加速度が制御された挿入器デバイス
【課題】医療デバイスを皮下領域又は筋肉内領域に挿入するための挿入器デバイスを提供する。更に詳細には、穿刺部材を制御下で所定の通りに加速及び減速するための手段を持つ挿入器デバイスを提供する。
【解決手段】挿入器デバイス(200、500)は、前記穿刺部材(105、243)、回転部材(204、300、400、512)、及び回転軸線を中心として回転部材(204、300、400、512)を回転するための駆動部材(203、561)を取り囲むハウジング(201、221、251;501、502、503)を含む。回転部材(204、300、400、512)は、回転移動を、挿入方向での穿刺部材(105、243)の長さ方向移動に変換するための変換手段(216、246、521)を含む。変換手段(226、246、521)は、穿刺部材(105、243)の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む。
【解決手段】挿入器デバイス(200、500)は、前記穿刺部材(105、243)、回転部材(204、300、400、512)、及び回転軸線を中心として回転部材(204、300、400、512)を回転するための駆動部材(203、561)を取り囲むハウジング(201、221、251;501、502、503)を含む。回転部材(204、300、400、512)は、回転移動を、挿入方向での穿刺部材(105、243)の長さ方向移動に変換するための変換手段(216、246、521)を含む。変換手段(226、246、521)は、穿刺部材(105、243)の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスを患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入するための挿入器デバイスに関する。更に詳細には、本発明は、穿刺部材を制御下で所定の通りに加速及び減速するための手段を持つ挿入器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インジェクタとも呼ばれる挿入デバイスは、一般的には、医療の分野で注入セット等の医療デバイスを半自動態様で患者の皮膚を通して挿入するために使用される。
患者によっては、特に子供たちは、注射針等の先が尖ったもの及び医療的治療及びセラピーで一般的に使用される他の穿刺デバイスを怖がるということが知られている。この恐怖は、多くの場合、不合理であり、適切な医療的治療を妨げてしまう。
医療デバイスの挿入に関する別の周知の事項は、適用前又は適用中に穿刺部材が汚染される危険である。これは、例えば汚染された挿入ニードルにより、感染症を患者にもたらす。このようなニードルが長く露呈されればされる程、例えば指がニードルと接触する危険、ニードルが清浄でない表面と接触する危険、又は空気中を漂う汚染物、エアゾール汚染物、等によって誤って汚染される危険が大きくなる。汚染の性質(例えばウィルス、細菌、真菌、酵母、及び/又はプリオン)及び患者の全身の健康状態によっては、罹患した感染症により、急速に生命を脅かす状態になる場合がある。
【0003】
特に病院環境における、感染した使用済みのニードルとの接触は生命を脅かす場合があり、汚染物に誤って露呈される危険を最小にしなければならないということが周知である。
挿入器デバイス等が当該技術分野で周知である。特許文献1は、皮下注入セット用のインジェクタに関し、特許文献2は挿入セット用の挿入デバイスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第EP1 011 785号
【特許文献2】欧州特許第EP1 044 028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、例えばカニューレやインジェクションニードルの挿入は不快感及び痛みをもたらす。本発明の目的は、不快感及び痛みを最小にすることである。
皮膚を医療デバイスで穿刺すると組織に損傷を与える。本発明の目的は、組織の損傷を減少することである。
医療デバイスは壊れやすい。かくして、本発明の目的は、壊れやすい医療デバイスを患者への挿入前及び挿入中に保護することである。
周知のデバイスは、挿入及び引っ込めの速度が定められておらず、制御されていなかった。また、患者に挿入されるべき穿刺部材の加速度及び減速度が定められておらず、制御されていなかった。
周知のデバイスには、上述の問題点及びこれらの問題点と関連した事項を解決したものはなく、挿入デバイスの技術分野において、上文中に論じた事項に対処し、穿刺部材を所定の加速度及び減速度で制御下で挿入することが明らかに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、穿刺部材の加速及び減速が制御下で行われる挿入デバイスを提供する。本願では、穿刺部材は患者の皮膚の表面を通過する即ち穿刺する部分と定義される。即ち、穿刺部材は、軟質カニューレと組み合わせた挿入ニードル、硬質の自己穿刺カニューレ、自己穿刺センサ、又は挿入ニードルと組み合わせたセンサである。
【0007】
本発明の第1の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。この特徴では、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、本質的に平行であり及び/又は互いに整合している。
本発明の第2の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。この特徴では、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、互いに本質的に垂直である。
【0008】
かくして、本発明は、特許請求の範囲第1項に記載の挿入器デバイスを提供する。この挿入器デバイスは穿刺部材を取り囲むハウジングを含み、挿入器デバイスは、前記穿刺部材を所定の通りに加速し減速するための手段を含む。所定の加速度及び減速度は、本質的に一定の力を加えることによって行われるのであって、加えられる力を変化することによるのではない。
【0009】
一実施例によれば、挿入器デバイスは、穿刺部材、回転部材、及び回転軸線を中心として回転部材を回転するための駆動手段を含み、回転部材は、回転移動を、挿入方向での穿刺部材の長さ方向移動に変換するための変換手段を含み、変換手段は、穿刺部材の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む。
一実施例によれば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と平行である。一つの場合では、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入軸線と整合している。
【0010】
一実施例によれば、変換手段は、回転部材の本体部分の表面に設けられた溝を含み、これは、穿刺部材に連結された突出部分と対応する。この実施例によれば、制御手段は、溝の傾斜を含んでいてもよく、溝は、挿入方向と平行でない方向に延びている。変換は、回転部材及び穿刺部材の夫々に設けられた任意の対応する部分を含んでいてもよい。これらの対応する部分は、摺動自在に嵌着していてもよい。溝は連続していてもよく、溝の傾斜は、縦軸が回転部材の回転軸線と平行な座標系で定義されていてもよい。長さ方向移動部材を患者の皮膚に向かって移動する場合に移動を提供するとき、溝の少なくとも一部に負の傾斜が設けられていてもよく或いは溝の全長に亘って一定の負の傾斜が設けられている。溝の負の傾斜は、長さ方向移動部材が患者の皮膚に向かって移動するに従って小さくなってもよい。長さ方向移動部材を患者の皮膚から遠ざかる方向に移動する場合に移動を提供するとき、溝は連続していてもよく、縦軸が回転部材の回転軸線と平行な座標系において、溝の少なくとも一部に正の傾斜が設けられていてもよいし、溝の全長に亘って一定の正の傾斜が設けられていてもよい。溝の正の傾斜は、長さ方向移動部が患者の皮膚から遠ざかる方向に移動するに従って減少してもよい。
【0011】
一実施例によれば、回転部材の本体部分は円筒形であり、溝は本体部分の外面に形成されており、溝と対応する手段は、少なくとも一つの内方に突出した部分として長さ方向移動部材の内面に形成されている。
一実施例によれば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と平行でなく、例えば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と直交していてもよい。回転軸線が直交状態から数°ずれても、本発明によれば、「直交している」と考えられる。更に、回転部材はシャフトであってもよく、このシャフトには、一つ又はそれ以上のディスクがシャフトに関して突出した状態で設けられていてもよい。
このようなシャフトは、二つのディスクが設けられたクランクシャフトであってもよく、これらの二つのディスクは、クランクシャフトに直交するように及び同心に取り付けられており、クランクシャフト及びディスクは同じ回転軸線を共有する。
【0012】
一実施例によれば、穿刺部材の挿入方向は、患者の皮膚の表面に対して本質的に垂直であり、即ち患者の皮膚が0°のベースラインを構成するものと考えられる場合に挿入が約90°の挿入角度αins で行われるか或いは、0°<αins ≦20°、又は20°<αins ≦40°、又は40°<αins ≦60°、又は60°<αins ≦80°のいずれかである。
一実施例によれば、挿入器デバイスの中央軸線は、挿入器デバイスがいつでも挿入を行うことができる位置に配置されている場合、患者の皮膚の表面に対して本質的に垂直であり、即ち患者の皮膚が0°のベースラインを構成するものと考えられる場合に挿入器デバイスは約90°の中央軸線角度αcenterを有するか或いは、0°<αcenter≦20°、又は20°<αcenter≦40°、又は40°<αcenter≦60°、又は60°<αcenter≦80°のいずれかである。
【0013】
一実施例によれば、穿刺部材の挿入方向は、挿入器デバイスの中央軸線と平行であり、即ち中央軸線からの変向角度αdeflection=0°であるか或いは、0°<αdeflection<90°、又は10°<αdeflection<80°、又は30°<αdeflection<60°である。
一実施例によれば、変換手段は、約180°±10°よりも大きい回転部材の回転を長さ方向移動に変換する。この長さ方向移動により穿刺部材を挿入する。特に、変換手段は、360°よりも大きい又は1.5回転よりも大きい、又は2回転よりも大きい回転部材の回転を、長さ方向移動に変換する。前記長さ方向移動により前記穿刺部材を挿入する。
【0014】
一実施例によれば、穿刺部材は、軟質カニューレ及び導入器ニードルを含む。例えば、導入器ニードルは、挿入器デバイスの部分であってもよく、その場合、穿刺部材の挿入後、軟質カニューレを含む医療デバイスから導入器ニードルを取り外してもよい。
この実施例によれば、回転部材を同じ回転方向に連続的に回転することにより、穿刺部材の挿入に続いて導入器ニードルの引っ込めることができ、又は回転部材を穿刺部材の挿入後に逆方向に回転することによって、導入器ニードルを引っ込めることができる。
例えば、回転部材を約180°±10°回転することにより、前記導入器ニードルを引っ込めることができ、又は回転部材を180°よりも小さく、又は150°よりも小さく、又は120°よりも小さく、又は90°よりも小さく、又は60°よりも小さく、又は30°よりも小さく回転することにより導入器ニードルを引っ込める。
本発明を、様々な図の対応する部分に同様の参照番号を付した添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、穿刺部材、本体部分、及び取り付けパッドを含む医療デバイスの図である。
【図2】図2は、挿入器デバイス及びその主要構成要素の実施例の図である。
【図3】図3は、挿入器デバイス及びその主要構成要素の変形例の図である。
【図4】図4は、上部分の拡大図を含む、作動手段を持つ挿入器デバイスの一実施例の図である。
【図5】図5は、回転部材及び導入器ニードルを持つピストンの実施例の図である。
【図6】図6は、回転手段の変形例の図である。
【図7】図7は、変換手段(突出部)を持つピストンの一実施例の詳細図である。
【図8】図8は、医療デバイスが挿入前の挿入器デバイスの一実施例の断面図である。
【図9】図9は、医療デバイスを持つ挿入器デバイスの一実施例の断面図であり、(A)は挿入前、(B)は挿入状態、(C)は引っ込めた状態である。
【図10】図10は、挿入器デバイス及び医療デバイスの実施例の様々な図である。
【図11】図11は、コイルばね、回転手段、及びピストンを含む変換手段の変形例の図である。
【図12】図12は、作動手段を持つ挿入器デバイスの実施例の図である。
【図13】図13は、変換手段を持つ挿入器デバイスの一実施例の作動モードを示す図である。
【図14】図14は、外部作動手段を持つ挿入器デバイスの実施例の概略図である。
【図15】図15は、挿入速度及び加速度/減速度を角速度の関数として制御下で変化するための二つの原理を示す図である。
【図16】図16は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の透視図である。
【図17】図17は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の、穿刺部材を持つ医療デバイスを含む下部分の部分断面図である。
【図18】図18は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の、上部分の部分断面図である。
【図19】図19は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの作動モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、様々な医療デバイスを患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入できる。このような医療デバイスは、例えば注入セット又は注入セットの注入部分、一つ又はそれ以上のセンサが挿入されたセンサデバイス、注射器による繰り返し注射に代わる、アクセスが制限された本体しか持たないポートデバイス、又は穿刺部材を患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入した任意の他のデバイスを含む。
本発明の目的の一つは、患者への医療デバイスの挿入を制御下で、所定の方法で、調節自在に行うことができる挿入器デバイスを提供することである。制御下で、所定の方法で、調節自在に行われるこのような挿入は、挿入速度を制御することによって、及び随意であるが、医療デバイスを、例えば直接的に挿入することができない軟質カニューレとともに挿入する上で一般的に使用されている挿入ニードル等の挿入器デバイスの部分の引っ込め速度を制御することによって行うことができる。しかしながら、本発明者は、挿入速度が制御されるばかりでなく、新規であり且つ発明を構成する、挿入の速度並びに加速度及び減速を制御できる挿入器デバイスを提供する。これによって、挿入の特性及び特徴を制御することにより、信頼性、作動の容易さ、及び使用者に対する優しさが大幅に向上した。
【0017】
図1は、本発明に従って挿入できる医療デバイス100の様々な実施例を示す。図1Aに示す医療デバイスは、図1Aに示すように、カニューレ保持部分101と、本体102と、取り付けパッド103とを含む。
図1Bは、カニューレ保持部分101の一実施例を示す。カニューレ保持部分101は、上部分104及びカニューレ105を含む。上部分104は開口部106を有し、この開口部はシーリングデバイス107によって閉鎖されている。上部分104の下側には係止手段108が設けられている。上部分104内には内部チャンバ(図示せず)が形成されている。前記内部チャンバはカニューレ105に連結している。
【0018】
図1Aでわかるように、医療デバイス100の本体102は、カニューレ保持部分101の少なくとも一部を取り囲む開口部109を含む。同様に、取り付けパッド103には、少なくともカニューレ105又はカニューレ保持部分101と同幅であるか或いはこれよりも広幅の開口部110が設けられている。別の実施例では、インジェクションニードル、挿入器ニードル、又はカニューレ等の一つ又はそれ以上の穿刺部材を取り付けパッド103に刺す。前記取り付けパッドには開口部110が設けられていない。
