説明

動物の口部基質測定のための方法および工具

軸部、および、近位端が軸部に取り付けられた細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブであって、先端部が、非平面的に曲げられる、および/または湾曲しており、かつ標識を有し、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、プローブが、少なくとも標識の数字および/または目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される歯肉輪郭用プローブを開示する。ヒト以外の意識のある動物の歯苔を定量化するための方法であって、(a)この歯肉輪郭用プローブの先端部を動物の歯の歯肉縁に位置合わせするステップと、(b)プローブの先端部上の標識を基準にして、縁の長さおよび縁にプラーク沈着物がある場合はそれの長さを測定するステップと、(c)プラーク沈着物の長さと縁の長さとを比較することによって歯に対してのプラークの評点を計算するステップとを含む方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト以外の動物の歯苔などの口部基質を測定する方法に関し、さらに、このような方法で有用である工具に関する。
本出願は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2005年10月14に出願された米国仮特許出願60/727,091の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔衛生に関する問題、より具体的には歯周疾患は、米国の小動物獣医によって行われる最も一般的な診断の1つである。例えば、調査では、歯石および歯肉炎の診断が、民間の獣医学診療で診察されたイヌ科およびネコ科での有病率で第1位と第2位に位置づけられた。ルンド(Lund)ら、J.Am.Vet.Med.Assoc.214:1336〜1341頁、1999年、を参照されたい。
【0003】
歯石および歯肉炎の一般的な病原学的要因は、放置されて蓄積および成長した場合に疾患の進行を促進する歯垢である。例えば、リンデ(Lindhe)ら、J.Periodontal Res.10:234〜255頁、1975年、を参照されたい。その結果、これが、組織破壊、歯および歯肉の機能性の損失、歯の損失、ならびに、健康全般を危険にさらす全身性感染の可能性につながる場合がある。
【0004】
プラークの形成および蓄積を減少させるための取り組みには、正確および再現可能にプラークレベルを定量化する必要性が生じる。プラークおよび歯石の多くの指数ならびにそれらの測定技法が、ヒトの歯周療法学だけでなく獣医歯科においても長年にわたって実行、修正および改良されてきた。例えば、Hennetによる報告、J.Vet.Dent.16:23〜29頁、1999年、を参照されたい。イヌ科での使用のために提案された初期のいくつかの技法は、歯の歯冠表面上全体でのプラークの蓄積を定量化した。しかし、より詳細には、歯肉縁上のプラークは、イヌ科などのヒト以外の動物を含めた歯周疾患の進展に最も大きな影響をもつと考えられている。
【0005】
ヒトの患者に使用するための歯肉縁に焦点を当てたプラーク査定方法が、ハラップ(Harrap)、J.Clin.Periodontol.1:166〜174頁、1974年、スーおよびバーンズ(Xu & Barnes)、J.Clin.Dent.14(4):93〜97頁、2003年、によって提示され、これは、ヒトの患者に使用するための「修正された歯肉縁のプラーク指数(modified gingival margin plaque index)」(MGMPI)を提案し、MGMPIを査定するために歯肉縁でのプラークの測定のための工具として有用である湾曲したプローブについても記載した。
【0006】
概して正確および再現可能であるイヌ科モデルの一例が、ローガンおよびボイス(Logan & Boyce)、J.Vet.Dent.11(2):58〜63頁、1994年、によって提案された。このモデルは資源集約的になる傾向があり、ヒト以外の動物での日常的な使用に、具体的には、プラークレベルの繰返し測定が処置過程全体にわたって必要となる場合、または、プラーク測定が獣医用の薬が使用される状況以外の例えば家庭において動物の飼い主によって行われる場合に、概して適当でもなく簡便でもない特別な手順を必要とする。したがって、ヒト以外の動物の歯肉縁でプラークを定量化する新しい方法、具体的には、特別な手順への依存を減小させるような方法に対する必要性が存在する。詳細には、鎮静作用または麻酔の必要性を減小させるが動物の適応性または協力に悪影響を及ぼさないような方法に対する必要性が存在する。例えばローガン−ボイスのモデル(上記のローガンおよびボイス、1994年、を参照されたい)といった以前の技法の正確度および再現性を少なくとも維持する方法は、特に有益である。さらに、このような方法での使用に適合するプローブなどの工具は、当技術分野での有効な進歩を意味する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸部および細長い先端部を備える歯肉輪郭のプローブ(探針)を提供する。先端部は、その近位端が軸部に取り付けられており、非平面的に曲げられる、および/または湾曲する。先端部は、標識を有し、前記標識の数字および目盛は、測定された長さを表示する。プローブは、少なくともこれらの標識の数字および/または目盛により、ヒト以外の意識のある動物の歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される。
【0008】
本発明は、ヒト以外の意識のある動物の例えば歯苔といった口部基質を定量化する方法をさらに提供する。この方法は、(a)上述の歯肉輪郭用プローブの先端部を動物の歯の歯肉縁に位置合わせするステップと、(b)プローブの先端部上の標識を基準にして、縁の長さおよび縁に口部基質の沈着物がある場合はそれの長さを測定するステップと、(c)基質の沈着物の長さを縁の長さと比較することによってその歯に対しての基質の評点を計算するステップとを含む。
【0009】
本発明は、また、ヒト以外の動物の歯苔蓄積を減少させるための試験方式の有効性を査定するための調査を実施する方法を提供する。この方法は、上で概説したステップ(a)、(b)および(c)を動物の複数の歯のそれぞれに対して実施することによって動物の歯苔を定量化するステップと、試験方式の開始の前の第1の時点および試験方式の開始の後の第2の時点での複数の歯に対しての平均のプラーク評点を基準方式と比較することによって計算するステップとを含む。
【0010】
本発明は、(a)ヒト以外の動物の歯苔蓄積を減少させるように配合された食料と、(b)上述した歯肉輪郭用プローブとを含むキットを提供する。
本発明は、ヒト以外の動物の歯苔蓄積を減少させるように配合される食料を市販する方法をさらに提供する。この方法は、上述した食料を同時に市販するまたは同時に包装する方法を含む。
【0011】
