説明

包装された製品の殺菌方法

食料品または飲料品などの包装された製品(16)を殺菌する装置が提供される。この装置は電源(18)に接続するガスで満たされた一対の電極(1、2)を含み、この一対の電極が、その中のガスをイオン化するのに十分な高電圧パルスを電極間(1、2)に生成し、電極間に高電磁場を発生させる。反射体(7)が設けられ、発生した電磁場を包装(16)に向けて誘導して、電磁場が包装(16)の壁を貫通して包装(16)の内部に閉じ込められた空気からコールドプラズマが発生するようにする。このコールドプラズマはオゾンおよび他の活性酸素種を含み、それらは高酸化電位を有し、このオゾンおよび活性種と触れる全ての微生物を殺して、製品および密封された包装の内部の消毒をする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された食料製品および飲料製品などの包装された製品の殺菌または消毒をする方法および装置に関する。
【0002】
食品の貯蔵期間は、食品を腐敗させ得る微生物が食品内に存在することによってかなり短縮される。貯蔵期間は食品生産者の経済的活力に影響を与えるだけでなく、公衆衛生にも直接影響を及ぼす、というのも特定の微生物が食品内に存在することでその食品を摂取することが有害となり得るからである。食品が十分に冷蔵して保存されていないと食品内の微生物は急速に増殖するため、これらの問題は深刻になる可能性がある。
【0003】
上記の問題を解決するため、食品を低温殺菌することが提案されている。しかし、低温殺菌は工程が非常に長く、特定な種類の食品にしか用いることができないという短所がある。さらに、低温殺菌処理はかなりの量のエネルギーを消費しその大部分が作業環境へ排出されるため、食品の味に影響を及ぼし処理コストも高い。
【0004】
微生物が急速に増殖することを抑える雰囲気内で食品を包装する方法が知られている。このような方法の1つでは、食料製品を二酸化炭素の雰囲気内で包装する。この方法は制御が難しく、環境にやさしくなく、そして処理コストが高い。
【0005】
英国特許第2,457,057号には、紫外線を食料製品にその密封された包装を通過させて照射することにより消毒をする別の方法が開示されている。この方法では、効率の良い消毒波長(約260nm)を通す包装材料が必要であり、さもなければ包装内の食品を消毒するための十分な輝度の紫外線を得るために高出力が必要となる。現状の包装材料はこれらの紫外線波長を通しにくく、そのため特殊な包装材料を使用する必要がある。そのような包装材料はコストが高く、従来の包装工程を変更する必要がある、つまり全食品業界がその包装用設備を交換するか、完全に新しい種類の包装材料を開発しなければならない。
【0006】
密封された包装の内部で十分な消毒を実現するために、製品の表面全体に紫外線を照射することが必要である。このことは実現が非常に難しく、例えばスライスされた肉やチーズの場合、スライスされた切片の間には紫外線は届かず、そのため消毒効果は僅かであり、したがって貯蔵期間は改善されない。この方法にはまた、ほこりや汚れの影響を受けやすいという短所もある、というのも紫外線電燈は常に清潔でなくてはならず食品加工業界における一般的な環境はこのことに役だっていないことは言うまでもない。
【0007】
またこの方法には、さらに紫外線が包装を貫通するための明確な「窓」が必要であるという短所もある、つまり包装の上にラベルやプリントを付けてはならない。これにより包装工程における融通性が失われ、包装工程の再設計を余儀なくされる。
【0008】
オゾンは高酸化性気体であり、微生物の消毒には非常に効果があることが知られている。オゾンは自然に酸素に戻るまでの持続時間が非常に短く(約20分)、したがって密封された包装にて販売する食品の貯蔵期間を延ばし、食品内に含まれ得る大腸菌などの有害な微生物を殺すには理想的に適している。
【0009】
英国特許第2,457,057号にはまた、オゾン発生波長の紫外線を用いて包装の内部にオゾンを発生させることにより、食料製品をその密封された包装の中でさらに消毒する方法が開示されている。オゾンは消毒特性を有する気体であり、密封された包装の内部のいたるところに浸透し、それにより製品を消毒する。しかしながら、この方法は上記の紫外線による消毒方法と同様の短所を抱えている。つまり、そのような紫外線波を通す包装材料はさらに特殊で、購入し処理するにはコストがかかる。また、オゾン発生波長は真空紫外線の範囲内(約185nm)であり、周知の包装材料はこれらの波長を効率的に通さない、したがってエネルギー効率は良くない。
