説明

加熱調理装置

【課題】 蓋2の開閉に要する時間を削減し、作業効率を向上させるとともに、加熱製品の品質を向上させることのできる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】 底のある円筒形状であって上面は蓋2を設けることで開閉を可能としている釜本体1と、釜本体1内に収容した食材を加熱するための加熱手段をもった加熱調理装置において、釜本体上部の蓋2部分に釜の部材を貫通する食材搬入口6を設け、食材搬入口6の上方部に食材搬入路10を接続しておき、食材搬入路10の途中に釜本体内への食材搬入を制御する食材搬入制御装置11を設ける。また、釜本体1の底部に釜の部材を貫通する食材搬出口7を設け、食材搬出口7の下方部に食材搬出路12を接続しておき、食材搬出路12の途中に釜本体内からの食材搬出を制御する食材搬出制御装置13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品を加熱調理する加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場など比較的大規模な調理場等において食材を加熱する場合に、上面は開口した底のある円筒形の容器と上面の開口部を塞ぐ蓋によって釜本体を構成した加熱調理装置を使用して加熱することが広く行われている。加熱調理装置では加熱手段を設けておき、釜本体内の食材に対してボイルや蒸しなどの加熱調理を行う。加熱手段としては、釜本体底部に蒸気ジャケットやバーナなどを設けて釜本体の外面から加熱するものや、釜本体内に蒸気を導入することで釜本体内を直接加熱するものなどがある。加熱調理装置による加熱調理の手順は、最初に蓋を開いて釜本体内に食材類を収容し、次に蓋を閉じて加熱手段によって食材の加熱調理を行い、加熱調理が終了すると蓋を開いて調理済みの食材を取り出すという一連の工程で行われる。
【0003】
また、食材を加熱する場合に釜本体内を密閉して加圧することができるようにしておくことで釜内を高温高圧とし、加熱調理時間の短縮や製品の品質向上を図ることも広く行われている。内部に大きな圧力がかかる圧力釜の場合、蓋は内圧にうち勝つことができるものが必要であるため、実用新案登録第2553779号公報に記載されているようなクラッチ式の蓋締結装置を使用している。クラッチ式の蓋締結装置を持った圧力釜にて蓋を閉じる場合、はね上げていた蓋を倒して開口部を塞ぎ、その後に釜の胴体部と蓋部に設けている歯を挟み込むクランクピースを閉方向に動作させ、歯を挟み込むことで蓋を固定する。蓋を開く場合は、まずクランクピースを開方向に動作することで蓋の固定を解除しておき、次に蓋をはね上げることで蓋を開く。圧力釜の場合、蓋を開閉するごとにクラッチ部分の固定と解除の動作が必要となるため、その分蓋開閉に要する時間は長くなる。
【0004】
蓋を開閉する場合、蓋を上下方向に移動させるのにそれぞれ15秒程度、クラッチ部分の開閉動作にもそれぞれ5秒程度必要である。蓋を開いて釜本体内に食材類を搬入、蓋を閉じて加熱調理、蓋を開いて調理済みの食材の搬出を1サイクルとしている加熱調理装置では、蓋開動作・蓋閉動作・蓋開動作の合計3回の開閉動作が必要である。そのため、クラッチ開閉の動作が必要な圧力釜であれば1サイクルにおける蓋開閉に要する時間は60秒程、クラッチ開閉の動作は行わないタイプであっても1サイクルで蓋開閉に必要な時間は45秒程となる。蓋の開閉を行っている時間は食材の搬入・搬出のためには必要な時間であるが、その間は食材の加熱には役に立っていない時間である。加熱調理のサイクルを繰り返している加熱調理装置では、蓋開閉に要する時間も積算されることで大きな時間となるため、作業効率が低下する要因となっている。
【0005】
また、加熱する食材が麺類のように加熱時間は比較的短いものであって加熱時間の適正幅は狭いというものであった場合、食材を釜内の湯に投入してから加熱工程を開始するまでの間、及び加熱工程を終了してから食材を取り出すまでの時間帯には加熱量を調節することができないため、その間に行われる加熱によって、品質の低下を招くということもある。