本発明は、また、動物の飼い主による上述した歯肉輪郭用プローブの使用に関連する情報を連絡するための手段(方法)を提供する。連絡手段は、例示的には、ラベル、能書、小冊子、広告、コンピュータ可読デジタルまたは光学媒体、音声またはビデオでの説明、ウェブサイトページ、あるいは、それらの組合せを含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、2003年に上記スーおよびバーンズにより、ヒトの患者での使用のために提案された上述のMGMPIモデルに由来するヒト以外の動物の歯肉縁におけるプラークを定量化する新しいモデルを提供し、これは、ヒトとヒト以外の動物との間での例えば歯列および適応性といった差に対応する方法による。
【0013】
イヌ科およびネコ科などのヒト以外の動物の歯列は、典型的には、特に歯肉縁の表面的特徴においてヒトの歯列よりはるかに不規則である。「歯肉輪郭(歯齦外形)」という用語は、本明細書では、イヌ科またはネコ科などのヒト以外の動物の歯の非常に不均一な(ヒトの歯列と比較して)サイズおよび形状に付随して不規則的に起伏する歯肉縁を指す。したがって、ヒトでの使用のための開発されたMGMPIのプローブは、ヒト以外の動物での歯肉輪郭用プローブとしての使用に必ずしも理想的であるとは限らない。
【0014】
また、ヒト以外の動物には、歯肉輪郭の検査への協力を得ることにおいて大きな課題がある。プラークを減少させるための複数の処置を比較することを含む調査では、例えば各処置の前に基準線を定めるために繰り返しの歯口清掃を必要とする任意の方法のためにこの課題がさらに増大される。このような調査での動物の協力は、典型的には麻酔によって得られることから、専門家の助けが多分に必要となりそのためにコストがかかる。
【0015】
以下で詳細に記載するように、本発明によって提案される新しい歯肉輪郭用プローブおよびその使用方法は、MGMPIなどのヒトモデルからヒト以外のモデルへの転換において直面する1つまたは複数の問題に対処する。
【0016】
本発明の歯肉輪郭用プローブの例示的な実施形態を図1に示す。プローブは、その第1の端に細長い先端部3aが付けられている軸部1を備える。一実施形態では、図1に示すように、第2の細長い先端部3bが、軸部1の第2の端に付けられている。第2の先端部3bは、先端部3aと同一、類似または対照の構成であってよい。しかし、第2の先端部3bは本明細書では任意選択であることに留意されたい。先端部3aは、自由遠位端7と、先端部3aが軸部1に取り付けられる近位端4とを有する。軸部は、図示するように、任意選択的に、先端部3aの取り付けの点に隣接する先細領域2aと、(第2の先端部を有する実施形態においては)第2の先端部3bの取り付けの点に隣接する第2の先細領域2bとを有する。
【0017】
先端部3aの構成を、例示的な実施形態のためにさらに詳細に図2に示しており、図2には、先端部の3次元形状をより明確に理解できるようにするために2つ図を提示する。重要なことであるが、先端部は、非平面的に曲げられる、および/または湾曲する。「曲げられる」という用語は、本明細書では、例えば図2の点5における曲げ部で示すような、先端部に沿った1つまたは複数の点での縦方向変化の多少なりとも急激な変化を受けることを意味する。「湾曲する」という用語は、本明細書では、例えば図2の点6から実質的に先端部の遠位端7まで延在する領域の湾曲部で示すような、先端部に沿った1つまたは複数の領域での縦方向に漸進的な変動を受けることを意味する。先端部の精確な幾何学的形状は変動してよいが、常に非平面的である、すなわち、器具が平面上に置かれたときに、先端部はその長さ全体を通して平面に連続して接触することができない。これは、それぞれの写真において先端部が平面上に置かれていると見なされる図2の両方の写真内にはっきりと分かる影から少なくとも明確である。図2に示す特定の実施形態では、先端部は、軸部の先細領域2aと交差する第1の面内の曲げ部(例示的には約20°)を有する。この曲げ部は、先端部の近位端4に近傍の点5にある。同一の特定の実施形態において、先端部は、曲げ部の遠位にある点6から始まって実質的に遠位端7まで延在する湾曲部(例示的には約180°)を有しており、湾曲部の少なくともかなりの部分が軸部の先細領域2aと交差しない第2の面内にある。
【0018】
先端部は、標識を有し、前記標識の数字および目盛は、先端部上で測定された長さを表示する。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、前記標識の数字および目盛は、遠位端からの曲線距離を表示する。任意のシステムの標識が使用されてよいが、一実施形態では、図2に示すように、標識は、先端部の本体に付けられた対照の色が交互になった広い帯と狭い帯とを含む。例えば、先端部の遠位端7から、常に、広い帯11は2mmから4mmまでの距離を延在し、第1の狭い帯12は6mmの距離に配置され、広い帯13は8mmから10mmまでの距離を延在し、第2の狭い帯14は12mmの距離に配置される。
【0019】
プローブは、少なくとも先端部上の標識の数字および/または目盛により、ただし、典型的にはさらには先端部の特定の3次元形状により、例えば本明細書に記載する方法によるヒト以外の意識のある動物の歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される。図2に示すプローブの3次元形状および標識は、イヌ科での使用に対して簡便であることが分かっている。また、小さな修正を加えてあるいは加えずに、このプローブは、ネコ科での使用にも簡便であろう。適当な非平面的な曲げおよび/または湾曲形状ならびに適当な標識の数字および目盛の選択は、本明細書の開示内容に基づいて、当業者によってヒト以外の任意の動物に対して行われることができる。しかし、好適な実施形態では、先端部は、実質的に、図2に示すように曲げられるおよび/または湾曲され、少なくとも標識の数字および/または目盛により、意識のあるネコ科またはイヌ科での使用に適合される。一実施形態では、プローブは、一方の端上に1セットの標識および他方の端上に異なるセットの標識、例えば、一方の端上のメートル尺および他方の端上のインチなどの異なる目盛または一方の端上の1mm目盛および他方の端上の2mm目盛などの異なる目盛、を有する。
【0020】
Dmm刻みで距離を区切る標識は、目視により2つの近接する標識の中間点を推定することが容易であり、典型的には、少なくとも0.5×Dmmまでの精度での測定を可能にする。したがって、先端部の遠位端から測定して2mmの複数の刻みで区切る標識を有する図2の例示的なプローブは、少なくとも1mmの精度で歯肉輪郭に沿った測定を可能にする。この精度は、本明細書に記載する方法に従ったプローブの使用においては十分であることが分かっている。
【0021】
本発明の歯肉輪郭用プローブは、例えば口部基質の蓄積および除去を実演するための診断工具または教材として、いろいろな面で有用である。しかし、主として、この工具は、口部基質の蓄積を定量化するための新しい方法に対して基礎をなすものである。
【0022】
一実施形態では、上述した歯肉輪郭用プローブは、ヒト以外の意識のある動物の口部基質を定量化するための方法で使用される。この方法は、(a)プローブの先端部を動物の歯の歯肉縁に位置合わせするステップと、(b)先端部上の標識を基準にして、縁の長さおよび縁に口部基質の沈着物がある場合はそれの長さを測定するステップと、(c)基質の沈着物の長さを縁の長さと比較することによってその歯に対しての基質の評点を計算するステップとを含む。
【0023】
この方法によって定量化され得る口部基質のタイプの例には、歯苔、歯石、ステインおよびデブリが含まれる。一連の実施形態では、基質はプラークである。
