説明

動力伝達装置、クラッチ・ブレーキ装置、クラッチ装置及びブレーキ装置

【課題】電力を消費する期間を短くして消費電力を低減する。
【解決手段】駆動力の伝達経路に接離自在に配置された入力軸6及び出力軸10間の連結状態(駆動力の伝達)と解放状態(駆動力の伝達停止)とを切り替えることにより駆動力の伝達を制御する。入力軸6及び出力軸10間の連結状態と解放状態とを第1及び第2永久磁石12・8の磁力を用いて可動板9の前進及び後退を保持することにより行う。第1 及び第2電磁石20・21に電流を供給して電磁力を発生させ、可動板9を進退移動させることによって、入力軸6及び出力軸10間の連結状態と解放状態とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側及び被駆動側間の連結状態と解放状態とを永久磁石及び電磁石が発生する磁力を利用して切り替える動力伝達装置、クラッチ・ブレーキ装置、クラッチ装置及びブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。具体的には、駆動側としての回転軸に電磁石として機能するマグネット組立体を取り付けると共に、マグネット組立体の電磁力とは逆方向の磁力を発生する永久磁石として機能するアーマチュア組立体を被駆動側としてのハブに取り付け、マグネット組立体に対して進退移動自在にする。そして、アーマチュア組立体を自身の磁力によりマグネット組立体に移動する方向に付勢する一方、ハブに設けられたバネプレートによりアーマチュア組立体をマグネット組立体から離隔させる方向に付勢する構成にされている。
【0003】
上記の構成によれば、マグネット組立体への通電を停止することにより電磁力を消した場合、アーマチュア組立体を自身の磁力によりマグネット組立体に当接させることにより回転軸とハブとを連結状態とすることが可能になる。一方、マグネット組立体への通電により電磁力を発生させた場合、電磁力により磁力が打ち消されることによって、バネプレートによりアーマチュア組立体をマグネット組立体から離隔させて回転軸とハブとを解放状態とすることが可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−197965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、回転軸とハブとを解放状態にする場合、マグネット組立体への通電により電磁力を常に発生させて磁力を打ち消しておくことが必要であることから、この解放状態の期間中において常時電力が消費されるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、電力を消費する期間を短くして消費電力を低減することができる動力伝達装置、クラッチ・ブレーキ装置、クラッチ装置及びブレーキ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動力の伝達経路に接離自在に配置された部材間の連結状態と解放状態とを切り替えることにより前記駆動力の伝達を制御する動力伝達装置において、強磁性を有すると共に、前記部材間に進退移動自在に設けられ、前進により前記部材間を連結状態とする一方、後退により前記部材間を解放状態とする可動板と、前記可動板の前進側及び後退側にそれぞれ配置され、該可動板を吸引する磁力をそれぞれ発生することにより前記可動板の前進及び後退を保持する永久磁石と、前記可動板を進退移動させる吸引力を電磁力により発生する電磁石と、前記永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、前記可動板を進退移動させるときに前記電源機構から前記電磁石に電流を供給するように制御する電源制御機構とを有する。
【0008】
上記の構成よれば、部材間の連結状態と解放状態とを永久磁石の磁力を用いて可動板の前進及び後退を保持することにより行うことによって、駆動力の伝達及び伝達停止を永久磁石の磁力だけで維持することができる。これにより、部材間の連結状態(駆動力の伝達)と解放状態(駆動力の伝達停止)とを維持するための電力は不要となる。一方、消費電力がかかる電磁石に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、部材間の連結状態(駆動力の伝達)と解放状態(駆動力の伝達停止)とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、動力伝達装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0009】
本発明における前記電源制御機構は、移動方向に配置された前記永久磁石による磁力の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させる一方、該移動方向とは逆方向に配置された前記永久磁石による磁力の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させるように制御するものでもよい。
【0010】
上記の構成によれば、移動方向側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが同一であることから磁界強度が高くなり、移動方向とは反対側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが逆方向であることから磁界強度が低くなる。これにより、可動板に対する移動方向側の吸引力が他方側よりも相対的に大きなものになるため、少ない電力で可動板を移動させることが可能になる。この結果、電力の消費量の減少により動力伝達装置の消費電力を一層低減することが可能になる。
【0011】
本発明は、クラッチ・ブレーキ装置であって、駆動力が出力又は入力される第1回転軸と、前記第1回転軸により回転可能に支持された回転板と、前記回転板に対向され、強磁性(鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等)を有した可動板と、前記可動板を回転方向に固定しながら前記回転板方向に進退移動自在に支持し、前記可動板と回転板との当接により前記駆動力を入力又は出力する第2回転軸と、前記可動板を挟んで前記回転板とは反対側に配置され、該可動板との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構と、前記可動板を前記回転板方向及び前記ブレーキ機構方向に進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、前記可動板が進行して前記回転板に当接した第1当接状態を保持する第1永久磁石と、前記可動板が後退して前記ブレーキ機構に当接した第2当接状態を保持する第2永久磁石と、前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、前記可動板の第1当接状態と第2当接状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構とを有する。