【0010】
実際には、紫外線による方法により発生するオゾンの量は相対的に少なく、大気の湿度に著しく影響を受ける。したがって、各包装に照射する時間が固定されている決められた流れ作業において、均一なオゾンを投与することは非常に難しい。またこの方法では副産物として好ましくない亜酸化窒素が包装の内部の空気から発生する。この亜酸化窒素が水と結合して硝酸が発生し、これが製品に損傷を与える。この方法に関する別の短所としては、紫外線電燈の周りの空気中にある量の好ましくないオゾンが発生し、これをオゾンの無い状態に中和しなくてはならない。大気中のオゾンの存在は健康に有害であるため規制物質である。
【0011】
またこの方法には、さらに紫外線が包装を貫通するための明確な「窓」が必要であるという短所もある、つまり包装の上にラベルや印刷を付けてはならない。これにより包装工程における融通性が失われ、包装工程の再設計を余儀なくされる。
【0012】
周知のコロナ放電法を用いて密封された包装の内部にオゾンを発生させて食品を殺菌する別の方法も知られている。この方法には密封された包装の片側に設置される金属電極、およびこの電極に接続する高電圧の交流電源が必要である。高電圧により電極の間にコロナ放電を発生させ、次いで包装内の空気中の酸素の一部をオゾンに変換する。
【0013】
この方法は紫外線照射法に伴ういくつかの問題は回避するが、なおもいくつかの重大な短所を抱えている。この方法では金属電極を使用するが、電極が動作中に非常に高温まで熱せられるため冷却を余儀なくされる。これらの電極は包装材料に近接するため、70Cより低く冷却しなければならない、さもなければ包装材料が劣化する。そのために通常は、冷却水とそれに関連するポンプおよび熱交換器のシステムが必要となる。この方法は放電方式であり、高電圧状態で電極間に電子を放電する。結果として浸食が発生し、したがって電極が劣化しその寿命が短縮され、低い信頼性に繋がる。この技術の放電は制御不能のなだれタイプであり、包装材料だけでなく製品も貫通し、ある製品にとっては非常に有害である。コロナ放電の繰り返しによる製品の劣化は許されないため、通常はこの方法を複数回繰り返すことはできない。コロナ放電は中間レベルから高レベルのオゾンを発生させる一方で、大気の湿度により発生するオゾンは不均一である。さらに悪いことには、包装の内部の空気中の窒素から高レベルの亜酸化窒素を発生させてしまうという短所も抱えている。結果として、通常この方法は包装する環境が純酸素内であり、したがって亜酸化窒素が発生しない用途に限定される。酸素内で製品を包装することは制御が難しくコストもかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第2457057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
包装された食糧製品および飲料製品などの包装された製品の殺菌または消毒のための装置が以下に考案された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に従えば、包装された製品を殺菌する装置が提供され、この装置はガスで満たされた一対の電極と、電極内のガスをイオン化し電極間に高電磁場を発生させるのに十分な高電圧を電極間に生成する手段とを含み、前記製品を含む包装に前記電磁場を照射するよう構成されている。
【0017】
電磁場は、好ましくは空気中の酸素をオゾンおよび他の活性酸素種に変換するのに十分な高エネルギーのコールドプラズマを発生させる。使用中、製品を含む密封された包装は、ガスで満たされた電極によって発生した電磁場が密封された包装の壁を貫通し、密封された包装の内部に閉じ込められた空気からコールドプラズマを発生させるよう、ガスで満たされた電極と十分に近接して設置される。このコールドプラズマはオゾンおよび他の活性酸素種を含み、それらは高い酸化電位を有し、このオゾンおよび活性種に触れる全ての微生物を殺して製品および密封された包装の内部を消毒する。
【0018】
本発明に従えば、従来の装置における上記のいずれの問題もなく密封された包装の内部にオゾンおよび他の活性酸素種を効率的に発生させる。装置はガスで満たされた電極を使用するため、電極の浸食はなく、したがってその寿命は長く高い信頼性に繋がる。また、ガスで満たされた電極は低温で動作するため、冷却を余儀なくされる必要がなく包装材料の劣化もない。この装置はまた、湿度およびほこりの影響を受けない。この形態によるオゾンの発生を用いることで亜酸化窒素の発生もほとんど無くなることが確認された。さらに、プラズマを使用することでオゾンよりも高い酸化電位を有する酸化種が発生し、したがってより効率的に微生物を殺す。
