加速粒子および高エネルギ放射線センサ
【課題】入射加速粒子および高エネルギ放射線に耐えることのできるモノリシックセンサを提供する。
【解決手段】加速電子検出器はCMOS構造のモノリシックセンサのアレイを備え、各センサは基板(10)と、エピ層(11)と、p+ウェル(12)と、エピ層(11)によってp+ウェル(12)から分離されたn+ウェル(13)とを含む。p+ウェルには複数のNMOSトランジスタが集積される。センサはまた、バイアス電圧の印加によりエピ層内に発生する電荷担体がn+ウェル(13)にドリフトされるように、エピ層内に欠乏層を確立する深いn領域(15)をp+ウェル(12)の下に含む。検出器は改善された放射線耐性を有し、したがってそれは電子顕微鏡のような加速電子の検出および撮像に適する。
【解決手段】加速電子検出器はCMOS構造のモノリシックセンサのアレイを備え、各センサは基板(10)と、エピ層(11)と、p+ウェル(12)と、エピ層(11)によってp+ウェル(12)から分離されたn+ウェル(13)とを含む。p+ウェルには複数のNMOSトランジスタが集積される。センサはまた、バイアス電圧の印加によりエピ層内に発生する電荷担体がn+ウェル(13)にドリフトされるように、エピ層内に欠乏層を確立する深いn領域(15)をp+ウェル(12)の下に含む。検出器は改善された放射線耐性を有し、したがってそれは電子顕微鏡のような加速電子の検出および撮像に適する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速粒子および高エネルギ放射線センサに関する。特に、本発明は、加速電子をはじめそれに限らない荷電粒子の検出に対する活性画素技術の適用に関係するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
1990年代を通じて、アクティブピクセルセンサは、CCD技術の代替物として可視撮像用に開発された。そのようなアクティブピクセルセンサは一般的に標準VLSI技術、通常はCMOSを使用して作製され、フォトダイオードによって生成された電荷信号をバッファリングする増幅器と一緒に、ピクセルに集積されたフォトダイオードから構成される。しかし、過去には、可視撮像におけるアクティブピクセルセンサの適用は、それらの低いフィルファクタ(fill factor)によって限定されてきた。換言すると、各ピクセ
ルの表面積の大部分は読出し回路機構に充当されたので、ピクセルの表面積のごく一部分だけが入射光を感知した。これはアクティブピクセルセンサアレイの解像度を制限し、この技術を多くの撮像用途に対し、特にトラッキング用途に対し、不適切なものにした。
【0003】
米国特許第6225670号(特許文献1)に、かなり増大したフィルファクタを持ち、電子放射線を検出するためのアクティブピクセルセンサ構造が記載されている。図1は米国特許第6225670号から取ったものであり、一つのアクティブピクセルセンサの基本構造を示す。従来のp型ドープシリコン基板1は、その中に画定されたp−エピ層2と、エピ層2の上に形成されたp+層3とを有する。p+層3は、相互に分離されかつエピ層2からも分離された、n型ドーピングを有する二つの領域4、5を含む。しかし、第一領域4はエピ層2との接合を形成し、入射電磁(em)放射線によって発生する電荷担体を収集するための収集接合として働き、これはp+層を介してエピ層2内にまで深く打ち込まれたn型領域の部分6を含む。第二nドープ領域5は、読出し回路機構がピクセル上に配置される領域を画定する。この構造では、入力em放射線の結果、電荷担体がエピ層2内で発生し、収集接合へ拡散する。p+層3によるエピ層2からの第二nドープ領域5の分離は、エピ層2内の電荷担体が読出し回路機構へ逸失しないことを確実にする。
【0004】
同様の構造は、Nuclear Instruments & Methods in Physics Research A 458(2001)677-689(非特許文献1)におけるR Turchettaらによる「A monolithic active pixel sensor for charged particle tracking and imaging using standard VLSI CMOS technology」と題する論文にも記載されている。この論文では、最小イオン化粒子(MIPS)の追跡および単光子撮像にそのような構造を使用する可能性が検討されている。
【0005】
加速電子ビームを使用する透過電子顕微鏡法(TEM)の分野では、今日まで、高解像度画像が要求される状況で、透過電子顕微鏡用の検出器として、湿式フィルムが使用され続けている。デジタル画像を生成するために湿式フィルムを光ファイバ束およびCCDアレイと組み合わせてシンチレータに置換する提案は、一部にはCCD検出器システムの解像度を著しく限定し得るスミア効果のため、ごく限定された成功を収めただけである。これらの問題は、得られる画像の解像度を改善しようとして試料とシンチレータとの間の電子の減速を提案する、国際公開第WO99/66529号(特許文献2)に論じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6225670号
【特許文献2】国際公開第WO99/66529号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nuclear Instruments & Methods in Physics Research A 458(2001)677-689
【発明の概要】
【0008】
本発明は、入射加速粒子および高エネルギ放射線に耐えることのできるモノリシックセンサを提供しようとするものである。本発明はまた、入射加速粒子の単一量子および高エネルギの放射線を、場合によっては実質的に100%の高い効率で、検出することのできるモノリシックセンサをも提供しようするものである。そういうものとして、本発明は、それに限らないが例えば電子顕微鏡法で、外部誘導加速を受けた荷電粒子の空間分解された検出を達成するのに適した検出器を提供しようとするものである。
【0009】
本発明では、加速粒子または高エネルギ放射線の検出に使用するように適応されたモノリシックセンサであって、第一導電型のドーパントを有する電荷担体輸送層と、前記電荷担体輸送層より高い濃度の第一導電型のドーパントを有し、かつそれに集積された読出し回路機構を有する少なくとも一つの第一ウェルと、前記電荷担体輸送層との第一接合を形成する第二導電型のドーパントを有する少なくとも一つの第二ウェルと、前記第一ウェルに隣接して位置し、前記第二導電型のドーパントを有する第三ウェルと、前記第三ウェルと前記電荷担体輸送層との間に設けられた分離層と、を備え、よって前記電荷担体輸送層内で電荷担体が生成されたときに、前記電荷担体が前記電荷担体輸送層と第二ウェルとの間の接合に向かって移動して収集されて信号を生成するように構成され、加速粒子または高エネルギ放射線による衝撃に耐えることのできるモノリシックセンサを提供する。
