説明

加硫ゴム成形体の製造装置および加硫ゴム成形体の製造方法

【課題】加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送する。
【解決手段】加硫容器11の入口部、および出口部12のうちの少なくとも一方に配設されたシール部材13は、通過する未加硫ゴム成形体W等が摺接するシール体14と、加硫容器11に装着されてシール体14を保持する保持体15と、を備えるとともに、未加硫ゴム成形体W等との間に、前記移送方向に沿って複数のシール空間C1〜C3を画成し、保持体15には、加硫容器11の内部Aと外部Bとを連通する連通路17と、連通路17と複数のシール空間C1〜C3とを各別に連結する複数の導入路18と、が形成され、連通路17において、複数の導入路18それぞれに前記移送方向に沿う加硫容器11の内部A側から隣接する各部分に、該移送方向に対して交差する方向に延びる迂回部19が各別に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム成形体の製造装置および加硫ゴム成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加硫ゴム成形体の製造装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、未加硫ゴム成形体を、加圧・加熱状態に保持された内部で通過させながら加硫する加硫容器と、加硫容器において、未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体(以下、未加硫ゴム成形体等という)を内部から退出させる出口部に配設され、通過する未加硫ゴム成形体等との間を通した加硫容器の内部と外部との連通を遮断するシール部材と、を備える構成が知られている。
ここで、シール部材は、加硫容器内における未加硫ゴム成形体等の移送方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、未加硫ゴム成形体等が摺接するシール体と、加硫容器に装着されてシール体を保持する保持体と、を備えている。
そして、このシール部材は、未加硫ゴム成形体等との間に、前記移送方向に沿って複数のシール空間を画成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の加硫ゴム成形体の製造装置では、複数のシール体のうち、前記移送方向に沿って最も加硫容器の内部側に位置する内部側シール体が、加硫容器の内圧により変形して、加硫容器の出口部の内面や未加硫ゴム成形体等に密接することで、この内部側シール体より加硫容器の外部側に位置する他のシール体には、加硫容器の内圧がほとんど作用しないことがあった。
この場合、前記内部側シール体が、前記移送方向の両側から作用する圧力の差によって、前記移送方向に沿った加硫容器の外部側に向けて延ばされるように大きく変形することで、未加硫ゴム成形体等と保持体の内面との間に噛み込まれるおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送することができる加硫ゴム成形体の製造装置および加硫ゴム成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の加硫ゴム成形体の製造装置は、未加硫ゴム成形体を、加圧・加熱状態に保持された内部で通過させながら加硫する加硫容器と、該加硫容器において、前記未加硫ゴム成形体を内部に進入させる入口部、および前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体を内部から退出させる出口部のうちの少なくとも一方に配設され、通過する前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体との間を通した前記加硫容器の内部と外部との連通を遮断するシール部材と、を備える加硫ゴム成形体の製造装置であって、前記シール部材は、前記加硫容器内における未加硫ゴム成形体の移送方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、通過する前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体が摺接するシール体と、前記加硫容器に装着されて前記シール体を保持する保持体と、を備えるとともに、前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体との間に、前記移送方向に沿って複数のシール空間を画成し、前記保持体には、前記加硫容器の内部と外部とを連通する連通路と、該連通路と前記複数のシール空間とを各別に連結する複数の導入路と、が形成され、前記連通路において、複数の導入路それぞれに前記移送方向に沿う前記加硫容器の内部側から隣接する各部分に、該移送方向に対して交差する方向に延びる迂回部が各別に備えられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、連通路において、複数の導入路それぞれに前記移送方向に沿う加硫容器の内部側から隣接する各部分に、該移送方向に対して交差する方向に延びる迂回部が各別に備えられているので、加硫容器の内部から連通路内に流入した流体が、連通路から外部に流出されるまでの過程で、それぞれの導入路に到達する直前にその都度、迂回部を通過することで、この流れに順次、摩擦抵抗を付与して圧力損失を生じさせることが可能になる。
