説明

動作玩具

【課題】 迅速な動作を行う。
【解決手段】 進退移動を行う移動体13と、移動体の進退移動の駆動手段14と、駆動手段の出力に基づく回転駆動力を移動体の進退移動に沿った直動駆動力に変換して当該移動体に伝える伝達機構20とを備え、伝達機構が、進退移動方向に沿って配設された二つのラック部材21,22と、駆動手段により回転駆動して二つのラック部材に互いに逆方向への直動駆動力を付与する歯車機構30とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に直線方向に沿った進退移動を行わせる動作玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の動作玩具は、人形の腕に見立てた移動体にラック歯を有するラック部材を装備し、前記ラック部材に噛合するピニオン歯車をモータにより回転駆動させることで、移動体である人形の腕を直線方向に沿って進退移動させていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−269572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の動作玩具にあっては、円滑な動作を維持するためのトルクを確保するために、歯車列による減速機構を用いることから進退移動動作の高速化が困難となるという不都合があった。特に、移動体の進退移動方向が上下方向に沿っている場合、下降動作は円滑に行われるが、上昇動作は移動体の荷重により緩慢となるという不都合も生じていた。
本発明は、簡易な構成で移動体の進退移動の高速化を図ることを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の動作玩具は、進退移動を行う移動体と、移動体の進退移動の駆動手段と、駆動手段の出力に基づく回転駆動力を移動体の進退移動に沿った直動駆動力に変換して当該移動体に伝える伝達機構とを備え、伝達機構が、進退移動方向に沿って配設された二つのラック部材と、駆動手段により回転駆動して二つのラック部材に互いに逆方向への直動駆動力を付与する歯車機構とを有することを特徴とする。
上記動作玩具によれば、駆動手段により伝達機構の歯車機構が回転駆動され、当該歯車機構に含まれる歯車により各ラック部材がその長手方向に沿って移動力が付与される。このとき、歯車機構は二つのラック部材をそれぞれ逆方向に移動させる。このため、一方のラック部材の一端部側を固定支持し、他方のラック部材の逆の端部側に移動体を配置することにより、一方のラック部材の固定端部と当該移動体とが、相対的には、ラック部材一つ一つの移動速度よりも早い移動速度(一方のラックの移動速度+他方のラックの移動速度)で移動することとなる。
【0005】
請求項2記載の動作玩具は、請求項1記載の動作玩具において、立設させた状態で一方のラック部材の下端部を支持する基台と、歯車機構及び駆動手段を格納すると共に立設支持されたラック部材に対して昇降動作を行うギアボックスとを備え、移動体を他方のラック部材の上端部に配置したことを特徴とする。
上記動作玩具によれば、駆動手段の駆動により、基台に支持されたラックに対してギアボックスが上昇移動すると、他方のラック部材はギアボックスに対して上昇移動を行う。また、駆動手段の駆動により、基台に支持されたラックに対してギアボックスが下降移動すると、他方のラック部材はギアボックスに対して下降移動を行う。
従って、他方のラック部材の上端部に位置する移動体は、迅速に上昇移動及び下降移動が行われることとなる。
【0006】
請求項3記載の動作玩具は、請求項2記載の動作玩具において、移動体の下降移動に伴って畜勢され、移動体の上昇移動に伴って上方への移動力を付与する補助出力手段を備えることを特徴とする。
上記動作玩具では、移動体の下降移動においては、駆動手段の出力と共に、当該駆動手段、歯車機構、ギアボックス、他方のラック部材及び移動体が受ける重力により下降移動を行う。従って、駆動手段の出力と各構成に付与される重力を利用して、補助出力手段の畜勢を行う。
一方、移動体の上昇移動に際しては、駆動手段の出力と下降時に畜勢された補助出力手段のアシストとにより、駆動手段、歯車機構、ギアボックス、他方のラック部材及び移動体が上方に移動することとなる。
従って、重力に抗して行われる移動体の上方移動動作をも円滑に行われる。
【0007】
