説明

加速度計測定サンプルから速度及び/又は変位を推定する方法

ユーザによる転倒を検出するのに用いられる転倒検出器が提供され、この転倒検出器は、上記転倒検出器に作用する加速度を表す測定サンプルの時系列を生み出す加速度計と、上記測定サンプルから上記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定し、上記推定された垂直速度及び/又は垂直変位を用いて上記ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するプロセッサとを有し、上記プロセッサが、上記測定サンプルの時系列から上記加速度計の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定し、上記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、上記転倒検出器の垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、重力が原因による加速度を減算し、及び上記転倒検出器の上記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり上記垂直加速度に関する上記推定の系列を積分することにより、上記測定サンプルから上記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度計からの測定サンプルから速度及び変位を推定する方法に関し、特に、ユーザによる転倒を検出する際に用いられることができる垂直速度及び垂直変位を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転倒は、毎年何百万人にも影響を及ぼし、特に高齢者に重要な損傷を生じさせる。実際、高齢者における死因トップ3の1つが転倒であると推定される。転倒は、突然起こる制御不能な意図しない下向きの体の変位で、後に衝撃が続くものとして規定されることができる。
【0003】
個人ヘルプボタン(PHB)が利用可能である。これは、緊急時に支援を要請するため、ユーザがボタンを押すことを必要とする。しかしながら、ユーザが重篤な転倒に苦しむ場合(例えば意識不明の場合)、ユーザはボタンを押すことができないかもしれない。これは、特にユーザが一人暮らしの場合、かなりの時間期間の間、支援が届かないことを意味する場合がある。
【0004】
ユーザが転倒に苦しむかを決定するため、1つ又は複数の運動センサの出力を処理する転倒検出器も利用可能である。しかしながら、これらの転倒検出器は、転倒検出確率と誤警報レートとの間の好ましくないトレードオフを持つことが分かっている。
【0005】
高い誤警報レートが、転倒検出器のユーザに支援を与える責任がある組織(即ち、転倒検出警報が起動されるとき、転倒検出器のユーザにコンタクトする又は訪ねる必要のある人々)に追加的な経費を生じさせることになり、かつ、高い誤警報レートが、転倒検出器のユーザに望ましくないとすれば、経済的に現実的な転倒検出器が、各2ヵ月の期間に誤警報が1回未満であるような誤警報レートを提供し、一方で、95パーセントを越える(陽)転倒検出確率を維持するべきであることが分かっている。
【0006】
ほとんどの既存の体装着式転倒検出器は、加速度計(通常、3次元で加速度を測定する3D加速度計)を用いて、加速度計により生成される時系列を処理することにより、転倒の発生を推定しようとする。
【0007】
特に、転倒検出器は、加速度計測定サンプルから転倒検出器に関する速度及び/又は変位を推定することができ、転倒検出器のユーザが転倒で苦しんでいるかどうかを決定するため、これらの特徴(加速度計測定サンプルから得られる他の特徴と共に)を用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ユーザの首周りにつけられることができるペンダントの形及びユーザに対して自由に動く他の態様で転倒検出器を提供することが望ましい。そのようなものとして、転倒検出器は、軽量で、使用の際目立たない。しかしながら、この種の転倒検出器において加速度計から得られる測定サンプルに適用されるとき、垂直速度及び垂直変位を推定するための既存の方法は、十分に正確な推定を提供するものではない。
【0009】
従って、加速度計測定サンプルから垂直速度及び/又は垂直変位を推定する改良された方法に関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面によれば、ユーザによる転倒を検出するのに用いられる転倒検出器が提供され、この転倒検出器は、上記転倒検出器に作用する加速度を表す測定サンプルの時系列を生み出す加速度計と、上記測定サンプルから上記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定し、上記推定された垂直速度及び/又は垂直変位を用いて上記ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するプロセッサとを有し、上記プロセッサが、上記測定サンプルの時系列から上記加速度計の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定し、上記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、上記転倒検出器の上記垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、重力が原因による加速度を減算し、及び上記転倒検出器の上記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり上記垂直加速度に関する上記推定の系列を積分することにより、上記測定サンプルから上記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定するよう構成される。
【0011】
本発明の第2の側面によれば、加速度計を有する対象物の垂直速度及び/又は垂直変位を推定する方法が提供され、この方法は、上記対象物に作用する加速度を表す上記加速度計から測定サンプルの時系列を得るステップと、上記測定サンプルの時系列から上記加速度計の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定するステップと、上記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、上記対象物の上記垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、重力が原因による加速度を減算するステップと、上記対象物の上記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり上記垂直加速度に関する上記推定の系列を積分するステップとを有する。
【0012】
本発明の第3の側面によれば、加速度計を有する転倒検出器のユーザによる転倒の検出に用いられる方法が提供され、この方法は、上述した加速度計からの測定サンプルから垂直速度及び/又は垂直変位を推定するステップと、上記ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するため、上記推定された垂直速度及び/又は垂直変位を用いるステップとを有する。
【0013】
本発明の第4の側面によれば、適切なコンピュータ又はプロセッサで実行されるとき、上記コンピュータ又はプロセッサに上記の方法のいずれかを実行させるよう構成されるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による方法を実現するのに適した転倒検出器のブロック図である。
【図2】本発明による方法を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートのステップ103を更に詳細に示す図である。
【図4】図2のフローチャートのステップ105を更に詳細に示す図である。
【図5】本発明の実施形態による垂直速度へと垂直加速度を積分するために用いられることができる積分ウィンドウを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の例示的な実施形態が、単なる例示を介して、図面を参照して、説明されることになる。
【0016】
本発明による方法を実現することができる転倒検出器2が、図1に示される。転倒検出器2は、ユーザの運動又はバランスに悪影響を与えないようユーザの首周りにつけられるペンダントの形で設計される。
【0017】
この例示的な実施形態では、転倒検出器2は、プロセッサ6に接続される加速度計4(特に、加速度計4の3本の直交する測定軸に沿って加速度の測定を提供する3D加速度計)を有する。プロセッサ6は、加速度計4から測定サンプルを受信し、様々な時間期間にわたり転倒検出器2の垂直速度及び/又は転倒検出器2の垂直変位を推定するため、測定サンプルを処理する。プロセッサ6は、ユーザが転倒したかどうか決定するため、(通常、加速度計測定サンプルから得られる他の特徴と共に)垂直速度及び/又は垂直変位を用いる。
【0018】
転倒検出器2は、転倒が検出される場合、転倒検出器2(これは、警報を出すか、又はヘルスケアプロバイダ又は緊急サービスによる支援を要請することができる)に関連付けられるベースステーションに対して、又は直接(例えば、ヘルスケアプロバイダのコールセンタに配置される)リモート局に対して、転倒検出器2がアラーム信号を送信することを可能にする送信機ユニット8を有する。その結果、ユーザに対する支援が要請されることができる。
【0019】
(図1に示される転倒検出器では表されない)いくつかの実施形態において、転倒検出器2は、加速度計に加えて、例えば圧力センサ、磁力計及び/又はジャイロスコープといった他のセンサを更に有することができる。転倒検出器2は、ユーザが転倒で苦しんでいるとプロセッサ6が決定する場合、プロセッサ6により起動されることができる音声警報ユニットを有することもできる。転倒検出器2は、支援が必要とされる場合、音声警報ユニットをユーザが手動で起動する(又は、支援が必要でない場合、警報を停止させる)ことを可能にするボタンを具備することもできる。
