説明

化学増幅型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法

【課題】電子線を用いたフォトマスク・半導体素子の微細加工における技術課題を解決することであり、特に、高感度、高解像力、良好なパターン形状、ブリッジの発生の抑制、良好な真空中PED特性を同時に満足する化学増幅型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する、化学増幅型レジスト組成物。


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは電子求引性基を表す。Yは2価の連結基を表し、Ar及びAr’は、各々独立に、芳香族環を表す。nは1〜5の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のファブリケーションプロセスに好適に用いられる、電子線を使用して高精細化したパターン形成しうる化学増幅ネガ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものであり、特に特定の下地膜を有する基板を使用するプロセスに用いられる化学増幅型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に更にエキシマレーザー光にというように短波長化の傾向が見られ、現在では、電子線やX線を用いたリソグラフィも開発が進んでいる。
【0003】
特に電子線リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられており、また、高解像性のゆえに半導体露光に使用されるフォトマスク作成に広く使用されている。前記フォトマスク作成の工程では、透明基板にクロム等を主成分とする遮蔽層を設けた遮蔽基板の上にレジスト層を形成し、更に選択的に電子線露光を行った後、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。ついで、このレジストパターンをマスクとして遮蔽層をエッチングして遮蔽層にパターンを形成することにより、透明基板上に所定のパターンを有する遮蔽層を備えたフォトマスクを得ることができる。
【0004】
しかし、電子線は紫外線のような一括露光ができないため、処理時間短縮のため高感度なレジストが求められており、また、ネガ型電子線リソグラフィーに適したレジストとしては、アルカリ可溶性樹脂、架橋剤、酸発生剤及び添加剤を主成分とするいわゆるネガ型化学増幅型レジストが有効に使用されている。更に、このようなネガ型レジスト組成物には露光で発生した酸の拡散を制御するための塩基性化合物を加えることも知られている(特許文献1参照)。
しかし、このようなレジストにおいて更に高感度化しようとすると、解像性の低下やパターン形状の劣化が起こりがちである。更にラインエッジラフネスと言う、レジストパターンと基板界面のエッジがラインと垂直な方向に不規則に変動してエッジが凹凸となりこの凹凸がエッチング工程により転写され寸法精度を低下させる現象、の悪化も起こりがちである。ラインエッジラフネス向上は、0.25μm以下の超微細領域では特に重要な課題となっている。
【0005】
上記課題解決のために、特許文献2には更に4級アンモニウム塩と有機カルボン酸とを加えた化学増幅ネガ型レジスト組成物が記載されているが、パターン寸法が0.1μm以下というように、非常に微細になるに従い、微細パターンにおいてパターン間に細い糸状のレジスト層が残ってしまう、いわゆるブリッジ問題が発生し易い問題があった。
【0006】
ブリッジ問題の解消を目的とした技術として、特許文献3に、ヒドロシキスチレン繰り返し単位及び、電子求引性基で置換されたスチレン繰り返し単位を有する樹脂を含む化学増幅ネガ型レジスト組成物が記載されている。しかし、このレジスト組成物によっても、ブリッジ問題の解消は不充分であった。
【0007】
更に、パターンの微細化に伴い、露光後の引き置きによって発生する、現像後のレジストパターンの形状変形がより顕著になってきており、露光後線幅安定性(Post Exposure Delay(PED)特性)の更なる改善が求められているが、上記した各特許文献に記載の技術では、PED特性は十分に改善されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−201532号公報
【特許文献2】特開2008−268935号公報
【特許文献3】特開2008−249762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、フォトマスク・半導体素子の微細加工における技術課題を解決することであり、特に、高感度、高解像力、良好なパターン形状、ブリッジの発生の抑制、良好な真空中PED特性やラインエッジラフネス(LER)性能を同時に満足する化学増幅型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定構造の樹脂を含有する化学増幅型レジスト組成物によって上記目的を達成されることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
[1] (A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する、化学増幅型レジスト組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは電子求引性基を表す。Yは2価の連結基を表し、Ar及びAr’は、各々独立に、芳香族環を表す。nは1〜5の整数である。)
[2] 前記化合物(B)がオニウム化合物である、上記[1]に記載の化学増幅型レジスト組成物。
[3] 前記化合物(B)において、活性光線又は放射線の照射により発生する酸の体積が、270Å以上である上記[1]又は[2]に記載の化学増幅型レジスト組成物。
[4] 前記化合物(B)が電子線の照射により酸を発生する化合物である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
[5] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位が下記一般式(2)で表される繰り返し単位であり、前記樹脂(A)が、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有し、かつ、前記化学増幅型レジスト組成物が、更に、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を含有する、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Ar’は芳香族環を表し、Xはハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