【特許文献1】実用新案登録第2553779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、蓋の開閉に要する時間を削減し、作業効率を向上させるとともに、加熱製品の品質を向上させることのできる加熱調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、底のある円筒形状であって上面は蓋を設けることで開閉を可能としている釜本体と、釜本体内に収容した食材を加熱するための加熱手段をもった加熱調理装置において、釜本体上部の蓋部分に釜の部材を貫通する食材搬入口を設け、食材搬入口の上方部に食材搬入路を接続しておき、食材搬入路の途中に釜本体内への食材搬入を制御する食材搬入制御装置を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、前記の加熱調理装置において、釜本体の底部に釜の部材を貫通する食材搬出口を設け、食材搬出口の下方部に食材搬出路を接続しておき、食材搬出路の途中に釜本体内からの食材搬出を制御する食材搬出制御装置を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、前記の加熱調理装置において、食材搬入路の先端部には釜本体内へ搬入する食材を食材搬入路内へ送り込むための投入シュートを設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することで、食材の搬入・搬出を行う場合に蓋を開閉する必要がなくなり、蓋を開閉する代わりに行う食材搬入制御装置や食材搬出制御装置の開閉動作は、蓋の開閉動作に比べて大幅に少ない所要時間で行えるため、作業効率を向上させることができ、製品の品質を向上させることができる。また、蓋を開くことで釜の上面を全開することができるため、釜本体内部の洗浄は容易であり、投入シュートを設けておけば、コンベア装置を組み合わせることで作業性を高めるということもできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本願発明を実施している加熱調理装置の概要を示した正面図、図2は本発明のフローと従来装置のフローを比較するための説明図である。
【0012】
加熱調理装置は、釜本体1と加熱手段及び食材の搬入搬出手段からなる。釜本体1は上面を開放した底のある円筒形の容器と、上面の開口部を塞ぐ蓋2によって構成している。釜本体1の蓋2の固定はクラッチ式蓋締結装置3によって行うようにしており、釜本体1内の圧力が高くなっている場合でも蓋2が勝手に開かないようにしている。蓋2には蓋の部材を貫通させた穴を設けており、穴を食材搬入口6としている。
【0013】
加熱手段としては、釜本体1の底部を覆う蒸気ジャケット4に蒸気を導入することよる外面からの加熱と、釜本体1内へ蒸気を導入することによる直接の加熱が行えるようにしている。蒸気ジャケット4と釜本体1には、それぞれに蒸気配管5を接続しており、蒸気配管の途中に設けた釜本体用蒸気制御弁14及び蒸気ジャケット用蒸気制御弁15を操作することで、釜本体内及び蒸気ジャケット内への蒸気供給を制御する。
【0014】
食材の搬入手段としては、食材を加熱調理装置の真上まで運ぶコンベア装置8、コンベア装置8から落下させた食材を受ける投入シュート9、投入シュート9と食材搬入口6の間を繋ぐ食材搬入路10、食材搬入路10の途中に食材搬入制御装置11をそれぞれ設けておく。食材の搬出手段としては、釜本体1の底部に釜本体の部材を貫通する食材搬出口7を設け、食材搬出口7の下方部に食材搬出路12を接続しておき、食材搬出路12の途中に食材搬出制御装置13を設ける。食材搬入制御装置11と食材搬出制御装置13には、自動で開閉を制御するフルボアボール弁を使用する。食材搬入制御装置11及び食材搬出制御装置13に自動制御弁を使用し、その他の装置も自動化することで、搬入、加熱、搬出からなる運転の工程を自動化することが可能となる。
【0015】
次に加熱調理の工程に沿って説明を行う。加熱調理を行う場合、蓋2は閉じておき、クラッチ式蓋締結装置3によってロックしておく。蓋2は釜本体1内を洗浄する際に釜本体1の上部を全開するために設けているものであり、本実施例では食材の搬入と搬出は食材搬入口6及び食材搬出口7から行うようにしているため、通常時は蓋2を閉じたままとしておく。加熱がボイルであったとすれば、あらかじめ釜本体1内に水をためておき、蒸気ジャケット用蒸気供給制御弁15を開くことで蒸気ジャケット4内へ蒸気を導入し、釜の外面側から釜内部の水を加熱しておく。運転の工程は、まず搬入工程から始まる。釜本体1内への食材の搬入は、食材をコンベア装置8によって投入シュート9の真上まで搬送し、コンベア装置8から投入シュート9内へ落下させて行う。食材の搬入時には食材搬入制御装置11を開いておき、投入シュート9へ落下させた食材は食材搬入路10を通って食材搬入口6から釜本体1内へ搬入させる。食材搬入制御装置11は通常時は閉じておき、搬入工程時のみ開くものであり、食材搬入制御装置11を開くためには2秒程度の時間が必要である。しかし、従来の蓋を開けるフローでは、蓋を開ける動作には20秒程必要であったため、蓋を開く動作に代えて食材搬入制御装置11を開くようにすることで、1回の開動作につき約18秒の短縮が行える。