多くの場合、取り付けパッド103は、医療デバイス100を患者の皮膚と確実に適切に接触するために使用される。この取り付けパッド103は、医療デバイス100の本体102の下側に取り付けられていてもよい。別の態様では、取り付けパッド103を患者の皮膚に取り付け、医療デバイス100を取り付けパッド103に又は取り付けパッド103の開口部110に挿入する。
【0019】
図1Cは、図1A及び図1Bに示す医療デバイス100の別の図を示す。図1D及び図1Eは医療デバイス100の他の実施例を示す。図1Eでわかるように、取り付けパッドは剥離ライナを含み、この剥離ライナには、医療デバイス100の取り付け前に剥離ライナを取り外すため、フラップ112が設けられている。
図1F及び図1Gは、医療デバイス100の側面図及び断面図を示す。図1Gには、係止手段108と本体102との間を連結する相互係止手段111が示してある。
【0020】
回転軸線及び挿入軸線は平行である
第1の特徴では、本発明は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、本質的に、互いに平行である。以下、前記回転移動の軸線及び挿入軸線が本質的に整合したこのような実施例を説明する。
図2は、本発明の一実施例による挿入器デバイス200の主構成要素の分解図を示す。挿入器デバイスは、(i)上部分201と、(ii)コイルばね203及び回転部材204を含む回転手段202と、(iii)中央部分221と、(iv)長さ方向移動手段241と、(v)下部分251とを含む。前記部分201、221、及び251は、本質的に、挿入器デバイス200の外寸法並びに内部キャビティ(図示せず)を形成する。前記内部キャビティ内には、回転手段202並びに長さ方向移動手段241が設けられる。
図2から、様々な部分及び手段が、主として挿入器デバイスの中央軸線を中心として整合されており且つ配向されており、挿入軸線が、挿入器デバイスの中央軸線と本質的に同じであるということが明らかである。
【0021】
以下、図2に示す構成要素を詳細に上から下に説明する。
Ad(i):上部分201は、上部分209及び本体部分210を含む。上部分209の中央には、回転部材204の部分(シャフト208、下側に示す)を取り付けるため、アタッチメント手段207が設けられている。このようなアタッチメント手段207は、開口部又は支承体を含む。上部分209は本質的に平らであり、ディスク状に形成されている。上部分209の直径は、本体部分210の直径よりも大きく、かくして突出部211を形成する。本体部分210は、本質的に中空円筒形状に形成されており、本体部分210の内径は、挿入器デバイス200の組み立て時に、コイルばね203の外径よりも大きい。コイルばね203用の、平らな外部分206用の一つ又はそれ以上のアタッチメント手段(図示せず)が、上部分201の上部分209及び/又は本体部分210内に設けられていてもよい。
【0022】
Ad(ii):回転手段202は、コイルばね203及び回転部材204を含む。前記コイルばね203は、前記ばね203の中心に向かって位置決めされた内端205と、周囲に位置決めされた外端206とを含む。内端205及び外端206は、両方とも、個々に別個に賦形されていてもよい。例えばコイル状部材を内方に又は外方に曲げること等によってフラップを形成する。この実施例に示すように、外端206は、コイル状部材の一部分を外方に曲げることによって形成される。同様に、コイルばね203の内端205を対応する方法で形成してもよい。コイルばね203は、上部分201と回転部材204との間に配置される。コイルばね203の外径は、少なくとも挿入器デバイス200の組み立て中、上部分201の内キャビティと同じ大きさであるか或いはこれよりも小さい。
【0023】
回転部材204は、本体部分212と、上部分213と、シャフト208とを含む。上部分213は、本質的に平らであり、ディスク状に形成されており、一つ又はそれ以上の開口部214が形成されていてもよい。上部分213の直径は、本体部分212の直径よりも大きく、かくして突出部215を形成する。本体部分212は円筒形形状であり、一つ又はそれ以上の開口部(図示せず)が設けられていてもよい。前記開口部は、一つ又はそれ以上の開口部214と連通しており、かくして本体部分212の上部分213から底端(図示せず)まで延びる一つ又はそれ以上のチャンネルを形成する。一つ又はそれ以上の溝216が本体部分212の外面に形成されている。これらの溝216は、上端217即ち挿入中に患者から最も遠い遠位端から、下端218即ち回転部材204の挿入中に患者に最も近い近位端まで延びる。更に、回転部材204は上方に突出したシャフト208を含む。このシャフト208は、回転部材204の回転軸線と整合している。シャフト208の長さはコイルばね203の高さよりも大きい。コイルばね203を収容するため、シャフト208の直径及び形状並びにコイルばね203の内部分を、挿入器デバイス200の組み立て時に、コイルばね203の主部即ちコイルばね203全体から内部分205を差し引いた部材がシャフト208を取り囲むような寸法にする。
【0024】
Ad(iii):中央部分221は、挿入器デバイス200の最大の構成要素であり、本質的に、挿入器デバイス200の外側寸法を形成する。中央部分221は、本質的に中空円筒形形状をなしており、上部分222及び本体部分223を含む。上部分222及び本体部分223は、例えば溶接や接着によって互いに接合され、又は同じ加工物の部品である様々なユニットに合わせることができる。上部分222及び本体部分223の両方に、両端に、開口部即ち上開口部224及び下開口部225が夫々設けられている。中央部分221は、かくして、挿入デバイスの中央キャビティを形成する。この中央キャビティは、上述の回転手段202の主部並びに長さ方向移動手段241及び挿入されるべき医療デバイス100を取り囲むのに十分に広幅である。上部分222は、図2に示すように丸味が付けてあってもよく、上部分201の突出部211の少なくとも一部を取り囲むため、凹所(図示せず)をなしていてもよい。更に、本体部分223及び随意の上部分222は、長さ方向移動手段241の長さ方向移動を制御するため、一つ又はそれ以上のスロット(図示せず)等の案内手段(図示せず)を含んでいてもよい。挿入器デバイス200の外形状は、主として、中央部分221の形状で決まる。中央部分221の形状は、例えば左利きの人や右利きの人、並びに手が比較的に小さい人、又はプロテーゼで良好に掴むことができるように、楕円形であってもよいし、正方形であってもよいし、一つの線を中心として対称であってもよいし、回転対称であってもよいし、場合によっては非対称であってもよい。特別のグリップ手段(図示せず)を設けてもよい。
【0025】
Ad(iv):長さ方向移動手段241は、ピストン242と、挿入ニードル243と、長さ方向案内手段244と、ピストンの上から下まで延びる内部キャビティ245とを含む。前記ピストン242は本質的に中空円筒形形状をなしている。ピストン242の内径は、回転部材204の本体部分212の外径よりも小さいが、回転部材204の上部分209の直径よりも小さくてもよい。ピストン242の高さは、本質的に、回転部材204の本体部分212の高さと同じであってもよいし、これよりも小さくてもよいし大きくてもよい。本体部分212の主部等の回転部材204の少なくとも主部が内部キャビティ245に嵌着する。ピストン242の内壁に取り付けられており且つここから突出した一つ又はそれ以上の変換手段(図示せず)が設けられていてもよい。前記変換手段は、溝216に嵌着し、かくして回転部材204の回転移動をピストン242の長さ方向移動に変換する。ピストン242の底部には、この底部の中央に又は中央からずらして挿入ニードル243が取り付け手段(図示せず)によって取り付けられる。挿入ニードル243は、ピストン243の底部に対して垂直に延び、挿入配向で整合する。図2に示す実施例では、挿入ニードル243は、少なくとも一部がカニューレ保持部分101に挿入してある。カニューレ保持部分101は、本体部分101及び軟質カニューレ105を含む。かくして、カニューレ保持部分101及びピストン242は挿入ニードル243を介して連結される。
【0026】
Ad(v):挿入器デバイス200の下部分251は、下部分252及びリング状部分253を含む。下部分252は、本質的にディスク状に形成されており、リング状部分253よりも大径である。図示の実施例(図2参照)では、下部分252は、実際には、医療デバイス100の取り付けパッド103によって形成できる(詳細にはついては図1を参照されたい)。かくして、下部分252は、使い捨てライナ及びフラップ105を含んでいてもよい。図示のように、及び適当であれば、医療デバイス100の本体102が下部分252に載止し、適当な位置に、例えば医療デバイス100の本体102の中央キャビティがカニューレ保持部分101及び挿入ニードル243と整合するように保持される。リング状部分253の外径は、中央部分221の下開口部225の内径と同じであるか或いはこれよりも小さく、リング状部分253が中央部分221の本体部分223に嵌着する。本発明の変形例では、リング状部分253を省略し、中央部分221の下開口部225を、挿入されるべき医療デバイス100の取り付けパッド103によってシールする。
一般的には、取り付けパッドの接着剤の強さは、医療デバイスが挿入後に患者の皮膚上に止まり、医療デバイス100の残りの部分が所定の場所に残った状態でカニューレ105を通して挿入ニードル243だけを取り外すのに十分に強い。本発明の変形例では、医療デバイス100を別の医療デバイスを通して挿入する。
【0027】
図3は、本発明の変形例の分解図を示す。説明については、図2を参照されたい。図3に示す関連した構成要素及び特徴に付した参照番号は、図2におけるのと同じである。
挿入器デバイス200を反時計廻り方向に約90°回転することによって、幾つかの追加の及び/又は異なる特徴が明らかになる。
(i)挿入器デバイス200は、部分201の上部分209の中心からずらして配置された作動手段261を含む。作動手段は、ボタン262と、上部分209を横切って形成された一つ又はそれ以上の穴263、264と、シャフト208の上端に回転エレメント204の中心から僅かにずらして配置されたノッチ269とを含む。
(ii)コイルばね203の内端205を回転部材204のシャフト208に取り付けるためのアタッチメント手段219の一実施例を示す。
(iii)回転部材204の本体部分212の一実施例を示す。この図には溝216の一実施例が示してあり、溝216の第1の1/4及び最後の1/4を示す。溝216は連続していないということがわかる。
(iv)中央部分221の中央キャビティ内に設けられた内案内手段226の一実施例を示す。この実施例では、案内手段は、本質的に上部分222から本体部分223(図示せず)まで延びる長さ方向溝を形成する。案内手段226の高さは、下開口部225の直径と上開口部224の直径との差の約半分と等しい。
【0028】
Ad(i):本発明の一実施例によれば、挿入器デバイス200の作動は、ボタンを作動することによって行われる。これは、回転部材204がその回転軸線を中心として回転しないようにする位置1から、回転部材204がその回転軸線を中心として回転できる位置2まで押すことによって及び/又は摺動させることによって、及び/又は回転することによって、及び/又は枢動することによって行われる。図示の実施例によれば、ボタン262(これは、ロッド状形状を備えている)が、位置1にあるシャフト208のノッチ269に嵌着し、これによって、回転部材204が回転しないようにする。このボタンが本質的に穴263内にある位置から、ボタン262が本質的に穴264内にある位置に向かってボタン262を外方に摺動したり押したりすることによってボタン262を作動したとき、エネルギを蓄えた状態のコイルばね203が、エネルギが余り蓄えられていない比較的弛緩した状態に達し、そのとき、回転部材204の回転移動が提供される。
【0029】
変形例では、作動時にボタンを上方に持ち上げ、これによってノッチ269から離し、これによって回転部材204を回転させる。
回転部材204を回転するためのエネルギを提供するため、コイルばね203を本質的に弛緩した状態から、エネルギを蓄えた状態にしなければならない。
エネルギを蓄えた、即ち力を蓄えたこの状態は、内端205又は外端206のいずれかが移動しないようにし、内端205又は外端206のいずれかを、コイルばね203がばねの中心205に向かって更に密に巻かれるか或いはコイルばね203が外端206に向かって更に密に巻かれるかいずれかの方向に回転することによって得られる。コイルばね203の弛緩は、これをエネルギを蓄えた状態にする回転方向とは逆方向で生じる。
【0030】
以上説明した図3の実施例では、コイルばね203の内端205はシャフト208の溝219内に配置されている。溝219の長さは、シャフト208の長さと本質的に同じであるか或いはこれよりも短い。溝219の幅は、コイルばね203のリーフの幅と本質的に同じであるか或いはこれよりも広幅である。コイルばね203が弛緩するとき、内端205が回転し、この回転移動がシャフト208に伝達し、及びかくして回転部材204に伝達する。
上部分201内に設けられたコイルばね203のアタッチメント手段は図示してない。 本発明の一実施例によれば、挿入器デバイス200は、力を蓄えた状態で使用者に提供される。
別の実施例では、挿入器デバイスが誤って作動しないようにするため、固定手段が設けられている。このような固定手段は、機械的手段、電気機械的手段、又は電子的手段、又は機械的手段、電気機械的手段、又は電子的手段の組み合わせを含む。
【0031】
図4は、組み立てた状態の本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示し、作動手段261が上部分201の中心からずらして配置されている(図4A参照)。上部分201、中央部分221、及び下部分251が示してある。ボタン262及びキャビティ265を含み、随意であるが、保持手段266を含む作動手段261の拡大図を図4Bに示す。キャビティ265は、中心に近い位置263から開始して、中心から大きく離れているが上部分201内にある位置264まで半径方向に延びている。キャビティ265は、最内位置263及び最外位置264に、ボタン262の半径よりも大きな半径で丸味が付けてある。挿入器デバイス200は、ボタン262を上文中に説明したように操作することによって作動できる。本発明の一実施例では、挿入デバイスは、ボタン262を、中心に近い位置263又はその近くの位置から、上部分201の中心から大きく離れた位置264までもっていくことによって作動される。ボタン262は、例えばエネルギを蓄えた状態において、上部分201を通って延びており、回転部材204のシャフト208のノッチ269に嵌着している。保持手段266は、デバイスが誤って作動しないようにする抵抗を提供する。本発明の一実施例では、保持手段266は、ばね等の弾性部材でできている。
【0032】
変形例では、挿入器デバイス200の作動は、ボタン262を作動して係止機構(図示せず)を作動することによって行われる。係止機構は、エネルギを蓄えた即ち力を蓄えた状態の回転部材204のノッチ269内にある位置から取り外されるブロック部材(図示せず)を含む。これによって回転部材204は、もはや回転しないように拘束されていない。
【0033】
図5は、図3に示す実施例等の本発明の一実施例による回転部材204及びピストン242の詳細図を示す。図3と比較すると、回転部材204及びピストン242が反時計廻り方向に約45°回転させてある。この図には、回転部材204の上端217が示してある。この場所から溝216が開始し且つ終了する。一実施例では、溝は連続していない。別の実施例では、溝は連続しており、即ち始点も端点もない。
この実施例では、回転部材204の回転の約半分、即ち約180°が、ピストン242の長さ方向移動に変換される。この場合、前記長さ方向移動の長さは、本質的に、リードで決まる。リードとは、上端217のところでの溝216の開始位置と下端218との間の軸線と平行な距離である。ピストン242の下に挿入ニードル243が取り付けられる。
【0034】
図6は、本発明による回転部材204の別の実施例を示す。図6Aは、図3及び図5と同様であるが、図5と比較して更に約45°回転させた、回転部材204の別の図を示す。ノッチ220が回転部材204の下端に示してある。ここで、溝206は最も下の位置に至る。本発明の一実施例では、ノッチ220はデバイスの適用中には特別の機能を持たないが、挿入器デバイス200の組み立て中及び/又は製造中、組み立てを容易にする、又は組み立てを可能にする機能を有する。別の実施例では、ノッチ220は設けられていない。