【0012】
上記の構成によれば、可動板と回転板との第1当接状態と、可動板とブレーキ機構との第2当接状態とは、第1永久磁石及び第2永久磁石によりそれぞれ保持される。そして、これらの第1当接状態と第2当接状態との切り替えによって、第1回転軸に駆動力を付与する状態とブレーキ力を付与する状態とを切り替え可能にするクラッチ・ブレーキ装置としての機能を発揮させる。この際、第1当接状態と第2当接状態は、第1永久磁石と第2永久磁石とで保持されており、これら磁石は、磁力を常時発生している。これにより、第1当接状態と第2当接状態とを維持するための消費電力は不要となる。一方、消費電力がかかる電磁石に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、第1当接状態と第2当接状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、クラッチ・ブレーキ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0013】
本発明は、クラッチ装置であって、駆動力が出力又は入力される第1回転軸と、前記第1回転軸により回転可能に支持された回転板と、前記回転板に対向され、強磁性(鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等)を有した可動板と、前記可動板を回転方向に固定しながら前記回転板方向に進退移動自在に支持し、前記可動板と回転板との当接により前記駆動力を入力又は出力する第2回転軸と、前記可動板を前記回転板方向に進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、前記可動板が前記回転板に当接した当接状態を保持する第1永久磁石と、前記可動板が前記回転板から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石と、前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、前記可動板の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構とを有する。
【0014】
上記の構成よれば、可動板と回転板との当接状態及び離隔状態は、第1永久磁石及び第2永久磁石によりそれぞれ保持される。そして、これらの当接状態と離隔状態との切り替えによって、第1回転軸又は第2回転軸の駆動力が第2回転軸又は第1回転軸に伝達される状態と伝達されない状態とを切り替え可能にするクラッチ装置としての機能を発揮させる。この際、当接状態と離隔状態は、第1永久磁石と第2永久磁石とで保持されており、これら磁石は、磁力を常時発生している。これにより、当接状態と離隔状態とを維持するための消費電力は不要である。一方、消費電力がかかる電磁石に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、当接状態と離隔状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、クラッチ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0015】
本発明は、ブレーキ装置であって、強磁性(鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等)を有した可動板と、前記可動板を回転方向に固定しながら軸方向に進退移動自在に支持し、外部から駆動力が入力される回転軸と、前記可動板に対して軸方向の何れか一方に対向配置され、前記可動板との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構と、前記可動板を進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、前記可動板が前記ブレーキ機構に当接した当接状態を保持する第1永久磁石と、前記可動板が前記ブレーキ機構から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石と、前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、前記可動板の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構とを有する。
【0016】
上記の構成よれば、可動板とブレーキ機構との当接状態及び離隔状態は、第1永久磁石及び第2永久磁石によりそれぞれ保持される。そして、これらの当接状態と離隔状態との切り替えによって、回転軸にブレーキ力を付与する状態と付与されない状態とを切り替え可能にするブレーキ装置としての機能を発揮させる。この際、当接状態と離隔状態は、第1永久磁石と第2永久磁石とで保持されており、これら磁石は、磁力を常時発生している。これにより、当接状態と離隔状態とを維持するための消費電力は不要である。一方、消費電力がかかる電磁石に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、当接状態と離隔状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、ブレーキ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(構成の概要)
本発明の実施の形態を図1ないし図3に基づいて以下に説明する。
【0018】
本実施の形態にかかる動力伝達装置は、駆動力の伝達経路に接離自在に配置された部材間の連結状態と解放状態とを切り替えることにより駆動力の伝達を制御するように構成されている。具体的には、強磁性を有すると共に、部材間に進退移動自在に設けられ、前進により前記部材間を連結状態とする一方、後退により部材間を解放状態とする可動板と、可動板の前進側及び後退側にそれぞれ配置され、該可動板を吸引する磁力をそれぞれ発生することにより可動板の前進及び後退を保持する永久磁石と、前記可動板を前記回転板方向に進退移動させる吸引力を電磁力により発生する電磁石と、永久磁石による可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、前記可動板を進退移動させるときに電源機構から電磁石に電流を供給するように制御する電源制御機構とを有した構成にされている。
【0019】
(構成の詳細:クラッチ・ブレーキ装置の機械的構成)
上記の構成をクラッチ・ブレーキ装置を用いて詳細に説明する。尚、以下の説明においては、駆動力の伝達経路に配置された部材として入力軸6と出力軸10とを使用し、入力軸6にブレーキ力を付与する構成とするが、これに限定されるものではなく、入力軸6と出力軸10とを入れ替えて、出力軸10にブレーキ力を付与する構成としてもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態にかかる動力伝達装置の一種であるクラッチ・ブレーキ装置は、円柱形状の外形を有した筐体1を有している。筐体1は、回転駆動力であるトルクの入力側に配置された第1枠部材3と、トルクの出力側に配置された第2枠部材2と、これらの第1及び第1枠部材3・2を所定距離を隔てて連結した連結板4とを有している。第2枠部材2は、中心部に形成された貫通穴2aと、貫通穴2aの周囲であって第1枠部材3への対向面に形成された凹部2bと、凹部2bの外周に形成された電磁石保持部2cとを有している。
