説明

化合物、その製造方法及びその重合体

【課題】分子内に親水性の高い構造を有し、高い光重合性を示し、且つ重合させた際に各種基板に対する充分な接着性及び優れた破断強度等を示す重合体を得ることが可能なウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物、その製造方法及び重合体を提供する。
【解決手段】分子構造中に親水性の(メタ)アクリレート基、親水性のウレタン結合、アルキルオキシ繰り返し構造、複数のヒドロキシ基を併せ持つ構造を有するウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、成形材料、インキ、印刷材料、電気絶縁材料、光学材料、歯科材料、医療材料等の分野で広く利用可能な、新規なウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物、その製造方法及びその重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な要求に応じた汎用性の高い高分子化合物は、熱、紫外線、電子線、ラジカル重合開始剤等を用いて、反応性が高いことで知られる(メタ)アクリレート系モノマーを単独で、あるいは他のエチレン性不飽和化合物と重合させることにより製造されている。該(メタ)アクリレート系モノマーは、例えば、粘着剤、塗料等の分野で用いられる他、最近では電子材又は歯科材の分野でも使用されている。特に医療用材料の分野では、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、ビニルピロリドン等の親水性を有する(メタ)アクリレート化合物が提案され、既に実用化されている。
このような(メタ)アクリレート系モノマーは、高純度かつ高機能性が求められる電子材や歯科材等の分野に使用され始めたことに伴い、非水性材料との親和性、接着性や親水性等に優れる性質、さらには光重合性等の機能性が新たな課題として要求され始めている。
このような要求に対応した(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、特許文献1にリン含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、特許文献2にカラーフィルタ材料としての、(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレート感光性組成物が提案されている。
しかし、これらはモノマーの重合性や、レジストに用いる場合の基板への接着性、更に合成の容易さ等における課題解決が充分とは言えない。
【0003】
最近、特許文献3において、式(A)及び(B)で示されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物が提案されている。
【化4】

(式中、Z1は水素原子又はメチル基、Z2は−(CH2)n−で示される基、Z3は−(CH2)m−で示される基を示す。ここで、nは1〜4、mは1〜8の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、xは0〜1000の整数である。Z4及びZ5は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
このような構造のモノマーを用いた重合体は、材料として一定の性能を示す。しかし、最近の技術の高度化にともない、例えば、成型フィルムにおいては、強度向上等の要求が更に高まっており、上記式(A)及び(B)の化合物よりも、更に基盤への接着性に優れ、重合体の破断強度等を改善することができる新規な(メタ)アクリレート系モノマーの開発が熱望されている。
【特許文献1】特開2003−212954号公報
【特許文献2】特開2003−315998号公報
【特許文献3】特開2006−151953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、分子内に親水性の高い構造を有し、高い光重合性を示し、且つ重合させた際に各種基板に対する充分な接着性及び優れた破断強度等を示す重合体を得ることが可能なウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を提供することにある。
本発明の別の課題は、各種基板に対する接着性及び破断強度等に特に優れ、広範な材料分野で幅広く利用することが可能な重合体を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記優れた作用を示す本発明の重合体の原料となる本発明のウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、分子構造中に親水性の(メタ)アクリレート基、親水性のウレタン結合、アルキルオキシ繰り返し構造、複数のヒドロキシ基を併せ持つウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物が上記課題を解決するモノマーであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、式(1)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物(以下、化合物(1)と略す)が提供される。
【化5】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。)
【0006】
また本発明によれば、式(2)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物(以下、化合物(2)と略す)が提供される。
【化6】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。R3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
【0007】
更に本発明によれば、式(3)で表される環状ケタールと式(4)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナートとをウレタン化反応させ、前記式(2)で表される化合物(2)を得、これを触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させることを特徴とする前記化合物(1)の製造方法が提供される。
