説明

包接超分子錯体

【課題】生体組織に侵入する可能性や生体組織の隙間から漏れ出す可能性が低く、酸素錯体の微視的な密度を上げることができる包接超分子錯体を提供する。
【解決手段】この発明の包接超分子錯体は、親水性側鎖を有する線状高分子の少なくとも一つの側鎖にポルフィリン金属錯体を有する線状高分子化合物のポルフィリン金属錯体部分を、シクロデキストリン二量体が包接したものである。なお、親水性側鎖を有する線状高分子の側鎖とポルフィリン金属錯体とがスペーサーを介して結合していれば、包接超分子錯体に酸素が吸着した酸素錯体の安定性がより向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体内で酸素を安定して輸送する酸素輸液の材料として利用可能性のある包接超分子錯体に関し、特に、生体組織に侵入する可能性、生体組織の隙間から漏れ出す可能性が低く、酸素錯体の微視的な密度をより高められる包接超分子錯体に関するものである
【背景技術】
【0002】
生命活動において最も重要な役割を演じている生体分子の一つに金属タンパク質が挙げられる。これら金属タンパク質は活性中心を構成する金属錯体(ヘム)や金属イオンとそれを立体的に取り囲むタンパク質から構成されている。
【0003】
例えば、酸素の貯蔵を担う金属タンパク質であるミオグロビンは、ヘムと呼ばれるポルフィリン鉄錯体とそれを酸素結合サイトに埋め込んでいるグロビンタンパク質とを含んでいる。この酸素結合サイトは疎水的アミノ酸残基によって構成されているため、疎水的環境であり、ヘムに酸素がついたり離れたりしてもヘム鉄(II)は酸化されることなく、ヘムは可逆的に酸素を吸脱着することができる。
【0004】
また、酸素運搬を行うヘモグロビンは、ヘムとミオグロビンのグロビンタンパク質ときわめて類似した構造をもつ4つのサブユニットからなり、ミオグロビンと同様にヘムに酸素がついたり離れたりしてもヘム鉄(II)が酸化されることなく、可逆的かつ酸素分圧が一定になるように酸素を吸脱着できる。なお、酸素分圧が一定に保たれるのは、ヘム鉄への酸素の結合によって引き起こされるヘム周辺の局所的な構造変化がタンパク全体に伝達して酸素との結合力が変化すること、いわゆる正のアロステリック効果による。
【0005】
このように多くの金属タンパク質が生体において様々な働きを果たしているが、そのほとんどが基質の活性中心への配位結合の形成を駆動力とし、金属イオンと周囲のタンパク質との共同作業によって基質特異的な反応を行っている。そのため、数多くの研究者が、金属タンパク質の活性中心の構造を人工的に合成した分子によって模倣することを試みている。なかでも、分子状の酸素を吸脱着するヘムタンパク質のモデル化は、人工ミオグロビン、人工ヘモグロビン、酸素貯蔵材料及び、酸素選択膜の開発などにとって重要であるため、これまでに様々なアプロ−チによりモデル化が試みられている。
【0006】
例えば、グローブス(Groves)らは、シクロデキストリンの内側の水酸基をピリジンに置換し、外側の水酸基を疎水性基に置換した化合物にポルフィリン系化合物を包接させた包接錯体を合成し、その包接錯体が酸素を吸着することを報告している(非特許文献1参照)。
【0007】
ただ、前記ヘムタンパク質モデルは、そのほとんどが有機溶媒中においてのみ分子状酸素を可逆的に吸脱着でき、人や動物の血管内と同じ環境である水中では、分子状酸素を可逆的に吸脱着できなかった。そのため、これらモデルを人工ミオグロビンあるいは人工ヘモグロビンとする酸素輸液を作ることはできなかった。
【0008】
そのため、発明者らは、水中で分子状酸素を可逆的に吸脱着することができるヘムタンパク質モデルの構成材料として利用可能性のある包接錯体及びその合成方法、その包接錯体の構成材料であるシクロデキストリン二量体をすでに開発している(特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2006−2077号公報
【非特許文献1】「バイオフィジカル ケミストリ(Biophysical Chemistry)」,(米国),2003年 105巻 p.639−648
【0009】
しかし、前記包接錯体は分子量が小さいため、次のような問題点があった。まず、生体組織内に侵入する可能性、生体組織の隙間に入り込んで組織、例えば血管から漏れ出す可能性があった。
【0010】
また、酸素錯体の微視的な密度、例えば細胞表面を微視的環境とした場合には細胞表面における酸素錯体の密度、を上げることができなかった。そのため、生体組織内の酸素分圧を実用的なレベルまで上げるためには、大量の酸素錯体を毛細血管に送らなければならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、生体組織内に侵入する可能性や生体組織の隙間から漏れ出す可能性が低く、酸素錯体の微視的な密度を上げることができる包接超分子錯体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、ポルフィリン金属錯体とシクロデキストリン二量体とを含む錯体について鋭意検討した結果、ポルフィリン金属錯体を高分子化することによって、分子量が大きく安定した酸素錯体を形成することができる包接超分子錯体を得られることを見出した。
