説明

化学変換に熱を供給する方法、ならびにオレフィン製造方法を利用するプロセスおよびシステム

化学変換プロセスに熱を提供する方法およびシステムが、対応する炭化水素の触媒脱水素化によるオレフィンの製造に、有利に利用される。触媒脱水素化プロセスは、1.0以下であってよい蒸気対油の比率、および比較的低い蒸気過熱器炉温度で動作する、希釈蒸気を利用する。プロセスおよびシステムは、エチルベンゼンの触媒脱水素化によるスチレンの製造に有利に利用される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔背景〕
1.発明の分野
本明細書の発明は、化学変換プロセスに感熱を供給する方法に関し、具体的には、オレフィンを製造するプロセスおよびシステムに関し、さらに具体的には、エチルベンゼンを脱水素化する手段によりスチレンを製造するプロセスおよびシステムに関する。
【0002】
2.関連技術の説明
エチルベンゼンの触媒脱水素化によりスチレンを製造することは、当技術分野では周知である。典型的には、蒸気およびエチルベンゼンを含有する供給材料(feed)が、約600℃〜約650℃の入口温度で反応器中の触媒と接触して、変換を生じさせる。蒸気は、蒸気過熱器で所定の温度まで加熱される。蒸気は、反応に必要な熱の少なくとも一部を供給し、希釈剤として、スチレンおよび水素の分圧を減少させ、それにより、スチレン製造のため、反応平衡をシフトする。
【0003】
Sardinaの米国特許第4,628,136号は、蒸気の存在下でエチルベンゼンからスチレンを製造する脱水素化プロセスを開示している。エチルベンゼンおよび水は、エチルベンゼンまたは水より低い温度で沸騰する共沸混合物を形成する。エチルベンゼン/水供給材料のほとんどは、エチルベンゼン/スチレンスプリッターシステムからの塔頂蒸気(overhead vapor)を濃縮することにより、蒸発する。供給材料流(feed stream)を蒸発させるために使用されるのに必要な蒸気が少なく、エチルベンゼン/スチレンスプリッターの塔頂蒸気を濃縮させるのに必要な冷却水が少ないので、この特徴により、エネルギーが節約される。
【0004】
蒸気対油の質量比、すなわち、供給材料流(「油」)中に含有される蒸気対エチルベンゼンの、重量ベースでの比率は、エチルベンゼンの脱水素化における重要な要素である。過去には、スチレン製造工場は、1.3〜1.7の、蒸気/油の総重量比で稼働した。改善された触媒により、プロセスは、収量またはエチルベンゼン変換を許容可能に減少させた状態で、約1.0の蒸気/油の重量比で作用することができる。
【0005】
1.0以下の蒸気/油の総重量比でシステムに適切な量の熱を供給するため、蒸気過熱器の出口の温度は、950℃まで、またはそれよりさらに高く、上昇されなければならない。しかしながら、927℃超の過熱器温度により、特別で高価な冶金を使用することが必要となる。低い蒸気/油比および低い温度で作動するシステムを有することが、有利となるであろう。
【0006】
〔概要〕
本発明の実施形態では、少なくとも1つの化学反応体を含有する化学変換プロセス流に熱を与える方法が、本明細書で提供される。この方法は、
(a)熱伝達流体を過熱する工程と
(b)過熱された熱伝達流体からプロセス流に熱を伝達する工程と、
(c)熱伝達流体の少なくとも一部を、第1の部分および第2の部分に分割する工程と、
(d)熱伝達流体の第1の部分を加圧する工程と、
(e)熱伝達流体の加圧された第1の部分を過熱工程(a)に再循環させる工程と、
(f)熱伝達流体の第2の部分をプロセス流に導入する工程と、を含む。
【0007】