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びR4は式(1)又は式(2)のものと同様である。)
【0008】
更にまた本発明によれば、化合物(1)を含有する重合性原料(以下、重合性原料(1)ということがある)又は化合物(2)を含有する重合性原料(以下、重合性原料(2)ということがある)を重合してなる重合体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物(1)及び(2)は、(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に、親水性のウレタン結合を有し、化合物(1)では、ヒドロキシ基をも併せ持つので、光重合性に優れ、親水性も期待できる。また、本発明の化合物(1)及び(2)を用いた重合体は、基材に対して優れた接着性を示し、かつ優れた破断強度を示す。従って、これらの化合物及びこれらの重合体は、医療分野を含め幅広い分野における原料や材料としての利用が期待できる。特に、化合物(2)は、化合物(1)を製造するための前駆体としても利用可能であり、更に化合物(2)を含む重合性原料(2)の重合体は、酸による加水開環によって、化合物(1)を含む重合性原料(1)の重合体と同様な重合体を得ることができる。
また本発明の化合物(1)の製造方法では、化合物(2)を前駆体として用いる反応経路を利用するので、上記優れた効果を有する目的の化合物(1)を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の化合物(1)は前記式(1)で、化合物(2)は前記式(2)で示されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物である。これら式中においてR1は水素原子又はメチル基を表し、光重合性の高さの観点からは水素原子であることが好ましい。R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。R2は具体的に−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2 CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2O CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2−のいずれかであり、入手のし易さから−CH2CH2OCH2CH2−が好ましい。また、式(2)中のR3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
【0011】
本発明の化合物(化合物(1)及び化合物(2))は、特許文献3に記載された従来の化合物(前記式(A)や式(B)の構造の化合物)と、分子構造中に、重合性基となる(メタ)アクリル基及び親水性のウレタン結合を有する点で共通している。しかし、該重合性基から比較的近い部分のR2を、従来の化合物では−(CH2)n−としているのに対して、本発明の化合物では−(CH2CH2O)n(CH2)m−とするので、本発明の化合物の方が、構造中のウレタン結合及びジオールの運動性や立体構造の自由度が増すものと考えられる。また、基材との接着点となりうる分子構造中のウレタン結合とジオールとの間に炭素数2〜4のオキシアルキレン基を有する従来の化合物に対して、本発明の化合物はこのような基を有さないので、ウレタン結合とジオールとの間がより近接した構造となっている。これらの相違により、各化合物を含む重合性原料を重合して得た重合体では、本発明の化合物を用いた重合体の方が、基板への接着性に優れ、更には、顕著な破断強度を示し、また、粘弾性及び耐寒性にも優れる等の有利な効果を奏する。
【0012】
化合物(1)としては、例えば、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシプロピルウレタンが挙げられる。合成のし易さからグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンが好ましい。
化合物(2)は、後述する本発明の製造方法において化合物(1)の前駆体としても利用できる化合物であり、例えば、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン、(R,S)−sec−ブチリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンが挙げられる。反応の容易さの点から(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンが好ましい。
【0013】
本発明の化合物(1)を調製するには、例えば、前記式(3)で表される環状ケタールと前記式(4)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシアルキルイソシアナートとをウレタン化反応させ、前記式(2)で表される化合物(2)を得、これを触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させる本発明の製造方法により得ることができる。
式(3)においてR3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。反応後の環状ケタール残留分除去の容易さの点からは、メチル基が好ましい。
式(3)で表される化合物としては、例えば、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール、(R,S)−sec−ブチリデングリセロールが挙げられる。反応の容易さの点からは(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールが好ましい。このような環状ケタールとしては、市販品が用いられる他、グリセリンと式(5)で表されるカルボニル化合物とを、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸、メタンスルホン酸、イオン交換樹脂、固体酸等の触媒存在下に、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等の溶媒中で環化反応させた合成物を用いることもできる。