【0019】
本発明ではプラズマを発生させるため、包装の内部に放電を行わない、したがって製品を通過する有害な放電は発生しない。この装置はラベルやプリントなどの包装の装飾の影響を受けず、装飾を劣化させない。また、コロナ放電と違い包装や製品を劣化させることなくこの工程を繰り返すことができる。
【0020】
発生させた電磁場を殺菌される製品に向けて誘導する手段を設けることが好ましい。
【0021】
各電極は細長く、湾曲、コイル状、または屈曲しているか、あるいはその全長に沿った直線でないことが好ましい。あるいはまた、各電極は複数の相互接続した直線部を含んでもよい。
【0022】
各電極は一般に平面で、前記電磁場誘導手段は前記平面と垂直な電磁場を殺菌される製品に向けて誘導するよう構成されていることが好ましい。
【0023】
これらの電極は一般にその全長に沿って隣り合って延在し、実質的に均一な間隙により隔てられていることが好ましい。
【0024】
電極は1つ以上のネオンなどの希ガスで満たされていることが好ましい。
【0025】
ガスは大気圧より低い状態、または部分真空の状態に維持されていることが好ましい。
【0026】
ガスで満たされた電極はガラスまたは他の何らかの好適な非導電材料から作られていることが好ましい。
【0027】
前記電磁場誘導手段は、電極の一方の側面上に延在し強磁性材料を含むことが好ましい。この材料は電磁場が一方向に配向されることを促進するフェライトまたはフェライト複合材料であることが好ましい。これにより、実質的にガスで満たされた電極の一方向に集中して電磁場を発生させる。使用中、ガスで満たされた電極の反対側は密封された包装の片方の表面に接触して設置される。次いで電磁場は密封された包装の壁を通過し、これにより電磁場は最大となり、したがって密封された包装の内部のコールドプラズマも最大となる。
【0028】
前記電磁場誘導手段は少なくとも部分的に電極間に延在し、前記電極を受けるための凹凸加工した表面を含むことが好ましい。電磁場誘導手段は2つの付加的な効果を持っている。第1に、電磁場を一方向に制限し一方向を除くガスで満たされた電極の周りの空気中に好ましくないオゾンの発生を防ぐ。第2に近接された金属内の電気誘導作用による全て加熱作用を防止する。
【0029】
この電極は、前記電磁場誘導手段により画定された前面が開いた空隙内に収められることが好ましい。電極は、空隙の前面と平行の平面内を延在することが好ましい。
【0030】
この空隙は、電極の周りに延在し殺菌される製品の包装を密封するように構成された1つ以上の側壁を含むことが好ましい。
【0031】
空気以外のガスが殺菌される製品の包装に対して密封されたときに、空気または他のガスを前記空隙から抜く手段を設けることが好ましい。この吸引によって空隙の壁と包装材料の間の密封を強くすることができる。したがって、包装材料は、近くの空気を自由に入りこませる空隙の開いた前面に対して強く引き寄せられる、これによりガスで満たされた電極と密封された包装の間の境界面における好ましくないオゾンの発生を最小限にする。
【0032】
前記高電圧生成手段は1kvから50kvの範囲の電圧パルスを生成することが好ましい。
【0033】
前記高電圧生成手段は電極内のガスをイオン化した状態に維持するのに十分な振幅の定電圧成分を有することが好ましい。これにより、常にガスを正しいガスの温度に維持し、温まるまでの遅延を解消する。
【0034】
前記高電圧生成手段は、電流放電を制御できるように5nsから100msの範囲の時間内に高電圧のパルスを生成することが好ましい。
【0035】
コールドプラズマの発生を実質的に制御し、密封された包装の広い範囲の生産速度に対応できるように、前記高電圧生成手段は可変振幅、可変幅および/または可変反復率を有するパルスを生成するよう構成されていることが好ましい。
【0036】
この装置は、前記高電圧生成手段の出力パラメータを変更するよう構成された手段に接続された電磁場を監視するセンサーを含むことが好ましい。このようにして高電圧生成手段は、電磁場を調整し均一なレベルに維持するために、電磁場センサーからのフィードバック信号を受け自動的に高電圧パルスの振幅および他のパルス・パラメータを調整することができる。これにより包装と包装との間の均一なオゾンの発生を確保する。
【0037】
