説明

加硫ゴム用離型剤およびそれを用いる加硫ゴム成型品の製造方法

【課題】ゴムの加硫成型工程において、挿入性、離型性、洗浄性に優れ、かつ、得られる加硫ゴム成型品に対する寸法安定性、耐ソルベントクラック性についても満足できる加硫ゴム用離型剤と加硫ゴム成型品の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記化学式のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを離型剤に含有させる。ただしPAOは、付加モル数20以上300以下のエチレンオキシド開環体と付加モル数0以上100以下のプロピレンオキシド開環体とをブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格であり、R,Rは炭素数9以上21以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの加硫成型工程に用いる加硫ゴム用離型剤と、該加硫ゴム用離型剤を用いる加硫ゴム成型品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)など加硫ゴムを用いたゴム製品は、加圧・流し込み、押し出し等により加硫成型して各種の形状に加工され、各種の用途に用いられている。
【0003】
自動車やその他の分野において、ゴムホースなどの加硫ゴム成型品は多く使用されており、形状としては直管又は曲がり管と呼ばれるものなどがある。これらの加硫ゴム成型品の製造では、所定の形状に成型されたマンドレルのような金型に未加硫ゴムを挿入し、加硫成型した後、加硫されたゴム成型品をマンドレルから引き抜く加硫成型工程を経る。この加硫成型工程で、マンドレルからの挿入,引抜き作業を容易にするため、通常、未加硫ゴムとマンドレルとが接触する界面には、塗布や浸漬などの方法で離型剤を介させる。加硫成型工程を経て得られた加硫ゴム成型品の表面に付着した離型剤は、温水洗浄など適宜の方法で除去される。
【0004】
かかる離型剤に求められる特性としては、マンドレルなどの金型に対する未加硫ゴムの挿入作業の容易さ(挿入性)、加硫ゴム成型品の引抜き作業の容易さ(離型性,引抜き性)、および引き抜かれた加硫ゴム成型品の表面に付着している離型剤の除去の容易さ(洗浄性)が求められる。
【0005】
また、加硫成型工程において未加硫,及び加硫後のゴムの表面と接触している離型剤には、得られる加硫ゴム成型品に対する影響が少ないことも同時に求められる。したがって離型剤には、該離型剤を使用した加硫成型工程を経て得られる加硫ゴム成型品の寸法安定性や、耐ソルベントクラック性(耐亀裂性)も併せて求められる。
【0006】
加硫成型工程の作業性向上する離型剤や、加硫ゴム成型品の品質低下の少ない離型剤についてはこれまでのいくつかの技術が提示されている。特許文献1には、ポリオキシアルキレングリコールとジイソシアネートの反応物の両末端をポリオキシアルキレンアルキルエーテルで封鎖したウレタン化合物が提案されており、高温長時間の加硫成型工程においても離型性を発現することができる技術が開示されている。しかしながら、従来のポリオキシアルキレングリコール系離型剤と比較すると挿入性、洗浄性等に課題がある。特許文献2には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが提案されており、寸法安定性等は良好な技術が開示されている。しかしながら洗浄性および耐ソルベントクラック性に課題がある。特許文献3には、分子量2000−4000のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックコポリマーが提案されており、離型性、耐ソルベントクラック性は良好なものが開示されている。しかしながら高温での洗浄性や寸法安定性に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−248385号公報
【0008】
【特許文献2】特開2004−114472号公報
【0009】
【特許文献3】特開2004−306409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、従来の離型剤では、加硫成型工程における挿入性、離型性、洗浄性、寸法安定性、耐ソルベントクラック性のいずれの性能もすべて満足できるというものではなかった。そこで本発明が解決しようとする課題は、ゴムの加硫成型工程において、挿入性、離型性、洗浄性に優れ、かつ、得られる加硫ゴム成型品に対する寸法安定性、耐ソルベントクラック性についても満足できる離型剤と、該離型剤を使用した加硫ゴム成型品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加硫ゴム用離型剤は、化学式〔化4〕の構造を有するポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが含まれることを最も主要な特徴とする。なお、化学式〔化4〕中、PAOは、付加モル数が20以上300以下のエチレンオキシド開環体と付加モル数が0以上100以下のプロピレンオキシド開環体とをブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格、またRは、炭素数9以上21以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基である。
【0012】
【化4】

