加硫用モールド
【課題】ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させて、排気効率を向上させるとともに、安定した排気を確保できる加硫用モールドを提供する。
【解決手段】蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5を、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホール4の開口側に向けてベントホール4に埋設することで、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間にすき間Sを形成し、このすき間Sを通じて排気を行なう。
【解決手段】蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5を、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホール4の開口側に向けてベントホール4に埋設することで、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間にすき間Sを形成し、このすき間Sを通じて排気を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫用モールドに関し、さらに詳しくは、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させて、排気効率を向上させるとともに、安定した排気を確保できる加硫用モールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤやその他のゴム製品を加硫する際には、加硫用モールド内に不要な空気が閉じ込められ、また、加硫によってガスが発生する。これら空気やガスは、加硫して製造される製品に対してゴム充填不足等の加硫故障を生じさせる。そこで、モールドには、空気や加硫時に発生するガスを外部に排出するためにベントホールが設けられている。ベントホールの大きさが過小であると排気効率が低くなり、大きさが過大であるとベントホールにゴムが流入してバリ(スピュー)の原因になる。このように排気を確保しつつ、ゴムの流入を防止することが要求されるベントホールには、種々の構造が提案されている。
【0003】
例えば、筒状のホルダーに柱状のプラグを挿入して形成されたベントピースを、ベントホールに埋設したモールドが知られている(特許文献1参照)。この提案の構造では、基本的にホルダーとプラグとのすき間が排気のための通気路になる。そのため、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を増大させることは難しく、排気効率を向上させるには不利になる。
【0004】
また、円筒状の支持体に金属薄板を渦巻き状に巻き上げた柱状体を挿入してベントピースを形成し、このベントピースをベントホールに埋設することが提案されている(特許文献2参照)。このベントピースでは、渦巻き状で隣り合う金属薄板どうしのすき間が排気のための通気路なる。しかしながら、このすき間の大きさは内周側と外周側とでばらつき易いので、安定して良好な排気を確保することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−168191号公報
【特許文献2】特開2009−154439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させて、排気効率を向上させるとともに、安定した排気を確保できる加硫用モールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の加硫用モールドは、蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設することで、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレートどうしの間にすき間が形成される。それ故、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させることができる。このすき間の大きさは比較的安定していて排気のための通気路になるので、排気効率を向上させて良好な排気を確保するには有利になる。また、折り畳んだ金属プレートを用いているので、加硫されるゴムによって押圧されても実用上変形し難いので耐久性にも優れ、より安定した排気を確保できる。
【0009】
ここで、前記折り畳んだ金属プレートが、上面を開口し下面に貫通孔を有するケーシングに、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシングの上面側に向けて予め嵌入された仕様にすることもできる。この仕様の場合、外段取りで折り畳んだ金属プレートをケーシングに嵌入させておけるので、このケーシングをベントホールに埋設するだけで、折り畳んだ金属プレートの埋設作業を完了させることができる。
【0010】
或いは、前記折り畳んだ金属プレートが、その一部がモールドに鋳込まれることにより、ベントホールに埋設された仕様にすることもできる。この仕様の場合、モールドの鋳造とともに、折り畳んだ金属プレートの埋設作業を完了させることができる。
【0011】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した他方側面が、側面視で上方突状に湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、ベントホールの下方に比較的大きな空間を形成できるので、安定した排気を確保し易くなる。
