説明

化合物及び該化合物を含む膜

【課題】膜化されるだけで、特別な処理を必要とせず、強い円偏光発光性を示す化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する化合物。
【化1】


(式中、Ar1は、環状構造中に7〜50個のsp2炭素原子を有しているn1+n2価の環状炭化水素基である。R1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基であり、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R2は、ハロゲン原子又は有機基である。n1は1以上の整数である。n2は0以上の整数である。n1個のR1とn2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n2が2以上のとき、n2個のR2のうち任意の2個以上が結合して環を形成していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光発光性を示す化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光発光材料は、近年普及し始めた3Dテレビをはじめとする様々な表示デバイスに応用が期待される材料である。この材料としては、例えば、単独で円偏光発光性を示す発光材料となり得る化合物が、種々検討されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Macromolecules 35,6792−6798 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、公知の化合物は、強い円偏光発光性を実現するためには、化合物を膜化した後、分子配列を制御するための特別な処理が必要である。
【0005】
そこで、本発明は、膜化するだけで、特別な処理を必要とせず、強い円偏光発光性を示す化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、下記〔1〕〜〔10〕を提供する。
〔1〕下記式(1)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する化合物。
【化1】

(式中、Ar1は、環状構造中に7〜50個のsp2炭素原子を有しているn1+n2価の環状炭化水素基である。R1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基であり、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R2は、ハロゲン原子又は有機基である。n1は1以上の整数である。n2は0以上の整数である。n1個のR1とn2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n2が2以上のとき、n2個のR2のうち任意の2個以上が結合して環を形成してもよい。)
〔2〕下記式(2)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する化合物。
【化2】

(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に有機基である。R11及びR12のうち少なくとも一方は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有しており、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のうち任意の2個以上は、結合して環を形成していてもよい。)
〔3〕前記繰り返し単位が、前記式(2)で表される化合物におけるR3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれる2〜6個が除かれている、2〜6価の基である、上記〔2〕に記載の化合物。
〔4〕前記R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれる2〜6個が、前記R4に含まれる水素原子1個以上及び前記R9に含まれる水素原子1個以上を含む、上記〔3〕に記載の化合物。
〔5〕前記不斉炭素原子を有している環状炭化水素基が、下記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基である、上記〔2〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の化合物。
【化3】

(式中、*は水素原子が1個除かれて置換されている部位を示す。式中の*以外の水素原子は、置換されていてもよい。)
〔6〕前記R11及びR12のうち少なくとも一方が、前記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基であるか、或いは、前記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基をその一部に含むヒドロカルビル基である、上記〔5〕に記載の化合物。
〔7〕前記R12がヒドロカルビル基であり、且つ、前記R3及び前記R10が水素原子である、上記〔2〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔8〕下記式(3)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(4)で表される繰り返し単位を更に含有する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の化合物。
【化4】

(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は置換基を有していてもよい2価のアミン残基である。Xは、置換基を有してもいてよいシリレン基、置換基を有していてもよいエチレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基、又はエチニレン基である。m1及びm2は、それぞれ独立に0以上の整数である。m1及びm2の少なくとも1個は1以上の整数である。m1及び/又はm2が2以上であるとき、m1個存在するAr2及び/又はm2個存在するXは、同じでも異なっていてもよい。)
【化5】

(式中、Ar2の定義は式(3)中のAr2と同じである。m5は1以上の整数である。)
〔9〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の化合物を含む膜。
〔10〕前記〔9〕に記載の膜を含む発光素子。
〔11〕前記〔10〕に記載の発光素子を含むディスプレイ装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、膜化するだけで、熱処理などの特別な工程を経なくとも、強い円偏光発光性を示す化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。
【0010】
本明細書において、「置換されていてもよい」及び「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された基を構成する水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。前記置換基は、特に説明されていない場合は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基及び炭素原子数1〜30のヒドロカルビルメルカプト基が例示され、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基又は炭素原子数1〜18のヒドロカルビルメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基又は炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基が特に好ましい。置換基の数は1個又は複数個であり、複数個の場合には各置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0011】
本明細書において「有機基」とは、特に説明されていない場合には、炭素原子及び水素原子から主に構成される基を示す。
【0012】
本明細書において、「水素原子nx個が除かれているnx価の基」(nxは整数を表す)の意味について、以下説明する。例えば、−CH3部位を有する化合物(R−CH3、Rは「−CH3部位を有する化合物」における−CH3以外の構造である。)において−CH3部位中の水素原子が1〜3個除かれている1〜3価の基を示すと、「水素原子が1個除かれている1価の基はR−CH2−であり、水素原子が2個除かれている場合はR−CH=であり、水素原子が3個除かれている場合はR−C≡である。同様に、例えば、−CH2CH2CH3部位を有する化合物(R’−CH2CH2CH3、R’は「−CH2CH2CH3部位を有する化合物」における−CH2CH2CH3以外の構造である。)において、−CH2CH2CH3部位中の水素原子が1〜3個除かれている1〜3価の基を示すと、1位の水素原子が1個除かれている1価の基はR’−CH(CH2CH3)−であり、1位の水素原子が2個除かれている2価の基はR’−C(CH2CH3)=であり、1位の水素原子2個と3位の水素原子1個とが除かれている3価の基はR’−C(CH2CH2−)=である。
【0013】
本発明で言う繰り返し単位とは、化合物中に2個以上含有される構成単位を意味するが、好ましくは5個以上含有される構成単位であり、より好ましくは10個以上含有される構成単位であり、更に好ましくは20個以上含有される構成単位であり、特に好ましくは50個以上含有される構成単位であり、とりわけ好ましくは100個以上含有される構成単位である。
【0014】
本発明の化合物は、下記式(1)で表される化合物から水素原子が2〜6個除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する。
【化6】