【0013】
すなわち、この発明の包接超分子錯体は、親水性側鎖を有する線状高分子の少なくとも一つの側鎖にポルフィリン金属錯体を有する線状高分子化合物のポルフィリン金属錯体部分を、シクロデキストリン二量体が包接したものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の包接超分子錯体は、分子量が大きいので、生体組織内に侵入する可能性や生体組織の隙間から漏れ出す可能性が低く、酸素錯体の微視的な密度、例えば細胞表面での酸素錯体密度、を上げることができる。そのため、この包接超分子錯体は、人工ミオグロビン、人工ヘモグロビンなどの酸素の保持を目的とする人工血液の構成成分としての利用、酸素分離材などとしての利用などが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の包接超分子錯体は、(1)線状高分子化合物を(2)シクロデキストリン二量体が包接しているものである。そこで、その詳細について以下に説明する。
【0016】
(1)線状高分子化合物
線状高分子化合物とは、親水性側鎖を有する線状高分子の少なくとも一つの側鎖にポルフィリン金属錯体を有するものである。
【0017】
(i)親水性側鎖を有する高分子
親水性側鎖を有する高分子とは、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの水と強く相互作用することができる親水性の官能基をその側鎖に有する高分子であり、具体的にはポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、でんぷんなどが挙げられる。これらのなかでも、ポルフィリン金属錯体が置換し易いことから、ポリアクリル酸が好ましい。なお、親水性側鎖を有する高分子の分子量は、用途などに応じて任意のものを使用できる。
【0018】
(ii)ポルフィリン金属錯体
ポルフィリン金属錯体は、中心に金属イオンを配位した水溶性のポルフィリン系錯体であって、高分子の親水性側鎖と化学反応により共有結合でき、高分子に結合した状態でシクロデキストリン二量体が包接できるものであれば、特に限定することなく使用できる。
【0019】
ポルフィリン金属錯体と高分子とは、公知のアミド結合、エステル結合、エーテル結合などによって結合させることができる。なお、一つの高分子に結合しているポルフィリン金属錯体の数(以下、結合数と省略する。)は、用途などに応じて自由に調整すればよい。
【0020】
なお、親水性側鎖を有する高分子とポルフィリン金属錯体とが、スペーサーを介して結合していてもよい。スペーサーを介することによって、高分子の主鎖とポルフィリン金属錯体との距離が長くなり、シクロデキストリン二量体がポルフィリン金属錯体をより安定的に包接できる。
【0021】
スペーサーとしては、高分子とポルフィリン金属錯体との距離を長くするものであれば特に限定することなく使用できるが、例えば、炭素数1から8程度の低級アルキレン基、例えばエチレン基が挙げられる。また、このようなスペーサーは、例えばNH2-(CH2)n-COOHという構造のアキラルなアミノ酸と保護基とを利用した通常の化学反応によって、親水性側鎖を有する高分子とポルフィリン金属錯体との間に介在させることができる。
【0022】
(iii)具体例
線状高分子化合物の具体例としては、下記の化学式(I)
【化1】

(式中、R1は、カルボキシル基、スルホニル基、水酸基、リン酸基の何れかを表し、MはFe2+、Mn2+、Co2+、Zn2+の何れかを表す。)で示される構成単位を含むもの、及び下記の化学式(II)
【化2】

(式中、R1は、カルボキシル基、スルホニル基、水酸基、リン酸基の何れかを表し、MはFe2+、Mn2+、Co2+、Zn2+の何れかを表す。)で示される構成単位を含むもの、
が挙げられる。
【0023】
(2)シクロデキストリン二量体
シクロデキストリン二量体は、シクロデキストリンを共有結合して二量体化したものであって、線状高分子化合物のポルフィリン金属錯体部分を包接できるものであれば特に限定することなく使用することができる。
【0024】
なお、シクロデキストリンには、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンがあるが、ポルフィリン金属錯体を包接し易いためβ−シクロデキストリンが好ましい。
【0025】
シクロデキストリン二量体の具体例としては、下記の化学式(III)、(IV)、(V)
【化3】

【化4】

【化5】

(式中、mは1又は2の何れかの数字を表し、nは1、2又は3の何れかの数字を表す。)で示されるものが挙げられる。なかでも、シクロデキストリンがβ−シクロデキストリンであるn=2、かつ、酸素錯体を形成し易いm=1であることが好ましい。
【0026】
(3)包接超分子錯体