【0020】
本発明による方法が、図2に示される。ステップ101において、測定サンプルの時系列が加速度計4から得られる。各測定サンプルは、加速度計4の参照フレームにおいて測定された加速度を表す3次元ベクトルである。この方法の後続のステップは、転倒の間(グローバル参照フレームにおける)垂直速度及び/又は垂直変位の推定を得るため、これらの測定サンプルに関して作動する。
【0021】
ステップ103において、測定サンプルにおける「相対的静止」期間が特定される。この期間において、垂直加速度及び垂直速度は、およそ0である。「相対的静止」期間の終了点及び次の「相対的静止」期間の開始点は、この方法において後に、垂直速度及び/又は垂直変位の推定に関する境界値を提供する。
【0022】
転倒が「相対的静止」期間の間に発生する可能性は低いので、その期間に含まれる測定サンプルに関して図2に示される方法を続ける必要はない。そこで、「非静止」期間(即ち、垂直加速度及び/又は垂直速度が実質的にゼロ以外である期間)が特定されるまで、この方法はステップ101に戻る。
【0023】
ステップ103の好ましい実現が、図3を参照して以下に更に詳細に説明される。
【0024】
図3のステップ1031において、絶対的な加速度が、サンプルの3つの要素の二乗の和の平方根をとることにより、各測定サンプルに関して計算され、

となる。ここで、a、a及びaは、加速度計4の各々の測定軸に沿った加速度の要素である。
【0025】
ステップ1033において、正規化された絶対的な加速度を得るため、重力による加速度(9.81ms−2)が絶対的な加速度から減算される。
【0026】
正規化された絶対的な加速度は、正規化された絶対的な加速度のパワーを得るために二乗され(ステップ1035)、正規化された絶対的な加速度の移動平均フィルタされたパワーを得るため、正規化された絶対的な加速度のパワーの移動平均(MA)がとられる(ステップ1037)。好ましい実施形態において、MAフィルタの持続時間は、0.5秒である。
【0027】
ステップ1039において、正規化された絶対的な加速度のMAフィルタされたパワーは、相対的に静止しているサンプル時間を特定するため、非ゼロの閾値と比較される。例えば、2秒間隔において、MAフィルタされたパワーの値が10未満である場合、間隔の中頃は「相対的静止」として規定されることができる。1gの加速度が、約100のMAフィルタされたパワーに関する値を生じさせることを心に留めておけば、当業者は、閾値に関して適切な値を選択することが可能である。
【0028】
ここで、図2の方法に戻り、ステップ105において、加速度計4の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルが、「相対的静止」期間の外の各測定サンプルに関して推定される。このステップは、図4を参照して以下に更に詳細に説明される。結果として生じる単位ベクトルの時系列は、垂直方向において加速度計により測定される加速度の要素を特定するため、この方法における次のステップにおいて用いられる。
【0029】
従って、図4におけるステップ1051において、メディアンフィルタリングされた加速度要素の3つの時系列を得るため、メディアンフィルタが各測定サンプルにおける3つの加速度要素それぞれに対して適用される。好ましい実施形態において、メディアンフィルタの持続時間は、0.5秒である。
【0030】
すると、ステップ1053において、そのサンプル時間での3つのメディアンフィルタされた加速度要素それぞれから得られる絶対的な値を用いて、各サンプリング時間でのメディアンフィルタされた加速度要素の各々の長さを正規化することにより、単位重力時系列が計算される。従って、サンプリング時間tでの加速度計4の参照フレームにおける単位重力ベクトル

が、

により得られる。ここで、axmf、aymf及びazmfは、時間tでの測定サンプルのメディアンフィルタリングされた加速度要素である。
【0031】
再度図2に戻り、各加速度測定サンプルは、その個別の単位重力ベクトル上に投影される(ステップ107)。即ち、時間tに関して得られる測定サンプルは、時間tでのサンプルに関して決定される単位重力ベクトル上に投影される。
【0032】
当業者であれば理解されるであろうが、加速度測定サンプルの単位重力ベクトル

への投影は、垂直方向における加速度の大きさを表すスカラー値aを与える。投影は、

として表されることができる。
【0033】
転倒検出器2の垂直加速度の初期推定を与えるため、重力による加速度(即ち9.81ms−2)が垂直方向における加速度から減算される。
【0034】
次に、ステップ109において、垂直加速度の初期推定が、加速度計4によりなされる測定のサンプリングエラー及び/又はクリッピングによる過度の加速度を修正することにより精練される。サンプリングエラー及び/又はクリッピングは、例えば、衝撃が発生するときに起こりうる。そこで、加速度計4からの測定サンプルは、これらの時間において、より信頼性が低いか、又は正確でない。