別の実施形態では、例えば、アルキル化合物(例えば、エタン、プロパン、ブタンなど)およびアルキル芳香族化合物(例えば、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、セルメン(cermene)など)といった、脱水素化を受けることができる分子の少なくとも一部を有する炭化水素を含有する供給材料流の触媒脱水素化によって、オレフィンを製造するプロセスが、本明細書で提供される。このプロセスは、間接的な熱交換により既に加熱されていてよい過熱蒸気から、希釈蒸気および脱水素化され得る炭化水素を含有するプロセス流へと、熱を伝達することを含み、過熱蒸気からの追加の熱は、反応ゾーンで脱水素化され得る炭化水素の少なくとも一部の触媒脱水素化を生じるのに十分であり、熱を伝達した後、過熱蒸気は、使用済みの蒸気になる。使用済みの蒸気は、2つの流れ、すなわち再循環蒸気およびプロセス蒸気に分かれる。再循環蒸気は、サーモコンプレッサーを使用することで加圧される。これは次に駆動蒸気と組み合わせられ、蒸気過熱器内で所定温度まで加熱される。プロセス蒸気は、再加熱されて過熱蒸気を生成し、脱水素反応器に入る前に脱水素化され得る炭化水素を含有する供給材料流と組み合わせられる。最終結果は、反応器内の蒸気/油比を満たすのに必要な蒸気に比べ、より多くの過熱蒸気が熱伝達に利用可能となる。
【0008】
エチルベンゼンの触媒脱水素化によってスチレンを製造するシステムも提供される。
【0009】
本明細書に記載されるプロセスおよびシステムは、有利にも、1.0以下の蒸気/油比で作動できると共に、蒸気過熱器炉ならびに伝達ライン(すなわち、蒸気過熱器炉から熱交換器および反応器に過熱蒸気を伝達し、蒸気過熱器に戻す、配管接続)に対する特殊な冶金の必要性を回避するのに十分低い過熱蒸気温度を必要とする。このスキームは、より高い蒸気/油の質量比で使用されてもよい。
【0010】
さまざまな実施形態が、図面を参照して以下に説明される。
【0011】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
図1を参照すると、化学変換プロセスのプロセス流に、感熱を提供する方法が示される。この方法は、熱伝達流体を用いる。本明細書に記載する化学変換プロセスに好適な熱伝達流体は、蒸気である。
【0012】
熱伝達流体流11が、過熱工程12で過熱されて、過熱された熱伝達流体13を生成する。熱は次に、熱伝達工程14で、過熱された熱伝達流体から、1つまたは複数の反応体化学薬品を含有する化学変換プロセスのプロセス流へ、伝達される。熱伝達工程14からの流出物は、使用済みの熱伝達流体流15である。
【0013】
オプションとして、使用済みの熱伝達流体流15の一部16は、引き出されて、他のプロセスに送られ得る。これもオプションとして、使用済みの熱伝達流体流15の一部17は、引き出されて、従来の圧力増加工程(図示せず)によって過熱工程12へ再循環され得る。図1に概略を述べる方法10は、過熱工程12および熱伝達工程14を含む、1つの輪郭線部分(outlined section)Nを含む。しかしながら、他の実施形態では、本発明の方法は、当技術分野で既知の任意の方法で組み込まれる2つ以上の輪郭線部分Nを含んでもよい。手短に言えば、方法10は、複数の過熱工程12および熱伝達工程14を含むことができる。工程12および14は、同じかまたは異なる設備ユニットで反復されてよい。あるいは、方法10は、輪郭線部分Nなしで行われてもよい。
【0014】
使用済みの熱伝達流体流15の少なくとも一部が、分割工程18で、第1の部分19および第2の部分22に分割される。第1の部分19は、工程20に送られ、ここで、熱伝達流体流が加圧される。加圧工程は、機械的コンプレッサー、または当技術分野で既知の任意の他の手段によって行われることができる。好適なコンプレッサーは、圧縮流体を使用するサーモコンプレッサーである。例えば、高圧圧縮蒸気が、サーモコンプレッサーに導入されて、比較的低い圧力の、使用済みの熱伝達蒸気15の第1の部分19を加圧する。圧縮蒸気21(使用済みの蒸気として導入される蒸気、および圧縮蒸気として導入される蒸気を含む)が、次に、再循環され、過熱工程12で再加熱される。圧縮蒸気の量は、システムから引き出される蒸気を補うように調節される。
【0015】
使用済みの熱伝達流体15の第2の部分22は、化学変換プロセスのプロセス流Cに導入される。オプションとして、熱伝達流体の第2の部分22は、第2の過熱工程23で再加熱されてよい。本明細書に記載する方法は、有利なことに、以下に記載するような脱水素化プロセスに利用される。