これにより、前記移送方向に沿って並設された複数のシール空間のうち、前記移送方向に沿って最も加硫容器の内部側に位置するシール空間の内圧が、加硫容器の内圧より低く、かつ他のシール空間の内圧よりは高くなって、これらのシール空間の内圧が加硫容器の外部側に位置するものほど低くなることで、前記移送方向で隣り合うシール空間同士の内圧差を抑えることができる。
したがって、複数のシール空間を画成する各シール体に前記移送方向の両側から作用する圧力の差を抑えることが可能になり、シール体の変形を抑制して、シール体が、未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体(以下、未加硫ゴム成形体等という)と保持体の内面との間に噛み込まれるのを防ぐことができる。
また前述のように、加硫容器の内部から連通路内に流入した流体が、連通路から外部に流出されるまでの過程で、複数の迂回部を順次通過することでその都度圧力損失を生じさせることが可能になることから、加硫容器の内部から連通路に流入した流体の勢いが、加硫容器の外部に流出するときまでに十分に緩和されることとなり、この流体の流出量を抑えることができる。
以上より、加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送することができる。
なお、シール体としては、軟質の弾性体に限らず、加硫容器の内圧では変形しない程度の硬質体であってもよい。後者の場合にも、加硫容器の内部から流出する流体の量を抑えることができる。
【0008】
ここで、前記連通路において、複数の導入路のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の外部側に位置する導入路との連結部分と、前記加硫容器の外部側の開口端部と、の間に位置する部分に、前記迂回部が備えられてもよい。
【0009】
この場合、連通路において、複数の導入路のうち前記移送方向に沿って最も加硫容器の外部側に位置する導入路との連結部分と、加硫容器の外部側の開口端部と、の間に位置する部分に、前記迂回部が備えられているので、この迂回部で圧力損失が生じることとなる。
したがって、前記移送方向に沿って並設された複数のシール空間のうち、前記移送方向に沿って最も加硫容器の外部側に位置する最外シール空間の内圧を容易に外気圧より高く保持することが可能になる。
これにより、複数のシール空間のうち、最外シール空間の内圧が、この最外シール空間に加硫容器の内部側から隣接する他のシール空間の内圧と比べて大きく低下するのを防ぐことが可能になり、前述の作用効果が確実に奏功されることとなる。
【0010】
さらに、前記連通路は、前記加硫容器の内部と、複数の前記迂回部のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の内部側に位置する迂回部と、を連通する最内通路と、前記加硫容器の外部と、複数の前記迂回部のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の外部側に位置する迂回部と、を連通する最外通路と、前記移送方向で隣り合う迂回部同士を連結し、かつ複数の導入路のうちの1つが各別に連結された複数の内側通路と、を備え、前記最内通路、内側通路および最外通路それぞれの流路断面積は、前記移送方向に沿って前記加硫容器の外部側に位置するものほど大きく、かつ前記加硫容器の内部側に位置するものほど小さくされ、複数の導入路それぞれの流路断面積は、複数の内側通路のうち当該導入路が連結された内側通路の流路断面積と同等になってもよい。
【0011】
この場合、最内通路、内側通路および最外通路それぞれの流路断面積が、前記移送方向に沿って加硫容器の外部側に位置するものほど大きく、かつ加硫容器の内部側に位置するものほど小さくされ、複数の導入路それぞれの流路断面積が、複数の内側通路のうち当該導入路が連結された内側通路の流路断面積と同等になっているので、複数のシール空間の内圧が、加硫容器の内部側に位置するものほど高く、かつ加硫容器の外部側に位置するものほど低くなる構成を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の加硫ゴム成形体の製造方法は、未加硫ゴム成形体を移送しながら加硫して加硫ゴム成形体を形成する加硫ゴム成形体の製造方法であって、本発明の加硫ゴム成形体の製造装置を用いて加硫ゴム成形体を形成することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