[6] 上記Yがアルキレン基である、上記[5]に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
[7] 前記樹脂(A)の分散度が1.0〜1.35である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の化学増幅レジスト組成物。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
[9] 上記[8]に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
[10] 上記[8]に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
[11] 上記[9]に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
[12] 前記露光は、電子線を用いて行われる、上記[10]又は[11]に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高感度、高解像力、良好なパターン形状、ブリッジの発生の抑制、良好な真空中PED特性やラインエッジラフネス(LER)性能を同時に満足する化学増幅型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、パターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0014】
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する。
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは電子求引性基を表す。Yは2価の連結基を表し、Ar及びAr’は、各々独立に、芳香族環を表す。nは1〜5の整数である。)
【0017】
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、典型的には化学増幅型ネガ型レジスト組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0018】
〔1〕(A)樹脂
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有している。このように、樹脂(A)が、下記一般式(1)における−Y−Ar’で表される構造(スペーサー部としての−Y−に芳香環が連結してなる基)を有することによって、レジスト組成物から得られるレジスト膜のアルカリ溶解速度が、高解像力を発現するように適切に制御されるものと考えられる。更に、上記Ar’が電子求引性基で置換されていることにより、露光に伴う反応性及び反応場(例えば、架橋剤との反応性及び反応場)が調整されて、露光境界部における反応のコントラストが適切に制御されるものと考えられる。その結果、ブリッジの発生が抑制されるものと推察される。
また、このような化学増幅型レジスト組成物によって、ブリッジの発生を抑制できる他、その理由は明らかではないが、感度、解像力、パターン形状、及び、真空中のPED特性やLER性能も優れたものにできる。
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは電子求引性基を表す。Yは2価の連結基を表し、Ar及びAr’は、各々独立に、芳香族環を表す。nは1〜5の整数である。)
【0021】
上記のように、Rは水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)のAr及びAr’の芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの芳香族炭化水素環(好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素環)、あるいは、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環、イソインドール環、カルバゾール環等の芳香族複素環(好ましくは、炭素数4〜10の芳香族複素環)を挙げることができる。
Ar及びAr’の芳香族環は、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましく、ベンゼン環であることが更に好ましい。
【0023】
2価の連結基Yは、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基等の炭素数4〜10のシクロアルキレン基)、アルケニレン基(例えば、エチニレン基、プロピニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜10のアリーレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、及び、これらの2種以上を組み合わせてなる基などが挙げられる。上記Rは、水素原子又はアルキル基(好ましくは、炭素数1〜5)である。
【0024】
一般式(1)の電子求引性基Xとしては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルフィニル基、スルフォニル基、ハロゲン化アルキル基(好ましくはパーハロアルキル基、より好ましくはパーフルオロアルキル基)等が例示される。上記基のうちカルボニル基、スルフィニル基、スルフォニル基のもう一端の基としては、水酸基、炭素数15以下のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を挙げることができる。
上記ハロゲン化アルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
電子求引性基Xは、ハロゲン原子又はハロゲン化アルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましく、フッ素原子又は塩素原子であることが更に好ましい。
【0025】
Ar’としての芳香族環に対するXの結合位置は、Ar’のYに対する結合部位に対してパラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、1個又は2個以上のXのうち、少なくとも1個のXは、Ar’のYに対する結合位置に対してパラ位でAr’に結合することが好ましい。
【0026】
一般式(1)におけるR、X、Y、Ar及びAr’の各基は、更に、置換基を有していてもよく、このような更なる置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フェネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、ビニル基、プロペニル基、アリル等のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0027】