包接超分子錯体は、線状高分子化合物、シクロデキストリン二量体をそれぞれ適当な溶媒、例えばリン酸緩衝液に溶解したのち、これらの溶液を混ぜ合わせることによって調製することができる。なお、溶液中の線状高分子化合物の濃度、シクロデキストリン二量体の濃度、混ぜ合わせる場合の量比は、調製する包接超分子錯体の濃度に合わせて適宜に調整すればよい。
【0027】
以下、この発明について実施例に基づいてより詳細に説明するが、以下の実施例によって、この発明の特許請求の範囲は如何なる意味においても制限されるものではない。
【実施例1】
【0028】
1.線状高分子化合物及びシクロデキストリン二量体の合成
図1から図3に示す合成経路に沿って、包接超分子錯体を構成する線状高分子化合物及びシクロデキストリン二量体を合成した。なお、図1から図3と以下の説明との関係を明確にするため、同一の化合物には同一の番号を付与した。
【0029】
(1)線状高分子化合物P-1の合成
(i)4-ニトロベンズアルデヒドエチレンアセタールの合成
500mLのナス型フラスコにベンゼン500mL、4-ニトロベンズアルデヒド(以下、化合物1と省略する。9.0g,0.06mol)、エチレングリコール(5.0mL,0.090mol)及びp-トルエンスルホン酸1水和物(1.0g,5.2mmol)を加えて、ディーンスターク装置を組み立てたのち、3時間加熱還流した。反応が終了したのち、室温まで冷却して、溶媒を減圧留去した。
【0030】
残渣を100mLのエーテルに溶解させて分液漏斗に移し、飽和重曹水及び食塩水で洗浄した。有機層を分離して、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、溶媒を減圧留去して褐色の固体である4-ニトロベンズアルデヒドエチレンアセタール(以下、化合物2と省略する。)を得た(収量11.7g,収率90.1%)。なお、生成物は1H NMRスペクトルで同定した。
【0031】
(ii)4-アミノベンズアルデヒドエチレンアセタールの合成
300mLのナス型フラスコに化合物2(5.4g,25.1mmol)、エタノール300mL、酸化白金(IV)(300mg,1.32mmol)を加えたのち、水素雰囲気下、室温で15時間攪拌した。反応液をセ
ライト濾過して、濾液の溶媒を減圧留去し、黄色油状の液体である4-アミノベンズアルデヒドエチレンアセタール(以下、化合物3と省略する。)を得た。なお、化合物3は空気中で不安定であるため、次の反応にそのまま使用した。
【0032】
(iii)4-アジドベンズアルデヒドの合成
まず、滴下漏斗を取り付けた500mLの反応容器に化合物3(3.7g,25.1mmol)、濃塩酸45mL及び酢酸135mLを加え、氷浴を使用して0℃に冷却した。つぎに、反応容器に亜硝酸ナトリウム水溶液(5.72g in 24mL)をゆっくりと滴下し、0℃で30分間攪拌した。さらに、反応液にアジ化ナトリウム水溶液(8.09g in 30mL)をゆっくり滴下し、0℃で30分間攪拌した。
【0033】
反応液に100mLの水を加えてジエチルエーテルで抽出した。抽出液を分液漏斗に移して、飽和重曹水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を分離した。有機層から溶媒を減圧留去し褐色の液体である4-アジドベンズアルデヒド(以下、化合物4と省略する。)を得た(収量2.74g,収率69.4%)。なお、生成物は1H NMRスペクトルで同定した。
【0034】
(iv)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アジドフェニル)ポルフィリンの合成
まず、1Lの反応容器に化合物4(0.74g,5.00mmol)、テレフタルアルデヒド酸メチル(2.46g,15.0mmol)、ピロール(1.32mL,20.0mmol)及びクロロホルム1Lを加え、室温で攪拌しながらアルゴンガスを30分間吹き込んだ。つぎに、反応容器に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.34mL,2.69mmol)を加えて、遮光下、室温で1.5時間攪拌した。さらに、反応容器にジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ,3.2g,14.1mmol)を加えて、室温で3時間攪拌した。
【0035】
反応液を分液漏斗に移して、飽和重曹水及び食塩水で洗浄したのち、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。有機層を分離したのち、有機層から溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)で精製し、紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アジドフェニル)ポルフィリン(以下、化合物5と省略する。)を得た(収量0.343g,収率10.2%)。なお、生成物はFAB-MSスペクトル及び1H NMRスペクトルで同定した。
【0036】