前記高電圧生成手段は、反対の極性を有する電圧パルスを生成し、前記パルスを各電極に印加するよう構成されていることが好ましい。したがってガスで満たされた電極は反対の極性中でイオン化され、これによりオゾンを発生させる効率は著しく向上する。
【0038】
この装置は、殺菌される製品をかき混ぜる、あるいは動かす手段を含み、かき混ぜられる前後および/またはその間に前記電磁場を製品に照射できることが好ましい。このかき混ぜる手段は、包装を少なくとも部分回転させるよう構成されていることが好ましい。この方法により、消毒ガスが包装中のいたるところに素早く浸透し全ての表面にたどり着くことを促進する。
【0039】
この装置は、連続する製品に照射するよう構成されていることが好ましい。この装置は、引き続き同じ製品に照射するよう構成されていることが好ましい。
【0040】
また本発明に従えば、包装された製品を殺菌する方法が提供される。この方法は、前記製品を含む包装をガスで満たされた一対の電極に近接して設置する工程と、電極内のガスをイオン化するのに十分な高電圧を電極間に生成して電極間に高電磁場を発生させる工程と、包装内にオゾンが発生するように、その電磁場を照射し包装を貫通させる工程とを含む。
【0041】
前記包装の内部に延在しオゾンを発生させるコールドプラズマ場が生成されることが好ましい。
【0042】
発生する電磁場は殺菌される製品に向けて誘導されることが好ましい。
【0043】
電極は、殺菌される製品の包装に対して密封される前面が開いた空隙内に収められることが好ましい。
【0044】
空気以外のガスが殺菌される製品の包装に対して密封されたときに、空気または他のガスが前記空隙から抜かれることが好ましい。
【0045】
前記照射の前後および/またはその間に殺菌される製品を動かす、またはかき混ぜることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の実施形態を単に例示する方法で、下記の添付図面を参照して説明する。:
【図1】本発明による殺菌装置の第1の実施形態の分解斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1の装置の電源回路の概略図。
【図4】本発明による殺菌装置の第2の実施形態の断面図。
【図5】本発明による殺菌装置の第3の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面のうちの図1および図2を参照すると、ガラスなどの非導電材料から形成された2つの平らなU字型の電気放電管1、2を含む殺菌装置が示されている。これらの放電管1、2は、それらの全長に沿って隣り合って延在し実質的に均一な間隙により隔てられている。
【0048】
放電管1、2の内部31は、部分的に真空の状態でネオンまたは他のイオン化可能なガスなどの希ガスで満たされている。放電管1、2は、両端3、32および4、33で密閉されている。各放電管1、2の一方の端は金属接点5を含み、この金属接点5は絶縁体6に覆われており、絶縁体6を通して金属接点5に接続されたコード28を介して高電圧電源18に接続する手段を提供する。
【0049】
放電管1、2は反射体7に対して取り付けられており、反射体7は放電管1、2を受けるための凹凸加工された前面を有する。反射体7の一部は各管の間に延在している。放電管1、2によって生成された電磁場が実質的に前方に配向する、または集中することを促進するために、反射体7はフェライトやフェライト粉および樹脂混合物などの強磁性材料で作られる。
【0050】
反射体7はシール10を含む従属周壁を有し、それらは共に放電管1、2をはめ込む空隙9を画定する。シール10は、シリコーン・ゴムやバイトンなどの撓曲性とオゾン耐性の両方を有する材料で形成される。
【0051】
真空ポンプやほかの装置(図示せず)が設けられて、空気が反射体7を通り開口を経由して反射体7の後部に取り付けられた空洞14内へ吸い上げられる。この空洞14はダクト15を経由して真空ポンプや他の装置に接続する。空洞14の壁はプラスチックなどの非導電材料で形成されることが好ましい。
【0052】
殺菌される製品を含む密封された包装16は包装の縁端部がシール10にぴったり合うように、空隙9の前面(下面)に近接して設置される。密封された包装16がこのように設置された状態で、ダクト15に吸引力が加わって、密封された包装16のシーリング・フィルム17と空隙9の前面(下面)の間がしっかり密封される。包装16と放電管組立体の間の境界面から空気が実質的に取り除かれ、これにより包装の外側の好ましくないオゾンの量が最小限になる。