【発明の効果】
【0013】
本発明の加硫ゴム用離型剤によれば、ゴムの加硫成型工程において、挿入性、離型性、洗浄性に優れ、かつ、得られる加硫ゴム成型品に対する寸法安定性、耐ソルベントクラック性も高いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】合成例1のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの赤外線吸収スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0015】
(加硫ゴム用離型剤:1.ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル)
本発明の加硫ゴム用離型剤は、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは前記化学式〔化4〕の構造を具備するポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを必須に含有する。具体的なポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、化学式〔化1〕,〔化2〕が挙げられる。なお、加硫ゴム用離型剤としては、〔化1〕のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルと〔化2〕のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルをとともに配合して使用することもできる。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
ここで、化学式〔化1〕,〔化2〕中のPAOは、付加モル数が20以上300以下のエチレンオキシド開環体と付加モル数が0以上100以下のプロピレンオキシド開環体とをブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格である。以下、エチレンオキシド開環体をEO,プロピレンオキシド開環体をPOと略記することがある。したがって、〔化1〕,〔化2〕のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは、POが0の場合のポリオキシエチレン脂肪酸エステルであってもよい。なお、EOのブロック単位は化学式〔化5〕であり、POのブロック単位は化学式〔化6〕である。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
EOの付加モル数(単位ブロック数)は20以上300以下であり、前記POの付加モル数(単位ブロック数)は0以上100以下であることが好ましい。EOとPOの付加モル数の合計が20未満の場合は加熱時に分解しやすく金型汚染の原因となる。一方、合計の付加モル数が400を超えると希釈液の粘度が高くなりすぎるため、洗浄性に劣る。さらにPOの付加モル数が100を超えると、本発明に用いるポリオキシアルキレン脂肪酸エステル全体としての親水性が低下するので、洗浄性が不良となる。
【0022】
また化学式〔化1〕,〔化2〕中のR,Rは、それぞれ独立に、炭素数9以上21以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基である。RまたはRの炭素数が9未満の場合は十分な離型性が得られない。一方、RまたはRの炭素数が21を超える場合は水に対する溶解性が低下して洗浄性に劣る。このようなポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、RまたはRの炭素数が9〜21の直鎖又は分岐鎖を有する飽和脂肪酸或いは不飽和脂肪酸を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。具体的には、カプリン酸(C9)、ラウリン酸(C11)、ミリスチン酸(C13)、パルミチン酸(C15)、ステアリン酸(C17)、イソステアリン酸(C17)、オレイン酸(C17)、リノール酸(C17)、リノレン酸(C17)、リシノール酸(C17)、ヒドロキシステアリン酸(C17)、アラギン酸(C19)、ベヘン酸(C21)などの例を挙げることができる。これらの脂肪酸の中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
【0023】
前記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの加硫ゴム用離型剤に対する配合量は、0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、0.5重量%以上30重量%以下がより好ましい。
【0024】
(加硫ゴム用離型剤:2.非イオン系界面活性剤)
本発明の離型剤では、さらに非イオン系界面活性剤を配合することで、離型剤としての低温安定性が向上する。本発明の離型剤に用いる非イオン界面活性剤の種類は特段制限されないが、具体的にはグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの例を挙げることができる。なかでも下記化学式〔化3〕で表わされる構造を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることが好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
なお、化学式〔化3〕中、PAOはエチレンオキシド開環体および/またはプロピレンオキシド開環体をブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格である。前記エチレンオキシド開環体と前記プロピレンオキシド開環体の合計付加モル数(単位ブロック数)は1以上30以下である。またRは、炭素数8以上18以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基である。
【0027】
非イオン系界面活性剤の配合量は離型剤の性能を損なわない範囲であれば特段制限されないが、具体的には0.5〜10重量%が好ましい。0.5重量%未満では低温で不安定になりやすく、10重量%より多い場合、耐ソルベントクラック性や洗浄性が低下しやすくなる。
【0028】
