説明

化合物半導体膜の製造方法および製造装置

【課題】 膜質のばらつきの少ない化合物半導体膜を作製すること。
【解決手段】 CBD法によって化合物半導体膜を成膜するための成膜用溶液中の凝集物を、成膜前および成膜中の少なくとも一方において遠心分離によって分級することによって、前記成膜用溶液中の前記凝集物の平均粒度を所定値以下に制御すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物半導体膜の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CIGS系太陽電池素子における光吸収層上に半導体膜を形成する製造装置として、CBD(Chemical Bath Deposition:ケミカルバスデポジション)法を用いた成膜工程があり、成膜槽に複数の溶液を所定量となるように供給して成膜用溶液を調整し、この成膜用溶液に基板を浸漬することにより、化合物半導体膜を成膜する成膜装置がある。
このCBD法を用いた成膜装置においては、成膜槽中の成膜用溶液の濃度や温度、攪拌速度等の条件を一定に管理して、化合物半導体膜を同じ条件で成膜することが求められる。
【0003】
これに関して、成膜用溶液の透明度が所定範囲のときに成膜することで、成膜用溶液中の化合物半導体微粒子の凝集物の発生が少ない状態で成膜して、膜質を改善することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−343987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の製造方法のように、成膜用溶液の透過率を管理していても成膜用溶液中の変化を十分に検出することはできない。
そのため、量産時に形成される化合物半導体膜の膜質にばらつき生じる場合があった。
【0006】
よって本発明の目的は、膜質のばらつきの少ない化合物半導体膜を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化合物半導体膜の製造方法は、CBD法によって化合物半導体膜を成膜するための成膜用溶液中の凝集物を、成膜前および成膜中の少なくとも一方において遠心分離によって分級することによって、前記成膜用溶液中の前記凝集物の平均粒度を所定値以下に制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の化合物半導体膜の製造装置は、CBD法に用いる成膜用溶液を収容するとともに、CBD法によって化合物半導体膜を成膜する成膜用槽と、該成膜用槽との間で循環させる前記成膜用溶液中の凝集物を遠心分離して分級する分級機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物半導体膜の製造方法および製造装置によれば、膜質のばらつきの少ない化合物半導体膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の成膜装置を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態の成膜装置における分級機構を示す模式図である。
【図3】化合物半導体膜の成膜レートと、化合物半導体微粒子の凝集物の平均粒子径との相関関係の一例を示すグラフである。
【図4】従来の化合物半導体膜表面の一例の写真代用図である。
【図5】本発明の化合物半導体膜表面の一例の写真代用図である。
【図6】光電変換素子の一例の断面模式図である。
【図7】本発明の他の実施形態における化合物半導体膜のエピタキシャル成長過程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、光電変換素子1を例にして、化合物半導体膜の製造方法および製造装置の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図6において、光電変換素子1は、基板21と、第1の電極層22と、光吸収層23と、化合物半導体層24と、第2の電極層25とを含んで構成される。
【0013】
例えば、光吸収層23は、カルコパイライト系の材料を含むことが好ましく、光を吸収して電荷を生じる機能を有する。光吸収層23は特に限定されないが、例えば、Cu(In,Ga)Se(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)(CIGSSともいう)、およびCuInS(CISともいう)が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Seとは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)とは、CuとInとGaとSeとSとから主に構成された化合物をいう。また、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS,CdSe、CdTe等が挙げられる。