請求項4記載の動作玩具は、大きさの異なる複数の筒状体からなる入れ子構造により伸縮可能なケース体を備え、当該ケース体の一端部に移動体を配置すると共に駆動手段と伝達機構とをケース体の内側に収納したことを特徴とする。
上記動作玩具では、駆動手段の駆動により伝達機構を介して移動体が進退動作を行うと、これに伴いケース体が伸縮動作を行う。
【0008】
請求項5記載の動作玩具は、移動体を人形の頭部とし、当該人形の頭部に連なる胴体部を構成するカバーにより駆動手段及び伝達機構を覆ったことを特徴とする。
上記動作玩具では、人形頭部が上方へ移動することにより、胴体としてのカバーも上方に移動し、人形全体が立ち上がる動作或いは跳ね上がる動作を模した動きを行う。また、人形頭部が下方へ移動することにより、胴体としてのカバーも下方に移動し、人形全体が座り込む動作或いは伏せる動作を模した動きを行う。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、歯車機構が二つのラック部材をそれぞれ逆方向に移動させるため、一方のラック部材の一端部と他方のラック部材の逆側の端部とが相対的に、各ラック部材の移動速度の合計移動速度で移動することとなる。従って、一方のラック部材の一端部側を固定支持すると共に、他方のラック部材の逆側の端部に移動体を配置することにより、一つのラック部材で移動体を移動させる場合と比して、移動体をより迅速に移動させることが可能となる。
また、二つのラック部材を備える構成のため、ラック部材二つ分のストロークを確保して進退移動量の増大を図ることが可能となる。また、一つのラック部材で同じストロークの進退移動を行う場合には当該ストロークを同じ長のラック部材が必要となるが、本発明は、各ラック部材をおよそ二分の一まで縮小することが可能であることから、玩具の小型化を図ることが可能となる。
そして、動作玩具において、所定部位である移動体を機敏に動作させることができ、さらには動作ストロークを大きくして大きなアクションを行わせることができるので、緩慢な或いは小さな動作を行う場合に比して、遊技者に対して、スリリングで適度な緊張感を与えることができ、従来にない興趣性の喚起を図ることが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、基台により各ラック部材を上下方向に沿った状態を維持すると共に、ギアボックスが一方のラック部材に対して移動し、ギアボックスに対して他方のラック部材が移動するため、他方のラック部材の上端部に位置する移動体を迅速に上下動させることが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、移動体の下降移動時において畜勢される補助出力手段を、移動体の上方移動時に出力させて、駆動手段のアシストを行うため、移動体の上方移動をより円滑且つ迅速に行うことが可能となる。これに伴い、遊技者に対して、さらなる興趣性の喚起を図ることが可能となる。
また、下降時に重力をも借りて畜勢し、上昇時にアシストを図ることから、駆動手段の負担を軽減することでその消費燃料や消費電力を大幅に低減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、丈夫な筒状体からなるケース体で、可動部分である駆動手段と伝達機構が覆われるので、駆動部分に対する外部からの接触等を防止することが可能となる。また、可動部分である駆動手段及び伝達機構の外部からの保護を図ることができ、動作不良等の抑制を図ることが可能となる。
また、移動体の進退移動に伴い、入れ子構造の複数筒状体の伸縮動作を同時に行わせることができることから、見た目にも動作が面白く、さらなる興趣性の喚起を図ることが可能となる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、移動体を人形頭部とし、これに連なる胴体としてのカバーを設けたことにより、人形頭部の上下移動によって、人形が飛び跳ね、立ち上がったり、或いは座り込み、しゃがんだりする動作を演じさせることができ、観察者を楽しませることができ、さらなる興趣性の喚起を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の実施形態の全体構成)
図1,2は本発明の実施形態たる動作玩具としての可動人形玩具10の一部を切り欠いた正面図であり、図1は立ち上がり後の状態、図2は立ち上がり前の状態を示す。