【0012】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視でモールドの成形面に沿って湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、加硫した製品に不用意な跡が残らないようにすることができる。
【0013】
前記ベントホールが、モールドに形成された成形突起と成形突起とが交差する隅部の成形面に配置されている仕様にすることもできる。この仕様の場合、加硫されるゴムによってベントホールが塞がれるタイミングを最も遅くすることが可能になるので、排気不良に起因する加硫故障をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の加硫用モールドの一部を例示する平面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】加硫用モールドと加硫されるゴムを例示する断面図である。
【図5】ベントホールの変形例を示す平面図である。
【図6】折り畳んだ金属プレートを予め嵌入したケーシングを、ベントホールに埋設する工程を例示する説明図である。
【図7】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す側面図である。
【図8】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す側面図である。
【図9】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す平面図である。
【図10】図9の折り畳んだ金属プレートをモールドに鋳込む工程を例示する説明図である。
【図11】図10の次の工程を例示する説明図である。
【図12】図11の次の工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の加硫用モールドを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図3に例示するように、本発明の加硫用モールド1(以下、モールド1という)は、内周側表面が成形面2になって、成形面2には成形突起3a、3bが形成されている。タイヤ用のモールドの場合は、この成形面2がタイヤトレッド等を成形する面になる。モールド1には、成形面2に開口するベントホール4が形成され、ベントホール4は、排気孔6aを介してモールド1の外部につながっている連通孔6bに連結されている。この実施形態では、ベントホール4は平面視で略四角形であり、成形突起3aと成形突起3bとが交差する隅部(4箇所)の成形面2に配置されている。尚、本発明のベントホール4とは、モールド1の成形面2に形成されて、排気孔6aを通じてモールド1の外部に連通することにより、排気機能を発揮する穴である。
【0017】
ベントホール4には、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5が、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホール4の開口側(成形面側)に向けて埋設されている。この一方側面は成形面2と同じレベルになっている。折り畳んだ金属プレート5は、伸びるように復元しようとする自身の弾性力、または、折り畳まれた金属プレート5を加締めるように嵌入させて、或いは、弾性力と加締めの両方を用いてベントホール4に対して固定されている。
【0018】
金属プレート5の材質としては、ステンレス鋼、一般炭素鋼、アルミニウム合金、銅合金等を用いることができる。金属プレート5の厚さは、例えば、0.01mm〜1.0mm程度、好ましくは0.1mm〜0.5mmである。
【0019】
金属プレート5を蛇腹状に折り畳む回数は複数以上であり、4回以上折り畳むことが好ましい。そして、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間のすき間Sは、通気路として機能する。すき間Sは、加硫されるゴムRの流入を防止するために0.05mm以下になっている。例えば、このすき間Sは、0.01mm〜0.05mmに設定される。
【0020】
このように蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間に、通気路として機能するすき間Sが形成されるので、ベントホール4の単位面積当たりのすき間Sの割合を容易に増大させることができる。ベントホール4に埋設された折り畳んだ金属プレート5は、形状が安定しているので、このすき間Sの大きさも比較的安定してばらつきが小さい。そのため、排気効率を向上させつつ、良好な排気を確保するには有利になる。
【0021】
また、このように配置した折り畳んだ金属プレート5は、加硫されるゴムRによって押圧されても実用上変形し難いので耐久性にも優れ、より安定した排気を長期間確保できる。
【0022】
ベントホール4に埋設されたこの金属プレート5は、取り外しが可能なので、すき間Sが目詰まりした際には、蛇腹状に折り畳んだ古い金属プレート5を、蛇腹状に折り畳んだ新たな金属プレート5に交換するだけで目詰まりを解消できる。そのため、ベントホール3のメンテナンス性に優れている。
【0023】