一般式(1)において、上記したように、nは1〜5の整数を表すが、1〜3の整数であることがより好ましく、1であることがより好ましい。
【0028】
樹脂(A)における上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂を使用すると、このような樹脂は電子求引性で置換された芳香族環を、樹脂の主鎖から距離が離れた側鎖部分に有することになり、電子求引性で置換された芳香族環がもらたす機能がより確実に発現されるため、上記したアルカリ溶解性の制御と、露光境界部における反応のコントラストの制御とが、より確実になされ、ブリッジの発生が特に抑制される。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Ar’は芳香族環を表し、Xはハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【0031】
上記一般式(2)において、R及びAr’の具体例及び好ましい例は、上記一般式(1)で説明したものと同様である。
【0032】
の2価の連結基の具体例としては、上述した、一般式(1)におけるYとしての2価の連結基の具体例と同様のものを挙げることができるが、Yは、アルキレン基、カルボニル基又はスルホニル基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基としてはメチレン基が好ましい。
【0033】
はハロゲン原子を表し、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましい。Ar’としての芳香族環に対するXの結合位置は、Ar’のYに対する結合部位に対してパラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、1個又は2個以上のXのうち、少なくとも1個のXは、Ar’のYに対する結合位置に対してパラ位でAr’に結合することが好ましい。
【0034】
一般式(2)におけるR、X、Y及びAr’の各基は、更に、置換基を有していても良く、このような更なる置換基の具体例は、上記一般式(1)において説明した、更なる置換基の具体例と同様である。
【0035】
一般式(1)若しくは一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
樹脂(A)は、一般式(1)若しくは(2)で表される繰り返し単位の他に、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
【0041】
上記一般式(3)において、Rとしてのメチル基は、更に置換基を有していても良く、このような更なる置換基の具体例は、上記一般式(1)において説明した、更なる置換基の具体例と同様である。
一般式(3)におけるRは水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(3)で表されるヒドロキシスチレン繰り返し単位に関して、水酸基のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、パラ位若しくはメタ位であることが好ましい。
【0042】
樹脂(A)は、上記一般式(1)や(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、下記のような繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」ともいう)を更に有することも好ましい。
【0043】
これらの他の繰り返し単位を形成するための重合性モノマーの例としてはスチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、O-アルキル化スチレン、O-アシル化スチレン、水素化ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸誘導体(アクリル酸、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸誘導体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等)、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、置換基を有しても良いインデン、等を挙げることができる。
【0044】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、一般的に1〜40モル%、好ましくは2〜30モル%である。
一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量の範囲は、一般的に60〜99モル%、好ましくは70〜98モル%である。
【0045】
樹脂(A)は、公知のラジカル重合法やリビングラジカル重合法(例えばRAFT法)やアニオン重合法により合成することができる。例えば、アニオン重合法では、ビニルモノマーを適当な有機溶媒に溶解し、金属化合物(ブチルリチウム等)を開始剤として、通常、冷却条件化で反応させて重合体を得ることができる。
また、樹脂(A)は、ラジカル重合法やアニオン重合法で合成したポリマーに高分子反応で修飾して合成することもできる。
樹脂(A)の重量平均分子量は、1000〜200000であることが好ましく、2000〜50000であることがより好ましい。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、好ましくは1.7以下であり、感度の向上の観点でより好ましくは1.0〜1.35であり、1.0〜1.2が最も好ましい。重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
分散度が1.0〜1.35の樹脂は、アニオン重合法を用いることにより、好適に得られる。
【0046】
以下に、樹脂(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化10】

【0048】
樹脂(A)の含有量は、本発明の化学増幅型レジスト組成物の全固形分に対して、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜80質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
〔2〕(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)(以下、適宜、これらの化合物を「酸発生剤」と略称する)を含有する。
