説明

化学増幅型レジスト組成物

【課題】良好なパターン形状を有するパターンを形成することができ、高い解像度を示す化学増幅型レジスト組成物を提供する。
【解決手段】式(I)または式(II)で示されることを特徴とする塩と樹脂とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂は酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した該樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。


(Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の単環式または多環式炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる化学増幅型レジスト組成物に使用される、化学増幅型レジスト組成物に含有される酸発生剤として用いられる塩に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術を用いた半導体の微細加工に用いられる化学増幅型レジスト組成物は、露光により酸を発生する化合物からなる酸発生剤を含有してなる。
半導体の微細加工においては、高い解像度で良好なパターン形状のパターンを形成することが望ましく、化学増幅型レジスト組成物としては、良好なパターン形状を有するパターンを作製することができ、高い解像度を示すものが求められている。
【0003】
最近、トリフェニルスルホニウム 1−アダマンタンメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(塩)及びp−トリルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(塩)を酸発生剤として含有してなる化学増幅型レジスト組成物が提案されているが、さらに良好なパターン形状を有するパターンを形成することができ、高い解像度を示す化学増幅型レジスト組成物を与える酸発生剤となる塩が求められていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−4561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好なパターン形状を有するパターンを形成することができ、高い解像度を示す化学増幅型レジスト組成物を与える酸発生剤となる塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために、化学増幅型レジスト組成物に含有される酸発生剤として用いられる塩について鋭意検討した結果、環状ケトン残基を有してなる特定の塩および環状アルコール残基を有してなる特定の塩が、良好なパターン形状を有するパターンを形成することができ、高い解像度を示す化学増幅型レジスト組成物を与える酸発生剤となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、式(I)または式(II)で示されることを特徴とする塩を提供する。

(式(I)および式(II)中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(I)においては=Oと結合している、式(II)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(I)および式(II)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。)
【0008】
また本発明は、塩(I)または塩(II)を有効成分とする酸発生剤を提供する。
【0009】
また本発明は、塩(I)または塩(II)の合成に用いることができる中間体である、式(V)または式(VI)で示されることを特徴とする塩を提供する。

(式中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(V)においては=Oと結合している、式(VI)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(V)および式(VI)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。Mは、Li、Na、K又はAgを表す。)
【0010】
また本発明は、式(VII)または式(VIII)で示されるアルコールと、

(式中、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(VII)においては=Oと結合している、式(VIII)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(VII)および式(VII)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。)
式(IX)

(式中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、Mは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるカルボン酸とをエステル化反応させることを特徴とする塩(V)または塩(VI)の製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、式(I)で示される塩を還元することを特徴とする式(II)で示される塩の製造方法を提供する。
【0012】
また本発明は、式(V)で示される塩を還元することを特徴とする式(VI)で示される塩の製造方法を提供する。
【0013】
また本発明は、式(VII)または式(VIII)で示されるアルコールと
式(X)

で示されるカルボン酸とをエステル化反応させた後、MOHで加水分解させることを特徴とする式(V)または式(VI)で示される塩の製造方法を提供する。(Mは、Li、Na、K又はAgを表す。)
【0014】
また本発明は、式(V)または式(VI)で示される塩と式(XI)で示される化合物とを反応させることを特徴とする式(I)または式(II)で示される塩の製造方法を提供する。

(式中、A+は、有機対イオンを表し、ZはF、Cl、Br、I、BF4、AsF6、SbF6、PF6又はClO4を表す。)
【0015】
また本発明は、式(I)または式(II)で示される塩と樹脂とを含有する組成物であって、該樹脂は酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した該樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0016】
さらに本発明は、該樹脂組成物と塩基性有機化合物とを含有することを特徴とする化学増幅型レジスト組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塩を酸発生剤として用いることにより、良好なパターン形状を有するパターンを作製することができ、高い解像度を示す化学増幅型レジスト組成物を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】酸発生剤合成例2で生成した塩の、1H−NMRスペクトルのチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の塩は、式(I)または式(II)で示されることを特徴とする。

ここで、式(I)および式(II)中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(I)においては=Oと結合している、式(II)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(I)および式(II)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。
なお、環Xの炭素数には、=C=Oまたは≡C−OHの炭素を含む(以下も同じ)。
1、Q2としてはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3である場合が好ましく、フッ素原子である場合がさらに好ましい。
【0020】
このような環Xとしては、炭素数4〜8のシクロアルキル骨格、アダマンチル骨格、ノルボルナン骨格などが挙げられる。このいずれの骨格も炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよく、環Xの具体例としては、下記式で示される環が挙げられる。

