説明

化合物、光学フィルムおよび光学フィルムの製造方法

【課題】広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供する。
【解決手段】次式で表される化合物(XA−1)。


得られた化合物(XA−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行うと、昇温時において、101℃から133℃までスメクチック相を呈し、133℃から146℃までネマチック相を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、光学フィルムおよび光学フィルムの製造方法ならびにこれらを用いた偏光板及び表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板等の光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムとしては、例えば、重合性化合物を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布後、重合して得られる光学フィルム等が挙げられる。そして、波長λnmの光が与える光学フィルムの位相差(Re(λ))は、複屈折率Δnとフィルムの厚みdとの積で決定されることが知られている(Re(λ)=Δn×d)。また、波長分散特性は、通常、ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値(Re(λ)/Re(550))で表され、(Re(λ)/Re(550))が1に近い波長分散特性を示す光学フィルムによれば、位相差値の波長依存性を低減することができ、広い波長域において一様の偏光変換が可能であることが知られている。
例えば、該重合性化合物としては、LC242(BASF社製)が市販されている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】“Paliocolor”、[online]、平成16年10月20日、BASF社、[平成19年12月5日検索]、インターネット〈http://www.inorganics.basf.com/p02/CAPortal/en_GB/portal/Displaychemikalien/content/Produktgruppen/Displaychemikalien/Palicolor/Paliocolor〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、式(1)で表される化合物が提供される。
【化1】

[式(1)中、Xは、−S−、−O−、−CH−、−NH−、−C(=O)−、−S(=O)−または−C(=S)−を表す。
Yは、−C(R)=または−N=を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、−C≡C−H又は−C≡C−CH、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数1〜6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基を表す。
Zは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基、スルホキシド基、−NR、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=S)−O−R、−O−C(=S)−R、−C(=O)−NR、−NR−C(=O)−R、−C≡C−R、−C(=O)−R、−C(=S)−R、−CR=NR、−N=CR、−CR=CRを表す。R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびJは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基、スルホキシド基、−NR、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=S)−O−R、−O−C(=S)−R、−C(=O)−NR、−NR−C(=O)−R、−C≡C−R、−C(=O)−R、−C(=S)−R、−CR=NR、−N=CR、−CR=CRを表す。R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
、B、E、E、GおよびGは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−O−CH−、−O−CF−、−NR−、−CH−O−、−CF−O−、−S−CH−、−CH−S−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基、5〜18員環の脂環式炭化水素基または5〜18員環の複素環基を表す。該芳香族炭化水素基、該脂環式炭化水素基および該複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基、ニトロ基またはニトリル基に置換されていてもよい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1〜3で表される整数を表す。
およびDは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、DおよびDに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。
およびQは、それぞれ独立に、水素原子または式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【化2】

(式(Q−1)〜式(Q−5)中、R〜R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
【0006】
このような化合物では、Xが、−S−または−O−、Yが、−N=または−CH=であることが好ましく、さらに、Xが、−S−、Yが、−N=であることがより好ましい。
また、QおよびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基であることが好ましい。
さらに、−G−Qおよび−G−Qが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含むことが好ましい。
【0007】
また、本発明によれば、上述した化合物と、式(2)で表される化合物(ただし、上述した化合物とは同一ではない)とを含む組成物が提供される。
P11-E11-(B11-A11)-B12-G (2)
(式(2)中、A11は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基を表し、これら基には、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基が置換されていてもよい。
B11、B12は、それぞれ独立に、−CR1415−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR14−、−NR14−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR14−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R14およびR15が連結して炭素数4〜7のアルキレン基を構成してもよい。
E11は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
P11は、それぞれ独立に、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基であるか、炭素数1〜12のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
tは、1〜5の整数)
【0008】
本発明によれば、上述した化合物に由来する構造単位を含む光学フィルムが提供される。
さらに、本発明によれば、上述した組成物を重合してなる光学フィルムが提供される。
【0009】
これらの光学フィルムでは、光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が、113〜163nmであるλ/4板または250〜300nmであるλ/2板として機能するものであることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、上述した光学フィルムおよび偏光フィルムを含む偏光板が提供される。
さらに、本発明によれば、上述した偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置が提供される。
また、本発明によれば、上述した偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上述した化合物を含む溶液を支持基材または支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、このような未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という場合がある)である。
【化3】

(式(1)中、各置換基の定義は上述したとおりである。)
【0015】
式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が例示される。
フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、n−フルオロプロピル基、イソフルオロプロピル基、n−フルオロブチル基、sec−フルオロブチル基、2−フルオロエチルヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
フルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、n−フルオロプロポキシ基、イソフルオロプロポキシ基、n−フルオロブトキシ基、sec−フルオロブトキシ基、2−フルオロエチルヘキトキシ基等が挙げられる。
チオアルキル基としては、チオメチル、チオエチル、チオプロピル、チオブチル等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−エチルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0017】
芳香族炭化水素基としては、
【化4】