【0014】
このような光吸収層23は原料元素をスパッタリングや蒸着により膜状に形成し、または原料溶液の塗布により膜状に形成し、原料元素を含む前駆体を形成する。そしてこの前駆体を加熱することにより半導体から成る光吸収層23を形成できる。あるいは、金属元素を上記と同様に膜状に形成して前駆体を形成し、この前駆体をVI-B族元素を含むガス雰囲気下で加熱することによっても形成できる。
【0015】
化合物半導体層24は、光吸収層23に対してヘテロ接合を行う層をいう。化合物半導体層24は、光吸収層23上に5nm〜200nm程度の厚みで形成されている。光吸収層23と化合物半導体層24とは異なる導電型であることが好ましく、例えば、光吸収層23がp型半導体である場合、化合物半導体層24はn型半導体である。好ましくはリーク電流を低減するという観点からは、化合物半導体層24は、抵抗率が1Ω・cm以上の層であるのがよい。また、化合物半導体層24は光吸収層23の吸収効率を高めるため、光吸収層23が吸収する光の波長領域に対して光透過性を有するものが好ましい。
【0016】
図6において、光電変換素子1は複数並べて形成されている。そして、光電変換素子1は、光吸収層23の基板21側に第1の電極層22と離間して設けられた第3の電極層26を具備している。そして、第2の電極層25と第3の電極層26とが電気的に接続されている。この第3の電極層26は、隣接する光電変換素子1の第1の電極層22と一体化されている。この構成により、隣接する光電変換素子1同士が直列接続されている。
【0017】
基板1は、光電変換素子1を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
【0018】
第1の電極層22および第3の電極層26は、Mo、Al、TiまたはAu等の導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法または蒸着法等で形成される。
【0019】
第2の電極層25は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの透明導電膜である。
第2の電極層25は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層25は、化合物半導体層24よりも抵抗率の低い層であり、光吸収層23で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層25の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であるのがよい。第2の電極層25は光吸収層23の吸収効率を高めるため、光吸収層23の吸収光に対して光透過性を有するものが好ましい。光透過性を高めると同時に光反射ロス防止効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層25は0.05〜0.5μmの厚さとするのが好ましい。また、第2の電極層25と化合物半導体層24との界面での光反射ロスを防止する観点からは、第2の電極層25と化合物半導体層24の屈折率は等しいのが好ましい。なお、第2の電極層25上には集電電極が形成されていてもよい。
【0020】
<化合物半導体膜の製造方法1>
以下、本発明の一実施形態の説明において、上記した化合物半導体層24を化合物半導体膜の一例とする。
【0021】
例えば、湿式のCBD法を採用して、塩化インジウムとチオアセドアミドの水溶液を用いて(さらにpH調整用として、アンモニア水や塩酸が併用される場合もある)、InS系等の化合物半導体膜を成膜している。例えば成膜用溶液7として、三塩化インジウム四水和物の水溶液0.01mol/リットルと、チオアセトアミドの水溶液0.30mol/リットルとの2液を1:1の割合で混合したものを用いる。そして、この成膜用溶液7を用いたCBD法による化合物半導体膜の形成は、例えば下記の処理工程に従って行われる。
【0022】
まず、第1段階として、室温T1で、成膜用溶液7中に太陽電池素子1の光吸収層24の面を浸して、成膜用溶液7を撹拌しながら、設定時間(例えば5〜10分間)のあいだその状態を保持する。成膜用溶液7の撹拌は、以後化合物半導体膜の成膜が終了するまで持続される。
【0023】
第2段階として、成膜用溶液7中に光吸収層24の面を浸した状態のままで、成膜用溶液7の温度を所定時間(例えば約10分間)かけて設定温度T2(例えば60℃程度)にまで上昇させる。
【0024】