【0010】
好ましくは、センサの読出し回路機構は、次のうちの一つを含む。
【0011】
すなわち、1)第一ウェルに配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタ、または2)第二ウェルに配置された少なくとも一つのpMOSトランジスタ、または3)第一ウェルおよび第二ウェルにそれぞれ配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタおよび少なくとも一つのpMOSトランジスタ、のうちの一つである。
【0012】
本発明は、モノリシックセンサが従来のCMOS技術を使用して製造することができ、実質的に100%のフィルファクタを達成するという利点を有する。さらに、センサ内の電荷担体輸送層の深さ、およびセンサを完全空乏化することができるという事実、換言すると全感応体積内にドリフトフィールドを確立することができるという事実は、センサが加速粒子および高エネルギ放射線、例えば15kRadを超える放射線量からの衝撃に耐えられることを可能にし、電荷収集は従来のイオン化放射線検出器に比較して大幅にスピードアップすることができる。
【0013】
したがって、該センサは、電子顕微鏡法、ならびに電子エネルギ損失分光法(EELS)、低速電子線回折(LEED)、およびX線光電子分光法をはじめそれらに限らない関連分析技術に特に適している。
【0014】
したがって、さらなる態様で、本発明は、電子源と、電子ビーム加速および閉込め手段と、少なくとも一つの電子ビーム集束システムと、第一および第二の表裏両面を有する検出器であって、上述したモノリシックセンサのアレイを備えた検出器とを含む真空排気筐体を備えた電子顕微鏡を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】公知のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図2】改善された第一のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図3】図2の構造に係る四つのピクセルのアレイを示す略図である。
【図4】第二のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図5】図4と同様の複数の集積アクティブピクセルセンサを示す略図である。
【図6】第三のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図7】第四のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図8】第五のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図9】本発明に係るアクティブピクセルセンサアレイを組み込んだ透過電子顕微鏡を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
今、本発明の実施形態を、単なる例として添付の図面に関連して説明する。
【0017】
以下の説明でn型またp型の材料またはドーピングに言及する場合は常に、n型をp型(かつp型をn型)の材料およびドーピングに変え、電子を正孔に(かつ正孔を電子に)変え、かつバイアス極性を変えることによって生成される相補的構造も想定されることを理解されたい。また、下述する様々なアクティブピクセルセンサ構造に共通する構造要素を識別するために、類似の参照番号を使用している。
【実施例1】
【0018】
加速粒子の検出用に適応された、CMOS技術を使用して作製されたアクティブピクセルセンサの第一モノリシック構造を図2に示す。該構造は、エピタキシャルp層11用の支持体となる通常300から700ミクロンの間の厚さを有するp++シリコン基板10を備える。通常2から20ミクロンの間の厚さを有するエピタキシャル層11には、分離したp+およびn+ウェルが形成され、そこでp+ウェル12はn+ウェル13に接触せず、n+ウェル13は軽度にドープされたエピタキシャル層11によって取り囲まれる。この構造により、回路で得られる最低電位に、例えば接地電位に理想的に維持されるp+ウェル12内に、NMOSトランジスタ14が作製される。他方、n+ウェルはより高い電位に、理想的にはVddにバイアスされる。モノリシック構造の連続エピタキシャル層11は、エピタキシャル層11内で入射放射線によって発生する電荷担体がn+ウェル13に拡散し、センサの上面に入射するイオン化放射線の実質的に100%の変換効率をもたらす。
【0019】
図3は、図2の構造が四つのピクセルa、b、c、dに対してどのように繰り返されるかを示す。n+ウェル13のp+ウェル12からの分離は、n+ウェル13を取り囲み、p+ウェル12に対する障壁を形成する、p−エピタキシャル層11により明瞭に示される。
【0020】
加速粒子および高エネルギ放射線の検出用に適応されたアクティブピクセルセンサ用の第二のモノリシック構造を図4に示す。この構造は、p+ウェル12の下に形成された深いn領域15を含む。この構造によって、エピタキシャル層11の活性体積全体に実質的にドリフトフィールドを確立することができる。したがって、図2および3の構造とは異なり、図4の構造のn+ウェル13は、それを取り囲むp+ウェル12と接触している。しかし、n+ウェル13はp+ウェル12より深くエピタキシャル層11内に延び、それによりp+ウェル12の下にエピタキシャル層11と収集接合を形成する。埋込みウェルによって、同一サイズのピクセルに対し、ダイオード間の分離はダイオードの下の低抵抗基板の厚さと同様に、エピ層11の体積全体に空乏領域が確立されることを可能にするサイズまで縮減される。
【実施例2】
【0021】
エピ層11に確立される空乏領域の程度がドーピングレベルおよび印加バイアスによって異なることは、言うまでもなく、理解されるであろう。例えば、1015cm-3のドーピングレベルおよび3Vの印加バイアスを有する典型的なマイクロ電子デバイスの基本的半導体理論に従うと、空乏領域の幅は約6μmとなる。図4のモノリシック構造の場合、エピ層の厚さは約6μmまたはそれ未満であり、よって、n+ウェル13への拡散とは対照的に、エピ層の完全な空乏、および電荷担体の大部分がドリフトするドリフトフィールドの確立が可能になる。センサアレイにおけるドリフトフィールドの確立は、隣接する画素間のクロストークをも低減し、したがってアレイの解像度を改善することができる。