【0021】
一方、第1枠部材3は、中心部に形成された貫通穴3aと、貫通穴3aの周囲であって第2枠部材2側の対向面に形成された磁石保持部3bと、磁石保持部3bの外周に形成された電磁石保持部3cとを有している。さらに、第1枠部材3の周縁部には、第2枠部材2方向に突出された突出部3dが形成されている。突出部3dは、後述の可動板9に当接可能にされており、可動板9との当接によりブレーキ力を発生して可動板9の回転を停止及び禁止するブレーキ機構を構成している。また、第1枠部材3は、連結板4との組み合わせによって、後述の第1電磁石20により発生された磁界の方向を磁石保持部3bの位置において水平方向にする磁気回路を形成している。
【0022】
第1枠部材3における貫通穴3aには、軸受5が嵌合されている。軸受5は、図示しないモーター等の駆動機構に連結され、トルクが入力される入力軸6を水平方向に回転自在に支持している。入力軸6の先端部には、可動板9が設けられている。可動板9は、中心部に貫通穴9aを有しており、入力軸6の先端部が摺動自在に貫挿されている。また、貫通穴9aには、図示しない案内溝が水平方向に形成されている。入力軸6は、案内溝に係合することにより可動板9を回転方向に固定していると共に、可動板9を水平方向(軸方向)に進退移動自在に支持している。可動板9の進退方向の移動距離は、上述の突出部3dに当接するように設定されている。これにより、可動板9は、後退により突出部3dに当接することによって、ブレーキ力が付与されるようになっている。
【0023】
上記の可動板9は、強磁性を有した材料により形成されている。即ち、可動板9は、鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等の強磁性材料により形成されている。第1枠部材3には、可動板9の外周部に対向して第1永久磁石12が設けられている。第1永久磁石12は、可動板9との接触による磨耗を防止するため、突出部3dよりも薄く設定されている。第1永久磁石12は、第1枠部材3の磁石保持部3bに環状に配置されている。第1永久磁石12は、水平方向の磁界方向を有した磁力を発生するように設定されている。具体的には、第2枠部材2側がN極及び第1枠部材3側がS極となるように設定されている。そして、第1永久磁石12は、対向配置された可動板9が後退して第1枠部材3の突出部3dに当接したときに(第2当接状態)、この当接状態を磁力による吸引力で保持するようになっている。
【0024】
上記の可動板9には、回転板7が対向配置されている。回転板7は、出力軸10の先端部に設けられている。出力軸10は、軸受5により回転自在に支持されており、軸受5は、第2枠部材2の貫通穴2aに嵌合されている。出力軸10の軸芯は、回転板7の中心部と一致されており、回転板7は、出力軸10の回転と共に一体的に回転する。回転板7の外周径は、回転板7の外周縁が電磁石保持部2cの位置と略一致するように設定されている。即ち、回転板7は、外周部が電磁石保持部2cに囲まれた状態にされている。また、回転板7は、外周部の板厚が内周部の板厚よりも厚くなるように設定されており、外周部が凹部2b内に位置することによって、第2枠部材2と回転板7とが水平方向及び垂直方向に重なるように設定されている。そして、回転板7は、第2枠部材2と連結板4との組み合わせによって、後述の第2電磁石21により発生された磁界を回転板7の外周部に集合させながら水平方向の磁界方向に誘導させる磁気回路を形成している。
【0025】
尚、回転板7と第2枠部材2と連結板4と第1枠部材3とは、可動板9の両側に磁気回路をそれぞれ形成することによって、可動板9を進退移動させる吸引力を電磁力により発生させる吸引力発生機構を構成している。
【0026】
上記の回転板7の周縁部には、可動板9方向に突出された突出部7aが形成されている。突出部7aは、上述の可動板9が前進移動したときに当接可能にされており、可動板9との当接により入力軸6から可動板9に伝達されたトルクを回転板7及び出力軸10に伝達可能にしている。
【0027】
また、回転板7の外周部には、環状に配置された第2永久磁石8が設けられている。第2永久磁石8は、可動板9との接触による磨耗を防止するため、突出部7aよりも薄く設定されている。第2永久磁石8は、上述の第1永久磁石12に対向されており、第1永久磁石12と同一の磁界方向及び同一の磁力を発生するように設定されている。具体的には、第2枠部材2側がN極及び第1枠部材3側がS極となるように設定されている。そして、第2永久磁石8は、対向配置された可動板9が前進して回転板7の突出部7aに当接したときに(第1当接状態)、この当接状態を磁力による吸引力で保持するようになっている。
【0028】
上記のように構成された第1枠部材3の電磁石保持部3c及び第2枠部材2の電磁石保持部2cには、第1電磁石20と第2電磁石21とがそれぞれ設けられている。第1及び第2電磁石20・21は、可動板9を挟んで対向配置されており、可動板9の一方面及び多方面に対して対向されている。そして、これらの第1及び第2電磁石20・21は、可動板9を回転板7方向及び第1枠部材3方向に進退移動させる吸引力を電磁力により発生させるようになっている。
【0029】
(構成の詳細:クラッチ・ブレーキ装置の電気的構成)
上記の第1電磁石20及び第2電磁石21は、電源30に接続されている。電源30は、所定の電流量の直流電流を正方向及び逆方向に切り替え可能に出力すると共に、直流電流の供給と停止とを切り替え可能な構成にされている。尚、所定の電流量は、第1永久磁石12及び第2永久磁石8による可動板9に対する保持力よりも大きな吸引力で可動板9を進退移動させる電磁力を発生させるように設定されている。
【0030】
上記の電源30は、電源制御装置31に接続されている。電源制御装置31は、演算部や記憶部、入出力部等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理装置からなっており、可動板9と回転板7との第1当接状態と、可動板9と第1枠部材3との第2当接状態とを切り替えるときに電源30から第1及び第2電磁石20・21に電流を供給させるように、電源30を制御する機能を備えている。
【0031】
第1及び第2電磁石20・21に電流を供給する制御形態としては、第1及び第2電磁石20・21の何れか一方に電流を供給して可動板9を進退移動させる第1制御形態や、第1及び第2電磁石20・21の両方に電流を供給して可動板9を進退移動させる第2制御形態等が存在する。尚、電源制御装置31は、何れか一方の制御形態を選択可能にされていることが好ましく、この場合には、クラッチ・ブレーキ装置の使用環境や使用内容に応じて最適な制御形態をオペレータが選択することができる。