【0053】
高電圧パルス直流電源18が設けられており、放電管1、2の内部33内のネオンガスをイオン化する。電源18は電圧を印加する出力部を含み、この出力部は高電圧コード28を経由して放電管1、2の各金属接点5に接続する。
【0054】
高電圧直流電源18は電磁場の強さを制御するために、可変振幅、可変幅および/または可変反復率を有するパルスを生成するよう構成されていることが好ましい。
【0055】
高電圧パルスにより放電管1、2内のネオンガス31がイオン化され、次いでイオン化されたネオンガス31により放電管1、2の周辺および間に電磁場が発生し、密封された包装16のシーリング・フィルム17を通過する。この電磁場は、密封された包装16内部にある空気中の酸素を分解してオゾンおよび他の高反応性酸素種を含むコールドプラズマを発生させるのに十分なエネルギーを有する。密封された包装16の内部の全ての微生物はコールドプラズマ内のオゾンおよび他の消毒種と接触して殺される。
【0056】
自動的に電磁場の強さを制御するための手段が設けられ、この手段により放電管1、2に近接する電磁場強度センサー19を設けることで、包装の均一性と包装消毒の均一性が向上される。センサー19は、電磁場の強さの測定値を高電圧電源18に入力される信号に変換する。高電圧電源18はその3つの変数、すなわちパルス振幅、パルス幅、およびパルス反復率のうちの1つ以上を自動的に調整して、放電管1、2からの電磁場の均一な強さを維持する。この技術により1つの放電管組立体で広い範囲の包装を消毒することができる。
【0057】
電源18により出力される電圧は、パルスが生成されていないときでも常に電極1、2内のガスをイオン化するのに十分である。このようにして電極は、パルスにより即座に印加されてプラズマを発生させる状態に維持される。
【0058】
図面のうちの図3を参照すると、図1の高電圧電源18の概略図が示されている。この電源は、入力された信号によりその直流出力を自動的に調整可能な低電圧直流電源20を含む。低電圧直流電源20はパルス発生器21、および高周波数の干渉を全て取り除くEMCフィルタ23を介した電源駆動回路22のための低供給電圧を生成する。このパルス発生器21は可変パルス幅制御装置24および可変パルス反復率制御装置25の両方を含み、駆動パルスを供給して電源駆動回路22内で電源駆動装置のオン・オフを切り替える。
【0059】
この電源駆動装置は、要求される駆動周波数の電力を処理するために選択されたパワー金属酸化膜半導体電界効果(MOSFET)トランジスタ装置であることが好ましい。
変圧器27はその一次巻線が電源駆動回路により切り替えられ、一次電圧を出力部28で高電圧に昇圧させる。この変圧器は、好ましくは高周波数動作用に設計され、高周波数用自動変圧器を含んでもよい。
【0060】
この変圧器により生成される高電圧を選択可能にするために、一次と二次の巻数比を変更できるように変圧器の一次巻線は接続される。したがって出力電圧を変更でき、セレクタ29により選択できる。
【0061】
放電管1、2は、金属接点5、30およびセンサー19を経由して変圧器の出力端子に接続し、センサー19は放電管1、2に近接し、信号を低電圧電源20にフィードバックする。電磁場が変化すると、低電圧電源20は信号を用いて変圧器27の一次巻線に入力される低電圧の振幅、パルス幅およびパルス反復率を自動的に調整する。したがって電磁場の強さは実質的に均一に維持される。
【0062】
単一放電管の組立体2個を包装または包装の一部の両面に設置してこの方法を用いることができる。これにより放電管の間に電磁場が発生し、両側から包装を通過する。これは形成、充填、および密封工程のための理想的な解決法である。
【0063】
図面のうちの図4を参照すると、第2の実施形態で回転式コンベア200に取り付けられた第1の実施形態で記載の放電管組立体100を複数含む装置が示されている。回転式コンベア200は8つの外周面を有する八角形で、この回転式コンベア200の各外周面には1つの放電管組立体1000が取り付けられている。組立体100を1つだけ図面に明確に示す。この実施形態では八角形の形状を示すが、回転式コンベアはあらゆる数の面を有する様々な形状を取ることができる。
【0064】
各放電管組立体100は、その空洞300が回転式コンベア200の中心から外側に突き出て、回転式コンベア200の各面の外周面を形成するように設置される。回転式コンベア200を中心軸170の周りに回転させるための手段(図示せず)が設けられる。
【0065】
