説明

加熱調理装置

【課題】一般家庭や居酒屋等の小規模飲食店にて1台でいろいろな種類および大きさの食材を効率よく加熱することができる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】被加熱物を回転自在に吊り下げ、その周囲に複数の遠赤外線ヒ−タ−9,9’を設け、その外側に該ヒ−タ−9,9’の輻射熱を反射させる金属板7を設けた竪型加熱調理装置において、複数の遠赤外線ヒ−タ−9,9’がその外側の可撓性を有する金属製の反射板7と一緒に移動自在な構造とし、さらに、各ヒ−タ−9,9’からの被加熱物との距離を調整できるように、被加熱物の吊り下げ位置が移動自在な構造を特徴とする加熱調理装置に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を周囲から効率的に照射して被加熱物である鶏肉や魚や野菜等の食品を加熱調理する装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線の加熱利用は昭和40年代から盛んになり、主として自動車産業に関する塗装乾燥から始まり、加熱処理が短時間で行われることから生産性向上や加熱炉長が短くなることによる省スペ−スの技術として工業界では広く使用され始めた。現在では、熱処理工程の一部門として広く採用されるようになった。
【0003】
一方、食材の加熱方法としても、ガスバ−ナ−の高温燃焼ガスで直接、食材を焼くと表面だけが炭化し易くなり、また、燃焼ガスで鍋等を加熱して、その高温表面に食材を接触させて加熱すると、食材の内部にまで熱が伝わるまでに時間が掛かってしまう欠点がある。そこで、遠赤外線を利用すると電磁波の形で直接、食材に吸収され、その表面も内部も短時間で加熱される特徴がある。具体的には鰻のカバ焼きや焼き鳥の加熱方法である。
【0004】
しかしながら、調理用加熱装置としては、従来より、特許文献1にみられるように、輻射熱で食品に焦げ目をつけるグリル機能と雰囲気温度と遠赤外線で食品温度を上昇させるオ−ブン機能を併せ持つオ−ブン電子レンジとして二種類のヒ−タ−を天井部分に設け、更に下部にも加熱用のヒ−タ−が設けられたオ−ブンが提案されている。これだけ数種類のヒ−タ−を設けても、被加熱物は下部に静置されており、その大きさが変われば、各ヒ−タ−からの熱の利用効率が最適にはならず、しかもドリップが発生すると下部ヒ−タ−上に落ちる欠点がある。
【0005】
また、特許文献2にみられるように、燃焼ガスを左右の壁および天井に流して耐熱金属板製の壁面から放射される輻射熱で被加熱物を加熱する方法が提案されている。しかし、被加熱物は下のトレ−の上に設けられた網にのせて加熱されるので、被加熱物の上面と下面で加熱状態に差が発生してしまう欠点がある。
【0006】
そこで、本発明者は、株式会社ドライアップジャパンのインタ−ネットホ−ムページおよび非特許文献1にみられるような、被加熱物を回転自在に吊り下げ、その周囲に複数の遠赤外線ヒ−タ−を設け、その外側に該ヒ−タ−の輻射熱を反射させる金属板を設けた竪型加熱調理装置を開発した。代表的な使用方法として焼芋を製造する装置として販売している。しかし、例えば、ほぼ同じ大きさの芋を専用に焼く装置としてならば問題無いが、被加熱体の大きさが小さくなるとヒータ−と被加熱体との間の距離が長くなり、その間に存在する蒸発した水分からなる極性を有する水蒸気に遠赤外線が吸収され、その結果、加熱に要する時間が長くなる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−235525
【特許文献2】特開2000−83834
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】宮崎日日新聞 2010年8月23日地域ニュ−ス 株式会社ドライ アップ ジャパン「遠赤照射焼芋機」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般家庭や居酒屋等の小規模飲食店では、1台でいろいろな種類および大きさの食材を効率よく加熱することが望まれている。従って、本発明の主な目的は、ブロイラ−、魚、ナス、ゴ−ヤ、トウモロコシ、サツマイモ等のいろいろな種類および大きさの食材を効率よく加熱することができる加熱調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ヒータ−の位置および吊り下げ部の位置を調整することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、被加熱物を回転自在に吊り下げ、その周囲に複数の遠赤外線ヒ−タ−を設け、その外側に該ヒ−タ−の輻射熱を反射させる金属板を設けた竪型加熱調理装置において、複数の遠赤外線ヒ−タ−がその外側の可撓性を有する金属製の反射板と一緒に移動自在な構造を特徴とする加熱調理装置を提供するものである。
【0012】
さらに、各ヒ−タ−からの被加熱物との距離を調整できるように、被加熱物の吊り下げ位置が移動自在な構造を特徴とする加熱調理装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般家庭や居酒屋等の小規模飲食店で、1台で色々な食材の大きさに応じて、遠赤外線ヒ−タ−の位置とその食材の吊り下げ位置を調整することにより、最も加熱効率が良く、短時間で加熱できる調理装置を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明の加熱方式によれば、被加熱物を非接触の状態で加熱するので、従来の石焼き芋のように表面が焦げて、そこから水分が蒸発してしまうことも無く、内部の水分が残った状態で焼ける。その結果、ジュ−シ−な料理を提供することが可能となる。
【0015】