図6B及び図6Cは、回転部材204の変形例を示す。これらの実施例では、回転部材204は、上部分213も突出部215も備えていない。シャフト208は、形態及び形状が異なっていてもよく、図示の実施例では、シャフトは本質的に円形の直径を備えているが、底部が頂部よりも太くなっている、即ち回転部材204の本体部分212に向かって太くなっている。シャフト208の上面は本質的に平らである。本発明の別の実施例では、シャフト208の頂面は凹状をなしている。本発明の更に別の実施例では、シャフト208の頂面は凸状をなしている。
【0035】
図6A、図6B、及び図6Cに示す実施例では、回転部材204に設けられた夫々の溝216の様々な位置が提供される。本発明による挿入器デバイスは、溝216の位置及びトラックで決まる、一回転中のピストン241の長さ方向移動の様々な速度及び方向を明らかにする。これらの速度差は加速度の差(正又は負)で表現することもできる。一般的には、負の加速度は減速とも言う。
回転部材204が反時計廻り方向に回転するとき、図6Bに示すのと同様の回転部材204を持つ挿入器デバイスのピストン241は、最初の90°の回転内で、図6Cに示すのと同様の回転部材204を持つ挿入器デバイスよりも、比較的高い加速度及び比較的高い挿入速度を示す。これは、溝216のトラックの傾斜(図6B参照)が、図6Cに示すトラックの傾斜と比較して急であるためである。しかしながら、残る90°の回転中、挿入速度は低下する。しかし、同様の回転速度では、回転部材の同様の高さ及び同様のリード、挿入に要する全時間は同様であるが、夫々の挿入速度及び夫々の加速度及び減速が異なる。これらは、回転部材204の溝216の傾斜と正比例する。
【0036】
図7は、ピストン242と、挿入ニードル243と、互いに対称に直径方向反対側に位置決めされた一つ又はそれ以上の長さ方向案内手段244と、変換手段246とを含む長さ方向移動手段241の半透視図を示す。図示の実施例では、変換手段246は、本質的に、ピストン242の内壁から半径方向内方に突出した、ピストン242の頂部近くに案内手段244とは逆側に位置決めされた小さな円筒体又はロッドの形状で設けられている。変換手段246は、この変換手段246が回転部材204の溝216に嵌着して外れないようにでき、回転部材204の回転を長さ方向移動手段244の長さ方向移動に変換できる直径、長さ、及び形状を備えている。
長さ方向案内手段244は、本質的に矩形形状であってもよく、中央部分221の中央キャビティ内に設けられた案内手段226の溝に嵌着する(例えば、図3参照)。一実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、ピストン242の高さとほぼ同じである。別の実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、長さ方向移動の長さよりも長い。更に別の実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、回転部材204の高さよりも大きい。他の実施例では、ピストン242の長さは回転部材204の高さよりも大きい。
【0037】
図8は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示す。明瞭化を図るため、幾つかの部分又はこれらの部分の部分がなくしてあるか或いは断面で示してある。図8は、本発明による挿入器デバイスの主要構成要素の様々な寸法及び形状の印象を提供する。
図8には、作動手段261は示してない。
【0038】
図9は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例の断面を示す、三つの図を提供する。主要構成要素の相対的な位置、比率、及び相互作用が示してある。挿入器デバイスは、以前の図(図2乃至図8)に示す挿入器デバイス200と共通の幾つかの特徴を有する。夫々の図には、参照符号及び矢印が付してある。挿入器デバイスの様々な構成要素の参照番号は、以上の説明と同じである。
図9Aでは、挿入器デバイス200は、力を蓄えた/エネルギを蓄えた/賦活された状態にあり、挿入の準備ができている。この図には、回転部材204を貫通した長さ方向チャンネル又はキャビティ又は開口部214の形状が示してある。回転部材204の下部分に配置された中央キャビティが明らかである。中央キャビティはシャフト218と連続して形成されており、直径がシャフトとほぼ同じである。
【0039】
図9Bは、回転部材204が約180°回転した後の挿入器デバイス200を示す。コイルばね203の直径が大きくなっており、カニューレ保持部分101が医療デバイスの本体102内の所定位置にあり、カニューレ105及び挿入ニードル243の先端が下平面及び下部分252から突出している。
図9Cは、医療デバイス100を挿入した後の挿入器デバイス200を示す。挿入ニードル243を引っ込め、挿入されたデバイスは患者からいつでも取り外すことができる。
【0040】
図10は、本発明による挿入器デバイス200の別の実施例を示す。図10Aは、下部分251を示し、この実施例では、剥離ライナが取り付けパッド103から取り外してあり、剥離ライナの底面が示してある。一般的には、この面は、取り付けパッド、医療デバイス、及びカニューレを所望の位置に保持するため、患者の皮膚に対して十分に接着するのに十分な接着強度を有する。適当である場合には、前記接着強度は、挿入器デバイスを安全に取り外すことができが、医療デバイスを所望の位置に保持し続けるのに十分である。
図10Bは、挿入器デバイス200及び作動手段261の平面図を提供する。この図の右側には、取り付けパッド、フラップ112を持つ剥離ライナを含む医療デバイス100の一実施例が示してある。
取り付けパッド103の直径は、挿入器デバイス200の外径と同じ大きさであるか或いはこれよりも小さい。本発明の別の実施例では、取り付けパッド103の直径は、挿入器デバイス200の外径よりも大きい。
【0041】
図11は、本発明による挿入器デバイスの変形例を示す。図11Aは、コイルばね205及び回転部材204を含む回転手段202及びピストン242の一実施例を示す。この実施例では、シャフト208はコイルばね203の幅よりも長い。長さ方向案内手段244には僅かに丸味が付けてある。この実施例では、長さ方向案内手段244はピストン242の高さよりも短い。回転部材204は、上部分213も開口部214も含まないということに着目されたい。
図11Bは、シャフト208及び溝216が設けられた回転部材204の一実施例を示す。回転部材204のこの実施例でも、上部分213も開口部214も含まない。溝216のトラックは傾斜が非常に急(高リード)であり、回転部材204の上端217から下端218まで約90°以内で延びている。この回転部材204を持つ本発明による挿入器デバイス200は、患者に挿入されるべき医療デバイスの挿入及び引っ込めを、例えば図2、図3、図5、図6、図8、又は図9に示す回転部材204を含む挿入器デバイス200よりも小さな回転で行う。これらの実施例では、回転部材204の約180°の回転を、長さ方向移動部材241の完全な長さ方向挿入移動に変換する。
【0042】
しかしながら、本発明の別の実施例では、溝216には、トラックが設けられている。このトラックは、挿入又は引っ込め又はこれらの両方を行う上で、180°以上、例えば181°乃至360°を必要とし、又は一回転以上、即ち360°以上、例えば361°乃至540°を必要とし、又は1.5回転以上、又は2回転以上を必要とする。
別の実施例では、挿入及び/又は引っ込めを行う上で回転部材204が必要とする回転角度は、180°よりも小さく、例えば10°乃至170°、又は20°乃至160°、30°乃至160°、又は40°乃至150°、50°乃至140°、又は60°乃至130°、60°乃至120°、又は70°乃至110°、80°乃至100°、又は約90°である。
【0043】
更に別の実施例では、挿入に必要な回転角度は、引っ込めに必要な回転角度と本質的に同じである。
更に別の実施例では、挿入に必要な回転角度は、引っ込めに必要な回転角度と異なり、±5°以上、±10°以上、±20°以上、±45°以上、±90°以上、±135°以上以上、±180°以上、±270°以上、又は±360°以上異なる。
更に別の実施例では、溝216は自らと即ち溝216と交差する。即ち下方移動用のトラック及びこれに続く上方移動用のトラックが交差する。これは、挿入及び引っ込めを完全に行うのに360°よりも大きい回転を必要とする場合に必要とされる。
変形例では、長さ方向引っ込め移動は、回転部材204を逆方向に回転することによって行われる。
図11Cは、本発明によるピストン242の一実施例を示す。長さ方向案内手段244は、丸味のある断面を有し、案内手段の頂部からピストン242の底部まで延びる。
【0044】
図12は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示す。この図では、中央部分221並びに作動手段261が示してある。作動手段261は、上部分201に設けられたボタン262を含む。主中央部分221を持つ挿入器デバイスの機械的レイアウトにより、設計及び特徴についての様々な可能性が開けているということが明らかである。
上部分201は、図12及びそれ以前の図に本質的に平らであるように示してあるけれども、丸味が付けてあってもよく、対称形状であっても非対称形状であってもよい。かくして、上部分201は一つ又はそれ以上の突出部を備えていてもよいし、一つ又はそれ以上のノッチ又は溝が設けられていてもよい。
【0045】
図13A、図13B、図13C、及び図13Dは、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する本発明の第1の特徴を簡単に示す。前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入の軸線は本質的に平行であり、重なっている。これらの図は縮尺通りでない。
図13Aは、エネルギを蓄えた状態の、張力が加わった、コンパクトなコイルばね203を示す。ばね203は中心がシャフト208に取り付けられており、周囲206がハウジング223(図示せず)に取り付けられている。図13Bは、本発明による挿入器デバイスの部分断面を示す。ここでは、エネルギ提供手段は、挿入前の又は挿入時のコイルばね203を含む。図13Cは、図13Aに示したのと同じコイルばね203の実施例を示すが、図13Cでは、ばね203は弛緩した拡張状態にある。図13Dは、挿入中又は挿入の終了に近づいている状態の、図13Bに示したのと同じ挿入器デバイスの実施例の部分断面を示す。
【0046】
図13A、図13B、図13C、及び図13Dに示すコイルばね203の直径は、弛緩中に大きくなる。本発明の別の実施例では、コイルばね203の直径は、エネルギを蓄えた状態から弛緩した状態まで移動するときに小さくなる。挿入速度の制御は、エネルギ提供手段が単位時間当たりに解放するエネルギの強さ又は量、及び単位時間当たりに解放されるエネルギの量を制御するための技術的特徴によって行われる。更に、速度及び速度及び方向の変化を、リーンによって、即ち回転部材204の溝216の傾斜によって制御できる。これは、長さ方向移動部材242の長さ方向移動に直接的に変換される。
【0047】
本発明の一実施例では、医療デバイス100を挿入するためのエネルギを提供するためのエネルギ提供手段は、ゼンマイ仕掛け(clockwork) を含む。別の実施例では、ゼンマイ仕掛けは、エネルギを制御下で解放するための制御手段を含む。エネルギの解放は、一定、又は本質的に一定であってもよい。別の態様では、エネルギの解放は、医療デバイス100の挿入中に変化してもよい。更に、必要であれば、挿入ニードル243を引っ込めるために提供されるエネルギは、医療デバイス100を挿入するためのエネルギと異なっていてもよい。
【0048】
図14は、本発明による挿入器デバイスを作動するための二つの別の可能性を示す。図14は、賦勢手段を含む挿入器デバイス200を示す。前記賦勢手段は、相互作用手段281を含む。相互作用手段281は、挿入器デバイスのシャフト208に連結されている。ハンドル284及び連結手段283を含むキー282がコイルばね203等のエネルギ貯蔵デバイスを賦勢する即ち作動するため、前記連結手段283が相互作用手段281と相互作用できる。
図14Aには、キー282の回転等の、外部からの手動による又は自動式の入力を回転に変換し、これによりコイルばね203の作動又は非作動を行う一実施例が示してある。円弧状矢印は、キー282の前記回転を示す。自動式の入力は、更に、電気的入力、電子的入力、及び電磁的入力のうちの一つ又はそれ以上を含んでいてもよい。本発明の一実施例では、電気/電磁モータによりコイルばね203にエネルギを蓄える。本発明の別の実施例では、外部入力は、圧縮した空気、二酸化炭素、窒素、等の圧縮ガスを含む。
【0049】
図14Bでは、手動による又は自動式の入力によってエネルギ貯蔵デバイス(コイルばね203)にエネルギを蓄える。前記入力は、双方向矢印で示すような長さ方向上下移動であるか或いは、上下移動の組み合わせである。本発明の一実施例によれば、外部エネルギは、医療デバイス100を挿入する上で、及び挿入ニードル243の随意の引っ込めを行う上で必要なエネルギを提供する。別の実施例では、外部エネルギはコイルばね203を弛緩状態からエネルギを蓄えた状態にするのに必要なエネルギを提供する。
【0050】
回転軸線及び挿入軸線は垂直である
本発明の第2の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスであって、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線が本質的に互いに垂直な挿入器デバイスに関する。
図15は、回転移動を長さ方向移動に変換するための二つの異なる原理を示す。両原理の共通の特徴は、本発明の第1の特徴と異なり、長さ方向移動方向が、回転部材の回転軸線と平行でないということである。一般的には、長さ方向移動方向及び長さ方向移動軸線は、回転部材の回転軸線に対して垂直であるか或いは本質的に垂直であり、即ち直交する。
【0051】
図15Aは、ディスクやホイール等の回転部材の回転を長さ方向移動に変換する方法を示す。更に、位置変化(translocation)(S) 及び速度(V)の対応する関数を概略に示す。これらは、各々、回転(φ)の関数として示してある。これらの関数は、本質的には、周期が2πの正弦関数又は余弦関数である。制御された所定の長さ方向移動を行うためにこの原理を使用し、速度及び加速度を上述の三角関数(正弦及び余弦)によって決定する。これらは、回転速度で決まる。
【0052】
回転移動から長さ方向移動を提供するための技術的手段は、以下の構成要素を含む。即ち、
軸線301を中心として回転する回転部材300(この実施例では、回転するディスクとして示してある)。しかしながら、実際には、任意の他の回転体でもよい。
連結ロッド等の細長い第1部材302。
細長い第1部材302を前記回転部材300に連結し、細長い第1部材302を必要なだけ枢動するアタッチメント手段303。
細長い第2部材304(ピストン)。
細長い第1及び第2の部材間の継手であって、細長い第1部材302と細長い第2部材304との間に必要な枢動及び細長い第2部材304の方向の長さ方向移動を提供する継手。
所望の長さ方向移動方向での細長い第2部材304の整合を提供し且つ制御する長さ方向案内手段306。
挿入長さ/長さ方向移動長さは、本質的に、回転中心から細長い第1部材の取り付け点までの距離の2倍程度である。
【0053】
図15Bは、回転部材の回転移動を長さ移動部材の所定の長さ方向移動に変換するための別の原理を示す。この実施例では、回転部材即ち不規則な形状が、結果的に生じる長さ方向移動を決定する。位置変化(S) 及び速度(V)の対応するグラフは、各々、回転(φ)の関数として概略に示してある。
回転移動から長さ方向移動を提供するための技術的手段は、以下の構成要素を含む。即ち、
回転軸線401を中心として回転する回転部材400。これは、この実施例では、不規則な形状の回転ディスクである。別の態様では、中心をずらして回転する円形のディスクもまた提供される。
変換手段402。
細長い部材403。
長さ方向案内手段405。
例えばコイルばねを含む弾性手段404。