【0014】
【化8】

式(5)中、R3及びR4は式(3)のものと同一である。式(5)で表されるカルボニル化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノンが挙げられる。反応後の除去の容易さからはアセトンが好ましい。
【0015】
式(4)中、R1及びR2は式(1)のものと同一である。式(4)で表される化合物としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルオキシエチルイソシアナート、メタクリロイルオキシエチルオキシプロピルイソシアナート等が挙げられる。入手の容易さの点からはメタクリロイルオキシエチルオキシエチルイソシアナートが好ましい。このようなイソシアナートとしては、市販品を用いても良いが、公知の合成方法を駆使することにより既知の原料から合成したものを用いても良い。
【0016】
式(3)で表される化合物と、式(4)で表される化合物とを、ウレタン化反応させる際の式(3)で表される化合物の量は、式(4)で表される化合物に対し、モル比で1.1〜3倍量が好ましい。このウレタン化反応は、触媒を用いなくても進行するが、反応時間を短縮できる点から、ウレタン化反応用触媒を用いるのが好ましい。
【0017】
ウレタン化反応用触媒としては、例えば、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、ジモルフォリノメタン、エチルモルフォリノ酢酸、N−(3−ジメチルアミノプロピル)モルフォリン、N−メチルピペリジン、キノリン、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロオクタン、テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルジエチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチルジエチレンジアミン、テトラエチルメタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)アジペート、ビス(2−ジエチルアミノエチル)アジペート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、メチルオクチルシクロヘキシルアミン、メチルドデシルシクロヘキシルアミン等の3級アミン化合物;塩化スズ、テトラ−N−ブチルスズ、テトラフェニルスズ、トリ−n−ブチルスズアセテート、ジメチルジクロロスズ、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルジクロロスズ、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジジラウリン酸メルカプチド、ビス(2−エチルヘキシル)スズオキシド、ジ−n−ブチルスズスルフィド等の含スズ化合物が挙げられる。反応生成物にウレタン化反応用触媒が残存した場合の安全性の点からは、3級アミン化合物が好ましい。
ウレタン化反応用触媒を用いる場合の使用量は、式(4)で表される化合物100質量部に対して、通常0.001〜50質量部、好ましくは0.01〜30質量部、最も好ましくは0.0〜10質量部である。
【0018】
ウレタン化反応は、無溶媒反応でも何ら問題は無いが、式(4)で表される化合物に対して反応性をもたない溶媒存在下に行うこともできる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ピリジンが好ましく挙げられる。反応後の溶媒除去の容易さからはアセトンが最も好ましい。前記溶媒を用いる場合の使用量は、式(4)で表される化合物100質量部に対して、0.1〜1000質量部程度である。
【0019】
ウレタン化反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは25〜80℃、最も好ましくは40〜60℃の範囲である。反応温度が0℃より低い場合は、反応に長時間を要する恐れがある。反応温度が100℃を超える場合、重合等の副反応が起こり易くなる恐れがある。一方、反応時間は、反応温度、触媒の種類及び量等の条件により異なるが、通常、6〜24時間程度が好ましい。
以上のウレタン化反応により、式(2)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物前駆体としての化合物(2)を得ることができる。得られる化合物(2)は、そのまま未精製で、または減圧乾燥等の処理により単離、精製した後、化合物(1)を得るための加水開環反応の原料として用いることができる。また、後述する化合物(2)を含有する重合性原料を調製する際の原料として用いることができる。
【0020】
本発明の製造方法においては、前駆体としての化合物(2)を、触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させる事により目的の化合物(1)を得ることができる。
加水開環反応に用いる触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、イオン交換樹脂、固体酸が好ましく挙げられる。反応後の触媒除去の容易さの点からは、イオン交換樹脂が特に好ましい。該触媒の使用量は、通常反応系全体に占める割合が、0.1〜50.0質量%となる量が好ましい。
加水開環反応に用いる水含有溶媒としては、例えば、水単独または、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド等の水可溶性の溶媒と水との混合溶媒が好ましく挙げられる。反応後の除去の容易さからは、エタノールと水との混合溶媒が最も好ましい。
【0021】
加水開環反応の反応温度は、好ましくは0〜50℃の範囲である。反応温度が50℃を超える場合、エステルの加水分解反応又はエステル交換反応等の副反応が起こる恐れがある。また反応温度が0℃より低い場合、水分が固化する恐れがある。一方、反応時間は、反応温度、触媒の種類及び量等の条件により異なるが、通常、1〜6時間程度が好ましい。