例えば図2に示すように非平面的に曲げられる、および/または湾曲した、あるいは、ヒトの歯科で使用される、例えばネーバース(Nabers)2N盲嚢探針の形状に近い(ただし、本明細書で提示する標識が付されている)先端部を有する歯肉輪郭用プローブは、2003年の上記スーおよびバーンズのMGMPIモデルに従ってヒトに使用するように記載されている実質的に平面の構成を有するプローブより接近してイヌの歯列内での歯肉縁の湾曲をなぞることが分かっている。改良されたアライメントにより、動物に不快感を与えることのない正確および再現可能な測定が可能になる。
【0024】
この手順の間において動物は意識があるが、アトロピンなどの薬(例えば、約0.02から約0.1mg/kg体重を皮下に投与する)が、普通であれば歯肉縁の見え方を不明瞭にするまたは歪める可能性がある唾液流量を一時的に減少させるために測定の前に与えられてよい。別法としてまたは加えて、例えば、メチレンブルー、中性赤、または、エオシンもしくはエリトロシンなどのフルオレセインベースの希釈水溶液(例えば約0.05%〜約5%)といった適当なステインが、プラークの視認性を強化するための歯垢顕示液として測定の前に歯肉縁の区域に適用されてよい。例示的には、約0.5%から約2%の水溶性エオシンが良好に機能することが分かっている。
【0025】
選択された歯に対して歯肉縁の長さおよび縁におけるプラーク沈着物(存在する場合には)の長さを測定しておくと、例えばプラークを示す歯肉縁の全体の長さに対する比率またはパーセンテージとして、その歯に対してのプラーク評点を計算することができる。好ましくは、複数の歯に対して歯肉縁のプラークが判断され、例えば評価された各歯に対しての評点の平均値として平均のプラーク評点が計算されることが好ましい。評点は、歯石、ステインおよびデブリを含む他のタイプの口部基質に対して同様に確立されることができる。
【0026】
この方法は、例えばヒト以外の哺乳動物といったヒト以外の任意の動物に使用されることができる。例示的には、哺乳動物の中でも特に、動物は、限定することなくイヌ科およびネコ科の動物を含めた食肉目の一員であってよい。特定の実施形態では、動物はコンパニオンアニマルである。本明細書での「コンパニオンアニマル」は、単体の動物が単にまたは部分的にコンパニオンシップのために飼われているか否かにかかわらず、ペットとしてヒトの飼い主によって飼われている任意の種の単体の動物、または、イヌ(ケイネス・ファミリアリス)およびネコ(イエネコ)を含むペットして広く飼いならされた様々な種の任意の単体の動物である。したがって、本明細書での「コンパニオンアニマル」は、作業イヌ、野ネズミ防除のために飼われているファームキャットなどとに加えてペットのイヌおよびネコを含む。
【0027】
ヒト患者でのプラークの定量化は、典型的にはすべての歯の検査を含む。これは、しばしば、動物の不快感および/または不安に起因する協力の欠如のために、ヒト以外の意識のある動物には技術的に実用的ではない。しかし、例示的には、イヌ科では、過度の不安または不快行動を誘発することがないこのような測定において利用可能である歯に測定が限定される場合には、典型的な結果が得られ得ることが分かっている。
【0028】
イヌ科の動物では、本目的に対して利用可能な歯は、上顎第3門歯、イヌ歯、第1から第4前臼歯および第1臼歯、ならびに、下顎イヌ歯、および第2から第4前臼歯を含む。したがって、一実施形態では、イヌ科において平均のプラーク評点が判断される複数の歯が上の中から選択される。
【0029】
上述の方法の使用は、ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるための方式を評価することにおいて特に有利である可能性がある。このような方式は、例えば、食事調節、薬物、噛むことができる玩具または食糧の提供、口腔衛生の治療処置(例えばブラッシング)などのうちの1つまたは複数を含んでよい。一実施形態では、評価される方式は、歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を動物に与えることを例えば含む食餌療法方式である。
【0030】
一実施形態では、ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるための試験方式の有効性を査定するための調査を実施する方法は、基準方式と比較することにより試験方式の開始の前の第1の時点および開始の後の第2の時点で動物の歯苔を定量化するステップを含む。歯苔を定量化するステップは、上述の方法により、より詳細には歯肉縁のプラークが複数の歯において定量化される方法により、動物の意識がある間に遂行される。例えば、対象の動物がイヌ科である場合、イヌ科において平均のプラーク評点が判断される複数の歯は、上顎第3門歯、イヌ歯、第1から第4前臼歯および第1臼歯、ならびに、下顎イヌ歯、および第2から第4前臼歯から選択される。
【0031】
上述の調査は、必ずそうとは限らないが、複数の動物を含んだ無作為化実験であってよい。一実施形態では、同じ動物が、交叉実験設計または同時進行の実験設計において試験および基準方式を施される。驚くべきことに、正確および再現可能な結果は、費用および時間がかかりさらには一般的には各処置または方式の開始前に麻酔を必要とする可能性がある追加の歯口清掃を必要とすることなく、この方法によって得られることができることが分かっている。
【0032】
プラークの定量化のための第2の時点(例えば、試験または基準方式の開始後の時点)は、開始後の簡便な任意の間隔にあってよい。しかし、1日目ではプラーク評点が低くなりさらには変動性が比較的高くなること、および、4日目までにプラークレベルは飽和状態になり始めて感度の損失を招くことが分かっている。したがって、プラークの定量化の開始後における好ましい時間は、通常、各方式の開始から約2日後から約3日後である。
【0033】
注目すべきことには、本発明によるプラークの定量化の方法は十分に簡便であり動物にとってストレスがないことから、必要に応じて適合させることにより、これらの方法は、薬が使用されない状況においても使用されることができ、いくつかの実施形態では、例えば動物の飼い主といった非専門家によって使用されることができる。プラークの蓄積が、一般的な口腔衛生および特定的な歯肉の衛生(例えば歯肉炎の発生および発病度)にとって有害な要因であることから、本工具および方法は、プラークを減少させるための方式(例えば、薬物、食料、噛むことができる物品、機械的な口腔衛生装置、歯磨き粉、洗口剤などのうちの1つまたは複数を含む方式)を施される動物のプラークの蓄積を監視することを可能にすることにより口腔衛生を強化することができる。
【0034】
したがって、さらなる実施形態では、ヒト以外の動物の口腔衛生を強化するための方法は、(a)歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を動物に与えるステップと、(b)少なくとも標識の数字および/または目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合された本明細書に記載する歯肉輪郭用プローブを使用して、動物の1つから複数の歯の歯肉縁におけるプラークの蓄積を監視するステップとを含む。この監視ステップは、例えば動物の飼い主または専門家によって行われてよい。
【0035】