【0032】
上記の第1制御形態は、可動板9を移動させる方向に配置された第1及び第2電磁石20・21の何れか一方に電流を供給する形態である。具体的には、図2に示すように、可動板9が回転板7に当接した第1当接状態である場合においては、第1枠部材3側に配置された第1電磁石20に対して電流を供給することによって、第1枠部材3側に電磁力を発生させ、第2永久磁石8による可動板9の保持力よりも大きな電磁力による吸引力で吸引することによって、可動板9を回転板7から切り離して後退移動させる。
【0033】
一方、図3に示すように、可動板9が第1枠部材3に当接した第2当接状態である場合においては、第2枠部材2側に配置された第2電磁石21に対して電流を供給することによって、第2枠部材2側に電磁力を発生させ、第1永久磁石12による可動板9の保持力よりも大きな電磁力による吸引力で吸引することによって、可動板9を第1枠部材3から切り離して前進移動させる。
【0034】
また、第2制御形態は、第1及び第2電磁石20・21の両方に電流を供給し、可動板9の移動方向に配置された永久磁石8・12による磁力の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させる一方、可動板9の移動方向とは逆方向に配置された永久磁石12・8による磁力の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させるように制御する形態である。
【0035】
尚、この第2制御形態によれば、移動方向側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが同一であることから磁界強度が高くなり、移動方向とは反対側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが逆方向であることから磁界強度が低くなる。これにより、連結部材に対する移動方向側の吸引力が他方側よりも、より相対的に大きなものになるため、より早く連結部材を移動させることが可能になる。この結果、動力伝達装置の応答性をより早めることができる。
【0036】
具体的には、図2に示すように、可動板9が回転板7に当接した第1当接状態である場合においては、第1枠部材3側に配置された第1電磁石20に対して電流を供給し、第1永久磁石12の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させると共に、第2枠部材2側に配置された第2電磁石21に対して電流を供給し、第2永久磁石8の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させる。そして、第1枠部材3側においては、第1永久磁石12の磁力と第1電磁石20の電磁力とを重合した大きな磁界強度とし、この大きな磁界強度による吸引力で可動板9を吸引する。一方、第2枠部材2側においては、第2永久磁石8の磁力を第2電磁石21の電磁力で相殺した小さな磁界強度とし、この小さな磁界強度による吸引力で可動板9の保持を容易に解除可能にする。これにより、第2永久磁石8による可動板9の保持力を減退させながら、第1枠部材3側の大きな磁界強度による吸引力で吸引することによって、可動板9を回転板7から容易に切り離して後退移動させることが可能になっている。
【0037】
一方、図3に示すように、可動板9が第1枠部材3に当接した第2当接状態である場合においては、第2枠部材2側に配置された第2電磁石21に対して電流を供給し、第2永久磁石8の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させると共に、第1枠部材3側に配置された第1永久磁石12に対して電流を供給し、第1永久磁石12の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させる。そして、第2枠部材2側においては、第2永久磁石8の磁力と第2電磁石21の電磁力とを重合した大きな磁界強度とし、この大きな磁界強度による吸引力で可動板9を吸引する。一方、第1枠部材3側においては、第1永久磁石12の磁力を第1電磁石20の電磁力で相殺した小さな磁界強度とし、この小さな磁界強度による吸引力で可動板9の保持を容易に解除可能にする。これにより、第1永久磁石12による可動板9の保持力を減退させながら、第2枠部材2側の大きな磁界強度による吸引力で吸引することによって、可動板9を第1枠部材3から容易に切り離して前進移動させることが可能になると共に、より大きな当接力が得られることから大きなトルクを発生させることができる。
【0038】
(クラッチ・ブレーキ装置の動作)
上記の構成において、クラッチ・ブレーキ装置の動作について説明する。尚、以後の説明においては、第2制御形態で電流が各第1及び第2電磁石20・21に供給されるものとする。
【0039】
先ず、図2に示すように、可動板9が回転板7に当接したときに、第1及び第2電磁石20・21への電流の供給が停止される。そして、可動板9と回転板7との第1当接状態(連結状態)は、第2永久磁石8の磁力(吸引力)による保持力で維持されることになる。従って、トルクを入力軸6から出力軸10に伝達させるために第1及び第2電磁石20・21の電磁力を必要としないため、トルクを伝達させる期間中において電力が消費されることはない。
【0040】
次に、回転板7から可動板9を切り離す場合には、第1電磁石20に対して電流が供給され、第1永久磁石12の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力が発生されると共に、第2電磁石21に対して電流が供給され、第2永久磁石8の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力が発生される。そして、第1枠部材3側においては、第1永久磁石12の磁力と第1電磁石20の電磁力とを重合した大きな磁界強度が出現し、この大きな磁界強度による吸引力で可動板9が吸引される。一方、第2枠部材2側においては、第2永久磁石8の磁力を第2電磁石21の電磁力で相殺した小さな磁界強度が出現し、この小さな磁界強度による吸引力で可動板9の保持が容易に解除可能にされる。これにより、第2永久磁石8による可動板9の保持力が減退されながら、第1枠部材3側の大きな磁界強度による吸引力で吸引されることによって、可動板9を回転板7から容易に切り離して後退移動させることができる。
【0041】
可動板9が後退した結果、図3に示すように、可動板9が第1枠部材3の突出部3dに当接すると、可動板9にブレーキ力が付与され、入力軸6の回転が強制的に停止される。
【0042】
また、可動板9が第1枠部材3に当接すると、第1及び第2電磁石20・21への電流の供給が停止される。この結果、可動板9と第1枠部材3との第2当接状態は、第1永久磁石12の磁力(吸引力)による保持力で維持されることになる。従って、入力軸6にブレーキ力を付与するために第1及び第2電磁石20・21の電磁力を必要としないため、ブレーキをかけている期間中において電力が消費されることはない。