【0016】
本発明の脱水素化プロセスは、対応する炭化水素の脱水素化による、オレフィン炭化水素の製造に関する。蒸気が、希釈剤として使用され、吸熱性である脱水素化反応用の熱の一部の供給源(source of part of the heat)を提供する。好ましくは、2つの反応器を使用する。反応器は、代わりに、軸流反応器または半径流反応器または並流反応器であってよい。このような反応器は、当技術分野で既知である。
【0017】
本明細書のプロセスおよびシステムは、蒸気を希釈剤および熱伝達媒体として利用する任意の脱水素化プロセスに使用され得るが、本明細書に記載されるテクノロジーは、エチルベンゼンからのスチレンの製造に特に有利であり、スチレン製造について本明細書では例示されている。本発明が使用され得る他のプロセスには、エチルトルエンからのビニルトルエンの製造、プロピレンへのプロパンの脱水素化、および1-ブテン、2-ブテン、もしくはブタジエンなどのC化合物へのブタンの脱水素化が含まれる。
【0018】
弁、配管、インジケーターおよび制御装置などといった、特定の設備が、説明を容易にするため図面から省略されていること、ならびに、そのような設備の適切な設置は当業者の範囲内と考えられることが、理解される。
【0019】
次に図2を参照すると、脱水素化システム100の供給材料Fは、エチルベンゼンおよび一次蒸気を含む。供給材料の蒸気対油(「S/O」)の比率は、共沸組成の供給材料については、約1.0以下、好ましくは約0.45〜0.55、さらに好ましくは約0.49〜約0.51である。
【0020】
共沸組成で供給材料を有することの利点は、エチルベンゼン−水の異種共沸混合物が、絶対単位で(absolute)9.24×10Pa(693mmHg)の典型的な動作圧力で、約92℃で沸騰することであり、この温度は、その圧力での、水またはエチルベンゼンの沸点より低い。したがって、供給材料の蒸発が促進される。供給材料の蒸発は、エチルベンゼン/スチレンモノマースプリッター(「EB/SMスプリッター」)の濃縮システムからの熱伝達により、達成され得る。
【0021】
次に図3を参照すると、EB/SMスプリッターD−1は、従来の蒸留カラムであり、この中で、脱水素化システム100からの未精製スチレン生成物Pが、スチレンモノマーに富む流れSMと、より軽い成分の、エチルベンゼンEBのオーバーヘッド(overhead of ethylbenzene EB)と、低濃度のSMと、に分けられる。オーバーヘッドは、エチルベンゼン/水の供給材料混合物を冷却剤として使用することにより、コンデンサC−1で部分的に濃縮され、それによって、熱を供給材料Fに伝達し、供給材料Fを蒸発させる。供給材料の水成分は、プロセス水など、任意の適切な供給源からのものであってよい。下部の流れは、再沸器H−5を通る再循環流と、スチレンモノマーに富む生成物流SMと、に分けられる。熱の一部を拒絶するために追加のコンデンサがあってもよい。例えば、熱は、冷却水に対して拒絶され得る。
【0022】
再び図2を参照すると、ほぼ92℃でコンデンサC−1から出てくる供給材料Fは、ライン101を通って、供給材料流出物交換器E−1に流れ、供給材料流出物交換器では、供給材料は約500℃〜約560℃に加熱され、ライン103を通って流れ、その際、過熱蒸気の流れ130と結合する。流れ130は、約800℃〜約86O℃の温度であり、そのような割合で供給材料Fと混合され、触媒が作業(run)の開始時にあるときに、約600℃〜約620℃の温度を有する反応器R-1に、反応体プロセス流102を提供する。反応器R−1は、それに関連する熱交換器H−3を含み、熱は、約800℃〜約92O℃の温度の過熱蒸気の流れ126から、反応体流102へ伝達される。熱交換器H−3は、好ましくは対向流熱交換器であり、反応容器R−1の内側または反応容器R−1の外側であってよい(不図示)。十分な熱がプロセス流102に提供され、エチルベンゼン成分の脱水素化を生じる。典型的には、エチルベンゼンの脱水素化は、約610℃〜約65O℃の入口温度で行われるが、この範囲外の温度もまた適切であり得る。供給材料への蒸気の追加により、脱水素化反応は、約0.8〜約1.7の範囲、好ましくは1.15以下、さらに好ましくは0.90以下の、S/O比で、起こり得る。反応器R−1は、単一の床または多数の床の(single bed or multibed)反応器であってよい。好ましくは、反応器R−1は、従来の半径流反応器であるが、並流反応器または軸流反応器を、代わりに使用することもできる。触媒的に有効な量の従来の触媒、例えば、酸化鉄をベースとしたもの、を反応器R−1中で使用することができる。適切な触媒は、当業者に既知である。
【0023】
加熱されたプロセス流104は、好ましくは約61O℃〜約65O℃の温度で、熱交換器H−3から出てくる。供給材料のエチルベンゼン成分の少なくとも一部は、反応器R−1で脱水素化を受けて、スチレンおよび水素を生成する。いくらかスチレンを含有する反応器R−1の流出物(outflow)106は、約55O℃〜約58O℃の温度で出て、反応器R−1と同じタイプの第2の反応器R−2に導入される。プロセス流106は、熱交換器H−4を通過し、ここで、過熱蒸気流118によって、約610℃〜約650℃の反応温度まで加熱される。加熱されたプロセス流108は、さらなる反応を受ける。第2の反応器R−2の流出流109を使用して、供給材料流出物交換器E−1で供給材料Fを予熱する。供給材料流出物交換器E−1からの生成物Pは、未精製スチレン、および軽い成分(例えば、水素)をいくらか有する、いくらかの未反応エチルベンゼンを含有し、冷却され、部分的に濃縮され、その後、液体が、さらなる精製のため、EB/SMスプリッターD−1(図3)に送られる。
【0024】
主蒸気Sが、ライン110を通ってシステムに導入され、全体的なS/O比を満たすのに必要な蒸気の量と、EB/SMスプリッターD−1のコンデンサC−1で蒸発する蒸気の量との間の差を作り出す。主蒸気Sは、最初は、約170℃〜約190℃の温度、および、約1034.21〜約1103.16kPa(約150〜約160psia)の圧力である。弁50が、蒸気の入力を制御する。蒸気は、蒸気過熱器H−1の対流部分H−2に位置付けられた対流コイル112などの加熱ゾーンを通過し、主蒸気は、約540℃〜560℃の温度、約896.32kPa〜約965.27kPa(約130psia〜約140psia)の圧力で、対流コイル112から出て、ライン114に入る。主蒸気は次に、サーモコンプレッサーT−1に送られ、圧縮蒸気として使用される。サーモコンプレッサーT−1は、蒸気ジェットコンプレッサーであり、これは、約1.0〜約2.5、好ましくは約1.6〜約1.8の圧縮比で動作し、低圧蒸気を高圧に引き上げる。サーモコンプレッサーは既知であり、本発明のシステムに使用するのに適切なサーモコンプレッサーは、例えばニュージャージー州ドーバーのFox Valve Development Corp.、およびマサチューセッツ州ウォルサムのArtisan Industries Inc.など、さまざまなサプライヤーから市販されている。
【0025】
低圧蒸気は、約137.90〜約172.37kPa(約20〜25psia)で、約570℃〜約59O℃の温度で、ライン122を経由してもたらされる。サーモコンプレッサーT−1からの流出物116は、約550℃〜約570℃の温度で、約275.79kPa〜約344.74kPa(約40psia〜約50psia)の圧力である。蒸気は、次に、放射コイル117を通って、蒸気過熱器H−1の3つの部分のうちの1つに導入される。
【0026】
蒸気過熱器H−1は、脱水素化反応に十分な熱を提供するのに十分な過熱温度まで、高圧蒸気を加熱する、電気炉、またはガスおよび/もしくは液体燃料を燃やす炉であってよい。本明細書に記載するシステム100の利点は、蒸気過熱器H−1が約927℃以下、好ましくは900℃未満、より好ましくは890℃未満の温度を有する流出物をもたらすように作動され得ることである。そのような温度で蒸気過熱器を作動させることにより、927℃より高い温度で必要とされるような、高価な特別の合金を過熱器H−1の構築に使用する必要性が回避される。
【0027】
過熱器H−1は、好ましくは、3つの部分に分割され、過熱器の放射エリアの3つの管状コイルに適応する。