図1,2に示すように、可動人形玩具10は、開閉可能な上蓋11を備えた格納箱12と、上下に移動を行う移動体としての人形頭部13と、人形頭部13の上下移動のための駆動手段としての駆動モータ14(図4参照)と、駆動モータ14の出力に基づく回転駆動力を人形頭部13の進退移動に沿った直動駆動力に変換して当該人形頭部13に伝える伝達機構20と、駆動モータ14及び伝達機構20を内側に収納した上下に伸縮可能なケース体50と、人形頭部13に連なる胴体部を構成する被覆部材15とを備えている。
なお、本実施形態の記載において、「上」又は「下」を意味する語が使われた場合には、収納箱12がその開口部を上に向けた状態で水平面上に設置された場合において、上又は下となる状態を意味するものとする。
【0015】
(収納箱)
収納箱12は、上方が開口した有底の筒状体であり、その内側に、上述した可動人形玩具10のほぼ全ての構成を収納することができる。収納箱12の上端部には、その開口端縁に図示しないヒンジを介して上蓋11が装備されている。かかる上蓋11は、略円板状であり、丁度収納箱12の開口部を閉塞することが可能な大きさに設定されている。また、上蓋11は、上方への外力が加わると、ヒンジを中心に回動して容易に開くことが可能となっている。
【0016】
(ケース体)
ケース体50は、後述する基台23を介して収納箱12の内底面上に立設されている。かかるケース体50は、入れ子構造を形成する四つの筒状体51〜54から構成されている。各筒状体51〜54はいずれも円筒形であり、その中心線が垂直上下方向を向くように収納箱12内に配置されている。
筒状体51は、その周壁の内径及び外径が最も大きく設定されており、その下端部は基台23の上面に固定支持されている。また、筒状体51はその周壁の内径及び外径が上下に渡って一定であり、その上端部には、周壁よりも幾分小径となるように内側に張り出された鍔状のストッパ51aが形成されている。
【0017】
筒状体52は、筒状体51のすぐ内側に配設されている。そして、筒状体52は、その周壁の内径及び外径がいずれも上下に渡って一定であり且つ筒状体51に次いで二番目に大きく設定されている。
筒状体52の周壁の外径は、前述した筒状体51のストッパ51aの内径よりも小さく設定されている。そして、筒状体52の周壁の上端部には、当該周壁よりも幾分小径となるように内側に張り出された鍔状のストッパ52aが形成され、また、下端部には外側に張り出された鍔状の係合部52bが形成されている。かかる係合部52bはその外径の大きさが、筒状体51の周壁の内径よりも小さく、ストッパ51aの内径よりも大きく設定されている。従って、筒状体52を筒状体51の内側に格納した状態から、筒状体52だけを上方に移動させると、筒状体51から完全に脱する手前で係合部52bがストッパ51aに引っかかった状態となる。つまり、筒状体52は筒状体51の内部に格納された状態から外部上方に向かって移動可能であると共に、ストッパ51aと係合部52bとにより、筒状体52が筒状体51から完全に飛び出してしまうことを防止している。
【0018】
筒状体53は、筒状体52のすぐ内側に配設されている。そして、筒状体53は、その周壁の内径及び外径がいずれも上下に渡って一定であり且つ筒状体52に次いで三番目に大きく設定されている。
また、筒状体53には、筒状体52と同構造のストッパ53aと係合部53bとが形成されている。このため、筒状体53は筒状体52の内部に格納された状態から外部上方に向かって移動可能であると共に、ストッパ52aと係合部53bとにより、筒状体53が筒状体52から完全に飛び出してしまうことを防止している。
【0019】
筒状体54は、筒状体53のすぐ内側に配設されている。そして、筒状体54は、その周壁の内径及び外径がいずれも上下に渡って一定であり且つ最も小さく設定されている。
また、筒状体54は、下側のみが開口し、その上面が閉塞されている。また、筒状体54は、筒状体53と同構造の係合部54bが形成されている。このため、筒状体54は筒状体53の内部に格納された状態から外部上方に向かって移動可能であると共に、ストッパ53aと係合部54bとにより、筒状体54が筒状体53から完全に飛び出してしまうことを防止している。
【0020】
上記筒状体51〜54の中で、筒状体54が最も背が高く設定されており、他の筒状体51〜53についてはほぼ同様の高さに設定されている。そして、ケース体50は、各筒状体51〜54からなる入れ子構造のため、収縮時には筒状体54の高さ近くまで低くすることができ、伸長時には各筒状体51〜54の合計高さ近くまで高くすることができる。
