説明

動圧作動ルーフボックス・ロック装置

自動車の走行中に過大な風圧を受けて、または通常の閉じ安全ロック装置の脱落によってルーフボックスの上部縁と下部縁とがぱたんと開くことを防止するため、片方のルーフボックス部分のロック機素が他方のルーフボックス部分の相手方機素と噛み合う様態の閉じロック装置であるが、相手側ボックス縁に未だ噛み合っていない位置にくるようにスプリングによりプレストレスが与えられているロック機素が片側のボックスに設けられ、このロック機素が車両走行中のみ向い風の風圧を受けることにより、ロック位置にまで回り込む構造である閉じロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行中に過大な風圧または通常の閉じ安全ロック装置の脱落によるルーフボックスの上下縁がぱたんと開くことを防止するための、片方のボックス部分のロック機素が他方のボックス部分の相手方機素と噛み合う様態の閉じロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】ドイツ実用新案DE29508826U1
【0003】
特許文献1によりすでに公知となっている、冒頭に述べた様態の閉じロック装置では、上蓋縁に旋回可能の、旋回した先のロック位置において下側ボックスを下から掴むことができるロックフックが連結されており、このロックフックは上蓋が開いたときボックス床部の縁を下から引っ掛けるようになっている。この構造では、ロックフックはその自重によりロック位置に旋回し、そのロック位置において下側ボックスの湾曲した縁の下に入り込む。すなわち、この閉じロック装置は常時ロックがかかっている状態にある。そのため、使用者は停止している車両において、ルーフボックスを開くには、まずこの閉じロック装置を解除しなければならず、そのために、ロックフックを旋回させて引き戻さなければならないが、それは再び上蓋およびボックス上下部の閉じロック装置の煩雑な操作を求めることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の課題は、停止中の自動車ではロックがはたらかなくなり、走行中の自動車においてのみロックがはたらくような、冒頭に述べた様態の閉じロック装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明により、相手側ボックス縁に未だ噛み合っていない位置にくるようにスプリングによりプレストレスが与えられているロック機素が片側のボックスに設けられ、このロック機素が車両走行中のみ向い風の風圧を受けることにより、ロック位置にまで回り込む構造とすることを提案する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、停止中の自動車ではロックがはたらかなくなり、走行中の自動車においてのみロックがはたらくような、冒頭に述べた様態の閉じロック装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ごくおおざっぱに言えば、このロック機素は任意の形態の、動圧を受け動く作動機素と連結している。この作動機素は自動車の速度が増すにつれ増大する動圧によりロック機素を未だ噛み合っていない位置から噛み合う位置へ動かし、それによって下側ボックスのボックス上蓋の閉じロックをおこなうのである。
【0008】
その場合、最も簡単なケースとしては、片側のボックスに設けられるロック機素はロックフックまたはロックピンとし、これらの機素が相手側ボックスの縁フランジに下または上から掴む構造であるか、またはその相手側のボックス部の横孔に入り込む構造である。
【0009】
原理的にはロック箇所はどちらの側のボックスに設けてもよいのであるが、実際問題としては、ロック部は上側ボックスに設けることが特に適切であることが判っている。
【0010】
本発明の閉じロック装置の特に簡単な、そして確実な機能を保証するような閉じロック装置は、本発明の形態を採用し、ロック機素が、向い風を受け、ロック位置に移動可能である圧力調製プレートに設けられ、その圧力調製プレートがその側において片側ボックスに取り付けられるベース部材にスプリング力によるリセットが可能であるように設けられることにより実現される。
【0011】
この場合、本発明の第一実施例により、この圧力調製プレートはウイングプレートとして形成し、好ましくはベースプレートとして形成されるベース部材に旋回可能に設けられ、その旋回軸は水平方向に、すなわち、ボックス分離面に平行または立て方向に、すなわち、このボックス分離面に垂直に設けることができる。もっとも、実際問題としては、水平の旋回支軸を採用する方が特に適切であることが実証されている。
【0012】
本発明の他の1つの実施形態では、たとえば、ルーフボックスの前縁に設けられる圧力調製プレートは動圧シリンダのピストンを形成し、この動圧シリンダのピストンロッドはロック機素を支えるか、またはこのロック機素を直に形成している。
【0013】
最後になったが、圧力調製プレートはロック機素を支えるスプリング弾性を有するダイヤフラムであることも本発明の範囲内にある。
【実施例】
【0014】
本発明のその他の利点および詳細は、若干の実施例についての以下の説明ならびに図面により明らかとなる。
図1 停止中の自動車において静止状態にあるルーフ下側ボックスの密封縁を下から掴むための閉じロック装置を備えるルーフボックスのフロント側外観であるが、この閉じロック装置は本発明の第1の実施例に示す上上蓋に設けられる。