尚、加水開環反応の進行に伴い、反応系内にカルボニル化合物が生成するが、反応時間を短縮する目的で、生成するカルボニル化合物を減圧留去等の手段により反応系内から除去することが好ましい。
本発明の製造方法により得られる化合物(1)は、後述する重合性原料を調製する際の原料としてそのまま未精製で使用できる他、減圧乾燥、再結晶、カラム等の処理により単離、精製した後に用いることもできる。
【0022】
本発明の重合体は、化合物(1)を含有する重合性原料(1)又は化合物(2)を含有する重合性原料(2)を重合してなる重合体である。化合物(1)からなる重合性原料(1)を重合してなる重合体は、化合物(2)からなる重合性原料(2)を重合してなる重合体を、更に酸により加水開環することによっても得ることができる。
本発明の重合体の分子量は特に限定されず、各用途において要求される性能が発揮しうるように重合条件等を調製して適宜決定できる。該分子量は、通常、重量平均分子量で5000〜1000000程度である。
【0023】
重合性原料(1)は化合物(1)単独、または化合物(1)と共重合可能な他のモノマーとの混合物であってもよい。
他のモノマーとしては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリル酸エステル;メチルビニルエーテル等の各種ビニルエーテル;その他、アクリルアミド、N,N'−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アリルアルコール、アクリロニトリル、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレン、クロロスチレン、ビニルフェノール、ビニルシンナメート、塩化ビニル、ビニルブロミド、ブタジエン、ビニレンカーボネート、イタコン酸、イタコン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル等の各種ラジカル重合性モノマーが挙げられる。モノマーの相溶性の点からは2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。また、重合体を簡便に得る点からは、重合性原料(1)は化合物(1)単独が好ましい。
重合性原料(1)において、他のモノマーを用いる場合、その配合量は任意であって適宜選択できる。しかし、化合物(1)の性能を引き出すためには、重合性原料(1)中に化合物(1)が10質量%以上含まれていることが好ましい。
【0024】
重合性原料(1)は、そのままバルク状態で重合に用いてよく、また溶液を加えて重合に供することもできる。該溶液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド、水及びこれら有機溶媒との混合物、他の各種極性溶媒が挙げられる。連鎖移動係数の点からはメタノールが好ましい。
【0025】
重合性原料(1)の重合は、ラジカル重合又は光重合により実施できる。ラジカル重合は、ラジカル開始剤を用いて行うことができる。該ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物が挙げられる。作業性や得られる重合体の不溶化等の観点からは、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチルが好ましい。
ラジカル開始剤の使用量は、重合性原料(1)100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部が好ましい。重合温度及び重合時間は、ラジカル開始剤の種類、他のモノマーの有無や種類等によって適宜選択して決定できる。例えば、化合物(1)単独からなる重合性原料(1)を、ラジカル開始剤として2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いて重合させる場合には、重合温度は好ましくは50〜70℃、重合時間8〜48時間程度が適当である。
【0026】
光重合は、例えば、波長254nmの紫外線(UV)又は加速電圧150〜300kVの電子線(EB)照射により実施できる。この際、光重合開始剤の使用は任意であるが、反応時間の点からは使用が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。溶解性等の点からは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンが好ましい。
【0027】
重合性原料(2)は、化合物(2)単独、または化合物(2)と共重合が可能な他のモノマーとの混合物であっても良い。化合物(2)単独からなる重合性原料(2)を重合させた場合には、疎水性の重合体が得られるが、該重合体は重合後、後述する加水開環反応させることで親水性を付与することが可能である。また、化合物(2)は、疎水性のモノマーとの共重合性が良好であるため、通常、親水性のモノマーと共重合が困難な疎水性のモノマーとも混合して使用できる。このような使用の場合、重合性原料(2)中の化合物(2)は、親水化剤として作用し、親水性の重合体が得られる。
【0028】
重合性原料(2)における他のモノマーとしては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリル酸エステル;メチルビニルエーテル等の各種ビニルエーテル;その他、アクリルアミド、N,N'−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アリルアルコール、アクリロニトリル、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレン、クロロスチレン、ビニルフェノール、ビニルシンナメート、塩化ビニル、ビニルブロミド、ブタジエン、ビニレンカーボネート、イタコン酸、イタコン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル等の各種ラジカル重合性モノマーが挙げられる。モノマーの相溶性の点からはメチルメタクリレートが好ましい。また、重合体を簡便に得る点からは、重合性原料(2)は、化合物(2)単独が好ましい。
重合性原料(2)において、他のモノマーを用いる場合、その配合量は任意であって適宜選択できる。しかし、化合物(2)の性能を引き出すためには、重合性原料(2)中に化合物(2)が10質量%以上含まれることが好ましい。