式(1)中、Ar1は、環状構造中に7〜50個のsp2炭素原子を有しているn1+n2価の環状炭化水素基である。R1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基であり、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R2は、ハロゲン原子又は有機基である。n1は1以上の整数である。n2は0以上の整数である。n1個のR1とn2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n2が2以上のとき、n2個のR2のうち任意の2個以上が結合して環を形成していてもよい。
【0015】
前記式(1)において、Ar1は、環状構造中に7〜50個のsp2炭素原子を有している環状炭化水素(基本骨格)から、n1+n2個の水素原子が除かれているn1+n2価の基である。Ar1の基本骨格である環状炭化水素は、環状構造を有し、かつ該環状構造中に7〜50個の、好ましくは9〜30個の、より好ましくは12〜20個のsp2炭素原子を有している。Ar1の環状炭化水素は、sp2炭素原子以外の原子(例えば、sp2炭素原子以外の炭素原子、及び、炭素原子以外の原子)を含んでいてもよい。
【0016】
Ar1の基本骨格である環状炭化水素としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、テルフェニル環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ペンタレン環、クリセン環、トリフェニレン環、コロネン環、ペリレン環、ピセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、ジベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ベンゾフルオランテン環、アセナフテン環、アセナフチレン環及びアズレン環が挙げられ、好ましくはナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、テルフェニル環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ペリレン環、フルオレン環、ジベンゾフルオレン環、フルオランテン環又はベンゾフルオランテン環であり、より好ましくはナフタレン環、アントラセン環、ペンタセン環、テルフェニル環、ピレン環、トリフェニレン環、ペリレン環、フルオレン環、ジベンゾフルオレン環又はベンゾフルオランテン環であり、更に好ましくはナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ジベンゾフルオレン環又はベンゾフルオランテン環であり、特に好ましくはナフタレン環、フルオレン環又はジベンゾフルオレン環であり、とりわけ好ましくはフルオレン環である。
【0017】
前記式(1)において、R1及びR2は、共に、Ar1が有し得る置換基である。
【0018】
1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基であり、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R1に含有されている環状炭化水素基は、不斉炭素原子を1個以上有し、好ましくは1〜15個有し、より好ましくは1〜3個有している。R1に含有されている、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基の例及び好ましい例は、後述の式(2)中のR11及びR12における説明中の、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基の例及び好ましい例と同様である。R1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を、その一部に含有している有機基であればよく、R1の全部が上述の環状炭化水素基(R1自体が上述の環状炭化水素基)であってもよい。R1としての有機基は、炭素原子、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子及び窒素原子以外の原子を含まないものである。
【0019】
2は、ハロゲン原子又は有機基であり、好ましくは、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。R2は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有していないことが好ましい。即ち、R2とR1とは別個の構造であることが好ましい。
【0020】
前記式(1)において、n1及びn2は、それぞれ、Ar1が有しているR1及びR2の数を意味する。
【0021】
1は1以上の整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1又は2である。よって、式(1)で表される化合物には、R1が1個以上含まれる。
【0022】
2は0以上の整数であり、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜10である。よって、式(1)で表される化合物には、R2は含まれていなくてもよく、また、1個以上含まれていてもよい。
【0023】
1個のR1とn2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。即ち、R1とR2とはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。またn1が2以上のとき、n1個のR1はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。更にn2が2以上のとき、n2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0024】
2が2以上のとき、n2個のR2のうち任意の2個以上が結合して環を形成していてもよい。
【0025】
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物から水素原子が2〜6個除かれている2〜6個の基を繰り返し単位として含有する。式(1)で表される化合物における水素原子が除かれる部位は、式(1)中のAr1、R1及びR2から選ばれるいずれかの部位であればよいが、Ar1及びR2から選ばれる部位であることが好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。即ち、本発明の化合物は、下記式(2)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有することが好ましい。
【化7】

式(2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に有機基である。R11及びR12のうち少なくとも一方は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有しており、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のうち任意の2個以上は、結合して環を形成していてもよい。
【0027】
式(1)で表される化合物が上記式(2)で表される化合物で表される化合物の場合には、本発明の化合物に含有される繰り返し単位は、式(2)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基である。式(2)で表される化合物において、除かれる水素原子は、R11、R12、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれるいずれかであればよいが、好ましくは、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれるいずれかである。
【0028】
より好ましくは、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれるいずれかであり、且つ、R4に含まれる水素原子のうちの1個以上及びR9に含まれる水素原子のうちの1個以上を含む部位である。
【0029】
式(2)で表される化合物において水素原子が除かれている部位は、更に好ましくは、R4に含まれる水素原子1個とR9に含まれる水素原子1個との組み合わせ、R4に含まれる水素原子2個とR9に含まれる水素原子2個との組み合わせ、又は、R4に含まれる水素原子2個とR7に含まれる水素原子2個とR9に含まれる水素原子2個との組み合わせである。
【0030】
式(2)で表される化合物において水素原子が除かれている部位は、特に好ましくは、R4に含まれる水素原子1個とR9に含まれる水素原子1個との組み合わせ、及び、R4に含まれる水素原子2個とR7に含まれる水素原子2個とR9に含まれる水素原子2個との組み合わせのいずれかである。
【0031】
式(2)で表される化合物において水素原子が除かれている部位は、とりわけ好ましくは、R4に含まれる水素原子のうちの2個とR7に含まれる水素原子のうちの2個とR9に含まれる水素原子のうちの2個の組み合わせである。
【0032】
上記式(2)で表される化合物の、R4に含まれる水素原子1個とR9に含まれる水素原子のうちの1個とが除かれている2価の基の繰り返し単位をb1に、R4に含まれる水素原子2個とR9に含まれる水素原子2個とが除かれている4価の基の繰り返し単位をb2に、R4に含まれる水素原子2個とR7に含まれる水素原子2個とR9に含まれる水素原子2個とが除かれている6価の基の繰り返し単位をb3に、それぞれ示す。
【化8】

式b1、b2及びb3中、R3、R5〜R8及びR10〜R12の定義は、前記式(2)におけるそれぞれの定義と同じである。R4-2、R7-2及びR9-2はそれぞれ独立に、前記式(2)におけるR4、R7及びR9であって水素原子を2個以上有する基から、水素原子2個が除かれている3価の基である。R4-1及びR9-1はそれぞれ独立に、前記式(2)におけるR4及びR9であって水素原子を1個以上有する基から、水素原子1個が除かれている2価の基であるか、或いは、直接結合である。
【0033】
上記式b1において好ましくは、R4-1及びR9-1は直接結合である。上記式b2において好ましくは、R4-2及びR9-2はCHである。上記式b3において好ましくは、R4-2、R7-2及びR9-2はCHである。
【0034】
11及びR12は、それぞれ独立に有機基である。R11及びR12のうち少なくとも1個は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有しており、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。即ち、R11及びR12のうち少なくとも1個は、式(1)におけるR1に相当する。R11及びR12のうち一方(例えば、R11のみ)が、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有していることが好ましい。R11及びR12のうち少なくとも1個は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を、その一部に含有している有機基であればよく、R11の全部が、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基であってもよい。
【0035】
11及びR12の有機基のうち少なくとも1個が含有し得る、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基は、下記a1〜a31で表される環状炭化水素基のいずれかであることが好ましい。即ち、R11及びR12のうち少なくとも1個は、下記式a1〜a31で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基をその一部に含む有機基、又は、下記式a1〜a31で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であることが好ましい。
【化9】