【0021】
式(I)または式(II)で示される塩のアニオン部の具体例としては、下記式で示されるアニオンが挙げられる。

【0022】

【0023】

【0024】

【0025】
式(I)または式(II)で示される塩において、A+は、有機対イオンを表し、具体的には、以下に示す式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)又は式(IIId)のいずれかで示されるカチオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンが挙げられる。
【0026】
ここで、式(IIIa)は、下記式である。

式(IIIa)中、P1〜P3は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。
該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0027】
式(IIIa)で示されるカチオンの中でも、式(IIIe)で示されるカチオンが製造が容易であることから好ましい。

式(IIIe)中、P22〜P24は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。
【0028】
式(IIIb)は、ヨウ素カチオンを含む下記式である。

式(IIIb)中、P4、P5は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。該アルキル基及び該アルコキシ基は、式(IIIa)のアルキル基及びアルコキシ基と同じ意味を表す。
【0029】
式(IIIc)は、下記式である。

式(IIIc)中、P6、P7は、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。該シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などが挙げられる。また、P6とP7とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基であってもよい。P8は水素原子を表し、P9は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、またはフェニル基、ベンジル基などの置換されていてもよい芳香環基を表すか、P8とP9とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基を表す。P9がアルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。P9がシクロアルキル基の場合、該シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などが挙げられる。ここで、式(IIIc)における2価の炭化水素基に含まれる炭素原子は、いずれも、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子に置換されていてもよい。
【0030】
式(IIId)は、下記式である。

式(IIId)中、P10〜P21は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。該アルキル基及び該アルコキシ基は、式(IIIa)のアルキル基及びアルコキシ基と同じ意味を表す。
Bは、硫黄原子又は酸素原子を表す。mは、0又は1を表す。
【0031】
式(IIIa)で示されるカチオンA+の具体例としては、下記式で示されるカチオンが挙げられる。

【0032】

【0033】
式(IIIb)で示されるカチオンA+の具体例としては、下記式で示されるカチオンが挙げられる。

【0034】
式(IIIc)で示されるカチオンA+の具体例としては、下記式で示されるカチオンが挙げられる。

【0035】

【0036】

【0037】
式(IIId)で示されるカチオンA+の具体例としては、下記式で示されるカチオンが挙げられる。

【0038】

【0039】

【0040】
本発明の式(I)または式(II)で示される塩としては、中でも式(IVa)または式(IVb)で示される塩が、優れた解像度及びパターン形状を示す化学増幅型レジスト組成物を与える酸発生剤となることから好ましい。

(式中、P25〜P27は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0041】
式(I)または式(II)の製造方法としては、例えば、式(V)または式(VI)で示される塩と

(式中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(V)においては=Oと結合している、式(VI)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(V)および式(VI)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。Mは,Li、Na、K又はAgを表す。)
式(XI)で示されるオニウム塩とを、

(式中、A+は、有機対イオンを表し、ZはF、Cl、Br、I、BF4、AsF6、SbF6、PF6又はClO4を表す。)
例えば、アセトニトリル、水、メタノール、クロロホルム、塩化メチレン等の不活性溶媒中にて、0℃〜150℃程度の温度範囲、好ましくは0℃〜100℃程度の温度範囲にて攪拌して反応させて、式(I)または式(II)で示される塩を得る方法などが挙げられる。
【0042】
式(XI)のオニウム塩の使用量としては、通常、式(V)または式(VI)で示される塩1モルに対して、0.5〜2モル程度である。該塩(I)または該塩(II)は再結晶で取り出してもよいし、水洗して精製してもよい。
ここで、Q1、Q2としてはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3である場合が好ましく、フッ素原子である場合がさらに好ましい。
【0043】
式(I)または式(II)で示される塩の製造に用いられる式(V)または式(VI)で示される塩の製造方法としては、例えば、先ず、式(VII)または式(VIII)

(式中、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(VII)においては=Oと結合している、式(VIII)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(VII)および式(VII)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。)
で示されるアルコールと、式(IX)

(式中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、Mは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるカルボン酸とをエステル化反応させて、式(V)または式(VI)で示される塩を得る方法などが挙げられる。
ここで、Q1、Q2としてはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3である場合が好ましく、フッ素原子である場合がさらに好ましい。
【0044】
別法としては、式(VII)または式(VIII)で示されるアルコールと
式(X)

