説明

動力システム

【課題】動力回路に加えて、吸収式冷凍機の原理を利用して、エンジン排ガスの排熱等である高温排熱及びエンジン冷却水の排熱等である低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る再生回路を備えた動力システムにおいて、サイクル効率の更なる向上を図る。
【解決手段】再生回路50の希溶液流路19に、減圧部Xとして、希溶液L2の速度エネルギにより吸引部30aに吸引力を発生するエゼクタ30を備え、蒸気タービン2の蒸気流出部12が、当該エゼクタ30の吸引部30aに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高沸点媒体と低沸点媒体とを混合してなる作動流体の溶液を高温排熱により加熱して蒸気を発生する蒸気発生器と、前記蒸気発生器から供給された前記蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンから流出した前記蒸気を冷却して前記溶液に復水させる復水器と、前記復水器から供給された前記溶液を前記蒸気発生器に供給する供給ポンプとを配置してなる動力回路と、
前記復水器との間で循環する前記溶液を低温排熱により加熱して前記溶液から前記低沸点媒体の蒸気を分離する再生器と、前記復水器から前記再生器へ向けて前記溶液が流通する濃溶液流路において前記溶液を昇圧して前記再生器に送出する循環ポンプと、前記再生器から前記復水器へ向けて前記溶液が流通する希溶液流路において前記溶液を減圧して前記復水器に送出する減圧部とを配置してなる再生回路とを備え、
前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気を、前記蒸気タービンに供給される作動流体に合流させるように構成された動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用のエンジンなどから排出される排熱を回収して、発電機等を駆動するための軸動力を得るための動力システムが知られている。
この種の動力システムは、上記蒸気発生器において、エンジン排ガス等の排熱により供給ポンプにより供給された作動流体の溶液を蒸発させて当該作動流体の蒸気を発生し、上記蒸気タービンにおいて、その蒸気により得た軸動力により発電機等を駆動し、上記復水器において、蒸気タービンを駆動した後に流出した蒸気を溶液に復水させるという動力回路を備える。
【0003】
更に、エンジン排ガスとして排出される高温排熱や、エンジン冷却水として排出される低温排熱等の、2種類の排熱から効果的に軸動力を得ることができる動力システムとして、上記作動流体として、アンモニア等の低沸点媒体と水等の高沸点媒体とを混合してなる水−アンモニア系等の非共沸混合媒体を用い、吸収式冷凍機の原理を利用したものが知られている(例えば、特許文献1〜4、非特許文献1を参照。)。
この種の動力システムは、復水器で復水した溶液を、再生器との間で循環させ、当該再生器において、その循環する溶液を低温排熱により加熱して当該溶液から低沸点媒体の蒸気を分離するという再生回路を備え、更に、その再生器で分離した低沸点媒体の蒸気を蒸気タービンに供給される作動流体に合流させるように構成されている。
そして、このような動力システムにおいて、再生器で分離した低沸点媒体の蒸気を蒸気タービンに供給される作動流体に合流させることで、蒸気タービンの軸出力を増加させることができ、これは、再生器に供給した低温排熱の熱エネルギを、蒸気タービンの軸動力に変換して回収し得ることを意味する。
【0004】
また、このように再生回路を備えた動力システムでは、高圧の再生器と低圧の復水器との間で、圧力差を維持しながら溶液を循環させるために、復水器から再生器へ向けて溶液が流通する濃溶液流路には、溶液を昇圧して再生器に送出する循環ポンプが設けられ、再生器から復水器へ向けて溶液が流通する希溶液流路には、溶液を減圧して復水器に送出する減圧部としての減圧弁が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−161115号公報
【特許文献2】特開2001−248409号公報
【特許文献3】特開2005−171891号公報
【非特許文献1】「アンモニアを使用したガスエンジン排熱利用技術の開発」藤本洋、薬師寺新吾、2005年6月28日、機械学会 第10回動力エネルギ技術シンポジウム 講演論文集 OS4−05
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような動力回路を備えた動力システムでは、蒸気タービンの蒸気流入部での圧力に対して、蒸気タービンの蒸気流出部の圧力はできるだけ低いほうが、サイクル効率が高くなることが知られている。
しかしながら、蒸気タービンの蒸気流出部の圧力をできるだけ低くするために、その蒸気流出部側に直接接続された復水器の圧力を過剰に低下させすぎると、復水器における管継手やシール部等を介した外気の侵入により、サイクル効率が低下することが懸念される。