【0022】
図5は、幾つかのピクセルをどのように集積することができるかを示す、図4の変形である。この構造の2Dシミュレーションは、エピタキシャル層12が完全に空乏化する結果として収集時間の10倍の向上を示唆し、したがってこれらの構造は実時間および高速撮像に特に適した構造となる。さらに、NMOSトランジスタはp+ウェルに実現することができ、PMOSトランジスタはn+ウェルに実現することができるので、図4および5の構造は、ピクセルに全CMOS電子部品を集積することを可能にする。これに関して、NMOSトランジスタをp+ウェルで基板から分離することにより、電子部品の機能に影響を及ぼすことなく、p基板に負バイアスを印加することが可能である。漏れ電流を防止するために、分離層を追加することが必要になるかもしれない。例えば図6の分離層16および図8(下記参照)の19を参照されたい。
【実施例3】
【0023】
PMOSおよびNMOSトランジスタの両方の単一ピクセルへの完全な集積を可能にする、さらなる代替的アクティブピクセルセンサ構造を図6に示す。この構造により、トランジスタが設けられたウェルからエピタキシャル層12の感応体積を分離するために、分離層16が導入されている。図6の構造では、分離層16は、追加されたp+ウェルおよびn+ウェル17の下に注入されたp++層の形を取る。100%の収集効率を確実にするために、n+領域13は、分離層を越えて延びエピタキシャル層12と直接接合を形成するように、再び深く注入される。この構造は、小さい収集ノード、ならびに非常に小さい容量、高感度、および低ノイズをサポートする利点を有する。この構造はまた、分離層16または基板10に負電圧を印加することによって、小さいバイアス電位を印加することをも可能にする。
【実施例4】
【0024】
図7の構造は、n領域15がp+ウェル12の下に設けられるという点で、図4および5に見られる特徴を組み込んでいる。この場合、PMOSおよびNMOSトランジスタ両方を深いnウェル15および図面の左側のp+ウェル12に集積するために、分離層は必要ない。図面の右側のp+ウェル18はカソードして働き、大部分の担体を収集する。この構造は、全CMOS電子部品の集積にもかかわらず、収集要素13の低キャパシタンスを維持するという利点を有する。
【実施例5】
【0025】
図8を参照すると、今回は、エピタキシャル層11から電子部品を分離するために埋込み酸化物層19を利用して、全CMOS電子部品の集積を可能にするアクティブピクセルセンサが再び図示されている。
【0026】
上述した構造は全て信号収集を収集接合に依存しており、各々の構造は複数の接合を有する。これらの接合は、異なるエネルギを有する電子のような加速粒子の画像を順次撮影して、出力信号を時間多重化するか、または構造を同一のピクセルに結合して異なるエネルギの加速粒子の画像を同時に撮影するかのいずれかによって、異なる型の加速粒子または高エネルギ放射線を検出するために使用することができる。
【0027】
小面積のエピ層は、センサの上のメタライゼーションによってスクリーニングされるかもしれないことは、言うまでもなく理解されるであろう。これに対処するために、p++基板10を部分的にまたは完全に除去し、センサを裏から照明することが考えられる。
【0028】
上述したアクティブピクセルセンサは、電子のような加速荷電粒子および高エネルギ放射線の衝撃に耐えることを可能にする改善された放射線耐性を有する。特に、本発明は100nmに等しいかそれより短い波長を有する放射線からの衝撃に耐えることができ、かつ15kRadまたはそれ以上の放射線量に耐えることができる。これは、センサが完全に空乏化することができ、エピ層における電荷担体の収集の速度が低減され、これが少数担体の寿命に関連する信号の劣化を低減するためである。さらに、本発明は、約1〜5ミクロンの解像度を可能にする従来のVLSI CMOS技術のアクティブピクセルセンサアレイを使用して実現するように意図されている。したがって、本発明のセンサは放射線の過酷な環境で、例えば原子力発電所の廃炉で、または衛星で星の追跡のために使用することができる。
【実施例6】
【0029】
上述したアクティブピクセルセンサのアレイの特定の用途として、透過電子顕微鏡(TEM)用の検出器がある。顕微鏡の焦点面に配置された集積CMOS技術センサのアレイを有する透過電子顕微鏡を図9に示す。電子顕微鏡の従来の特徴はGB2019085から取ったものである。顕微鏡20は、筐体21内の高真空を維持するように、真空ポンプ22を有する筐体21を備える。筐体21内で、電子源23およびそのアノード24が、外部電力源から電力を供給される顕微鏡の頂部に取り付けられる。要求される画像の解像度要件に応じて、電子は例えば80〜400kVの間の源から加速することができる。ビーム軸に沿って続けると、アノード24の先にはビーム位置合わせ装置25、調整可能なビームアパーチャ26、第一および第二集光レンズ系27、28、調整可能な集光レンズアパーチャ29、ならびに対物レンズ系30が設けられている。対物レンズ30の真下には、入射電子を透かす試料ステージ31がある。試料ステージ31の下には第二対物レンズ系32、調整可能な回折アパーチャ33、ならびに回折レンズ34と第一および第二投影レンズ35、36とを含む一連のレンズ系がある。電子顕微鏡システムの底部に配置されているのは、検出器37であり、この場合は、図2〜8に関連して上述したアクティブピクセルセンサのアレイである。アクティブピクセルアレイ37のデータ出力38は、データ解析のため、およびアクティブピクセルアレイによって供給されたデータのグラフィック画像を生成するために、プロセッサ39に接続される。
【0030】
アクティブピクセルアレイ37は、加速電子ビームがアレイの基板裏面に入射するように反転させることができ、かつエピタキシャル層11への電子の進入を確実にするために、基板10は低エネルギ電子の進入が可能な厚さまで裏面を薄肉化することができる。好ましくは、基板の厚さは100ミクロンまたはそれ未満に低減される。理想的には、基板を完全に除去し、エピタキシャル層11の裏面を露出したままにする。代替的に、基板10の裏面またはセンサの前面を被覆する前面分離層内に窓のアレイをエッチングしてもよい。
【0031】
上述したアクティブピクセルの高いフィルファクタおよび性能特性の結果、5ミクロンより低い画像解像度を達成することができ、実際、1から5ミクロンの間の解像度を達成することができ、それは現在利用可能な技術を超える改善である。ピクセルサイズの縮小により、かつ/または個々の入射電子に対する信号のアナログ読出しを実現することにより、サブミクロンの解像度が可能である。これは、モノリシック集積CMOSトランジスタを含むCMOSセンサアレイを有する検出器を組み込んだ電子顕微鏡を、特にタンパク質のような生物学的試料および細胞試料の撮像に使用するのに適したものにするが、それに限定されない。