【0028】
過熱器からの流出物流118は、約850℃〜約900℃の温度、および約172.37kPa〜約241.32kPa(約25psia〜約35psia)の圧力で、蒸気を、反応器R−2の熱交換器H−4に運び、それによって、反応器R−1からの流出物である反応体流106に、熱を伝達する。熱交換器H−4からの蒸気流出物である流れ120は、約570℃〜約600℃の温度、および約165.47kPa〜約193.05kPa(約24psia〜28psia)の圧力である。流れ120の第1の部分、すなわち流れ122は、サーモコンプレッサーT−1に再循環して戻され、流れ120の第2の部分、すなわち流れ124は、蒸気過熱器H−1の放射コイル125まで流れて戻る。ライン124を通って流れる蒸気の部分は、放射コイル125で加熱され、約840℃〜約860℃の温度でライン126を経由して出てくる。蒸気は次に、反応器R−1と関連する熱交換器H−3に運ばれ、そこで、熱を反応体流102に伝達する。
【0029】
蒸気は、約62O℃〜約640℃の温度で熱交換器H−3から出て、ライン128を経由して蒸気過熱器H−1に戻り、そこで、放射コイル129を通過し、約840℃〜約860℃の温度および約82.74kPa〜約103.42kPa(約12psia〜約15psia)の圧力で、過熱蒸気としてライン130を経由して出てくる。ライン130を通って流れる蒸気は、その際、ライン103からの蒸発した供給材料Fと混合され、組み合わせられた流れ102は、熱交換器H−3を通され、反応器R−1に導入される。
【0030】
図2Aを参照すると、代替的なプロセス100Aが例示され、このプロセスは、プロセス100と同様であるが、以下の例外がある:流れ124、126および128が除外されている;反応器R−1に関連する加熱器H‐3がない;流れ130が直接R−1に導入される;流れ128が流れ120から分裂する。
【0031】
さらに具体的には、エチルベンゼンと水との蒸発共沸混合物を含有する供給材料流Fが、前述したように、EB/SMスプリッターD−1で蒸発する。蒸発および加熱された供給材料流は、ライン103を経由して送られ、過熱蒸気流と組み合わせられて、流体流102を提供する。この流れは、反応器R−1の第1の反応ゾーンに入り、ここで、脱水素化触媒に接触し、第1の変換段階を受けて、少なくともいくらかのスチレンを生成する。流出物106は、反応器R−1から出て、逆流熱交換器H−4で加熱され、反応器R−2の第2の反応ゾーンに入る。流体流は、脱水素化触媒と接触し、第2の変換段階(second stage conversion)を受けて、出口109を通って反応器を出るスチレンを含有する流れ108を作り出す。流出物流109を使用して、供給材料(fees)流出物交換器E−1で供給材料流Fを予熱する。第2の反応器R−2の流出物流109を使用して、供給材料流出物交換器E−1で供給材料Fを予熱する。供給材料流出物交換器E−1からの生成物Pは、未精製スチレン、およびいくらかの軽い成分(例えば、水素)を有するいくらかの未反応エチルベンゼンを含有し、冷却され、部分的に濃縮され、液体は次に、さらなる精製のため、EB/SMスプリッターD−1(図3)に送られる。
【0032】
過熱蒸気の流れが、ライン118を経由して逆流熱交換器H−4へ循環され、流出物流106に伝達される熱を提供する。熱交換器H−4からライン120を経由して出てくる使用済みの蒸気は、第1の部分122と、第2の部分128とに分けられる。使用済みの蒸気の第1の部分122は、サーモコンプレッサーT−1に送られる。流れ114の主蒸気Sは、サーモコンプレッサーを通して送られ、対流コイル112を通じて過熱器H−1により第1の部分122を加圧する。サーモコンプレッサーT−1からの流出物116は、次に蒸気過熱器H−1で加熱されて、流れ118を提供し、この流れ118は、循環して熱交換器H−4に戻る。
【0033】
使用済みの蒸気の第2の部分128は、蒸気過熱器H−1に送られ、ここで、コイル129により再加熱される。蒸気過熱器から出る過熱蒸気130は、次に、供給材料流と組み合わせられて、反応器R−1に送られる。