【0021】
(人形頭部及び被覆部材)
人形頭部13は略球状であり、その外部正面には、TV番組や漫画等の登場人物を模した顔が描かれている。そして、人形頭部13は、ケース体50の筒状体54の上面に装備されている。また、収縮時のケース体50と人形頭部13の合計高さは、収納箱12よりも低く設定され、収縮時には収納箱12の上蓋11を閉じることが可能となっている(図2参照)。
被覆部材15は、伸長時のケース体50の外部を覆うことができる布地又はシート体であり、人形頭部13の下部から下方に垂下されている。また、被覆部材15は、布地、繊維、ゴム、膜状体等の変形が容易な素材からなり、ケース体50が収縮状態となっても、容易に変形することでケース体50の収縮を妨げることがないようになっている。
【0022】
(伝達機構)
図3は伝達機構20の後述するギアボックス24を垂直面に沿って切断した断面図であり、図4は図3のX−X線に沿った断面図であり、図5は図3のY−Y線に沿った断面図であり、図6は図3のZ−Z線に沿った断面図である。
伝達機構20は、図1乃至図3に示すように、上下方向に沿って配設された二つのラック部材21,22と、駆動モータ14により回転駆動して二つのラック部材21,22に互いに逆方向への直動駆動力を付与する歯車機構30と、下側ラック部材21を立設させた状態でその下端部を支持する基台23と、歯車機構30及び駆動モータ14を格納するギアボックス24と、人形頭部13の上方への移動力を付与する駆動モータ14に対する補助出力手段としてのアシスト機構40とを備えている。
【0023】
駆動モータ14は、図3及び図4に示すように、ギアボックス24の背面側内部(図1に示す面をギアボックス24の正面とする)に配置され、減速ギア機構60が併設されている。
減速ギア機構60は、駆動モータ14の出力軸に設けられた出力ギア61と、出力ギア61と噛合する出力ギア61よりも歯数が多い減速ギア62と、減速ギア62と同軸で同時回転するウォームギア63と、ウォームギア63に噛合するウォームホィール64と、ウォームホィール64と同軸で同時回転する出力ギア65とを備えている。
そして、減速ギア機構60は、上記各ギアにより駆動モータ14からの出力を低速高トルクに変換して歯車機構30に伝達している。
【0024】
ギアボックス24は、図3に示すように、同図の横方向(以下、前後方向といい、図3における右側を前側、左側を後側とする)に沿って三つの部屋に分かれており、後側の部屋に駆動モータ14及び減速ギア機構60が格納され、前側の部屋に歯車機構30が格納され、真ん中の部屋には歯車機構30の一部と各ラック部材21,22とが格納されている。
【0025】
歯車機構30は、図6に示すように、下側ラック部材21に上下移動力を付与する第一の駆動歯車31と、上側ラック部材22に上下移動力を付与する第二の駆動歯車32と、第一の駆動歯車31から第二の駆動歯車32までの間でトルク伝達を行う三つの伝達歯車33,34,35とを備えている。
【0026】
第一の駆動歯車31は、図3,5,6に示すように、ギアボックス24の下部の内側において前側の部屋と真ん中の部屋に貫通配置されており、やはりギアボックス24の後側の部屋から真ん中の部屋に貫通配置された減速ギア機構60の出力ギア65と噛合している。また同時に、第一の駆動歯車31は、真ん中の部屋の両側の内部側壁において、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で且つ上下方向に沿って往動可能な状態で支持された下側ラック部材21のラック歯とも噛合している。
さらに、第一の駆動歯車31は、前側の部屋において、伝達歯車33とも噛合している。
これらの状態で配置されることにより、第一の駆動歯車31は、出力ギア65からトルクを伝達されて回転駆動を行い、下側ラック部材21をギアボックス24に対して上昇又は下降移動させると共に、伝達歯車33にトルク伝達を行う。
【0027】
伝達歯車33,34,35は、上下に並んで配置され、中間に配置された伝達歯車34を除き上下の伝達歯車33,35はピッチ径及び歯数が等しく設定されている。このため、二つの伝達歯車33,35は等速で同方向に回転し、第一の駆動歯車31と同じ回転方向に同じ回転速度で第二の駆動歯車32に回転駆動力を伝達することとなる。
【0028】