【化10】

(式中、*は水素原子が1個除かれて置換されている部位を示す。式中の*以外の水素原子は、置換されていてもよい。)
【0036】
式a1〜a31で表される環状炭化水素基のうち、好ましくは式a1〜a20で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であり、より好ましくは式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であり、更に好ましくは式a1〜a11で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であり、特に好ましくは式a4〜a11で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であり、とりわけ好ましくは式a4、a6、a8及びa10で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基である。
【0037】
式a1〜a31には立体配座を記載していないが、式a1〜a31で表される環状炭化水素基は任意の立体配座をとっていてもよい。式a1〜a31で表される環状炭化水素基の光学純度は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましく、99%以上であることがとりわけ好ましい。
【0038】
不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基は、炭素原子及び水素原子の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などの原子を含んでいてもよい。好ましくは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子及びフッ素原子からなる群から選ばれる原子で構成され、より好ましくは炭素原子、水素原子、酸素原子及びフッ素原子からなる群から選ばれる原子で構成され、更に好ましくはR11は炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる群から選ばれる原子で構成され、特に好ましくは、R11は炭素原子と水素原子とから選ばれる原子で構成される、即ちヒドロカルビル基である。まとめると、R11及びR12のうち少なくとも一方(例えば、R11のみ)は、式a1〜a31で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基であるか、或いは式a1〜a31で表される環状炭化水素基から選ばれる環状炭化水素基をその一部に含有しているヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0039】
11として好ましくは、R11の全部が置換されていてもよく不斉炭素原子を有している上記式a1〜a31で表される構造から水素原子1個が除かれている1価の環状炭化水素基である。より好ましくは、上記式a1〜a31で表される構造中の*部位が上記(2)におけるフルオレン環の9位の炭素原子に結合する。
【0040】
11及びR12はいずれも有機基であるが、少なくとも一方は、上述したような、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有しない有機基であることが好ましい。該有機基としては、例えば、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基が挙げられる。
【0041】
該有機基は、好ましくは置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基であり、より好ましくは置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビル二置換アミノ基であり、更に好ましくは置換されていてもよいヒドロカルビル基又は置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基であり、特に好ましくは置換されていてもよいヒドロカルビル基である。
【0042】
前記ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の、炭素原子数1〜50の直鎖状アルキル基;、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,3,3−トリメチルプロピル基、2,2,3−トリメチルプロピル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1,2−ジメチルヘキシル基、1,3−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3,4−ジメチルヘキシル基、3,5−ジメチルヘキシル基、4,5−ジメチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2,5−ジメチルヘプチル基、1−エチルヘプチル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−プロピルヘキシル基、1−イソブチル−3−メチルブチル基、3,7−ジメチルオクチル基等の、炭素原子数3〜50の分岐状アルキル基;、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の、炭素原子数2〜50のアルケニル基;、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の、炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の、炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基であり、更に好ましくは炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基であり、とりわけ好ましくは炭素原子数5〜8のヒドロカルビル基である。
【0043】
前記ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロキシ基における水素原子が前記ヒドロカルビル基で置換されてなる基である。
【0044】
前記ヒドロカルビル一置換アミノ基は、アミノ基中の水素原子1個が前記ヒドロカルビル基1個で置換されている基である。
【0045】
前記ヒドロカルビル二置換アミノ基は、アミノ基中の水素原子2個が前記ヒドロカルビル基2個で置換されている基である。該ヒドロカルビル基2個は同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
前記ヒドロカルビルメルカプト基は、メルカプト基中の水素原子が前記ヒドロカルビル基で置換されている基である。
【0047】
式(2)中、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。
【0048】
3及びR10は少なくともいずれか一方が、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル一置換アミノ基、炭素原子数2〜50のヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビルメルカプト基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基又は炭素原子数2〜30のヒドロカルビル二置換アミノ基であり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基又は置換されていてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基であり、とりわけ好ましくは水素原子である。
【0049】
12は、好ましくはヒドロカルビル基である。R12がヒドロカルビル基であり、かつ、R3及びR10が水素原子である組み合わせがより好ましい。
【0050】
4〜R9はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル一置換アミノ基、炭素原子数2〜50のヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビルメルカプト基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基又は炭素原子数2〜30のヒドロカルビル二置換アミノ基であり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基又は置換されていてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基であり、とりわけ好ましくはメチル基又は水素原子である。
【0051】
3〜R10のうち任意の2個以上は、結合して環を形成してもよい。例えば、R5とR6が共にエチレン基でありかつR5とR6が結合してベンゼン環を形成してもよく、同様に、例えば、R7とR8が結合して芳香環を形成してもよい。
【0052】
本発明の化合物が含有する繰り返し単位の好ましい構造例としては、下記c1〜c29が挙げられる。
【化11】

【化12】

【0053】
式c1〜c29で表される繰り返し単位のうち、好ましくは式c1〜c24で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位であり、より好ましくは式c1〜c8及び式c17〜c24で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位であり、更に好ましくは式c1、式c3、式c5、式c7、式c17、式c19、式c21及び式c23で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位であり、特に好ましくは式c1、式c3、式c17及びc19で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位であり、とりわけ好ましくは式c1、式c17及びc19から選ばれる繰り返し単位である。
【0054】
本発明の化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1又は2以上の繰り返し単位を含有し、好ましくは10重量%以上含有し、より好ましくは30重量%以上含有し、更に好ましくは40重量%以上含有し、特に好ましくは90重量%以上含有する。
【0055】
本発明の化合物は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。ここで本発明の化合物がホモポリマーであるとは、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる特定の化学構造の繰り返し単位のみを含有することを意味する。本発明の化合物がコポリマーであるとは、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる2以上の化学構造の繰り返し単位を含有する化合物、並びに、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1又は2以上の化学構造の繰り返し単位と、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位以外の、1又は2以上の繰り返し単位を含有する化合物を意味する。本発明の化合物がコポリマーである場合は、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのいずれであってもよく、ランダムコポリマー及び交互コポリマーが好ましい。ランダムコポリマーとは、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位と、その他の繰り返し単位とが、ランダムに並んでいるコポリマーを意味する。交互ポリマーとは、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位と、その他の繰り返し単位とが、交互に並んでいるコポリマーを意味する。
本発明の化合物がコポリマーである場合は、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(4)で表される繰り返し単位を更に含有していてもよい。
【0056】
【化13】