【0035】
各「非静止」期間(即ち2つの「相対的静止」期間の間の期間)におけるサンプリングエラー及び/又はクリッピングが原因による過剰な垂直加速度の初期推定を修正するため、この段階でいくつかの仮定がなされることができる。
【0036】
まず、「相対的静止」期間の間に、垂直加速度及び垂直速度の両方がゼロであると仮定される。従って、各「非静止」期間の始めと終わりにおいて、垂直速度はゼロであることになる。この仮定は、各「非静止」期間にわたる垂直加速度の積分もゼロであるべきであることを意味する。
【0037】
従って、「非静止」期間にわたる垂直加速度の初期推定の積分がゼロではない場合(非ゼロの量は、過剰な垂直加速度と表される)、垂直加速度の初期推定を修正するため、過剰な垂直加速度が「非静止」期間における測定サンプルの各々にわたり分割される。修正後、修正された垂直加速度の「非静止」期間にわたる積分は、ゼロであるべきである。
【0038】
垂直加速度の最大絶対値を持つ測定サンプルが、クリッピング及び/又はサンプリングエラーのため逸脱する可能性が最も高く(及びこれらのサンプルは、衝撃に対応すると思われる)、及び過剰な垂直加速度に最も貢献する可能性があることが分かる。従って、初期推定における過剰な垂直加速度は好ましくは、局所的に計算された「フィルタリングされた衝撃」に基づき、比例的に修正される。
【0039】
この比例的修正は、(i)「非静止」期間において垂直加速度の絶対的な値を計算する、(ii)「非静止」期間において絶対的な加速度の和を決定する、及び(iii)「非静止」期間において垂直加速度の初期推定における過剰な加速度を分割することにより適用される。ここで、各推定は、上記和により割られるその絶対的な値の分数を得る。ある実施形態では、この分数は、

により与えられる。ここで、impact_filt(i)は、i番目の推定に関して平均フィルタリングされ正規化された絶対加速度であり、nは整数である。転倒に対して、非静止期間は一般に、秒又は数秒の範囲であり、50Hzのサンプリング周波数を持つ。nは、50〜100のオーダーである。この修正は、垂直加速度の精練された推定を生じさせる。
【0040】
最終的に、ステップ111において、垂直加速度の精練された推定が、垂直速度に関する値の時系列を与えるため、「非静止」期間にわたり積分され、及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、「非静止」期間にわたり2回積分される。
【0041】
垂直速度に到達するために垂直加速度を積分するとき、この積分は通常、矩形の積分ウィンドウ(ディリクレウィンドウ)を用いて、短い期間にわたり実行される。しかしながら、斯かる積分ウィンドウが、ウィンドウからシフトして出て行く前の加速度に対する極めて感度の良い速度推定をもたらすことが分かった。
【0042】
この問題を緩和するために、図5に示される例のように、非矩形の積分ウィンドウが用いられる。このウィンドウにおいて、推定された垂直速度は、垂直加速度のM個の最近の推定の加重和から決定される。ここで、推定が古くなるにつれて、加重は減少する。本実施形態において、Mは50である。従って、図5において、最近の推定(大雑把に50のうちの最近の16のサンプル)が重み係数1で重み付けされることが分かる。これは、純粋な積分に対応する。しかしながら、これより古い推定(過去において指数17〜50を持つサンプル)は、1未満の重み係数を持つ。その結果、これらは、垂直速度に関する推定にはあまり貢献しない。特に、フィルタを残す加速度推定は、推定された速度の変動にほとんど影響を与えない。図5に示される好ましい実施形態において、raised cosineウィンドウ(別名ハンウィンドウ)が用いられる。
【0043】
同様なタイプのウィンドウが、垂直変位を計算するのに用いられる。
【0044】
決定された垂直速度及び/又は垂直変位が、転倒検出器2のユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するため、転倒検出器2により、可能であれば転倒の特性である他の特徴に関する値と共に用いられることができる。転倒検出器2は、決定された垂直速度及び/又は垂直変位から他の特徴に関する値を決定することもできる。例えば、ユーザが転倒で苦しんでいる場合、−1.3ms−1(即ち下に1.3ms−1)の最小垂直速度が発生する可能性があり、転倒倒検出器2は、転倒が発生した場所を特定するため、垂直速度における極小を用いることができる。
【0045】
本発明による方法は、ペンダントタイプの転倒検出器(即ち、ユーザにより着用されるときに、比較的自由に移動することができる転倒検出器)における垂直速度及び/又は垂直変位の推定において重要な改善を提供するが、この方法は、例えばユーザの腕、腰、胸又は背中に着用されるような他のタイプの転倒検出器における垂直速度及び垂直変位の推定における改善を提供することもできることを理解されたい。
【0046】