で示されるカルボン酸とをエステル化反応した後、MOHで加水分解して式(V)または式(VI)で示される塩を得る方法もある。(Mは、Li、Na、K又はAgを表す。) ここで、Q1、Q2としてはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3である場合が好ましく、フッ素原子である場合がさらに好ましい。
【0045】
前記エステル化反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中にて、20℃〜200℃程度の温度範囲、好ましくは、50℃〜150℃程度の温度範囲で攪拌して行えばよい。エステル化反応においては、通常は酸触媒としてp−トルエンスルホン酸などの有機酸及び/又は硫酸等の無機酸を添加する。あるいは脱水剤として1,1’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等を添加してもよい。
酸触媒を用いたエステル化反応は、ディーンスターク装置を用いるなどして、脱水しながら実施すると、反応時間が短縮化される傾向があることから好ましい。
エステル化反応における式(IX)で示されるカルボン酸の使用量としては、式(VII)または式(VIII)で示されるアルコール1モルに対して、0.2〜3モル程度、好ましくは0.5〜2モル程度である。エステル化反応における酸触媒は式(VII)または式(VIII)で示されるアルコール1モルに対して、触媒量でも溶媒に相当する量でもよく、通常、0.001モル程度〜5モル程度である。エステル化反応における脱水剤は式(VII)または式(VIII)で示されるアルコール1モルに対して、0.2〜5モル程度、好ましくは0.5〜3モル程度である。
【0046】
さらに、式(I)または式(V)で示される塩を還元して式(II)または式(VI)で示される塩を得る方法もある。
【0047】
前記還元反応は、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼンなどの溶媒中にて、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、トリ第二ブチル水素化ホウ素リチウム、ボランなどの水素化ホウ素化合物、リチウムトリt−ブトキシアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどの水素化アルミニウム化合物、Et3SiH、Ph2SiH2などの有機水素化ケイ素化合物、Bu3SnHなどの有機水素化スズ化合物といった還元剤を用いることができる。反応温度は、−80℃〜100℃程度の温度範囲、好ましくは、−10℃〜60℃程度の温度範囲で攪拌して行えばよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、式(I)または式(II)で示される塩と樹脂とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂は酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した該樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂である。
式(I)または式(II)で示される塩は、酸発生剤として用いられ、露光により生じた酸は、樹脂中の基で酸に不安定な基に対して触媒的に作用して開裂し、樹脂はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。かかる組成物は化学増幅型ポジ型レジスト組成物として好適である。
【0049】
酸に不安定な基としては、エーテル結合のα位が4級炭素原子であるアルキルエステルを有する基、脂環式エステルなどのカルボン酸エステルを有する基、エーテル結合のα位が4級炭素原子であるラクトン環を有する基などが挙げられる。
ここで、4級炭素原子とは、水素原子以外の置換基と結合していて水素とは結合していない炭素原子を意味し、酸に不安定な基としては、エーテル結合のα位の炭素原子が3つの炭素原子と結合した4級炭素原子であることが好ましい。
【0050】
酸に不安定な基の1種であるカルボン酸エステルを有する基を−COORのRエステルとして例示すると(−COO−C(CH33 をtert−ブチルエステルという形式で称する。)、tert−ブチルエステルに代表されるエーテル結合のα位が4級炭素原子であるアルキルエステル;メトキシメチルエステル、エトキシメチルエステル、1−エトキシエチルエステル、1−イソブトキシエチルエステル、1−イソプロポキシエチルエステル、1−エトキシプロピルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)エチルエステル、1−(2−アセトキシエトキシ)エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、テトラヒドロ−2−フリルエステル及びテトラヒドロ−2−ピラニルエステルなどのアセタール型エステル;イソボルニルエステル及び1−アルキルシクロアルキルエステル、2−アルキル−2−アダマンチルエステル、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルエステルなどのエーテル結合のα位が4級炭素原子である脂環式エステルなどが挙げられる。
【0051】
このようなカルボン酸エステルを有する基としては、(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルを有する基が挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂組成物の樹脂は、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合とを有するモノマーを付加重合して製造することができる。
かかるモノマーとしては、酸に不安定な基として、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル基などのような脂環式構造などの嵩高い基を含むモノマーが、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
具体的な嵩高い基を含むモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−アルキル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなどが挙げられる。
【0053】
とりわけ(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルやα−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルをモノマーとして用いた場合は、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0054】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−n−ブチル−2−アダマンチルなどが挙げられ、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、α−クロロアクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。
【0055】
これらの中でも(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル又は(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチルを用いた場合、得られるレジストの感度が優れ耐熱性にも優れる傾向があることから好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは、通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0057】
本発明に用いられる樹脂は、酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位に加えて、酸に安定なモノマーに由来する構造単位を含んでいてもよい。ここで、酸に安定なモノマーに由来する構造とは、本発明の塩(I)または塩(II)によって開裂しない構造を意味する。
具体的には、アクリル酸やメタクリル酸のような遊離のカルボン酸基を有するモノマーに由来する構造単位、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物に由来する構造単位、2−ノルボルネンに由来する構造単位、(メタ)アクリロニトリルに由来する構造単位、エーテル結合のα位が2級炭素原子または3級炭素原子のアルキルエステルや1−アダマンチルエステルである(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する構造単位、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンに由来する構造単位などを挙げることができる。尚、1−アダマンチルエステルは、エーテル結合のα位が4級炭素原子であるが、酸に安定な基であり、1−アダマンチルエステルには水酸基などが結合していてもよい。
【0058】
具体的な酸に安定なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、α−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、式(a)、(b)、ヒドロキシスチレン、ノルボルネン(c)などの分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物、無水マレイン酸(d)などの脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸(e)などが例示される。
【0059】
これらの中でも、特に、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する構造単位、式(a)で示されるモノマーに由来する構造、及び式(b)で示されるモノマーに由来する構造単位含む樹脂から得られるレジストは、基板への接着性及びレジストの解像性が向上する傾向にあることから好ましい。
【0060】