等が挙げられる。
【0018】
脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン、つまり、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、ビシクロブチレン、ビシクロヘプチレン、ビシクロオクチレン等が挙げられる。具体的には、
【化5】

等が挙げられる。
複素環基としては、
【化6】

等が挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基等が挙げられる。
【0019】
なお、本明細書では、炭素数によって異なるが、特に断りのない限り、上述した置換基は、いずれの化学構造式においても上記と同様のものが例示される。また、直鎖又は分岐の双方をとることができるものは、そのいずれをも含む。
【0020】
本発明の化合物では、特に、式(1)において、Xは、−S−、−O−であることが好ましく、−S−であることがより好ましい。
また、Yは、−CH=、−N=であることが好ましく、−N=であることがより好ましい。
XとYとの組み合わせとしては、Xが−S−、Yが−N=であるか、Xが−S−、Yが−CH=であるか、Xが−O−、Yが−N=であるか、Xが−O−、Yが−CH=であるものが好ましく、特に、Xが−S−、Yが−N=であるものがより好ましい。
Zは特に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、シアノ基、−NR、−C(=O)−O−R、−C(=O)−NR(RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)等が、製造が容易であることから好ましい。
およびJは、特に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基等が、製造が容易であることから好ましい。
、B、E、E、GおよびGは、エーテル、エステル、チオエーテル、チオエステル等を含む基であることが好ましい。
およびAが同種類の基であると、製造が容易であることから好ましい。特にAおよびAとして、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基または3−メチル−1,4フェニレン基は、製造が容易なことから好ましい。
【0021】
およびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基であると、得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があることから好ましい。また、重合後の相分離が避けられて好ましい。QおよびQがいずれも式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基であると、さらに好ましい。化合物(1)を用いて得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があるからである。
−G−Qおよび−G−Qは、化合物(1)を重合させることのできる置換基であるか、そのような置換基を含み、具体的にはビニル基、ビニルオキシ基、p−スチルベン基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイル基、メタクロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基等であるか、これらを含むものが例示される。なかでも、光重合させる際の取り扱いが容易な上、製造も容易であることからアクリロイル基またはメタクロイル基であるか、これらを含むものが好ましく、特にアクリロイル基が好ましい。
【0022】
式(1)の化合物として、例えば、以下のものが例示される。ただし、式中rは1〜12の整数を示す。
【化7】

【化8】

【化9】

【0023】
本発明の化合物(1)は、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応またはアルドール反応等、公知の合成法に従い製造することができる。その合成方法としては、例えば、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)等に記載された有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより、合成することができる。
【0024】
本発明の光学フィルムは、実質的に、上述した化合物(1)を含む組成物によって形成される、つまり、化合物(1)に由来する構造単位を含んで形成されるが、化合物(1)とは異なる1種以上の化合物を含む組成物によって形成されていてもよい。つまり、化合物(1)とは異なる1種以上の化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。このような、化合物(1)とは異なる1種又は2種以上の化合物を含むことにより、両者の組成比を変えて、得られる光学フィルムの複屈折率Δn及び波長分散特性を制御することができる。
【0025】
化合物(1)と異なる化合物としては、例えば、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物のうち、重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0026】
このような化合物としては、例えば、式(2)で表される化合物等が挙げられる。
P11-E11-(B11-A11)-B12-G (2)
(式(2)中、各置換基の定義は上述したとおりである。)
特に、P11及びGにおける重合性基としては、化合物(1)と重合することができる基であればよく、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、p−スチルベン基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイル基、メタクロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基等が例示される。なかでも、光重合させる際の取り扱いが容易な上、製造も容易であることからアクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、ビニルオキシ基が好ましい。とりわけ、P11及びGの双方が、アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、ビニルオキシ基であるか、これらの基を含んでいることが好ましい。
また、A11の芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基は、炭素数3〜18が挙げられ、炭素数5〜12が適しており、炭素数5又は6が最も好ましい。
【0027】
化合物(2)としては、例えば、式(2−1)及び式(2−2)で表される化合物が挙げられる。
P11-E11-(B11-A11)t1-B12-E12-P12 (2−1)
P11-E11-(B11-A11)t2-B12-F11 (2−2)
(式中、P11、E11、B11、A11、B12は上記と同義である。
F11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基を表す。
E12は、E11と同義である。
P12は、P11と同義である。
t1及びt2はtと同義である。)
【0028】
さらに、これら式(2−1)及び(2−2)で表される化合物として、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)又は式(V)で表される化合物を含む。
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-A15-B16-E12-P12 (I)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-E12-P12 (II)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-E12-P12 (III)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-F11 (IV)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (V)
(式中、A12〜A15は、A11と同義であり、B13〜B16は、B11と同義である)。
なお、式(2−1)、式(2−2)、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)で表される化合物においては、P11とE11との組み合わせを適宜選択することにより、さらにP12とE12との組み合わせを適宜選択することにより、両者がエーテル結合又はエステル結合を介して結合されていることが好ましい。
【0029】
化合物(2)の具体例としては、例えば、以下の式(I−1)〜(I−5)、(II−1)〜(I−6)、(III−1)〜(III−19)、(IV−1)〜(IV−14)、(V−1)〜(V−5)で表される化合物等が挙げられる。ただし、式中kは、それぞれ独立に、1〜11で表される整数を表す。
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
【化12】