【0043】
(クラッチ・ブレーキ装置の変形例:ブレーキ機構)
図1のクラッチ・ブレーキ装置においては、可動板9に当接可能にされた突出部3dをブレーキ機構としているが、これに限定されるものではなく、ブレーキ機構は、図4に示す構成にされていてもよい。
【0044】
具体的に説明すると、図4に示すように、クラッチ・ブレーキ装置は、回転板7及び第1枠部材3における可動板9に対向する内側面が平面形状に形成されている。回転板7の内側面及び第1枠部材3の内側面には、ブレーキ機構となる当接板25・26がそれぞれ設けられている。これらの当接板25・26は、環状に配置された第2永久磁石8の内周側に配置されている。尚、当接板25・26は、複数個の部材を集合させて環状に配置されていても良いし、環形状に一体的に形成されていてもよい。また、当接板25・26は、第1及び第2永久磁石12・8の厚みよりも大きな厚みに設定されており、第1及び第2永久磁石12・8と可動板9との接触を防止している。その他の構成は、図1の構成と同一である。
【0045】
上記の構成よれば、クラッチ・ブレーキ装置を繰り返して使用することによって、当接板25・26が磨耗してきたときに、当接板25・26を取り替えることで容易にクラッチ・ブレーキ装置を元の状態に戻すことができることから、長期間の使用が可能になる。
【0046】
(クラッチ・ブレーキ装置の変形例:吸引力発生機構)
また、図1のクラッチ・ブレーキ装置においては、第1枠部材3と第2枠部材2と回転板7と連結板4との組み合わせにより吸引力発生機構を構成しているが、これに限定されるものではなく、下記のように構成にされていてもよい。
【0047】
具体的な構成を概略図を用いて説明すると、図5に示すように、吸引力発生部材41は、断面C字形状に形成されている。吸引力発生部材41の開口部41aの両端部には、第1永久磁石12と第2永久磁石8とがそれぞれ設けられている。開口部41aの間には、可動板9が挿入されている。また、吸引力発生部材41の内部には、可動板9を挟んだ両側に第1電磁石20と第2電磁石21とが設けられている。また、入力軸6には、ブレーキ部材34が設けられており、ブレーキ部材34は、可動板9の移動により当接可能にされている。一方、出力軸10には、回転板7が設けられている。回転板7の先端部7aは、可動板9に当接可能にされ、ブレーキ力を付与するようになっている。これにより、可動板9は、吸引力発生部材41により磁気回路を形成した第1及び第2電磁石20・21の電磁力により効率良く進退移動され、先端部7a及びブレーキ部材34との当接状態が第1永久磁石12及び第2永久磁石8により保持される。尚、第2永久磁石8及び第1永久磁石12は、図6に示すように、吸引力発生部材41に埋設されていてもよい。
【0048】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図7に示すように、吸引力発生部材41の内部に凹部41bを形成し、この凹部41bに可動板9の先端部を挿入した構成にされていてもよい。その他の構成は、図5と同一である。この構成によれば、第1電磁石20の磁界の磁気回路と第2電磁石21による磁界の磁気回路とを明確に区別することが可能になるため、電磁力による可動板9の進退移動を容易に行うことが可能になる。
【0049】
尚、凹部41bは、図7のように吸引力発生部材41の厚みを減少することにより形成されていてもよいし、図8に示すように、吸引力発生部材41に一対の凸部41c・41cを形成し、これら両凸部41c・41c間に形成してもよい。また、第1永久磁石12及び第2永久磁石8は、可動板9の各側面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0050】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図9に示すように、吸引力発生部材41の内部に凸部41cを形成すると共に、可動板9の先端部9aの幅を拡大することによって、凹部41bに可動板9の先端部9aを対向及び近接させた構成にされていてもよい。その他の構成は、図5と同一である。この構成によれば、第1電磁石20の磁界の磁気回路と第2電磁石21による磁界の磁気回路とを明確に区別することが可能になるため、電磁力による可動板9の進退移動を容易に行うことが可能になる。また、厚みを減少させた部分のエッジ部分(垂直面)で磁気回路の効率が向上することによって、可動坂がより吸引され易くなる。尚、回転板7の先端部7aは、ブレーキ部材34と同一材質のブレーキ部材を貼設して形成されていてもよい。
【0051】
さらに、クラッチ・ブレーキ装置は、図10に示すように、図7の第1永久磁石12及び第2永久磁石8の代わりに、凸部41cの中心部に永久磁石36をN極及びS極が水平方向となるように設けると共に、可動板9の先端部9aに凹部9bを形成した構成にされていてもよい。また、クラッチ・ブレーキ装置は、図11に示すように、凸部41cの下端面に永久磁石36を水平配置し、永久磁石36と可動板9の先端部とが対向するように構成されていてもよい。また、クラッチ・ブレーキ装置は、図12に示すように、可動板9の先端部に永久磁石36を設け、永久磁石36と凸部41cの下端面とが対向するように構成にされていてもよい。また、永久磁石の個数は1個であってもよい。磁石面積を大きく確保できる結果、磁束量を増やすことができるからである。
【0052】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図13に示すように、凸部41cの下端面に永久磁石36・36を左右一対に設けると共に、永久磁石36・36における互いの極性を逆方向に設定した構成にされていてもよい。こうすることによって、可動伴は、永久磁石面で水平方向の推力が得られ(垂直力だけでなく水平力も得られる)、より性能(トルク、応答性)が向上する。尚、図13の永久磁石36・36は、図14に示すように、図5の第2永久磁石8及び第1永久磁石12に代えて、吸引力発生部材41の内面壁に設けられていてもよい。
【0053】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図15に示すように、可動板9の先端部に突設部材61を設け、突設部材61の内部に永久磁石36を極性が水平配置されるように埋設した構成にされていてもよい。また、クラッチ・ブレーキ装置は、図16に示すように、可動板9の各側面に第2永久磁石8及び第1永久磁石12をそれぞれ設けた構成にされていてもよい。
【0054】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図17に示すように、可動板9を挟んで左右対称に吸引力発生部材41を2分割した断面コ字形状の分割部材41a・41bで構成してもよい。さらに、クラッチ・ブレーキ装置は、図18に示すように、分割部材41a・41bにおける上下の先端部に第2永久磁石8及び第1永久磁石12を上下一対に設けてもよい。さらに、クラッチ・ブレーキ装置は、図19に示すように、分割部材41a・41bを非磁性材料で形成された連結部材37で連結した構成にされていてもよい。これにより、ギャップ面に近い所に磁石を配置することによって、漏れ磁束が少なくなり、磁気回路の効率が向上する。