この実施形態では、ベントホール4が、成形突起3aと成形突起3bとが交差する隅部の成形面2に配置されている。この隅部の成形面2は、図4に例示するように、加硫されるゴムRが最も遅れて当接する部分の一つである。それ故、この実施形態では、加硫されるゴムRによってベントホール4が塞がれるタイミングを最も遅くすることが可能になる。したがって、排気不良に起因するゴム製品の加硫故障をより確実に防止することができる。特に、ベントホール4が平面視で略四角形であると、成形突起3a、3bに対して、より近接させて塞がれるタイミングを最大限遅らせることができる。
【0024】
ベントホール4は、平面視で略四角形に限定されるものではない。図5に例示するように、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5の屈曲形状と同形状の波形壁4aにした形状にすることもできる。この形状のベントホール4によれば、折り畳んだ金属プレート5をより確実に固定することができ、また、すき間Sの大きさも一段と安定する。
【0025】
図6に例示するように、上面を開口し下面に貫通孔7aを有するケーシング7に、折り畳んだ金属プレート5を、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシング7の上面側に向けて予め嵌入しておき、このケーシング7をベントホール4に埋設した仕様にすることもできる。この仕様の場合、折り畳んだ金属プレート5をケーシング7に嵌入させる作業を外段取りで行なえるので、折り畳んだ金属プレート5を嵌入させてあるケーシング7をベントホール4に埋設するだけで、折り畳んだ金属プレート5の埋設作業を完了させることができる。
【0026】
図7に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の蛇腹状に屈曲した他方側面(反成形面側の側面)を、側面視で上方突状に湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、ベントホール4の下方に比較的大きな空間が形成されるので、安定した排気を確保し易くなる。側面視で下面が上方突状に湾曲している板状の金属プレートを、蛇腹状に繰り返し折り畳むことにより、この形状の金属プレート5を製造することができる。
【0027】
図8に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視で成形面2に沿って湾曲している仕様にすることもできる。側面視で上面が下方突状に湾曲している板状の金属プレートを、蛇腹状に繰り返し折り畳むことにより、この形状の金属プレート5を製造することができる。このように、成形面2に沿うような形状を容易に製造することができ、加硫した製品に不用意な跡が残らないようにすることができる。
【0028】
図9に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の一部をモールド1に鋳込むことにより、金属プレート5をベントホール4に埋設された仕様にすることもできる。この金属プレート5では、両端の鋳込み部5が鋳込まれることにより、モールド1と一体化されて固定されている。
【0029】
折り畳んだ金属プレート5の一部を、このように鋳込んでモールド1を製造する手順を以下に例示する。
【0030】
図10に例示するように、マスター型の表面形状を転写したゴム型8の表面の所定位置に、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5を埋設し、この金属プレート5の両端の鋳込み部5aには、ゴム型8に埋設されない突出部5bを設けておく。また、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間にすき間Sには石膏Pを充填しておく。
【0031】
次いで、このゴム型8の表面に石膏Pを流し込んで、図11に例示するように、ゴム型8の表面形状を転写した石膏鋳型9を製造する。次いで、この石膏鋳型9の表面にアルミニウム等の溶融金属Mを流し込んで、図12に例示するように、石膏鋳型9の表面形状を転写したモールド1を鋳造する。この時点では、不要な突出部5bがモールド1の成形面2から突出しているので、突出部5bを除去する。また、すき間Sに充填しておいた石膏Pを除去する。これによりモールド1の鋳造とともに、折り畳んだ金属プレート5の埋設作業が完了する。その後、排気孔6aおよび連通孔6bを成形することにより、図9に例示するモールド1が完成する。
【0032】
本発明は、タイヤ、防舷材、ベルト、その他の種々のゴム製品の加硫用モールドに適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 加硫用モールド
2 成形面
3a、3b 成形突起
4 ベントホール
4a 波形壁
5 折り畳んだ金属プレート
5a 鋳込み部
5b 突出部
6a 排気孔
6b 連通孔
7 ケーシング
7a 貫通孔
8 ゴム型
9 石膏鋳型
S すき間
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫用モールドに関し、さらに詳しくは、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させて、排気効率を向上させるとともに、安定した排気を確保できる加硫用モールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤやその他のゴム製品を加硫する際には、加硫用モールド内に不要な空気が閉じ込められ、また、加硫によってガスが発生する。これら空気やガスは、加硫して製造される製品に対してゴム充填不足等の加硫故障を生じさせる。そこで、モールドには、空気や加硫時に発生するガスを外部に排出するためにベントホールが設けられている。ベントホールの大きさが過小であると排気効率が低くなり、大きさが過大であるとベントホールにゴムが流入してバリ(スピュー)の原因になる。このように排気を確保しつつ、ゴムの流入を防止することが要求されるベントホールには、種々の構造が提案されている。