【0029】
重合性原料(2)は、そのままバルク状態で重合に用いてよく、また溶液を加えて重合に供することもできる。該溶液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素溶媒が挙げられる。連鎖移動係数の点からはベンゼンが好ましい。
【0030】
重合性原料(2)の重合は、ラジカル重合又は光重合により実施できる。ラジカル重合は、ラジカル開始剤を用いて行うことができる。該ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物が挙げられる。作業性や得られる重合体の不溶化等の点からは、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチルが好ましい。
ラジカル開始剤の使用量は、重合性原料(2)100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部が好ましい。重合温度及び重合時間は、ラジカル開始剤の種類、他のモノマーの有無や種類によって適宜選択して決定できる。例えば、化合物(2)単独からなる重合性原料(2)を、ラジカル開始剤として2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いて重合させる場合、重合温度は好ましくは50〜70℃、重合時間8〜48時間程度が適当である。
【0031】
光重合は、例えば、波長254nmのUV又は加速電圧150〜300kVのEB照射により実施できる。この際、光重合開始剤の使用は任意であるが、反応時間の点からは使用が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。溶解性等の点からは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンが好ましい。
【0032】
化合物(2)単独からなる重合性原料(2)を重合させてなる重合体は、酸により加水開環することによって、化合物(1)単独からなる重合性原料(1)を重合させてなる重合体と同様な重合体を得ることができる。加水開環は、例えば、触媒の存在下に水含有溶媒中で、本発明の製造方法における前駆体としての化合物(2)の開環反応の方法に準じた方法により行うことができる。
【0033】
重合性原料(1)又は重合性原料(2)を重合させてなる本発明の重合体は、例えば、公知の加工方法により、フィルム状、ペレット状等の形態とすることができる。これらは、塗料、光学材料、歯科材料、電子材料、印刷材料等の素材として利用可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
製造例1 (化合物(3)に該当する化合物の合成)
(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールは、M.Renoll, M.S. Newman, Org. Syn. Coll. 3, 502(1955)に従い、以下の合成方法により製造した。
カルシウム管、冷却管及びディーン−スターク(Dean−stark)トラップを装着したナス型フラスコに、グリセリン100g、アセトン300ml、p−トルエンスルホン酸1水和物3g及び石油エーテル300mlを加え、50℃に設定したオイルバス中で加熱還流させた。12時間後、生成水分量約23mlで、新たに水分が生成しなくなったことを確認した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、酢酸ナトリウム3gを加えて更に30分間攪拌した後、エバポレータにより石油エーテル及びアセトンを留去した。得られた粗生成物を、バス温度70℃、留分温度60℃、減圧度5mmHgの条件で減圧蒸留することにより、収量130.6g、収率91%で、無色透明液体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 1.3−1.5ppm,d,CH3(6H) 1.9ppm,s,OH(1H) 3.5−4.3ppm,m,CH2CH CH2(5H)
【0035】
製造例2 (化合物(3)に該当する化合物の合成)
アセトンの代わりにメチルエチルケトンを用いた以外は製造例1と同様の操作を行ない、収量139.6g、収率88%で、無色透明液体の(R,S)−sec−ブチリデングリセロールを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 0.8−1.0ppm,t,CH2CH3(3H) 1.2−1.4ppm,d,CH3(3H) 1.6−1.8ppm,q,CH2CH3(2H) 1.9ppm,s,OH(1H) 3.5−4.3ppm,m,CH2CHCH2(5H)
【0036】
実施例1 (化合物(2)に該当する化合物の合成)
ナス型フラスコに、製造例1において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール6.60g及びトリエチルアミン1mlを加え、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。メタクリロイルオキシエチルオキシエチルイソシアナート9.04g(昭和電工(株)製)を秤取って、室温、遮光下においてゆっくりと滴下した。50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、トリエチルアミン及び過剰の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを減圧留去することにより、収量13.5g、収率90%で、白色固体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン(式(8))を得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 1.3−1.5ppm,d,CH3(6H) 1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H) 3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2NH CH2CHCH2(13H) 5.1ppm,s,NH(1H) 5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0037】