挿入/長さ方向移動の長さは、半径の差で決まる。即ち回転部材400の最大半径(Rl)と最小半径(Rs)との間の差で決まる。
【0054】
以下の図(図16乃至図19)は、回転移動を長さ方向移動に変換する、上掲の図15Aに示す原理に基づく本発明の実施例を示す。
図16は、本発明によるクランクシャフトを含む挿入器デバイス500の一実施例の透視図である。挿入器デバイス500は、上部分501と、中央部分502と、本体部分503とを含み、これらの部分により挿入器デバイスの外観が決まる。中央キャビティ505は、上部分501、中央部分502、及び本体部分503内に形成される。
上部分501には丸味が付けてあり、半球形状をなしている。上部分501及び中央部分502は連結されており、一部品をなして提供でき、又は接合されなければならない別々の部品として提供できる。上部分501及び中央部分502は、壁厚が同じであり、即ち適合する。中央部分502は中空円筒形形状である。一般的には、半透明であるように示してあるが、上部分501及び中央部分502は透明でない。
【0055】
下部分503はディスク状であり、その直径は中央部分502よりも大径である。下部分503は内延長部504を含む。中央部分502は、内プラットホーム506と重なる。内延長部504は、プラットホーム506と、一対の案内手段551と、リング状円形部分507とを含む。
下部分503の内延長部504は、本質的に円筒形の内プラットホーム506を含む。内プラットホーム506の外径は、中央部分502の内径よりも大きい。
【0056】
案内手段551は、直径方向反対側に内延長部504の外側に向かって(即ち、挿入器デバイス500の下平面に対して斜めに)位置決めされており、内プラットホーム506から垂直方向上方に、かくして中央部分502及び中央キャビティ505の内側に延びている。
内プラットホーム506の中央には開口部が設けられており、ここにカニューレ保持部分101が設けられる。カニューレは、挿入方向下方に向いている。
案内手段551の上端には、クランクシャフト512が支承手段(図示せず)を介して設けられている。これにより、挿入器デバイスの下平面と平行な、即ち水平な及び案内手段551に対して直角なクランクシャフト512を、回転できる。
【0057】
クランクシャフト512には、二つの案内手段551間に、コイルばね561及び二つのディスク511a及び511bが直交して、及び前記クランクシャフト512と同心に取り付けられており、そのため、クランクシャフト512、コイルばね561、及びディスク511a及び511bは、同じ回転軸線を共有する。ディスク511a及び511b並びにコイルばね561は直径が同じである。ディスク511aは、ディスク511b及びコイルばね561が設けられたクランクシャフト512の中央近くに取り付けられている。コイルばね561の内部分562だけがクランクシャフト512に取り付けられている。クランクシャフト512は、二つの部分を含んでいてもよい。クランクシャフト512の一方の部分にコイルばね561及びディスク511aが取り付けられており、ディスク511bがクランクシャフト512の他の部分に取り付けられていてもよい。
【0058】
アタッチメント手段522が二つのディスク511a及び511b間に設けられている。前記アタッチメント手段522は、ロッド521をディスク511a及び511bに連結し、連結ロッド521が枢動できるようにする。連結ロッド521は、ディスク511a及び511bに中心をずらして取り付けられている。アタッチメント手段522は、連結ロッドの上端523の近くの貫通穴を介して前記クランクシャフト512と平行に取り付けられた第2シャフトを含む。第2シャフトは、前記連結ロッドから貫通穴の両側に突出している。
連結ロッド521の取り付け点を提供することとは別に、アタッチメント手段522はディスク511a及び511b間に安定した連結部を提供する。その結果、クランクシャフト512の一部分がなくてもクランクシャフト512の回転がディスク511から他に伝達される。これは、連結ロッド521がディスク511a及び511bの回転を枢動及び上下方向移動に変換するのに必要な空間を提供する。そうでないと、クランクシャフト512が回転ロッド又はシリンダ等シャフトによって形成されている場合、部分的に拘束されたり干渉したりしてしまう。
【0059】
連結ロッド521の下端524の近くには、連結ロッド521の下端524をピストン531に連結するための可撓性継手541が設けられている。図示の実施例では、連結ロッド521の枢動は、前記可撓性継手541を介してピストンの長さ方向移動に変換される。可撓性継手541は横方向バー542を含み、ピストン531が横方向バー542の中央に取り付けられている。横方向バー542はクランクシャフト512と平行であり、案内手段551によって案内されて必要とされるように上下に移動する場合にシャフト542と平行なままである。前記案内手段551により、横方向バー542が、例えば挿入軸線を中心として枢動したり捩じれたりしないようにする。
ピストン531は横方向バー542に固着されており、この実施例では、ピストン531は、挿入方向で整合した状態で、及び挿入デバイスの中央軸線と整合した状態で、横方向バー542の中央に位置決めされている。
【0060】
ピストン531の下端には導入器ニードル243(先端が下に向いた)が取り付けられており、前記導入器ニードル243は挿入デバイス500の中央軸線と整合している。導入器ニードル243の先端は示してなく、図示の実施例では、医療デバイスのカニューレ保持部分101に導入される。
横方向バー542の別の特徴は、コイルばね561の外端の固定点の形態の取り付け手段を提供することである。その結果、コイルばね561の外端は横方向バー542に載止する。
【0061】
図17は、図16に示すクランクシャフト512を含む挿入器デバイス500の一実施例の部分断面を、挿入前の挿入の準備ができた状態で示す。明瞭化を図るため、上部分501及び中央部分502は取り除いてある。更に、コイルばね561が示してなく、ばね取り付け手段563が示してある。ばね取り付け手段563は、この実施例では、クランクシャフト512に設けられた長さ方向溝を含む。下部分503及び内延長部504を通る部分断面により、底部キャビティ572が明らかになる。このキャビティは、医療デバイスの本体102を挿入するための空所を提供する。底部キャビティ572の頂部は、プラットホーム506の下面によって形成されており、底部キャビティ572の側部は、内延長部504の内面によって形成されており、底部キャビティ572の底部は、挿入されるべき医療デバイスの本体102によって形成されており、底部キャビティ572の中央部分は、カニューレ保持部分案内手段571の外面によって形成されている。前記カニューレ保持部分案内手段571の機能は、カニューレの挿入前、カニューレの挿入の少なくとも一部に亘ってカニューレ保持部分を挿入方向に配向された状態に維持することである。
【0062】
図18は、図16及び図17に示す上述のクランクシャフトを持つ挿入器デバイス500の実施例を、挿入状態(A)及び引っ込め状態(B)で示す。参照番号及び名称は、上文中で使用したのと同じであり、回転方向が示してある。この実施例では、挿入及び引っ込めを行うための回転方向は同じである。この図は、回転を長さ方向並進移動に変換し、穿刺部材を挿入し、次いで挿入器ニードル243を引っ込めるため、様々な移動部分がどのように相互作用するのかを示す。ここに示す実施例と図15Aを参照して説明し導入した概括的原理との間の類似性を表1に示す。
【0063】
【0064】
図19は、クランクシャフトを持つ本発明による挿入デバイスの別の実施例を示す。図19Aでは、以下に列挙する特徴を明らかにするため、上部分501及び中央部分の一部がなくしてある。即ち、歯車582には、コイルばね561を取り囲むカバー583が設けられている。更に、作動手段581が示してある。この実施例では、作動手段581は外部に配置されており、中央部分から突出している。作動手段581はボタン及びシャフトを含む。図19Bは、作動手段581の一実施例の詳細図を示す。作動手段581は、揺動レバー590から突出したシャフトに配置されたボタンを含む。作動手段581の図示の位置では、揺動レバー590の先端が、歯車582の二つの隣接した歯の間の溝に嵌着している。前記揺動レバー590には一体のばね591が設けられている。この一体のばね591は、中央部分502の内壁と歯車582の歯との間に位置決めされる。図19Bに示す位置では、歯車582は回転できない。前記ボタンに前記シャフトの方向で下向きの力を加えると、揺動レバー590が枢動し、その結果、揺動レバー590の先端が歯車582の歯の間から出る。これによって、挿入デバイス500が作動され、挿入が開始される。
【0065】
本発明による挿入器デバイスは、一般的には、底部に開口部を備えている。この開口部は、この開口部を通して医療デバイス100を挿入器デバイスに装着するのに十分に大きい。
本発明の別の実施例では、開口部は、取り外し自在のシーリングホイルでシールされていてもよい。取り外し自在のシーリングホイルは、挿入器デバイスの使用前の取り外しプロセスを容易にするため、フラップを備えていてもよい。このような取り外し自在のシーリングホイルは、必ずしも、医療デバイス100の取り付けパッド103の一部でなくてもよい。取り外し自在のシーリングホイル又は剥離ライナを持つ取り付けパッド103により、適切なレベルの感染症防止又は滅菌性を維持することによって、適当な衛生基準を確保できる。更に、シーリングホイルは、挿入器デバイス及び/又は医療デバイス100の一体性の表示器として作用し、これによって汚染されている可能性があり、及びかくしてもはや滅菌状態にないデバイスが使用されることがないようにできるため、安全性を向上する。
【符号の説明】
【0066】
105、243 穿刺部材
200、500 挿入器デバイス
204、300、400、512 回転部材
203、561 駆動手段
216、246、521 変換手段
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスを患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入するための挿入器デバイスに関する。更に詳細には、本発明は、穿刺部材を制御下で所定の通りに加速及び減速するための手段を持つ挿入器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インジェクタとも呼ばれる挿入デバイスは、一般的には、医療の分野で注入セット等の医療デバイスを半自動態様で患者の皮膚を通して挿入するために使用される。
患者によっては、特に子供たちは、注射針等の先が尖ったもの及び医療的治療及びセラピーで一般的に使用される他の穿刺デバイスを怖がるということが知られている。この恐怖は、多くの場合、不合理であり、適切な医療的治療を妨げてしまう。
医療デバイスの挿入に関する別の周知の事項は、適用前又は適用中に穿刺部材が汚染される危険である。これは、例えば汚染された挿入ニードルにより、感染症を患者にもたらす。このようなニードルが長く露呈されればされる程、例えば指がニードルと接触する危険、ニードルが清浄でない表面と接触する危険、又は空気中を漂う汚染物、エアゾール汚染物、等によって誤って汚染される危険が大きくなる。汚染の性質(例えばウィルス、細菌、真菌、酵母、及び/又はプリオン)及び患者の全身の健康状態によっては、罹患した感染症により、急速に生命を脅かす状態になる場合がある。
【0003】
特に病院環境における、感染した使用済みのニードルとの接触は生命を脅かす場合があり、汚染物に誤って露呈される危険を最小にしなければならないということが周知である。
挿入器デバイス等が当該技術分野で周知である。特許文献1は、皮下注入セット用のインジェクタに関し、特許文献2は挿入セット用の挿入デバイスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第EP1 011 785号
【特許文献2】欧州特許第EP1 044 028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、例えばカニューレやインジェクションニードルの挿入は不快感及び痛みをもたらす。本発明の目的は、不快感及び痛みを最小にすることである。
皮膚を医療デバイスで穿刺すると組織に損傷を与える。本発明の目的は、組織の損傷を減少することである。
医療デバイスは壊れやすい。かくして、本発明の目的は、壊れやすい医療デバイスを患者への挿入前及び挿入中に保護することである。
周知のデバイスは、挿入及び引っ込めの速度が定められておらず、制御されていなかった。また、患者に挿入されるべき穿刺部材の加速度及び減速度が定められておらず、制御されていなかった。
周知のデバイスには、上述の問題点及びこれらの問題点と関連した事項を解決したものはなく、挿入デバイスの技術分野において、上文中に論じた事項に対処し、穿刺部材を所定の加速度及び減速度で制御下で挿入することが明らかに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、穿刺部材の加速及び減速が制御下で行われる挿入デバイスを提供する。本願では、穿刺部材は患者の皮膚の表面を通過する即ち穿刺する部分と定義される。即ち、穿刺部材は、軟質カニューレと組み合わせた挿入ニードル、硬質の自己穿刺カニューレ、自己穿刺センサ、又は挿入ニードルと組み合わせたセンサである。
【0007】
本発明の第1の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。この特徴では、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、本質的に平行であり及び/又は互いに整合している。
本発明の第2の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。この特徴では、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、互いに本質的に垂直である。
【0008】
かくして、本発明は、特許請求の範囲第1項に記載の挿入器デバイスを提供する。この挿入器デバイスは穿刺部材を取り囲むハウジングを含み、挿入器デバイスは、前記穿刺部材を所定の通りに加速し減速するための手段を含む。所定の加速度及び減速度は、本質的に一定の力を加えることによって行われるのであって、加えられる力を変化することによるのではない。
【0009】
一実施例によれば、挿入器デバイスは、穿刺部材、回転部材、及び回転軸線を中心として回転部材を回転するための駆動手段を含み、回転部材は、回転移動を、挿入方向での穿刺部材の長さ方向移動に変換するための変換手段を含み、変換手段は、穿刺部材の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む。
一実施例によれば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と平行である。一つの場合では、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入軸線と整合している。
【0010】
一実施例によれば、変換手段は、回転部材の本体部分の表面に設けられた溝を含み、これは、穿刺部材に連結された突出部分と対応する。この実施例によれば、制御手段は、溝の傾斜を含んでいてもよく、溝は、挿入方向と平行でない方向に延びている。変換は、回転部材及び穿刺部材の夫々に設けられた任意の対応する部分を含んでいてもよい。これらの対応する部分は、摺動自在に嵌着していてもよい。溝は連続していてもよく、溝の傾斜は、縦軸が回転部材の回転軸線と平行な座標系で定義されていてもよい。長さ方向移動部材を患者の皮膚に向かって移動する場合に移動を提供するとき、溝の少なくとも一部に負の傾斜が設けられていてもよく或いは溝の全長に亘って一定の負の傾斜が設けられている。溝の負の傾斜は、長さ方向移動部材が患者の皮膚に向かって移動するに従って小さくなってもよい。長さ方向移動部材を患者の皮膚から遠ざかる方向に移動する場合に移動を提供するとき、溝は連続していてもよく、縦軸が回転部材の回転軸線と平行な座標系において、溝の少なくとも一部に正の傾斜が設けられていてもよいし、溝の全長に亘って一定の正の傾斜が設けられていてもよい。溝の正の傾斜は、長さ方向移動部が患者の皮膚から遠ざかる方向に移動するに従って減少してもよい。
【0011】