第二の駆動歯車32はギアボックス24の上部の内側において前側の部屋と真ん中の部屋に貫通配置されている。そして、第二の駆動歯車32は、前側の部屋において、伝達歯車33と噛合しており、真ん中の部屋の両側の内部側壁において、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で且つ上下方向に沿って往動可能な状態で支持された上側ラック部材22のラック歯と噛合している。
これらの状態で配置されることにより、第二の駆動歯車32は、伝達歯車35からトルクを伝達されて回転駆動を行い、上側ラック部材22をギアボックス24に対して上昇又は下降移動させる。
【0029】
下側ラック部材21は、ギアボックス24の内部の両側側壁にそれぞれ設けられた上下方向に沿ったガイド溝24aに嵌合する突状部21aを備え、ギアボックス24に対して上下動を行うことが可能となっている。特に、下側ラック部材21は、ギアボックス24の下面に設けられた開口から出没する構造のため、ギアボックス24内にほぼ全体が格納された状態をギアボックス24に対する最上位置とし、それよりも下方が下側ラック部材21の移動範囲となっている。
【0030】
上側ラック部材22は、ギアボックス24の内部の両側側壁にそれぞれ設けられた上下方向に沿ったガイド溝24bに嵌合する突状部22aを備え、ギアボックス24に対して上下動を行うことが可能となっている。特に、上側ラック部材22は、ギアボックス24の上面に設けられた開口から出没する構造のため、ギアボックス24内にほぼ全体が格納された状態をギアボックス24に対する最下位置とし、それよりも上方が上側ラック部材22の移動範囲となっている。
また、図5に示すように、同速同方向に回転駆動する第一の駆動歯車31と第二の駆動歯車32とのそれぞれに対して下側ラック部材21は右側から噛合し、上側ラック部材22は左側から噛合するように配置されているため、常に、下側ラック部材21と上側ラック部材22とは互いに上下逆方向に移動を行う。
【0031】
また、下側ラック部材21は、垂直に起立した状態となるように、その下端部において基台23の上面に支持されている。そして、上側ラック部材22は、その上端部が筒状体54を介して人形頭部13に連結されている。
従って、駆動モータ14の駆動により、ギアボックス24に対して下側ラック部材21が下方に移動すると、相対的に基台23からギアボックス24が上方に移動することとなる。またこのとき、上側ラック部材22は筒状体54を介して人形頭部13を上方に押し上げることとなる。その結果、下側ラック部材21の移動速度と上側ラック部材22の移動速度の合計速度で基台23に対して人形頭部13が上方に移動することとなる。
【0032】
図7は、下側ラック部材21のラック歯形成面とは逆側の面を表示した説明図である。この図に示すように、下側ラック部材21のラック歯形成面とは逆側の面には、導電材被膜からなる摺動接点C1〜C6が形成されている。摺動接点C1,C2は、上下方向に沿って下側ラック部材21のほぼ全長に渡って形成されており、基台23側に設けられた図示しない電源回路からギアボックス24に設けられた接触端子25,26を介して駆動モータ14への通電を行っている。
また、摺動接点C3〜C6は、下側ラック部材21に対するギアボックス24の相対位置を検出するためのものである。つまり、摺動接点C3は、上下方向に沿って下側ラック部材21のほぼ全長に渡って形成されており、基台23を介してグランド接続されている。一方、各摺動接点C4〜C6は上下に沿った同一線上に点在している。そして、これらの摺動接点C3〜C6を基台23側に設けられた図示しない検出回路に接続された二又の接触端子27により検出する。
【0033】
即ち、接続端子27の一方の足を常時グランドの摺動接点C3に接触させると共に他方の足を摺動接点C4,C5,C6の通過線上に配置する。これにより、下側ラック部材21に対してギアボックス24が最上位置に到達すると、摺動接点C4から接続端子27を介して摺動接点C3へ電流が流れ、ギアボックス24が最上位置にあることが検出される。同様に、ギアボックス24が中間位置に到達すると、摺動接点C5から接続端子27を介して摺動接点C3へ電流が流れて中間位置状態が検出され、ギアボックス24が最下位置に到達すると、摺動接点C6から接続端子27を介して摺動接点C3へ電流が流れて最下位置状態が検出される。
【0034】