【0003】
例えば、筒状のホルダーに柱状のプラグを挿入して形成されたベントピースを、ベントホールに埋設したモールドが知られている(特許文献1参照)。この提案の構造では、基本的にホルダーとプラグとのすき間が排気のための通気路になる。そのため、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を増大させることは難しく、排気効率を向上させるには不利になる。
【0004】
また、円筒状の支持体に金属薄板を渦巻き状に巻き上げた柱状体を挿入してベントピースを形成し、このベントピースをベントホールに埋設することが提案されている(特許文献2参照)。このベントピースでは、渦巻き状で隣り合う金属薄板どうしのすき間が排気のための通気路なる。しかしながら、このすき間の大きさは内周側と外周側とでばらつき易いので、安定して良好な排気を確保することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−168191号公報
【特許文献2】特開2009−154439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させて、排気効率を向上させるとともに、安定した排気を確保できる加硫用モールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の加硫用モールドは、蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設することで、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレートどうしの間にすき間が形成される。それ故、ベントホールの単位面積当たりのすき間の割合を容易に増大させることができる。このすき間の大きさは比較的安定していて排気のための通気路になるので、排気効率を向上させて良好な排気を確保するには有利になる。また、折り畳んだ金属プレートを用いているので、加硫されるゴムによって押圧されても実用上変形し難いので耐久性にも優れ、より安定した排気を確保できる。
【0009】
ここで、前記折り畳んだ金属プレートが、上面を開口し下面に貫通孔を有するケーシングに、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシングの上面側に向けて予め嵌入された仕様にすることもできる。この仕様の場合、外段取りで折り畳んだ金属プレートをケーシングに嵌入させておけるので、このケーシングをベントホールに埋設するだけで、折り畳んだ金属プレートの埋設作業を完了させることができる。
【0010】
或いは、前記折り畳んだ金属プレートが、その一部がモールドに鋳込まれることにより、ベントホールに埋設された仕様にすることもできる。この仕様の場合、モールドの鋳造とともに、折り畳んだ金属プレートの埋設作業を完了させることができる。
【0011】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した他方側面が、側面視で上方突状に湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、ベントホールの下方に比較的大きな空間を形成できるので、安定した排気を確保し易くなる。
【0012】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視でモールドの成形面に沿って湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、加硫した製品に不用意な跡が残らないようにすることができる。
【0013】
前記ベントホールが、モールドに形成された成形突起と成形突起とが交差する隅部の成形面に配置されている仕様にすることもできる。この仕様の場合、加硫されるゴムによってベントホールが塞がれるタイミングを最も遅くすることが可能になるので、排気不良に起因する加硫故障をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の加硫用モールドの一部を例示する平面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】加硫用モールドと加硫されるゴムを例示する断面図である。
【図5】ベントホールの変形例を示す平面図である。
【図6】折り畳んだ金属プレートを予め嵌入したケーシングを、ベントホールに埋設する工程を例示する説明図である。
【図7】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す側面図である。
【図8】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す側面図である。
【図9】折り畳んだ金属プレートの変形例を示す平面図である。
【図10】図9の折り畳んだ金属プレートをモールドに鋳込む工程を例示する説明図である。
【図11】図10の次の工程を例示する説明図である。