【0034】
実施例1
本発明の特徴は、図2に示すシステムの符号を参照する次の予言的実施例(prophetic example)で以下に説明される。
【0035】
162,648kg/時間の供給材料流Fを提供する。この供給材料流は、0.493のS/O比を有するエチルベンゼンと水との蒸発共沸混合物を含有する。蒸発および加熱された供給材料流103は、549℃の温度、および76.53kPa(11.1psia)の圧力である。供給材料流は、849℃および89.63kPa(13psia)で、44,343kg/時間の過熱蒸気(130)と組み合わせられて、0.9のS/O比で206,991kg/時間の流体流102をもたらす。この流れは、逆流熱交換器H‐3で加熱され、650℃および53.57kPa(7.77psia)で反応器R−1の第1の反応ゾーンに入り、ここで、脱水素化触媒に接触し、第1の変換段階を受けて、少なくともいくらかのスチレンを生成する。流出物106は、560℃および47.92kPa(6.95psia)で反応器R−1から出て、逆流熱交換器H−4で加熱され、650℃で反応器R−2の第2の反応ゾーンに入る。流体流は脱水素化触媒と接触し、第2の変換段階を受けて、スチレンを含有する生成物流を作り出す。
【0036】
889℃および213.74kPa(31psia)での、66,511kg/時間の過熱蒸気の、ライン118における流れは、逆流熱交換器H−4に循環して、流出物流106に伝達される熱を提供する。熱交換器H−4から出てくる使用済みの蒸気は、22,168kg/時間の第1の部分122と、44,343kg/時間の第2の部分124とに分割される。583℃および168.92kPa(24.5psia)の、使用済みの蒸気の第1の部分122は、サーモコンプレッサー(T−1)に送られる。549℃および903.21kPa(131psia)の、44,343kg/時間の主蒸気の、ライン114における流れは、サーモコンプレッサーを通して送られ、第1の部分122を加圧する。サーモコンプレッサーからの66,511kg/時間の蒸気の流出ライン116は、559℃および280.96kPa(40.75psia)であり、これは、1.66の圧縮比に対応している。流出物116は次に、蒸気過熱器H−1で加熱されて、流れ118を提供し、この流れ118は、循環して熱交換器H−4に戻る。
【0037】
44,343kg/時間の使用済みの蒸気の第2の部分124は、蒸気過熱器H−1で加熱される。過熱器からの流出物126は、850℃および153.41kPa(22.25psia)で熱交換器H‐3に送られて、流体流102に伝達される熱を提供する。使用済みの蒸気128は、631℃および129.21kPa(18.74psia)で熱交換器H‐3から出て、蒸気過熱器H−1に送られ、ここで、850℃の温度まで再加熱される。蒸気過熱器から出る過熱蒸気130は、次に、供給材料流と組み合わせられて、反応器R−1へ送られる。
【0038】
2つの反応器にわたるエチルベンゼンの全体的な変換は、約62.5%で、約94.1%のスチレンのモル選択度(molar selectivity)である。
【0039】
実施例2
本発明の特徴は、図2Aに示されるシステムの符号を参照する次の予言的実施例で以下に例示される。
【0040】
193,775kg/時間の供給材料流Fを提供する。供給材料流は、0.493のS/O比を有するエチルベンゼンと水との蒸発共沸混合物を含有する。蒸発および加熱された供給材料流103は、537℃の温度、および74.46kPa(10.8psia)の圧力である。供給材料流は、890℃および68.95kPa(10psia)で65,803kg/時間の過熱蒸気130と組み合わせられて、1.0のS/O比で、259,576kg/時間の流体流102を提供する。この流れは、62O℃および56.54kPa(8.2psia)で反応器R−1の第1の反応ゾーンに入り、ここで、脱水素化触媒に接触し、第1の変換段階を受けて、少なくともいくらかのスチレンを作り出す。流出物106は、534℃および50.33kPa(7.3psia)で反応器R−1から出て、逆流熱交換器H−4で加熱され、625℃で反応器R−2の第2の反応ゾーンに入る。流体流は、脱水素化触媒と接触し、第2の変換段階を受けて、スチレンを含有する生成物流を作り出す。