プラークの蓄積に部分的に起因するあるいはそれによって悪化させられる歯肉炎および他の口腔状態は、心臓血管疾患を含む多くの全身的不調の原因の可能性のある病原学的要因である。したがって、別のさらなる実施形態では、ヒト以外の動物の全身健康状態を強化する方法が、(a)歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を動物に与えるステップと、(b)少なくとも標識の数字および/または目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合された本明細書に記載する歯肉輪郭用プローブを使用して、動物の1つから複数の歯の歯肉縁におけるプラークの蓄積を監視するステップとを含む。この監視ステップは、やはり、例えば動物の飼い主または専門家によって行われてよい。
【0036】
別の実施形態では、キットが例えば飼い主に対して用意される。このキットは、プラークを減少させるための方式および上述した歯肉輪郭用プローブを確立するための材料(例えば、薬物、食料、噛むことができる物品、機械的な口腔衛生装置、歯磨き粉、洗口剤などのうちの1つまたは複数)を有する。
【0037】
例示的には、方式が少なくとも部分的には食餌療法方式である場合、このキットは、(a)ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料と、(b)先端部上にある少なくとも標識の数字および/または目盛により、意識のある動物での歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合された上述の歯肉輪郭用プローブを有する。食料およびプローブは、一緒にまたは別々に包装されてよい。
【0038】
任意選択的に、キットは、動物の飼い主に情報を連絡するための手段(方法)をさらに有する。この情報は、歯苔の蓄積を減少させることにおける食料の有効性を評価または監視するための、食料を動物に与えることに付随した歯肉輪郭用プローブの使用のための指示を含んでよい。連絡手段は、印刷されたコピー、ビデオディスプレイ、録音、コンピュータインターフェース、コンピュータ可読光学およびデジタル媒体、ワールドワイドウェブ、ならびにそれらの組合せを例えば含む任意適当な媒体を含んでよい。このような連絡手段の具体的な例には、限定しないが、製品ラベル、挿入物、小冊子、印刷物、広告、公示、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、カードまたはディスク、コンピュータメモリ、あるいは、ウェブページが含まれる。連絡手段は、例えば、電話情報提供サービス、ウェブサイトアドレスなどの他の情報供給源に飼い主を誘導することができる。
【0039】
例えば歯苔の蓄積を減少させることにおける食料の有効性を評価または監視するための、ヒト以外の動物に食料を与えることに付随した歯肉輪郭用プローブの使用のための指示といった本明細書に記載する歯肉輪郭用プローブの使用に関する情報を有するこれらの連絡手段は、それ自体が本発明のさらなる実施形態である。
【0040】
任意選択的に、キットは、プラークの視認性を強化するための歯垢顕示液として、例えばメチレンブルー、中性赤、または、典型的には希釈水溶液(例えば約0.05%から約5%)の形態のエオシンもしくはエリトロシンなどのフルオレセインベースのステインといった適当なステインをさらに含む。一実施形態では、歯垢顕示液は、約0.5%から約2%の水溶液中のエオシンである。任意選択的に、キットは、このような歯垢顕示液を歯肉縁に適用する手段をさらに含む。これらの手段は、例示的には、スプレーボトル、綿棒(任意選択的に、Q−tips(商標)綿棒の棒に取り付けられる)、綿ボール、ウェットティッシュ、拭き取り用の布、または、これらのうちのいずれかと実質的な同等の手段を含んでよい。一実施形態では、歯垢顕示液は、例えばスプレーボトルが薬剤を含むようにまたは綿棒に薬剤が浸み込んでいるように、適用手段内に予め包装される。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を市販する方法を提供する。この方法は、上記歯肉輪郭用プローブを食料と同時に市販するまたは同時に包装するステップを含み、歯肉輪郭用プローブが、少なくとも標識の数字および/または目盛により、意識のある動物での歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される。同時に市販するプログラムは、例示的には、以下の技法の1つまたは複数を含む:
食料およびプローブの同時に販売促進すること;
例えばプローブの軸部に印刷されたまたは刻まれた、食料に関連する商品名またはロゴを含む、食料およびプローブに同時にブレンドすること;
食料が購入可能である小売支店または獣医の診療所でのプローブの店頭ディスプレイ;
例えば割引価格でのプローブの購入のための、食品の包装に取り付けられるクーポン券;
一緒に購入した場合の食料および/またはプローブの値段の割引;
少なくとも最小量の食料の購入時におけるプローブの無料サービス;など。
【0042】
任意選択的に、このような同時に市販するプログラムは、上述したような動物の飼い主への情報の連絡手段をさらに含んでよい。
このような同時に市販するプログラムはまた、いくつかの実施形態では、歯の清掃を含んだ専門家による動物のグルーミングサービスおよび/または獣医診療所もしくは病院により用意される口腔清掃スケジュールとの抱き合わせ販売を含んでよい。
【0043】
本発明は、本明細書に記載する特定の方法体系、実験計画案および試薬が変動する場合があることから、これらに限定されない。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するのが目的であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形の「1つの」および「本(その)」は、文脈が明確に異なる意味を述べていない限り、複数への言及を含む。同様に、「含む」、「有する」、「含んでいる」、および「有している」という用語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。
【0044】
異なる意味に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的および学術的用語および任意の頭字語は、本発明の技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書での記載と類似または等価である任意の構成、方法、製造業者の製品、あるいは、他の手段または材料が本発明の実施において使用されることができるが、好適な構成、方法、製造業者の製品、あるいは、他の手段または材料は本明細書に記載されている。
【0045】
本明細書で引用または参照されるすべての特許、特許出願、刊行物および他の参考文献は、法によって許される範囲で参照により本明細書に組み込まれる。これらの参考文献の考察は、本明細書でなされる主張を単に要約することを意図する。これらのあらゆる特許、特許出願、刊行物または参考文献、あるいはそれらの任意の一部分が本発明に関連する先行技術であるということは認められず、これらの特許、特許出願、刊行物および他の参考文献の正確性および妥当性に異議を申し立てる権利が明確に確保されている。
【実施例】
【0046】