【図12】図11の次の工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の加硫用モールドを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図3に例示するように、本発明の加硫用モールド1(以下、モールド1という)は、内周側表面が成形面2になって、成形面2には成形突起3a、3bが形成されている。タイヤ用のモールドの場合は、この成形面2がタイヤトレッド等を成形する面になる。モールド1には、成形面2に開口するベントホール4が形成され、ベントホール4は、排気孔6aを介してモールド1の外部につながっている連通孔6bに連結されている。この実施形態では、ベントホール4は平面視で略四角形であり、成形突起3aと成形突起3bとが交差する隅部(4箇所)の成形面2に配置されている。尚、本発明のベントホール4とは、モールド1の成形面2に形成されて、排気孔6aを通じてモールド1の外部に連通することにより、排気機能を発揮する穴である。
【0017】
ベントホール4には、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5が、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホール4の開口側(成形面側)に向けて埋設されている。この一方側面は成形面2と同じレベルになっている。折り畳んだ金属プレート5は、伸びるように復元しようとする自身の弾性力、または、折り畳まれた金属プレート5を加締めるように嵌入させて、或いは、弾性力と加締めの両方を用いてベントホール4に対して固定されている。
【0018】
金属プレート5の材質としては、ステンレス鋼、一般炭素鋼、アルミニウム合金、銅合金等を用いることができる。金属プレート5の厚さは、例えば、0.01mm〜1.0mm程度、好ましくは0.1mm〜0.5mmである。
【0019】
金属プレート5を蛇腹状に折り畳む回数は複数以上であり、4回以上折り畳むことが好ましい。そして、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間のすき間Sは、通気路として機能する。すき間Sは、加硫されるゴムRの流入を防止するために0.05mm以下になっている。例えば、このすき間Sは、0.01mm〜0.05mmに設定される。
【0020】
このように蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間に、通気路として機能するすき間Sが形成されるので、ベントホール4の単位面積当たりのすき間Sの割合を容易に増大させることができる。ベントホール4に埋設された折り畳んだ金属プレート5は、形状が安定しているので、このすき間Sの大きさも比較的安定してばらつきが小さい。そのため、排気効率を向上させつつ、良好な排気を確保するには有利になる。
【0021】
また、このように配置した折り畳んだ金属プレート5は、加硫されるゴムRによって押圧されても実用上変形し難いので耐久性にも優れ、より安定した排気を長期間確保できる。
【0022】
ベントホール4に埋設されたこの金属プレート5は、取り外しが可能なので、すき間Sが目詰まりした際には、蛇腹状に折り畳んだ古い金属プレート5を、蛇腹状に折り畳んだ新たな金属プレート5に交換するだけで目詰まりを解消できる。そのため、ベントホール3のメンテナンス性に優れている。
【0023】
この実施形態では、ベントホール4が、成形突起3aと成形突起3bとが交差する隅部の成形面2に配置されている。この隅部の成形面2は、図4に例示するように、加硫されるゴムRが最も遅れて当接する部分の一つである。それ故、この実施形態では、加硫されるゴムRによってベントホール4が塞がれるタイミングを最も遅くすることが可能になる。したがって、排気不良に起因するゴム製品の加硫故障をより確実に防止することができる。特に、ベントホール4が平面視で略四角形であると、成形突起3a、3bに対して、より近接させて塞がれるタイミングを最大限遅らせることができる。
【0024】
ベントホール4は、平面視で略四角形に限定されるものではない。図5に例示するように、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5の屈曲形状と同形状の波形壁4aにした形状にすることもできる。この形状のベントホール4によれば、折り畳んだ金属プレート5をより確実に固定することができ、また、すき間Sの大きさも一段と安定する。
【0025】
図6に例示するように、上面を開口し下面に貫通孔7aを有するケーシング7に、折り畳んだ金属プレート5を、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシング7の上面側に向けて予め嵌入しておき、このケーシング7をベントホール4に埋設した仕様にすることもできる。この仕様の場合、折り畳んだ金属プレート5をケーシング7に嵌入させる作業を外段取りで行なえるので、折り畳んだ金属プレート5を嵌入させてあるケーシング7をベントホール4に埋設するだけで、折り畳んだ金属プレート5の埋設作業を完了させることができる。
【0026】
図7に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の蛇腹状に屈曲した他方側面(反成形面側の側面)を、側面視で上方突状に湾曲している仕様にすることもできる。この仕様の場合、ベントホール4の下方に比較的大きな空間が形成されるので、安定した排気を確保し易くなる。側面視で下面が上方突状に湾曲している板状の金属プレートを、蛇腹状に繰り返し折り畳むことにより、この形状の金属プレート5を製造することができる。