次いで、第3段階として、成膜用溶液7を設定温度T2に維持しながら、成膜用溶液7中に光吸収層23の面を浸し続けて、昇温後所定時間(約40分間)の経過を待ってから化合物半導体膜の成膜を終了するというものである。
【0025】
本実施形態においては、CBD法によって化合物半導体膜を成膜するための成膜用溶液中の凝集物を、成膜前および成膜中の少なくとも一方において遠心分離によって分級することによって、成膜用溶液中の凝集物の平均粒度を所定値以下に制御する。
【0026】
成膜用溶液7中の所定の大きさ以上の化合物半導体微粒子の凝集物5は、それ以下の粒度の化合物半導体微粒子を吸着することによって、成膜用溶液7中の凝集物5の粒度分布が大きく変化することがある。
【0027】
よって大きな化合物半導体微粒子の凝集物5を遠心分離により分級した後に、成膜用溶液7中から速やかに除去することにより、成膜用溶液7中の化合物半導体微粒子の凝集物5の粒度分布を維持し、均一な膜質の化合物半導体膜を得ることができる。
【0028】
例えば成膜用溶液7として、三塩化インジウム四水和物の水溶液と、チオアセトアミド
の水溶液との2液を用い場合、前記所定値を3μm、つまり化合物半導体微粒子の凝集物5の平均粒度を3μm以下とすることが好ましい。
【0029】
ここで、成膜用溶液7中の化合物半導体微粒子の凝集物5の粒度分布の違いにより、化合物半導体膜の膜質に違いが生じる理由は以下のようなことが考えられる。成膜用溶液中の化合物半導体微粒子の凝集物5の平均粒度と化合物半導体膜の成膜レートとの関係のグラフを図3に示す。図3より、成膜用溶液中の化合物半導体微粒子の凝集物5の平均粒径が変われば成膜レートが大きく変わり、また、大きな化合物半導体微粒子の凝集物5が成膜面に付着することによって、正常なエピタキシャル成長が阻害され、膜質が異なるものとなり易い。例えば成膜初期の平均粒径が3nm以下の成膜用溶液5で形成した化合物半導体膜の表面は図5のような良好な状態だが、成膜が長時間行われて平均粒径が3nmを超えるような状態では、図4のように表面状態が異なったものとなる傾向がある。
【0030】
本発明では成膜用溶液7の粒度分布を長時間に亘って維持することができ、膜質ばらつきを小さくすることができる。
【0031】
<化合物半導体膜の製造装置1>
以下、本発明の化合物半導体膜の製造装置(以下、成膜装置10ともいう)の一実施形態について図を用いて説明する。例えば図1において、成膜装置10の仕組みとしては、計量器11に積載された溶液供給源12は、その内部の成膜用溶液7の基となる溶液の供給量が重量で管理されており、これら溶液は溶液供給源12からポンプ13aによって供給配管14aを通り拡散槽8aに供給される。
【0032】
ここで、計量器11に積載された溶液供給源12としては、チオアセトアミド溶液、塩化インジウム溶液、塩酸等があり、それぞれ個別に拡散槽8aに供給されるものであるが、図1においてはそれらの内から1つだけを図示している。
【0033】
撹拌層8aでは、バルブ17aを開けて、ポンプ13bが起動することによって、成膜用溶液7の基となる各溶液が循環配管16aを循環する。これにより、成膜用溶液7の基となる各溶液が撹拌されて成膜用溶液7となる。
【0034】
そして、バルブ17cを開けて、成膜用溶液7を供給配管14bを通して成膜用槽8bに供給する。なお、古くなった成膜用溶液7は、定期的にバルブ17bを開けて排出配管15aを通してドレン19に排出される。
【0035】
成膜装置10は、成膜用溶液7を成膜用槽8b内に供給する供給系機構が、成膜用槽8bと切り離し可能に設けられているとともに、成膜用溶液7を成膜用槽8b内から排出する排出系機構が、成膜用槽8bと切り離し可能に設けられている。
【0036】
さらに、成膜用溶液7を成膜用槽8b内で循環させる循環系機構が、成膜用槽8bに設けられている。つまり、循環系機構は成膜用槽8bと一体となって連動するように設けられている。なお、定期的にバルブ17dあるいはバルブ17eを開けて、古い成膜用溶液7を排出配管15bあるいは15cを通してドレン19に排出する。
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る分級機構について説明する。
【0038】
本発明の化合物半導体膜の製造装置に係る一実施形態では、CBD法に用いる成膜用溶液を収容するとともに、CBD法によって化合物半導体膜を成膜する成膜用槽と、成膜用槽との間で循環させる成膜用溶液中の凝集物を遠心分離して分級する分級機構とを具備する。
【0039】
さらに好ましくは、分級機構は、成膜用槽から供給される成膜用溶液を収容する回転槽と、収容した成膜用溶液を回転流動させるための回転手段と、一端が回転槽内に配置された軽量凝集物分離管とを備え、軽量凝集物分離管は、回転流動させた成膜用溶液中から所定値以下の粒度の凝集物を抽出して成膜用槽へ戻すものである。