式(3)中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は置換基を有していてもよい2価のアミン残基である。Xは、置換基を有してもいてよいシリレン基、置換基を有していてもよいエチレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基、又はエチニレン基である。m1及びm2は、それぞれ独立に0以上の整数である。m1及びm2の少なくとも1個は1以上の整数である。m1及び/又はm2が2以上であるとき、m1個存在するAr2及び/又はm2個存在するXは、同じでも異なっていてもよい。
【0057】
【化14】

式(4)中、Ar2の定義は式(3)中のAr2と同じである。m5は1以上の整数である。
【0058】
前記式(3)及び(4)中のAr2で表される2価の芳香族基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。2価の芳香族基の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、2,3−ジアザフラン環、チアゾール環、イソチアゾール環、2,4−ジアザフラン環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、2H−1,2,3−トリアゾール環等の単環式芳香環から、水素原子が2個除かれている2価の基;該単環式芳香環が2個以上縮合している縮合多環式芳香環から、水素原子が2個除かれている2価の基;該単環式芳香環及び該縮合多環式芳香環からなる群から選ばれる2個以上の芳香環が、単結合している、或いは、エテニレン基又はエチニレン基で連結している、芳香環集合から、水素原子が2個除かれている2価の基;該縮合多環式芳香環又は該芳香環集合の、隣り合う2個の芳香環の間に、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、イミノ基等の2価の基による架橋を有する、有橋多環式芳香環から、水素原子を2個除いた2価の基が挙げられる。
【0059】
前記縮合多環式芳香環において、縮合する単環式芳香環の数は通常2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。前記芳香環集合において、連結される芳香環の数は、通常2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。前記有橋多環式芳香環において、橋かけされる芳香環の数は、通常2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。
【0060】
前記単環式芳香環としては、例えば、以下の環(式500〜526)が挙げられる。
【化15】

【0061】
前記縮合多環式芳香環としては、例えば、以下の環(式527〜575)が挙げられる。
【化16】

【0062】
前記芳香環集合としては、例えば、以下の環(式576〜602)が挙げられる。
【化17】

【0063】
前記有橋多環式芳香環としては、例えば、以下の環(式603〜614)が挙げられる。
【化18】

【0064】
前記Ar2で表される2価の芳香族基は、式500〜505、508〜514、527〜534、543、561、562、565、567〜574、576〜584、587〜603、609及び610のうちのいずれかで表される環から水素原子が2個除かれている2価の基であることが好ましく、式500〜505、511、527、543、565、569、576、582、603及び610のうちのいずれかで表される環から水素原子が2個除かれている2価の基であることがより好ましく、式500、576及び603のうちのいずれかで表される環から水素原子が2個除かれている2価の基であることが更に好ましい。
【0065】
前記Ar2で表される2価の芳香族基は、有し得る置換基の数の範囲内で置換基を有していてもよい。置換基の数は0〜3個が好ましく、0〜2個がより好ましく、1個又は2個が更に好ましく、2個が特に好ましい。
【0066】
前記Ar2で表される2価の芳香族基における、水素原子を2個除いた2価の基の、水素原子が除かれる2箇所の位置は、除かれる水素原子と結合する原子2つを最短で結ぶ原子の数(即ち、構造式において、当該原子2つの間に存在する最少の原子の数)が、多い箇所同士であることが好ましい。例えば、前記式500で示されるベンゼン環の場合は、パラ位で水素原子が除かれる場合、除かれる水素原子と結合する炭素原子同士の原子数は最短で4原子であり、メタ位では3原子、オルト位では2原子となる。このため、前記500で示されるベンゼン環の場合は、パラ位で水素原子が除かれることが好ましい。同様に、例えば前記式603で示されるフルオレン環の場合は、2,7−位で水素原子が除かれた場合が、最短で結ぶ原子の数が8個で最も多くなるため、2,7−位で水素原子が除かれることが好ましい。
【0067】
式(3)中のAr2で表される2価のアミン残基としては、例えば、式(5)で表される基が挙げられる。
【化19】

式(5)中、Ar3、Ar4、Ar5及びAr6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基である。Ar7、Ar8及びAr9は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。m3及びm4は、それぞれ独立に、0又は1である。
【0068】
上記のAr3、Ar4、Ar5及びAr6における置換基を有していてもよい2価の芳香族基の例及び好ましい例は前記Ar2における置換基を有していてもよい2価の芳香族基の例及び好ましい例と同じである。Ar7、Ar8及びAr9における置換基を有していてもよい1価の芳香族基の例及び好ましい例は、前記置換基を有していてもよい2価の芳香族基の例及び好ましい例の構造に、水素原子1個が結合している1価の基である。
【0069】
3が0の場合、Ar3中の炭素原子とAr5中の炭素原子とが、直接結合してもよく、−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよい。m4が0の場合、Ar3中の炭素原子とAr9中の炭素原子とが、直接結合してもよく、−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよい。m3とm4が共に0の場合、Ar5中の炭素原子とAr9中の炭素原子とが、直接結合してもよく、−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよい。
【0070】
式(4)中のAr2で表される2価のアミン残基としては、下記式615〜627で表される芳香族アミンから水素原子を2個除いた基が例示される。
【化20】

【0071】
式(4)中のAr2で表される2価のアミン残基は、式615〜627で表されるアミンのうち、好ましくは式615〜621及び627のいずれかで表される芳香族アミンから水素原子を2個除いた基であり、より好ましくは式615、617、618、620及び627のいずれかで表される芳香族アミンから水素原子を2個除いた基である。
【0072】
式(3)中、Xは、置換基を有してもいてよいシリレン基、置換基を有していてもよいエチレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基、又はエチニレン基である。該シリレン基、エチレン基及びエテニレン基が有していてもよい置換基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。シリレン基、エチレン基及びエテニレン基が置換基を複数個有している場合には、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0073】
式(3)中、m1及びm2は、それぞれ独立に0以上の整数である。m1は1以上の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。m2は0であることが好ましい。
【0074】
式(4)中、m5は1以上の整数である。m5は、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0075】
式(3)及び/又は式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記式101〜115が挙げられる。以下の式中、n−Octはn−オクチル基を、n−Hexはn−ヘキシル基を、それぞれ示す。
【化21】