送することが可能になり、加硫ゴム成形体を高精度かつ高効率に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る加硫ゴム成形体の製造装置および加硫ゴム成形体の製造方法によれば、加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した加硫ゴム成形体の製造装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す加硫ゴム成形体の製造装置を用いて加硫ゴム成形体を製造している状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る加硫ゴム成形体の製造装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の加硫ゴム成形体の製造装置1では、未加硫ゴム成形体Wを、加圧・加熱状態に保持された内部Aで通過させながら加硫する加硫容器11と、加硫容器11において、未加硫ゴム成形体Wが加硫された加硫ゴム成形体W1を内部Aから退出させる出口部12に配設され、通過する加硫ゴム成形体W1との間を通した加硫容器11の内部Aと外部Bとの連通を遮断するシール部材13と、を備えている。なお、加硫容器11の内部Aは、例えば蒸気等が供給されて加圧・加熱状態に保持される。
【0017】
本実施形態では、未加硫ゴム成形体Wおよび加硫ゴム成形体W1は、長尺状体とされ、その長手方向に沿って移送され加硫容器11の内部Aを通過する。図示の例では、未加硫ゴム成形体Wおよび加硫ゴム成形体W1は、図示されないチューブ基体の外周面を被覆したチューブ状のゴム膜となっている。
なお例えば、チューブ基体を形成する材質としては、ポリアミド等の合成樹脂材料等が挙げられ、ゴム膜を形成する材質としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のゴム材料が挙げられる。
また、加硫容器11は円筒状に形成されている。
【0018】
そしてこの製造装置1は、加硫ゴム成形体W1の中心軸線と、加硫容器11の中心軸線と、を一致させた状態で、加硫ゴム成形体W1を加硫容器11の内部Aから外部Bに退出させるように構成されている。これにより、加硫容器11の内部Aにおける未加硫ゴム成形体W若しくは加硫ゴム成形体W1の移送方向は、加硫容器11の中心軸線が延びる方向とほぼ一致している。
以下、加硫容器11の中心軸線を軸線Oといい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
シール部材13は、前記軸線O方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、通過する加硫ゴム成形体W1が摺接するシール体14と、加硫容器11に装着されてシール体14を保持する保持体15と、を備えている。
【0020】
保持体15は、例えば金属等の硬質材からなる円筒状体とされ、加硫容器11の出口部12内に嵌合されて前記軸線Oと同軸に配設されている。
ここで、加硫容器11の出口部12における前記軸線O方向の外端部には、径方向の内側に向けて突出する環状リング部12aが全周にわたって延設され前記軸線Oと同軸に位置している。保持体15は、環状リング部12aにおいて加硫容器11の内部A側を向く内面上に支持されている。また、保持体15の内周面には、周方向の全長にわたって連続して延びる収納周溝16が、前記軸線O方向に間隔をあけて複数形成されている。
シール体14は、例えばシリコンゴム等の軟質材からなる円環状体とされ、その内周部分が保持体15の内周面から径方向の内側に突出した状態で、外周部分が全周にわたって収納周溝16内に嵌合されることにより、保持体15に保持されている。そして、加硫ゴム成形体W1は、シール体14の内周部分に摺接しながら出口部12を通過して加硫容器11の外部Bに退出するように構成されている。
【0021】
また本実施形態では、収納周溝16の内面に、シール体14の外周部分の位置ずれを規制する規制部16aが形成されている。規制部16aは、収納周溝16の内面のうち、前記軸線O方向を向く両側面にそれぞれ形成され、全周にわたって延びる周溝16bを備えている。さらに図示の例では、規制部16aは、収納周溝16の前記両側面に径方向に間隔をあけて複数形成された周溝16bにより構成されている。
【0022】
ここで、シール部材13は、通過する加硫ゴム成形体W1との間に、図2に示されるように、前記軸線O方向に沿って複数のシール空間C1、C2、C3を画成している。
図示の例では、シール空間C1〜C3は、シール体14の内周部分と、保持体15の内周面において前記軸線O方向で隣り合う収納周溝16同士の間に位置する部分と、加硫ゴム成形体W1の外周面と、により画成されている。
【0023】