【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
本発明の光学フィルムは、例えば、化合物(1)を含有する組成物及び/又は化合物(1)とは異なる化合物とを含有する組成物を用いて、未重合で又は重合して形成することができる。
この場合、化合物(1)及び/又は化合物(1)と異なる化合物(例えば、化合物(2))に由来する構造単位は、それぞれ、光学フィルムを構成する全ての構造単位100重量部に対して1重量部程度以上及び/又は0重量部〜20重量部程度で含有することが好ましい。
【0035】
〔組成物溶液の調製〕
本発明の光学フィルムを重合して製造する方法について以下に説明する。
まず、本発明の化合物(1)を含有する組成物又は化合物(1)とは異なる化合物(例えば、化合物(2))とを含有する組成物に、任意に、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、有機溶媒、架橋剤等の添加剤の1種以上が混合された組成物溶液を調製する。特に、有機溶媒は、成膜が容易となることから、また、重合開始剤は、得られた光学フィルムを硬化する働きをもつことから、含有されていることが好ましい。このような組成物は、好ましくは、ネマチック相等の液晶相を示す。これにより、モノドメイン配向による複屈折性を有することができる。
【0036】
〔重合開始剤〕
組成物溶液は、一度液晶相発現温度まで加熱し、次にその配向状態を維持したまま冷却することにより、その液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化することができる。また、組成物溶液に重合開始剤を添加した組成物を液晶相発現温度まで加熱した後、重合させ、冷却することにより、液晶状態の配向状態を固定化することができる。配向状態を固定化するためには、後者の重合反応により行うことが好ましい。
一般に、重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と、光重合開始剤を用いる光重合反応と、電子線照射による重合反応等が含まれるが、熱により支持基材等が変形、変質するのを防ぐため、光重合反応または電子線照射による重合反応が好ましい。そのため、特に、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0037】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的にはイルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152またはアデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA)等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、通常、化合物(1)及び化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、組成物の配向性を乱すことなく、組成物を重合させることができる。
【0038】
〔重合禁止剤〕
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6、−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類又はβ−ナフトール類等が挙げられる。
重合禁止剤を含有することにより、化合物(1)及び化合物(2)の重合を制御することができ、得られる光学フィルムの安定性及び塗布前の組成物の安定性を向上させることができる。また、重合禁止剤の使用量は、通常、化合物(1)及び化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、本光学フィルムを構成する組成物の配向性を乱すことなく、重合させることができる。
【0039】
〔光増感剤〕
光増感剤としては、例えば、キサントン又はチオキサントン等のキサントン類、アントラセン又はアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン又はルブレンが挙げられる。
光増感剤を用いることにより、化合物(1)及び化合物(2)の重合を高感度化することができる。また、光増感剤の使用量としては、化合物(1)及び化合物(2)の合計100重量部に対して、通常、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、光学フィルムを構成する組成物、特に化合物(2)の配向性を乱すことなく、化合物(1)を重合させることができる。
【0040】
〔架橋剤〕
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、当該分野で公知のもの、例えば、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリイソシアネート類、エポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。より具体的には、トリアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:CBX−1N、CBX−0、A−TMPT−3EO、A−TMPT−6EO、A−TMPT−9EO、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LMN、A−GLY−3E、A−GLY−6E、A−GLY−9E、A−GLY−20E、TM−4EL、SARTOMER社製:SR499、SR502、SR9035、SR368)、テトラアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:ATM−4E,ATM−35E)、ペンタアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:A−9530、SARTOMER社製:SR399E)、ヘキサアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:A−DPH−6E、A−DPH−12E、A−DPH−6P、共栄社化学株式会社製:UA−306H、UA−306I、日本化薬株式会社製:DPCA−60、DPCA−120)等が挙げられる。
【0041】
架橋剤を用いることにより、光学フィルムの架橋密度を調整することができる。
架橋剤の使用量は、通常、化合物(1)及び化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。架橋剤を用いることにより、化合物(1)および化合物(2)を光重合により架橋することができる。従って、熱による複屈折の変化の影響を低減させることができる。
【0042】
〔レベリング剤〕
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系またはチタネート系等の種々の化合物を用いることができ、具体的には、放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、または塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)等が挙げられる。
レベリング剤を用いることにより、光学フィルムを平滑化することができる。さらに、光学フィルムの製造過程で、組成物の流動性を制御したり、化合物(1)及び化合物(2)を重合して得られる光学フィルムの架橋密度を調整等することができる。また、レベリング剤の使用量は、通常、化合物(1)及び化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、本光学フィルムを構成する組成物、特に化合物(2)の配向性を乱すことなく、化合物(1)を重合させることができる。
【0043】
〔有機溶媒〕
有機溶媒としては、光学フィルムに含まれる化合物等を溶解し得る有機溶媒であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ若しくはブチルセロソルブ等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン若しくはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン若しくはヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン若しくはクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチル、クロロホルム又はフェノール等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。なかでも、光学フィルムを構成する組成物との相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、非塩素系脂肪族炭化水素溶媒及び非塩素系芳香族炭化水素溶媒等にも溶解し得ることから、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0044】
上述した組成物を含有する混合溶液の粘度は、塗布しやすいように、通常、10Pa・s以下、好ましくは0.1〜7Pa・s程度に調整される。
また、混合溶液における固形分の濃度は、通常、5〜50重量%である。固形分の濃度をこの程度の範囲とすることにより、光学フィルムの膜厚にムラが生じにくく、適切な膜厚に調整することが容易となり、液晶パネルの光学補償に必要な光学異方性を与えることができる。
【0045】
〔支持基材の準備〕
用いる支持基材は、その表面に配向膜を形成できるものであればどのような材料を用いてもよい。例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム等を挙げることができる。透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
上記組成物から得られる光学フィルムは、貼合、運搬、保管等、強度が必要な場合があるため、支持基材を用いることにより、フィルムが破れず、取り扱いが容易となる。
なお、上記組成物の溶液を、支持基材上に直接塗工してもよいが、より均一な配向を得るため、支持基材上に形成された配向膜上に塗工することが好ましい。
【0046】
配向膜は、上記組成物を含有する溶液の塗工等により溶解しない溶剤耐性を有し、溶媒の除去、液晶の配向の加熱処理による耐熱性を有し、ラビングによる摩擦等による剥がれ等が起きないこと等が必要であり、ポリマーと、任意に溶媒とを含有する組成物によって形成することができる。
【0047】
配向膜を形成するポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合、共重合体してもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合又は開環重合等で容易に得ることができる。
【0048】
溶媒は、特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチル、クロロホルム等種々のものを用いることができる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜としては、感光性ポリイミドに偏光UV処理を施したものとして、サンエバー(登録商標、日産化学社製)、オプトマー(登録商標、JSR製)等が挙げられ、アルキル変性ポリビニルアルコールとして、ポバール(登録商標、クラレ製)等が挙げられる。
【0050】
支持基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば、市販の配向膜材料、配向膜の材料となる上述したポリマー又はその構成モノマー等と、任意に溶媒とを、支持基材上に塗布し、その後、アニールする方法が挙げられる。
得られる配向膜の厚さは、通常、10nm〜10000nm程度が適しており、10nm〜1000nm程度が好ましい。上記範囲とすれば、後述する未重合フィルム製造工程において、本発明の組成物から形成されるフィルムを配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
また、これら配向膜は、必要に応じてラビング又は偏光紫外線照射を行うことができる。これにより、本発明の組成物から形成されるフィルムを所望の方向に配向させることができる。
【0051】
配向膜をラビングする方法としては、例えば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載置・搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
このように、配向膜を用いることにより、容易に液晶の配向をホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向等、所望の配向を得ることができるため、延伸による屈折率制御を行う必要がない。そのため、複屈折の面内ばらつきが小さい均一性に優れた光学フィルムとなる。その結果、支持基材上にFPDの大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを形成することが可能となる。
【0052】
〔未重合フィルムの製造〕
上述した組成物の溶液を、支持基材に直接又は配向膜上に塗布し、乾燥する。特に、支持基材の上に形成した配向膜上に組成物溶液を塗布して未重合フィルムを形成することにより、ロールフィルムでのフィルムの生産が可能となり、製造効率を向上させることができるとともに、生産コストを低減することができることから好ましい。
組成物の溶液を、支持基材上又は配向膜上へ塗布する方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布してもよい。
支持基材又は配向膜上に塗布された組成物は、光重合の場合には、成膜性を向上させるために、光重合前にほとんど溶媒を乾燥させ、未重合フィルムを得ることが好ましい。また、熱重合の場合には、通常、乾燥とともに重合を進行させてもよいが、重合前にほとんどの溶媒を乾燥させ、その後、重合させることが、成膜性に優れる傾向があることから好ましい。
【0053】
溶媒の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。具体的な加熱温度は、10〜120℃程度が適しており、25〜80℃程度が好ましい。加熱時間は、10秒間〜60分間程度が適しており、30秒間〜30分間程度が好ましい。加熱温度及び加熱時間が、上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
得られた未重合のフィルムは、0〜120℃程度、好ましくは、25〜100℃の低温で配向することから、耐熱性に関して必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0054】
〔未重合フィルムの重合〕
上述した未重合フィルムは、重合して硬化させてもよい。これにより、本発明の組成物に由来する構造単位を有するフィルムの配向性を固定化することができる。したがって、フィルムの平面方向に屈折率変化が小さく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きい重合フィルムを製造することができる。
重合は、上述した組成物中に含まれる化合物の重合性基が光重合性であれば、可視光、紫外光またはレーザー光等の光を照射して硬化させることができる。これらの重合性基が熱重合性であれば、加熱によって重合させることができる。
特に、光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。これにより、低温で未重合フィルムを重合させることができ、支持基材の耐熱性の選択幅が広がる。また、工業的にも製造が容易となる。さらに、光重合によって架橋させることにより、その後の工程等における熱による複屈折の変化の影響を受けにくくなる。取り扱い性の観点から、紫外光による重合が特に好ましい。
【0055】
本発明の光学フィルムの製造方法において、上記工程に続いて支持基材を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、配向膜と光学異方性層とからなるフィルムとなる。また、上記支持基材を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、光学異方性層のみからなるフィルムとなる。
【0056】
このように、本発明の化合物(1)を含有する組成物を用いることにより、液晶ポリマーを用いることなく光学フィルムを製造することができる。
また、上述した製造方法により得られた光学フィルムは、支持基材と配向膜及び/又は配向膜と光学フィルムとの密着性、支持基材と光学フィルムとの密着性が良好であり、光学フィルムの製造が容易となり、界面活性剤等の表面処理剤を別途用いなくてよい。
さらに、本発明の光学フィルムは、延伸フィルムで同等の位相差値を有するフィルムと比較して、薄膜とすることができる。
【0057】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、透明性に優れ、単独での単層又は積層構造(例えば、2〜4層程度)で、上述した支持基板及び/又は配向膜あるいは種々の光学フィルムとともに、種々の用途に用いることができる。なお、複数層積層する場合は、同一のフィルムであってもよいし、異なるものを組み合わせて用いてもよい。ここで、光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムを意味し、光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
【0058】
このような光学フィルムとしては、優れた波長分散特性を有する光学フィルムが挙げられ、アンチリフレクション(AR)フィルム等の反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム及び透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルム等が例示される。また、本発明の光学フィルムの用途として、これらの用途が例示される。
例えば、偏光フィルムに本発明のフィルムを貼合して楕円偏光板として用いることができる。また、この楕円偏光板にさらに本発明のフィルムを広帯域λ/4板として貼合して広帯域円偏光板として利用することができる。
【0059】
特に、本発明の光学フィルムを、広帯域λ/4板又はλ/2板として使用するためには、化合物(1)及びこれと異なる化合物(例えば、化合物(2))に由来する構造単位の含有量を適宜調整し、フィルムの膜厚を調整し、位相差値を調整すればよい。
具体的には、λ/4板の場合には、得られるフィルムのRe(550)を113〜163nm、好ましくは135〜140nm、より好ましくは約137.5nm程度に調整すればよい。λ/2板の場合には、得られるフィルムのRe(550)を250〜300nm、好ましくは273〜277nm、より好ましくは約275nm程度となるように調整すればよい。
【0060】
また、本発明の光学フィルムをVA(Vertical Alingment)モード用の光学フィルムとして使用するためには、本発明の化合物(1)又はこれと異なる化合物に由来する構造単位の含有量を適宜調整し、フィルムの膜厚を調整すればよい。具体的には、Re(550)が例えば、40〜100nm、好ましくは60〜80nm程度となるように、膜厚を調整すればよい。
【0061】
つまり、上記組成物において、化合物(1)又はこれと異なる化合物の含有量等を変化させることにより、得られるフィルムの屈折率の波長依存性、波長分散特性等を任意に制御することができ、上記組成物を塗布する際の量及び有機溶媒の濃度等を調整して、得られるフィルムの膜厚を調整することにより、位相差値を制御することができ、あるいは、位相差層の積層を省略することができる。
【0062】
例えば、化合物(1)の[Re(450)/Re(550)]および[Re(650)/Re(550)]の値は1に近い又は1より小さいため、化合物(1)の含有量を増加させることにより、Re(450)/Re(550)等を変化させ、つまり、波長分散を小さくする等、所望の波長分散特性(例えば、1に近い値)を得ることができる。言い換えると、、化合物(1)を少量添加するだけで、光学フィルムにおけるRe(450)/Re(550)の値を低下させることができ、結果として、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを簡便な方法で製造することができる。
また、化合物(1)と異なる化合物の含有量を増加させることにより、組成物をフィルム方向に配向させることができる。
【0063】
化合物(1)が一定である混合溶液の場合、フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(3)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚dを調整する。
Re(λ)=d×Δn(λ) (3)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける屈折率異方性を表す。)
従って、位相差値を大きくするためには膜厚を大きくし、位相差値を小さくするためには、膜厚を小さくすればよい。
【0064】
本発明の光学フィルムの膜厚は、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜10μm程度であり、光弾性を小さくするという観点から、0.5〜3μmであることが好ましい。
配向膜を用いて複屈折性を有する場合には、通常、位相差値としては、50〜500nm程度であり、好ましくは100〜300nmである。
このように、本発明の光学フィルムは、延伸フィルムで同等の位相差値を有するフィルムと比較して、薄膜とすることができる。また、位相差値の波長依存性を低減することができる。
【0065】
〔偏光板〕
本発明の光学フィルムの具体的な実施形態として、本発明の光学フィルムと偏光フィルムとを積層して構成される偏光板等について説明する。
偏光板1aは、本発明の光学フィルム2と、偏光機能を有するフィルム、すなわち偏光フィルム3とを直接張り合わせられており(図1(a))、光学フィルム2は、支持基材4、配向膜5および光学異方性層6からなる。偏光板1aは、支持基材4、配向膜5、光学異方性層6、偏光フィルム3の順に積層されている。
【0066】
図1(b)に示す偏光板1bは、光学フィルム2と偏光フィルム3とが、接着剤層7を介して貼り合わされている。
図1(c)に示す偏光板1cは、光学フィルム2と光学フィルム2’とが直接貼り合わされ、さらに光学フィルム2’と偏光フィルム3とが直接貼り合わされている。
図1(d)に示す偏光板1dは、光学フィルム2と光学フィルム2’とが接着剤層7を介して貼り合わされ、さらに光学フィルム2’上に偏光フィルム3が直接貼り合わされている。
図1(e)に示す偏光板1eは、光学フィルム2と光学フィルム2’とを接着剤層7を介して貼り合わせ、さらに光学フィルム2’と偏光フィルム3とを接着剤層7’を介して貼り合わされている。
【0067】
光学フィルム2および光学フィルム2’の代わりに、光学フィルム2から支持基材4および配向膜5を剥離した、化合物(1)に由来する構造単位を含有する光学異方性層6のみからなるフィルムを用いてもよいし、光学フィルム2から支持基材4を剥離した、配向膜5および光学異方性層6からなるフィルムを用いてもよい。
本発明の偏光板は、光学フィルムを複数積層してもよく、その複数の光学フィルムは、全て同一であっても、上述した異なるフィルムを組み合わせて用いてもよい。
【0068】
偏光フィルムとしては、例えば、偏光機能を有するフィルムであればよく、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
接着剤としては、透明性が高く、耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。
【0069】
〔フラットパネル表示装置〕
また、本発明の光学フィルムは、反射型の液晶ディスプレイ及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフラットパネル表示装置(FPD)において、どのような位置に、どのような態様で、どのように機能させるものとして備えられていてもよい。
例えば、上述した偏光板と、液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置(LCD)、上述した偏光板と、発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、さらに、本発明の光学フィルムを位相差板として備えるLCD及びEL等、カラーフィルタを備えるLCD及びEL等が挙げられる。
このように、光学特性を有する本発明の光学フィルムを用いることにより、すべてのFPDを、薄膜で、光学補償することができる。
【0070】
〔LCD〕
LCDとしては、例えば、図2に示すように、本発明の偏光板1と液晶パネル11とが接着層12を介して貼り合わされてなる貼合品10によって構成される。
この構成によれば、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子を駆動させ、光シャッター効果を発揮させることができる。
【0071】
〔有機EL〕
ELとしては、例えば、図3に示すように、本発明の偏光板1と、発光層14とが、接着層15を介して貼り合わせてなる有機ELパネル13が挙げられる。この有機ELパネルにおいて、偏光板1は、広帯域円偏光板として機能する。また、発光層14は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層により構成される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下の記載において、「%」および「部」は、特記しない限り、重量%および重量部である。
<化合物(XA−1)の製造例>
下記スキームに従って合成した。原料のモノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)は特許文献(特開2004−262884)に記載されている方法により合成した。
【化16】