また、復水器の圧力は、作動流体の復水器での温度における飽和圧力に相当するものとなることから、復水器での温度を低下させることで、復水器の圧力を低下させることができる。しかしながら、一般的に復水器の冷熱源としては大気などが利用されているため、復水器の温度を低下させるには限度があった。
【0007】
また、上記動力回路に加えて、吸収式冷凍機の原理を利用して高温排熱及び低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る再生回路を備えた動力システムでは、濃溶液流路に設けられた循環ポンプの動力の一部は、再生器で分離した低沸点媒体の蒸気が蒸気タービンに供給される作動流体に合流され蒸気タービンの軸出力が増加することから、蒸気タービンの軸動力として回収されている。しかしながら、循環ポンプの圧縮動力の残部は、再生器から復水器へ向けて溶液が流通する希溶液流路に設けられ高圧の再生器と低圧の復水器との圧力差を確保するための減圧弁における圧力損失として廃棄されることになり、サイクル効率の低下の原因となる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸収式冷凍機の原理を利用して高温排熱及び低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る動力システムにおいて、サイクル効率の更なる向上を図ることができる技術を実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る動力システムは、高沸点媒体と低沸点媒体とを混合してなる作動流体の溶液を高温排熱により加熱して蒸気を発生する蒸気発生器と、前記蒸気発生器から供給された前記蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンから流出した前記蒸気を冷却して前記溶液に復水させる復水器と、前記復水器から供給された前記溶液を前記蒸気発生器に供給する供給ポンプとを配置してなる動力回路と、
前記復水器との間で循環する前記溶液を低温排熱により加熱して前記溶液から前記低沸点媒体の蒸気を分離する再生器と、前記復水器から前記再生器へ向けて前記溶液が流通する濃溶液流路において前記溶液を昇圧して前記再生器に送出する循環ポンプと、前記再生器から前記復水器へ向けて前記溶液が流通する希溶液流路において前記溶液を減圧して前記復水器に送出する減圧部とを配置してなる再生回路とを備え、
前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気を、前記蒸気タービンに供給される作動流体に合流させるように構成された動力システムであって、その第1特徴構成は、前記希溶液流路に、前記減圧部として、前記溶液の速度エネルギにより吸引部に吸引力を発生するエゼクタを備え、
前記蒸気タービンの蒸気流出部が、当該エゼクタの吸引部に接続されている点にある。
【0010】
上記第1特徴構成によれば、上記再生回路の上記希溶液流路において、再生器から復水器へ向けて溶液が流通することで、当該希溶液流路に上記減圧部として設けられたエゼクタの吸引部に吸引力を発生させることができるので、その吸引部に接続された蒸気タービンの蒸気流出部の圧力が、例えば復水器の圧力と比較して、充分に低下することになる。よって、蒸気タービンの蒸気流入部での圧力に対して、蒸気タービンの蒸気流出部の圧力を充分に低下させることができるので、サイクル効率を向上することができる。即ち、濃溶液流路に設けられた循環ポンプの圧縮動力のうちのエゼクタでの溶液の圧力損失として消費される分のエネルギを、蒸気タービンの軸動力として回収することができる。
したがって、本発明により、吸収式冷凍機の原理を利用して高温排熱及び低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る動力システムにおいて、サイクル効率の更なる向上を図ることができる技術を実現することができる。
【0011】
本発明に係る動力システムの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を、前記供給ポンプから前記蒸気発生器に供給される前記溶液に吸収させるように構成された点にある。
【0012】
上記第2特徴構成によれば、再生器で分離した低沸点媒体の蒸気を蒸気タービンに供給される作動流体に合流させて、再生器に供給した低温排熱の熱エネルギを蒸気タービンの軸動力に変換して回収するにあたり、当該低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を、供給ポンプから蒸気発生器に供給される溶液に吸収させることで、再生器で分離された低沸点媒体の蒸気が比較的低圧であっても、その低圧の蒸気を良好に溶液に吸収させることができる。
更に、蒸気発生器では、低沸点媒体が高濃度で吸収されている溶液が高温排熱により加熱され蒸発するので、当該蒸気発生器における高温排熱の熱回収量を増加させることができ、結果、蒸気タービンに供給される蒸気の流量を増加させて、蒸気タービンの軸出力を増加させることができる。