そして本実施形態では、保持体15に、加硫容器11の内部Aと外部Bとを連通する連通路17と、連通路17と複数のシール空間C1〜C3とを各別に連結する複数の導入路18と、が形成されている。さらに連通路17において、複数の導入路18それぞれに前記軸線O方向に沿う加硫容器11の内部A側から隣接する各部分に、該軸線Oに対して交差する方向に延びる迂回部19が各別に備えられている。
【0024】
迂回部19は、保持体15において、収納周溝16より径方向の外側に位置する部分に配置されるとともに、周方向の全周にわたって連続して延びる周溝となっている。
また本実施形態では、連通路17において、複数の導入路18のうち前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の外部B側に位置する導入路18との連結部分17aと、加硫容器11の外部B側の開口端部17bと、の間に位置する部分にも、迂回部19が備えられている。
【0025】
すなわち図示の例では、迂回部19は、保持体15において、複数の収納周溝16全てについて、それぞれの径方向の外側に位置する各部分に各別に配置されている。なお、迂回部19は、各収納周溝16に径方向の外側から連通している。また、迂回部19は、収納周溝16よりも前記軸線O方向の大きさが小さく、迂回部19および収納周溝16それぞれの前記軸線O方向の中央部同士は一致している。さらに本実施形態では、連通路17のうち、迂回部19は他の部分より流路断面積が大きくなっている。
【0026】
連通路17は、前記軸線O方向に沿って加硫容器11の内部A側から外部B側に向かうに従い、最内通路17cと、内側通路17eと、最外通路17dと、がこの順に連結されて構成されている。
【0027】
最内通路17cは、加硫容器11の内部Aと、複数の迂回部19のうち前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の内部A側に位置する迂回部19と、を連通している。また、最内通路17cは、前記軸線O方向に沿って延在している。
内側通路17eは、複数の迂回部19のうち、前記軸線O方向で隣り合う迂回部19同士を連結し、かつ複数の導入路18のうちの1つが各別に連結され、前記軸線O方向の位置を互いに異ならせて複数配置されている。また、複数の内側通路17eのうち、前記軸線O方向で隣り合う各内側通路17eは、周方向の位置を互いに異ならせて配置されている。なお図示の例では、前記軸線O方向で隣り合う各内側通路17eは、前記軸線Oを中心に約180°離れて配置されている。さらに、各内側通路17eは、前記軸線O方向に沿って延在している。
最外通路17dは、加硫容器11の外部Bと、複数の迂回部19のうち前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の外部B側に位置する迂回部19と、を連通している。また、最外通路17dは、前記軸線O方向に沿って延在している。さらに、最外通路17dは、加硫容器11の出口部12に配設された環状リング部12aよりも径方向の内側に位置しており、前記開口端部17bが外部Bに開放されている。
【0028】
以上の最内通路17c、内側通路17eおよび最外通路17dそれぞれの流路断面積は、前記軸線O方向に沿って加硫容器11の外部B側に位置するものほど大きく、かつ加硫容器11の内部A側に位置するものほど小さくなっている。
ここで、導入路18は、複数の内側通路17eそれぞれにおける前記軸線O方向の中央部から径方向の内側に向けて各別に延在し、保持体15の内周面において前記軸線O方向で隣り合う収納周溝16同士の間に位置する部分、つまりシール空間C1〜C3を画成する部分に各別に開口している。
そして、複数の導入路18それぞれの流路断面積は、複数の内側通路17eのうち当該導入路18が連結された内側通路17eの流路断面積と同等になっている。
なお図示の例では、保持体15は、迂回部19および収納周溝16それぞれの前記軸線O方向の中央部同士が一致している部分毎で、前記軸線O方向に分割されている。
【0029】
以上の構成において、未加硫ゴム成形体Wを、加圧・加熱状態に保持された加硫容器11の内部Aに前記入口部から連続的に進入させながら、出口部12に向けて移送し、この出口部12に到達するまでに加硫して加硫ゴム成形体W1に形成する。
そして、加硫ゴム成形体W1が、出口部12に到達してシール部材13のシール体14内を加硫容器11の外部B側に向けて移動すると、シール体14の内周部分が、加硫容器11の内部Aの内圧により径方向の内側に引張された状態で、加硫ゴム成形体W1の外周面により、図2に示されるように、前記軸線O方向に沿う加硫容器11の外部B側に向けて引張される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態による加硫ゴム成形体の製造装置1によれば、連通路17において、複数の導入路18それぞれに前記軸線O方向に沿う加硫容器11の内部A側から隣接する各部分に、該軸線Oに対して交差する方向に延びる迂回部19が各別に備えられているので、加硫容器11の内部Aから連通路17内に流入した流体が、連通路17から外部Bに流出されるまでの過程で、それぞれの導入路18に到達する直前にその都度、迂回部19を通過することで、この流れに順次、摩擦抵抗を付与して圧力損失を生じさせることが可能になる。