(式中、R1及びR2は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR4は、互いに独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子を表し、p及びqは、1〜3の整数を表す。pが2または3のときには、R3は互いに異なる基であってもよく、qが2または3のときには、R4は互いに異なる基であってもよい。)
【0061】
(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3、5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルなどのモノマーは、市販されているが、例えば対応するヒドロキシアダマンタンを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。
【0062】
また、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンなどのモノマーは、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライドもしくはメタクリル酸ハライドを反応させることにより製造できる。
【0063】
式(a)、式(b)で示される構造単位を与えるモノマーは、具体的には例えば、次のような水酸基を有する脂環式ラクトンの(メタ)アクリル酸エステル、それらの混合物等が挙げられる。これらのエステルは、例えば対応する水酸基を有する脂環式ラクトンと(メタ)アクリル酸類との反応により製造し得る(例えば特開2000−26446号公報)。
【0064】

【0065】
ここで、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0066】
KrFエキシマレーザー露光の場合は、樹脂の構造単位として、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する構造単位を用いても充分な透過率を得ることができる。このような共重合樹脂を得る場合は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン、及びスチレンをラジカル重合した後、酸によって脱アセチルすることによって得ることができる。
【0067】
また、2−ノルボルネンに由来する構造単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環式骨格を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。2−ノルボルネンに由来する構造単位は、例えば対応する2−ノルボルネンの他に無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、ノルボルネン構造の二重結合が開いて形成されるものは式(c)で表すことができ、無水マレイン酸無水物及び無水イタコン酸無水物の二重結合が開いて形成されるものはそれぞれ式(d)及び式(e)で表すことができる。
【0068】

【0069】
ここで、前記式(c)中のR5及び/又はR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシル基、シアノ基もしくは−COOU(Uはアルコール残基である)を表すか、あるいは、R5及びR6が結合して、−C(=O)OC(=O)−で示されるカルボン酸無水物残基を表す。
5及び/又はR6が基−COOUである場合は、カルボキシルがエステルとなったものであり、Uに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル基、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イル基などを挙げることができる。ここで、該アルキル基は、水酸基や脂環式炭化水素残基などが置換基として結合していてもよい。
5及び/又はR6がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、水酸基が結合したアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0070】
このように、酸に安定な構造単位を与えるモノマーである、式(c)で示されるノルボネン構造の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
2−ノルボルネン、
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0071】
なお、式(c)中のR5及び/又はR6の−COOUのUが、エーテル結合のα位が4級炭素原子である脂環式エステルなどの酸に不安定な基であれば、ノルボルネン構造を有するといえども、酸に不安定な基を有する構造単位である。ノルボルネン構造と酸に不安定な基を含むモノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが例示される。
【0072】
本発明の樹脂組成物で用いる樹脂は、パターニング露光用の放射線の種類や酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、通常、樹脂における酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量を10〜80モル%の範囲に調整する。
【0073】
そして、酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位として特に、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルに由来する構造単位を含む場合は、該構造単位が樹脂を構成する全構造単位のうち15モル%以上となると、樹脂が脂環基を有するために頑丈な構造となり、与えるレジストのドライエッチング耐性の面で有利である。
【0074】
なお、分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をモノマーとする場合には、これらは付加重合しにくい傾向があるので、この点を考慮し、これらは過剰に使用することが好ましい。
【0075】
さらに、用いられるモノマーとしてはオレフィン性二重結合が同じでも酸に不安定な基が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基が同じでもオレフィン性二重結合が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合との組合せが異なるモノマーを併用してもよい。
【0076】
また、本発明の樹脂組成物を化学増幅型レジスト組成物として用いる場合、塩基性化合物、好ましくは、塩基性含窒素有機化合物、とりわけ好ましくはアミン又はアンモニウム塩を含有させる。塩基性化合物をクエンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良することができる。クエンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。
【0077】