【0041】
887℃および158.58kPa(23psia)の、84,438kg/時間の過熱蒸気の流れ118は、逆流熱交換器H−4へ循環され、流出物流106に伝達される熱を提供する。熱交換器H−4から出る使用済みの蒸気は、18,636kg/時間の第1の部分122と、65,802kg/時間の第2の部分128とに分割される。581℃および121.35kPa(17.6psia)の使用済みの蒸気の第1の部分122は、サーモコンプレッサーT−1に送られる。700℃および917.00kPa(133psia)の、65,802kg/時間の主蒸気の流れ114は、サーモコンプレッサーを通して送られ、第1の部分122を加圧する。サーモコンプレッサーからの84,438kg/時間の蒸気の流出物116は、673℃および211.67kPa(30.7psia)で、これは1.7の圧縮比に対応する。流出物116は次に、蒸気過熱器H−1で加熱されて、流れ118をもたらし、流れ118は、循環して熱交換器H−4に戻る。
【0042】
65,802kg/時間の使用済みの蒸気の第2の部分128は、蒸気過熱器H−1に送られ、ここで、890℃の温度まで再加熱される。蒸気過熱器から出る過熱蒸気130は、次に、供給材料流と組み合わせられて、反応器R−1へ送られる。
【0043】
2つの反応器にわたるエチルベンゼンの全体的な変換は、約62.5%であり、94.3%のスチレンのモル選択度である。
【0044】
実施例3
本発明の特徴は、図2に示すシステムの符号を参照する次の予言的実施例において、以下に説明される。
【0045】
159,226kg/時間の供給材料流Fを提供する。供給材料流は、0.493のS/O比を有するエチルベンゼンと水との蒸発共沸混合物を含有する。蒸発および加熱された供給材料流103は、531℃の温度、および73.08kPa(10.6psia)の圧力である。供給材料流は、852℃および70.33kPa(10.2psia)で70,087kg/時間の過熱蒸気130と組み合わせられて、1.15のS/O比で229,312kg/時間の流体流104をもたらす。この流れは、621℃および55.16kPa(8.0psia)で反応器R−1の第1の反応ゾーンに入り、ここで、脱水素化触媒と接触し、第1の変換段階を受けて、少なくともいくらかのスチレンを生成する。流出物106は、54O℃および48.95kPa(7.1psia)で反応器R−1から出て、逆流熱交換器H−4で加熱され、626℃で反応器R−2の第2の反応ゾーンに入る。流体流は、脱水素化触媒と接触し、第2の変換段階受けて、スチレンを含有する生成物流を作り出す。
【0046】
794℃および144.79kPa(21psia)の、106,646kg/時間の過熱蒸気の流れ118は、逆流熱交換器H−4に循環され、流出物流106に伝達される熱を提供する。熱交換器H−4から出る使用済みの蒸気は、36,560kg/時間の第1の部分122と、70,087kg/時間の第2の部分128とに分割される。587℃および122.73kPa(17.8psia)の、使用済みの蒸気の第1の部分122は、サーモコンプレッサーT−1に送られる。700℃および917.00kPa(133psia)の、70,086kg/時間の主蒸気の流れ114は、サーモコンプレッサーを通して送られて、第1の部分122を加圧する。サーモコンプレッサーからの106,646kg/時間の蒸気の流出物116は、661℃および211.67kPa(30.7psia)であり、これは、1.7の圧縮比に対応する。流出物116は次に、蒸気過熱器H−1で加熱されて、流れ118をもたらし、流れ118は、循環して熱交換器H−4に戻る。
【0047】
70,087kg/時間の使用済みの蒸気の第2の部分128は、蒸気過熱器H−1に送られ、ここで、852℃の温度まで再加熱される。蒸気過熱器から出る過熱蒸気130は次に、供給材料流Fと組み合わせられ、反応器R−1に送られる。