一実施例によれば、回転部材の本体部分は円筒形であり、溝は本体部分の外面に形成されており、溝と対応する手段は、少なくとも一つの内方に突出した部分として長さ方向移動部材の内面に形成されている。
一実施例によれば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と平行でなく、例えば、回転部材の回転軸線は、穿刺部材の挿入方向と直交していてもよい。回転軸線が直交状態から数°ずれても、本発明によれば、「直交している」と考えられる。更に、回転部材はシャフトであってもよく、このシャフトには、一つ又はそれ以上のディスクがシャフトに関して突出した状態で設けられていてもよい。
このようなシャフトは、二つのディスクが設けられたクランクシャフトであってもよく、これらの二つのディスクは、クランクシャフトに直交するように及び同心に取り付けられており、クランクシャフト及びディスクは同じ回転軸線を共有する。
【0012】
一実施例によれば、穿刺部材の挿入方向は、患者の皮膚の表面に対して本質的に垂直であり、即ち患者の皮膚が0°のベースラインを構成するものと考えられる場合に挿入が約90°の挿入角度αins で行われるか或いは、0°<αins ≦20°、又は20°<αins ≦40°、又は40°<αins ≦60°、又は60°<αins ≦80°のいずれかである。
一実施例によれば、挿入器デバイスの中央軸線は、挿入器デバイスがいつでも挿入を行うことができる位置に配置されている場合、患者の皮膚の表面に対して本質的に垂直であり、即ち患者の皮膚が0°のベースラインを構成するものと考えられる場合に挿入器デバイスは約90°の中央軸線角度αcenterを有するか或いは、0°<αcenter≦20°、又は20°<αcenter≦40°、又は40°<αcenter≦60°、又は60°<αcenter≦80°のいずれかである。
【0013】
一実施例によれば、穿刺部材の挿入方向は、挿入器デバイスの中央軸線と平行であり、即ち中央軸線からの変向角度αdeflection=0°であるか或いは、0°<αdeflection<90°、又は10°<αdeflection<80°、又は30°<αdeflection<60°である。
一実施例によれば、変換手段は、約180°±10°よりも大きい回転部材の回転を長さ方向移動に変換する。この長さ方向移動により穿刺部材を挿入する。特に、変換手段は、360°よりも大きい又は1.5回転よりも大きい、又は2回転よりも大きい回転部材の回転を、長さ方向移動に変換する。前記長さ方向移動により前記穿刺部材を挿入する。
【0014】
一実施例によれば、穿刺部材は、軟質カニューレ及び導入器ニードルを含む。例えば、導入器ニードルは、挿入器デバイスの部分であってもよく、その場合、穿刺部材の挿入後、軟質カニューレを含む医療デバイスから導入器ニードルを取り外してもよい。
この実施例によれば、回転部材を同じ回転方向に連続的に回転することにより、穿刺部材の挿入に続いて導入器ニードルの引っ込めることができ、又は回転部材を穿刺部材の挿入後に逆方向に回転することによって、導入器ニードルを引っ込めることができる。
例えば、回転部材を約180°±10°回転することにより、前記導入器ニードルを引っ込めることができ、又は回転部材を180°よりも小さく、又は150°よりも小さく、又は120°よりも小さく、又は90°よりも小さく、又は60°よりも小さく、又は30°よりも小さく回転することにより導入器ニードルを引っ込める。
本発明を、様々な図の対応する部分に同様の参照番号を付した添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、穿刺部材、本体部分、及び取り付けパッドを含む医療デバイスの図である。
【図2】図2は、挿入器デバイス及びその主要構成要素の実施例の図である。
【図3】図3は、挿入器デバイス及びその主要構成要素の変形例の図である。
【図4】図4は、上部分の拡大図を含む、作動手段を持つ挿入器デバイスの一実施例の図である。
【図5】図5は、回転部材及び導入器ニードルを持つピストンの実施例の図である。
【図6】図6は、回転手段の変形例の図である。
【図7】図7は、変換手段(突出部)を持つピストンの一実施例の詳細図である。
【図8】図8は、医療デバイスが挿入前の挿入器デバイスの一実施例の断面図である。
【図9】図9は、医療デバイスを持つ挿入器デバイスの一実施例の断面図であり、(A)は挿入前、(B)は挿入状態、(C)は引っ込めた状態である。
【図10】図10は、挿入器デバイス及び医療デバイスの実施例の様々な図である。
【図11】図11は、コイルばね、回転手段、及びピストンを含む変換手段の変形例の図である。
【図12】図12は、作動手段を持つ挿入器デバイスの実施例の図である。
【図13】図13は、変換手段を持つ挿入器デバイスの一実施例の作動モードを示す図である。
【図14】図14は、外部作動手段を持つ挿入器デバイスの実施例の概略図である。
【図15】図15は、挿入速度及び加速度/減速度を角速度の関数として制御下で変化するための二つの原理を示す図である。
【図16】図16は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の透視図である。
【図17】図17は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の、穿刺部材を持つ医療デバイスを含む下部分の部分断面図である。
【図18】図18は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの一実施例の、上部分の部分断面図である。
【図19】図19は、クランクシャフトを持つ挿入デバイスの作動モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、様々な医療デバイスを患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入できる。このような医療デバイスは、例えば注入セット又は注入セットの注入部分、一つ又はそれ以上のセンサが挿入されたセンサデバイス、注射器による繰り返し注射に代わる、アクセスが制限された本体しか持たないポートデバイス、又は穿刺部材を患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入した任意の他のデバイスを含む。
本発明の目的の一つは、患者への医療デバイスの挿入を制御下で、所定の方法で、調節自在に行うことができる挿入器デバイスを提供することである。制御下で、所定の方法で、調節自在に行われるこのような挿入は、挿入速度を制御することによって、及び随意であるが、医療デバイスを、例えば直接的に挿入することができない軟質カニューレとともに挿入する上で一般的に使用されている挿入ニードル等の挿入器デバイスの部分の引っ込め速度を制御することによって行うことができる。しかしながら、本発明者は、挿入速度が制御されるばかりでなく、新規であり且つ発明を構成する、挿入の速度並びに加速度及び減速を制御できる挿入器デバイスを提供する。これによって、挿入の特性及び特徴を制御することにより、信頼性、作動の容易さ、及び使用者に対する優しさが大幅に向上した。
【0017】
図1は、本発明に従って挿入できる医療デバイス100の様々な実施例を示す。図1Aに示す医療デバイスは、図1Aに示すように、カニューレ保持部分101と、本体102と、取り付けパッド103とを含む。
図1Bは、カニューレ保持部分101の一実施例を示す。カニューレ保持部分101は、上部分104及びカニューレ105を含む。上部分104は開口部106を有し、この開口部はシーリングデバイス107によって閉鎖されている。上部分104の下側には係止手段108が設けられている。上部分104内には内部チャンバ(図示せず)が形成されている。前記内部チャンバはカニューレ105に連結している。
【0018】
図1Aでわかるように、医療デバイス100の本体102は、カニューレ保持部分101の少なくとも一部を取り囲む開口部109を含む。同様に、取り付けパッド103には、少なくともカニューレ105又はカニューレ保持部分101と同幅であるか或いはこれよりも広幅の開口部110が設けられている。別の実施例では、インジェクションニードル、挿入器ニードル、又はカニューレ等の一つ又はそれ以上の穿刺部材を取り付けパッド103に刺す。前記取り付けパッドには開口部110が設けられていない。
多くの場合、取り付けパッド103は、医療デバイス100を患者の皮膚と確実に適切に接触するために使用される。この取り付けパッド103は、医療デバイス100の本体102の下側に取り付けられていてもよい。別の態様では、取り付けパッド103を患者の皮膚に取り付け、医療デバイス100を取り付けパッド103に又は取り付けパッド103の開口部110に挿入する。
【0019】
図1Cは、図1A及び図1Bに示す医療デバイス100の別の図を示す。図1D及び図1Eは医療デバイス100の他の実施例を示す。図1Eでわかるように、取り付けパッドは剥離ライナを含み、この剥離ライナには、医療デバイス100の取り付け前に剥離ライナを取り外すため、フラップ112が設けられている。
図1F及び図1Gは、医療デバイス100の側面図及び断面図を示す。図1Gには、係止手段108と本体102との間を連結する相互係止手段111が示してある。
【0020】
回転軸線及び挿入軸線は平行である
第1の特徴では、本発明は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する。前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線は、本質的に、互いに平行である。以下、前記回転移動の軸線及び挿入軸線が本質的に整合したこのような実施例を説明する。
図2は、本発明の一実施例による挿入器デバイス200の主構成要素の分解図を示す。挿入器デバイスは、(i)上部分201と、(ii)コイルばね203及び回転部材204を含む回転手段202と、(iii)中央部分221と、(iv)長さ方向移動手段241と、(v)下部分251とを含む。前記部分201、221、及び251は、本質的に、挿入器デバイス200の外寸法並びに内部キャビティ(図示せず)を形成する。前記内部キャビティ内には、回転手段202並びに長さ方向移動手段241が設けられる。
図2から、様々な部分及び手段が、主として挿入器デバイスの中央軸線を中心として整合されており且つ配向されており、挿入軸線が、挿入器デバイスの中央軸線と本質的に同じであるということが明らかである。
【0021】
以下、図2に示す構成要素を詳細に上から下に説明する。
Ad(i):上部分201は、上部分209及び本体部分210を含む。上部分209の中央には、回転部材204の部分(シャフト208、下側に示す)を取り付けるため、アタッチメント手段207が設けられている。このようなアタッチメント手段207は、開口部又は支承体を含む。上部分209は本質的に平らであり、ディスク状に形成されている。上部分209の直径は、本体部分210の直径よりも大きく、かくして突出部211を形成する。本体部分210は、本質的に中空円筒形状に形成されており、本体部分210の内径は、挿入器デバイス200の組み立て時に、コイルばね203の外径よりも大きい。コイルばね203用の、平らな外部分206用の一つ又はそれ以上のアタッチメント手段(図示せず)が、上部分201の上部分209及び/又は本体部分210内に設けられていてもよい。
【0022】
Ad(ii):回転手段202は、コイルばね203及び回転部材204を含む。前記コイルばね203は、前記ばね203の中心に向かって位置決めされた内端205と、周囲に位置決めされた外端206とを含む。内端205及び外端206は、両方とも、個々に別個に賦形されていてもよい。例えばコイル状部材を内方に又は外方に曲げること等によってフラップを形成する。この実施例に示すように、外端206は、コイル状部材の一部分を外方に曲げることによって形成される。同様に、コイルばね203の内端205を対応する方法で形成してもよい。コイルばね203は、上部分201と回転部材204との間に配置される。コイルばね203の外径は、少なくとも挿入器デバイス200の組み立て中、上部分201の内キャビティと同じ大きさであるか或いはこれよりも小さい。
【0023】
回転部材204は、本体部分212と、上部分213と、シャフト208とを含む。上部分213は、本質的に平らであり、ディスク状に形成されており、一つ又はそれ以上の開口部214が形成されていてもよい。上部分213の直径は、本体部分212の直径よりも大きく、かくして突出部215を形成する。本体部分212は円筒形形状であり、一つ又はそれ以上の開口部(図示せず)が設けられていてもよい。前記開口部は、一つ又はそれ以上の開口部214と連通しており、かくして本体部分212の上部分213から底端(図示せず)まで延びる一つ又はそれ以上のチャンネルを形成する。一つ又はそれ以上の溝216が本体部分212の外面に形成されている。これらの溝216は、上端217即ち挿入中に患者から最も遠い遠位端から、下端218即ち回転部材204の挿入中に患者に最も近い近位端まで延びる。更に、回転部材204は上方に突出したシャフト208を含む。このシャフト208は、回転部材204の回転軸線と整合している。シャフト208の長さはコイルばね203の高さよりも大きい。コイルばね203を収容するため、シャフト208の直径及び形状並びにコイルばね203の内部分を、挿入器デバイス200の組み立て時に、コイルばね203の主部即ちコイルばね203全体から内部分205を差し引いた部材がシャフト208を取り囲むような寸法にする。
【0024】
Ad(iii):中央部分221は、挿入器デバイス200の最大の構成要素であり、本質的に、挿入器デバイス200の外側寸法を形成する。中央部分221は、本質的に中空円筒形形状をなしており、上部分222及び本体部分223を含む。上部分222及び本体部分223は、例えば溶接や接着によって互いに接合され、又は同じ加工物の部品である様々なユニットに合わせることができる。上部分222及び本体部分223の両方に、両端に、開口部即ち上開口部224及び下開口部225が夫々設けられている。中央部分221は、かくして、挿入デバイスの中央キャビティを形成する。この中央キャビティは、上述の回転手段202の主部並びに長さ方向移動手段241及び挿入されるべき医療デバイス100を取り囲むのに十分に広幅である。上部分222は、図2に示すように丸味が付けてあってもよく、上部分201の突出部211の少なくとも一部を取り囲むため、凹所(図示せず)をなしていてもよい。更に、本体部分223及び随意の上部分222は、長さ方向移動手段241の長さ方向移動を制御するため、一つ又はそれ以上のスロット(図示せず)等の案内手段(図示せず)を含んでいてもよい。挿入器デバイス200の外形状は、主として、中央部分221の形状で決まる。中央部分221の形状は、例えば左利きの人や右利きの人、並びに手が比較的に小さい人、又はプロテーゼで良好に掴むことができるように、楕円形であってもよいし、正方形であってもよいし、一つの線を中心として対称であってもよいし、回転対称であってもよいし、場合によっては非対称であってもよい。特別のグリップ手段(図示せず)を設けてもよい。
【0025】
Ad(iv):長さ方向移動手段241は、ピストン242と、挿入ニードル243と、長さ方向案内手段244と、ピストンの上から下まで延びる内部キャビティ245とを含む。前記ピストン242は本質的に中空円筒形形状をなしている。ピストン242の内径は、回転部材204の本体部分212の外径よりも小さいが、回転部材204の上部分209の直径よりも小さくてもよい。ピストン242の高さは、本質的に、回転部材204の本体部分212の高さと同じであってもよいし、これよりも小さくてもよいし大きくてもよい。本体部分212の主部等の回転部材204の少なくとも主部が内部キャビティ245に嵌着する。ピストン242の内壁に取り付けられており且つここから突出した一つ又はそれ以上の変換手段(図示せず)が設けられていてもよい。前記変換手段は、溝216に嵌着し、かくして回転部材204の回転移動をピストン242の長さ方向移動に変換する。ピストン242の底部には、この底部の中央に又は中央からずらして挿入ニードル243が取り付け手段(図示せず)によって取り付けられる。挿入ニードル243は、ピストン243の底部に対して垂直に延び、挿入配向で整合する。図2に示す実施例では、挿入ニードル243は、少なくとも一部がカニューレ保持部分101に挿入してある。カニューレ保持部分101は、本体部分101及び軟質カニューレ105を含む。かくして、カニューレ保持部分101及びピストン242は挿入ニードル243を介して連結される。