【0073】
(化合物(b)の合成例)
モノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)100.1g(515mmol)、炭酸カリウム97.1g(703mmol)、6−クロロヘキサノール64g(468mmol)を取り、ジメチルアセトアミドに溶解・分散させた。窒素雰囲気下、90℃で、その後100℃で攪拌した。その後室温まで冷却し、純水、メチルイソブチルケトンを加え、回収した有機層を水酸化ナトリウム水溶液および純水で洗浄後に脱水し、濾過後に減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて、生成した沈殿を濾過後、真空乾燥させて、化合物(b)を126g(428mmol)得た。収率は6−クロロヘキサノール基準で91%であった。
【0074】
(化合物(c)の合成例)
化合物(b)を126g(428mmol)、3、5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン(以下BHTという)1.40g(6.42mmol)、N、N−ジメチルアニリン116.7g(963mmol)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1.00gを取り、クロロホルムに溶解した。窒素雰囲気、氷冷下でアクイロイルクロリド58.1g(642mmol)を滴下し、さらに純水を加えて攪拌した。回収した有機層を塩酸水、飽和炭酸ナトリウム水溶液および純水で洗浄した。有機層を乾燥し、濾過後、BHT1gを加えて減圧濃縮して、化合物(c)を得た。
【0075】
(化合物(d)の合成例)
化合物(c)にテトラヒドロフラン(以下THFという)200mlを加えクロロホルムを留去後、THF200mlを加えた。これに塩酸水および濃塩酸水を加えて、窒素雰囲気下60℃で攪拌した。反応溶液に飽和食塩水500mlを加えて攪拌し、回収した有機層を脱水し、濾過後減圧濃縮した。さらにヘキサンを加えて氷冷下攪拌し、析出した粉末を濾過後真空乾燥して、化合物(d)を90g(339mmol)得た。収率は化合物(c)基準で79%であった。
【0076】
(化合物(e)の合成例)
トランスシクロヘキサンジカルボン酸24.68g(118mmol)をトルエンに分散させて、二塩化オキサリル74.91g(590mmol)、ジメチルホルムアミド0.5mLを加えて、窒素雰囲気下で攪拌した。トルエンおよび二塩化オキサリルを減圧除去して得られた液体(シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド粗精製物)にクロロホルムを加えて溶解させた。一方、化合物(d)12g(45.4mmol)をクロロホルムに溶解させた。化合物(d)の溶液と、ピリジン12.6g(159mmol)を氷冷下で、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド粗精製物を含む溶液に滴下した。反応溶液を窒素雰囲気下で攪拌して得られた沈殿を濾過により除去後、減圧濃縮した。これを水/メタノールの混合溶剤(体積比で1/1)に滴下し、生成した沈殿を粉砕後、純水で洗浄して、濾過後真空乾燥した。得られた粉末を再び粉砕後、n−ヘプタンに分散させ、攪拌してトルエンに溶解させた。不溶成分を濾過して、濾液を減圧濃縮後、n−ヘプタンに再沈殿させた。沈殿を真空乾燥させることにより、化合物(e)を7.8g得た。収率は化合物(d)基準で40%であった。
【0077】
(化合物(A−1)の合成例)
容器に、2−アセトアミド−1,4−ジメトキシベンゼン50.0g(256mmol)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチアー2,4−ジホスフェタンー2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)53.9g(133mmol)、トルエン579gを加え、80℃に昇温して攪拌した。反応溶液を濃縮し、化合物(A−1)を主成分とする固体を得た。化合物(A−1)は精製せずに、そのまま全量を次工程へ用いた。
【0078】
(化合物(A−2)の合成例)
容器に、前工程で得られた化合物(A−1)を主成分とする固体、水酸化ナトリウム159g(3975mmol)、水880gを混合し、氷冷下で良く攪拌した。続いてフェリシアン化カリウム238.5g(724mmol)を水477gに溶解させた溶液を、氷冷下で加え、攪拌した。析出した固体を濾別した後、冷水とヘプタンで良く洗浄し、化合物(A−2)を主成分とする固体22.8gを得た。前工程と合わせた2工程分の収率は2−アセトアミド−1,4−ジメトキシベンゼン基準で44%であった。
【0079】
(化合物(A−3)の合成例)
化合物(A−2)を3.0g(14.4mmol)と塩化ピリジニウム15.0g(5倍質量)を容器に入れ、160℃に昇温して固体を溶融させ攪拌した。冷却後、水を210g加え、得られた沈殿を濾別し、水およびクロロホルムでよく洗浄して、化合物(A−3)を主成分とする固体2.5gを得た。収率は化合物(A−2)基準で95%であった。
【0080】
(化合物(XA−1)の合成例)
容器に、化合物(A−3)を2.2g(12.0mmol)、化合物(e)を10.6g(25.2mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.31g(2.5mmol)、およびクロロホルム84gを混合し、続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)6.2g(30.2mmol)をクロロホルム21gに溶解させ、滴下し、室温で攪拌した。析出した固体を濾別した後、クロロホルム溶液を2N塩酸105gで2回分液洗浄し、有機層を取り出した。有機層を減圧下、溶媒を留去し、メタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物は、メタノールで洗浄し、化合物(XA−1)5.9gを得た。収率は化合物(A−3)基準で50%であった。
【化17】