(v)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アジドフェニル)ポルフィナト鉄(III)の合成
還流管を取り付けた50mLのナス型フラスコに化合物5 100mgと、クロロホルム5mLと、塩化鉄(II)n水和物の飽和メタノール溶液5mLとを加え、アルゴン雰囲気下、24時間加熱還流した。
【0037】
反応液を室温まで冷却したのち、反応液を分液漏斗に移して蒸留水で洗浄した。分液漏斗の有機層を無水ナトリウムで脱水して、有機層を分離したのち、溶媒を減圧留去した。残渣を最少量のクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿させ、沈殿を濾取して、黒紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アジドフェニル)ポルフィナト鉄(III)(以下、化合物6と省略する。)を得た(収量0.090g,収率85.0%)。なお、生成物はFAB-MSスペクトルで同定した。
【0038】
(vi)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アミノフェニル)ポルフィナト鉄(III)の合成
還流冷却器を取り付けた500mLのナス型フラスコに化合物6(50mg,0.058mmol)、クロロホルム100mL、メタノール100mL及び硫化ナトリウム9水和物(48mg,0.20mmol)を加え、6時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却して、減圧留去によりメタノールを除去した。
【0039】
残渣にクロロホルム200mLを加えて分液漏斗に移し、有機層を飽和重曹水及び食塩水で洗浄した。有機層を分離したのち、溶媒を減圧留去することにより紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アミノフェニル)ポルフィナト鉄(III)(以下、化合物7と省略する。)を得た(収量0.043g,収率89.2%)。なお、生成物はFAB-MSスペクトルで同定した。
【0040】
(vii)線状高分子化合物P-1の合成
100mLのナス型フラスコに化合物7(50mg,60μmol)、ポリアクリル酸 (平均分子量5000,24mg,5.0μmol)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(以下、HATUと省略する。180mg,480μmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIPEAと省略する。170mL,950μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと省略する。10mL)を加え、室温で2日間撹拌した。反応液から溶媒を減圧留去して、残渣にTHF 50mLと水酸化ナトリウム水溶液(0.64mol/L)30mLとを加え、室温で2時間撹拌した。
【0041】
反応液をHClで中性に戻して溶媒を減圧留去し、少量の水酸化ナトリウム水溶液で溶かした。この水溶液を分画分子量5000の透析膜を使用して水中で3日間透析した。透析液をHClにより酸性化して生成物を沈殿させ、メンブランフィルターで濾過することによって、紫色の固体である線状高分子化合物P-1(以下、化合物8と省略する。)を得た(収量42mg,収率36.0%)。なお、生成物は1H NMRスペクトルで同定した。
【0042】
(2)線状高分子化合物P-2の合成
(i)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アミノフェニル)ポルフィリンの合成
還流冷却器を取り付けた200mLのナス型フラスコに化合物5(500mg,0.58mmol)、クロロホルム100mL、メタノール100mL、硫化ナトリウム9水和物(480mg,2.00mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、減圧留去でメタノールを除去した。
【0043】
残渣にクロロホルム200mLを加えて分液漏斗に移し、有機層を飽和重曹水及び食塩水で洗浄したのち、有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水して、有機層を分離したのち、有機層から溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:アセトン=20:1)で精製し、紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-アミノフェニル)ポルフィリン(以下、化合物9と省略する。)を得た(収量0.433g,収率89.2%)。なお、生成物はMALDI-TOF MSスペクトル及び1H NMRスペクトルで同定した。
【0044】
(ii)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-Fmoc-β-アラニンフェニル)ポルフィリンの合成