【0078】
式中、R11、R12及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。更に、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個の炭素数を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に1〜4個の炭素数を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0079】
13、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有し、該アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
更に、該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個程度の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0080】
16は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有する。更に該アルキル基又はシクロアルキル基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0081】
17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。更に、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0082】
Wは、アルキレン基、カルボニル基、イミノ基、スルフィド基又はジスルフィド基を表す。該アルキレン基は、好ましくは2〜6程度の炭素原子を有する。
また、R11〜R20において、直鎖構造と分岐構造の両方をとり得るものについては、そのいずれでもよい。
【0083】
このような化合物として、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、1−又は2−ナフチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4′−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−イソプロピルアニリン、イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン、2,2′−ジピリジルアミン、ジ−2−ピリジルケトン、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジルオキシ)エタン、4,4′−ジピリジルスルフィド、4,4′−ジピリジルジスルフィド、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、2,2′−ジピコリルアミン、3,3′−ジピコリルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称:コリン)などを挙げることができる。
【0084】
さらには、特開平11−52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物をクエンチャーとすることもできる。
【0085】
本発明の組成物は、その全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%程度、そして酸発生剤を0.1〜20重量%程度の範囲で含有することが好ましい。
また、化学増幅型レジスト組成物としてクエンチャーである塩基性化合物を用いる場合は、レジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。
レジスト組成物としては、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有することもできる。
【0086】
本発明のレジスト組成物は、通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液組成物とされ、シリコンウェハーなどの基体上に、スピンコーティングなどの通常工業的に用いられている方法によって塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で通常工業的に用いられている溶剤が使用できる。
【0087】
例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0088】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【実施例】
【0089】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムはTSKgel Multipore HXL−M3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
また、化合物の構造はNMR(日本電子製GX−270型またはEX−270型)、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型またはLC/MSD TOF型)で確認した。
【0090】
酸発生剤合成例1:トリフェニルスルホニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(酸発生剤B1)の合成
(1)ジフルオロ(フルオロスルホニル)酢酸メチルエステル100部、イオン交換水250部に、氷浴下、30%水酸化ナトリウム水溶液230部を滴下した。100℃で3時間還流し、冷却後、濃塩酸88部で中和した。得られた溶液を濃縮することによりジフルオロスルホ酢酸 ナトリウム塩を164.8部得た(無機塩含有、純度62.6%)。
(2)ジフルオロスルホ酢酸 ナトリウム塩5.0部(純度62.8%)、4−オキソ−1−アダマンタノール2.6部、エチルベンゼン100部を仕込み、濃硫酸0.8部を加え、30時間加熱還流した。冷却後、濾過、tert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、ジフルオロスルホ酢酸−4−オキソ−1−アダマンチルエステル ナトリウム塩を5.5部得た。1H−NMRによる純度分析の結果、純度35.6%であった。

【0091】
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.84(d,2H,J=13.0Hz);2.00(d,2H,J=11.9Hz);2.29−2.32(m,7H);2.54(s,2H)
【0092】
(3)ジフルオロスルホ酢酸−4−オキソ−1−アダマンチルエステル ナトリウム塩5.4部(純度35.6%)を仕込み、アセトニトリル16部、イオン交換水16部の混合溶媒を加えた。これに、トリフェニルスルホニウム クロライド1.7部、アセトニトリル5部、イオン交換水5部の溶液を添加した。15時間撹拌後、濃縮し、クロロホルム142部で抽出した。有機層をイオン交換水で洗浄し、得られた有機層を濃縮した。濃縮液をtert−ブチルメチルエーテル24部でリパルプすることにより白色固体としてトリフェニルスルホニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(B1)を1.7部得た。