【0026】
Ad(v):挿入器デバイス200の下部分251は、下部分252及びリング状部分253を含む。下部分252は、本質的にディスク状に形成されており、リング状部分253よりも大径である。図示の実施例(図2参照)では、下部分252は、実際には、医療デバイス100の取り付けパッド103によって形成できる(詳細にはついては図1を参照されたい)。かくして、下部分252は、使い捨てライナ及びフラップ105を含んでいてもよい。図示のように、及び適当であれば、医療デバイス100の本体102が下部分252に載止し、適当な位置に、例えば医療デバイス100の本体102の中央キャビティがカニューレ保持部分101及び挿入ニードル243と整合するように保持される。リング状部分253の外径は、中央部分221の下開口部225の内径と同じであるか或いはこれよりも小さく、リング状部分253が中央部分221の本体部分223に嵌着する。本発明の変形例では、リング状部分253を省略し、中央部分221の下開口部225を、挿入されるべき医療デバイス100の取り付けパッド103によってシールする。
一般的には、取り付けパッドの接着剤の強さは、医療デバイスが挿入後に患者の皮膚上に止まり、医療デバイス100の残りの部分が所定の場所に残った状態でカニューレ105を通して挿入ニードル243だけを取り外すのに十分に強い。本発明の変形例では、医療デバイス100を別の医療デバイスを通して挿入する。
【0027】
図3は、本発明の変形例の分解図を示す。説明については、図2を参照されたい。図3に示す関連した構成要素及び特徴に付した参照番号は、図2におけるのと同じである。
挿入器デバイス200を反時計廻り方向に約90°回転することによって、幾つかの追加の及び/又は異なる特徴が明らかになる。
(i)挿入器デバイス200は、部分201の上部分209の中心からずらして配置された作動手段261を含む。作動手段は、ボタン262と、上部分209を横切って形成された一つ又はそれ以上の穴263、264と、シャフト208の上端に回転エレメント204の中心から僅かにずらして配置されたノッチ269とを含む。
(ii)コイルばね203の内端205を回転部材204のシャフト208に取り付けるためのアタッチメント手段219の一実施例を示す。
(iii)回転部材204の本体部分212の一実施例を示す。この図には溝216の一実施例が示してあり、溝216の第1の1/4及び最後の1/4を示す。溝216は連続していないということがわかる。
(iv)中央部分221の中央キャビティ内に設けられた内案内手段226の一実施例を示す。この実施例では、案内手段は、本質的に上部分222から本体部分223(図示せず)まで延びる長さ方向溝を形成する。案内手段226の高さは、下開口部225の直径と上開口部224の直径との差の約半分と等しい。
【0028】
Ad(i):本発明の一実施例によれば、挿入器デバイス200の作動は、ボタンを作動することによって行われる。これは、回転部材204がその回転軸線を中心として回転しないようにする位置1から、回転部材204がその回転軸線を中心として回転できる位置2まで押すことによって及び/又は摺動させることによって、及び/又は回転することによって、及び/又は枢動することによって行われる。図示の実施例によれば、ボタン262(これは、ロッド状形状を備えている)が、位置1にあるシャフト208のノッチ269に嵌着し、これによって、回転部材204が回転しないようにする。このボタンが本質的に穴263内にある位置から、ボタン262が本質的に穴264内にある位置に向かってボタン262を外方に摺動したり押したりすることによってボタン262を作動したとき、エネルギを蓄えた状態のコイルばね203が、エネルギが余り蓄えられていない比較的弛緩した状態に達し、そのとき、回転部材204の回転移動が提供される。
【0029】
変形例では、作動時にボタンを上方に持ち上げ、これによってノッチ269から離し、これによって回転部材204を回転させる。
回転部材204を回転するためのエネルギを提供するため、コイルばね203を本質的に弛緩した状態から、エネルギを蓄えた状態にしなければならない。
エネルギを蓄えた、即ち力を蓄えたこの状態は、内端205又は外端206のいずれかが移動しないようにし、内端205又は外端206のいずれかを、コイルばね203がばねの中心205に向かって更に密に巻かれるか或いはコイルばね203が外端206に向かって更に密に巻かれるかいずれかの方向に回転することによって得られる。コイルばね203の弛緩は、これをエネルギを蓄えた状態にする回転方向とは逆方向で生じる。
【0030】
以上説明した図3の実施例では、コイルばね203の内端205はシャフト208の溝219内に配置されている。溝219の長さは、シャフト208の長さと本質的に同じであるか或いはこれよりも短い。溝219の幅は、コイルばね203のリーフの幅と本質的に同じであるか或いはこれよりも広幅である。コイルばね203が弛緩するとき、内端205が回転し、この回転移動がシャフト208に伝達し、及びかくして回転部材204に伝達する。
上部分201内に設けられたコイルばね203のアタッチメント手段は図示してない。 本発明の一実施例によれば、挿入器デバイス200は、力を蓄えた状態で使用者に提供される。
別の実施例では、挿入器デバイスが誤って作動しないようにするため、固定手段が設けられている。このような固定手段は、機械的手段、電気機械的手段、又は電子的手段、又は機械的手段、電気機械的手段、又は電子的手段の組み合わせを含む。
【0031】
図4は、組み立てた状態の本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示し、作動手段261が上部分201の中心からずらして配置されている(図4A参照)。上部分201、中央部分221、及び下部分251が示してある。ボタン262及びキャビティ265を含み、随意であるが、保持手段266を含む作動手段261の拡大図を図4Bに示す。キャビティ265は、中心に近い位置263から開始して、中心から大きく離れているが上部分201内にある位置264まで半径方向に延びている。キャビティ265は、最内位置263及び最外位置264に、ボタン262の半径よりも大きな半径で丸味が付けてある。挿入器デバイス200は、ボタン262を上文中に説明したように操作することによって作動できる。本発明の一実施例では、挿入デバイスは、ボタン262を、中心に近い位置263又はその近くの位置から、上部分201の中心から大きく離れた位置264までもっていくことによって作動される。ボタン262は、例えばエネルギを蓄えた状態において、上部分201を通って延びており、回転部材204のシャフト208のノッチ269に嵌着している。保持手段266は、デバイスが誤って作動しないようにする抵抗を提供する。本発明の一実施例では、保持手段266は、ばね等の弾性部材でできている。
【0032】
変形例では、挿入器デバイス200の作動は、ボタン262を作動して係止機構(図示せず)を作動することによって行われる。係止機構は、エネルギを蓄えた即ち力を蓄えた状態の回転部材204のノッチ269内にある位置から取り外されるブロック部材(図示せず)を含む。これによって回転部材204は、もはや回転しないように拘束されていない。
【0033】
図5は、図3に示す実施例等の本発明の一実施例による回転部材204及びピストン242の詳細図を示す。図3と比較すると、回転部材204及びピストン242が反時計廻り方向に約45°回転させてある。この図には、回転部材204の上端217が示してある。この場所から溝216が開始し且つ終了する。一実施例では、溝は連続していない。別の実施例では、溝は連続しており、即ち始点も端点もない。
この実施例では、回転部材204の回転の約半分、即ち約180°が、ピストン242の長さ方向移動に変換される。この場合、前記長さ方向移動の長さは、本質的に、リードで決まる。リードとは、上端217のところでの溝216の開始位置と下端218との間の軸線と平行な距離である。ピストン242の下に挿入ニードル243が取り付けられる。
【0034】
図6は、本発明による回転部材204の別の実施例を示す。図6Aは、図3及び図5と同様であるが、図5と比較して更に約45°回転させた、回転部材204の別の図を示す。ノッチ220が回転部材204の下端に示してある。ここで、溝206は最も下の位置に至る。本発明の一実施例では、ノッチ220はデバイスの適用中には特別の機能を持たないが、挿入器デバイス200の組み立て中及び/又は製造中、組み立てを容易にする、又は組み立てを可能にする機能を有する。別の実施例では、ノッチ220は設けられていない。
図6B及び図6Cは、回転部材204の変形例を示す。これらの実施例では、回転部材204は、上部分213も突出部215も備えていない。シャフト208は、形態及び形状が異なっていてもよく、図示の実施例では、シャフトは本質的に円形の直径を備えているが、底部が頂部よりも太くなっている、即ち回転部材204の本体部分212に向かって太くなっている。シャフト208の上面は本質的に平らである。本発明の別の実施例では、シャフト208の頂面は凹状をなしている。本発明の更に別の実施例では、シャフト208の頂面は凸状をなしている。
【0035】
図6A、図6B、及び図6Cに示す実施例では、回転部材204に設けられた夫々の溝216の様々な位置が提供される。本発明による挿入器デバイスは、溝216の位置及びトラックで決まる、一回転中のピストン241の長さ方向移動の様々な速度及び方向を明らかにする。これらの速度差は加速度の差(正又は負)で表現することもできる。一般的には、負の加速度は減速とも言う。
回転部材204が反時計廻り方向に回転するとき、図6Bに示すのと同様の回転部材204を持つ挿入器デバイスのピストン241は、最初の90°の回転内で、図6Cに示すのと同様の回転部材204を持つ挿入器デバイスよりも、比較的高い加速度及び比較的高い挿入速度を示す。これは、溝216のトラックの傾斜(図6B参照)が、図6Cに示すトラックの傾斜と比較して急であるためである。しかしながら、残る90°の回転中、挿入速度は低下する。しかし、同様の回転速度では、回転部材の同様の高さ及び同様のリード、挿入に要する全時間は同様であるが、夫々の挿入速度及び夫々の加速度及び減速が異なる。これらは、回転部材204の溝216の傾斜と正比例する。
【0036】
図7は、ピストン242と、挿入ニードル243と、互いに対称に直径方向反対側に位置決めされた一つ又はそれ以上の長さ方向案内手段244と、変換手段246とを含む長さ方向移動手段241の半透視図を示す。図示の実施例では、変換手段246は、本質的に、ピストン242の内壁から半径方向内方に突出した、ピストン242の頂部近くに案内手段244とは逆側に位置決めされた小さな円筒体又はロッドの形状で設けられている。変換手段246は、この変換手段246が回転部材204の溝216に嵌着して外れないようにでき、回転部材204の回転を長さ方向移動手段244の長さ方向移動に変換できる直径、長さ、及び形状を備えている。
長さ方向案内手段244は、本質的に矩形形状であってもよく、中央部分221の中央キャビティ内に設けられた案内手段226の溝に嵌着する(例えば、図3参照)。一実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、ピストン242の高さとほぼ同じである。別の実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、長さ方向移動の長さよりも長い。更に別の実施例では、長さ方向案内手段244の長さは、回転部材204の高さよりも大きい。他の実施例では、ピストン242の長さは回転部材204の高さよりも大きい。
【0037】
図8は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示す。明瞭化を図るため、幾つかの部分又はこれらの部分の部分がなくしてあるか或いは断面で示してある。図8は、本発明による挿入器デバイスの主要構成要素の様々な寸法及び形状の印象を提供する。
図8には、作動手段261は示してない。
【0038】
図9は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例の断面を示す、三つの図を提供する。主要構成要素の相対的な位置、比率、及び相互作用が示してある。挿入器デバイスは、以前の図(図2乃至図8)に示す挿入器デバイス200と共通の幾つかの特徴を有する。夫々の図には、参照符号及び矢印が付してある。挿入器デバイスの様々な構成要素の参照番号は、以上の説明と同じである。
図9Aでは、挿入器デバイス200は、力を蓄えた/エネルギを蓄えた/賦活された状態にあり、挿入の準備ができている。この図には、回転部材204を貫通した長さ方向チャンネル又はキャビティ又は開口部214の形状が示してある。回転部材204の下部分に配置された中央キャビティが明らかである。中央キャビティはシャフト218と連続して形成されており、直径がシャフトとほぼ同じである。
【0039】
図9Bは、回転部材204が約180°回転した後の挿入器デバイス200を示す。コイルばね203の直径が大きくなっており、カニューレ保持部分101が医療デバイスの本体102内の所定位置にあり、カニューレ105及び挿入ニードル243の先端が下平面及び下部分252から突出している。
図9Cは、医療デバイス100を挿入した後の挿入器デバイス200を示す。挿入ニードル243を引っ込め、挿入されたデバイスは患者からいつでも取り外すことができる。
【0040】
図10は、本発明による挿入器デバイス200の別の実施例を示す。図10Aは、下部分251を示し、この実施例では、剥離ライナが取り付けパッド103から取り外してあり、剥離ライナの底面が示してある。一般的には、この面は、取り付けパッド、医療デバイス、及びカニューレを所望の位置に保持するため、患者の皮膚に対して十分に接着するのに十分な接着強度を有する。適当である場合には、前記接着強度は、挿入器デバイスを安全に取り外すことができが、医療デバイスを所望の位置に保持し続けるのに十分である。
図10Bは、挿入器デバイス200及び作動手段261の平面図を提供する。この図の右側には、取り付けパッド、フラップ112を持つ剥離ライナを含む医療デバイス100の一実施例が示してある。
取り付けパッド103の直径は、挿入器デバイス200の外径と同じ大きさであるか或いはこれよりも小さい。本発明の別の実施例では、取り付けパッド103の直径は、挿入器デバイス200の外径よりも大きい。
【0041】
図11は、本発明による挿入器デバイスの変形例を示す。図11Aは、コイルばね205及び回転部材204を含む回転手段202及びピストン242の一実施例を示す。この実施例では、シャフト208はコイルばね203の幅よりも長い。長さ方向案内手段244には僅かに丸味が付けてある。この実施例では、長さ方向案内手段244はピストン242の高さよりも短い。回転部材204は、上部分213も開口部214も含まないということに着目されたい。
図11Bは、シャフト208及び溝216が設けられた回転部材204の一実施例を示す。回転部材204のこの実施例でも、上部分213も開口部214も含まない。溝216のトラックは傾斜が非常に急(高リード)であり、回転部材204の上端217から下端218まで約90°以内で延びている。この回転部材204を持つ本発明による挿入器デバイス200は、患者に挿入されるべき医療デバイスの挿入及び引っ込めを、例えば図2、図3、図5、図6、図8、又は図9に示す回転部材204を含む挿入器デバイス200よりも小さな回転で行う。これらの実施例では、回転部材204の約180°の回転を、長さ方向移動部材241の完全な長さ方向挿入移動に変換する。
【0042】
しかしながら、本発明の別の実施例では、溝216には、トラックが設けられている。このトラックは、挿入又は引っ込め又はこれらの両方を行う上で、180°以上、例えば181°乃至360°を必要とし、又は一回転以上、即ち360°以上、例えば361°乃至540°を必要とし、又は1.5回転以上、又は2回転以上を必要とする。
別の実施例では、挿入及び/又は引っ込めを行う上で回転部材204が必要とする回転角度は、180°よりも小さく、例えば10°乃至170°、又は20°乃至160°、30°乃至160°、又は40°乃至150°、50°乃至140°、又は60°乃至130°、60°乃至120°、又は70°乃至110°、80°乃至100°、又は約90°である。
【0043】
更に別の実施例では、挿入に必要な回転角度は、引っ込めに必要な回転角度と本質的に同じである。