酸発生剤の好ましい形態として、オニウム化合物を挙げることができる。そのようなオニウム化合物としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また、酸発生剤の別の好ましい形態として、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、イミド酸又はメチド酸を発生する化合物を挙げることができる。その形態における酸発生剤は、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、オキシムスルホネート、イミドスルホネートなどを挙げることができる。
【0050】
また酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物も用いることができる。
【0051】
酸発生剤は、電子線の照射により酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0052】
本発明において、好ましいオニウム化合物としては、下記一般式(4)で表されるスルホニウム化合物、若しくは一般式(5)で表されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0053】
【化11】

【0054】
一般式(4)において、
a1、Ra2及びRa3は、各々独立に、有機基を表す。
は有機アニオンである。
以下、一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を更に詳述する。
【0055】
上記一般式(4)のRa1〜Ra3は有機基を表すが、一般式(4)で表されるスルホニウム化合物は、好ましくは、Ra1〜Ra3の少なくとも1つがアリール基であるアリールスルホニム化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、Ra1〜Ra3の全てがアリール基でもよいし、Ra1〜Ra3の一部がアリール基で残りがアルキル基でもよく、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0056】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。2つ以上のアリール基を有する場合、アリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
アリールスルホニウム化合物のアリール基以外の基は、アルキル基の場合、炭素数1〜15の直鎖、分岐状アルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0058】
a1〜Ra3のアリール基、アルキル基は置換基を有してもよく、好ましい置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。Ra1〜Ra3がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
一般式(4)に於けるRa1〜Ra3は、そのうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
上記一般式(4)におけるXの有機アニオンは、下記(6)〜(8)のいずれかで表される有機アニオンであることが好ましく、下記一般式(6)で表される有機アニオンであることがより好ましい。
【0059】
【化12】

【0060】
上記一般式(6)、(7)及び(8)に於いて、Rc、Rc、Rc及びRcは、それぞれ、有機基を表す。
【0061】
これらの有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が連結された基を挙げることができる。これら有機基のうちより好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。ただし炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は全ての水素原子がフッ素原子で置換されているのではなく、水素原子の一部が残されていることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。
【0062】
Rc、Rc、Rc及びRcの有機基として、特に好ましいのは以下に示す基である。
【0063】
【化13】

【0064】
上記一般式に於いて、Rcは、炭素数4以下のパーフロロアルキレン基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは、単結合又は2価の連結基を表す。Rcは、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。これらアルキル基やアリール基は置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0065】
次に、一般式(5)で表されるヨードニウム化合物を詳述する。
一般式(5)において、Ra4及びRa5は、各々独立して、有機基を表す。
は有機アニオンである。
【0066】
上記一般式(5)のRa4及びRa5は有機基を表すが、好ましくは各々独立に、アリール基又はアルキル基を表し、更に好ましくは、一般式(5)で表されるヨードニウム化合物は、Ra4及びRa5の少なくとも1つがアリール基であるアリールヨードニウム化合物である。
前記Ra4、Ra5のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
a4、Ra5としてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
a4、Ra5が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
は、炭素原子を含有する有機アニオンを表し、前述した一般式(4)に於けるXと同様のものを挙げることができる。
【0067】
そして、本発明においては、前記酸を発生する化合物(B)は、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、PED特性やLER特性を良好にする観点から、体積130Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが好ましく、体積270Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることがより好ましい。ただし、感度や塗布溶剤溶解性の観点から、上記体積は、2000Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることが更に好ましい。上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求めた。すなわち、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算することができる。
以下に本発明において、特に好ましい酸発生剤を以下に例示する。なお、例の一部には、体積の計算値を付記している(単位Å)。なお、ここで求めた計算値は、アニオン部にプロトンが結合した酸の体積値である。