【0032】
電子顕微鏡におけるアクティブピクセルセンサアレイの使用に加えて、アレイはX線およびガンマ線をはじめ、より高いエネルギの放射線の検出に使用するのに適している。再び、センサアレイのフィルファクタを最大にするために、放射線に曝露されるのが基板の裏面になるように、アレイを反転することができる。加えて、基板の裏面または前面に、ヨウ化セシウムまたはヨウ化水銀のような放射線感応材料を被覆することができる。
【0033】
本発明が、本書に記載したアクティブピクセルセンサの構造の詳細に限定されず、本書に記載した透過電子顕微鏡の構造の詳細にも限定されないことは、言うまでもなく理解されるであろう。請求の範囲に記載する本発明の範囲内に留まりながら、これらの構造の変化および変形が考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は加速粒子および高エネルギ放射線センサに関する。特に、本発明は、加速電子をはじめそれに限らない荷電粒子の検出に対する活性画素技術の適用に関係するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
1990年代を通じて、アクティブピクセルセンサは、CCD技術の代替物として可視撮像用に開発された。そのようなアクティブピクセルセンサは一般的に標準VLSI技術、通常はCMOSを使用して作製され、フォトダイオードによって生成された電荷信号をバッファリングする増幅器と一緒に、ピクセルに集積されたフォトダイオードから構成される。しかし、過去には、可視撮像におけるアクティブピクセルセンサの適用は、それらの低いフィルファクタ(fill factor)によって限定されてきた。換言すると、各ピクセ
ルの表面積の大部分は読出し回路機構に充当されたので、ピクセルの表面積のごく一部分だけが入射光を感知した。これはアクティブピクセルセンサアレイの解像度を制限し、この技術を多くの撮像用途に対し、特にトラッキング用途に対し、不適切なものにした。
【0003】
米国特許第6225670号(特許文献1)に、かなり増大したフィルファクタを持ち、電子放射線を検出するためのアクティブピクセルセンサ構造が記載されている。図1は米国特許第6225670号から取ったものであり、一つのアクティブピクセルセンサの基本構造を示す。従来のp型ドープシリコン基板1は、その中に画定されたp−エピ層2と、エピ層2の上に形成されたp+層3とを有する。p+層3は、相互に分離されかつエピ層2からも分離された、n型ドーピングを有する二つの領域4、5を含む。しかし、第一領域4はエピ層2との接合を形成し、入射電磁(em)放射線によって発生する電荷担体を収集するための収集接合として働き、これはp+層を介してエピ層2内にまで深く打ち込まれたn型領域の部分6を含む。第二nドープ領域5は、読出し回路機構がピクセル上に配置される領域を画定する。この構造では、入力em放射線の結果、電荷担体がエピ層2内で発生し、収集接合へ拡散する。p+層3によるエピ層2からの第二nドープ領域5の分離は、エピ層2内の電荷担体が読出し回路機構へ逸失しないことを確実にする。
【0004】
同様の構造は、Nuclear Instruments & Methods in Physics Research A 458(2001)677-689(非特許文献1)におけるR Turchettaらによる「A monolithic active pixel sensor for charged particle tracking and imaging using standard VLSI CMOS technology」と題する論文にも記載されている。この論文では、最小イオン化粒子(MIPS)の追跡および単光子撮像にそのような構造を使用する可能性が検討されている。
【0005】
加速電子ビームを使用する透過電子顕微鏡法(TEM)の分野では、今日まで、高解像度画像が要求される状況で、透過電子顕微鏡用の検出器として、湿式フィルムが使用され続けている。デジタル画像を生成するために湿式フィルムを光ファイバ束およびCCDアレイと組み合わせてシンチレータに置換する提案は、一部にはCCD検出器システムの解像度を著しく限定し得るスミア効果のため、ごく限定された成功を収めただけである。これらの問題は、得られる画像の解像度を改善しようとして試料とシンチレータとの間の電子の減速を提案する、国際公開第WO99/66529号(特許文献2)に論じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6225670号
【特許文献2】国際公開第WO99/66529号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nuclear Instruments & Methods in Physics Research A 458(2001)677-689
【発明の概要】
【0008】
本発明は、入射加速粒子および高エネルギ放射線に耐えることのできるモノリシックセンサを提供しようとするものである。本発明はまた、入射加速粒子の単一量子および高エネルギの放射線を、場合によっては実質的に100%の高い効率で、検出することのできるモノリシックセンサをも提供しようするものである。そういうものとして、本発明は、それに限らないが例えば電子顕微鏡法で、外部誘導加速を受けた荷電粒子の空間分解された検出を達成するのに適した検出器を提供しようとするものである。
【0009】
本発明では、加速粒子または高エネルギ放射線の検出に使用するように適応されたモノリシックセンサであって、第一導電型のドーパントを有する電荷担体輸送層と、前記電荷担体輸送層より高い濃度の第一導電型のドーパントを有し、かつそれに集積された読出し回路機構を有する少なくとも一つの第一ウェルと、前記電荷担体輸送層との第一接合を形成する第二導電型のドーパントを有する少なくとも一つの第二ウェルと、前記第一ウェルに隣接して位置し、前記第二導電型のドーパントを有する第三ウェルと、前記第三ウェルと前記電荷担体輸送層との間に設けられた分離層と、を備え、よって前記電荷担体輸送層内で電荷担体が生成されたときに、前記電荷担体が前記電荷担体輸送層と第二ウェルとの間の接合に向かって移動して収集されて信号を生成するように構成され、加速粒子または高エネルギ放射線による衝撃に耐えることのできるモノリシックセンサを提供する。
【0010】
好ましくは、センサの読出し回路機構は、次のうちの一つを含む。
【0011】