また、例えば魚のように加熱中にドリップが発生しても、装置の底には油受けを設けるか、または外部に抜くことができるので、ドリップが燃えて煙が出るようなことは無く被加熱物が煙臭くならないし、また装置が汚れ難い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱調理装置の概略平面断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱調理装置の概略A−A矢視側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して第一の発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係る加熱調理装置の一例の平面断面の概略図である。本体1は周囲の壁の中に断熱材2を設け、天井3には図示されていないが内部で発生した蒸気を逃がす複数の孔が設けられている。
【0018】
図2は図1のA−A矢視の補助線で切断された概略側面図である。吊り具4は天井3の上に設置されたスライド可能な吊り具用駆動装置5により自転し、その吊り具に被加熱物6が吊り下げられながら自転する。
【0019】
その被加熱物の周囲には、金属製の輻射熱反射板7が設けられ、その内側には遠赤外線ヒ−タ−9及び9’が複数本設けられ、ヒータ−9は固定されているが、ヒータ−9’は反射板7と一緒に移動できる。
【0020】
該反射板7は薄い金属製で、その内側面には複数の折り目8が加工され、可撓性がある。該反射板7の端は本体の前面側に設けられたストッパ−10に差し込まれており、容易に抜き差しできる。被加熱物を吊り具に吊るす場合は、反射板の端をP1の位置に差し込み、吊るし終わったら反射板の端を抜いて、P2及びP3のような、被加熱物が遠赤外線ヒ−タ−9’により効率的な加熱ができる位置に差し込む。
【0021】
本体の前面には扉11が設けられ、内部の様子が観察できるように透明な耐熱ガラス12が組み込まれている。運転中は、扉11が閉じられた状態で被加熱体6が自転しながら複数の遠赤外線ヒータ−9及び9’により加熱され、内部で発生した蒸気は天井3に開けられた孔から抜け、ドリップが発生すればドリップ排出孔13から外部に取り出される。
【0022】
遠赤外線ヒ−タ−は3本に限定されるものではなく、4本以上設けられても良い。
【0023】
次に、第二の発明の実施の形態を説明する。被加熱物の大きさに従ってそれを吊るす吊り具の位置を調整する。すなわち被加熱物6が大きな場合は、反射板7の端はストッパ−のP2の位置に差し込まれ、被加熱物が6’が小さな場合は、反射板7の端はストッパ−のP3の位置に差し込まれ、さらに該被加熱物6及び6’とヒ−タ−9及び9’の距離が概略等しくなるように吊り具4および4’は距離Lだけ吊り具用駆動装置5および5’と一緒にスライドし固定する。このように調整することにより、色々な大きさの被加熱物を効率よく加熱することが可能となる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【実施例1】
【0025】
内のり寸法が、幅350mm、奥行き300mm、高さ460mmの大きさの加熱調理装置本体1に、100V500Wの遠赤外線ヒ−タ−9及び9’を3本設け、その内の1本のヒータ−9は固定し、残りの2本のヒ−タ−9’を複数の折り目を表面に加工したステンレス薄板製の輻射熱反射板7の内側に取り付けて、被加熱物6として吊り具4に吊り下げられたブロイラ−と、各3本のヒータ−9及び9’との間の距離が、概略等しくなるように反射板7の端をストッパ−10のP2位置に差し込み、扉11を閉めて、ヒータ−出力80%で加熱した結果、50分間で焼きあがった。なお、該ブロイラ−の最大直径は約210mmあった。
【実施例2】
【0026】
実施例1の装置を使って、ブロイラ−の代わりに、そのまま最大直径約60mmのサツマイモを加熱した結果、大きさがかなり小さいにも拘わらず、焼きあがるのに、同じく50分間も掛かった。そこで、サツマイモと、各3本のヒータ−9及び9’との間の距離が、概略等しくなるように反射板7の端をストッパ−10のP3位置に差し込み、吊り具4’を吊り具用駆動装置5’と一緒に吊り下げ位置を約35mmスライドして固定した後、扉11を閉めて、ヒータ−出力80%で加熱した結果、30分間で焼きあがった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、一般家庭や居酒屋等の小規模飲食店にて1台でいろいろな種類および大きさの食材、例えばブロイヤ−、魚、ナス、ゴ−ヤ、トウモロコシ、サツマイモ等を効率よく加熱することができる加熱調理装置に関するものである。
【符号の説明】
1 本体
4、4’ 吊り具
5、5’ 吊り具用駆動装置
6、6’ 被加熱物
7 輻射熱反射板
8 折り目
9、9’ 遠赤外線ヒ−タ−
10 反射板端ストッパ−
11 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を回転自在に吊り下げ、その周囲に複数の遠赤外線ヒ−タ−を設け、その外側に該ヒ−タ−の輻射熱を反射させる金属板を設けた竪型加熱調理装置において、複数の遠赤外線ヒ−タ−がその外側の可撓性を有する金属製の反射板と一緒に移動自在な構造を特徴とする加熱調理装置
【請求項2】
請求項1において、各ヒ−タ−からの被加熱物との距離を調整できるように、被加熱物の吊り下げ位置が移動自在な構造を特徴とする加熱調理装置

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111468(P2013−111468A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276428(P2011−276428)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(511308130)株式会社ドライアップジャパン (1)
【Fターム(参考)】