【化9】

【0038】
実施例2 (化合物(2)に該当する化合物の合成)
(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールの代わりに製造例2において合成した(R,S)−sec−ブチリデングリセロールを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、収量13.8g、収率96%で、白色固体の(R,S)−sec−イソブチリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン(式(9))を得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 0.8−1.0ppm,t,CH2CH3(3H) 1.2−1.4ppm,d,CH3(3H) 1.6−1.8ppm,q,CH2CH3(2H) 1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H) 3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2NH CH2CHCH2(13H) 5.1ppm,s,NH(1H) 5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)
【0039】
【化10】

【0040】
実施例3 (化合物(1)に該当する化合物の合成)
スクリュー管に、マグネチックスターラ、実施例1において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン1.0g、メタノール3.9ml及び4N塩酸100μlを加え、室温下30分間攪拌反応させたところ、懸濁液が透明溶液となった。更に60分間攪拌反応させた後、減圧乾燥により収量835mg(収率95%)で色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン(式(10))を得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H) 3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2N H CH2CHCH2(13H) 5.1ppm,s,NH(1H) 5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0041】
【化11】

得られた生成物をHPLCにより下記条件において分析した結果、得られたグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンは95%以上であることが分かった。
(HPLC条件)
溶離液:水/アセトニトリル=4/6(v/v)、カラム:ODS、検出器:UV(220nm)、送液速度:1.0ml/min、カラム槽温度:40℃
【0042】
実施例4 (化合物(1)に該当する化合物の合成)
(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの代わりに実施例2において合成した(R,S)−sec−ブチリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ない、収量784mg(収率93%)で、無色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン(式(10))を得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) 1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H) 3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2N H CH2CHCH2(13H) 5.1ppm,s,NH(1H) 5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
得られた生成物を実施例3と同様にHPLCにより分析した結果、得られたグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンは95%以上であることが分かった。
【0043】
実施例5 (重合性原料(1)を用いたラジカル重合による重合体の合成)
実施例3において合成したグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン1.0g、水/メタノール混合溶媒5ml(2/8(v/v))及びアゾイソブチロニトリル5mgをねじ口試験管に秤取り、30秒間アルゴンガスでバブリングした。すばやく密栓した後、予め60℃に設定した振とう機によって24時間反応させた。24時間後、反応溶液を透析膜(商品名スペクトラ/ポア7(フナコシ(株)製)、分画分子量1000)にとり、1リットルの水中で、3時間毎に水を交換して12時間透析操作を行った。この溶液を300mlのナス型フラスコに取り、凍結乾燥することにより収量890mg、収率89%で、ポリグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンを得た。
得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液を下記条件においてGPCを用いて分子量を測定した。その結果、得られた重合体の重量平均分子量は、約48000であった。
(GPC条件)
溶離液:20mM燐酸緩衝液、カラム:TSK gel G4000 PWXL+TSK gel G2500 PWXL、検出器:RI、送液速度:0.6ml/min、カラム槽温度:40℃、標準物質:ポリエチレンオキシド
【0044】
実施例6 (重合性原料(2)を用いたラジカル重合による重合体の合成)