本発明は以下の実施例によってさらに例示されることができるが、これらの実施例は単に例示目的で組み込まれており、明確に指示しない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
(材料および方法)
5、7または10匹の混血種および/またはビーグル犬の調査対象群を、新しい歯苔の定量化方法の開発において使用した。この調査対象群への採用基準は、適度に健康な口腔および完全な歯列であった。すべての手順を、動物管理使用委員会の厳格なガイドライン内で、および、ヒルズペットニュートリション社(Hill’s Pet Nutrition,Inc)の動物福祉の規定内で実行した。試験から離れている間、栄養上完全であり、口腔の清潔度を維持するのを助けるヒルズプリスクリプションダイエット(Hill’s Prescription Diet)(商標)t/d(商標)のイヌ科用食料をイヌに与えた。初めに、標準的な手順に従ってすべてのイヌに口腔清掃を施した。清掃後、動物が試験されていないときに、市販されている電気歯ブラシおよびペット用歯磨き粉を使用して通常の歯のブラッシングを行った。清掃手順を、最適な清潔度および口腔衛生を維持するためにおよそ3カ月ごとに行った。
【0047】
基本的な調査パラメータを反復させて確立し、最も頻繁に使用される2セル、8日(セルごとに4日)のクロースオーバー設計とした。以下で言及する例外を除いて、採点者(プラークレベルを記録する人)は、使用される処置に対してはマスクをした。また、ほとんどの試験において、イヌを試験または対照のどちらかの一グループに無作為に振り分けた。すべての定量化手順を意識のある動物に対して行ったが、一時的に唾液流量を減少させるときにのみ、アトロピン(0.06mg/kg体重、皮下)を使用した。給餌およびプラークの評点化を、それぞれ、調査期間における1日の決まった時間に実施した。
【0048】
0日目(基準線)に、イヌの歯に入念にブラシをかけて、図1および図2に示す歯肉輪郭用プローブを使用して、1mmの精度で選択した歯の歯肉縁の長さを測定した。また、基準線において、エオシンの希釈水溶液を用いて、ブラッシング後に残った任意のプラークのこれらの縁に沿った長さを測定した。基準線での測定後、2日から7日の期間、イヌに第1の食料(試験用または対照用)を与えた。各調査の第1の行程の最終日に、イヌに対して歯肉縁のプラーク蓄積の査定を再度行った。次の日に、イヌの歯にブラシをかけて、新しい基準線のプラーク評点を記録して、次いで第2の食料とクロースオーバーさせた。第2の食料の割当て期間後、歯肉縁に沿ったプラークを再度測定して記録した。
【0049】
プラーク評点を歯肉縁の長さのパーセントとして各歯に対して計算した。
個々の歯の評点=(縁に沿ったプラークの長さ)/(縁の長さ)×100 (1)
次いで、口全体の評点を得るために個々の歯の評点を平均した。
【0050】
口全体の評点=(個々の歯の評点の合計)/(評点化された歯の数) (2)
口全体の評点を使用して、選択した採点日における基準線からのプラークの数的増加を計算した。
【0051】
プラークの増加=(口全体の評点:n日目)−(口全体の評点:基準線) (3)
最後に、試験用食料と対照用食料との効力の差を、対照用食料に対しての基準線からのプラーク増加のパーセンテージとして計算した。
【0052】
効力の差=(プラークの増加:対照用−プラークの増加:試験用)/(プラークの増加:対照用)×100 (4)
対のt分布を使用して、統計的有意性(p<0.05)における差を試験した。この調査に含まれた上顎の歯は、第3門歯、イヌ歯、第1から第4前臼歯、および、第1臼歯であった。含まれた下顎の歯は、イヌ歯、および、第2から第4前臼歯であった。
(結果)
新しいプラーク蓄積の定量化方法を実証する手段として後続の実験を行った。
【0053】
縁の測定。歯肉縁の長さを75日の期間にわたって数回測定して、測定の一貫性およびふらつきを判断した。結果により、この期間全体にわたって測定した縁の長さの有意な偏差がないことが分かった。最初の測定からの平均の差は、−3.1%から+4.3%の範囲であり、いずれも統計的に有意ではない。この実験の結果から、同一群のイヌを持続的な形で調査の対象として含むことができる場合、縁の長さを測定する必要があるのは頻度としてはせいぜい年に4回であり、したがって、縁の長さの測定は便宜主義的に各保守清掃時に記録されると判断した。
【0054】
時間的経過。歯肉縁に沿ってプラークを蓄積させる最適な期間を、3つの個別の実験で査定した。ここで問題にしているのは、プラークの飽和(100%の範囲に接近しているあるいは到達した、歯肉縁に沿ったプラークの成長として定義される)の程度がこの方法の感度に与える影響であった。大きなプラークの増加では広い範囲のプラーク減少技術を定量化できることが望ましいが、縁に沿ったプラークの飽和はこれらの差を減衰させると理論付けられた。
【0055】
第1の実験では、基準線においてさらには1日、2日、3日、および4日後に、プラーク評点を記録して、イヌが対照用食物を与えられている間の辺縁性プラーク蓄積速度を記録に残した。結果により、1日、2日、および3日目のプラーク増加は、プラーク成長曲線の実質的に線形部分内にあり、したがって、可能性としてはデータ収集において許容できることが示された。
【0056】
2つの食料の間の計算されたプラーク減少効力の差に対してのデータ収集の時点による影響を査定するために、第2の実験を行った。具体的には、歯肉縁に沿ったプラーク飽和を誤差の原因として細かく調べた。ヒルズプリスクリプションダイエット(Hill’s Prescription Diet)(商標)t/d(商標)(試験用食料)およびコンプリートメンテナンスフード(complete maintenance food)(対象用食料)を、プラーク測定を基準線から1日、2日、3日、および7日後に行う非盲検クロースオーバー検査で使用した。結果により、歯肉縁に沿ったプラーク成長速度がイヌが試験用食料を与えられているときよりも明らかに遅いが、対照用食料でのイヌの歯肉縁でプラークが飽和し始めると、この食物の計算される優位性は影響を受けることが示された。この点に至るまで、これらの食料間の計算された1日の差は類似しており、それぞれ1日、2日、および3日目において、55%、66%および60%の値を示したが、対照用食料の方の縁が飽和し始めるが試験用食料の方の縁は飽和しない7日目には35%まで低下した。加えて、1日目の評点には高い変動性があり(その日のプラーク評点が低いことに起因する可能性が最も高い)、したがって、2日および3日目が最も信頼できると判断した。
【0057】
5日間のクロースオーバー試験(与えられた各食料に対して2日間の期間後のプラークの採点)の結果が8日間の試験と統計的に同じ結果を示すかどうかを判断するために、第3の実験を行った。前の調査と同じ試験および対照用食料をこの盲検調査に使用して、51±16%の試験用食料のプラーク減少効力を示された。この結果と8日間の調査設計(以下)において試験された同じ食料に対しての平均結果との間に統計的な差はなかった。したがって、すべての評点化を理想的に行うことができる時機の時間帯があるように見受けられる。プラーク評点が低いときは(1日目)、変動性が高くなり結果が不確かになる場合があるようである。また、縁が飽和し始めるとき(4日目)、調査の感度が悪い影響を受ける場合があるようである。したがって、2日目または3日目に査定を行うことが最良の実践であると見受けられる。
【0058】