更に別の実施例では、挿入に必要な回転角度は、引っ込めに必要な回転角度と異なり、±5°以上、±10°以上、±20°以上、±45°以上、±90°以上、±135°以上以上、±180°以上、±270°以上、又は±360°以上異なる。
更に別の実施例では、溝216は自らと即ち溝216と交差する。即ち下方移動用のトラック及びこれに続く上方移動用のトラックが交差する。これは、挿入及び引っ込めを完全に行うのに360°よりも大きい回転を必要とする場合に必要とされる。
変形例では、長さ方向引っ込め移動は、回転部材204を逆方向に回転することによって行われる。
図11Cは、本発明によるピストン242の一実施例を示す。長さ方向案内手段244は、丸味のある断面を有し、案内手段の頂部からピストン242の底部まで延びる。
【0044】
図12は、本発明による挿入器デバイス200の一実施例を示す。この図では、中央部分221並びに作動手段261が示してある。作動手段261は、上部分201に設けられたボタン262を含む。主中央部分221を持つ挿入器デバイスの機械的レイアウトにより、設計及び特徴についての様々な可能性が開けているということが明らかである。
上部分201は、図12及びそれ以前の図に本質的に平らであるように示してあるけれども、丸味が付けてあってもよく、対称形状であっても非対称形状であってもよい。かくして、上部分201は一つ又はそれ以上の突出部を備えていてもよいし、一つ又はそれ以上のノッチ又は溝が設けられていてもよい。
【0045】
図13A、図13B、図13C、及び図13Dは、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスに関する本発明の第1の特徴を簡単に示す。前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入の軸線は本質的に平行であり、重なっている。これらの図は縮尺通りでない。
図13Aは、エネルギを蓄えた状態の、張力が加わった、コンパクトなコイルばね203を示す。ばね203は中心がシャフト208に取り付けられており、周囲206がハウジング223(図示せず)に取り付けられている。図13Bは、本発明による挿入器デバイスの部分断面を示す。ここでは、エネルギ提供手段は、挿入前の又は挿入時のコイルばね203を含む。図13Cは、図13Aに示したのと同じコイルばね203の実施例を示すが、図13Cでは、ばね203は弛緩した拡張状態にある。図13Dは、挿入中又は挿入の終了に近づいている状態の、図13Bに示したのと同じ挿入器デバイスの実施例の部分断面を示す。
【0046】
図13A、図13B、図13C、及び図13Dに示すコイルばね203の直径は、弛緩中に大きくなる。本発明の別の実施例では、コイルばね203の直径は、エネルギを蓄えた状態から弛緩した状態まで移動するときに小さくなる。挿入速度の制御は、エネルギ提供手段が単位時間当たりに解放するエネルギの強さ又は量、及び単位時間当たりに解放されるエネルギの量を制御するための技術的特徴によって行われる。更に、速度及び速度及び方向の変化を、リーンによって、即ち回転部材204の溝216の傾斜によって制御できる。これは、長さ方向移動部材242の長さ方向移動に直接的に変換される。
【0047】
本発明の一実施例では、医療デバイス100を挿入するためのエネルギを提供するためのエネルギ提供手段は、ゼンマイ仕掛け(clockwork) を含む。別の実施例では、ゼンマイ仕掛けは、エネルギを制御下で解放するための制御手段を含む。エネルギの解放は、一定、又は本質的に一定であってもよい。別の態様では、エネルギの解放は、医療デバイス100の挿入中に変化してもよい。更に、必要であれば、挿入ニードル243を引っ込めるために提供されるエネルギは、医療デバイス100を挿入するためのエネルギと異なっていてもよい。
【0048】
図14は、本発明による挿入器デバイスを作動するための二つの別の可能性を示す。図14は、賦勢手段を含む挿入器デバイス200を示す。前記賦勢手段は、相互作用手段281を含む。相互作用手段281は、挿入器デバイスのシャフト208に連結されている。ハンドル284及び連結手段283を含むキー282がコイルばね203等のエネルギ貯蔵デバイスを賦勢する即ち作動するため、前記連結手段283が相互作用手段281と相互作用できる。
図14Aには、キー282の回転等の、外部からの手動による又は自動式の入力を回転に変換し、これによりコイルばね203の作動又は非作動を行う一実施例が示してある。円弧状矢印は、キー282の前記回転を示す。自動式の入力は、更に、電気的入力、電子的入力、及び電磁的入力のうちの一つ又はそれ以上を含んでいてもよい。本発明の一実施例では、電気/電磁モータによりコイルばね203にエネルギを蓄える。本発明の別の実施例では、外部入力は、圧縮した空気、二酸化炭素、窒素、等の圧縮ガスを含む。
【0049】
図14Bでは、手動による又は自動式の入力によってエネルギ貯蔵デバイス(コイルばね203)にエネルギを蓄える。前記入力は、双方向矢印で示すような長さ方向上下移動であるか或いは、上下移動の組み合わせである。本発明の一実施例によれば、外部エネルギは、医療デバイス100を挿入する上で、及び挿入ニードル243の随意の引っ込めを行う上で必要なエネルギを提供する。別の実施例では、外部エネルギはコイルばね203を弛緩状態からエネルギを蓄えた状態にするのに必要なエネルギを提供する。
【0050】
回転軸線及び挿入軸線は垂直である
本発明の第2の特徴は、回転移動を長さ方向挿入移動に変換する挿入器デバイスであって、前記回転移動の軸線及び前記長さ方向挿入移動の軸線が本質的に互いに垂直な挿入器デバイスに関する。
図15は、回転移動を長さ方向移動に変換するための二つの異なる原理を示す。両原理の共通の特徴は、本発明の第1の特徴と異なり、長さ方向移動方向が、回転部材の回転軸線と平行でないということである。一般的には、長さ方向移動方向及び長さ方向移動軸線は、回転部材の回転軸線に対して垂直であるか或いは本質的に垂直であり、即ち直交する。
【0051】
図15Aは、ディスクやホイール等の回転部材の回転を長さ方向移動に変換する方法を示す。更に、位置変化(translocation)(S) 及び速度(V)の対応する関数を概略に示す。これらは、各々、回転(φ)の関数として示してある。これらの関数は、本質的には、周期が2πの正弦関数又は余弦関数である。制御された所定の長さ方向移動を行うためにこの原理を使用し、速度及び加速度を上述の三角関数(正弦及び余弦)によって決定する。これらは、回転速度で決まる。
【0052】
回転移動から長さ方向移動を提供するための技術的手段は、以下の構成要素を含む。即ち、
軸線301を中心として回転する回転部材300(この実施例では、回転するディスクとして示してある)。しかしながら、実際には、任意の他の回転体でもよい。
連結ロッド等の細長い第1部材302。
細長い第1部材302を前記回転部材300に連結し、細長い第1部材302を必要なだけ枢動するアタッチメント手段303。
細長い第2部材304(ピストン)。
細長い第1及び第2の部材間の継手であって、細長い第1部材302と細長い第2部材304との間に必要な枢動及び細長い第2部材304の方向の長さ方向移動を提供する継手。
所望の長さ方向移動方向での細長い第2部材304の整合を提供し且つ制御する長さ方向案内手段306。
挿入長さ/長さ方向移動長さは、本質的に、回転中心から細長い第1部材の取り付け点までの距離の2倍程度である。
【0053】
図15Bは、回転部材の回転移動を長さ移動部材の所定の長さ方向移動に変換するための別の原理を示す。この実施例では、回転部材即ち不規則な形状が、結果的に生じる長さ方向移動を決定する。位置変化(S) 及び速度(V)の対応するグラフは、各々、回転(φ)の関数として概略に示してある。
回転移動から長さ方向移動を提供するための技術的手段は、以下の構成要素を含む。即ち、
回転軸線401を中心として回転する回転部材400。これは、この実施例では、不規則な形状の回転ディスクである。別の態様では、中心をずらして回転する円形のディスクもまた提供される。
変換手段402。
細長い部材403。
長さ方向案内手段405。
例えばコイルばねを含む弾性手段404。
挿入/長さ方向移動の長さは、半径の差で決まる。即ち回転部材400の最大半径(Rl)と最小半径(Rs)との間の差で決まる。
【0054】
以下の図(図16乃至図19)は、回転移動を長さ方向移動に変換する、上掲の図15Aに示す原理に基づく本発明の実施例を示す。
図16は、本発明によるクランクシャフトを含む挿入器デバイス500の一実施例の透視図である。挿入器デバイス500は、上部分501と、中央部分502と、本体部分503とを含み、これらの部分により挿入器デバイスの外観が決まる。中央キャビティ505は、上部分501、中央部分502、及び本体部分503内に形成される。
上部分501には丸味が付けてあり、半球形状をなしている。上部分501及び中央部分502は連結されており、一部品をなして提供でき、又は接合されなければならない別々の部品として提供できる。上部分501及び中央部分502は、壁厚が同じであり、即ち適合する。中央部分502は中空円筒形形状である。一般的には、半透明であるように示してあるが、上部分501及び中央部分502は透明でない。
【0055】
下部分503はディスク状であり、その直径は中央部分502よりも大径である。下部分503は内延長部504を含む。中央部分502は、内プラットホーム506と重なる。内延長部504は、プラットホーム506と、一対の案内手段551と、リング状円形部分507とを含む。
下部分503の内延長部504は、本質的に円筒形の内プラットホーム506を含む。内プラットホーム506の外径は、中央部分502の内径よりも大きい。
【0056】
案内手段551は、直径方向反対側に内延長部504の外側に向かって(即ち、挿入器デバイス500の下平面に対して斜めに)位置決めされており、内プラットホーム506から垂直方向上方に、かくして中央部分502及び中央キャビティ505の内側に延びている。
内プラットホーム506の中央には開口部が設けられており、ここにカニューレ保持部分101が設けられる。カニューレは、挿入方向下方に向いている。
案内手段551の上端には、クランクシャフト512が支承手段(図示せず)を介して設けられている。これにより、挿入器デバイスの下平面と平行な、即ち水平な及び案内手段551に対して直角なクランクシャフト512を、回転できる。
【0057】
クランクシャフト512には、二つの案内手段551間に、コイルばね561及び二つのディスク511a及び511bが直交して、及び前記クランクシャフト512と同心に取り付けられており、そのため、クランクシャフト512、コイルばね561、及びディスク511a及び511bは、同じ回転軸線を共有する。ディスク511a及び511b並びにコイルばね561は直径が同じである。ディスク511aは、ディスク511b及びコイルばね561が設けられたクランクシャフト512の中央近くに取り付けられている。コイルばね561の内部分562だけがクランクシャフト512に取り付けられている。クランクシャフト512は、二つの部分を含んでいてもよい。クランクシャフト512の一方の部分にコイルばね561及びディスク511aが取り付けられており、ディスク511bがクランクシャフト512の他の部分に取り付けられていてもよい。
【0058】
アタッチメント手段522が二つのディスク511a及び511b間に設けられている。前記アタッチメント手段522は、ロッド521をディスク511a及び511bに連結し、連結ロッド521が枢動できるようにする。連結ロッド521は、ディスク511a及び511bに中心をずらして取り付けられている。アタッチメント手段522は、連結ロッドの上端523の近くの貫通穴を介して前記クランクシャフト512と平行に取り付けられた第2シャフトを含む。第2シャフトは、前記連結ロッドから貫通穴の両側に突出している。
連結ロッド521の取り付け点を提供することとは別に、アタッチメント手段522はディスク511a及び511b間に安定した連結部を提供する。その結果、クランクシャフト512の一部分がなくてもクランクシャフト512の回転がディスク511から他に伝達される。これは、連結ロッド521がディスク511a及び511bの回転を枢動及び上下方向移動に変換するのに必要な空間を提供する。そうでないと、クランクシャフト512が回転ロッド又はシリンダ等シャフトによって形成されている場合、部分的に拘束されたり干渉したりしてしまう。
【0059】
連結ロッド521の下端524の近くには、連結ロッド521の下端524をピストン531に連結するための可撓性継手541が設けられている。図示の実施例では、連結ロッド521の枢動は、前記可撓性継手541を介してピストンの長さ方向移動に変換される。可撓性継手541は横方向バー542を含み、ピストン531が横方向バー542の中央に取り付けられている。横方向バー542はクランクシャフト512と平行であり、案内手段551によって案内されて必要とされるように上下に移動する場合にシャフト542と平行なままである。前記案内手段551により、横方向バー542が、例えば挿入軸線を中心として枢動したり捩じれたりしないようにする。
ピストン531は横方向バー542に固着されており、この実施例では、ピストン531は、挿入方向で整合した状態で、及び挿入デバイスの中央軸線と整合した状態で、横方向バー542の中央に位置決めされている。
【0060】
ピストン531の下端には導入器ニードル243(先端が下に向いた)が取り付けられており、前記導入器ニードル243は挿入デバイス500の中央軸線と整合している。導入器ニードル243の先端は示してなく、図示の実施例では、医療デバイスのカニューレ保持部分101に導入される。
横方向バー542の別の特徴は、コイルばね561の外端の固定点の形態の取り付け手段を提供することである。その結果、コイルばね561の外端は横方向バー542に載止する。
【0061】
図17は、図16に示すクランクシャフト512を含む挿入器デバイス500の一実施例の部分断面を、挿入前の挿入の準備ができた状態で示す。明瞭化を図るため、上部分501及び中央部分502は取り除いてある。更に、コイルばね561が示してなく、ばね取り付け手段563が示してある。ばね取り付け手段563は、この実施例では、クランクシャフト512に設けられた長さ方向溝を含む。下部分503及び内延長部504を通る部分断面により、底部キャビティ572が明らかになる。このキャビティは、医療デバイスの本体102を挿入するための空所を提供する。底部キャビティ572の頂部は、プラットホーム506の下面によって形成されており、底部キャビティ572の側部は、内延長部504の内面によって形成されており、底部キャビティ572の底部は、挿入されるべき医療デバイスの本体102によって形成されており、底部キャビティ572の中央部分は、カニューレ保持部分案内手段571の外面によって形成されている。前記カニューレ保持部分案内手段571の機能は、カニューレの挿入前、カニューレの挿入の少なくとも一部に亘ってカニューレ保持部分を挿入方向に配向された状態に維持することである。
【0062】
図18は、図16及び図17に示す上述のクランクシャフトを持つ挿入器デバイス500の実施例を、挿入状態(A)及び引っ込め状態(B)で示す。参照番号及び名称は、上文中で使用したのと同じであり、回転方向が示してある。この実施例では、挿入及び引っ込めを行うための回転方向は同じである。この図は、回転を長さ方向並進移動に変換し、穿刺部材を挿入し、次いで挿入器ニードル243を引っ込めるため、様々な移動部分がどのように相互作用するのかを示す。ここに示す実施例と図15Aを参照して説明し導入した概括的原理との間の類似性を表1に示す。
【0063】
【0064】
図19は、クランクシャフトを持つ本発明による挿入デバイスの別の実施例を示す。図19Aでは、以下に列挙する特徴を明らかにするため、上部分501及び中央部分の一部がなくしてある。即ち、歯車582には、コイルばね561を取り囲むカバー583が設けられている。更に、作動手段581が示してある。この実施例では、作動手段581は外部に配置されており、中央部分から突出している。作動手段581はボタン及びシャフトを含む。図19Bは、作動手段581の一実施例の詳細図を示す。作動手段581は、揺動レバー590から突出したシャフトに配置されたボタンを含む。作動手段581の図示の位置では、揺動レバー590の先端が、歯車582の二つの隣接した歯の間の溝に嵌着している。前記揺動レバー590には一体のばね591が設けられている。この一体のばね591は、中央部分502の内壁と歯車582の歯との間に位置決めされる。図19Bに示す位置では、歯車582は回転できない。前記ボタンに前記シャフトの方向で下向きの力を加えると、揺動レバー590が枢動し、その結果、揺動レバー590の先端が歯車582の歯の間から出る。これによって、挿入デバイス500が作動され、挿入が開始される。