100mLのナス型フラスコに化合物9(178.0mg,0.224mmol)、Fmoc-β-アラニン(760mg,2.240mmol)、HATU(423mg,1,120mmol)、DIPEA(0.980μL,2.240μmol)及びDMF 150mLを加えて室温で13時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、DMFを減圧留去した。
【0045】
残渣にクロロホルム100mLを加えて分液漏斗に移し、飽和重曹水及び食塩水で洗浄したのち、有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、再度有機層を分離し、有機層から溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:アセトン=40:1)で精製し、紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-Fmoc-β-アラニンフェニル)ポルフィリン(以下、化合物10と省略する。)を得た(収量0.105g,収率43.0%)。なお、生成物はMALDI-TOF MSスペクトル及び1H NMRスペクトルで同定した。
【0046】
(iii)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-Fmoc-β-アラニンフェニル)ポルフィナト鉄(III)の合成
アルゴン雰囲気下、還流管を取り付けた50mLのナス型フラスコに化合物10 10.0mg、クロロホルム5mL、塩化鉄(II)n水和物の飽和メタノール溶液5mLを加え、16時間加熱還流したのち、反応液を室温まで冷却した。
【0047】
反応液を分液漏斗に移して蒸留水で洗浄し、有機層を分離した。有機層を無水ナトリウムで脱水して、再度有機層を分離し、溶媒を減圧留去した。残渣を最少量のクロロホルムに溶解して、ヘキサンを加えて再沈殿させたのち、沈殿物を濾取して黒紫色の固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-Fmoc-β-アラニンフェニル)ポルフィナト鉄(III)(以下、化合物11)を得た(収量9.2mg,収率85.0%)。生成物はFAB-MSスペクトルで同定した。
【0048】
(iv)5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-β-アラニンフェニル)ポルフィナト鉄(III)の合成
100mLのナス型フラスコに化合物11(20.0mg,0.224mmol)、20重量%ピペリジン/DMF溶液5mLを加えて室温で10分間撹拌したのち、減圧留去でピペリジン/DMF溶液を除去した。残渣を100mLのクロロホルムに溶解させて分液漏斗に移し、飽和重曹水及び食塩水で洗浄したのち、有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、再度有機層を分離して、有機層から溶媒を減圧留去し、紫色固体である5,10,15-トリス(4'-メトキシカルボニルフェニル)-20-(4'-β-アラニンフェニル)ポルフィナト鉄(III)(以下、化合物12と省略する。)を得た(収量10mg,収率64.5%)。なお、生成物はFAB-MSスペクトルで同定した。
【0049】
(v)線状高分子化合物P-2の合成
100mLのナス型フラスコに化合物12(80mg,56μmol)、ポリアクリル酸(平均分子量5000,50mg,4.7μmol)、HATU(280mg,480μmol)、DIPEA(250mL,950μmol)、DMF 10mLを加え、室温で2日間撹拌した。反応液から溶媒を減圧留去して、残渣にTHF 50mL、水酸化ナトリウム水溶液(0.64mol/l)30mLを加え、室温で2時間撹拌した。
【0050】
反応液をHClで中性に戻して溶媒を減圧留去し、残渣を少量の水酸化ナトリウム水溶液に溶かした。この水溶液を分画分子量5000の透析膜を使用して水中で2日間透析した。透析液をHClにより酸性にして生成物を沈殿させ、メンブランフィルターで沈殿を濾取し、紫色固体の線状高分子化合物P-2(以下、化合物13と省略する。)を得た(収量70mg,収率25.0%)。なお、生成物は1H NMRスペクトルで同定した。
【0051】
(2)シクロデキストリン二量体の合成
(i)2-モノトシル-βシクロデキストリンの合成
アルゴン雰囲気下、300mLの三口フラスコに200mLの無水DMF、乾燥β-シクロデキストリン(以下、化合物21と省略する。17.0g,15.0mmol)、水素化ナトリウム(60-70% in oil,513mg,15.0mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応が終了したのち、三口フラスコに塩化トシル(2.9g,15.2mmol)を加えて室温で3時間攪拌した。
【0052】
