過率によって他の液体、個体の検知も可能であり、不凍液タンクの液量検知や、クリーナのゴミタンクのゴミ量検知等に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の内部構成の概略を表す図である。
【図2】水タンク7の構成例を表す図である。
【図3】実施の形態1の水位検知判断処理に係る構成を表す図である。
【図4】通常時の水位検知手段8の検知に係る信号等を表す図である。
【図5】実施の形態1に係る水位検知に係る処理を表す図である。
【図6】傷、汚れ付着等時の水位検知手段8の検知に係る信号等を表す図である。
【図7】実施の形態2の水位検知判断処理に係る構成を表す図である。
【図8】実施の形態3に係る発光手段80に送信する発光命令信号を表す図である。
【図9】実施の形態4に係る通常時と結露時の信号の概略等を表す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 機器本体、2 炊飯釜、3 蓋体、4 内蓋、5 加熱体、6 蒸気パイプ、6A パッキン、7 水タンク、7A タンク本体、7B 水タンク蓋、7C パッキン、7D 接続孔、7E 蒸気導入パイプ、7F 貫通孔、7G 逆止弁、8,8A,8B,8C 水位検知手段、80 発光手段、81 受光手段、82,83 増幅器、100 制御処理手段、101 記憶手段、200 報知手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を点滅させて発する発光手段及び受けた光の強さに基づく信号を送信する受光手段を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段と、
前記発光手段の点灯時における前記受光手段の光の強さを表す値と前記発光手段の消灯時における前記受光手段の光の強さを表す値との差を算出し、算出した差及び判別閾値に基づいて、前記貯水手段の水が前記所定の位置に達したかどうかを判断する処理を行う制御処理手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記発光手段の光の点滅周期を、家電機器で用いられる周波数帯及び高調波の周波数に係る周期以外の周期とすることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
光を発する発光手段、該発光手段に係る光を受けて、該光の強さに基づく信号を送信する受光手段及び該受光手段の信号を増幅する、それぞれ増幅率が異なる複数の増幅器を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段と、
該水位検知手段の検知に係る光の強さを表す値及び判別閾値に基づいて、貯水手段の水が前記所定の位置に達したかどうかを判断し、また、前記貯水手段の水が前記所定の位置に達していないと判断したときの光の強さを表す値が、切り替え用閾値よりも低いと判断すると、前記増幅率の高い前記増幅器に切り替える処理を行う制御処理手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
光を発する発光手段及び該発光手段に係る光を受けて、該光の強さに基づく信号を送信する受光手段を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段と、
該水位検知手段の検知に係る光の強さを表す値及び判別閾値に基づいて、貯水手段の水が前記所定の位置に達したかどうかを判断し、また、前記貯水手段の水が前記所定の位置に達していないと判断したときの光の強さを表す値が、切り替え用閾値よりも低いと判断すると、前記発光手段が発する光を強くするために、供給する信号のパルス幅を拡げて送信する処理を行う制御処理手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
光を発する発光手段及び該発光手段に係る光を受けて、該光の強さに基づく信号を送信する受光手段を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の所定の位置における水の有無を検知するための水位検知手段と、
該水位検知手段の検知に係る光の強さを表す値及び判別閾値に基づいて、貯水手段の水が前記所定の位置に達したかどうかを判断し、また、前記貯水手段の水が前記所定の位置に達していないと判断したときの光の強さを表す値と、前記貯水手段の初期状態における光の強さを表す値との比に基づいて、前記発光手段に供給する信号のパルス幅を決定する処理を行う制御処理手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
光を発する発光手段及び該発光手段に係る光を受けて、該光の強さに基づく信号を送信する受光手段を有し、被加熱物の加熱による水蒸気の回収に係る水を貯える貯水手段の各所定の位置における水の有無を検知するための複数の水位検知手段と、
各水位検知手段の検知に係る光の強さを表す値及び判別閾値に基づいて、貯水手段の水が前記各所定の位置に達したかどうかを判断し、また、同時又は所定の時間差以内に、2箇所以上の位置において、前記水が達していない状態から前記水が達した状態になったものと判断すると、前記貯水手段内が結露したものと判断する処理を行う制御処理手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
前記制御処理手段は、同時又は所定の時間差以内に、2箇所以上の位置において前記水が達した状態になったかどうかを判断する代わりに、前記発光手段の光の強さを表す値が変化する速度に基づいて、前記貯水手段が結露したかどうかを判断することを特徴とする請求項6記載の加熱調理器。
【請求項8】
報知信号に基づく報知を行うための報知手段をさらに備え、
前記制御処理手段は、前記結露であると判断すると、結露発生に係る報知信号を前記報知手段に送信することを特徴とする請求項6又は7記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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