化合物(XA−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.4−1.5(4Hk+4Hl)、1.6−1.8(4Hj+4Hm+4Hf+4Hg)、2.3−2.4(4Hf+4Hg)、2.6(2He+2Hh)、2.8(3Hr)、3.9(4Hn)、4.2(4Hi)、5.8(2Hq)、6.1(2Ho)、6.4(2Hp)、6.9(4Hd)、7.0(4Hc),7.2(Ha+Hb)
【0081】
得られた化合物(XA−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。温度を上げていくと101℃付近で結晶相からスメクチック相に変わり、さらに133℃付近でネマチック相に変わった。さらに温度を上げていくと146℃付近で熱重合した。すなわち、化合物(XA−1)は、昇温時において、101℃から133℃までスメクチック相を呈し、133℃から146℃までネマチック相を呈することが分かった。
【0082】
(実施例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板にポリビニルアルコール (ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液を塗布したのち、加熱乾燥後、厚さ89nmの膜を得た。続いて、表面にラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表1の組成の塗布液(混合溶液)をスピンコート法により塗布した。続いて、110℃ホットプレート上で1分間乾燥し、110℃ホットプレート上で加熱したまま、2000mJ/cmの紫外線を照射して、光学フィルムを作成した。
表1中、化合物(1)は上記で製造した化合物(XA−1)であり、化合物(2)は、LC242(BASF社より入手した液晶化合物)であり、光重合開始剤は、イルガキュア819(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、レベリング剤は、BYK361N(ビックケミージャパン製)、溶剤はクロロホルムを用いた。また、表1中、溶剤以外の表中の重量%は、塗布液を100重量%とした固形分の重量%を意味する。
【0083】
【表1】