【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
酸発生剤の組成物中の含有量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜18質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
〔3〕ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物(特に、化学増幅ネガ型レジスト組成物)は、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を含有することが好ましい。ここで、化合物(C)は、酸により樹脂(A)を架橋する化合物(以下、適宜、酸架橋剤又は単に架橋剤と称する)である。
【0074】
好ましい架橋剤としては、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化系フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物が挙げられる。特に好ましい化合物(C)としては、分子内にベンゼン環を3〜5個含み、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基が好ましい。
【0075】
上記架橋剤のうち、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。また、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。
このようにして合成されたフェノール誘導体のうち、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体が感度、保存安定性の点から特に好ましい。
【0076】
別の好ましい架橋剤の例として、更にアルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物のようなN−ヒドロキシメチル基若しくはN−アルコキシメチル基を有する化合物を挙げることができる。
【0077】
このような化合物としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア等が挙げられ、EP0,133,216A、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号、EP0,212,482A号に開示されている。
【0078】
これら架橋剤の中で特に好ましいものを以下に挙げる。
【0079】
【化18】

【0080】
式中、L〜Lは、各々独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。但し、上記式で表される各化合物が、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基を分子内に2個以上で有するように、L〜Lは定められる。
【0081】
本発明において架橋剤は、レジスト組成物の全固形分に対して、好ましくは3〜65質量%、より好ましくは5〜50質量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量を3〜65質量%とすることにより、残膜率及び解像力が低下することを防止するとともに、レジスト液の保存時の安定性を良好に保つことができる。
【0082】
本発明において、架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、感度の観点から2種組合せるのが好ましい。
例えば、上記のフェノール誘導体に加え、他の架橋剤、例えば上述のN−アルコキシメチル基を有する化合物等を併用する場合、上記のフェノール誘導体と他の架橋剤の比率は、モル比で100/0〜20/80、好ましくは90/10〜40/60、更に好ましくは80/20〜50/50である。
【0083】
〔4〕塩基性化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、塩基性化合物を酸補足剤として含有することが好ましい。塩基性化合物を用いることにより、露光から後加熱までの経時による性能変化を小さくすることできる。このような塩基性化合物としては、有機塩基性化合物であることが好ましく、より具体的には、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。アミンオキサイド化合物(特開2008−102383に記載)、アンモニウム塩(好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。)も適宜用いられる。
更に、酸の作用により塩基性が増大する化合物も、塩基性化合物の1種として用いることができる。
アミン類の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリン、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。含窒素複素環構造を有する化合物としては、2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ジメチルアミノピリジン、アンチピリン、ヒドロキシアンチピリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
また、光分解性塩基化合物(当初は塩基性窒素原子が塩基として作用して塩基性を示すが、活性光線あるいは放射線の照射により分解されて、塩基性窒素原子と有機酸部位とを有する両性イオン化合物を発生し、これらが分子内で中和することによって、塩基性が減少又は消失する化合物。例えば、特登3577743、特開2001−215689号、特開2001−166476、特開2008−102383に記載のオニウム塩)、光塩基発生剤(例えば、特開2010−243773に記載の化合物)も適宜用いられる。
これら塩基性化合物の中でも解像性向上の観点でアンモニウム塩が好ましい。
本発明で使用される塩基性化合物の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%が特に好ましい。
【0084】
〔5〕界面活性剤
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、更に、塗布性を向上させるため界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、メガファックF171(大日本インキ化学工業製)やフロラードFC430(住友スリーエム製)やサーフィノールE1004(旭硝子製)、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