【0031】
これにより、複数のシール空間C1〜C3のうち、前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の内部A側に位置するシール空間C1の内圧が、加硫容器11の内圧より低く、かつ他のシール空間C2、C3の内圧よりは高くなって、これらのシール空間C1〜C3の内圧が加硫容器11の外部B側に位置するものほど低くなることで、前記軸線O方向で隣り合うシール空間C1〜C3同士の内圧差を抑えることができる。
【0032】
したがって、複数のシール空間C1〜C3を画成する各シール体14に前記軸線O方向の両側から作用する圧力の差を抑えることが可能になり、シール体14の変形を抑制して、シール体14が、加硫ゴム成形体W1と保持体15の内周面との間に噛み込まれるのを防ぐことができる。
また前述のように、加硫容器11の内部Aから連通路17内に流入した流体が、連通路17から外部Bに流出されるまでの過程で、複数の迂回部19を順次通過することでその都度圧力損失を生じさせることが可能になることから、加硫容器11の内部Aから連通路17に流入した流体の勢いが、加硫容器11の外部Bに流出するときまでに十分に緩和されることとなり、この流体の流出量を抑えることができる。
【0033】
以上より、加硫容器11の内部Aの密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体Wおよび加硫ゴム成形体W1を円滑に移送することができる。
これにより、加硫ゴム成形体W1を高精度かつ高効率に製造することができる。
また本実施形態では、連通路17のうち、迂回部19は他の部分より流路断面積が大きくなっているので、加硫容器11の内部Aから連通路17に流入した流体が迂回部19を通過するときに、この流れに圧力損失を確実に生じさせることができる。
【0034】
さらに本実施形態では、連通路17において、複数の導入路18のうち前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の外部B側に位置する導入路18との連結部分17aと、加硫容器11の外部B側の開口端部17bと、の間に位置する部分に、迂回部19が備えられているので、この迂回部19で圧力損失を生じさせることが可能になる。
したがって、複数のシール空間C1〜C3のうち、前記軸線O方向に沿って最も加硫容器11の外部B側に位置する最外シール空間C3の内圧を容易に外気圧より高く保持することが可能になる。
これにより、複数のシール空間C1〜C3のうち、最外シール空間C3の内圧が、この最外シール空間C3に加硫容器11の内部A側から隣接する他のシール空間C2の内圧と比べて大きく低下するのを防ぐことが可能になり、前述の作用効果が確実に奏功されることとなる。
【0035】
また本実施形態では、最内通路17c、内側通路17eおよび最外通路17dそれぞれの流路断面積が、前記軸線O方向に沿って加硫容器11の外部B側に位置するものほど大きく、かつ加硫容器11の内部A側に位置するものほど小さくされ、複数の導入路18それぞれの流路断面積が、複数の内側通路17eのうち当該導入路18が連結された内側通路17eの流路断面積と同等になっているので、複数のシール空間C1〜C3の内圧が、加硫容器11の内部A側に位置するものほど高く、かつ加硫容器11の外部B側に位置するものほど低くなる構成を確実に得ることができる。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
例えば前記実施形態では、シール部材13を加硫容器11の出口部12に配設したが、未加硫ゴム成形体Wを内部Aに進入させる入口部に配設してもよいし、この入口部および出口部12の双方に配設してもよい。
また、シール部材13のシール体14の個数は図示の例に限らず適宜変更してもよい。
さらに、シール体14は、前記実施形態に限らず例えば、加硫容器11の内圧では変形しない程度の硬質体であってもよい。この場合にも、加硫容器11の内部Aから流出する流体の量を抑えることができる。
【0038】
さらに、加硫容器11の出口部12から外部Bに退出する加硫ゴム成形体W1は、完全に加硫されたものに限らず、この加硫容器11の内部Aに進入する前の未加硫ゴム成形体Wよりも加硫が進行したものであれば半加硫状態のものであってもよい。
また、未加硫ゴム成形体Wを、複数の加硫容器11を順次通過させて加硫ゴム成形体W1を製造してもよい。
さらに、未加硫ゴム成形体Wは、筒状に限らず、例えば板状若しくは棒状等であってもよい。
また、未加硫ゴム成形体Wおよび加硫ゴム成形体W1を移送する方向は、その長手方向に限らず、例えば短手方向等適宜変更してもよい。
さらに、未加硫ゴム成形体Wおよび加硫ゴム成形体W1として、長尺状体を示したが、これに限らず任意の形態を採用してもよい。
