説明

加熱調理器

【課題】ヒーターへの汚れの付着を防ぎ、さらに熱せられたヒーターに水や油が接触して発生する煙を抑制し、クリーンで耐久性に優れていること。
【解決手段】焼き網は、長方形の第1の平坦部11を有し、前記第1の平坦部11の短辺はヒーター下9の幅よりも広く、前記第1の平坦部11の長辺をヒーター下の直線部9aと平行に配置し、前記第1の平坦部11にてヒーターの少なくとも直線部を上方から見て覆い、前記焼き網4の前記第1の平坦部長辺外側に孔14が形成された構成として、被加熱物7から発生する水分や油分がヒーター下9に触れずに受け皿2に落下するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用する、魚等の被調理物を加熱調理するための加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の魚等の被調理物を加熱調理する加熱調理器は、通常、被調理物をヒーター等により加熱調理する位置に載置するのに焼き網が用いられている。
【0003】
図5は従来の加熱調理気を示す。図5に示すように、焼き網4はヒーター下9の上方に保持され、ヒーター上8の下方に載置されている。被加熱物から出てくる水や油は、下方に載置された受け皿2に受け止めて溜められるように構成されている。
【0004】
また、焼き網は、焼き網を所定の位置に保持する脚部と、ヒーターにより加熱調理される被加熱物が載置される網体から構成され、網体は縁部と複数本の線材とから構成されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、焼き網は、線材の間隔をあけて配置する構成であるため、調理中に調理物から発生した水や油が受け皿に落ちる際に、高温のヒーターに直接水や油が接触して、煙を発生することがある。従来、発生した煙が庫外へ流出するのを抑制するために触媒を設けているものもある(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、高温のヒーターに水や油が接触する際に、そこに含まれた調理物の成分などがヒーターに付着してこびりついたり、発生した油煙によって加熱庫内の壁面が著しく汚れることがある。このような場合に、ヒーターに通電して加熱することでヒーターや壁面に付着した油分や調理くずを熱により焼ききるというクリーニング機能を搭載しているものもある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−305195号公報
【特許文献2】特開2004−261486号公報
【特許文献3】特開2004−084086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記触媒を設けているものでも、完全に煙を除去することはできず、より煙を除去しようとすると高価な触媒を使用する必要があった。また、前記クリーニング機能を搭載したものにおいては、そのために調理とは別途操作や時間、電力を要する。また、ユーザーの任意によるクリーニングとなる場合には、クリーニングを忘れる場合が想定され、付着した汚れが放置されることが原因でヒーターが腐食し、調理器が故障するという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、通常調理中にヒーターへ汚れが付着することを防ぐことでクリーニング機能を働かせずにヒーターの腐食を防止し、さらに熱せられたヒーターに油が接触する際に発生する煙の量を抑制して、耐久性に優れたクリーンでお手入れのしやすい加熱調理機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、被調理物を加熱調理するための加熱調理器であって、内部に収容された被調理物を加熱調理する加熱庫と、前記加熱庫の前面に形成された開口部を開閉するドアと、前記加熱庫内に設置されたヒーターと、前記ヒーター下方に載置される受け皿と、前記加熱庫内であって前記ヒーター上方に保持され調理物を載置する焼き網とを備え、前記焼き網は、略長方形の第1の平坦部を有し、前記第1の平坦部の短辺の長さはヒーターの幅以上で、前記第1の平坦部の長辺をヒーターの直線部と略平行に配置し、前記第1の平坦部にてヒーターの少なくとも直線部を上方から見て前記ヒーターが見えないように覆い、前記長辺の外側に孔が形成された構成としたものである。
【0011】
これによって、調理物から発生した水や油は前記孔から滴下し、前記ヒーターと接触することなく前記受け皿へ到達させることができるとともに、前記孔よりヒーターの輻射熱を前記被調理物まで到達させることができるため、被調理物を輻射熱により十分に加熱しつつ、ヒーターに水や油が接触して煙が発生するのを防止することができる。また、ヒーターに水や油が接触しないため、そこに含まれた調理物の成分などがヒーターに焦げ付いてヒーターを腐食させることも防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理器は、ヒーターに水や油が直接接触しないために、煙の発生が抑制されて庫内全体の油煙による汚れが減少し、また庫外へ排出される煙も減少し、さらにヒーターへの汚れのこびりつきがないためヒーターを清潔に保て、ヒーターやヒーターの取付金具の腐食を軽減することができる。
【0013】
このことにより、高価な触媒を用いたり触媒を設けなくても煙の庫外への流出が少なく、セルフクリーニング機能を使用しなくても汚れが少なくクリーンで耐久性に優れお手入れのしやすい加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の焼き網の詳細図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器のヒーター下と焼き網の位置関係を示した上面図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器の加熱庫の断面図
【図5】従来の加熱調理器の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、被調理物を加熱調理するための加熱調理器であって、