図2 走行中においてロックフックが回り込んだ状態にあるルーフボックスのフロント側外観
図3 図1のIII−III線に沿った裁断面。図2のロック位置にあるロックフックの位置も鎖線で示す。
図4 図3と同様の断面図。ルーフボックスの前端が向い風により僅かに持ち上げられ、閉じロック装置が機能する状態が示される。
図5 リセットスプリングを有する、図1−4の機構の旋回位置の拡大詳細図
図6 本発明の閉じロック装置の、動圧シリンダとして形成される構造の第二実施例の透視展開図
図7 静止状態の、図6による閉じロック装置を有するルーフボックスの前端の断面図
図8 本発明の閉じロック装置の別の構造の、図7に対応している断面図。圧力調製プレートがスプリング弾性ダイヤフラムとして形成される。
図9および10 旋回軸が垂直に設けられる旋回可能のウイングプレートを有する閉じロック装置の形態の概略図
【0015】
図1−5に示す本発明の第一実施例には、まず、トランク下部2とこれに旋回可能にヒンジで連結される上蓋3とを備えるルーフボックス1が示されている。旋回がルーフボックス1の図に明らかであるフロント側とは反対側のリヤエッジを支軸としているのか、それとも上蓋3のサイドエッジのひとつを支軸としているかはどちらでもよい。4は、走行中における下側ボックス2に対する本発明によるボックス前端における上蓋3の向かい風による開き上がりを妨げる追加の閉じロック装置を示す。この目的のため、閉じロック装置4は静止状態、すなわち、自動車停止時に、スプリングによりプレストレスが与えられている非ロック位置に設けられ(図1および2に実線で描かれている)、そして走行圧力によってのみロック位置に(図2、3に鎖線で示され、図4にも示す)旋回するように構成される。
【0016】
図1−5に示す閉じロック装置4は、上蓋3の縁6に設けられるベースプレート5とこのベースプレート5にリセットスプリング8を備える旋回軸7を支軸として旋回可能に設けられる圧力調整プレートを有する。この圧力調整プレートはここではウイングプレート9として形成され、ロックフック10を有する。このロックフック10は静止位置において、すなわち、自動車停止時に、図3に実線で示される、外側に向かって旋回した位置に設けられ、リセットスプリングによりこの位置に保たれている。それ故、上蓋3は自在に開閉可能である。すなわち、閉じロック装置4は自動車停止時には全く機能しないわけである。
【0017】
走行中の向かい風が生じるとはじめて、ウイングプレート9は右方向に動き、図3に鎖線で示す位置に回り込むので、走行中のロックフック10は下側ボックス2の密封縁11の下にくる。その結果、かなりの強い風圧に曝されるとき、上蓋3が実際にやや上方に開こうとし、図4に示すフックが密封縁を掴む状態が生じる。この状態のとき、ロックフック10は上蓋3の比較的僅かな開き行程を残しつつそれ以上の上開きを確実に妨げる。
【0018】
図6および7は第二の実施例を示す。この実施例では、閉じロック装置4’は動圧ピストンとして形成されるベース部材5’を備え、スプリング機構8’に逆らって軸12の方向に作用する風圧により移動可能である、圧力調整プレートを形成するピストン9’を有する。このピストンのピストンロッド10’はこの実施例ではそのままロックピンを形成する。このロックピンは動圧シリンダないいしピストンの底部から突き出ており、図7に示すルーフボックス前端静止位置から矢印方向13にはたらく向い風により下側ボックス2の密封縁11のロック孔14に圧し込まれる構造となっている。
【0019】
図8は別の選択肢を示す。この選択肢では、風圧により移動可能であるピストンの代わりに、ロックピン10’’が直に固定されているスプリング弾性ダイヤフラム9が設けられる。この場合も、静止位置では、すなわち、停止中の自動車では、ロックピン10’’はまだ下側ボックスのロック孔14に入り込んでおらず、一定の車速に達したときダイヤフラムが湾曲するだけの十分な風圧が生じたときにはじめてロック孔14に入り込む構造となっている。走行中の向い風の風圧による上蓋がぱたんと開くのは、ある程度の最低速度を超えてからはじめて起こるので、ロックが必要となるのはあくまで車が走り出してからである。
【0020】
図9および10は、本発明の1つの実施例を概念的に示すが、そのウイングプレートは図1−5に示したものと類似しているが、図9および10のウイングプレート9’’’の旋回軸は水平方向ではなく、すなわち、ボックス分離面に平行ではなく、立て方向であり、すなわち、このボックス分離面に垂直に設けられる。図9の実施例のウイングプレート9’’’はボックス上蓋の縁6から突き出ており、旋回ちょう番7’’’の左端に下側ボックスの密封縁の下側を掴んでいるロック部10’’’を有する。これとは異なり、図10の実施例のウイングプレートは密封縁6を下から回り込んで掴む必要はなく、図6−8の実施例と同じく下側ボックス2の密封縁11の孔14に入り込むロックピン10’’’を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】停止中の自動車において静止状態にあるルーフ下側ボックスの密封縁を下から掴むための閉じロック装置を備えるルーフボックスのフロント側外観であるが、この閉じロック装置は本発明の第1の実施例に示す上上蓋に設けられる。
【図2】走行中においてロックフックが回り込んだ状態にあるルーフボックスのフロント側外観。