【0093】
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.83(d,2H,J=12.7Hz);2.00(d,2H,J=12.0Hz);2.29−2.32(m,7H);2.53(s,2H);7.75−7.91(m,15H)
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.2(C1815+=263.09)
MS(ESI(−)Spectrum):M− 323.0(C121326-=323.04)
【0094】
酸発生剤合成例2:トリフェニルスルホニウム 4−ヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(酸発生剤B2)の合成
(1)トリフェニルスルホニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(B1)4.69部をアセトニトリル15部に溶解した。そこに水素化ホウ素ナトリウム0.15部をイオン交換水1.51部に溶解した溶液を滴下した。5時間攪拌後、1N塩酸を滴下して、クロロホルム113部で抽出した。イオン交換水で洗浄を繰り返して有機層を濃縮した。アセトニトリルを加えた後、濃縮し、酢酸エチル中に滴下後、ろ過、乾燥して、白色固体としてトリフェニルスルホニウム 4−ヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(B2)を2.20部得た。1H−NMRとLCMSの結果、2成分異性体混合物であった。

【0095】
1H−NMRスペクトルを図1に示す。
【0096】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.0(C1815+=263.09)
MS(ESI(−)Spectrum):M− 325.0(C121326-=325.06)
【0097】
酸発生剤合成例3:1−(2−オキソ−2−フェニルエチル)テトラヒドロチオフェニウム 4−ヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(酸発生剤B3)の合成
(1)ジフルオロスルホ酢酸−4−オキソ−1−アダマンチルエステル ナトリウム塩10.0部(純度55.2%)を仕込み、アセトニトリル30部、イオン交換水20部の混合溶媒を加えた。これに、1−(2−オキソ−2−フェニルエチル)テトラヒドロチオフェニウム ブロミド5.0部、アセトニトリル10部、イオン交換水5部の溶液を添加した。15時間撹拌後、濃縮し、クロロホルム98部で抽出した。有機層をイオン交換水で洗浄し、得られた有機層を濃縮した。濃縮液を酢酸エチル70部でリパルプすることにより白色固体として1−(2−オキソ−2−フェニルエチル)テトラヒドロチオフェニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(B3)を5.2部得た。

【0098】
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.83(d,2H,J=12.5Hz);2.00(d,2H,J=12.0Hz);2.21−2.37(m,11H);2.53(s,2H);3.47−3.62(m,4H);5.31(s,2H);7.63(t,2H,J=7.3Hz);7.78(t,1H,J=7.6Hz);8.01(dd,2H,J=1.5Hz,7.3Hz)MS(ESI(+)Spectrum):M+ 207.1(C1215OS+=207.08)
MS(ESI(−)Spectrum):M− 323.0(C121326-=323.04)
【0099】
比較対照酸発生剤の合成例1:トリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(酸発生剤C1)の合成
(1)ジフルオロ(フルオロスルホニル)酢酸メチルエステル100部、イオン交換水250部に、氷浴下、30%水酸化ナトリウム水溶液230部を滴下した。100℃で3時間還流し、冷却後、濃塩酸88部で中和した。得られた溶液を濃縮することによりジフルオロスルホ酢酸 ナトリウム塩を164.8部得た(無機塩含有、純度62.6%)。
(2)ジフルオロスルホ酢酸 ナトリウム塩39.4部(純度63.5%)、1−アダマンタンメタノール21.0部、ジクロロエタン200部を仕込み、p−トルエンスルホン酸(p−TsOH)24.0部を加え、7時間加熱還流した。その後、濃縮してジクロロエタンを留去し、tert−ブチルメチルエーテル250部添加し、リパルプ後、濾過した。残渣にアセトニトリル250部添加撹拌後ろ過し、濃縮することにより、ジフルオロスルホ酢酸−1−アダマンチルメチルエステル ナトリウム塩を32.8部得た。

【0100】
(3)上記(2)で得られたジフルオロスルホ酢酸−1−アダマンチルメチルエステル ナトリウム塩32.8部を仕込み、イオン交換水100部に溶解させた。この溶液に、トリフェニルスルホニウム クロライド28.3部、メタノール140部溶液を添加した。
15時間撹拌後、濃縮し、クロロホルム200部で2回抽出した。有機層を合わせてイオン交換水で洗浄し、得られた有機層を濃縮した。濃縮液をtert−ブチルメチルエーテル300部添加撹拌後ろ過し、減圧乾燥することにより白色結晶としてトリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(C1)を39.7部得た。