内部に収容された被調理物を加熱調理する加熱庫と、前記加熱庫の前面に形成された開口部を開閉するドアと、前記加熱庫内に設置されたヒーターと、前記ヒーター下方に載置される受け皿と、前記加熱庫内であって前記ヒーター上方に保持され調理物を載置する焼き網とを備え、前記焼き網は、略長方形の第1の平坦部を有し、前記第1の平坦部の短辺の長さはヒーターの幅以上で、前記第1の平坦部の長辺をヒーターの直線部と略平行に配置し、前記第1の平坦部にてヒーターの少なくとも直線部を上方から見て前記ヒーターが見えないように覆い、前記長辺の外側に孔が形成された構成としたものである。これによって、水や油が前記平坦部近傍の孔から落下し、前記ヒーターの直線部と接触することなく前記受け皿へ到達させることができるとともに、前記孔よりヒーターの輻射熱を被調理物まで到達させることができる。これにより、被調理物を輻射熱により十分に加熱しつつ、ヒーターに水や油が接触して煙が発生するのを抑制することができるため、調理中に発生する煙の量を減少させることができ、加熱庫内全体の油煙による汚れを低減させるとともに、高価な触媒を用いたり触媒を設けなくても煙の発生の少ない調理器を提供することができる。また、ヒーターに水や油が接触しないため、そこに含まれた被調理物の塩分などがヒーターに焦げ付いてヒーターを腐食させることも防ぐことができるため、クリーニング機能を使用しなくても耐久性の高い調理器を提供することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明において、ヒーター付近の孔の周囲の一部または全周に、下向きにリブを設ける構成としたものである。これによって、孔の縁に到達した油や水が孔から下へ落下する前に前記平坦部の下面を伝ってヒーターの直上から落下することを防ぎ、より確実に油や水のヒーターへの接触を防ぐことができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、第1の平坦部に繋がれた第2の平坦部にてヒーターの湾曲部を覆う構成としたものである。これによって、ヒーターの直線部に加えて湾曲部も平坦部で覆うことができるため、水や油がヒーターに接触する可能性がさらに低下し、より煙の発生を抑制することができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1から3のいずれか1つの発明において、ヒーターを保持するヒーター金具を備え、第1または第2の平坦部に繋がれた第3の平坦部にてヒーター金具を覆う構成としたものである。これによって、ヒーターを保持するヒーター金具の腐食も防止することができ、より耐久性に優れた調理器を提供することができる。
【0019】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1つの発明において、第1から第2のいくつかあるいはすべての平坦部内に凸部を設けた構成としたものである。これによって、被調理物は凸部の上面に保持されて、凸部と凸部との間の被調理物が焼き網と接触しにくくなるので、調理物と焼き網との接触面積を減らすことができ、被調理物の油を落とすことができる。また、凹凸があることで調理物がずれにくくなり、ドアの開閉時などに調理物がずれたり落ちたりしにくくすることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態における加熱調理器は、システムキッチンのカウンタのロースター部に組み込まれた加熱調理器である。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の構成を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように、加熱庫1は、焼き網4に載置された魚等の被調理物7の表側を上方から加熱調理するヒーター上8、および焼き網4の下方から被加熱物7の裏側を加熱調理するヒーター下9を内蔵している。
【0024】
ヒーター上8およびヒーター下9はそれぞれ加熱庫1の壁面に取り付けられたヒーター金具5によって支持されている。加熱庫1は、排気筒10により外部と連通されており、被加熱物7の加熱調理中に発生する油煙や水蒸気等を排出できるようになっている。
【0025】
ヒーター下9の下方には受け皿2が設けられ、焼き網4は受け皿2に載置された焼き網脚4aによって、ヒーター下9の上方に保持されている。
【0026】
受け皿2は、加熱庫1の前面を塞ぐように設けられているドア3に着脱自在に連結され、ドア3を押し引きされることにより、焼き網4および被調理物7とともに加熱庫1に出し入れ自在に収納される。受け皿2は、被加熱物7から出てくる水や油脂等を受け止めて溜められるように形成されている。
【0027】
図2は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の焼き網の詳細図である。
【0028】
図2に示すように、焼き網4には略長方形の第1の平坦部11と、第1の平坦部11に接するように設けられた第2の平坦部12と、第1の平坦部11あるいは第2の平坦部12に接するように設けられた第3の平坦部13とを有し、第1の平坦部の長辺の外側には孔14が設けられている。
【0029】
孔14の周囲の一部には、下向きにリブ15が形成されている。このリブ15は、本実施の形態では孔14の周囲の一部に設けているが、孔14の全周にあってもよい。
【0030】
平坦部の一部には、被調理物7と焼き網4との接触面積を減少させて被調理物7の油が落ちるように、上向きに凸部16が設けられている。さらに、水や油が流れて孔14に到達するように、孔14は最も低い面に接するように設けられている(例えば図のd部)。
【0031】
凸部16はドア開閉方向に対して垂直方向に長い形状となっており、ドア3を開閉する際に被調理物7がずれるのを防ぐ効果もある。凸部は本実施例ではビードだが、リブなどでもよい。また、凸部の頂点はなるべく同一平面状(図4の線b)にあると、調理物が載置しやすくてよい。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器のヒーター下9と焼き網4の位置関係を示した上面図である。