反応液を3Lのアセトンに注ぎ込み、生じた白色沈殿を濾過分離して減圧下で乾燥させた。得られた乾燥固体を蒸留水に溶解させ、ダイヤイオンHP20(三菱化学株式会社製)を充填したカラムに注入した。蒸留水のみを加えて未反応のβ-シクロデキストリンを溶出し、未反応のβ-シクロデキストリンが溶出し終わってから、展開溶媒を40%メタノール水溶液に変えて2-モノトシル-β-シクロデキストリンのみを溶出させた。なお、溶出液はTLC(展開溶媒n-BuOH:EtOH:H2O=5:4:3、アニスアルデヒド発色、Rf=0.45)によって確認した。溶出した部分の溶媒を減圧留去し、無色固体の2-monotosyl-β-シクロデキストリン(以下、化合物22と省略する。)を得た(収量6.3g,収率33%)。
【0053】
(ii)2,3-エポキシ-β-シクロデキストリンの合成
500mLのナス型フラスコに化合物22(6.0g,4.7mmol)及び300mLの0.2M水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で40時間攪拌した。反応液を氷浴に浸した状態で、希塩酸により反応液を中和した。
【0054】
反応液からエバポレーターで溶媒を約100mLまで留去し、残留液を1Lのアセトンに注ぎ込んだ。生じた白色沈殿を最小量のDMFに溶解させ、不溶の塩を濾過して取り除いた。濾液を1Lのアセトンに注ぎ込み、生じた白色沈殿を濾過分離して減圧下で乾燥させた。乾燥固体を蒸留水に溶解させ、ダイヤイオンHP20を充填したカラムに注入し、蒸留水のみを加えて2,3-エポキシ-β-シクロデキストリン溶出した。なお、2,3-エポキシ-β-シクロデキストリンはTLC(展開溶媒n-BuOH:EtOH:H2O=5:4:3、アニスアルデヒド発色、Rf=0.25)で確認した。溶出液の溶媒を減圧留去し、無色固体の2,3-エポキシ-β-シクロデキストリン(以下、化合物23と省略する。)を得た(収量3.5g,収率67%)。
【0055】
(iii)2,3-エポキシ-パーメチル-β-シクロデキストリンの合成
アルゴン雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物23(2.00g,1.45mmol)、80mLの無水DMF及び30mLの無水THFを加えて氷浴に浸した。反応液に水素化ナトリウム(へキサンで洗浄し真空乾燥させたもの(1.39g,58.00mmol)を加え、氷浴に浸して1時間攪拌した。さらに、反応液にヨウ化メチル(3.60mL,58.00mmol)を滴下して、室温で一晩攪拌した。
【0056】
反応液に4mLのメタノールを加えて泡の発生を収め、クロロホルムを加えて分液漏斗に移したのち、抽出液を蒸留水及びチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄して、有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水して、有機層を分離したのち、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムのみ→クロロホルム:アセトン=5:2)で精製し、無色固体である2,3-エポキシ-パーメチル-β-シクロデキストリン(以下、化合物24と省略する。)を得た(収量1.50g,収率61%)。
【0057】
(iv)3,5-ジメルカプトメチルピリジンの合成
還流管を取り付けた50mLのナス型フラスコに3,5-ジクロロメチルピリジン(200mg,0.94mmol)、チオ尿素(180mg,2.4mmol)及び6mLのエタノールを加え、2時間加熱還流した。反応液に3mLの5M水酸化ナトリウム水溶液を加えて、3時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、反応液を塩酸によって中和して分液漏斗に移し、塩化メチレンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、溶媒を減圧留去し、褐色油状の3,5-ジメルカプトメチルピリジン(以下、化合物25と省略する。)を得た(収量100mg,収率49%)。
【0058】
(v)シクロデキストリン二量体の合成
還流管を取り付けた100mLのナス型フラスコに化合物24(1.0g,0.72mmol)、60mLの0.1MNaHCO3水溶液、2mLのメタノールに溶解させた化合物25(50mg,0.29mmol)を加え、24時間加熱還流を行った。反応液を室温まで冷却したのち、反応液を分液漏斗に移してクロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、溶媒を減圧留去した。残渣をゲル濾過クロマトグラフィー(アマシャムバイオサイエンス株式会社製 ShephadexG-25)によって精製し、目的物を含む画分を集めて溶媒を留去した。
【0059】
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム/アセトン=5/2→クロロホルムのみ→クロロホルム:メタノール=10:1)によって精製し、無色固体であるシクロデキストリン二量体(以下、化合物26と省略する。)を得た(収量0.21g,収率20%,融点126-127℃)。
【実施例2】
【0060】