【0013】
本発明に係る動力システムの第3特徴構成は、上記第1又は上記第2特徴構成に加えて、前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を、前記蒸気タービンの低圧段に供給するように構成された点にある。
【0014】
上記第3特徴構成によれば、再生器で分離した低沸点媒体の蒸気を蒸気タービンに供給される作動流体に合流させて、再生器に供給した低温排熱の熱エネルギを蒸気タービンの軸動力に変換して回収するにあたり、当該低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を蒸気タービンの低圧段に供給することで、再生器で分離された低沸点媒体の蒸気が比較的低圧であっても、その低圧の蒸気を良好に比較的低圧な蒸気タービンの低圧段に供給して、蒸気タービンの軸出力を増加させることができる。
【0015】
本発明に係る動力システムの第4特徴構成は、上記第1乃至上記第3の何れかの特徴構成に加えて、前記高温排熱がエンジンから排出されたエンジン排ガスの排熱であり、前記低温排熱が前記エンジンを冷却するエンジン冷却水の排熱である点にある。
【0016】
上記第4特徴構成によれば、高温排熱としてエンジン排ガスの排熱を用い、低温排熱としてエンジン冷却水の排熱を用いて、当該エンジンの2種類の排熱を効果的に回収しながら、再生回路の希溶液流路に設けられる減圧部を、吸引部に蒸気タービンの蒸気流出部が接続されたエゼクタとすることで、サイクル効率の一層の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示す動力システムは、高温排熱としてのエンジン20から排出されるエンジン排ガスEの排熱を高温排熱とし、エンジン20を冷却するエンジン冷却水JWの排熱を低温排熱として、これらエンジン排ガスEとエンジン冷却水JWとから効率良く排熱回収して、蒸気タービン2により発電機35を駆動するための軸動力を出力するサイクルを利用するように構成されている。
【0018】
そして、この動力システムは、排ガス路21を通じてエンジン20から供給されたエンジン排ガスEとの熱交換により作動流体の溶液Lを加熱して作動流体の蒸気Sを発生する蒸気発生器1、蒸気発生器1から蒸気流入路11を通じて供給された蒸気Sにより駆動する蒸気タービン2、蒸気タービン2から流出し蒸気流出路12を通じて供給された蒸気Sを冷却水との熱交換により冷却して溶液Lに復水させる復水器3と、復水器3から供給された溶液Lを、流路15を通じて蒸気発生器1に供給する供給ポンプ14及び16との順に、この作動流体を循環させる動力回路40を備えて構成されている。
そして、この蒸気タービン2が出力する軸動力は、発電機35を駆動するための駆動源として利用される。
【0019】
上記復水器3には、冷却水C1が通流する冷却管3aが配設され、その冷却管3a内に冷却水C1が通流することにより、蒸気S及び溶液Lと冷却水C1との間の熱交換が行われ、蒸気Sが凝縮して溶液Lに混合されるときに生じる凝縮潜熱及び混合熱が冷却水C1により回収することができる。
【0020】
更に、動力システムは、低沸点媒体としてのアンモニアと、当該アンモニアを吸収可能な高沸点媒体としての水との水−アンモニア系等の非共沸混合媒体を作動流体として用い、吸収式冷凍機の原理を利用して、上記エンジン排ガスEの排熱である高温排熱及び上記エンジン冷却水JWの排熱である低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る再生回路50を備えて構成されている。
即ち、かかる再生回路50は、復水器3との間で循環する溶液Lを低温排熱により加熱して溶液Lからアンモニア蒸気Saを分離する再生器4と、復水器3から再生器4へ向けて溶液Lが流通する濃溶液流路18において当該溶液Lを昇圧して再生器4に送出する循環ポンプ17と、再生器4から復水器3へ向けて溶液Lが流通する希溶液流路19において当該溶液Lを減圧して復水器3に送出する減圧部Xとを配置して構成されている。
【0021】
また、再生器4には、エンジン冷却水JWが通流する加熱管4aが配設され、その加熱管4a内に、エンジン20との間でポンプ23により循環されるエンジン冷却水JWを通流させることにより、作動流体の溶液Lとエンジン冷却水JWとの熱交換が行われる。
そして、復水器3で蒸気タービン2から供給された蒸気Sが混合された後の比較的アンモニア濃度が高い濃溶液L1は、復水器3から濃溶液流路18を通じて循環ポンプ17により昇圧された後に再生器4に供給され、一方、再生器4でアンモニア蒸気Saが分離された後の比較的アンモニア濃度が低い希溶液L2は、再生器4から希溶液流路19を通じて減圧部Xにより減圧された後に復水器3に供給されることで、高圧の再生器4と低圧の復水器3との間で、圧力差を維持しながら溶液Lが循環されることになる。
【0022】
更に、動力システムは、この再生回路50において再生器4で分離したアンモニア蒸気Saを、動力回路40において蒸気タービン2に供給される作動流体に合流させることで、蒸気タービン2の軸出力を増加させて、再生器4にエンジン冷却水JWの排熱として供給した低温排熱の熱エネルギを、蒸気タービン2の軸動力に変換して回収するように構成されており、その詳細について以下に説明を加える。
【0023】
動力システムは、再生器4で分離されアンモニア蒸気流路10に流出したアンモニア蒸気Saの少なくとも一部を、供給ポンプ14から蒸気発生器1に供給される溶液Lに吸収させる吸収器5を備えて構成されている。
即ち、吸収器5において、復水器3から供給ポンプ14により流路13を通じて供給された作動流体の溶液Lに、蒸気アンモニア蒸気流路10から分岐する分岐路10aを通じて供給されたアンモニア蒸気Saが吸収されて、アンモニア濃度が非常に高い作動流体の溶液Lが生成され、その溶液Lが供給ポンプ16により一層加圧され流路15を通じて蒸気発生器1に供給される。
よって、再生器4で分離されたアンモニア蒸気Saが比較的低圧であっても、この吸収器5でその低圧のアンモニア蒸気Saを良好に溶液に吸収させることができ、更には、当該蒸気発生器1で高濃度の溶液Lにより多くのエンジン排ガスEの熱を回収することができるので、蒸気タービン2に多くの蒸気Sを供給して蒸気タービン2の軸出力を増加させることができる。
【0024】
更に、蒸気発生器1において、排ガス路21を流通するエンジン排ガスEは溶液Lに熱を与えることで温度が低下する。即ち、排ガス路21における蒸気発生器1の入口側と出口側との温度差は、蒸気発生器1におけるエンジン排ガスEに対する熱回収量に略比例する。
そして、蒸気発生器1は、吸収器5においてアンモニア濃度が高くなった溶液Lを、排ガス路21の下流側から上流側に向けて流通させて、排ガス路21を流通するエンジン排ガスEの熱を当該溶液Lに与えるように構成されている。
よって、蒸気発生器1において、排ガス路21における下流側(蒸気発生器1に対するエンジン排ガスEの出口側)付近では、溶液Lに高濃度に含まれる低沸点媒体であるアンモニアが比較的低温のエンジン排ガスEとの熱交換により良好に蒸発するので、蒸気タービン2に対して多くの蒸気Sを供給することができ、更に、排ガス路21における上流側のエンジン排ガスEの温度が一定である場合でも下流側のエンジン排ガスEの温度を充分に低下させることができることから、蒸気発生器1におけるエンジン排ガスEに対する熱回収量を増加させることができる。
【0025】
更に、吸収器5には、冷却水C2が通流する冷却管5aが配設され、その冷却管5a内に冷却水C2が通流することにより、アンモニア蒸気Sa及び溶液Lと冷却水C2との間の熱交換が行われ、アンモニア蒸気Saが溶液Lに吸収されるときに生じる吸収熱が冷却水C2により回収することができる。
また、一般的に吸収器5が復水器3よりも高温であることから、当該吸収器5に供給する冷却水C2は、上述した復水器3で熱回収した後の冷却水C1とすることができる。尚、復水器C1と吸収器5とに冷却水C1,C2を個別に供給しても構わない。
【0026】
更に、動力システムは、再生器4で分離されアンモニア蒸気流路10に流出したアンモニア蒸気Saの少なくとも一部を、蒸気タービン2の低圧段2aに供給するように構成されている。
即ち、上記吸収器5で溶液Lに吸収し得なかったアンモニア蒸気Saの残部が、蒸気アンモニア蒸気流路10から分岐する分岐路10bを通じて、蒸気タービン2の低圧段2aに供給される。
よって、再生器4で分離されたアンモニア蒸気Saが比較的低圧であっても、その低圧のアンモニア蒸気Saを良好に比較的低圧な蒸気タービン2の低圧段2aに供給して、蒸気タービン2の軸出力を増加させることができる。
【0027】
更に、この動力システムは、サイクル効率の更なる向上を図るように構成されており、その特徴構成について、以下に説明する。
【0028】
先ず、再生回路50の希溶液流路19には、減圧部Xとして、希溶液L2の速度エネルギにより吸引部30aに吸引力を発生するエゼクタ30が設けられている。
即ち、このエゼクタ30は、液体駆動で気体を吸引する公知の液体エゼクタ(水エゼクタと呼ばれる場合がある。)と同様のものであり、希溶液流路19において、再生器4から復水器3へ向けて希溶液L2が流通することで、希溶液L2を減圧するという減圧部Xの機能を果たしながら、吸引部30aに吸引力を発生させるように配置されている。
【0029】
更に、蒸気タービン2から蒸気Sが流出する蒸気流出路12(蒸気流出部)が、上記エゼクタ30の吸引部30aに接続されており、当該蒸気流出部12の圧力が、エゼクタ30の吸引力により、少なくとも復水器3の圧力よりも低下されている。
よって、蒸気タービン2において蒸気流入路11と蒸気流出路12との圧力差を充分に大きいものとして、蒸気タービン2の軸出力を増加させることができ、結果、動力システムのサイクル効率を向上することができる。
【0030】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、蒸気タービン2の軸動力により発電機35を駆動するように構成したが、本発明において、蒸気タービン2の軸動力は、例えば圧縮式ヒートポンプの圧縮動力等のように、別の用途に利用しても構わない。
【0031】
(2)上記実施の形態では、再生器4で分離したアンモニア蒸気Saの少なくとも一部を、吸収器5により供給ポンプ14から蒸気発生器5に供給される溶液Lに吸収させるように構成したり、蒸気タービン2の低圧段2aに供給するように構成したが、別に、当該アンモニア蒸気Saを蒸気タービン2に供給される作動流体に合流させるものであれば、これらの構成を適宜改変しても構わない。
【0032】
(3)上記実施の形態において、希溶液流路19を流通する比較的高温の希溶液L2と濃溶液流路18を流通する比較的低温の濃溶液L1との熱交換を行う熱交換器を設けて、再生器4における加熱効率、及び、復水器3における冷却効率を向上させるように構成しても構わない。
更に、希溶液流路17を流通する希溶液L2から熱を回収する冷却器や、蒸気流出路12を流通する蒸気Sから熱を回収する冷却器を設けて、復水器3における冷却効率を向上させるように構成しても構わない。
【0033】
(4)上記実施の形態では、蒸気発生器1及び再生器4の高温排熱及び低温排熱の温熱源を、エンジン20の排熱としたが、燃料電池の排熱等の別の排熱を温熱源として利用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る動力システムは、動力回路に加えて、吸収式冷凍機の原理を利用して、エンジン排ガスの排熱等である高温排熱及びエンジン冷却水の排熱等である低温排熱の2種類の排熱を効果的に回収し得る再生回路を備えた動力システムであって、サイクル効率の更なる向上を図ることができるものとして有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】動力システムの概略構成図
【符号の説明】
【0036】
1:蒸気発生器
2:蒸気タービン
2a:低圧段
3:復水器
4:再生器
5:吸収器
12:蒸気流出路(蒸気流出部)
14,16:供給ポンプ
17:循環ポンプ
18:濃溶液流路
19:希溶液流路
30:エゼクタ
30a:吸引部
40:動力回路
50:再生回路
L:溶液
L1:濃溶液
L2:希溶液
S:蒸気
Sa:アンモニア蒸気(低沸点媒体の蒸気)
X:減圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高沸点媒体と低沸点媒体とを混合してなる作動流体の溶液を高温排熱により加熱して蒸気を発生する蒸気発生器と、前記蒸気発生器から供給された前記蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンから流出した前記蒸気を冷却して前記溶液に復水させる復水器と、前記復水器から供給された前記溶液を前記蒸気発生器に供給する供給ポンプとを配置してなる動力回路と、
前記復水器との間で循環する前記溶液を低温排熱により加熱して前記溶液から前記低沸点媒体の蒸気を分離する再生器と、前記復水器から前記再生器へ向けて前記溶液が流通する濃溶液流路において前記溶液を昇圧して前記再生器に送出する循環ポンプと、前記再生器から前記復水器へ向けて前記溶液が流通する希溶液流路において前記溶液を減圧して前記復水器に送出する減圧部とを配置してなる再生回路とを備え、
前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気を、前記蒸気タービンに供給される作動流体に合流させるように構成された動力システムであって、
前記希溶液流路に、前記減圧部として、前記溶液の速度エネルギにより吸引部に吸引力を発生するエゼクタを備え、
前記蒸気タービンの蒸気流出部が、当該エゼクタの吸引部に接続されている動力システム。
【請求項2】
前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を、前記供給ポンプから前記蒸気発生器に供給される前記溶液に吸収させるように構成された請求項1に記載の動力システム。
【請求項3】
前記再生器で分離した前記低沸点媒体の蒸気の少なくとも一部を、前記蒸気タービンの低圧段に供給するように構成された請求項1又は2に記載の動力システム。
【請求項4】
前記高温排熱がエンジンから排出されたエンジン排ガスの排熱であり、前記低温排熱が前記エンジンを冷却するエンジン冷却水の排熱である請求項1〜3の何れか一項に記載の動力システム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−321628(P2007−321628A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151870(P2006−151870)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】