すなわち、1)第一ウェルに配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタ、または2)第二ウェルに配置された少なくとも一つのpMOSトランジスタ、または3)第一ウェルおよび第二ウェルにそれぞれ配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタおよび少なくとも一つのpMOSトランジスタ、のうちの一つである。
【0012】
本発明は、モノリシックセンサが従来のCMOS技術を使用して製造することができ、実質的に100%のフィルファクタを達成するという利点を有する。さらに、センサ内の電荷担体輸送層の深さ、およびセンサを完全空乏化することができるという事実、換言すると全感応体積内にドリフトフィールドを確立することができるという事実は、センサが加速粒子および高エネルギ放射線、例えば15kRadを超える放射線量からの衝撃に耐えられることを可能にし、電荷収集は従来のイオン化放射線検出器に比較して大幅にスピードアップすることができる。
【0013】
したがって、該センサは、電子顕微鏡法、ならびに電子エネルギ損失分光法(EELS)、低速電子線回折(LEED)、およびX線光電子分光法をはじめそれらに限らない関連分析技術に特に適している。
【0014】
したがって、さらなる態様で、本発明は、電子源と、電子ビーム加速および閉込め手段と、少なくとも一つの電子ビーム集束システムと、第一および第二の表裏両面を有する検出器であって、上述したモノリシックセンサのアレイを備えた検出器とを含む真空排気筐体を備えた電子顕微鏡を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】公知のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図2】改善された第一のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図3】図2の構造に係る四つのピクセルのアレイを示す略図である。
【図4】第二のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図5】図4と同様の複数の集積アクティブピクセルセンサを示す略図である。
【図6】第三のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図7】第四のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図8】第五のアクティブピクセルセンサの構造を示す略図である。
【図9】本発明に係るアクティブピクセルセンサアレイを組み込んだ透過電子顕微鏡を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
今、本発明の実施形態を、単なる例として添付の図面に関連して説明する。
【0017】
以下の説明でn型またp型の材料またはドーピングに言及する場合は常に、n型をp型(かつp型をn型)の材料およびドーピングに変え、電子を正孔に(かつ正孔を電子に)変え、かつバイアス極性を変えることによって生成される相補的構造も想定されることを理解されたい。また、下述する様々なアクティブピクセルセンサ構造に共通する構造要素を識別するために、類似の参照番号を使用している。
【実施例1】
【0018】
加速粒子の検出用に適応された、CMOS技術を使用して作製されたアクティブピクセルセンサの第一モノリシック構造を図2に示す。該構造は、エピタキシャルp層11用の支持体となる通常300から700ミクロンの間の厚さを有するp++シリコン基板10を備える。通常2から20ミクロンの間の厚さを有するエピタキシャル層11には、分離したp+およびn+ウェルが形成され、そこでp+ウェル12はn+ウェル13に接触せず、n+ウェル13は軽度にドープされたエピタキシャル層11によって取り囲まれる。この構造により、回路で得られる最低電位に、例えば接地電位に理想的に維持されるp+ウェル12内に、NMOSトランジスタ14が作製される。他方、n+ウェルはより高い電位に、理想的にはVddにバイアスされる。モノリシック構造の連続エピタキシャル層11は、エピタキシャル層11内で入射放射線によって発生する電荷担体がn+ウェル13に拡散し、センサの上面に入射するイオン化放射線の実質的に100%の変換効率をもたらす。
【0019】
図3は、図2の構造が四つのピクセルa、b、c、dに対してどのように繰り返されるかを示す。n+ウェル13のp+ウェル12からの分離は、n+ウェル13を取り囲み、p+ウェル12に対する障壁を形成する、p−エピタキシャル層11により明瞭に示される。
【0020】
加速粒子および高エネルギ放射線の検出用に適応されたアクティブピクセルセンサ用の第二のモノリシック構造を図4に示す。この構造は、p+ウェル12の下に形成された深いn領域15を含む。この構造によって、エピタキシャル層11の活性体積全体に実質的にドリフトフィールドを確立することができる。したがって、図2および3の構造とは異なり、図4の構造のn+ウェル13は、それを取り囲むp+ウェル12と接触している。しかし、n+ウェル13はp+ウェル12より深くエピタキシャル層11内に延び、それによりp+ウェル12の下にエピタキシャル層11と収集接合を形成する。埋込みウェルによって、同一サイズのピクセルに対し、ダイオード間の分離はダイオードの下の低抵抗基板の厚さと同様に、エピ層11の体積全体に空乏領域が確立されることを可能にするサイズまで縮減される。
【実施例2】
【0021】
エピ層11に確立される空乏領域の程度がドーピングレベルおよび印加バイアスによって異なることは、言うまでもなく、理解されるであろう。例えば、1015cm-3のドーピングレベルおよび3Vの印加バイアスを有する典型的なマイクロ電子デバイスの基本的半導体理論に従うと、空乏領域の幅は約6μmとなる。図4のモノリシック構造の場合、エピ層の厚さは約6μmまたはそれ未満であり、よって、n+ウェル13への拡散とは対照的に、エピ層の完全な空乏、および電荷担体の大部分がドリフトするドリフトフィールドの確立が可能になる。センサアレイにおけるドリフトフィールドの確立は、隣接する画素間のクロストークをも低減し、したがってアレイの解像度を改善することができる。
【0022】
図5は、幾つかのピクセルをどのように集積することができるかを示す、図4の変形である。この構造の2Dシミュレーションは、エピタキシャル層12が完全に空乏化する結果として収集時間の10倍の向上を示唆し、したがってこれらの構造は実時間および高速撮像に特に適した構造となる。さらに、NMOSトランジスタはp+ウェルに実現することができ、PMOSトランジスタはn+ウェルに実現することができるので、図4および5の構造は、ピクセルに全CMOS電子部品を集積することを可能にする。これに関して、NMOSトランジスタをp+ウェルで基板から分離することにより、電子部品の機能に影響を及ぼすことなく、p基板に負バイアスを印加することが可能である。漏れ電流を防止するために、分離層を追加することが必要になるかもしれない。例えば図6の分離層16および図8(下記参照)の19を参照されたい。