調査ごとの変動性。プラーク減少効力データの一貫性および再現性を求めるためにプリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)(試験用)とコンプリートメンテナンスフード(対照用)とを比較して、5つの別個の5−イヌ、8日間の盲検調査を行った。これらの実験の結果により、この方法の正規化された変動性(変動係数)が18%より小さく、試験用と対照用との平均の差が46±8%であることが示された。
【0059】
給餌の順序。非盲検調査おいてプリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)(試験用)とコンプリートメンテナンスフード(対照用)の給餌順序がプラーク減少効力のデータに与える影響を査定するために実験を行った。試験用食料を最初に与えた場合、処置間の平均の差は40±11%(p=0.0149)であった。対照用食料を最初に与えた場合、処置間の平均の差は38±15%(p=0.0014)であった。したがって、結果は給餌の順序と無関係である。
【0060】
群ごとの変動。異なる群の動物を使用することのプラーク減少効力データに対する影響を判断するために調査を実施した。プリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)(試験用)をコンプリートメンテナンスフード(対照用)と比較する調査を、5匹のイヌの2つの異なる群を使用して行い、その結果を比較した。2匹の混血種のイヌおよび3匹のビーグル犬から構成される第1の群は、食料間の差が40±11%(p=0.0149)であった。5匹のビーグル犬から構成される第2群は、食料間の差が49±9%(p=0.0004)であった。グループ間の統計的な比較では、群の間における有意な差は示されなかった。
【0061】
同一採点者内での変動。同一採点者内での変動を査定するために、1人の採点者に無作為の順序で各イヌからのプラークを評点化させて調査を行った。この実験に使用した食料はプリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)(試験用)およびコンプリートメンテナンスフード(対照用)であり、これらを無作為かつ盲検に割り当てた。第1の採点と第2の採点との間の絶対差は3%と12%との間であり、4つの採点セッション全体を通しての平均の差は6%であった。データの統計的解析では、第1の採点と第2の採点との間に有意な差は示されなかった(p>0.05)。
【0062】
採点者間の変動。採点者間の変動を査定するために、2人の異なる採点者に無作為の順序で異なる日に各イヌからのプラークの蓄積を評点化させて調査を行った。この調査に使用した試験用および対照用食料は、同一採点者内での変動の調査で使用した食料と同じであり、採点者には知らされていない。それぞれの日の評点化セッションからのデータを使用して各採点者から得られた評点を比較し、次いで、これらの個々の評点を組み合わせて採点者間の平均の差を計算した。(1)各採点者の全口のプラーク評点と(2)各採点者の算出された効力差の値とを比較することにより採点者間の変動を監視した。全口のプラーク評点に対して得られた同一採点者内での変動は、平均で18%であり、一方、効力差の変動性は平均で10.4%であった。これらの測定のどちらも、採点者間での統計的に有意な差を示さなかった(それぞれp=0.2920および0.3586)。これらのデータは、本方法の結果が採点者の同一性と無関係であることを示しているが、それでもなお、各調査の全体を通して1人の採点者を使用してプラークを評点化させることが推奨される。
【0063】
ディファレンシャル効果および伝統的な方法との相関関係。(1)互いに対して既知の「ステアステップ」プロファイルを有する食料を含む効力の程度が異なる食料を区別するために、および、(2)伝統的なプラークの定量化方法の調査結果と互いに相関付けるために、本方法の能力を査定することを可能にする調査を行った。
【0064】
プリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)対コンプリートメンテナンスフードと;
サイエンスダイエット(Science Diet)(商標)オーラルケア(Oral Care)(商標)対コンプリートメンテナンスフードと;
適度に有効な基準食料対コンプリートメンテナンスフードと
を含む、調査により収集されたデータを、ディファレンシャル効果に対する方法の感度および伝統的な方法との相関関係を記録に残すのに使用した。
【0065】
本方法を使用したプリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)の調査では、対照用食料に対しての効力差の平均が46±8%なった。サイエンスダイエット(Science Diet)(商標)オーラルケア(Oral Care)(商標)の調査では、対照用食料に対しての効力差の平均が33.0±2.3%になった。両側検定では、サイエンスダイエット(Science Diet)(商標)オーラルケア(Oral Care)(商標)の効力は、プリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)の効力とは有意に異なっており(p=0.0034)、本方法がディファレンシャル効果のある技術を区別することができることを示した。
【0066】
これらの結果とより伝統的な方法により得られた結果とを比較するために、公表されている古い情報を使用した。ローガン−ボイスのプラーク査定方法(上記のローガンおよびボイス、1994年)を使用したサイエンスダイエット(Science Diet)(商標)オーラルケア(Oral Care)(商標)対対照用食料の以前の試験では、サイエンスダイエット(Science Diet)(商標)オーラルケア(Oral Care)(商標)は対照用食料より28%だけ優れていることが示されており(ファイルデータ)、したがって、本発明に対して記載した33%の差によく一致した。
【0067】
より最近では、ローガンら、J.Vet.Dent.19:15〜18頁、2002年、が、6カ月間のプラークおよび歯肉炎の調査において、プリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)を与えられたイヌと対照用を与えられたイヌとの間で39%のプラーク蓄積の差を記録に残しており、このことは、本方法とローガン−ボイスの方法との間の高い相関性をさらに裏付けている。
【0068】
本方法およびローガン−ボイスの方法を使用した、適度に有効な基準食料(試験用)対食料品店ブランドの食料(対照用)を評価するための直接的な相関関係の調査では、10匹のイヌ(1セルごとに5匹で、歯石およびプラークを阻止している)を、使用するために、ローガン−ボイスの伝統的な調査に使用された30匹のグループから選択した。本方法におけるデータを、5匹のイヌ/セルの同時進行の2つの調査(一方は第1の行程の間で、他方は伝統的な査定の第2の行程の間)、さらには、これらの方法間の任意の可能性のある差を細かく調べるためのクロースオーバー設計(両方の行程からのデータを使用する)のときに生成して評価した。イヌに対して試験用食料または対照用食料のどちらかを無作為に割り当てた。ローガン−ボイスの方法からの結果では、約13.5%の試験用食料から適度なプラークの減衰効力が示された。本方法からのデータを使用した場合、試験用食料は、第1の行程の同時進行の比較、第2の行程の同時進行の比較、および、すべての調査のクロースオーバーの比較に対して、それぞれ、10.3%、10.4%および9.9%のプラーク蓄積の減少を示した。これらの調査を統合すると、本方法と伝統的なローガン−ボイスのモデルとの間に、適度に有効な技術の査定、高い有効性の技術の査定、および、長時間の時点において生成されるデータを比較するときの査定のための高い相関性が示され、相関係数は0.9714となる。