【0033】
図3に示すように、上方から見て、第1の平坦部11はヒーター下9のヒーター下直線部9aを、第2の平坦部12はヒーター下湾曲部9bを、第3の平坦部13はヒーター金具5をそれぞれ覆う位置に設けている。
【0034】
第1の平坦部11の短辺の長さは、ヒーター下9の幅よりも広くなっているため、上方から見てヒーター下9が見えないように覆うことができる。
【0035】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
図4は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱庫の断面図であり、被加熱物7を加熱したときの様子を説明する。
【0037】
図4において、調理物7を加熱する際に発生した水や油脂などは、焼き網4上の凸部16を避けて孔14へと流れ、そこからリブ15を伝って矢印cのように下方へと滴下する。孔14はヒーター上部を避けて設けられているため、滴下した水や油脂等はヒーター下9に接触することなく受け皿2へと到達する。
【0038】
そのため、水や油脂がヒーター下9に接触して煙が発生することを防ぎ、加熱庫1の外への煙の流出も抑制することができる。なお、受け皿2に水を入れておくことで、さらに油煙の発生を抑制することができる。
【0039】
排気筒10内には、煙を分解・除去する触媒(図示せず)が設けられているが、煙の発生が少ないため、触媒の性能を長く保たせることができる。また、性能の低い安価な触媒でも煙の加熱庫外への流出量を抑制できる。さらに、触媒を設けない場合でも、庫外への煙の流出を抑制する効果がある。
【0040】
ここで、図の矢印aの方向へは、ヒーター下9の輻射熱は孔14を通って焼き網4に遮断されることなく被調理物7へ到達する。このことによって、ヒーター下9が焼き網4で覆われているにもかかわらず、加熱調理の性能が確保できる。
【0041】
ただし、焼き網4もヒーター下9によって熱せられるので、焼き網4が発する輻射熱によっても被調理物7を加熱できる。
【0042】
なお、輻射熱を塞がないように、リブの高さは高すぎないほうがよい。また、孔14が多いほど輻射熱がヒーター下9から直接被調理物7へと到達するので良く焼ける。また、孔14が大きいほど良く焼けるが、孔14が大きいとめざしなどの小さい被調理物が落下しやすくなるので、適度な大きさにするのがよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態によって煙の発生を抑制し、ヒーターへの汚れの付着を防ぐことができるので、庫内壁面の汚れを抑制し、庫外への煙の発生を抑え、ヒーターの腐食を抑制するクリーンで耐久性の高い加熱調理器を提供することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、ヒーター下9の根元は温度があまり上昇せず油が接触しても出る煙は少ないため、輻射熱を優先して孔14を開けているが、ここも平坦部で覆って汚れを防止しても良い。
【0045】
なお、本実施の形態ではヒーター下直線部9aが主に横向きに配置されているので、焼き網の長方形の平坦部は長辺が横になっているが、図3の11bのようにヒーター下の直線部分が主に縦向きで配置されている場合は、焼き網の長方形の平坦部は長辺が縦になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、焼き網上で調理する際に発生する煙の量を抑制できるので、フィッシュロースターやトースター、ロースターやグリルを備えたIHクッキングヒーターなど、網焼き調理を行う調理機器全般に有効である。
【符号の説明】
【0047】
1 加熱庫
2 受け皿
3 ドア
4 焼き網
5 ヒーター金具
7 被加熱物(被調理物)
8 ヒーター上
9 ヒーター下(ヒーター)
9a ヒーター下直線部(ヒーターの直線部)
9b ヒーター下湾曲部(ヒーターの湾曲部)
11 第一の平坦部(第1の平坦部)
11b 第1の平坦部(縦)
12 第二の平坦部(第2の平坦部)
13 第三の平坦部(第3の平坦部)
14 孔
15 リブ
16 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱調理するための加熱調理器であって、内部に収容された被調理物を加熱調理する加熱庫と、前記加熱庫の前面に形成された開口部を開閉するドアと、前記加熱庫内に設置されたヒーターと、前記ヒーター下方に載置される受け皿と、前記加熱庫内であって前記ヒーター上方に保持され調理物を載置する焼き網とを備え、前記焼き網は、略長方形の第1の平坦部を有し、前記第1の平坦部の短辺の長さはヒーターの幅以上で、前記第1の平坦部の長辺をヒーターの直線部と略平行に配置し、前記第1の平坦部にてヒーターの少なくとも直線部を上方から見て前記ヒーターが見えないように覆い、前記長辺の外側に孔が形成された構成とした加熱調理器。
【請求項2】
孔の周囲の一部または全周に、下向きにリブを設ける構成とした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
第1の平坦部に繋がれた第2の平坦部にてヒーターの湾曲部を覆う構成とした請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
ヒーターを保持するヒーター金具を備え、第1または第2の平坦部に繋がれた第3の平坦部にてヒーター金具を覆う構成とした請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
第1から第2のいくつかあるいはすべての平坦部内に凸部を設けた構成とした請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−189047(P2011−189047A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59057(P2010−59057)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】