【0084】
<光学特性の測定>
作成した光学フィルムについて、波長547nmにおける位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。また、光学フィルムの重合性化合物に由来する膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定した。波長547nmにおける位相差値と膜厚からΔnを算出した。また同様にして波長447nm、及び628nmにおける位相差値を測定し、波長分散特性Re(447)/Re(547)、及びRe(628)/Re(547)を算出した。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
(実施例2)
表1の塗布液を用い、実施例1と同様にして、光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムについて、位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0087】
(実施例3)
表1の塗布液を用い、スピンコート法により塗布し、150℃ホットプレート上で1分間乾燥し、150℃ホットプレート上で加熱したまま紫外線を照射する以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムについて、位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0088】
(比較例1)
表1の塗布液を用い、スピンコート法により塗布し、45℃ホットプレート上で1分間乾燥し、室温で紫外線を照射する以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムについて、位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0089】
実施例1〜3により得られた光学フィルムは、化合物(XA−1)を含有することにより、比較例1と比べ、[Re(450)/Re(550)]および[Re(650)/Re(550)]の値がより1に近く、波長分散性に優れた性能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の偏光板を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の液晶パネルと偏光板1との貼合品を示す概略図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置の有機ELパネルを示す概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b、1c、1d、1e 偏光板
2、2’ 光学フィルム
3 偏光フィルム
4、4’ 支持基材
5、5’ 配向膜
6、6’ 光学異方性層
7、7’、12、15 接着剤層
10 貼合品
11 液晶パネル
13 有機ELパネル
14 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】