(考察)
本発明のプローブおよび方法は、ヒトおよび動物の資源要件の実質的な減少に付随して、歯肉縁のプラークの減少効力を正確および再現可能に定量化することを可能にする。動物に対して使用するためのこの方法の適合には、2003年の上記スーおよびバーンズによって説明されるヒトへの使用のための方法に対しての実質的な修正を含んだ。このような修正には、測定に使用されるプローブ、プラークの成長を可能にする時間、調査にかかわる清掃の排除が含まれた。本方法を、正確度および再現性に影響を及ぼし得るパラメータに基づいて実証してきた。実証プロセスの間に行われたすべての調査からのデータの抽出により、プラークの蓄積のために2または3日間を使用するクロースオーバー設計は既知の変動性を有する一貫性のある結果を生成することを示唆する。例えば、5匹のイヌを使用したクロースオーバー調査からのデータから約18%の変動係数が示され、これが、処置間の差が平均値で≧35%である一貫性のある検出を可能にする。また、これらのデータは、動物の数が増加した場合の検出力の予測を可能にしており、これにより、10匹のイヌを使用することで処置間の差が平均値で≧22%である一貫性のある検出が可能になることが示唆された。したがって、感度の増加を必要とする調査は、ほんの数匹の動物の対象の数を増加させることにより達成され得る。この実証プロセスは、明確に、本方法が正確、再現可能であり従来の方法と十分に相関性があることを示した。
【0069】
本方法は、ローガン−ボイスの伝統的な方法(上記のローガンら、2002年)を使用した6カ月間の臨床調査の間のプリスクリプションダイエット(Prescription Diet)(商標)t/d(商標)のプラークおよび歯肉炎減少効力を評価した調査と十分に相関性があることが示された。プラーク評点に加えて、伝統的な調査では、観察されるプラーク減衰レベルにおいては、対照用食料に対する歯肉炎の実質的な(36%)減少も起こったことが記録に残されており、これは、プラークの減少と歯肉の衛生との直接的な関係性を示している。
【0070】
近年、歯の歯肉と歯冠に半分ずつ均等に重点を置くことを許容するいくつかの従来の評点化方法についての懸念が取り上げられており、さらに、このような方法の臨床的関連性が疑問視されている。しかし、本発明の方法は、臨床的関連性が十分に記録に残されている歯肉縁でのプラーク蓄積のみを評価する。
【0071】
加えて、評点への不適当な加重の可能性に結びつく、従来の評点化方法を使用して評点化される歯の形状およびサイズの変動性に対する懸念が、取り上げられている。このような懸念に対処するために、本方法は、歯のサイズの差に対応するように適合されることができる。より具体的には、全口のプラーク評点は、各イヌに対しての歯肉縁長さの合計で割られる歯肉縁に沿ったプラーク長さの合計を使用して計算されることができる。長い歯と結びついている長い縁は、小さい縁よりも全体の縁の長さに対する付与がそれだけ多くなる。この「縁の全体」方法は、歯肉縁に対する細菌的損傷の合計のより真の提示を実現することができる。この「縁の全体」方法を使用した結果を、上で報告した結果と直接に比較した。本明細書に記載するあらゆる実証実験の結果において、有意な差は見られなかった。加えて、これらの方法のそれぞれを使用して生成されたプラーク評点の多くは互いから数パーセント以内にあり、すべてが十分に実験誤差内にあった。
(結論)
本発明の方法は、ヒト以外の動物(今回はイヌ科)でプラークを定量化するためのおよびプラークを減少させる技術の効力を評価するための、迅速で、正確で、再現可能で、および、より資源集約的でない方法であることが示された。プローブを使用するためにおよびこの方法を行うために必要な技能は迅速かつ容易に習得され、したがって、本発明は、現地試験としての実行に十分に適合する。最後に、実施の容易さにより、本方法の根底にある概念は歯石の評価まで拡張されることができ、さらに、イヌ科以外の哺乳動物まで拡張されることができる。
【0072】
本明細書では、本発明の典型的な好適実施形態を開示しており、特定の用語を使用しているがこれらの用語は包括的および描写的な意味でのみ使用されており限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されている。明らかに、本発明の多くの修正形態および変形形態が上述の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載した以外の別の形で実践されることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の例示的な歯肉輪郭用プローブの写真である。
【図2】本発明の例示的な歯肉輪郭用プローブの先端部を写真によって2つの拡大図で示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部および細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブであって、前記先端部はその近位端が前記軸部に取り付けられる、歯肉輪郭用プローブにおいて、前記先端部は、非平面的に曲げられる、および/または湾曲し、かつ標識を有しており、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、前記プローブが、少なくとも前記標識の前記数字および/または前記目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される、歯肉輪郭用プローブ。
【請求項2】
少なくとも前記標識の前記数字および/または前記目盛により、意識のあるイヌ科またはネコ科の動物での使用のために適合される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記先端部が、実質的に図2に示すように曲げる、および/または湾曲する、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記標識の前記数字および前記目盛が、約0.5mmの精度までの測定を可能にする、請求項2に記載のプローブ。
【請求項5】
前記標識が、前記先端部の遠位端から測定して1mmの複数のセグメントを区切る、請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
前記標識が広い帯および狭い帯を有し、前記広い領域は、前記遠位端から、2mmから4mmの領域と8mmから10mmの領域とを占めており、前記狭い帯は、前記遠位端から、6mmと12mmとのところにある、請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
ヒト以外の意識のある動物の口部基質の蓄積を定量化するための方法であって、(a)請求項1の歯肉輪郭用プローブの先端部を前記動物の歯の歯肉縁に位置合わせするステップと、(b)前記プローブの前記先端部上の標識を基準にして、前記縁の長さおよび前記縁に基質の沈着物がある場合はそれの長さを測定するステップと、(c)前記基質沈着物の長さと前記縁の長さとを比較することにより、前記歯に対しての基質の評点を計算するステップとを含む、方法。