【0040】
分級機構については様々な形態が実施可能であり特定されるものではないが、例えば図1および図2に示されるように、回収用配管18cから分級機構2の回転槽3内に、使用後の成膜用溶液7を供給し、次に、回転子4が回転することによって、成膜用溶液7を回転流動させて、化合物半導体微粒子の凝集物5を粒径に応じて遠心分離し、次に、軽量凝集物5aを回転槽3内の中央部側に一端を有する軽量凝集物分離管6aで採取し、次に、成膜用配管18aを介して成膜用槽8bに送り成膜に供する、という構造で実施することができる。
【0041】
図2において、軽量凝集物5aは中央部側、重量凝集物5bは内壁側に分布するので、軽量凝集物回収管6aの一端を回転槽3の中央に近づけるほど、軽い凝集物5aの割合が多くなる。
【0042】
一方、重量凝集物5bは回転槽3内の内壁側に一端を有する重量凝集物分離管6bで回収された後に、再利用配管18bを介して別の槽内に送られる。そして還元反応などにより、凝集した重量凝集物5bを再び分解させれば、成膜用溶液7として再利用することができ、材料コストの増大を低減することができる。例えば、重量凝集物5bがInである場合には、InをHClと反応させてInClとして再利用することができる。なお、成膜用溶液7は成膜用槽8bに設けられたポンプ13cによって、軽量凝集物分離管6aを介して、成膜用槽8bと分級機構2とを循環する。
【0043】
以上のような化合物半導体膜の製造装置、化合物半導体膜の製造方法によって、化合物半導体微粒子の凝集物5の大きさを制御すれば、密度の高い化合物半導体層を短時間で形成することができる。
【0044】
<化合物半導体膜の製造装置2>
さらに、本実施形態の化合物半導体膜の製造装置の他の例として、軽量凝集物分離管は、成膜用槽内の中心側から外周側にかけて移動可能であってもよい。
【0045】
すなわち、図2において、軽量凝集物分離管6aの口の位置は、成膜用槽3の径方向に移動可能になっている。
【0046】
軽量凝集物分離管6aの口が成膜用槽3内の中心側にあるときは、化合物半導体微粒子の凝集物5が小さい成膜用溶液7を用いることになるので、成膜速度が大きくなる。
【0047】
一方、軽量凝集物分離管6aの口が成膜用槽3内の外周側にあるときは、化合物半導体微粒子の凝集物5が大きい成膜用溶液7を用いることになるので、成膜速度が小さくなるように制御できる。
【0048】
このような移動可能な軽量凝集物分離管6aを用いることによって、エピタキシャル成長に最適な成膜速度に調整することができるので、化合物
半導体膜の膜質ばらつきを小さくすることができる。
【0049】
そして、このような化合物半導体膜の製造装置を用いれば、化合物半導体膜の膜質ばらつきを小さくするという本来の目的以外に、以下のような変形例を目的とした製造方法も
可能となる。
【0050】
<化合物半導体膜の製造方法2>
本実施形態の製造方法の他の例によれば、化合物半導体膜の成膜中に、凝集物の平均粒度の所定値を複数段階に変化させて分級する。
【0051】
化合物半導体層24を形成した後に上部電極層25を形成するにあたり、上部電極層25側からのスパッタリング粒子によって、化合物半導体層24がダメージを受けることがある。このスパッタリング粒子を遮蔽してダメージを緩衝するためには、化合物半導体層24を密度の異なる多層構造、例えば化合物半導体層24の上部電極層25側を毛羽状、あるいは、ポーラス状にすることが有効である。
【0052】
そこで本発明の製造方法を用いることによって、このような密度の異なる多層構造を容易、かつ、膜質ばらつきを小さく形成することができる。つまり、化合物半導体の凝集物5の平均粒度が小さくなるように分級して、化合物半導体を緻密な層として形成した後、化合物半導体の凝集物5の平均粒度が大きくなるように分級して、化合物半導体を粗い層として形成することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の製造方法の他の例によれば、遠心分離による分級を周期的に実施することによって、凝集物の平均粒度を周期的に制御する。
【0054】
化合物半導体層24における内部応力を低減する点では
、化合物半導体層24内での密度を交互に変化させた積層周期構造とすることで、内部応力を緩和することが有効である。
【0055】
そこで本発明の製造方法を用いることによって、化合物半導体微粒子の凝集物5の平均粒度を周期的に制御する
ことで、成膜速度を周期的に変化させて、例えば化合物半導体層24を密/粗/密/粗・・・の積層周期構造とすることが可能である。
【0056】