各放電管組立体100を空気が通り抜けるための(空洞300の前面で吸引を行うための)手段が設けられる。この手段は一方の端が放電管組立体100の吸引空洞300に接続し、他方の端は弁60を経由して吸引多岐管50に接続するパイプ400の形態をとる。弁60が開くと吸引力が加わり閉じると吸引力が止まるというように、弁60により吸引力が制御される。吸引多岐管50は回転用シールを経由して吸引源(図示せず)に取り付けられる。
【0066】
各放電管組立体100は、回転式コンベア200に取り付けられた独自の高電圧電源70を含む。高電圧電源70は小型化のために回転式コンベアの両側に交互に設置され、高電圧コード80により各放電管組立体100に接続する。
回転接続組立体(図示せず)により電源70に電源を供給する手段が設けられる。
【0067】
消毒を必要とする密封された包装90は、割り送りコンベヤー101により第1の放電管組立体100の面と対向する取り付け位置へ供給される。可動式プラットフォーム110および包装90が適切な位置であることを感知するセンサー(図示せず)により包装90を第1の放電管組立体100の放出面と接する位置まで持ち上げる手段が設けられる。
【0068】
このセンサーにより弁60が付勢されて開放状態となり、それにより発生する吸引力により包装90と空洞300の前面の間がしっかりと密封される。この吸引力により包装90の重量も支えられる。可動式プラットフォーム110は引っ込み、回転式コンベア200は時計方向の回転により第2の放電管組立体の位置へ割り送りする。包装90は回転式コンベア200の周りを割り送りされるとき、適切な位置で第1の放電管組立体100の空洞300の前面に対して強く吸引されて保持される。次いで第1の放電管140のスイッチが入り包装90を消毒し、この一連の動作が繰り返される。
【0069】
センサー130は、包装90が放出される位置に到着したことを感知し、放電管140のスイッチを切り、弁60を開いて吸引を止める。包装90には支持される手段はなく前に倒れ、導材150により出口コンベヤー160の上に誘導される。
【0070】
包装90が回転式コンベア200の周りを進むとき、各包装の内部の製品180は絶え間なく露出する表面領域の場所を変え、オゾンが即座に空域を通して分散するのを促進する。このようにして、密封された包装90に対する消毒工程が連続して行われ、包装90の内側に十分なオゾンの発生を確保するための十分な時間遅滞が回転式コンベア200により提供される。
【0071】
図面のうちの図5を参照すると、第3の実施形態における放電管装置が示されている。この放電管装置は互いに近接して設置された2つの電気放電管102、201を含む。放電管102、201は、それぞれ管形状の非導電材料から成り、この非導電材料は複数の平行に並ぶ管を含む平らな蛇行構造を形成し、第1の管の出口が第2の管の入口に接続するといったように構成される。
【0072】
各放電管102、201は、部分真空状態でネオンや他の何らかのイオン化可能なガスなどの希ガスで満たされ、両端で密閉される。高電圧電源222を金属接点501、601の形態をとる各放電管102、201の片方の端に接続させる手段が設けられる。
【0073】
金属接点501、601に接続した高圧コード801、141は、好適な高電圧絶縁体191、142を介して放電管102、201を高電圧電源222に接続させる。2つの放電管102、201は、平らな平面内で2つの蛇行形状が交互配置するように設置される。放電管102、201は、それぞれ独自の高電圧電源182、202および192、212を含む。放電管102には電位に対して正の高電圧パルスが供給され、放電管201には電位に対して負の高電圧パルスが供給される。
【0074】
正の高電圧パルスおよび負の高電圧パルスは同期して放電管102、201を同時にイオン化する。これにより空気中からオゾンおよび酸素種を含むコールドプラズマを発生させる効率的で効果的な方法が得られる。
【0075】
オゾンの発生を向上させる例では、正のパルスおよび負のパルスで放電管を交互に印加することが望ましい。高電圧電力は、信号入力によりその両方の直流出力を自動的に調整できる低電圧直流電源162を含む。低電圧直流電源162は、電位に対して正の電圧および電位に対して負の電圧の2つの低供給電圧を生成する。正の直流供給はパルス発生器172および電源駆動回路182に電力を供給し、負の直流供給は電源駆動回路192に電力を供給する。
【0076】