【0076】
式101〜115で表される繰り返し単位のうち、好ましくは式101、式102、式103、式106、式107、式108、式110及び式111で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位であり、より好ましくは式101、式108及び式111で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる繰り返し単位である。
【0077】
本発明の化合物がコポリマーである場合、本発明の化合物は上記式(3)及び/又は上記式(4)で表される繰り返し単位を10重量%〜90重量%含有していることが好ましく、30重量%〜70重量%含有していることがより好ましく、40重量%〜60重量%含有していることが更に好ましい。
【0078】
本発明の化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、5×102〜1×108であり、好ましくは1×103〜1×107であり、より好ましくは2×103〜1×106であり、更に好ましくは3×103〜5×105であり、特に好ましくは5×103〜1×105である。本発明の化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1×103〜1×109であり、好ましくは3×103〜1×108であり、より好ましくは5×103〜1×107であり、更に好ましくは7×103〜1×106であり、特に好ましくは1×104〜5×105である。GPCの分析条件としては、後述の実施例にて示す分析条件が例示される。
【0079】
本発明の化合物は、強い円偏光発光性を示すが、円二色性スペクトルにおける左右の吸光度に偏りを有するか、旋光性を有するか、或いはその両方を有することが好ましい。円二色性スペクトルにおける左右の吸光度に偏りがあるか否かの確認は、検体を成膜し、得られる膜の円二色性比を測定し、絶対値が大きいこと(通常は1×10−6以上、好ましくは1×10−5以上)を確認することにより行い得る。円二色性比の測定条件としては、実施例の測定条件が例示される。
【0080】
本発明の化合物の円偏光発光性が強いことは、検体を成膜し、得られる膜の円偏光発光を測定し、後述するg値から確認することができる。また、本発明の化合物の円偏光発光性が強いことは、前述した膜の円二色性スペクトルにおける円二色性比の絶対値が大きく、且つ、発光強度が強いことからも、確認し得る。
【0081】
旋光度は[α]Dの絶対値が5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましい。旋光度の測定条件としては、実施例の測定条件が例示される。
【0082】
膜の吸光度は、0.05×10-3mol/Lの濃度における光路長1mmのテトラヒドロフラン(THF)溶液の吸光度以上であることが好ましく、0.20×10-3mol/Lの濃度における光路長1mmの溶液の吸光度以上であることがより好ましい。吸光度の測定条件としては、実施例の測定条件が例示される。
【0083】
本発明の化合物は、重合反応によって合成され得る。例えば、前記式(1)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基に、公知の重合反応部位(例えば、臭素原子及びブロモメチル基)を含有する化合物を用い、一般的な重合反応を行う定法に従って製造され得る。
【0084】
本発明の化合物は、実施例の方法により製造され得る。また、実施例とは別に、例えば、1mmolの2,7−ビス(ブロモメチル)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンを溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル)に溶かし、3mmol程度のカリウム−tert−ブトキシド(tert−BuOK)を加え、加熱撹拌(例えば、40℃程度)し、反応液をメタノールに加え沈殿させることにより製造され得る。
【0085】
本発明の化合物は、例えば、粉体、膜、成型体、溶液、分散液等の状態で使用され得るが、膜又は溶液の状態で使用されることが好ましく、膜の状態で使用されることがより好ましい。
【0086】
本発明は、これまでに記述した本発明の化合物を含有する膜を提供する。
【0087】
本発明が提供する膜の厚さは、通常、1nm〜50μmであり、好ましくは2nm〜10μmであり、より好ましくは3nm〜5μmであり、更に好ましくは5nm〜1μmであり、特に好ましくは10nm〜200nmである。薄膜はピンホールや凹凸の形状を含んでいてもよいが、ピンホールや凹凸の形状を含まないことが好ましい。
【0088】
本発明の膜の製造方法としては、例えば、本発明の化合物と他の成分とを任意の割合で基板上に蒸着する工程を含む方法、及び、本発明の化合物と他の成分とを任意の割合で溶媒中に懸濁又は溶解させて得られる懸濁液又は溶液を塗布する工程を含む方法が挙げられる。好ましくは後者の方法である。
【0089】
前記塗布する工程に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0090】
前記塗布する工程においては通常、懸濁液又は溶液を塗布した後に、該懸濁液又は溶液に含まれる溶媒を乾燥させる。溶媒を乾燥させる方法としては、例えば、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥、及び、窒素ガスを吹き付けて行う乾燥が挙げられ、風乾又は加熱乾燥が好ましく、加熱乾燥がより好ましい。
【0091】
前記塗布する工程において、塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法及びオフセット印刷法が挙げられ、スピンコート法、キャスティング法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法又はオフセット印刷法が好ましい。
【0092】
本発明の膜は、更に膜を形成するための成分を含んでいてもよい。該成分としては、低分子有機材料、高分子有機材料、有機無機複合材料、無機材料及びそれらの混合物が例示され、用途に応じて任意に選択され得る。該成分としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、導電性高分子オリゴマー(例えば、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン)、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体、有機シラン誘導体、フルオレン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物、支持塩(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム)を含有していてもよい溶媒(溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水)、及びこれらの混合物が挙げられ、
好ましくは、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェンオリゴマー、ジフェニルキノン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、有機シラン誘導体、フルオレン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物又はアリールシラン骨格を有する化合物であり、
より好ましくは、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機シラン誘導体、フルオレン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物又はアリールシラン骨格を有する化合物であり、
更に好ましくは、カルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、アリールアミン誘導体有機シラン誘導体、フルオレン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物又はアリールシラン骨格を有する化合物である。
【0093】
本発明の膜は、更に発光性材料を含んでいてもよい。発光性材料としては、例えば、白金族元素を用いた金属錯体(例えば、フェニルピリジン誘導体が配位したイリジウム錯体)、希土類元素を用いた金属錯体(例えば、フェナントロリン誘導体が配位したユーロピウム錯体)、8−キノリノール誘導体が配位したアルミニウム錯体、ナフタセン誘導体、ジシアノエチレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、フェニレンビニレン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタレン誘導体が挙げられ、好ましくは、イリジウム錯体及びフルオレン誘導体であり、より好ましくはイリジウム錯体である。
【0094】
本発明の膜は、本発明の化合物のみからなる単独膜であっても、本発明の化合物と他の成分との複合膜であってもよく、単独膜であることが好ましい。本発明の膜が複合膜である場合、膜中における本発明の化合物の含量は、膜全体の重量に対して、好ましくは0.1重量%〜99重量%であり、より好ましくは1重量%〜90重量%であり、更に好ましくは5重量%〜80重量%であり、特に好ましくは10重量%〜50重量%である。
【0095】
本発明はまた、本発明の膜を含む発光素子を提供する。発光素子は、通常、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられており、発光層を有する一層又は複数層からなる薄膜層と、を含む。本発明の発光素子は、該薄膜層の少なくとも1層として、本発明の膜を含む。
【0096】
本発明の発光素子としては、例えば、単層型の発光素子(陽極/発光層/陰極)が挙げられ、この発光層が本発明の薄膜を含有する。また、多層型の発光素子の層構成としては、以下の構成が例示される。
(a)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(d)陽極/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