レジスト組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0085】
〔6〕有機カルボン酸
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、前記成分の他に、有機カルボン酸を含有することが好ましい。このような有機カルボン酸化合物として、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ケトカルボン酸、安息香酸誘導体、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸などを挙げることができるが、電子線露光を真空化で行なう際にはレジスト膜表面より揮発して描画チャンバー内を汚染してしまう恐れがあるので、好ましい化合物としては、芳香族有機カルボン酸、その中でも例えば安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸が好適である。
有機カルボン酸の配合量としては、樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部、更により好ましくは0.01〜3質量部である。
【0086】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、必要に応じて、更に、染料、可塑剤、酸増殖剤(国際公開第95/29968号公報、国際公開第98/24000号公報、特開平8−305262号公報、特開平9−34106号公報、特開平8−248561号公報、特表平8−503082号公報、米国特許第5,445,917号明細書、特表平8−503081号公報、米国特許第5,534,393号明細書、米国特許第5,395,736号明細書、米国特許第5,741,630号明細書、米国特許第5,334,489号明細書、米国特許第5,582,956号明細書、米国特許第5,578,424号明細書、米国特許第5,453,345号明細書、米国特許第5,445,917号明細書、欧州特許第665,960号明細書、欧州特許第757,628号明細書、欧州特許第665,961号明細書、米国特許第5,667,943号明細書、特開平10−1508号公報、特開平10−282642号公報、特開平9−512498号公報、特開2000−62337号公報、特開2005−17730号公報、特開2008−209889号公報等に記載)等を含有してもよい。これらの化合物については、いずれも特開2008−268935号に記載のそれぞれの化合物を挙げることができる。
【0087】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、通常、溶剤を含有する。本発明のレジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが好ましい。これらの溶剤は単独若しくは組み合わせて用いられる。
レジスト組成物の固形分は、上記溶剤に溶解し、固形分濃度として、1〜40質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。
【0088】
本発明は、本発明の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜にも関し、このようなレジスト膜は、例えば、該レジスト組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。このレジスト膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。塗布膜は60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間プリベークして薄膜を形成する。
【0089】
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば半導体用ウエハの場合、シリコンウエハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等が挙げられる。
【0090】
また、本発明は、上記のようにして得られるレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクスにも関する。このようなレジスト塗布マスクブランクスを得るために、フォトマスク作製用のフォトマスクブランクス上にレジストパターンを形成する場合、使用される透明基板としては、石英、フッ化カルシウム等の透明基板を挙げることができる。一般には、該基板上に、遮光膜、反射防止膜、更に位相シフト膜、追加的にはエッチングストッパー膜、エッチングマスク膜といった機能性膜の必要なものを積層する。機能性膜の材料としては、ケイ素、又はクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等の遷移金属を含有する膜が積層される。また、最表層に用いられる材料としては、ケイ素又はケイ素に酸素及び/又は窒素を含有する材料を主構成材料とするもの、更にそれらに遷移金属を含有する材料を主構成材料とするケイ素化合物材料や、遷移金属、特にクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等より選ばれる1種以上、又は更にそれらに酸素、窒素、炭素より選ばれる元素を1以上含む材料を主構成材料とする遷移金属化合物材料が例示される。
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
【0091】
次いで、このレジスト膜には活性光線又は放射線(電子線等)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体等を作成する。
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスについては、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」に記載されている。
【0092】
本発明の化学増幅レジスト組成物(特に、化学増幅ネガ型レジスト組成物)の使用形態を次に説明する。
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成)工程は、まず本発明のレジスト膜にパターン状に電子線照射を行う。露光量は0.1〜20μC/cm2程度、好ましくは3〜10μC/cm2程度となるように露光する。次いで、ホットプレート上で60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間で露光後加熱を行い、ついで現像、リンス、乾燥することによりレジストパターンを形成する。現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%アルカリ水溶液で、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。こうして、レジスト膜の露光された部分は、ベース樹脂が架橋しているので現像液により溶解され難く、露光されなかったレジスト膜は溶解して基板上に目的のパターンが形成される。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0094】