【0101】
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.52(d,6H);1.63(dd,6H);1.93(s,3H);3.81(s,2H);7.76−7.90(m,15H)
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.2(C1815+=263.09)
MS(ESI(−)Spectrum):M− 323.0(C131725-=323.08)
【0102】
樹脂合成例1:樹脂A1の合成
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、及びα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを、5:2.5:2.5のモル比で仕込み、全モノマーに対して2重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて、溶液とした。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して2モル%添加し、80℃で約8時間加熱した。その後、反応液を大量のヘプタンに注いで沈殿させる操作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約 9,200の共重合体を得た。この共重合体は、次式で示される各単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0103】

【0104】
次に、以上の樹脂合成例で得られた樹脂(A1)のほか、以下に示す原料を用いてレジスト組成物を調製し評価を行った。
【0105】
<酸発生剤>
酸発生剤B1:

酸発生剤B2:

酸発生剤C1:

酸発生剤C2:トリフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホナート
<クエンチャー>
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤>
溶剤Y1:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 51.5部
2−ヘプタノン 35.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0106】
実施例1〜2及び比較例1〜2
以下の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0107】
樹脂(種類及び量は表1記載)
酸発生剤(種類及び量は表1記載)
クエンチャー(種類及び量は表1記載)
溶剤(種類は表1記載)
【0108】
シリコンウェハーにBrewer社製の有機反射防止膜用組成物である「ARC−29A−8」を塗布して215℃、60秒の条件でベークすることによって厚さ780Åの有機反射防止膜を形成させ、次いでこの上に、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.25μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」の欄に示す温度で60秒間プリベークした。こうしてレジスト膜を形成したそれぞれのウェハーに、ArFエキシマステッパー〔(株)ニコン製の「NSR ArF」、NA=0.55、2/3Annular〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後は、ホットプレート上にて表1の「PEB」の欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0109】
有機反射防止膜基板上のもので現像後のダークフィールドパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、その結果を表2に示した。なお、ここでいうダークフィールドパターンとは、外側にクロム層(遮光層)をベースとしてライン状にガラス面(透光部)が形成されたレチクルを介した露光及び現像によって得られ、したがって露光現像後は、ラインアンドスペースパターンの周囲のレジスト層が残されるパターンである。
【0110】
解像度:実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。ここでいう実効感度とは、0.13μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で表示している。
プロファイルT/B:0.13μmのライン断面の上辺の長さ(Tと示す)と底辺(Bと示す)の長さの比で表示した。1に近いほどプロファイルが良好であることを表す。
【0111】
〔表1〕
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例No. 樹脂 酸発生剤 クエンチャー 溶剤 PB/PEB
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実施例1 A1/10部 B1/0.25部 Q1/0.0325部 Y1 130℃/130℃
実施例2 A1/10部 B2/0.26部 Q1/0.0325部 Y1 130℃/130℃
───────────────────────────────────────
比較例1 A1/10部 C1/0.26部 Q1/0.0325部 Y1 130℃/130℃
比較例2 A1/10部 C2/0.25部 Q1/0.0325部 Y1 130℃/130℃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0112】
〔表2〕
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例No. 解像度 プロファイル
(μm) T/B
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実施例1 0.12 1.00
実施例2 0.12 1.04
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比較例1 0.13 0.86
比較例2 0.13 0.71
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【0113】
従来は、0.13μmであっても優れた解像度であったが(比較例1及び2)、実施例1及び2によれば、0.12μmと、さらに解像度が向上した。また、得られたレジストは上辺と底辺がほぼ等しいという優れたパターン形状を示す結果であった。
【0114】
参考例1〜3
樹脂として次式で示されるものを10重量部用いて次の組成のレジスト組成物を作製した。