【0039】
また、連通路17のうち、迂回部19の流路断面積は他の部分より小さくてもよいし、同等であってもよい。
さらに、迂回部19は、前記軸線Oに対して交差する方向に延在していれば、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。
また、保持体15は一体に形成してもよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
加硫容器の内部の密閉性を確保しつつ、未加硫ゴム成形体等を円滑に移送することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 加硫ゴム成形体の製造装置
11 加硫容器
12 出口部
13 シール部材
14 シール体
15 保持体
17 連通路
17a 連結部分
17b 開口端部
17c 最内通路
17d 最外通路
17e 内側通路
18 導入路
19 迂回部
A 内部
B 外部
C1、C2、C3 シール空間
O 軸線
W 未加硫ゴム成形体
W1 加硫ゴム成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴム成形体を、加圧・加熱状態に保持された内部で通過させながら加硫する加硫容器と、
該加硫容器において、前記未加硫ゴム成形体を内部に進入させる入口部、および前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体を内部から退出させる出口部のうちの少なくとも一方に配設され、通過する前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体との間を通した前記加硫容器の内部と外部との連通を遮断するシール部材と、
を備える加硫ゴム成形体の製造装置であって、
前記シール部材は、
前記加硫容器内における未加硫ゴム成形体の移送方向に間隔をあけて複数配設されるとともに、通過する前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体が摺接するシール体と、
前記加硫容器に装着されて前記シール体を保持する保持体と、を備えるとともに、
前記未加硫ゴム成形体若しくは加硫ゴム成形体との間に、前記移送方向に沿って複数のシール空間を画成し、
前記保持体には、
前記加硫容器の内部と外部とを連通する連通路と、
該連通路と前記複数のシール空間とを各別に連結する複数の導入路と、が形成され、
前記連通路において、複数の導入路それぞれに前記移送方向に沿う前記加硫容器の内部側から隣接する各部分に、該移送方向に対して交差する方向に延びる迂回部が各別に備えられていることを特徴とする加硫ゴム成形体の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の加硫ゴム成形体の製造装置であって、
前記連通路において、複数の導入路のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の外部側に位置する導入路との連結部分と、前記加硫容器の外部側の開口端部と、の間に位置する部分に、前記迂回部が備えられていることを特徴とする加硫ゴム成形体の製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の加硫ゴム成形体の製造装置であって、
前記連通路は、
前記加硫容器の内部と、複数の前記迂回部のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の内部側に位置する迂回部と、を連通する最内通路と、
前記加硫容器の外部と、複数の前記迂回部のうち前記移送方向に沿って最も前記加硫容器の外部側に位置する迂回部と、を連通する最外通路と、
前記移送方向で隣り合う迂回部同士を連結し、かつ複数の導入路のうちの1つが各別に連結された複数の内側通路と、
を備え、
前記最内通路、内側通路および最外通路それぞれの流路断面積は、前記移送方向に沿って前記加硫容器の外部側に位置するものほど大きく、かつ前記加硫容器の内部側に位置するものほど小さくされ、
複数の導入路それぞれの流路断面積は、複数の内側通路のうち当該導入路が連結された内側通路の流路断面積と同等になっていることを特徴とする加硫ゴム成形体の製造装置。
【請求項4】
未加硫ゴム成形体を移送しながら加硫して加硫ゴム成形体を形成する加硫ゴム成形体の製造方法であって、
請求項1から3のいずれか1項に記載の加硫ゴム成形体の製造装置を用いて加硫ゴム成形体を形成することを特徴とする加硫ゴム成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−11686(P2012−11686A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151031(P2010−151031)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】