例えば、摺動接点C4又はC6によりギアボックス24が最上位置或いは最下位置にある状態が検出された場合には、検出回路は駆動モータ14を停止させる制御を行うことにより、下側ラック部材21の第一の駆動歯車31との噛合状態からの不慮の脱落や各部の衝突等を防止することができる。
また、摺動接点C5によりギアボックス24が中間位置にある状態が検出された場合には、検出回路は、例えば、人形頭部13の上昇又は下降動作に伴い、予め設けられたアクチュエータにより人形に所定の動作を行わせる、人形頭部13に設けられたアクチュエータで人形の目玉を動かす、可動人形玩具10に装備したスピーカーにより音声を出力する、ランプを点灯する等、人形頭部13の上下動に伴いそれ以外の動作を行わせることができる。
【0035】
図8はアシスト機構40の分解斜視図である。かかるアシスト機構40は、歯車機構30の伝達歯車34に一端部が連結されたねじりコイルバネ41と、ねじりコイルバネ41の他端部が連結されると共に回転操作によりねじりコイルバネ41の巻き量を調節する調節つまみ42と、調節つまみ42の回転方向を一方向のみに規制するつまみ取付凹部43とを備えている。
【0036】
上記調整つまみ42は、伝達歯車34と共通する支軸44を中心に回転可能である。但し、伝達歯車34と調整つまみ42とは同心となる配置ではあるが、連動はしていない。そして、調節つまみ42には、その外周に弾性を有する三つの係止爪42aが半径方向外側に向かって幾分突出した状態で設けられている。正確には、各係止爪42aは、調整つまみ42の外周に沿った状態から当該外周の接線方向に沿って斜め方向に張り出しており、弾性に抗して半径方向内側に押し込むことが可能となっている。
一方、つまみ取付凹部43は、ギアボックス24の正面に形成された、調整つまみ42の外径よりも幾分大きな内径の略円形の窪みであり、その内周面には、例えば10〜30個ほどの鋸歯状の逆止爪43aが均一間隔で形成されている。
【0037】
つまみ取付凹部43に調整つまみ42を嵌め込んだ状態で各係止爪42aは各逆止爪43aに係合し、調整つまみ42を一定方向(例えば図8において反時計回り)に回転させた場合には、各係止爪42aが内側に撓むことでその回転を許容するが、逆方向(図8において時計回り)に回転させた場合には、各係止爪42aが各逆止爪43aの間に入り込んで撓むことができず、回転を阻止するようになっている。
【0038】
ねじりコイルバネ41は、その巻き方向に沿ってねじると、畜勢されてねじり方向と逆の方向の復帰力を生じる。そして、その一端部が伝達歯車43に連結され、他端部が調整つまみ42に連結されている。
そして、この調整つまみ42は、一定の方向にのみ回転可能となるように許容されており、その許容回転方向は、上側ラック部材22が上方移動を行う際に伝達歯車43に生じる回転方向と一致するように、係止爪42aと逆止爪43aの向きが設定されている。
【0039】
これにより、ねじりコイルバネ41が畜勢されていない自然状態において、人形頭部13が上昇動作を開始する場合には、人形頭部13の上昇移動時に伝達歯車43に伴って調整つまみ42も回転し、ねじりコイルバネ41は畜勢されない。
次に、人形頭部13が下降移動すると、伝達歯車43のみが回転して調整つまみ42は回転が規制されるので、ねじりコイルバネ41がねじられて畜勢される。再び、人形頭部13の上昇移動時には、駆動モータ14の駆動力に畜勢されたねじりコイルバネ41の弾性力が上乗せされて、伝達歯車34の回転を促し、円滑且つ迅速に人形頭部13を上昇させることができる。
また、調整つまみ42は、予めその回転可能方向に回転操作を加えることでねじりコイルバネ41の畜勢を図ることができ、これにより、人形頭部13の上昇時のアシスト力を増加調整することができる。
【0040】
(可動人形玩具の動作説明)
上記構成からなる可動人形玩具10の動作を主に図1及び図2に基づいて説明する。かかる可動人形玩具10の初期状態を人形頭部13が最下位置にある状態(図2の状態)とする。例えば、電源回路に設けられた立ち上がりスイッチを入れると、駆動モータ14が所定回転方向に駆動を開始し、減速ギア機構60で減速高トルク状態に変換され、歯車機構30の第一及び第二の駆動歯車31,32がそれぞれ同速同方向に回転駆動する。これにより、下側ラック部材21がギアボックス24に対して下に移動することで相対的にギアボックス24が基台23から上方に移動する。また、同時に上側ラック部材22が上方に移動することで人形頭部13がギアボックス24に対して上方に移動する。つまり、下側ラック部材21と上側ラック部材22の合計移動速度で人形頭部13を上方に移動させることができる。