【実施例3】
【0023】
PMOSおよびNMOSトランジスタの両方の単一ピクセルへの完全な集積を可能にする、さらなる代替的アクティブピクセルセンサ構造を図6に示す。この構造により、トランジスタが設けられたウェルからエピタキシャル層12の感応体積を分離するために、分離層16が導入されている。図6の構造では、分離層16は、追加されたp+ウェルおよびn+ウェル17の下に注入されたp++層の形を取る。100%の収集効率を確実にするために、n+領域13は、分離層を越えて延びエピタキシャル層12と直接接合を形成するように、再び深く注入される。この構造は、小さい収集ノード、ならびに非常に小さい容量、高感度、および低ノイズをサポートする利点を有する。この構造はまた、分離層16または基板10に負電圧を印加することによって、小さいバイアス電位を印加することをも可能にする。
【実施例4】
【0024】
図7の構造は、n領域15がp+ウェル12の下に設けられるという点で、図4および5に見られる特徴を組み込んでいる。この場合、PMOSおよびNMOSトランジスタ両方を深いnウェル15および図面の左側のp+ウェル12に集積するために、分離層は必要ない。図面の右側のp+ウェル18はカソードして働き、大部分の担体を収集する。この構造は、全CMOS電子部品の集積にもかかわらず、収集要素13の低キャパシタンスを維持するという利点を有する。
【実施例5】
【0025】
図8を参照すると、今回は、エピタキシャル層11から電子部品を分離するために埋込み酸化物層19を利用して、全CMOS電子部品の集積を可能にするアクティブピクセルセンサが再び図示されている。
【0026】
上述した構造は全て信号収集を収集接合に依存しており、各々の構造は複数の接合を有する。これらの接合は、異なるエネルギを有する電子のような加速粒子の画像を順次撮影して、出力信号を時間多重化するか、または構造を同一のピクセルに結合して異なるエネルギの加速粒子の画像を同時に撮影するかのいずれかによって、異なる型の加速粒子または高エネルギ放射線を検出するために使用することができる。
【0027】
小面積のエピ層は、センサの上のメタライゼーションによってスクリーニングされるかもしれないことは、言うまでもなく理解されるであろう。これに対処するために、p++基板10を部分的にまたは完全に除去し、センサを裏から照明することが考えられる。
【0028】
上述したアクティブピクセルセンサは、電子のような加速荷電粒子および高エネルギ放射線の衝撃に耐えることを可能にする改善された放射線耐性を有する。特に、本発明は100nmに等しいかそれより短い波長を有する放射線からの衝撃に耐えることができ、かつ15kRadまたはそれ以上の放射線量に耐えることができる。これは、センサが完全に空乏化することができ、エピ層における電荷担体の収集の速度が低減され、これが少数担体の寿命に関連する信号の劣化を低減するためである。さらに、本発明は、約1〜5ミクロンの解像度を可能にする従来のVLSI CMOS技術のアクティブピクセルセンサアレイを使用して実現するように意図されている。したがって、本発明のセンサは放射線の過酷な環境で、例えば原子力発電所の廃炉で、または衛星で星の追跡のために使用することができる。
【実施例6】
【0029】
上述したアクティブピクセルセンサのアレイの特定の用途として、透過電子顕微鏡(TEM)用の検出器がある。顕微鏡の焦点面に配置された集積CMOS技術センサのアレイを有する透過電子顕微鏡を図9に示す。電子顕微鏡の従来の特徴はGB2019085から取ったものである。顕微鏡20は、筐体21内の高真空を維持するように、真空ポンプ22を有する筐体21を備える。筐体21内で、電子源23およびそのアノード24が、外部電力源から電力を供給される顕微鏡の頂部に取り付けられる。要求される画像の解像度要件に応じて、電子は例えば80〜400kVの間の源から加速することができる。ビーム軸に沿って続けると、アノード24の先にはビーム位置合わせ装置25、調整可能なビームアパーチャ26、第一および第二集光レンズ系27、28、調整可能な集光レンズアパーチャ29、ならびに対物レンズ系30が設けられている。対物レンズ30の真下には、入射電子を透かす試料ステージ31がある。試料ステージ31の下には第二対物レンズ系32、調整可能な回折アパーチャ33、ならびに回折レンズ34と第一および第二投影レンズ35、36とを含む一連のレンズ系がある。電子顕微鏡システムの底部に配置されているのは、検出器37であり、この場合は、図2〜8に関連して上述したアクティブピクセルセンサのアレイである。アクティブピクセルアレイ37のデータ出力38は、データ解析のため、およびアクティブピクセルアレイによって供給されたデータのグラフィック画像を生成するために、プロセッサ39に接続される。
【0030】
アクティブピクセルアレイ37は、加速電子ビームがアレイの基板裏面に入射するように反転させることができ、かつエピタキシャル層11への電子の進入を確実にするために、基板10は低エネルギ電子の進入が可能な厚さまで裏面を薄肉化することができる。好ましくは、基板の厚さは100ミクロンまたはそれ未満に低減される。理想的には、基板を完全に除去し、エピタキシャル層11の裏面を露出したままにする。代替的に、基板10の裏面またはセンサの前面を被覆する前面分離層内に窓のアレイをエッチングしてもよい。
【0031】
上述したアクティブピクセルの高いフィルファクタおよび性能特性の結果、5ミクロンより低い画像解像度を達成することができ、実際、1から5ミクロンの間の解像度を達成することができ、それは現在利用可能な技術を超える改善である。ピクセルサイズの縮小により、かつ/または個々の入射電子に対する信号のアナログ読出しを実現することにより、サブミクロンの解像度が可能である。これは、モノリシック集積CMOSトランジスタを含むCMOSセンサアレイを有する検出器を組み込んだ電子顕微鏡を、特にタンパク質のような生物学的試料および細胞試料の撮像に使用するのに適したものにするが、それに限定されない。
【0032】
電子顕微鏡におけるアクティブピクセルセンサアレイの使用に加えて、アレイはX線およびガンマ線をはじめ、より高いエネルギの放射線の検出に使用するのに適している。再び、センサアレイのフィルファクタを最大にするために、放射線に曝露されるのが基板の裏面になるように、アレイを反転することができる。加えて、基板の裏面または前面に、ヨウ化セシウムまたはヨウ化水銀のような放射線感応材料を被覆することができる。