【0027】
図8に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視で成形面2に沿って湾曲している仕様にすることもできる。側面視で上面が下方突状に湾曲している板状の金属プレートを、蛇腹状に繰り返し折り畳むことにより、この形状の金属プレート5を製造することができる。このように、成形面2に沿うような形状を容易に製造することができ、加硫した製品に不用意な跡が残らないようにすることができる。
【0028】
図9に例示するように、折り畳んだ金属プレート5の一部をモールド1に鋳込むことにより、金属プレート5をベントホール4に埋設された仕様にすることもできる。この金属プレート5では、両端の鋳込み部5が鋳込まれることにより、モールド1と一体化されて固定されている。
【0029】
折り畳んだ金属プレート5の一部を、このように鋳込んでモールド1を製造する手順を以下に例示する。
【0030】
図10に例示するように、マスター型の表面形状を転写したゴム型8の表面の所定位置に、蛇腹状に折り畳んだ金属プレート5を埋設し、この金属プレート5の両端の鋳込み部5aには、ゴム型8に埋設されない突出部5bを設けておく。また、蛇腹状に屈曲して隣り合う金属プレート5どうしの間にすき間Sには石膏Pを充填しておく。
【0031】
次いで、このゴム型8の表面に石膏Pを流し込んで、図11に例示するように、ゴム型8の表面形状を転写した石膏鋳型9を製造する。次いで、この石膏鋳型9の表面にアルミニウム等の溶融金属Mを流し込んで、図12に例示するように、石膏鋳型9の表面形状を転写したモールド1を鋳造する。この時点では、不要な突出部5bがモールド1の成形面2から突出しているので、突出部5bを除去する。また、すき間Sに充填しておいた石膏Pを除去する。これによりモールド1の鋳造とともに、折り畳んだ金属プレート5の埋設作業が完了する。その後、排気孔6aおよび連通孔6bを成形することにより、図9に例示するモールド1が完成する。
【0032】
本発明は、タイヤ、防舷材、ベルト、その他の種々のゴム製品の加硫用モールドに適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 加硫用モールド
2 成形面
3a、3b 成形突起
4 ベントホール
4a 波形壁
5 折り畳んだ金属プレート
5a 鋳込み部
5b 突出部
6a 排気孔
6b 連通孔
7 ケーシング
7a 貫通孔
8 ゴム型
9 石膏鋳型
S すき間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設したことを特徴とする加硫用モールド。
【請求項2】
前記折り畳んだ金属プレートが、上面を開口し下面に貫通孔を有するケーシングに、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシングの上面側に向けて予め嵌入されたものである請求項1に記載の加硫用モールド。
【請求項3】
前記折り畳んだ金属プレートが、その一部がモールドに鋳込まれることにより、ベントホールに埋設されたものである請求項1に記載の加硫用モールド。
【請求項4】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した他方側面が、側面視で上方突状に湾曲している請求項1〜3のいずれかに記載の加硫用モールド。
【請求項5】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視でモールドの成形面に沿って湾曲している請求項1〜4のいずれかに記載の加硫用モールド。
【請求項6】
前記ベントホールが、モールドに形成された成形突起と成形突起とが交差する隅部の成形面に配置されている請求項1〜5のいずれかに記載の加硫用モールド。
【請求項1】
蛇腹状に折り畳んだ金属プレートを、蛇腹状に屈曲した一方側面をベントホールの開口側に向けてベントホールに埋設したことを特徴とする加硫用モールド。
【請求項2】
前記折り畳んだ金属プレートが、上面を開口し下面に貫通孔を有するケーシングに、蛇腹状に屈曲した一方側面をケーシングの上面側に向けて予め嵌入されたものである請求項1に記載の加硫用モールド。
【請求項3】
前記折り畳んだ金属プレートが、その一部がモールドに鋳込まれることにより、ベントホールに埋設されたものである請求項1に記載の加硫用モールド。
【請求項4】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した他方側面が、側面視で上方突状に湾曲している請求項1〜3のいずれかに記載の加硫用モールド。
【請求項5】
前記折り畳んだ金属プレートの蛇腹状に屈曲した一方側面が、側面視でモールドの成形面に沿って湾曲している請求項1〜4のいずれかに記載の加硫用モールド。
【請求項6】
前記ベントホールが、モールドに形成された成形突起と成形突起とが交差する隅部の成形面に配置されている請求項1〜5のいずれかに記載の加硫用モールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−194571(P2011−194571A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60305(P2010−60305)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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