このとき、予め、調整つまみ42によりねじりコイルバネ41の畜勢を行っておくことにより、歯車機構30の伝達歯車34を介してねじりコイルバネ41の弾性力を人形頭部13の上昇移動駆動力に上乗せすることができ、人形頭部13の上方移動は円滑且つより迅速に行われる。
また、人形頭部13の移動過程において、摺動接点C5が接触端子27により検出されると、検出回路は、人形頭部13の上方移動時に同時に起動させるアクチュエータ等が存在する場合に、その起動開始制御を実行する。
そして、人形頭部13の移動過程において、摺動接点C4が接触端子27により検出されると、検出回路は電源回路に上端位置検出信号を出力し、電源回路は駆動モータ14の駆動を停止させる。
【0041】
また、電源回路に設けられたしゃがみスイッチを入れると、駆動モータ14が立ち上がりとは逆回転方向に駆動を開始し、減速ギア機構60及び歯車機構30を介して下側ラック部材21がギアボックス24に対して上に移動することで相対的にギアボックス24が基台23に向かって下降する。また、同時に上側ラック部材22が下方に移動することで人形頭部13がギアボックス24に対して下方に移動する。つまり、下側ラック部材21と上側ラック部材22の合計移動速度で人形頭部13を下方に移動させることができる。
また、伝達歯車34の回転によりねじりコイルバネ41が次回の上方移動動作のために畜勢される。なお、厳密には、人形頭部13の下降移動時に、ねじりコイルバネ41の畜勢が駆動モータ14の負担を増加させるが、下降時には、ギアボックス24や人形頭部13等の自重により生じる重力がアシスト力となり、駆動モータ14への負担は実際にはほとんど増加しない。
そして、人形頭部13の移動過程において、摺動接点C6が接触端子27により検出されると、検出回路は電源回路に上端位置検出信号を出力し、電源回路は駆動モータ14の駆動を停止させる。
【0042】
(実施形態の効果)
上記可動人形玩具10では、歯車機構30がギアボックス24に対して下側ラック部材21と上側ラック部材22とをそれぞれ上下逆方向に移動させるため、基台23に対してギアボックス24が上昇する際には、ギアボックス24に対して人形頭部13を上昇させることができ、基台23に対してギアボックス24が下降する際には、ギアボックス24に対して人形頭部13も下降させることができる。従って、人形頭部13は二つのラック部材21,22の合計移動速度で上昇又は下降を行い、その動作の迅速化を図ることが可能となる。
また、伝達機構20は二つのラック部材21,22を備えるため、ラック部材21,22の合計したストロークを確保することができ、人形頭部13に対する上下移動量の増大を図ることが可能となる。また、同じストロークの上下移動を一つのラック部材で行う場合には当該ストロークと同じ長さのラック部材が必要となるが、伝達機構20では、各ラック部材21,22をおよそ二分の一まで縮小することが可能であることから、可動人形玩具10を上下方向について小型化することが可能となる。
また、可動人形玩具10は、人形頭部13に連なる胴体部を構成する被覆部材15を備えることにより、人形が飛び跳ね、立ち上がったり、或いは座り込み、しゃがんだりする動作をより迅速且つ大きな動作で演じさせることができ、緩慢或いは小さな動作を行う場合に異なり、遊技者に対して、スリリングで適度な緊張感を与えることができ、高い興趣性の喚起を図ることが可能となる。
【0043】
また、人形頭部13の下降移動時において畜勢され且つ上昇時に解放されるねじりコイルバネ41を有するアシスト機構40を備えるため、人形に重量による影響を低減し、人形頭部13の上方移動をより円滑且つ迅速に行うことが可能となる。これに伴い、遊技者に対して、さらなる興趣性の喚起を図ることが可能となる。
特に、下降移動時において重力によりねじりコイルバネ41の畜勢を図り上昇時に駆動モータ14のアシストを行うことから、畜勢時における消費電力よりもアシスト時における消費の低減効果の方が大きくなり、駆動モータ14の省電力化を図ることが可能となる。特に、電力供給源として電池を使用している場合には、その長寿命化をも図ることが可能となる。
【0044】
また、丈夫な筒状体からなるケース体50により、可動部分である駆動モータ14と伝達機構20とが覆われるので、駆動部分に対する外部からの接触等を防止することが可能となる。また、可動部分である駆動手段及び伝達機構の外部からの保護を図ることができ、動作不良等の抑制を図ることが可能となる。