【0097】
本発明の発光素子においては、該素子を構成するいずれかの層が本発明の化合物若しくは膜を含んでいればよい。本発明の化合物を含む層又は本発明の膜を含む層がどの層であってもよいが、発光層であることが好ましい。本発明の化合物を発光層に含む場合、本発明の化合物が発光しても、本発明の化合物と他の発光材料(例えば、イリジウム錯体)との混合物であって、他の発光材料が発光してもよいが、本発明の化合物が発光することが好ましい。
【0098】
本発明の発光素子は、本発明の化合物を含む膜を有するため、円偏光発光性を示す発光素子となる。
【0099】
前記(a)〜(e)において、(正孔輸送層)、(電子輸送層)は、その位置にこれらの層がそれぞれ存在していてもしなくてもよい任意の層であることを表す。
【0100】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等の層に正孔を供給するものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの組み合わせを用いることができるが、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;前記導電性金属酸化物と前記金属との混合物及び積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン類、ポリチオフェン類〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール等の有機導電性材料;前記金属、前記混合物及び積層物、前記無機導電性物質、並びに前記有機導電性材料からなる群から選ばれる材料とITOとの組み合わせ、を用い得る。
【0101】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等の層に電子を供給するものである。陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの組み合わせを用い得るが、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K等)及びそのフッ化物並びに酸化物;アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Cs等)及びそのフッ化物並びに酸化物;金、銀、鉛、アルミニウム、合金及び混合金属類〔ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等〕、希土類金属〔インジウム、イッテルビウム等〕を用い得る。
【0102】
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、又は陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。前記正孔注入層及び前記正孔輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0103】
電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、又は陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、アンモニウム塩誘導体、カルボン酸塩誘導体、ナフタレンやペリレン等の芳香環のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)及び有機シラン誘導体が挙げられる。電子注入層及び前記電子輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層及び前記電子輸送層は、フラーレン誘導体及び/又はカーボンナノチューブ誘導体を含有していてもよい。
【0104】
電子注入層及び電子輸送層の材料として、絶縁体又は半導体の無機化合物を使用してもよい。電子注入層及び電子輸送層が絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させ得る。前記絶縁体としては、例えば、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物が挙げられ、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、電子注入層及び電子輸送層を構成する半導体としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素の、酸化物、窒化物及び酸化窒化物が挙げられる。
【0105】
また、本発明の発光素子において、陰極と陰極に接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。前記還元性ドーパントとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体が挙げられる。
【0106】
発光層は、電界印加時に陽極、正孔注入層又は正孔輸送層より正孔を注入させ、陰極、電子注入層又は電子輸送層より電子を注入させる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能のいずれかを有する。発光層に含有される本発明の化合物をゲスト材料とするホスト材料を、発光層に含有させてもよい。ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1は、ゲスト材料のそれより大きいことが好ましく、ホスト材料のT1とゲスト材料のT1の差が0.2eVよりも大きいことがより好ましい。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。ホスト材料は更に電解質を含有していてもよい。該電解質としては、例えば、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有していてもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、及び該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体等)が挙げられる。ホスト材料と本発明の化合物とを混合して塗布する、又は共蒸着することにより、発光材料が前記ホスト材料にドープされた発光層を形成してもよい。
【0107】
本発明の発光素子において、各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法及び塗布法〔キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等〕が挙げられるが、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布法が好ましい。前記塗布法により、本発明の化合物を含む層を形成する場合の例としては、本発明の化合物を溶媒と混合して塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。該塗布液中にはホスト材料及び/又はバインダーとして樹脂を含有させてもよい。該樹脂は溶媒に溶解状態としてもよいし、分散状態としてもよい。
【0108】
前記樹脂としては、例えば、ポリビニルカルバゾール等の非共役系高分子、及び、ポリオレフィン系高分子等の共役系高分子が使用され得る。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂及びシリコン樹脂が挙げられる。樹脂の溶液は、更に、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有していてもよい。前記溶液に用いられる溶媒としては、薄膜の成分を均一に溶解する溶媒又は安定な分散液を与える溶媒が好ましく、例えば、アルコール類〔メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等〕、ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン等〕、塩素化炭化水素類〔クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等〕、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン等〕、脂肪族炭化水素類〔ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等〕、アミド類〔ジメチルホルムアミド等〕、スルホキシド類〔ジメチルスルホキシド等〕、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0109】
インクジェット法においては、例えば、ノズルからの蒸発を押さえるために高沸点の溶媒〔アニソール、ビシクロヘキシルベンゼン等〕を用い得る。また、溶液の粘度は、25℃において、1〜100mPa・sであることが好ましい。
【0110】
本発明の発光素子の各層の厚さは、0.5nm〜100μmであることが好ましく、1nm〜1μmであることがより好ましい。
【0111】
本発明の発光素子は、例えば、3Dテレビ用光源、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置又はプリンターヘッドに用いることができる。本発明の発光素子がディスプレイ装置に用いられる場合には、例えば、公知の駆動技術、駆動回路等が利用できる。本発明の発光素子は、セグメント型及びドットマトリクス型のいずれのディスプレイ装置にも用いることができる。
【実施例】
【0112】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
以下の実施例において、NMRの測定条件は以下の通りとした。測定試料5〜20mgを約0.6mLの重クロロホルムに溶解させて、NMR(日本電子社製、商品名:JNM−ECP600N)を用いて行った。
【0114】
以下の実施例において、旋光度の測定は、日本分光社製、JASCO P−1030を用いて行った。
【0115】
<実施例1>(前記c17を繰り返し単位として含有するホモポリマー)
(−)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンの合成
【化22】