【0033】
本発明が、本書に記載したアクティブピクセルセンサの構造の詳細に限定されず、本書に記載した透過電子顕微鏡の構造の詳細にも限定されないことは、言うまでもなく理解されるであろう。請求の範囲に記載する本発明の範囲内に留まりながら、これらの構造の変化および変形が考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速粒子または高エネルギ放射線の検出に使用するように適応されたモノリシックセンサであって、
第一導電型のドーパントを有する電荷担体輸送層と、
前記電荷担体輸送層より高い濃度の第一導電型のドーパントを有し、かつそれに集積された読出し回路機構を有する少なくとも一つの第一ウェルと、
前記電荷担体輸送層との第一接合を形成する第二導電型のドーパントを有する少なくとも一つの第二ウェルと、
前記第一ウェルに隣接して位置し、前記第二導電型のドーパントを有する第三ウェルと、
前記第三ウェルと前記電荷担体輸送層との間に設けられた分離層と、を備え、
前記第二ウェルは、前記分離層を通って前記電荷担体輸送層まで延びており、
よって前記電荷担体輸送層内で電荷担体が生成されたときに、前記電荷担体が前記電荷担体輸送層と第二ウェルとの間の接合に向かって移動して収集されて信号を生成するように構成され、
加速粒子または高エネルギ放射線による衝撃に耐えることのできるモノリシックセンサ。
【請求項2】
前記電荷担体輸送層ならびに前記第一および第二ウェルが相補型金属酸化物半導体構造内に形成される、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項3】
前記センサにバイアス電圧を印加するための手段をさらに含む、請求項1または2に記載のモノリシックセンサ。
【請求項4】
前記バイアス電圧が印加されたときに前記電荷担体輸送層がドリフトフィールドを含む、請求項3に記載のモノリシックセンサ。
【請求項5】
前記バイアス電圧が印加されたときに前記電荷担体輸送層が実質的に完全に空乏化する、請求項4に記載のモノリシックセンサ。
【請求項6】
前記センサが15kRad以上の放射線量に耐えるように適応された、請求項5に記載のモノリシックセンサ。
【請求項7】
前記第一ウェルおよび前記第三ウェルは、いずれも、前記第二ウェルにおいて発生した前記信号の読出しを実行するように構成された、1またはそれ以上のトランジスタを有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項8】
前記分離層は、前記第一ウェルおよび前記電荷担体輸送層の間にも設けられている、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項9】
前記分離層は、前記第一ウェルより高い濃度の前記第一導電型のドーパントを有する、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項10】
前記センサ用の前記読出し回路機構が、
1)前記第一ウェルに配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタ、または、
2)前記第二ウェルに配置された少なくとも一つのpMOSトランジスタ、または、
3)前記第一ウェルおよび前記第二ウェルにそれぞれ配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタおよび少なくとも一つのpMOSトランジスタ、
のうちの一つを備える、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項11】
半導体基板をさらに備え、前記電荷担体輸送層が前記半導体基板より低濃度のドーパントを有する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項12】
前記分離層が前記電荷担体輸送層より高い濃度で前記第一導電型のドーパントを含む半導体層を備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項13】
前記分離層は絶縁誘電体を備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項14】
前記第一ウェルと、前記第二導電型のドーパントを有する領域との間の接合が、前記第一型の加速粒子またはイオン化放射線とは異なる第二型の入射加速粒子または高イオン化放射線の結果として信号を発生するための第二収集接合を形成する、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項15】
前記第一および第二ウェル間の前記接合が第二接合を形成する、請求項14に記載のモノリシックセンサ。
【請求項16】
前記第一および第二接合が、加速粒子の異なるエネルギを示す信号を選択的に発生する、請求項14または15のいずれかに記載のモノリシックセンサ。
【請求項17】
前記第二ウェルが前記第一ウェルから分離される、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項18】
100ミクロン以下の厚さを有する半導体基板をさらに備える、請求項1ないし17のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項19】
前記半導体基板が前記第一導電型のドーパントを含む、請求項18に記載のモノリシックセンサ。
【請求項20】
前記センサアレイの裏面または前面に一層のヨウ化水銀層を含む、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項21】
前記センサアレイの裏面または前面に一層のヨウ化セシウム層を含む、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項22】
加速粒子または高エネルギイオン化放射線による衝撃に応答して空間分解信号を発生するための相補型金属酸化物半導体デバイスを含む、集積された読出し回路機構を有する請求項1ないし21のいずれか一項に記載のモノリシックセンサの集積アレイを備えた検出器。
【請求項23】
電子源と、電子ビーム加速および閉込め手段と、少なくとも一つの電子ビーム集束システムと、第一および第二の表裏両面を有する検出器であって、請求項1ないし21のいずれか一項に記載のモノリシックセンサの集積アレイを備えた検出器とを含む真空排気筐体を備えた電子顕微鏡。
【請求項1】
加速粒子または高エネルギ放射線の検出に使用するように適応されたモノリシックセンサであって、
第一導電型のドーパントを有する電荷担体輸送層と、
前記電荷担体輸送層より高い濃度の第一導電型のドーパントを有し、かつそれに集積された読出し回路機構を有する少なくとも一つの第一ウェルと、
前記電荷担体輸送層との第一接合を形成する第二導電型のドーパントを有する少なくとも一つの第二ウェルと、
前記第一ウェルに隣接して位置し、前記第二導電型のドーパントを有する第三ウェルと、
前記第三ウェルと前記電荷担体輸送層との間に設けられた分離層と、を備え、
前記第二ウェルは、前記分離層を通って前記電荷担体輸送層まで延びており、
よって前記電荷担体輸送層内で電荷担体が生成されたときに、前記電荷担体が前記電荷担体輸送層と第二ウェルとの間の接合に向かって移動して収集されて信号を生成するように構成され、
加速粒子または高エネルギ放射線による衝撃に耐えることのできるモノリシックセンサ。
【請求項2】
前記電荷担体輸送層ならびに前記第一および第二ウェルが相補型金属酸化物半導体構造内に形成される、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項3】
前記センサにバイアス電圧を印加するための手段をさらに含む、請求項1または2に記載のモノリシックセンサ。
【請求項4】
前記バイアス電圧が印加されたときに前記電荷担体輸送層がドリフトフィールドを含む、請求項3に記載のモノリシックセンサ。
【請求項5】
前記バイアス電圧が印加されたときに前記電荷担体輸送層が実質的に完全に空乏化する、請求項4に記載のモノリシックセンサ。
【請求項6】
前記センサが15kRad以上の放射線量に耐えるように適応された、請求項5に記載のモノリシックセンサ。
【請求項7】
前記第一ウェルおよび前記第三ウェルは、いずれも、前記第二ウェルにおいて発生した前記信号の読出しを実行するように構成された、1またはそれ以上のトランジスタを有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項8】
前記分離層は、前記第一ウェルおよび前記電荷担体輸送層の間にも設けられている、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項9】
前記分離層は、前記第一ウェルより高い濃度の前記第一導電型のドーパントを有する、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項10】
前記センサ用の前記読出し回路機構が、
1)前記第一ウェルに配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタ、または、
2)前記第二ウェルに配置された少なくとも一つのpMOSトランジスタ、または、
3)前記第一ウェルおよび前記第二ウェルにそれぞれ配置された少なくとも一つのnMOSトランジスタおよび少なくとも一つのpMOSトランジスタ、
のうちの一つを備える、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項11】
半導体基板をさらに備え、前記電荷担体輸送層が前記半導体基板より低濃度のドーパントを有する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項12】
前記分離層が前記電荷担体輸送層より高い濃度で前記第一導電型のドーパントを含む半導体層を備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項13】
前記分離層は絶縁誘電体を備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項14】
前記第一ウェルと、前記第二導電型のドーパントを有する領域との間の接合が、前記第一型の加速粒子またはイオン化放射線とは異なる第二型の入射加速粒子または高イオン化放射線の結果として信号を発生するための第二収集接合を形成する、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項15】
前記第一および第二ウェル間の前記接合が第二接合を形成する、請求項14に記載のモノリシックセンサ。
【請求項16】
前記第一および第二接合が、加速粒子の異なるエネルギを示す信号を選択的に発生する、請求項14または15のいずれかに記載のモノリシックセンサ。
【請求項17】
前記第二ウェルが前記第一ウェルから分離される、請求項1に記載のモノリシックセンサ。
【請求項18】
100ミクロン以下の厚さを有する半導体基板をさらに備える、請求項1ないし17のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項19】
前記半導体基板が前記第一導電型のドーパントを含む、請求項18に記載のモノリシックセンサ。
【請求項20】
前記センサアレイの裏面または前面に一層のヨウ化水銀層を含む、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項21】
前記センサアレイの裏面または前面に一層のヨウ化セシウム層を含む、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のモノリシックセンサ。
【請求項22】
加速粒子または高エネルギイオン化放射線による衝撃に応答して空間分解信号を発生するための相補型金属酸化物半導体デバイスを含む、集積された読出し回路機構を有する請求項1ないし21のいずれか一項に記載のモノリシックセンサの集積アレイを備えた検出器。
【請求項23】
電子源と、電子ビーム加速および閉込め手段と、少なくとも一つの電子ビーム集束システムと、第一および第二の表裏両面を有する検出器であって、請求項1ないし21のいずれか一項に記載のモノリシックセンサの集積アレイを備えた検出器とを含む真空排気筐体を備えた電子顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−17722(P2011−17722A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218034(P2010−218034)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2006−506237(P2006−506237)の分割
【原出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2006−506237(P2006−506237)の分割
【原出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】
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