【0045】
(その他)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、可動動作人形10に対して上方移動と下方移動の各スイッチを入力することでその動作を行う例を示したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、リミットスイッチ、光センサ、振動センサその他の手段により、上蓋11を開けたことを検出し、これにより、自動的に駆動モータ14を駆動させて可動動作人形10を立ち上がらせる動作制御を行っても良い。また、上蓋を開けるまでもなく、音声センサや振動センサにより、人が近づいたことを検出し、これにより、自動的に駆動モータ14を駆動させて可動動作人形10を立ち上がらせる動作制御を行っても良い。
また、伝達機構30では歯車数を五つとしているが、その数はいくつであっても良い。例えば、歯車数を一つとして、当該歯車を挟むようにその両側にラック部材21,22を配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】発明の実施形態である可動人形玩具の立ち上がり後の状態において、その一部を切り欠いた正面図である。
【図2】可動人形玩具の立ち上がり前の状態において、その一部を切り欠いた正面図である。
【図3】図1に開示された伝達機構のギアボックスを垂直面に沿って切断した断面図である。
【図4】図3のX−X線に沿った断面図である。
【図5】図3のY−Y線に沿った断面図である。
【図6】図3のZ−Z線に沿った断面図である。
【図7】図1に開示した下側ラック部材のラック歯形成面とは逆側の面を表示した説明図である。
【図8】図1に開示したアシスト機構の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 可動人形玩具(動作玩具)
13 人形頭部(移動体)
14 駆動モータ(駆動手段)
15 被覆部材
20 伝達機構
21 下側ラック部材
22 上側ラック部材
23 基台
24 ギアボックス
30 歯車機構
40 アシスト機構(補助出力手段)
50 ケース体
51〜54 筒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進退移動を行う移動体と、
前記移動体の進退移動の駆動手段と、
前記駆動手段の出力に基づく回転駆動力を前記移動体の進退移動に沿った直動駆動力に変換して当該移動体に伝える伝達機構とを備え、
前記伝達機構が、前記進退移動方向に沿って配設された二つのラック部材と、前記駆動手段により回転駆動して前記二つのラック部材に互いに逆方向への直動駆動力を付与する歯車機構とを有することを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
立設させた状態で一方の前記ラック部材の下端部を支持する基台と、
前記歯車機構及び駆動手段を格納すると共に前記立設支持されたラック部材に対して昇降動作を行うギアボックスとを備え、
前記移動体を他方のラック部材の上端部に配置したことを特徴とする動作玩具。
【請求項3】
前記移動体の下降移動に伴って畜勢され、前記移動体の上昇移動に伴って上方への移動力を付与する補助出力手段を備えることを特徴とする請求項2記載の動作玩具。
【請求項4】
大きさの異なる複数の筒状体からなる入れ子構造により伸縮可能なケース体を備え、
当該ケース体の一端部に前記移動体を配置すると共に前記駆動手段と伝達機構とを前記ケース体の内側に収納したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の動作玩具。
【請求項5】
前記移動体を人形の頭部とし、当該人形の頭部に連なる胴体部を構成する被覆部材により前記駆動手段及び伝達機構を覆ったことを特徴とする請求項2記載の動作玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−25981(P2006−25981A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207287(P2004−207287)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003584)株式会社トミー (248)
【Fターム(参考)】