【0116】
(+)−9−ネオメンチルフルオレンを、Organometallics 23,1002−1009(2004)に記載の方法で合成した。
【0117】
(+)−9−ネオメンチルフルオレン(4.0g、0.013mol)のTHF(70mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6mol/L、10mL、n−ブチルリチウムとして0.016mol)を0℃で滴下し、40分撹拌した。反応液に1−ヨードペンタンのTHF(10mL)溶液を数回に分けて加え、室温に上げて24時間撹拌した。反応液を水に加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/5、v/v)による精製を行い、無色液状の(−)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンを得た(4.6g、収率94%)。
【0118】
得られた化合物のNMRデータ及び旋光度測定結果を下記に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3):δ7.71−7.19ppm(m、8H、ArH)、2.61−2.55ppm(m、1H、−CH−)、2.19−0.07ppm(m、29H).
[α]D=−51°(クロロホルム、1g/dL、1dm cell)
【0119】
2,4,7−トリス(ブロモメチル)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンの合成
【化23】

【0120】
(−)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(3.8g、0.010mol)とパラホルムアルデヒド(20g、0.25mol)の混合物に、33重量%臭化水素水(20g、臭化水素として0.25mol)の酢酸(43mL)溶液を0℃で滴下し、70℃で36時間撹拌した。反応液を水に加え、クロロホルムでの抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/5、v/v)による精製を行い、クロロホルム−メタノール溶媒で再結晶を行い、無色結晶の2,4,7−トリス(ブロモメチル)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンを得た(2.2g、収率33%)。
【0121】
得られた化合物のNMRデータ及び旋光度測定結果を下記に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3):δ7.90−7.27ppm(m、5H、ArH)、4.91−4.76ppm(m、2H、フルオレン4−位のCH2Br)、4.62−4.55ppm(m、4H、フルオレン2,7−位のCH2Br)、2.57−2.53ppm(m、1H、−CH−)、2.20−0.94ppm(m、29H).
[α]D=−58°(クロロホルム、1g/dL、1dm cell)
【0122】
ポリマー1の合成
【化24】

【0123】
2,4,7−トリス(ブロモメチル)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(0.40g、0.60mmol)とベンジルブロマイド(0.092g、0.54mmol)のTHF(30mL)溶液に、tert−BuOK(0.20g、1.8mmol)のTHF(10mL)溶液を加え、室温で12時間撹拌後、反応液にtert−BuOK(0.20g、1.8mmol)とベンジルブロマイド(15.3g、90mmol)を順に加え、50℃で24時間撹拌した。反応液に水を加えた後、それをメタノールに加え、生じた沈殿物を遠心分離により回収した。これをTHFに溶かし、アセトンに滴下して生じた沈殿物より、目的とする化合物(以下、「ポリマー1」と言う。)を得た(0.15g、収率35%)。
【0124】
ポリマー1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により測定した。SECのうち移動相が有機溶媒である場合をGPCと言う。
【0125】
測定試料(ポリマー1)を約0.1重量%の濃度でTHFに溶解させ、GPC(Hitachi L7100)に10μL注入した。GPCの移動相はTHFを用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、TOSOH TSK gel G3000HHR及びTOSOH TSK gel G6000HHRを用いた。検出器にはUV−VIS検出器(Hitachi L−7420 UV)及びRI検出器(Hitachi L−7490 RI)を用いた。
【0126】
その結果、ポリマー1のMn及びMwはそれぞれ、Mn=74300、Mw=352000であった。
【0127】
ポリマー1の旋光度は、[α]D=−64°(クロロホルム、1g/dL、0.1dm cell)であった。
【0128】
<実施例2>(式c1で表される繰り返し単位を含有するホモポリマー)
2,7−ジブロモ−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンの合成
【化25】

【0129】
前記合成した(−)−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(7.90g、21.1mmol)とヨウ素(64mg、0.25mol)の混合物をジクロロメタン(40mL)に溶かし、室温で臭素(2.20mL、42.9mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。反応液に硫酸水素ナトリウム水溶液とジクロロメタンを加え、抽出して、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮し、ヘキサンで再結晶を行い、白色結晶の2,7−ジブロモ−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレンを得た(8.40g、収率74.8%)。
【0130】
得られた化合物のNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl):δ7.60−7.42ppm(m、6H、ArH)、2.50ppm(m、1H、−CH−)、2.19−0.14ppm(m、29H).
【0131】
ポリマー2の合成
【化26】

【0132】
窒素雰囲気下、マグネシウム(70.0mg、2.88mmol)とTHF(1mL)と1,2−ジブロモエタン(67.0mg、0.357mmol)との混合液へ、2,7−ジブロモ−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(1.00g、1.88mmol)のTHF(3mL)溶液を加え、60℃で1時間撹拌した。反応液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)(20.4mg、0.0376mmol)を加え、60℃で更に24時間撹拌した。反応液に希塩酸とクロロホルムを加え、抽出して、有機層を水で洗浄した。有機層を乾燥させ、THFで懸濁ろ過し、ろ液を濃縮し、ヘキサンで懸濁ろ過し、ろ液を濃縮し、メタノールで懸濁ろ過し、ろ過物として目的とする化合物(以下、「ポリマー2」と言う。)を収率41%で得た。
【0133】
ポリマー2のMn及びMwはそれぞれ、Mn=7600、Mw=12800であった。
【0134】
<実施例3>(式c1で表される繰り返し単位と式111で表される繰り返し単位とを含有するランダムコポリマー)
ポリマー3の合成
【化27】

上記式中、n−Octはn−オクチル基を示す。
【0135】
窒素雰囲気下、マグネシウム(72.9mg、3.00mol)とTHF(1mL)と1,2−ジクロロエタン(188mg、1.00mmol)の混合液へ、2,7−ジブロモ−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(958mg、1.80mmol)と2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(64.4mg、0.200mmol)とのTHF(3.5mL)溶液を加え、60℃で1時間撹拌した。反応液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)(21.7mg、0.040mmol)を加え、60℃で更に24時間撹拌した。反応液に希塩酸とクロロホルムを加え、抽出して、有機層を水で洗浄した。有機層を乾燥させ、THFで懸濁ろ過し、ろ液を濃縮し、クロロホルムに溶解させ、メタノールに加えて再沈殿を行い、目的とする化合物(以下、「ポリマー3」と言う。)を収率51%で得た。
【0136】
ポリマー3のMn及びMwはそれぞれ、Mn=8400、Mw=19400であった。ポリマー3における、式c1で表される繰り返し単位と式111で表される繰り返し単位との含有割合は、それぞれ、90重量%、10重量%であった。
【0137】
<実施例4>(前記式c1で表される繰り返し単位と式111で表される繰り返し単位とを含有する交互コポリマー)
ポリマー4の合成
【化28】