実施例1において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン1.0g、THF 5ml及びアゾイソブチロニトリル5mgをねじ口試験管に秤取り、30秒間アルゴンガスでバブリングした。すばやく密栓した後、予め60℃に設定した振とう機によって24時間反応させた。24時間後、反応溶液を室温まで冷却した後、4Nの塩酸1mlを加えて3時間攪拌した。反応溶液を透析膜(商品名スペクトラ/ポア7(フナコシ(株)製)、分画分子量1000)にとり、1リットルの水中で、3時間毎に水を交換して12時間透析操作を行った。この溶液を300mlのナス型フラスコに取り、凍結乾燥により収量723mg、収率84%でポリグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンを得た。
得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液について実施例5と同様にGPCを用いて分子量を測定した。その結果、重合体の重量平均分子量は、約47000であった。
【0045】
実施例7
実施例5において合成したポリグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン100mgを、水0.5ml、メタノール2mlの混合溶媒に溶解させた。この溶液を、幅26mm、長さ76mmの清浄なスライドガラスあるいはステンレス片(SUS304)に塗布し、接着面を張り合わせて130℃で60分間加熱乾燥させることにより試験片を作製した。得られた試験片を、温度25℃、相対湿度50%、引っ張り速度毎秒0.5cmの条件下で引っ張り強度試験を行った。結果は、5回の接着強度の平均値とし、表1に示す。
【0046】
比較例1
グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの代わりに式(11)のグリセロール−1−メタクリレート(日本油脂株式会社製)を用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、ポリグリセロール−1−メタクリレートを得た。得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液について実施例5と同様にGPCを用いて分子量を測定した。その結果、重合体の重量平均分子量は、約56000であった。得られたポリグリセロール−1−メタクリレートを用いて実施例7と同様の操作を行い、接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
【化12】

【0048】
比較例2
式(12)に示されるグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを、特許文献3に従い合成した。具体的には、メタクリロイルオキシエチルオキシエチルイソシアナートの代わりにメタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工(株)製)を用いること以外は実施例1と同様の操作を行い、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。更に、得られた(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンを、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの代わりに用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。
次いで、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの代わりに、上記で合成したグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、ポリグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液について実施例5と同様にGPCを用いて分子量を測定した。その結果、重合体の重量平均分子量は、約63000であった。得られたポリグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを用いて実施例7と同様に操作し、接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【化13】

【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。)
【請求項2】
式(2)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物。
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。R3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
【請求項3】
式(3)で表される環状ケタールと式(4)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナートとをウレタン化反応させ、式(2)で表されるウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を得、これを触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させることを特徴とする請求項1記載のウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4の整数、mは2又は3である。R3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
【請求項4】
請求項1記載のウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を含む重合性原料を重合してなる重合体。
【請求項5】
請求項2記載のウレタン結合含有グリセロール(メタ)アクリレート化合物を含む重合性原料を重合してなる重合体。

【公開番号】特開2009−19070(P2009−19070A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180817(P2007−180817)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】