(加硫ゴム用離型剤:3.希釈溶媒)
本発明の離型剤は上記成分だけでも使用可能であるが、希釈溶媒を配合することもできる。配合できる希釈溶媒の種類は特に制限されないが、イオン交換水や水道水など清浄な水を好適に用いることができる。希釈溶媒の離型剤全量に対する配合割合は10重量%以上が好ましい。配合割合が10重量%未満では、離型剤粘度が高くなるので、離型剤の流動性低下、使用時の希釈性低下により作業性が低下しやすくなる。希釈溶媒として水以外にも、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールなども用いることができる。ただしアルコールなどの有機溶媒を単独で用いると、離型剤の耐ソルベントクラック性に影響を及ぼすおそれがあるので、水と併用して用いることが好ましく、離型剤全量に対する配合割合として5重量%以内に抑えることが好ましい。
【0029】
(加硫ゴム用離型剤:4.その他の成分)
更に本発明では、離型剤の性能を低下させない範囲で、公知の離型剤成分を配合してもよい。配合される離型剤成分の種類は特に制限されるものではないが、具体例としては、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンが2分子以上縮合したもの)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン糖エステル、ポリオキシアルキレンオキシドポリマー(ブロック縮合またはランダム縮合)、ポリオキシアルキレンオキシドポリマーとジイソシアネートを反応させたウレタン化合物、ジアミンのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。公知の離型剤成分を多く配合すると、前記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが奏する効果が相対的に小さくなるため、これら公知の離型剤成分を配合する場合の配合量は、離型剤全量に対して50重量%以下であることが好ましい。
【0030】
更に本発明の離型剤では、離型剤としての性能を低下させない範囲で、公知の消泡剤または防錆剤を配合することもできる。
【0031】
(加硫ゴム成型品の製造方法)
本発明の加硫ゴム成型品の製造方法では、ゴムの加硫成型工程で、未加硫ゴムと金型との界面に、本発明の離型剤を介させた状態で、加硫成型を行う加硫成型工程を具備する。前記界面に本発明の離型剤を介させる方法は特に制限されないが、例えば、離型剤に、未加硫ゴムホースの先端を浸漬する方法;金型に未加硫ゴムを入れる前に、金型と未加硫ゴムの接触する部分に、予め離型剤をハケやスプレーなどで塗布する方法;等の方法を挙げることができる。なお、本発明の離型剤について離型剤の性能を低下させない範囲で、水道水やイオン交換水で希釈または公知の離型剤と併用することができる。
【0032】
本発明の加硫ゴム成型品の製造方法で成型できる加硫ゴムの種類は特に制限されるものではないが、具体例としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、NBRとポリ塩化ビニルのブレンドポリマー(NBR/PVC)等の加硫成型可能なゴムなどを挙げることができる。
【実施例】
【0033】
〔ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの合成〕
本発明で用いるポリオキシアルキレン脂肪酸エステルをポリオキシアルキレングリコールから合成した。
【0034】
(合成例1)
反応装置として、ディーンスターク脱水装置、コンデンサー、窒素導入管、温度計および攪拌機を取り付けた2Lのガラス製4つ口フラスコに、PEG#11000(ポリエチレングリコール分子量11000 EO250モル付加物:日油(株)製)1100g(0.1モル)、ステアリン酸56.9g(0.2モル)、硫酸1gをそれぞれ仕込んだ。次にフラスコ内に窒素を吹き込みながら70℃まで加熱し溶解した。その後、フラスコ内を攪拌しさらに昇温し、内温110℃から130℃に保ちエステル化反応を4時間行った。反応終了後、50℃まで冷却し水酸化ナトリウムにて中和した。
【0035】
得られた合成物(合成例1)は未反応脂肪酸の量を確認のため酸価を測定することもに、生成したエステル量を確認するためけん化価も測定した。酸価およびけん化価の測定は、JIS K 0070―1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準拠して行った。合成例1の酸価は4.0mgKOH/g、けん化価は13.2mgKOH/gであった。また合成例1については合成確認のため赤外線測定も行った。得られた合成例1の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
(合成例2〜4)
ポリオキシアルキレングリコールと酸性成分とその配合量をそれぞれ表1記載のものに変更した以外は、合成例1と同様の方法にて合成例2〜4のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを合成した。また合成例1同様の方法で、酸価とけん化価も測定した。
【0038】
(比較合成例:合成5〜7)
比較のため、ポリオキシアルキレングリコールと酸性成分とその配合量をそれぞれ表1記載のものに変更した以外は、合成例1と同様の方法にて合成例5〜7のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを合成した。また合成例1同様の方法で、酸価とけん化価も測定した。
【0039】
なお、各比較合成例の特徴は次の通りである。合成例5では、EOとPOの付加モル数の合計が20未満である。合成例6では、EOとPOの付加モル数の合計が400を超えている。合成例7では、酸成分として炭素数8のカプリル酸を用いているので、合成されたポリオキシアルキレン脂肪酸エステルのRの炭素数が9未満である。
【0040】
〔加硫ゴム用離型剤の調製〕
(実施例1〜10)
得られた合成例1〜4のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを用いて、それぞれ表2に示した成分を表2に示した配合割合(重量%)で混合し、内温60℃で2時間撹拌溶解させた。溶解後、室温まで冷却し、実施例1〜10の加硫ゴム用離型剤を得た。
【0041】
【表2】

【0042】
(比較例1〜12)
比較のため、比較合成例である合成例5〜7のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを用いて、それぞれ表3に示した成分を表3に示した配合割合(重量%)で混合し、内温60℃で2時間撹拌溶解させた。溶解後、室温まで冷却して、比較例1〜12の加硫ゴム用離型剤を得た。
【0043】
【表3】

【0044】
〔評価〕
実施例,比較例で得られた加硫ゴム用離型剤は、下記の方法で挿入性、離型性、洗浄性、寸法安定性及び耐ソルベントクラック性について評価した。得られた結果をそれぞれ表2,表3に示す。
【0045】
(挿入性・離型性)
成型ホース用マンドレルの外表面に、実施例および比較例の離型剤を塗布し、更に未加硫ホース(EPDM)先端に離型剤を浸漬後、マンドレルに挿入した。この時の挿入作業のしやすさで挿入性を評価した。引き続き、これを150℃で30分蒸気加硫した。その後、マンドレルから加硫したホースを引き抜いた。この時の引抜き作業のしやすさで、離型性(引抜き性)を評価した。挿入性,離型性とも評価基準は次の通りである。
◎:作業がきわめて容易である。
○:作業が容易である。
△:作業効率が悪い。
×:作業効率がきわめて悪い。
【0046】
(洗浄性)
前記挿入性,離型性の評価で得られた加硫ホースを、それぞれ温水(30℃、60℃)で洗浄し、加硫ホース表面に付着している実施例および比較例の離型剤を除去した。この時の除去作業のしやすさで除去性を評価した。評価基準は次の通りである。
○:きわめて容易に離型剤が除去される。
△:簡単な洗浄で離型剤が除去される。
×:離型剤が除去できない。
【0047】
(寸法安定性)
前記洗浄性試験で得られた加硫後のアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを裁断して寸法を測定後、挿入性・離型性試験で用いた各実施例、比較例の離型剤に浸漬し、80℃で6日間放置後に再び寸法測定を行って、次式により体積変化率を求め、寸法安定性を評価した。
体積変化率(%)=〔(V−V)/V〕×100
:浸漬後の体積
:浸漬前の体積
【0048】
寸法安定性の評価基準は次の通りである。
○:体積変化率5%未満
△:体積変化率5%〜10%未満
×:体積変化率10%以上
【0049】
(耐ソルベントクラック性)
成型ホース用マンドレルの外表面に、実施例、比較例の離型剤を塗布し、更に未加硫ホース(NBR/PVC)先端に同じ離型剤を浸漬後、マンドレルに挿入した。挿入後、75℃で30分間放置し、ホースを引き抜いた。引き抜いたホースを切断しホース内面の状態を目視またはルーペにてクラック発生の有無を観察して、耐ソルベントクラック性を評価した。評価基準は次の通りである。
◎:20倍拡大でもクラックの発生が認められない。
○:20倍拡大でクラックの発生が認められる。
△:肉眼での検査で長さ1mm以下クラックの発生が認められる。
×:肉眼での検査で長さ1mmを越すクラックの発生が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の加硫ゴム用離型剤は、得られる加硫ゴム成型品に対する寸法安定性、耐ソルベントクラック性のいずれの点でも満足できる性能を具備しているので、加硫ゴム成型品の成型工程において好適に利用できる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式〔化1〕のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを含有する加硫ゴム用離型剤。
【化1】

(〔化1〕中、PAOは、付加モル数が20以上300以下のエチレンオキシド開環体と付加モル数が0以上100以下のプロピレンオキシド開環体とをブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格、R,Rはそれぞれ独立に、炭素数9以上21以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基)
【請求項2】
下記化学式〔化2〕のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを含有する加硫ゴム用離型剤。
【化2】

(〔化2〕中、PAOは、付加モル数が20以上300以下のエチレンオキシド開環体と付加モル数が0以上100以下のプロピレンオキシド開環体とをブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格、Rは炭素数9以上21以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基)
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを前記離型剤全量に対して0.1〜50重量%含有する請求項1または2記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項4】
さらに非イオン系界面活性剤を含有する請求項1〜3いずれかの項記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項5】
前記非イオン系界面活性剤が、下記化学式〔化3〕のポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項4記載の加硫ゴム用離型剤。
【化3】

(〔化3〕中、PAOはエチレンオキシド開環体および/またはプロピレンオキシド開環体をブロック単位としてブロック付加重合またはランダム付加重合したポリオキシアルキレン骨格、エチレンオキシド開環体とプロピレンオキシド開環体との合計付加モル数は1以上30以下、Rは炭素数8以上18以下の直鎖または分岐のアルキル基もしくはアルケニル基)
【請求項6】
未加硫ゴムと金型との界面に、請求項1〜5いずれかの記載の加硫ゴム用離型剤を介させた状態で加硫成型を行って加硫ゴム成型品を得る加硫成型工程を具備する、加硫ゴム成型品の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2012−250495(P2012−250495A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126212(P2011−126212)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(390029458)一方社油脂工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】