1.使用素材
以下に実施例で使用する素材を予め記載しておく。
【0095】
(1)一般式(1)で示される繰り返し単位を含む本発明の樹脂(A)
<合成例1:樹脂(P−1)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)18gをジメチルスルホキシド(DMSO)80mLに溶解し、3.62gの4−クロロベンジルクロリド、20.7gの炭酸カリウム、224mgのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ反応液に添加し中和した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、ヘキサン2L中に滴下後、ろ過し、粉体を真空乾燥し、18gの収量を得た。
【0096】
また、樹脂(P−1)と同様にして、他の樹脂を合成した。
得られた樹脂につき、H−NMR測定により、樹脂の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、樹脂の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。重量平均分子量及び分散度について、以下の表中に、樹脂の化学式とともに示す。
【0097】
<合成例>
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
(2)実施例で用いる素材の記載
架橋剤(化合物(C))
【0101】
【化19】

【0102】
酸発生剤(化合物(B))
【0103】
【化20】

【0104】
2.実施例(電子線(EB))
〔実施例1E〕
【0105】
(1)支持体の準備
酸化Cr蒸着した6インチウェハー(通常のフォトマスクに使用する遮蔽膜処理を施した物)を準備した。
【0106】
(2)レジスト塗布液の準備
(ネガレジストの塗布液組成)
樹脂(P−1) 0.40g
架橋剤CL−1 0.08g
架橋剤CL−4 0.04g
光酸発生剤(z5) 0.05g
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(塩基性化合物) 0.002g
安息香酸(有機カルボン酸) 0.012g
界面活性剤PF6320(OMNOVA(株)製) 0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) 4.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤) 5.0g
【0107】
上記組成物溶液を0.04μmの孔径を有するメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト塗布溶液を得た。
【0108】
(3)レジスト膜の作成
上記6インチウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いてレジスト塗布溶液を塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚0.15μmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布マスクブランクスを得た。
【0109】
(4)ネガ型レジストパターンの作製
このレジスト膜に、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、120℃、90秒ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0110】
(5)レジストパタ−ンの評価
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ブリッジマージン及び真空中PED特性について評価した。
【0111】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。線幅0.15μmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度とした。
【0112】
〔解像力〕
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像)を解像力とした。
【0113】
〔パタ−ン形状〕
上記の感度を示す露光量における0.15μmラインパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0114】
〔ブリッジマージン〕
ラインアンドスペースのレジスト断面において、スペース間にレジストの溶解残渣(レジストの現像液への溶け残り)によるブリッジが確認される直前の線幅をブリッジマージンとして、数値が小さいほどスペース部の解像性が良好である指標とした。
【0115】
〔真空中PED特性〕
真空チャンバー内にウェハをセット、上記感度を示す照射量にて電子線照射、照射直後及び3時間後の各条件において、上記のように120℃、90秒ベーク(加熱処理)した後、現像処理を行いラインパターンを得た。
そして、電子線照射直後にベークを行い現像処理し得られた0.15μmラインパターンと電子線照射3時間後にベークを行い現像処理をし得られた0.15μmラインパターンについて、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)にて線幅を測定し、両者の差を真空中PED特性とした。
【0116】
〔評価結果〕
以下のような良好な結果が得られた。
感度:8.8μC/cm、解像力:50nm、パターン形状:矩形、ブリッジマージン:50nm、真空中PED特性:2.0nm
【0117】
〔実施例2E〕
樹脂(A)として前述の樹脂(P−2)を用いた以外は、実施例1Eと同様にしてレジスト溶液の調製、ネガ型パターン形成を行った。評価結果を表3に示す。
【0118】
〔実施例3E〕〜〔実施例9E〕
樹脂(A)として、それぞれ、樹脂(P−3)〜(P−9)を用いた以外は、実施例1Eと同様にして、〔実施例3E〕〜〔実施例9E〕のレジスト溶液の調製、ネガ型パターン形成を行った。評価結果は表3に示す。
【0119】
〔実施例10E〕〜〔実施例17E〕、〔比較例1E〕〜〔比較例3E〕
レジスト液処方で、下表2に記載の成分以外は実施例1Eと同様にしてレジスト溶液の調製、ネガ型パターン形成を行った(すなわち、レジスト溶液は、下記表2の成分の他、実施例1Eで使用されている有機カルボン酸、及び、界面活性剤を、それぞれ、実施例1Eで使用されている量で、更に含有している)。評価結果を表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