ここで化合物半導体層24の成膜過程において、エピタキシャル成長の配向性が乱れた粗な膜上に、密な膜を形成しなおすことは難しかったが、本発明の製造方法によって可能にしたことを図7を用いて詳細に説明する。例えば図7(a)のように、CBD成膜用溶液7中における大きな化合物半導体微粒子の凝集物5を増やすことによって、配向面aの化合物半導体膜の表面に化合物半導体微粒子の凝集物5等を付着させることで、配向性が変化して配向面bが局所的に形成された粗な表面とする。次に、CBD成膜用溶液7中における大きな化合物半導体微粒子の凝集物5を減らすことによって、成膜速度を高め、図7(b)のように凹部分における配向面bのエピタキシャル成長を横方向に成長させる。そして、図7(c)のように横方向に成長した化合物半導体膜同士がつながり、配向面c(ここでは配向面bに対して90°の垂直な配向面)を形成することができる。
【0057】
このように、一度粗くなった化合物半導体膜の配向面を均一に整えてから、図7(d)のように新たなエピタキシャル成長(配向面c)を促進させて、緻密な膜を形成することができる。
【0058】
そしてCBD成膜用溶液7中における大きな化合物半導体微粒子の凝集物5を増やし、配向面cに化合物半導体微粒子の凝集物5を付着させることによって、図7(a)のように再び配向性が局所的に変化して、他の配向面が局所的に形成された粗な表面とする。
【0059】
ここで成膜用溶液7の濃度、温度については特に規定はないが、粗い構造の形成条件に
対して密な構造の形成条件は、化合物半導体層24の成膜速度が2倍以上、化合物半導体微粒子の凝集物5の平均粒度が1/2以下であることが好ましい。例えば図3によれば、粗い構造の形成条件は、成膜レート2nm/分、平均粒子径4μmであり、密な構造の形成条件は、成膜レート5nm/分、平均粒子径2μmとなる。なお積層する毎に空気に露出しても構わなければ、化合物半導体微粒子の凝集物5の粒径分布が異なる各成膜用溶液7に交互に浸漬してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:光電変換素子
2:分級機構
3:回転槽
4:回転子
5:化合物半導体微粒子の凝集物
5a:軽量凝集物
5b:重量凝集物
6:分離管
6a:軽量凝集物分離管
6b:重量凝集物分離管
7:成膜用溶液
8:槽
8a:拡散槽
8b:成膜用槽
10:成膜装置
11:計量器
12:溶液供給源
13a、13b、13c:ポンプ
14a、14b:供給配管
15a、15b:排出配管
16a、16b:循環配管
17a、17b、17c、17d、17e:バルブ
18a:成膜用配管、18b:再利用配管、18c:回収用配管
19:ドレン
20:整流板
21:基板
22:第1の電極
23:光吸収層
24:化合物半導体層
25:第2の電極
26:第3の電極
a:配向面aの膜
b:配向面bの膜
c:配向面cの膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CBD法によって化合物半導体膜を成膜するための成膜用溶液中の凝集物を、成膜前および成膜中の少なくとも一方において遠心分離によって分級することによって、前記成膜用溶液中の前記凝集物の平均粒度を所定値以下に制御する化合物半導体膜の製造方法。
【請求項2】
前記化合物半導体膜の成膜中に、前記凝集物の平均粒度の所定値を複数段階に変化させて分級する請求項1に記載の化合物半導体膜の製造方法。
【請求項3】
前記遠心分離による分級を周期的に実施することによって、前記凝集物の平均粒度を周期的に制御する請求項1または2に記載の化合物半導体膜の製造方法。
【請求項4】
CBD法に用いる成膜用溶液を収容するとともに、CBD法によって化合物半導体膜を成膜する成膜用槽と、
該成膜用槽との間で循環させる前記成膜用溶液中の凝集物を遠心分離して分級する分級機構とを備えた化合物半導体膜の製造装置。
【請求項5】
前記分級機構は、前記成膜用槽から供給される前記成膜用溶液を収容する回転槽と、
収容した前記成膜用溶液を回転流動させるための回転手段と、
一端が前記回転槽内に配置された軽量凝集物分離管とを備え、
該軽量凝集物分離管は、回転流動させた前記成膜用溶液中から所定値以下の粒度の凝集物を抽出して前記成膜用槽へ戻すものである請求項4に記載の化合物半導体膜の製造装置。
【請求項6】
前記軽量凝集物分離管は、前記成膜用槽内の中心側から外周側にかけて移動可能である請求項5に記載の化合物半導体膜の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12703(P2013−12703A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284598(P2011−284598)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】