【請求項8】
前記基質がプラークである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)、(b)および(c)を前記動物の複数の歯のそれぞれに対して実施するステップと、前記複数の歯に対して平均のプラーク評点を計算するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記動物がネコ科の動物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記動物がイヌ科の動物である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ヒト以外の動物の口部基質蓄積を減少させるための試験方式の有効性を査定するための調査を実施する方法であって、基準方式との比較により、前記試験方式の開始の前の第1の時点および開始後の第2の時点で、請求項8の方法によって動物の口部基質を定量化するステップを含む、方法。
【請求項13】
前記基質がプラークである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
同じ動物が、交叉実験設計または同時進行の実験設計において前記試験方式および前記基準方式を施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の査定時間が、各方式の開始後から約2日から約3日である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記試験方式が食餌療法方式である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ヒト以外の動物の口腔衛生を強化するための方法であって、(a)歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を前記動物に与えるステップと、(b)軸部、および、近位端が前記軸部に取り付けられる細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブを使用して、前記動物の1つから複数の歯の歯肉縁におけるプラークの蓄積を監視するステップであって、前記先端部が、非平面的に曲げられる、および/または湾曲し、かつ標識を有しており、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、前記プローブが、少なくとも前記標識の前記数字および/または目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される、ステップとを含む、方法。
【請求項18】
ヒト以外の動物の全身健康状態を強化するための方法であって、(a)歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料を動物に与えるステップと、(b)軸部、および、近位端が前記軸部に取り付けられる細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブを使用して、前記動物の1つから複数の歯の歯肉縁におけるプラークの蓄積を監視するステップであって、前記先端部が、非平面的に曲げられる、および/または湾曲し、かつ標識を有しており、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、前記プローブが、少なくとも前記標識の前記数字および/または前記目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される、ステップとを含む方法。
【請求項19】
(a)ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるために配合された食料と、(b)軸部、および、近位端が前記軸部に取り付けられる細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブであって、前記先端部が、非平面的に曲げられる、および/または湾曲し、かつ標識を有しており、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、前記プローブが、少なくとも前記標識の前記数字および/または前記目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される、プローブとを含むキット。
【請求項20】
前記動物の飼い主に情報を連絡するための手段をさらに含み、前記情報が、歯苔の蓄積を減少させることにおける前記食料の有効性を評価または監視するための、前記食料を前記動物に与えることに付随した前記歯肉輪郭用プローブの使用のための指示を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
プラークの視認性を強化するための歯垢顕示液をさらに含む、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
ヒト以外の動物の歯苔の蓄積を減少させるように配合される食料を市販する方法であって、軸部、および、近位端が前記軸部に取り付けられる細長い先端部を有する歯肉輪郭用プローブを前記食料と同時に市販するまたは同時に包装するステップを含み、前記先端部が、非平面的に曲げられる、および/または湾曲し、かつ標識を有しており、前記標識の数字および目盛が測定された長さを表示し、前記プローブが、少なくとも前記標識の前記数字および/または前記目盛により、ヒト以外の意識のある動物における歯の簡便な歯肉縁測定の使用に適合される、方法。
【請求項23】
前記同時に市販するまたは同時に包装するステップが、前記動物の飼い主に情報を連絡するための手段を含み、前記情報が、歯苔の蓄積を減少させることにおける前記食料の有効性を評価または監視するための、前記食料を前記動物に与えることに付随した前記歯肉輪郭用プローブの使用のための指示を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
動物の飼い主による請求項1の歯肉輪郭用プローブの使用に関連する情報を連絡するための手段であって、前記手段が、製品ラベル、挿入物、小冊子、印刷物、広告、公示、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、カードおよびディスク、コンピュータメモリ、ウェブページ、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、手段。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511210(P2009−511210A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535772(P2008−535772)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040383
【国際公開番号】WO2007/047584
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】