【0055】
また、クラッチ・ブレーキ装置は、図20に示すように、断面コ字形状の分割部材41a・41bの開口部を下方に位置するように配置すると共に、これら分割部材41a・41bを永久磁石51と連結部材52との積層構造部材で連結する。そして、可動板9の先端部9a・9bを2分岐し、これらの先端部9a・9bを各分割部材41a・41bの開口部に挿入した構成にされていてもよい。また、クラッチ・ブレーキ装置は、図21に示すように、図20の永久磁石51及び連結部材52の代わりに、分割部材41a・41bの対向面同士を永久磁石53で連結した構成にされていてもよい。また、クラッチ・ブレーキ装置は、図22に示すように、吸引力発生部材41が複数の分割ユニット41aを集合して形成された構成にされていてもよい。こうすることによって、より大きな磁石を利用できることから、大トルク化に適する。
【0056】
(本実施形態の概要)
以上のように、本実施形態におけるクラッチ・ブレーキ装置は、駆動力(トルク)の伝達経路に接離自在に配置された部材(入力軸6・出力軸10)間の連結状態と解放状態とを切り替えることにより駆動力の伝達を制御する動力伝達装置であって、強磁性を有すると共に、部材間に進退移動自在に設けられ、前進により部材間を連結状態とする一方、後退により部材間を解放状態とする可動板9と、可動板9の前進側及び後退側にそれぞれ配置され、可動板9を吸引する磁力をそれぞれ発生することにより可動板9の前進及び後退を保持する第1及び第2永久磁石12・8と、可動板9を進退移動させる吸引力を電磁力により発生する第1及び第2電磁石20・21と、第1及び第2永久磁石12・8による可動板9に対する保持力よりも大きな吸引力で可動板9を進退移動させるように、第1及び第2電磁石20・21に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構(電源30)と、可動板9を進退移動させるときに電源機構から第1及び第2電磁石20・21に電流を供給するように制御する電源制御機構(電源制御装置31)とを有した構成にされている。
【0057】
上記の構成によれば、部材間の連結状態と解放状態とを第1及び第2永久磁石12・8の磁力を用いて可動板9の前進及び後退を保持することにより行うことによって、駆動力の伝達及び伝達停止を第1及び第2永久磁石12・8の磁力だけで維持することができる。これにより、部材間の連結状態(駆動力の伝達)と解放状態(駆動力の伝達停止)とを維持するための消費電力がかかることはない。一方、消費電力がかかる第1及び第2電磁石20・21に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、部材間の連結状態(駆動力の伝達)と解放状態(駆動力の伝達停止)とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、動力伝達装置の消費電力を大幅に低減することが可能になる。
【0058】
より具体的には、本実施形態のクラッチ・ブレーキ装置は、駆動力が出力又は入力される第1回転軸(入力軸6及び出力軸10の一方)と、前記第1回転軸により回転可能に支持された回転板7と、回転板7に対向され、強磁性(鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等)を有した可動板9と、可動板9を回転方向に固定しながら回転板7方向に進退移動自在に支持し、可動板9と回転板7との当接により駆動力を入力又は出力する第2回転軸(入力軸6及び出力軸10の他方)と、可動板9を挟んで回転板7とは反対側に配置され、該可動板9との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構(突出部3d、突出部7a)と、可動板9を突出部7a方向及びブレーキ機構方向に進退移動させる吸引力を第1及び第2永久磁石12・8の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構(第1及び第2永久磁石12・8、第1枠部材3、第2枠部材2、連結板4等)と、可動板9が進行して回転板7に当接した第1当接状態を保持する第1永久磁石12と、可動板9が後退してブレーキ機構に当接した第2当接状態を保持する第2永久磁石8と、第1永久磁石12及び第2永久磁石8による可動板9に対する保持力よりも大きな吸引力で可動板9を進退移動させるように、吸引力発生機構の第1及び第2電磁石20・21に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構(電源30)と、可動板9の第1当接状態と第2当接状態とを切り替えるときに電源機構から吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構(電源制御装置31)とを有した構成にされている。
【0059】
上記の構成によれば、可動板9と回転板7との第1当接状態と、可動板9とブレーキ機構との第2当接状態とは、第1永久磁石12及び第2永久磁石8によりそれぞれ保持される。そして、これらの第1当接状態と第2当接状態との切り替えによって、第1回転軸(入力軸6及び出力軸10の一方)に駆動力を付与する状態とブレーキ力を付与する状態とを切り替え可能にするクラッチ・ブレーキ装置としての機能を発揮させる。この際、第1当接状態と第2当接状態は、第1及び第2永久磁石12・8で保持されており、これら第1及び第2永久磁石12・8は、磁力を常時発生している。これにより、第1当接状態と第2当接状態とを維持するための消費電力がかかることはない。一方、消費電力がかかる第1及び第2電磁石20・21に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、第1当接状態と第2当接状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、クラッチ・ブレーキ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態における電源制御機構は、移動方向に配置された第1及び第2永久磁石12・8による磁力の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させる一方、該移動方向とは逆方向に配置された第2及び第1永久磁石8・12による磁力の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させるように制御する構成にされている。
【0061】
上記の構成によれば、移動方向側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが同一であることから磁界強度が高くなり、移動方向とは反対側においては、電磁力の磁界方向と磁力の磁界方向とが逆方向であることから磁界強度が低くなる。これにより、可動板9に対する移動方向側の吸引力が他方側よりも相対的に大きなものになるため、可動板9をより大きな力で駆動することができ、応答性を向上させることができる。