パルス発生器172は両方の電源駆動回路を駆動できるように、相補出力に加えて可変パルス幅の制御および可変パルス反復率の制御の両方を行う。これらの相補駆動パルスにより2つの電源駆動装置のオン・オフが電源駆動回路182、192内で切り替えられる。電源駆動装置は、要求される駆動周波数の電力を処理するために選択されたパワーMOSFET装置であることが好ましい。
【0077】
2つの変圧器202、212は、その一次巻線が電源駆動回路182、192により切り替えられ、正一次電圧および負の一次電圧を増幅して、放電管102を駆動するための正の高電圧および放電管201を駆動するための負の高電圧を生成する。両方の変圧器は高周波数動作用に設計されていることが好ましい。
【0078】
変圧器202、212により生成される高電圧の選択を可能にするために、一次と二次の巻数比を変更できるよう、これらの変圧器の一次巻線は接続される。したがって出力電圧の範囲を変更し、選択することができる。
【0079】
放電管102、201に近接する電磁場強度センサー153は、低電圧電源162に信号をフィードバックする。電磁場が変化すると、低電圧電源162は信号を用いて変圧器202、212の一次巻線に入力される電圧の振幅を自動的に調整する。したがって電磁場の強さは安定する。
【0080】
本発明は、密封された包装内の生ものおよび生もの以外の製品の消毒における広い範囲の用途にわたって応用可能である。以下の一覧には、決して網羅的ではないが、食料品、瓶入り飲料、瓶入りソース、サラダなどの農産物、医療器具および医療機器、哺乳瓶等が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装された製品を殺菌する装置であって、
ガスで満たされた一対の電極と、
電極内のガスをイオン化し電極間に高電磁場を発生させるのに十分な高電圧を電極間に生成する手段と、を含み、
前記製品を含む包装に前記電磁場を照射するよう構成された装置。
【請求項2】
前記電磁場が空気中の酸素をオゾンおよび他の活性酸素種に変換するのに十分な高エネルギーのコールドプラズマを発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記発生した電磁場を前記殺菌される製品に向けて誘導する手段を設ける、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
各電極は細長い、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
各電極は湾曲、コイル状、または屈曲しているか、あるいはその全長に沿った直線でない、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各電極は複数の相互接続した直線部を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
各電極は一般に平面で、前記電磁場誘導手段は前記平面と垂直な前記電磁場を前記殺菌される製品に向けて誘導するよう構成された、請求項4から6に記載の請求項3に従属する装置。
【請求項8】
前記電極はその全長に隣り合って延在し、実質的に均一な間隙により隔てられている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記電磁場誘導手段は前記電極の一方の側面に延在し、強磁性材料を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記電磁場誘導手段は少なくとも部分的に電極間に延在する、請求項3に記載の装置。
【請求項11】
前記電磁場誘導手段は前記電極を受けるための凹凸加工した表面を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項12】
前記電極は前面が開いた空隙内に収められる、請求項3に記載の装置。
【請求項13】
前記空隙は前記電磁場誘導手段により画定される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電極は前記空隙の前面と平行の平面内を延在する、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記空隙は、前記電極の周りを延在し前記殺菌される製品の包装を密封するように構成された1つ以上の側壁を含む、請求項12から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