前記樹脂を10重量部、クエンチャーとしてQ1を0.04重量部、溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが110重量部と2−ヘプタノンが35.0重量部とγ−ブチロラクトンが3.5重量部混合された溶剤を用い、さらに酸発生剤としてB1を、参考例1では0.25重量部、参考例2では0.35重量部、参考例3では0.50重量部用い、これら3通りの各成分それぞれを混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、3つのレジスト液を調製した。
3つのレジスト液各々について、直径100mmのシリコンウェハー上に前記レジスト液を用いて、乾燥後の膜厚が0.15μmとなるようにスピンコートにより膜を形成した。膜形成後は、ダイレクトホットプレート上にて、100℃で60秒間プリベークした。
【0115】
こうしてレジスト膜を形成したシリコンウェハーに、超純水を20mL盛り、下記に示す時間(レジスト膜が超純水に浸漬された浸漬時間)毎に水(超純水)をサンプリングした。サンプリングされた水を、LC−MS法(液体クロマトグラム−マススペクトル法)により定量分析し、酸発生剤由来のアニオンとカチオンの溶出量を測定し、溶出量の浸漬時間依存性を調べた。その結果、溶出量が極めて少ないことがわかった。
〔表3〕
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浸漬時間(秒) カチオン溶出量(モル/cm2
参考例1 参考例2 参考例3
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7 5.27×10-13 7.78×10-13 1.39×10-12
12 8.34×10-13 9.62×10-13 1.49×10-12
30 9.19×10-13 1.32×10-12 1.85×10-12
60 2.12×10-12 2.51×10-12 4.27×10-12
120 3.10×10-12 4.31×10-12 6.44×10-12
180 3.62×10-12 5.68×10-12 7.81×10-12
300 4.40×10-12 6.83×10-12 9.46×10-12
600 5.23×10-12 8.00×10-12 1.17×10-11
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浸漬時間(秒) アニオン溶出量(モル/cm2
参考例1 参考例2 参考例3
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7 7.49×10-13 1.21×10-12 1.52×10-12
12 1.05×10-12 1.24×10-12 1.54×10-12
30 1.27×10-12 1.64×10-12
60 1.71×10-12 2.54×10-12 3.05×10-12
120 2.57×10-12 3.91×10-12 4.44×10-12
180 2.90×10-12 4.07×10-12 4.60×10-12
300 3.23×10-12 5.02×10-12 5.40×10-12
600 3.64×10-12 5.22×10-12 6.03×10-12
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また、溶出量の浸漬時間依存性を両対数グラフにプロットすると、ほぼ直線となることがわかったので、溶出量の常用対数を浸漬時間の常用対数に対して直線回帰計算を行い、浸漬時間1秒あたりの溶出量を算出した結果、カチオンについては、参考例1では1.95×10-13モル/(cm2・秒)、参考例2では2.32×10-13モル/(cm2・秒)、参考例3では4.15×10-13モル/(cm2・秒)、アニオンについては、参考例1では3.91×10-13モル/(cm2・秒)、参考例2では5.23×10-13モル/(cm2・秒)、参考例3では5.52×10-13モル/(cm2・秒)となった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の塩は、優れた解像度及びパターン形状を与える化学増幅型ポジ型レジスト組成物用の酸発生剤として好適に用いられ、中でも、ArFやKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィならびにArF液浸露光リソグラフィに好適な化学増幅型ポジ型レジスト組成物用の酸発生剤として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または式(II)で示されることを特徴とする塩と樹脂とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂は酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した該樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。

(式(I)および式(II)中、Q1、Q2は互いに独立にフッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表し、環Xは環Xの一部を形成するように記載された二つの炭素原子とともに形成する炭素数3〜30の、式(I)においては=Oと結合している、式(II)においては−OHと結合している単環式または多環式炭化水素基を表し、A+は有機対イオンを表す。式(I)および式(II)中の環Xは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。)
【請求項2】
1、Q2がそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
1、Q2がフッ素原子である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
+が、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)又は式(IIId)のいずれかで示されるカチオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。

(式(IIIa)中、P1〜P3は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。)

(式(IIIb)中、P4、P5は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。)

(式(IIIc)中、P6、P7は、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。又はP6とP7とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基であってもよい。P8は水素原子を表し、P9は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基もしくは置換されていても良い芳香環基を表すか、又はP8とP9が結合して炭素数3〜12の2価の炭化水素基を表す。ここで、2価の炭化水素基に含まれる炭素原子は、いずれも、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子に置換されていてもよい。)

(式(IIId)中、P10〜P21は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。Bは、硫黄原子又は酸素原子を表す。mは、0又は1を表す。)
【請求項5】
+が、式(IIIe)で示されるカチオンである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。

(式中、P22〜P24は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。)
【請求項6】
環Xが炭素数4〜8のシクロアルキル骨格、アダマンチル骨格、ノルボルナン骨格のいずれかを有する請求項1〜5のいずれかに記載の塩。(いずれの骨格も炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、水酸基又はシアノ基を置換基として含んでいてもよい。)
【請求項7】
式(I)または式(II)で示される塩が式(IVa)または式(IVb)で示される塩である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。

(式中、P25〜P27は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。

【請求項8】
樹脂が嵩高い基及び酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位を含む樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物と塩基性化合物とを含有することを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−181533(P2012−181533A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93652(P2012−93652)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【分割の表示】特願2006−93735(P2006−93735)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】