上記及び下記実施例/比較例で用いた素材の略称を以下に記載する。
【0122】
〔塩基性化合物〕
B1:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
B2:トリ(n−オクチル)アミン
B3:トリフェニルイミダゾール
【0123】
【化21】

【0124】
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)
S3:乳酸エチル
S4:2−ヘプタノン
S5:シクロヘキサノン
S6:γ−ブチロラクトン
S7:プロピレンカーボネート
【0125】
【表4】

【0126】
表3に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、解像力、パターン形状、ブリッジマージン及びPEDに優れることが分かる。
【0127】
3.実施例(EUV)
〔実施例1F〜9F及び比較例1F〜3F〕
(レジスト溶液の調製)
下記表4に記載の成分以外は実施例1Eと同様にしてレジスト溶液を作成した(すなわち、レジスト溶液は、下記表4の成分の他、実施例1Eで使用されている有機カルボン酸、及び、界面活性剤を、それぞれ、実施例1Eで使用されている量で、更に含有している)。次いで、レジスト溶液をポアサイズ0.04μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、ネガ型レジスト溶液を調製した。
【0128】
(レジスト評価)
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、50nmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
得られたレジスト膜に関し、下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ブリッジマージン及びラインエッジラフネスについて評価した。
【0129】
〔感度〕
得られたレジスト膜に、EUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJ/cmの範囲で0.5mJ/cmずつ変えながら、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して、露光を行った後、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて現像した。
線幅50nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を感度とした。
【0130】
〔解像力〕
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像)を解像力とした。
【0131】
〔パターン形状〕
線幅50nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0132】
〔ブリッジマージン〕
ラインアンドスペースのレジスト断面において、スペース間にレジストの溶解残渣(レジストの現像液への溶け残り)によるブリッジが確認される直前の線幅をブリッジマージンとして、数値が小さいほどスペース部の解像性が良好である指標とした。
【0133】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量で、線幅50nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0134】
以上の評価結果を表4に示す。
【0135】
【表5】

【0136】
表4に示す結果から、本発明に係る組成物は、EUV露光において、感度、解像力、パターン形状、ブリッジマージン及びLERに優れることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、EUV照射によるネガ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する、化学増幅型レジスト組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは電子求引性基を表す。Yは2価の連結基を表し、Ar及びAr’は、各々独立に、芳香族環を表す。nは1〜5の整数である。)
【請求項2】
前記化合物(B)がオニウム化合物である、請求項1に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)において、活性光線又は放射線の照射により発生する酸の体積が、270Å以上である請求項1又は2に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が電子線の照射により酸を発生する化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位が下記一般式(2)で表される繰り返し単位であり、前記樹脂(A)が、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有し、かつ、前記化学増幅型レジスト組成物が、更に、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Ar’は芳香族環を表し、Xはハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項6】
上記Yがアルキレン基である、請求項5に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項7】
前記樹脂(A)の分散度が1.0〜1.35である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学増幅レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
【請求項9】
請求項8に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【請求項10】
請求項8に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項12】
前記露光は、電子線を用いて行われる、請求項10又は11に記載のレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−133055(P2012−133055A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283869(P2010−283869)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】