上記式中、n−Octはn−オクチル基を示す。
【0138】
窒素雰囲気下、2,7−ジブロモ−9−ネオメンチル−9−ペンチルフルオレン(240mg、0.451mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジボロン酸ビス(1,3−プロパンジオール)エステル(150mg、0.451mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(52.0mg、0.0450mmol)の混合物に、1,4−ジオキサン(4mL)、及び、炭酸カリウム(425mg、3.08mmol)の水溶液(1.5mL)を加え、2.5時間還流した。反応液に希塩酸とクロロホルムを加え、抽出して、有機層を水と飽和食塩水で順番に洗浄した。有機層を乾燥させ、メタノールで懸濁ろ過し、ろ過物として目的とする化合物(以下、「ポリマー4」と言う。)を収率72%で得た。
【0139】
ポリマー4のMn及びMwはそれぞれ、Mn=25300、Mw=128000であった。ポリマー4における、式c1で表される繰り返し単位と式111で表される繰り返し単位との含有割合は、それぞれ、49重量%、51重量%であった。
【0140】
−吸光度の測定−
吸光度の測定は、日本分光社製、V−570を用いて行った。
ポリマー1をTHFに溶かし、石英基板上にスピンコート法で塗布し、成膜した。得られた膜の300nmにおける吸光度は、0.21×10−3mol/Lの濃度における光路長1mmのTHF溶液と同程度であった。
【0141】
−円二色性比の測定−
円二色性比の測定は、日本分光社製、JASCO J−820を用いて行った。
【0142】
前記吸光度の測定においてポリマー1から得られた膜の円二色性スペクトルを測定したところ、300nmにおける左右の円偏光に対する分子吸光係数の比(Δε/ε)(円二色性比)は、1.4×10-5であった。
【0143】
ポリマー2をTHFに溶かし、石英基板上にキャスティング法により成膜した。この膜の円二色性スペクトルを測定したところ、375nmにおける円二色性比は、8.9×10-5であった。
【0144】
ポリマー3をTHFに溶かし、石英基板上にキャスティング法により成膜した。この膜の円二色性スペクトルを測定したところ、375nmにおける円二色性比は、7.6×10-5であった。
【0145】
ポリマー4をTHFに溶かし、石英基板上にキャスティング法により成膜した。この膜の円二色性スペクトルを測定したところ、380nmにおける円二色性比は、2.2×10-5であった。
【0146】
−円偏光発光性の測定−
円偏光発光性の測定は、以下の方法で行った。
励起光源として、375nmのパルスレーザー(PicoQuant社製、LDH−P−C−375及びPDL800−B)を用い、励起光を測定試料に照射した。発光は一対のアクロマートダブレットレンズにより集積し、回転偏光は無彩色の1/4λ板と直線偏光子で分離した。検出器はCCD分光計(Andor Technology社製、SR−303i及びiDus 420A)を用いた。
【0147】
前記吸光度の測定においてポリマー1から得られた膜に375nmの励起光を照射し、490nmにおける円偏光発光性を測定したところ、g値は−0.16であった。
【0148】
上記g値は、検体から放射された発光の右円偏光成分の強度をIR、左円偏光成分の強度をILとし、次式から求めた。
(式) g=2(IL−IR)/(IL+IR
【0149】
−蛍光発光性の測定−
蛍光発光の測定には、JASCO社製のFP−777Wを用いた。
【0150】
上記ポリマー2から得られた膜に362nmの励起光を照射したところ、440nmにピークを示す強い青色発光が観測された。
【0151】
上記ポリマー3から得られた膜に362nmの励起光を照射したところ、440nmにピークを示す強い青色発光が観測された。
【0152】
上記ポリマー4から得られた膜に362nmの励起光を照射したところ、420nm及び445nmにピークを示す強い青色発光が観測された。
【0153】
上記ポリマー2〜4から得られた膜は、円二色性比の絶対値が大きいと共に、蛍光発光性にも優れていることから、強い円偏光発光性を示すことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する化合物。
【化1】

(式中、
Ar1は、環状構造中に7〜50個のsp2炭素原子を有しているn1+n2価の環状炭化水素基である。
1は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有している有機基であり、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。
2は、ハロゲン原子又は有機基である。
1は1以上の整数である。
2は0以上の整数である。
1個のR1とn2個のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
2が2以上のとき、n2個のR2のうち任意の2個以上が結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
下記式(2)で表される化合物から水素原子2〜6個が除かれている2〜6価の基を繰り返し単位として含有する化合物。
【化2】

(式中、
11及びR12は、それぞれ独立に有機基である。R11及びR12のうち少なくとも一方は、不斉炭素原子を有している環状炭化水素基を含有しており、該環状炭化水素基における水素原子は置換されていてもよい。
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいヒドロカルビル基、置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビル一置換アミノ基、ヒドロカルビル二置換アミノ基又は置換されていてもよいヒドロカルビルメルカプト基である。
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のうち任意の2個以上は、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記繰り返し単位が、前記式(2)で表される化合物におけるR3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれる2〜6個が除かれている、2〜6価の基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10に含まれる水素原子から選ばれる2〜6個が、前記R4に含まれる水素原子1個以上及び前記R9に含まれる水素原子1個以上を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記不斉炭素原子を有している環状炭化水素基が、下記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【化3】

(式中、*は水素原子が1個除かれて置換されている部位を示す。式中の*以外の水素原子は、置換されていてもよい。)
【請求項6】
前記R11及びR12のうち少なくとも一方が、前記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基であるか、或いは前記式a1〜a17で表される環状炭化水素基から選ばれる基をその一部に含むヒドロカルビル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記R12がヒドロカルビル基であり、且つ、前記R3及び前記R10が水素原子である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
下記式(3)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(4)で表される繰り返し単位を更に含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【化4】

(式中、
Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は置換基を有していてもよい2価のアミン残基である。
Xは、置換基を有してもいてよいシリレン基、置換基を有していてもよいエチレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基、又はエチニレン基である。
1及びm2は、それぞれ独立に0以上の整数である。m1及びm2の少なくとも1個は1以上の整数である。m1及び/又はm2が2以上であるとき、m1個存在するAr2及び/又はm2個存在するXは、同じでも異なっていてもよい。)
【化5】

(式中、Ar2の定義は式(3)中のAr2と同じである。m5は1以上の整数である。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物を含む膜。
【請求項10】
請求項9に記載の膜を含む発光素子。
【請求項11】
請求項10に記載の発光素子を含むディスプレイ装置。

【公開番号】特開2012−72352(P2012−72352A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98345(P2011−98345)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】