更に、転倒検出器2におけるプロセッサ6が、加速度計4からの測定サンプルから垂直速度及び/又は垂直変位を決定することが上述されたが、別の実施形態では、送信機ユニット8が、加速度計4からベースステーション又は遠隔ステーションまで測定サンプルを送信するために用いられることができ、垂直速度及び/又は垂直変位がベースステーション又は遠隔ステーションにおいて決定されることができる点を理解されたい。ベースステーション又は遠隔ステーションは、ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するための処理を実行することもできる。
【0047】
こうして、加速度計測定サンプルから垂直速度及び垂直変位を決定する改良された方法が提供される。
【0048】
本発明が図面及び前述の説明において詳細に図示され及び説明されたが、斯かる図示及び説明は、説明的又は例示的であると考えられ、本発明を限定するものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0049】
図面、開示及び添付された請求項の研究から、開示された実施形態に対する他の変形が、請求項に記載の本発明を実施する当業者により理解され、実行されることができる。請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。シングルプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として光学的記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体に格納/配布されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してといった他の形式で配布されることもできる。請求項における任意の参照符号は、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる転倒を検出するのに用いられる転倒検出器であって、
前記転倒検出器に作用する加速度を表す測定サンプルの時系列を生み出す加速度計と、
前記測定サンプルから前記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定し、前記推定された垂直速度及び/又は垂直変位を用いて前記ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するプロセッサとを有し、
前記プロセッサが、
前記測定サンプルの時系列から前記加速度計の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定し、
前記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、及び前記転倒検出器の前記垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、重力が原因による加速度を減算し、
前記転倒検出器の前記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり前記垂直加速度に関する前記推定の系列を積分することにより、
前記測定サンプルから前記転倒検出器の垂直速度及び/又は垂直変位を推定するよう構成される、転倒検出器。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記転倒検出器の前記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり前記垂直加速度に関する前記推定の系列を積分するよう構成され、前記時間期間の間、前記転倒検出器の前記垂直加速度及び垂直速度が実質的に非ゼロである、請求項1に記載の転倒検出器。
【請求項3】
前記プロセッサが、
前記時系列において各測定サンプルに関する絶対的な加速度値を計算し、
正規化された絶対的な加速度の時系列を得るため、前記計算された絶対的な値の各々から重力が原因による加速度を減算し、
前記正規化された絶対的な加速度のパワーを表す時系列を得るため、前記正規化された絶対的な加速度の各々を二乗し、
前記正規化された絶対的な加速度のパワーを表す前記時系列の移動平均をとり、
前記時間期間を特定するため、前記移動平均フィルタリングされたパワーを非ゼロの閾値と比較することにより、
前記転倒検出器の前記垂直加速度及び垂直速度が実質的に非ゼロである時間期間を特定するよう構成される、請求項2に記載の転倒検出器。
【請求項4】
各測定サンプルが、3つの加速度要素を有し、
前記プロセッサは、
メディアンフィルタリングされた要素の個別の時系列を得るため、前記3つの加速度要素のそれぞれに対してメディアンフィルタを適用し、
重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの時系列を与えるため、前記個別の時系列において前記要素の各々の長さを正規化することにより、
前記測定サンプルの時系列から前記加速度計の前記参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定するよう構成される、請求項1、2又は3に記載の転倒検出器。