空気以外のガスが前記殺菌される製品の前記包装に対して密封されたときに、空気または他のガスを前記空隙から抜く手段が設けられている、請求項12から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記高電圧生成手段は1kvから50kvまで範囲の電圧パルスを生成する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記高電圧生成手段は前記電極内のガスをイオン化した状態に維持するのに十分な振幅の定電圧成分を有する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記高電圧生成手段は5nsから100msの範囲に時間内に高電圧のパルスを生成する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記高電圧生成手段は可変振幅、可変幅および/または可変反復率を有するパルスを生成するよう構成された、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記高電圧生成手段の出力パラメータを変更するよう構成された手段に接続され電磁場を監視するセンサーを含む、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記高電圧生成手段は反対の極性を有する電圧パルスを生成し、前記パルスを各電極に印加するよう構成された、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記殺菌される製品をかき混ぜる、あるいは動かす手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記製品はかき混ぜられる前後および/またはその間に前記電磁場に照射される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記かき混ぜる手段は、前記包装を少なくとも部分回転させるよう構成された、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
連続する製品に照射するよう構成された、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
引き続き同じ製品に照射するよう構成された、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
包装された製品を殺菌する方法であって、
製品を含む包装をガスで満たされた一対の電極に近接して設置する工程と、
ガスをイオン化するのに十分な高電圧を電極間に生成して、電極間に高電磁場を発生させる工程と、
包装内にオゾンが発生するように、前記電磁場を照射し包装を貫通させる工程と、を含む方法。
【請求項29】
前記包装の内部に延在しオゾンを発生させるコールドプラズマ場が生成される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記発生する電磁場は前記殺菌される製品に向けて誘導される、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電極は、前記殺菌される製品の前記包装に対して密封される前面が開いた空隙内に収められる、請求項28から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
空気以外のガスが前記殺菌される製品の前記包装に対して密封されたときに、空気または他のガスが前記空隙から抜かれる、請求項31に記載の方法
【請求項33】
前記照射の前後および/またはその間に前記殺菌される製品を動かす、またはかき混ぜる、請求項28から32のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−522696(P2012−522696A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504086(P2012−504086)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050606
【国際公開番号】WO2010/116191
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511242580)オゾニカ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】