説明

加飾パネルの製造方法及びこの製造方法により製造された加飾パネル

【課題】 本発明は、クラックの発生を阻止し、製造工程の簡略化を行え、且つ隣り合うパネルの柄ずれの無い、加飾パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、以下の工程からなる加飾パネルの製造方法である。(a)基材周囲を折り曲げる工程、(b)基材に印刷を施し絵柄を付す工程、(c)基材上面に透明性樹脂層を形成する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾されたパネルの製造方法、及び、その製造方法により製造された加飾パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加飾パネルの製造方法としては、平板状の基材に対し、スクリーン印刷により加飾を行い、その後、この加飾模様を保護する耐水塗料により表面コーティングを行っていた。そして、フランジの形成は、表面コーティングを終えた後に、基材周囲を折り曲げるようにしている。
【特許文献1】特開2002−337300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述したような従来の加飾パネル製造方法の場合、図1に示すように、基材1の表面をコーティングした塗膜2の厚みが、厚くなるに従い、曲げ加工時の塗膜伸びが長くなり、徐々に塗膜2にクラック3が生じやすくなってしまうことから、塗膜2をなるべく薄膜としなければならず、結果として深み感がなくなってしまい、意匠性を損なう問題がある。
【0004】
また、印刷した平板の基材をそのまま曲げ加工してしまうと、横運搬時に基材表面と何らかの接触キズもしくは、図2に示すように曲げ機械設備のボールキャスタ4等とのこすれ等によるキズが発生しやすくなることから、印刷した基材表面にキズを防止するためのクッション材もしくは、曲げ加工に影響の少ない保護フィルムを貼り付けなければならない問題がある。
【0005】
更には、次の製造工程である塗料表面コーティングの際に、前記した保護フィルムを剥がさなければならず、製造コストが増大し、資源も無駄となる問題がある。
【0006】
そして、前述の基材に印刷をしてから曲げ加工をする製造方法では、印刷時の柄のずれ、曲げ加工時の曲げ位置のずれにより、隣り合うパネルの柄のずれが生じ易く、柄がずれても違和感の無い意匠にする必要があり、そのデザインの自由度を損なっていた。
【0007】
本発明は、クラックの発生を阻止し、製造工程の簡略化を行え、且つ隣り合うパネルの柄ずれの無い、加飾パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、以下の工程からなる加飾パネルの製造方法である。
(a)基材周囲を折り曲げる工程
(b)基材に印刷を施し絵柄を付す工程
(c)基材上面に透明性樹脂層を形成する工程
(2)項(1)において、(a)に示す折り曲げが、折り曲げ角度70度〜180度の加飾パネルの製造方法。
(3)項(1)又は(2)において、(b)に示す印刷が、インクジェット印刷である加飾パネルの製造方法。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、(c)に示す透明性樹脂層が、5μm以上の厚みを有する加飾パネルの製造方法。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、(c)に示す透明性樹脂層が、20μm以上の厚みを有する加飾パネルの製造方法。
(6)項(1)乃至(5)の何れかに記載の製法方法により製造された加飾パネル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラックの発生を阻止し、製造工程の簡略化を行える加飾パネルの製造方法を提供することができる。そして、曲げてから印刷をすることにより、印刷後曲げ加工時傷防止のための保護フィルムを貼る必要が無く、フィルムの無駄及び、フィルム貼り付け・フィルム剥がしの工程を無くすことができる。更には印刷インクの無駄を省け、且つ印刷時間を短縮することができる。
印刷をインクジェット印刷とした場合は、柄毎に版を起こす必要がなく、少量多品種の要望に素早く応えることができる。
また、複数パネルを並列させて同時印刷した場合は、印刷後の柄ずれがなく、柄模様の自由度を広げることができる。
【0010】
基材端部の曲げ加工角度を70度〜180度にした場合は、基材に強度メンバとなるフランジを付与することができ、基材のバリが露出することを防止できる。
図3に曲げ加工角度を図示する。ここで定義する角度は、曲げ位置を原点6とし、基材の加工前位置7と、加工後位置8とによって形成される、角度9のことである。
【0011】
透明性樹脂層が、5μm以上の厚みである場合は、光沢に優れ、深み感のある、耐久性を有する加飾パネルが得られ、20μm以上の厚みとすることで、より一層の深み感、耐久性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いる基材は、加飾パネルとしての剛性を持つ物であれば特に制限されるものではなく、例えば、鋼板等の金属板、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂板等を用いることができ、加工性や加工精度から鋼板が好ましい。加飾パネルを水場にて使用する場合は、金属板に防錆のめっき処理を施すか、防錆性能を有するものを使用することが好ましい。
【0013】
本発明にて行う基材曲げ加工角度は、70度〜180度の範囲が好ましく、化粧パネルの剛性及び連結性の向上には90度が特に好ましい。また、端部に発生するバリを露出させないようにするには、180度とすることが好ましい。
【0014】
本発明にて述べるインクジェット印刷に用いるプリンタは、特に制限されるものではなく、印刷対象物のみを動かすロールタイプや、印刷対象を載せた架台ごと動かすフラットベットタイプが使用できる。
また使用するインクは、溶剤系、水系、UV系等のインクを用いることができ、生産性の観点からはUVインクが好ましく、印刷の耐久性の観点からは溶剤系が好ましい。
インク色は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト、グレー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエローの他、透光色等適宜選定することができる。
印刷する柄、色、解像度は特に制限することはなく、自由な柄、色を印刷することができる。
【0015】
本発明にて述べる透明性樹脂とは、硬化後に透明性(無色透明、着色透明、半透明を含み、インク層を見ることができるという意味)を有するものであれば特に制限されるものではなく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
また、透明性樹脂塗料には、他特性付与のために揺変剤、湿潤・分散剤、表面調整剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、模様剤などを必要に応じて使用することができる。
透明性樹脂の塗布方法は特に制限するものではなく、刷毛塗り、静電塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等で行うことができる。塗布する膜厚は、5μm以上が好ましい。加飾パネルを特に光沢に優れ、深み感のある意匠にするには20μm以上の膜厚にすることが好ましい。但し膜厚を150μm以上にすると、膜厚の増加に対し深み感がそれほど変化しなくなり、製造コストを考えると150μm以下の膜厚とすることが好ましい。
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれを限定するものでない。
幅1000mm、長さ2000mm、厚さ0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼鈑に、ポリエステル系白色フィルムを厚み60μmとして積層し、これを基材とした。
次に、図4に示すように、この基材1の四隅を、タレットパンチプレスで切り欠き加工した。
更に、その基材1の四辺をブレーキプレスで折り曲げ加工し高さ20mmのフランジを有するパネルを作成した。
そのパネルに富士山の柄をシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のUVインクを用いたインクジェットプリンタで印刷し、その後、無色透明なアクリルウレタン塗料をスプレー塗装して塗料を硬化させ、加飾パネルを得た。
【実施例2】
【0017】
幅500mm、長さ1000mm、厚さ0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼鈑に、ポリエステル系白色フィルムを厚み60μmとして積層し、これを基材とした。
次に、この基材の四隅をタレットパンチプレスで切り欠き加工し、後に、その基材の四辺をブレーキプレスで折り曲げ加工し高さ20mmのフランジを有するパネルを2枚作成した。
その2枚のパネルを並べ、幅920mm、長さ960mmの領域に、富士山の柄をシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のUVインクを用いたインクジェットプリンタで印刷し、その後、無色透明なアクリルウレタン塗料を各々のパネルにスプレー塗装し、塗料を硬化させ、その継ぎ目に柄のずれの無い加飾パネルを得た。
【実施例3】
【0018】
幅500mm、長さ1000mm、厚さ0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼鈑に、ポリエステル系白色フィルムを厚み60μmとして積層し、これを基材とした。
次に、この基材の四隅をタレットパンチプレスで切り欠き加工し、後に、その基材の四辺を、図5に示すように、ブレーキプレスで180度折り曲げ加工し、幅5mmの折り返しを有するパネルを2枚作成した。
この2枚のパネルを並べ幅980mm、長さ990mmの領域に、富士山の柄をシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の溶剤インクを用いたインクジェットプリンタで印刷した。
インクを乾燥させるために、80度に温度調整した乾燥炉に30分投入した。
最後に、無色透明なアクリルウレタン塗料を各々のパネルにスプレー塗装し、塗料を硬化させ、継ぎ目に柄ずれの無い加飾パネルを得た。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来例を示す、加飾パネルの部分拡大断面図である。
【図2】曲げ機械設備の概略側面図である。
【図3】本発明にて述べる角度を示す基材の側面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す、切欠後の基材平面図である。
【図5】本発明の1実施例を示す、180度の折り返しを有する加飾パネルの端部断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…基材、2…塗膜、3…クラック、4…ボールキャスタ、5…ブレーキプレス、6…原点、7…加工前位置、8…加工後位置、9…角度。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなる加飾パネルの製造方法。
(a)基材周囲を折り曲げる工程
(b)基材に印刷を施し絵柄を付す工程
(c)基材上面に透明性樹脂層を形成する工程
【請求項2】
請求項1において、(a)に示す折り曲げが、折り曲げ角度70度〜180度の加飾パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、(b)に示す印刷が、インクジェット印刷である加飾パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、(c)に示す透明性樹脂層が、5μm以上の厚みを有する加飾パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、(c)に示す透明性樹脂層が、20μm以上の厚みを有する加飾パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の製法方法により製造された加飾パネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245467(P2007−245467A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70724(P2006−70724)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】