2.包接超分子錯体の製造と各種試験
(1)線状高分子化合物の結合数、分子量の測定
線状高分子化合物P-1及びP-2のポルフィリン金属錯体の結合数、分子量について調べた。具体的には、線状高分子化合物P-1及びP-2のDMSO溶液(1.0×10-6M)を調製して、それらの1H NMRスペクトルを測定し、測定したシグナルの積分比からポリアクリル酸部分とポルフィリン部分の量比を求めた。その結果を図4及び図5に示す。なお、図中のaはポリアクリル酸に由来のシグナルであり、bはポルフィリン金属錯体に由来のシグナルである。
【0061】
図4から、線状高分子化合物P-1は、ポリアクリル酸1分子に対し約5当量のポルフィリン金属錯体が結合し、平均分子量が約9,000の物質であることが分かった。また、図5から、線状高分子化合物P-2は、ポリアクリル酸1分子に対し約8当量のポルフィリン金属錯体が結合し、平均分子量が約12,000の物質であることが分かった。
【0062】
(2)包接超分子錯体の構造
包接超分子錯体を調製しその構造について調べた。具体的には次のようにして行った。まず、線状高分子化合物P-1又はP-2をそれぞれ1.0×10-6mol/Lずつ含むリン酸緩衝液(0.1M,pH7.0,25℃)と、シクロデキストリン二量体を1.0×10-6mol/L含むリン酸緩衝液(0.1M,pH7.0,25℃)とを調製した。つぎに、線状高分子化合物P-1又はP-2を含む緩衝液にシクロデキストリン二量体を含むリン酸緩衝液を滴定しながら紫外線-可視光線スペクトルを測定した。
【0063】
得られた吸収スペクトルから、吸光スペクトルの変化とシクロデキストリン二量体の滴下量との関係を計算して滴定曲線を描き、この滴定曲線の屈曲点から、包接超分子錯体中のP-1又はP-2とシクロデキストリン二量体の量比を推定した。その結果を図6及び図7に示す。
【0064】
なお、図6はP-1に滴定した場合の吸光スペクトルの変化を示しており、右上の挿入図はP-1の吸収波長である388nmにおける吸光度変化、及びP-1とシクロデキストリン二量体からなる包接超分子錯体の吸収波長である424nmにおける吸光度変化と、シクロデキストリン二量体(Py3CD)の滴下量との関係(滴定曲線)を示している。また、図7はP-2に滴定した場合の吸光スペクトルの変化を示しており、右上の挿入図はP-2とシクロデキストリン二量体からなる包接超分子錯体の吸収波長である422nm及び489nmにおける吸光度変化と、シクロデキストリン二量体(Py3CD)の滴下量との関係(滴定曲線)を示している。
【0065】
これらの滴定曲線には明瞭な屈曲点は認められないものの、P-1由来の包接超分子錯体中の線状高分子化合物とシクロデキストリン二量体の量比は線状高分子化合物:シクロデキストリン二量体=1:5であり、P-2を含む包接超分子錯体中の線状高分子化合物とシクロデキストリン二量体の量比は線状高分子化合物:シクロデキストリン二量体=1:8であると推定できる。
【0066】
(3)酸素結合挙動
包接超分子錯体の酸素結合挙動について調べた。具体的には次のようにして行った。まず、P-1又はP-2を含有する包接超分子錯体を1.0×10-6mol/L含むリン酸緩衝液(0.1M,pH7.0,25℃)を調製した。また、比較のために特許文献1に記載の包接錯体を1.0×10-6mol/L含むリン酸緩衝液(0.1M,pH7.0,25℃)を調製した。
【0067】
つぎに、包接超分子錯体及び包接錯体のリン酸緩衝液に過剰量の亜ジチオン酸ナトリウム[Na2S2O4]を加えて包接超分子錯体及び包接錯体を還元し、還元した状態(以下、Predと省略する。)で紫外線-可視光線スペクトルを測定した。測定後、各リン酸緩衝液に酸素ガスを吹き込んで包接超分子錯体及び包接錯体を酸化し、酸化した状態(以下、PO2と省略する。)で紫外線-可視光線スペクトルを測定した。測定後、リン酸緩衝液に一酸化炭素ガスを吹き込んで酸素を一酸化炭素に置換し、置換した状態(以下、PCOと省略する。)で紫外線-可視光線スペクトルを測定した。測定結果を図8から図10に示す。
【0068】
なお、図8はP-1を含む包接超分子錯体の測定結果、図9はP-2を含む包接超分子錯体の測定結果、図10は特許文献1に記載の包接錯体の測定結果をそれぞれ示している。また、図中のdeoxy、oxy、COはそれぞれPred、PO2、PCOの状態で測定したスペクトルを示している。
【0069】
まず、図8、図9、図10のスペクトルから、いずれの錯体においても、酸素を吹き込むことによって吸収スペクトルが変化し、一酸化炭素を吹き込むことによって吸収スペクトルが変化したことが確認できた。このことから、これらの錯体は酸素を吸着でき、吸着した酸素を一酸化炭素に置換できることが分かった。すなわち、P-1又はP-2を含む包接超分子錯体及び特許文献1に記載の包接錯体は、水溶液中での酸素着脱能を備えおり、ヘモグロビンのモデル化合物として利用できることが分かった。
【0070】