【0065】
本発明による挿入器デバイスは、一般的には、底部に開口部を備えている。この開口部は、この開口部を通して医療デバイス100を挿入器デバイスに装着するのに十分に大きい。
本発明の別の実施例では、開口部は、取り外し自在のシーリングホイルでシールされていてもよい。取り外し自在のシーリングホイルは、挿入器デバイスの使用前の取り外しプロセスを容易にするため、フラップを備えていてもよい。このような取り外し自在のシーリングホイルは、必ずしも、医療デバイス100の取り付けパッド103の一部でなくてもよい。取り外し自在のシーリングホイル又は剥離ライナを持つ取り付けパッド103により、適切なレベルの感染症防止又は滅菌性を維持することによって、適当な衛生基準を確保できる。更に、シーリングホイルは、挿入器デバイス及び/又は医療デバイス100の一体性の表示器として作用し、これによって汚染されている可能性があり、及びかくしてもはや滅菌状態にないデバイスが使用されることがないようにできるため、安全性を向上する。
【符号の説明】
【0066】
105、243 穿刺部材
200、500 挿入器デバイス
204、300、400、512 回転部材
203、561 駆動手段
216、246、521 変換手段
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺部材(105、243)を患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入するための挿入器デバイス(200、500)であって、前記穿刺部材(105、243)、回転部材(204、300、400、512)、及び回転軸線を中心として前記回転部材(204、300、400、512)を回転するための駆動手段(203、561)を取り囲むハウジング(201、221、251;501、502、503)を含み、前記回転部材(204、300、400、512)は、回転移動を、挿入方向での前記穿刺部材(105、243)の長さ方向移動に変換するための変換手段(216、246、521)を含む、挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段(216、246、521)は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と平行である、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と整合している、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段は、前記回転部材(204)の本体部分(212)の表面に設けられた溝(216)を含み、これは、前記穿刺部材(105、243)に連結された突出部分(246)と対応する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項5】
請求項2、3、又は4に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記制御手段は、前記溝(216)の傾斜を含み、前記溝は、前記挿入方向と平行でない方向に延びている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)は連続しており、前記溝(216)の前記傾斜は、縦軸が前記回転部材(204)の前記回転軸線と平行な座標系で定義される、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記長さ方向移動部材(242)を患者の皮膚に向かって移動する場合に移動を提供するとき、前記溝(216)の少なくとも一部に負の傾斜が設けられているか或いは前記溝(216)の全長に亘って一定の負の傾斜が設けられている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)の前記負の傾斜は、前記長さ方向移動部材(242)が患者の皮膚に向かって移動するに従って小さくなる、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記長さ方向移動部材(242)を患者の皮膚から遠ざかる方向に移動する場合に移動を提供するとき、前記溝(216)は連続しており、縦軸が前記回転部材(204)の前記回転軸線と平行な座標系において、前記溝の少なくとも一部に正の傾斜が設けられているか或いは前記溝(216)の全長に亘って一定の正の傾斜が設けられている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)の前記正の傾斜は、前記長さ方向移動部(242)が患者の皮膚から遠ざかる方向に移動するに従って減少する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項11】
請求項4乃至10のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204)の前記本体部分(212)は円筒形であり、前記溝(216)は前記本体部分(212)の外面に形成されており、前記対応する手段(246)は、内方に突出した部分として前記長さ方向移動部材(242)の内面に形成されている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と平行でない、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と直交する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段は、回転部材であるシャフト(512)を含み、前記シャフト(512)には、前記シャフト(512)に関して突出した一つ又はそれ以上のディスク(511a、511b)が設けられており、更に、回転を前記穿刺部材の長さ方向移動に変換する剛性バー(521)を含み、前記制御手段は、
1)前記回転部材の回転軸線とディスク(511a、511b)への前記剛性バー(521)の取り付け点との間の距離、
2)挿入方向に関する回転を開始する角度、及び
3)駆動手段の組み合わせを含む、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記シャフト(512)は、二つのディスク(511a、511b)が設けられたクランクシャフトであり、前記二つのディスク(511a、511b)は、前記クランクシャフト(512)に直交するように及び同心に取り付けられており、前記クランクシャフト(512)及び前記ディスク(511a、511b)は同じ回転軸線を共有する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)を90°よりも大きく回転することによって速度を制御下で変化する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段(226、246、521)は、約90°よりも大きく、通常は180°よりも大きい前記回転部材(204、512)の回転を長さ方向移動に変換し、前記長さ方向移動により前記穿刺部材(105、243)を挿入する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項18】
請求項1乃至17のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記穿刺部材(105、243)は、軟質カニューレ(105)及び導入器ニードル(243)を含み、前記導入器ニードル(243)は前記挿入器デバイスの部分である、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)の同じ回転方向での連続的回転、又は前記穿刺部材(105、243)の挿入後の前記回転部材(204、512)の逆の回転方向での回転により、前記穿刺部材(105、243)を挿入し、次いで前記導入器ニードル(243)を引っ込める、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項1】
穿刺部材(105、243)を患者の皮下領域又は筋肉内領域に挿入するための挿入器デバイス(200、500)であって、前記穿刺部材(105、243)、回転部材(204、300、400、512)、及び回転軸線を中心として前記回転部材(204、300、400、512)を回転するための駆動手段(203、561)を取り囲むハウジング(201、221、251;501、502、503)を含み、前記回転部材(204、300、400、512)は、回転移動を、挿入方向での前記穿刺部材(105、243)の長さ方向移動に変換するための変換手段(216、246、521)を含む、挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段(216、246、521)は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向での速度を制御下で変化する制御手段を含む、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と平行である、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と整合している、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段は、前記回転部材(204)の本体部分(212)の表面に設けられた溝(216)を含み、これは、前記穿刺部材(105、243)に連結された突出部分(246)と対応する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項5】
請求項2、3、又は4に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記制御手段は、前記溝(216)の傾斜を含み、前記溝は、前記挿入方向と平行でない方向に延びている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)は連続しており、前記溝(216)の前記傾斜は、縦軸が前記回転部材(204)の前記回転軸線と平行な座標系で定義される、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記長さ方向移動部材(242)を患者の皮膚に向かって移動する場合に移動を提供するとき、前記溝(216)の少なくとも一部に負の傾斜が設けられているか或いは前記溝(216)の全長に亘って一定の負の傾斜が設けられている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)の前記負の傾斜は、前記長さ方向移動部材(242)が患者の皮膚に向かって移動するに従って小さくなる、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記長さ方向移動部材(242)を患者の皮膚から遠ざかる方向に移動する場合に移動を提供するとき、前記溝(216)は連続しており、縦軸が前記回転部材(204)の前記回転軸線と平行な座標系において、前記溝の少なくとも一部に正の傾斜が設けられているか或いは前記溝(216)の全長に亘って一定の正の傾斜が設けられている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記溝(216)の前記正の傾斜は、前記長さ方向移動部(242)が患者の皮膚から遠ざかる方向に移動するに従って減少する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項11】
請求項4乃至10のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204)の前記本体部分(212)は円筒形であり、前記溝(216)は前記本体部分(212)の外面に形成されており、前記対応する手段(246)は、内方に突出した部分として前記長さ方向移動部材(242)の内面に形成されている、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と平行でない、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(512)の回転軸線は、前記穿刺部材(105、243)の挿入方向と直交する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段は、回転部材であるシャフト(512)を含み、前記シャフト(512)には、前記シャフト(512)に関して突出した一つ又はそれ以上のディスク(511a、511b)が設けられており、更に、回転を前記穿刺部材の長さ方向移動に変換する剛性バー(521)を含み、前記制御手段は、
1)前記回転部材の回転軸線とディスク(511a、511b)への前記剛性バー(521)の取り付け点との間の距離、
2)挿入方向に関する回転を開始する角度、及び
3)駆動手段の組み合わせを含む、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記シャフト(512)は、二つのディスク(511a、511b)が設けられたクランクシャフトであり、前記二つのディスク(511a、511b)は、前記クランクシャフト(512)に直交するように及び同心に取り付けられており、前記クランクシャフト(512)及び前記ディスク(511a、511b)は同じ回転軸線を共有する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)を90°よりも大きく回転することによって速度を制御下で変化する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記変換手段(226、246、521)は、約90°よりも大きく、通常は180°よりも大きい前記回転部材(204、512)の回転を長さ方向移動に変換し、前記長さ方向移動により前記穿刺部材(105、243)を挿入する、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項18】
請求項1乃至17のうちのいずれか一項に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記穿刺部材(105、243)は、軟質カニューレ(105)及び導入器ニードル(243)を含み、前記導入器ニードル(243)は前記挿入器デバイスの部分である、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の挿入器デバイスにおいて、
前記回転部材(204、512)の同じ回転方向での連続的回転、又は前記穿刺部材(105、243)の挿入後の前記回転部材(204、512)の逆の回転方向での回転により、前記穿刺部材(105、243)を挿入し、次いで前記導入器ニードル(243)を引っ込める、ことを特徴とする挿入器デバイス。
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2010−533525(P2010−533525A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516451(P2010−516451)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058597
【国際公開番号】WO2009/010399
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(506324208)ウノメディカル アクティーゼルスカブ (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058597
【国際公開番号】WO2009/010399
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(506324208)ウノメディカル アクティーゼルスカブ (25)
【Fターム(参考)】
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