[式(1)中、Xは、−S−、−O−、−CH−、−NH−、−C(=O)−、−S(=O)−または−C(=S)−を表す。
Yは、−C(R)=または−N=を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、−C≡C−H又は−C≡C−CH、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数1〜6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基を表す。
Zは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基、スルホキシド基、−NR、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=S)−O−R、−O−C(=S)−R、−C(=O)−NR、−NR−C(=O)−R、−C≡C−R、−C(=O)−R、−C(=S)−R、−CR=NR、−N=CR、−CR=CRを表す。R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびJは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基、スルホキシド基、−NR、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=S)−O−R、−O−C(=S)−R、−C(=O)−NR、−NR−C(=O)−R、−C≡C−R、−C(=O)−R、−C(=S)−R、−CR=NR、−N=CR、−CR=CRを表す。R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
、B、E、E、GおよびGは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−O−CH−、−O−CF−、−NR−、−CH−O−、−CF−O−、−S−CH−、−CH−S−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基、5〜18員環の脂環式炭化水素基または5〜18員環の複素環基を表す。該芳香族炭化水素基、該脂環式炭化水素基および該複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基、ニトロ基またはニトリル基に置換されていてもよい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1〜3で表される整数を表す。
およびDは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、DおよびDに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。
およびQは、それぞれ独立に、水素原子または式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である。
【化2】