【図3】図1のIII−III線に沿った裁断面。図2のロック位置にあるロックフックの位置も鎖線で示す。
【図4】図3と同様の断面図。ルーフボックスの前端が向い風により僅かに持ち上げられ、閉じロック装置が機能する状態が示される。
【図5】リセットスプリングを有する、図1−4の機構の旋回位置の拡大詳細図。
【図6】本発明の閉じロック装置の、動圧シリンダとして形成される構造の第二実施例の透視展開図。
【図7】静止状態の、図6による閉じロック装置を有するルーフボックスの前端の断面図。
【図8】本発明の閉じロック装置の別の構造の、図7に対応している断面図。圧力調製プレートがスプリング弾性ダイヤフラムとして形成される。
【図9】旋回軸が垂直に設けられる旋回可能のウイングプレートを有する閉じロ。
【図10】旋回軸が垂直に設けられる旋回可能のウイングプレートを有する閉じロ。
【符号の説明】
【0022】
1 ルーフボックス 2 下側ボックス 3 上蓋
4 閉じロック装置 5 ベースプレート 6 縁
7 旋回軸 8 リセットばね 9 ウイングプレート
10 ロックフック 11 密封縁 12 軸
13 風圧方向 14 ロック孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の走行中に過大な風圧を受けて、または通常の閉じ安全ロック装置の脱落によってルーフボックスの上部縁と下部縁とがぱたんと開くことを防止するため、片方のルーフボックス部分のロック機素が他方のルーフボックス部分の相手方機素と噛み合う様態の閉じロック装置において、
相手側ボックス縁に未だ噛み合っていない位置にくるようにスプリングによりプレストレスが与えられているロック機素が片側のボックス(3)に設けられ、このロック機素が車両走行中のみ向い風の風圧を受けることにより、ロック位置にまで回り込む構造であることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項2】
請求項1に掲げる閉じロック装置において、ロック機素は任意の形態の、動圧を受け動く作動機素と連結していることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に掲げる閉じロック装置において、片側のボックスに設けられるロック機素はロックフック(10)またはロックピン(10’、10’’)とし、これらの機素が相手側ボックス(2)の縁フランジ(11)に下または上から掴む構造であるか、またはその相手側ボックス(2)の横孔(14)に入り込むことを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに掲げる閉じロック装置において、ロック機素が、向い風を受け、ロック位置に移動可能である圧力調製プレート(9、9’、9’’)に設けられ、その圧力調製プレートがその側において片側ボックスに取り付けられるベース部材にスプリング力によるリセットが可能であるように設けられることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項5】
請求項4に掲げる閉じロック装置において、圧力調製プレートはウイングプレート(9)として形成し、好ましくはベースプレート(5)として形成されるベース部材に旋回可能に設けられることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項6】
請求項5に掲げる閉じロック装置において、旋回軸は水平方向に、すなわち、ボックス分離面に平行に設けられることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項7】
請求項5に掲げる閉じロック装置において、旋回軸は立て方向に、すなわち、このボックス分離面に垂直に設けられることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項8】
請求項4に掲げる閉じロック装置において、ルーフボックスの前縁に設けられる圧力調製プレートは動圧シリンダであるピストン(9’)を形成し、この動圧シリンダのピストンロッド(10’’)はロック機素を支えるか、またはこのロック機素を直に形成することを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項9】
請求項4に掲げる閉じロック装置において、圧力調製プレートはロック機素を支えるスプリング弾性を有するダイヤフラム(9’’)であることを特徴とする、閉じロック装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに掲げる閉じロック装置において、ロック機素はルーフボックス(3)に設けられることを特徴とする、閉じロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−512295(P2008−512295A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530579(P2007−530579)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001512
【国際公開番号】WO2006/026957
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507015583)
【氏名又は名称原語表記】THULE SWEDEN AB
【Fターム(参考)】