【請求項5】
前記転倒検出器の前記垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、前記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、重力が原因による加速度を減算した後、前記プロセッサが、前記測定サンプルにおけるサンプリングエラー及び/又はクリッピングが原因による過剰な加速度を修正するため、前記推定の系列を精練するよう更に構成され、
前記プロセッサは、前記転倒検出器の前記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、前記垂直加速度に関する前記精練された推定の系列を積分するよう構成される、請求項1乃至4のいずれかに記載の転倒検出器。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記転倒検出器が衝撃をうけるとき発生する前記測定サンプルにおけるサンプリングエラー及び/又はクリッピングが原因による過剰な加速度を修正するため、前記推定を精練するよう構成される、請求項5に記載の転倒検出器。
【請求項7】
前記プロセッサが、
前記時間期間にわたり前記垂直加速度の前記推定の系列を積分するステップであって、結果として生じる非ゼロの量が、前記過剰な垂直加速度を表す、ステップと、
前記垂直加速度の推定を精練するため、前記時間期間における前記垂直加速度の推定の各々にわたり前記過剰な垂直加速度を分割するステップとにより、
前記推定を精練するよう構成される、請求項5又は6に記載の転倒検出器。
【請求項8】
前記プロセッサが、計算されたフィルタリングされた衝撃に基づき、前記推定の各々にわたり前記過剰な垂直加速度を比例的に分割するよう構成される、請求項7に記載の転倒検出器。
【請求項9】
前記プロセッサが、
前記時間期間の間に前記垂直加速度の前記推定の各々の前記絶対的な値を計算し、
前記期間における前記絶対的な加速度の和を決定し、
各推定が前記和により割られるその絶対的な値の分数を受信するよう、前記時間期間において前記垂直加速度の前記推定における前記過剰な垂直加速度を分割することにより、
前記推定の各々にわたり前記過剰な垂直加速度を比例的に分割するよう構成される、請求項7又は8に記載の転倒検出器。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記転倒検出器の前記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、非矩形の積分ウィンドウを用いて、前記時間期間にわたり前記垂直加速度に関する前記推定の系列を積分するよう構成される、請求項1乃至9のいずれかに記載の転倒検出器。
【請求項11】
前記プロセッサが、raised cosine積分ウィンドウを用いて、前記時間期間にわたり前記垂直加速度に関する前記推定の系列を積分するよう構成される、請求項10に記載の転倒検出器。
【請求項12】
前記転倒検出器が、前記ユーザの首周りにつけられるペンダントの形である、請求項1乃至11に記載の転倒検出器。
【請求項13】
加速度計を有する対象物の垂直速度及び/又は垂直変位を推定する方法において、
前記対象物に作用する加速度を表す前記加速度計から測定サンプルの時系列を得るステップと、
前記測定サンプルの時系列から前記加速度計の参照フレームにおいて重力が原因による加速度を表す単位ベクトルの対応する時系列を推定するステップと、
前記対応する単位ベクトル上へ各測定サンプルを投影し、前記対象物の前記垂直加速度に関する推定の系列を与えるため、重力が原因による加速度を減算するステップと、
前記対象物の前記垂直速度及び/又は垂直変位に関する値の時系列を与えるため、時間期間にわたり前記垂直加速度に関する前記推定の系列を積分するステップとを有する、方法。
【請求項14】
加速度計を有する転倒検出器のユーザによる転倒を検出することに用いられる方法において、
請求項13に記載の加速度計からの測定サンプルから垂直速度及び/又は垂直変位を推定するステップと、
前記ユーザが転倒で苦しんでいるかを決定するため、前記推定された垂直速度及び/又は垂直変位を用いるステップとを有する、方法。
【請求項15】
適切なコンピュータ又はプロセッサで実行されるとき、前記コンピュータ又はプロセッサに請求項13又は14に記載の方法を実行させるよう構成されるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512494(P2013−512494A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540526(P2012−540526)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055319
【国際公開番号】WO2011/064705
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】