(式(Q−1)〜式(Q−5)中、R〜R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
【請求項2】
Xが、−S−または−O−、Yが、−N=または−CH=である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが、−S−、Yが、−N=である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
およびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である請求項1〜3のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
−G−Qおよび−G−Qが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含む請求項1〜4のいずれか記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物と、式(2)で表される化合物(ただし、請求項1〜5のいずれか記載の化合物とは同一ではない)とを含む組成物。
P11-E11-(B11-A11)-B12-G (2)
(式(2)中、A11は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基を表し、これら基には、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基が置換されていてもよい。
B11、B12は、それぞれ独立に、−CR1415−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR14−、−NR14−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR14−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R14およびR15が連結して炭素数4〜7のアルキレン基を構成してもよい。
E11は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
P11は、それぞれ独立に、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基であるか、炭素数1〜12のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
tは、1〜5の整数)
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物に由来する構造単位を含む光学フィルム。
【請求項8】
請求項6記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【請求項9】
光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmであるλ/4板として機能する請求項7又は8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmであるλ/2板として機能する請求項7又は8に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項7または9記載の光学フィルムおよび偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項12】
請求項11記載の偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置。
【請求項13】
請求項11記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物を含む溶液を支持基材に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか記載の化合物を含む溶液を、支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−274984(P2009−274984A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127505(P2008−127505)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】