【0062】
(本実施形態の変形例)
また、本実施形態においては、クラッチ・ブレーキ装置を用いて動力伝達装置を説明しているが、これに限定されるものでもなく、動力伝達装置は、クラッチ装置やブレーキ装置であってもよい。
【0063】
即ち、動力伝達装置は、図23のように構成されたクラッチ装置であってもよい。具体的には、駆動力が出力又は入力される第1回転軸(入力軸6及び出力軸10の一方)と、第1回転軸により回転可能に支持された回転板7と、回転板7に対向され、強磁性(鉄やニッケル、コバルト等の強磁性材料及びこれらを組み合わせた合金、これらの一種以上を含む合金等)を有した可動板9と、可動板9を回転方向に固定しながら回転板7方向に進退移動自在に支持し、可動板9と回転板7との当接により駆動力を入力又は出力する第2回転軸(入力軸6及び出力軸10の他方)と、可動板9を回転板7方向に進退移動させる吸引力を第1及び第2電磁石20・21の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構(第2枠部材2、第1枠部材3、連結板4等)と、可動板9が回転板7に当接した当接状態を保持する第1永久磁石12と、可動板9が回転板7から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石8と、第1永久磁石12及び第2永久磁石8による可動板9に対する保持力よりも大きな吸引力で可動板9を進退移動させるように、吸引力発生機構の第1及び第2電磁石20・21に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構(電源30)と、可動板9の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに電源機構から吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構(電源制御装置31)とを有している。また、第1枠部材3における可動板9との対向面には、可動板9に対して摩擦力の低減された摺動部材38が設けられている。
【0064】
上記の構成よれば、可動板9と回転板7との当接状態及び離隔状態は、第1永久磁石12及び第2永久磁石8によりそれぞれ保持される。そして、これらの当接状態と離隔状態との切り替えによって、第1回転軸(入力軸6及び出力軸10の一方)又は第2回転軸(入力軸6及び出力軸10の他方)の駆動力が第2回転軸又は第1回転軸に伝達される状態と伝達されない状態とを切り替え可能にするクラッチ装置としての機能を発揮させる。この際、当接状態と離隔状態は、第1永久磁石12と第2永久磁石8とで保持されており、これら磁石は、磁力を常時発生している。これにより、当接状態と離隔状態とを維持するための消費電力がかかることはない。一方、消費電力がかかる第1及び第2電磁石20・21に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、当接状態と離隔状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、クラッチ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0065】
また、動力伝達装置は、図24のように構成されたブレーキ装置であってもよい。具体的には、強磁性を有した可動板9と、可動板9を回転方向に固定しながら軸方向に進退移動自在に支持し、外部から駆動力が入力される回転軸46と、可動板9に対して軸方向の何れか一方に対向配置され、可動板9との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構(突出部3d)と、可動板9を進退移動させる吸引力を第1及び第2電磁石20・21の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構(第2枠部材2、突出部3d、連結板4等)と、可動板9がブレーキ機構に当接した当接状態を保持する第1永久磁石12と、可動板9がブレーキ機構から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石8と、第1永久磁石12及び第2永久磁石8による可動板9に対する保持力よりも大きな吸引力で可動板9を進退移動させるように、吸引力発生機構の第1及び第2電磁石20・21に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構(電源30)と、可動板9の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに電源機構から吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構(電源制御装置31)とを有する。
【0066】
上記の構成よれば、可動板9とブレーキ機構との当接状態及び離隔状態は、第1永久磁石12及び第2永久磁石8によりそれぞれ保持される。そして、これらの当接状態と離隔状態との切り替えによって、回転軸46にブレーキ力を付与する状態と付与されない状態とを切り替え可能にするブレーキ装置としての機能を発揮させる。この際、当接状態と離隔状態は、第1永久磁石12と第2永久磁石8とで保持されており、これら磁石は、磁力を常時発生している。これにより、当接状態と離隔状態とを維持するための消費電力がかかることはない。一方、消費電力がかかる第1及び第2電磁石20・21に電流を供給して電磁力を発生させる場合は、当接状態と離隔状態とを切り替える場合だけであり、この場合にだけ電源制御機構が電流を供給するように電源機構を制御している。この結果、電力を消費する時間が短いため、ブレーキ装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。尚、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図4】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図5】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図6】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図7】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図8】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図9】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図10】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図11】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