【0016】
搬入の工程が終了すると、加熱の工程を行う。加熱工程時には、先ほど開いた食材搬入制御装置11を閉じておく必要があるため、食材搬入制御装置11を閉じる動作を行う。食材搬入制御装置11の閉動作時に要する時間も2秒程度であり、ここでも蓋の閉動作に要する時間に比べて約18秒の短縮を行うことができる。食材搬入制御装置11を閉じると、釜本体内を密閉した状態で加熱を行い、釜本体内を高温高圧として食材を加熱する。
【0017】
所定時間の加熱を行い、加熱の工程が終了すると、搬出の工程を行う。食材の搬出は、食材搬出制御装置13を開き、調理済みの食材を食材搬出口7から食材搬出路12へ送り出すことで行う。釜本体1内を密閉した状態で加熱したことにより、釜本体1内では圧力が上昇しているため、この状態で食材搬出制御装置13を開くことで、釜本体1内の食材を食材搬出路12へ押し出すことができる。ここでも食材搬出制御装置13を開く際には、蓋2を開く場合に比べると約18秒短縮することができている。そのため、本実施例では従来フローに比べると、ここまでで54秒の短縮をすることができたことになる。
【0018】
また、食材を釜内の湯に投入してから加熱工程を開始するまでの時間、及び加熱工程を終了してから食材を取り出すまでの時間にも、食材に対する加熱は行われることになる。従来のフローでは、食材投入後の蓋閉動作時に20秒、加熱終了後の蓋開動作時に20秒の合計40秒にも加熱が行われており、この間の加熱はコントロールできない加熱であるため加熱状態にばらつきが生じることがあった。しかし本実施例では、食材投入後の搬入弁閉動作に2秒、加熱終了後の搬出弁開動作も2秒であり、合計の時間は4秒に短縮されているため、加熱状態のばらつきは小さくなり、より安定した品質の製品ができるようになる。
【0019】
なお、本実施例では蓋のロックにクラッチ式蓋締結装置を使用するとしているが、蓋の開閉頻度が少ないのであればボルト締めによってロックすようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明を実施している加熱調理装置の概要を示した正面図
【図2】本発明のフローと従来装置のフローを比較するための説明図
【符号の説明】
【0021】
1 釜本体
2 蓋
3 クラッチ式蓋締結装置
4 蒸気ジャケット
5 蒸気配管
6 食材搬入口
7 食材搬出口
8 コンベア装置
9 投入シュート
10 食材搬入路
11 食材搬入制御装置
12 食材搬出路
13 食材搬出制御装置
14 釜本体用蒸気制御弁
15 蒸気ジャケット用蒸気制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底のある円筒形状であって上面は蓋を設けることで開閉を可能としている釜本体と、釜本体内に収容した食材を加熱するための加熱手段をもった加熱調理装置において、釜本体上部の蓋部分に釜の部材を貫通する食材搬入口を設け、食材搬入口の上方部に食材搬入路を接続しておき、食材搬入路の途中に釜本体内への食材搬入を制御する食材搬入制御装置を設けたことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理装置において、釜本体の底部に釜の部材を貫通する食材搬出口を設け、食材搬出口の下方部に食材搬出路を接続しておき、食材搬出路の途中に釜本体内からの食材搬出を制御する食材搬出制御装置を設けたことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱調理装置において、食材搬入路の先端部には釜本体内へ搬入する食材を食材搬入路内へ送り込むための投入シュートを設けていることを特徴とする加熱調理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate