説明

動力伝達機構の支持構造

【課題】低床化を実現しつつ、動力伝達機構のクロスメンバへの結合部位に対する入力荷重を小さく抑える。
【解決手段】第2,第3クロスメンバ7,9の下部に吊り下げ配置したスペアタイヤ11の前方にデファレンシャル装置13を配置する。デファレンシャル装置13は、その前側の端部13aを左右両側の取付部13aL,13aRを介して第1クロスメンバ5に取り付ける。デファレンシャル装置13の後側の端部13bは、デフ取付ブラケット25を介してスペアタイヤ11と左右のサイドメンバ3との間の第2クロスメンバ7に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達機構をフロア下に支持させる動力伝達機構の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の動力伝達機構であるデファレンシャル装置をフロア下に支持させる構造として、スペアタイヤ収納部の下部に配置したデファレンシャル装置の前後両端部を、スペアタイヤ収納部の前後に配置され、かつ、スペアタイヤ収納部の外形形状に沿って湾曲させてある前後のクロスメンバに、それぞれ結合したものが下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平10−71969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記した従来の動力伝達機構の支持構造では、スペアタイヤ収納部の下部にデファレンシャル装置を配置しているので、室内空間を広く取るうえで必要となる低床化が困難となる。
【0004】
そこで、低床化を実現するために、デファレンシャル装置をスペアタイヤ収納部もしくはスペアタイヤの前方のフロア下に配置することが考えられる。この場合、デファレンシャル装置の前後を、その前後に配置されたクロスメンバにそれぞれ結合し、この前後の結合点相互の間隔を大きくすれば、結合部位への入力荷重を小さく抑えられる。
【0005】
しかし、後側のクロスメンバの後方にスペアタイヤ収納部もしくはスペアタイヤがある場合には、該後側クロスメンバを後方にずらすことができない。このため前後の結合点相互の間隔が狭いままとせざるを得ず、結合部位への入力荷重を小さく抑えることができなくなる。
【0006】
したがって、上記結合部位への入力荷重に充分対抗できるようにするためには、クロスメンバの断面を大きくする必要が生じる。しかし、クロスメンバ上にはフロアパネルがあるため、クロスメンバは、下方に断面を大きくせざるを得ず、クロスメンバの下面が低くなるために、結果的に低床化を阻害することになる。
【0007】
そこで、本発明は、低床化を実現しつつ、動力伝達機構のクロスメンバへの結合部位に対する入力荷重を小さく抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、後側クロスメンバの車体下方にスペアタイヤを配置し、このスペアタイヤの車体前方に配置した動力伝達機構の車体前方側を前側クロスメンバに結合するとともに、動力伝達機構の車体後方側を、スペアタイヤと左右のサイドメンバとの間の後側クロスメンバに結合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動力伝達機構の車体後方側を、スペアタイヤと左右のサイドメンバとの間の後側クロスメンバに結合することで、この後側クロスメンバへの結合点と、車体前方側のクロスメンバへの結合点との間隔を広く取ることができ、結合部位への入力荷重を小さく抑えることができる。この際、クロスメンバの断面を大きく拡大する必要がないので、低床化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係わる動力伝達機構の支持構造を示す、自動車のリア側を車体下方から見た底面図、図2は、図1の支持構造を車体左側方から見た側面図である。なお、図中の矢印FRで示す方向が車体前方、矢印LHで示す方向が車体左方、矢印UPで示す方向が車体上方である。
【0012】
図1に示すように、フロアパネル1における図1中で上下方向に相当する車幅方向両側には、車体前後方向に延在する左右のサイドメンバ3を設け、これら左右のサイドメンバ3相互を、車幅方向に延在しかつ車体前後方向に沿って所定間隔をおいて配置されている3本のクロスメンバ、すなわち前側クロスメンバとしての第1クロスメンバ5,後側クロスメンバとしての第2クロスメンバ7,第3クロスメンバ9によって連結している。
【0013】
上記した3本のクロスメンバのうち、後方の2本の第2クロスメンバ7及び第3クロスメンバ9の車幅方向中央下部にスペアタイヤ11を配置している。スペアタイヤ11は、図示しない取付具を介してフロアパネル1もしくは第2,第3クロスメンバ7,9に吊り下げるようにして着脱可能に取り付けてある。
【0014】
この際スペアタイヤ11は、その車体前方側のタイヤ前端部11aを第2クロスメンバ7の下部に位置させ、車体後方側のタイヤ後端部11bを第3クロスメンバ9より後方に突出させている。また、スペアタイヤ11の中心は、第3クロスメンバ9の前縁部9aにほぼ位置している。
【0015】
また、上記したスペアタイヤ11の前方で、前方2本の第1クロスメンバ5及び第2クロスメンバ7相互間には、動力伝達機構としてのデファレンシャル装置13を配置している。デファレンシャル装置13には、その前端部に、車体前方に配置してある図示しないトランスミッションに連結されるプロペラシャフト15が連結されるとともに、その左右両側にはドライブシャフト17,19がそれぞれ連結されている。
【0016】
デファレンシャル装置13は、車体前方側の端部13aが第1クロスメンバ5にほぼ対応する下方に位置しており、端部13aの左右両側にて第1クロスメンバ5から垂下した一対の車体前側ブラケット21,23に、端部13aから左右に突出させてある取付部13aL,13aRを適宜ボルトなどの締結具により結合して取り付ける。
【0017】
一方デファレンシャル装置13の車体後方側の端部13bは、第2クロスメンバ7の前縁部7a近傍の前方に位置し、この端部13bを、取付部材としてのデフ取付ブラケット25を介して第2クロスメンバ7の下面に結合して取り付ける。
【0018】
デフ取付ブラケット25は、デファレンシャル装置13の端部13bに固定されて車幅方向に延在する直線状の基端部25aと、基端部25aの両端から車体後方かつ車幅方向外側に向けて傾斜して延びる直線状の傾斜部25b,25cと、傾斜部25b,25cの先端から第2クロスメンバ7に対応する位置にて車幅方向外側に延びて第2クロスメンバ7に固定される先端部25d,25eとをそれぞれ備えている。上記した傾斜部25b,25cと先端部25d,25eとで延長部を構成している。
【0019】
そして、この先端部25d,25eに対応して第2クロスメンバ7の下面には、車体後側ブラケット27,29を取り付けてあり、この車体後側ブラケット27,29に前記した先端部25d,25eを適宜ボルトなどの締結具により結合して取り付ける。
【0020】
すなわち、動力伝達機構の車体前方側を前側クロスメンバに結合するとともに、動力伝達機構の車体後方側を、スペアタイヤと左右のサイドメンバとの間の後側クロスメンバに結合したことになる。
【0021】
この際、上記したデフ取付ブラケット25は、主に基端部25aと傾斜部25b,25cとで、スペアタイヤ11におけるタイヤ前端部11aの円弧形状部分11asを覆うように配置してある。
【0022】
このような動力伝達機構の支持構造によれば、デファレンシャル装置13は、その車体後方側の端部13bを、デフ取付ブラケット25を介してスペアタイヤ11と左右のサイドメンバ3との間の第2クロスメンバ7に結合している。
【0023】
このため、車体前方側の端部13aの第1クロスメンバ5に対する結合点と、車体後方側の端部13bの第2クロスメンバ7に対する結合点との間隔を、第2クロスメンバ7を、その後方にスペアタイヤ収納部もしくはスペアタイヤがあることによって後方にずらせない場合であっても、後方にずらすことなく、デフ取付ブラケット25を使用する分広く取ることができ、この結果結合部位への入力荷重を小さく抑えることができる。この際、第1,第2各クロスメンバ5,7の断面形状を大きく拡大する必要がないので、フロアパネル1を極力低い位置とする低床化を実現することができ、室内空間の拡大に寄与することができる。
【0024】
また、上記したデフ取付ブラケット25は、デファレンシャル装置13に固定される基端部25aと、この基端部25aから左右両側に延長されてその先端が第2クロスメンバ7に結合される延長部(傾斜部25b,25c及び先端部25d,25e)とを有する簡素な形状としてあるので、その製造は容易であり、デフ取付ブラケット25を使用することによるコスト上昇を最小限に抑えることができる。
【0025】
さらに、本実施形態によれば、デフ取付ブラケット25は、スペアタイヤ11の車体前方側のタイヤ前端部11aの円弧形状部分11asを覆うように配置してあるので、スペアタイヤ11を車体下部に取り付ける際に、円弧形状部分11asを覆う基端部25a及び傾斜部25,25cを車体下部に対するスペアタイヤ11の位置合わせに利用でき、スペアタイヤ11の取り付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係わる動力伝達機構の支持構造を示す自動車のリア側の底面図である。
【図2】図1の支持構造の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
3 サイドメンバ
5 第1クロスメンバ(前側クロスメンバ)
7 第2クロスメンバ(後側クロスメンバ)
11 スペアタイヤ
11as スペアタイヤの円弧形状部分
13 デファレンシャル装置(動力伝達機構)
13a デファレンシャル装置の車体前方側の端部(動力伝達機構の車体前方側)
13b デファレンシャル装置の車体後方側の端部(動力伝達機構の車体後方側)
25 デフ取付ブラケット(取付部材)
25a デフ取付ブラケットの基端部
25b,25c デフ取付ブラケットの傾斜部(延長部)
25d,25e デフ取付ブラケットの先端部(延長部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向両側にて車体前後方向に延在する左右のサイドメンバ相互を、車体前側に位置する前側クロスメンバと車体後側に位置する後側クロスメンバとでそれぞれ連結し、前記後側クロスメンバの車体下方にスペアタイヤを配置し、このスペアタイヤの車体前方に配置した動力伝達機構の車体前方側を前記前側クロスメンバに結合するとともに、前記動力伝達機構の車体後方側を、前記スペアタイヤと前記左右のサイドメンバとの間の前記後側クロスメンバに結合したことを特徴とする動力伝達機構の支持構造。
【請求項2】
前記動力伝達機構の車体後方側を、取付部材を介して前記後側クロスメンバに結合し、前記取付部材は、前記動力伝達機構に連結される基端部と、この基端部から車幅方向両側に延長されてその先端が前記後側クロスメンバに結合される延長部とを有することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達機構の支持構造。
【請求項3】
前記取付部材は、前記スペアタイヤの車体前側の円弧形状部分を覆うように配置してあることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達機構の支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−279993(P2009−279993A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131862(P2008−131862)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】