説明

効率を改善した皺付きダイアフラムを備えたダイアフラムポンプ

本発明は、少なくとも1つの電磁アクチュエータの作用を受けて2つの端板(1)の間を波状に動くように形成された皺付きダイアフラム(2)を備えたダイアフラムポンプであって、ポンプの入口から出口まで流体を移送するポンプに関する。該ポンプは、ダイアフラム支持部と必要なアクチュエータの可動部分(12)とを接続するアダプタ手段(6;20;30)を具備しており、アクチュエータの可動質量部の移動を短縮し、この移動が膜体支持部(3)の移動よりも短くなりうるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率を改善した波状ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
波状ダイアフラムポンプは、例えば特許文献1によって公知である。同文献において、ダイアフラムは、少なくとも1つの線形電磁アクチュエータからの駆動力を受けて2つの端板の間を波状に動くように取り付けられていて、ダイアフラムとこれら端板との間においてポンプの入口から出口まで流体を移送するようになっている。
【0003】
ダイアフラムは、硬質のダイアフラム支持部に固定されている。アクチュエータの可動部分は、一般にダイアフラム支持部に直接連結されていて、ダイアフラムの外縁部を横方向に振動させるので、ダイアフラムにおいてその平面に直交する方向に波状の動きを生じさせるようになっている。この波状の動きは、流体をポンプの入口から出口に向かって推進する効果を有している。
【0004】
アクチュエータ(1つまたは複数)として、可動式磁石タイプまたは実に磁気抵抗タイプのものを選定するのが有利である。しかしながら、このタイプのアクチュエータによって運動されるよう設定された質量体は、例えば磁石、磁石支持部、ダイアフラム支持部に接続される部品および懸架スプリングを具備しているために、比較的大型である。かかるポンプにおいて、アクチュエータの可動部分の質量体は、波状に動くダイアフラムと流体との間のカップリング、ダイアフラム動作の有効性、ポンプ揚程の効率に影響を与えるのみならず、アクチュエータの潜在的な作動周波数を制限することもあり、問題となりうる騒音および振動につながる。
可動質量体用に懸架スプリングを関連付けてもこれらの作業上の問題は解決されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2744769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、効率を改善し、かつ前述した欠点を呈しない波状ダイアフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、少なくとも1つの電磁アクチュエータからの駆動力を受けて2つの端板の間を波状に動くように支持部に取り付けられた波状ダイアフラムを備えたポンプであって、ポンプの入口と出口との間において流体を移送するポンプが提供される。本発明にしたがって、ポンプは、ダイアフラム支持部をアクチュエータの可動部分に接続するアダプタ手段を具備しており、アクチュエータの可動質量体の行程が短縮されていて、その行程がダイアフラム支持部の行程よりも短くなっている。
【0008】
アクチュエータの可動部分の行程をこのように短縮することは、波状ダイアフラムと流体との間のカップリングを改善するとともに、その反作用力を最適化することによってダイアフラム運動の有効性を改善し、以て推進の効率を改善する役割を果たす。このアクチュエータにおいて、作動周波数の増大が可能になり、摩擦損失および粘性損失に関連する機械的損失が減少する。当然ながら、行程を短縮することは、アクチュエータによって生成される、ポンプが受ける振動を低減させるのに寄与する。また、この短縮により、力/質量の比を増大させることも可能になり、それにより質量体の運動に関連する運動上の損失を低減させることが可能になり、以てポンプの全体の効率が増大するようになる。これらの改善は、ポンプ揚程のより良好な効率およびより小型化されたアクチュエータにつながる。
【0009】
本発明の特定の実施形態において、アダプタ手段は、ダイアフラム支持部にヒンジ留めされた一端と、非可動点にヒンジ留めされた他端とを備えた少なくとも1つのレバーを具備しており、アクチュエータの可動部分は、その行程がダイアフラム支持部の行程よりも短くなるようにしてレバーに連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の原理を実施するポンプの一実施形態の断面図である。
【図2】本発明の第2の原理を実施するポンプの第1の実施形態の断面図である。
【図2Bis】本発明の第2の原理を実施するポンプの第2の実施形態の断面図である。
【図3】本発明の第3の原理を実施するポンプの断面図である。
【図4】本発明の第4の原理を実施するポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、添付図面に照らしてより良く理解されうる。
図1を参照して、本発明の原理の第1の実施品によれば、図示されたポンプは、2つの略ディスク形状の端板1と、これら端板1の間に延在する、同様にディスク形状の波状ダイアフラム2とを備えている。ダイアフラムは、その外縁部を介して剛体のダイアフラム支持部3に固定されている。ダイアフラム支持部3には振動が与えられて、ダイアフラム2を波状に動かすとともに、液体をポンプの入口4から出口5に向かって強制的に流すようになっている。ダイアフラム2の支持部3の振動は、後述するように、電気機械アクチュエータ10によって発生される。
【0012】
ポンプはアダプタ手段、この実施例において具体的には2つのレバー6を備えていて、これらレバー6の各々は、第1に非可動点7に、第2にダイアフラム支持部3にそれぞれヒンジ留めされている。アクチュエータ10は、2つの可動部分11を有しており、この実施例において、これら可動部分11はそれぞれ、非可動点と例示のために端板に固定された部分とに連結されたスプリング13に関連付けられた可動質量体12によってモデル化されている。スプリング13は、可動質量体とスプリングとによって形成された組立体がポンプの作動周波数に近い共振周波数を有するような剛性を有している。この実施例において、可動質量体12は、レバー6の2つの端部の間に配置された箇所14においてレバー6に連結されている。関連付けられた非可動コイル15による可動質量体12の電磁的励起によって、可動質量体12をダイアフラム2の平均平面に直交する方向Zに沿って振動させるので、ダイアフラム支持部3を振動させ、したがって、端板1の間のダイアフラム2において波状の動きを生じさせる。この波状の動きは進行波の伝播に起因するもので、ダイアフラムがこの進行波のための媒体を構成している。この実施例における可動質量体12は、永久磁石を担持している。
【0013】
図1において、Lはレバーの長さ(ダイアフラムの平均平面に対して平行な方向に測定されたもの)であり、dは、Lに対して平行な方向に測定されたレバー6の非可動端部とレバーがアクチュエータ10の可動質量体12に連結された箇所との間の距離である。この実施例において、距離dは距離Lよりも小さいこと、すなわちアクチュエータ10の行程がダイアフラム支持部3の移動よりも小さいことが分かる。これは、行程が比d/Lに応じて前記移動に比例するためである。さらに、ポンプは、ダイアフラム支持部の慣性質量Mがd.m/Lの分だけ増大されるかのような挙動を示す。ここで、mは可動質量体12の質量である。したがって、ここで付加される慣性質量は、アクチュエータがダイアフラム支持部に直接連結された従来技術のポンプにおいて付加された慣性質量よりも小さくなっている。なお、従来技術のポンプにおいて付加される慣性質量はmに等しい。これらのことは、ダイアフラムの有効性を改善し、作動周波数の増大を可能にし、ポンプの振動を低減させるのに寄与する。
【0014】
前述した本発明の原理にしたがって、図2は、この原理の実用的な実施品の例を示す。この実施例において、ダイアフラム支持部3は、直径方向において相対する2箇所で作動される。この実施例において、2つのレバー6’は、切断されて折返し成形された単一の金属シート20により構成されている。
【0015】
より正確には、金属シート20は、リターンスプリングを構成する可撓性を有したU字形状に成形されるとともにポンプ本体に固定された中央部分21を有している。金属シート20は、より大きな曲げ剛性をアームに付与するように折り返された縁部22を有する2つのレバーを形成するアーム6’によって延出されている。これらのアームは、ダイアフラム支持部に接続するための接続部23において終端している。各アームは、その概ね中間の箇所14においてアクチュエータによって嵌め合わされている。すなわち、単一の部品がレバーとリターンスプリングとの両方を構成している。このスプリング部分の剛性は、可動質量体の質量部分と関連付けられたときに、振動体の共振周波数がポンプにとって所望の作動周波数に近くなるような値に設定されてもよい。
【0016】
本発明に関連して、リターンスプリングと任意に関連付けられた1または2以上の任意に連結されたレバーを用いた多数の変更例が実施されうる。こうすることにより、レバーがポンプ本体にヒンジ留めされた箇所の反対側からアクチュエータをレバーに嵌め合わせることが可能になる。
【0017】
図2Bisに示された本発明の実施形態において、レバーを形成するアーム6’は、コイル15の作用を受ける永久磁石45を担持し、それにより磁石によって重量が付与されたアーム自体がコイルによって励起されるアクチュエータの可動質量体を形成するようになる。磁石45は、ダイアフラム支持部から或る距離をおいて、好ましくはレバーのヒンジ留め箇所とレバーがダイアフラム支持部に連結される箇所との間において、アームによって担持されており、それにより可動部分の行程がダイアフラム支持部の動きよりも実際に小さくなるようになる。このようにして、組立体は特に簡略化されて小型化される。
【0018】
本発明の原理の別の実施品によれば、図3に示されるように、アダプタ手段は、ダイアフラム支持部3とアクチュエータ10の可動質量体12との間に介在する接続スプリングまたは懸架スプリング25を具備している。懸架部25は、ダイアフラム支持部3の所与の行程に対して、アクチュエータの可動質量体12の行程を短縮する役割を果たす。こうすることによって、少なくとも所与の励起周波数範囲において可動質量体12が小さい振幅を伴って振動するアクチュエータが得られ、それにより振動が低減されるようになる。この実施例におけるスプリング13は、湾曲した弾性変形可能なブレードによって構成されている。
【0019】
本発明の別の実施形態において、図4に示されるように、ポンプは、気圧式または液圧式のストロークアクチュエータ30を構成するアダプタ手段を具備している。この実施例において、可動質量体12は環形状をなしており、非可動コイル15からの電磁的駆動力を受けて往復褶動する。ストロークアクチュエータ30は、ダイアフラムAとダイアフラムBとを具備しており、これらダイアフラムA,Bは、気体または液体で適宜満たされたシールされたチャンバ32を形成している。ダイアフラムAは可動質量体12に連結されていて、一方、ダイアフラムBはアーム34を介してダイアフラム支持部3に連結されている。
【0020】
ダイアフラムAは挟持された縁部A1を有し、硬質の底部A2を保有している。底部A2は、可動質量体12に連結されるとともにベローズA3によって縁部A1に連結されたピストンを形成している。ダイアフラムBは、中央スリーブB3に固定された非可動の縁部B1を有しており、中央スリーブB3は、アーム34に連結されるとともにベローズB2を介して縁部B1に接続されている。
【0021】
ダイアフラムAの面積はダイアフラムBの面積よりも大きい。したがって、可動質量体12が所与の行程にわたって移動するとき、可動質量体12は、可動質量体12の行程よりも大きな動きをダイアフラムBのスリーブB3に与える。結果として、可動質量体12は、ダイアフラム支持部3よりも短い距離にわたって移動する。
【0022】
本発明は、前述した記載に限定されず、むしろ請求の範囲によって画定される範囲に含まれるいかなる変形物をも含んでいる。特に、本発明は、本明細書においてディスク形状の波状ダイアフラム付ポンプの適用例において説明されたが、本発明は、環状または直線状の形の波状ダイアフラム付ポンプにも適用されることは明らかである。
【0023】
本発明は、任意のタイプのアクチュエータ、特に、線形アクチュエータ若しくは回転式アクチュエータまたは角運動するアクチュエータなどに適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電磁アクチュエータからの駆動力を受けて2つの端板(1)の間を波状に動くように支持部(3)に取り付けられた波状ダイアフラム(2)を備えたポンプであって、該ポンプの入口と出口との間において流体を移送する、波状ダイアフラムポンプにおいて、該ポンプが、前記ダイアフラム支持部を前記アクチュエータの可動部分(12)に接続するアダプタ手段(6;20;30)を具備しており、前記アクチュエータの可動質量体の行程が短縮されていて、その行程が前記ダイアフラム支持部(3)の行程よりも短くなっていることを特徴とする、波状ダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記アダプタ手段が、第1に前記ダイアフラム支持部に、第2に非可動点にそれぞれヒンジ留めされたレバー(6)を備えており、前記アクチュエータの可動部分が前記レバーの或る箇所に連結されている、請求項1に記載の波状ダイアフラムポンプ。
【請求項3】
シート金属(20)の一部に形成された2つのレバー(6’)を具備し、前記シート金属(20)は、切断されて、アクチュエータの可動部分を懸架するスプリングを形成する中央ブリッジ(21)を有するように成形され、2つのレバーが前記中央ブリッジ(21)から延在する、請求項2に記載の波状ダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記スプリングが剛性を有しており、該剛性は、前記可動質量体と関連付けられた際に前記可動質量体と前記スプリングとによって形成された組立体が、ポンプの作動周波数に近い共振周波数を有するように設定される、請求項3に記載の波状ダイアフラムポンプ。
【請求項5】
前記アクチュエータの可動質量体(45)の支持部を形成する2つのレバー(6’,6’)を具備する、請求項2に記載の波状ダイアフラムポンプ。
【請求項6】
前記アダプタ手段が、前記ダイアフラム支持部と前記アクチュエータの可動部分(12)との間に介在する懸架部(25)を具備する、請求項1に記載の波状ダイアフラムポンプ。
【請求項7】
前記アダプタ手段が、前記ダイアフラム支持部に接続されたアーム(34)を前記アクチュエータの可動部分に連結する気圧式または液圧式のストロークアダプタ(30)を具備し、それにより前記アクチュエータの可動部分が前記アームの行程よりも短い行程を呈する、請求項1に記載の波状ダイアフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図2Bis】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−529548(P2011−529548A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520544(P2011−520544)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000915
【国際公開番号】WO2010/012887
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027312)アーエムエス エールエデー ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (2)
【Fターム(参考)】