図12】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図13】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図14】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図15】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図16】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図17】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図18】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図19】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図20】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図21】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図22】本発明の変形例を示すクラッチ・ブレーキ装置の概略構成図である。
【図23】クラッチ装置の概略構成図である。
【図24】ブレーキ装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0069】
1 筐体
2 第2枠部材
3 第1枠部材
4 連結板
5 軸受
6 入力軸
7 回転板
8 第2永久磁石
9 可動板
10 出力軸
12 第1永久磁石
20 第1電磁石
21 第2電磁石
30 電源
31 電源制御装置
34 ブレーキ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の伝達経路に接離自在に配置された部材間の連結状態と解放状態とを切り替えることにより前記駆動力の伝達を制御する動力伝達装置において、
強磁性を有すると共に、前記部材間に進退移動自在に設けられ、前進により前記部材間を連結状態とする一方、後退により前記部材間を解放状態とする可動板と、
前記可動板の前進側及び後退側にそれぞれ配置され、該可動板を吸引する磁力をそれぞれ発生することにより前記可動板の前進及び後退を保持する永久磁石と、
前記可動板を進退移動させる吸引力を電磁力により発生する電磁石と、
前記永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、
前記可動板を進退移動させるときに前記電源機構から前記電磁石に電流を供給するように制御する電源制御機構と
を有することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記電源制御機構は、移動方向に配置された前記永久磁石による磁力の磁界方向と同一方向の磁界の電磁力を発生させる一方、該移動方向とは逆方向に配置された前記永久磁石による磁力の磁界方向と逆方向の磁界の電磁力を発生させるように制御することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
駆動力を出力又は入力する第1回転軸と、
前記第1回転軸により回転可能に支持された回転板と、
前記回転板に対向され、強磁性を有した可動板と、
前記可動板を回転方向に固定しながら前記回転板方向に進退移動自在に支持し、前記可動板と回転板との当接により前記駆動力を入力又は出力する第2回転軸と、
前記可動板を挟んで前記回転板とは反対側に配置され、該可動板との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構と、
前記可動板を前記回転板方向及び前記ブレーキ機構方向に進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、
前記可動板が進行して前記回転板に当接した第1当接状態を保持する第1永久磁石と、
前記可動板が後退して前記ブレーキ機構に当接した第2当接状態を保持する第2永久磁石と、
前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、
前記可動板の第1当接状態と第2当接状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構と
を有することを特徴とするクラッチ・ブレーキ装置。
【請求項4】
駆動力が出力又は入力する第1回転軸と、
前記入力軸により回転可能に支持された回転板と、
前記回転板に対向され、強磁性を有した可動板と、
前記可動板を回転方向に固定しながら前記回転板方向に進退移動自在に支持し、前記可動板と回転板との当接により前記駆動力を入力又は出力する第2回転軸と、
前記可動板を前記回転板方向に進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、
前記可動板が前記回転板に当接した当接状態を保持する第1永久磁石と、
前記可動板が前記回転板から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石と、
前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、
前記可動板の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構と
を有することを特徴とするクラッチ装置。
【請求項5】
強磁性を有した可動板と、
前記可動板を回転方向に固定しながら軸方向に進退移動自在に支持し、外部から駆動力が入力される回転軸と、
前記可動板に対して軸方向の何れか一方に対向配置され、前記可動板との当接によりブレーキ力を発生するブレーキ機構と、
前記可動板を進退移動させる吸引力を電磁石の電磁力により発生させるように構成された吸引力発生機構と、
前記可動板が前記ブレーキ機構に当接した当接状態を保持する第1永久磁石と、
前記可動板が前記ブレーキ機構から離隔した離隔状態を保持する第2永久磁石と、
前記第1永久磁石及び第2永久磁石による前記可動板に対する保持力よりも大きな吸引力で該可動板を進退移動させるように、前記吸引力発生機構の電磁石に対して電流を供給することにより電磁力を発生させる電源機構と、
前記可動板の当接状態と離隔状態とを切り替えるときに前記電源機構から前記吸引力発生機構に電流を供給するように制御する電源制御機構と
を有することを特徴とするブレーキ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−111506(P2008−111506A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295597(P2006−295597)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】