また、図8、図9、図10のPCOの吸収スペクトルを比較したところ、図8と図9の比較からP-2を含む包接超分子錯体の一酸化炭素錯体はP-1を含む包接超分子錯体の一酸化炭素錯体よりも吸収スペクトルが大きく、図8と図10の比較から特許文献1に記載の包接錯体の一酸化炭素錯体はP-2を含む包接超分子錯体の一酸化炭素錯体よりも吸収スペクトルが大きいことが分かった。
【0071】
すなわち、一酸化炭素錯体の吸収スペクトルは、特許文献1に記載の包接錯体、P-2を含む包接超分子錯体、P-1を含む包接超分子錯体の順番に大きかった。このことから、酸素錯体の安定性が特許文献1に記載の包接錯体、P-2を含む包接超分子錯体、P-1を含む包接超分子錯体の順番で大きいことが分かった。
【0072】
なお、酸素錯体の安定性の比較にP02の吸収スペクトルの変化ではなく、PCOの吸収スペクトルを比較した理由は、ポルフィリン金属錯体部分の中心鉄が三価と酸素錯体の紫外線-可視光線スペクトルは似ているため見分けることが困難だからである。言い換えると、錯体に酸素を吹き込んで吸収スペクトルを変化させても、それが酸素錯体の生成に起因するのか、中心鉄が2価から3価に自動酸化したことに起因するのか、判断できないからである。
【0073】
一方、P02に一酸化炭素を吹き込んだ場合、錯体の中心金属が3価の鉄である場合にはPCOを形成せず吸収スペクトルも変化しないが、錯体の中心金属が2価の鉄である場合には酸素を一酸化炭素に置換してPCOを形成して吸収スペクトルが変化する。したがって、P02の錯体の酸素を一酸化炭素に置換してPCOの吸収スペクトルを測定することによって、酸素錯体の安定性を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】線状高分子化合物P-1の合成経路の概略を示す図である。
【図2】線状高分子化合物P-2の合成経路の概略を示す図である。
【図3】シクロデキストリン二量体の合成経路の概略を示す図である。
【図4】線状高分子化合物P-1の1H NMRチャートである。
【図5】線状高分子化合物P-2の1H NMRチャートである
【図6】線状高分子化合物P-1を含むリン酸緩衝液を、シクロデキストリン二量体を含むリン酸緩衝液で滴定した結果を示す紫外-可視光吸収スペクトルである。
【図7】線状高分子化合物P-2を含むリン酸緩衝液を、シクロデキストリン二量体を含むリン酸緩衝液で滴定した結果を示す紫外-可視光吸収スペクトルである。
【図8】P-1を含む包接超分子錯体に酸素を吸着させ、一酸化炭素で置換した結果を示す紫外-可視光吸収スペクトルである。
【図9】P-2を含む包接超分子錯体に酸素を吸着させ、一酸化炭素で置換した結果を示す紫外-可視光吸収スペクトルである。
【図10】従来からある包接錯体に酸素を吸着させ、一酸化炭素で置換した結果を示す紫外-可視光吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性側鎖を有する線状高分子の少なくとも一つの側鎖にポルフィリン金属錯体を有 する線状高分子化合物のポルフィリン金属錯体部分を、シクロデキストリン二量体が包 接してなる包接超分子錯体。
【請求項2】
親水性側鎖を有する線状高分子が、ポリアクリル酸である請求項1に記載の包接超分子錯体。
【請求項3】
親水性側鎖を有する線状高分子の側鎖とポルフィリン金属錯体とが、スペーサーを介して結合している請求項1又は請求項2に記載の包接超分子錯体。
【請求項4】
スペーサーが低級アルキレン基である請求項3に記載の包接超分子錯体。
【請求項5】
線状高分子化合物が、下記の化学式(I)
【化1】

(式中、R1は、カルボキシル基、スルホニル基、水酸基、リン酸基の何れかを表し、MはFe2+、Mn2+、Co2+、Zn2+の何れかを表す。)
で示される構成単位を含むものである請求項1から請求項4の何れか一つに記載の包接超分子錯体。
【請求項6】
線状高分子化合物が、下記の化学式(II)
【化2】

(式中、R1は、カルボキシル基、スルホニル基、水酸基、リン酸基の何れかを表し、MはFe2+、Mn2+、Co2+、Zn2+の何れかを表す。)
で示される構成単位を含むものである請求項1から請求項4の何れか一つに記載の包接超分子錯体。
【請求項7】
シクロデキストリン二量体が、下記の化学式(III)
【化3】

(式中、mは1又は2の何れかの数字を表し、nは1、2又は3の何れかの数字を表す。)
で示される請求項1から請求項6の何れか一つに記載の包接超分子錯体。
【請求項8】
m=1、かつn=2である請求項7に記載の包接超分子錯体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−127044(P2009−127044A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307409(P2007−307409)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第25回シクロデキストリンシンポジウム シクロデキストリン学会 平成19年9月11日〜12日
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】