【0048】
2つの反応器にわたるエチルベンゼンの全体的な変換は、約62.6%で、約94.9%のスチレンのモル選択度である。
【0049】
実施例3は、実施例2より高い蒸気消費量を有する。しかしながら、実施例3では、流れ118は、触媒が作業の終わりにあっても、815℃を下回る。したがって、このラインの構成材料は、Alloy800Hなどの、いくつかのより高価な材料の代わりに、304Hステンレス鋼であってよい。実施例3では、Alloy800Hを使用した配管の現在の総コストは、約900,000ドルである。対照的に、304Hステンレス鋼を使用した現在の総コストは、230,000ドルである。実施例3の新規なフロースキームを利用することによって、配管材料のみの正味の節約額は、670,000ドルになる。
【0050】
前述の説明は、多くの細目を含むが、これらの細目は、発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、単に、発明の好適な実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、請求項により定められる本発明の範囲および主旨内で、多くの他の可能性を構想するであろう。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも1つの化学反応体を含む化学変換プロセス流に熱を提供する方法において、
a)熱伝達流体を過熱する工程と、
b)過熱された前記熱伝達流体からプロセス流へ熱を伝達する工程と、
c)前記熱伝達流体の少なくとも一部を、第1の部分および第2の部分に分割する工程と、
d)熱伝達流体の前記第1の部分を加圧する工程と、
e)熱伝達流体の加圧された前記第1の部分を過熱工程(a)に再循環させる工程と、
f)前記熱伝達流体の前記第2の部分を前記プロセス流に導入する工程と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記熱を伝達する工程(b)の後、かつ前記分割する工程(c)の前に、前記熱伝達流体の少なくとも第3の部分を取り除く工程、
をさらに含む、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記再循環させる工程は、複数回、行われる、方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
工程(f)の前に熱伝達流体の前記第2の部分を過熱する工程、
をさらに含む、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
工程(f)の前に熱伝達流体の前記第2の部分を過熱する工程、
をさらに含む、方法。
【0052】
(6) 実施態様1に記載の方法において、
前記熱伝達流体の前記第1の部分を加圧する工程(d)は、熱伝達流体の前記第1の部分をサーモコンプレッサーに導入する工程、および圧縮流体を前記サーモコンプレッサーに導入する工程を含み、前記圧縮流体は、熱伝達流体の前記第1の部分より圧力が高い、方法。
(7) 実施態様6に記載の方法において、
前記熱伝達流体および圧縮流体は、蒸気である、方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記熱伝達流体は、蒸気である、方法。
(9) 実施態様8に記載の方法において、
前記化学変換プロセスは、脱水素化を含み、前記化学反応体は、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロパン、およびブタンからなる群から選択された化合物である、方法。
(10) 実施態様9に記載の方法において、
前記化学変換プロセスは、エチルベンゼンの前記脱水素化によるスチレンの製造を含む、方法。
【0053】
(11) 炭化水素の触媒脱水素化によりオレフィンを製造する方法において、
a)複数の加熱ゾーンを含む加熱器で蒸気供給材料流を過熱する工程と、
b)過熱蒸気からの熱を、希釈蒸気および前記炭化水素を含むプロセス流に伝達する工程であって、前記熱は、反応ゾーンにおいて前記炭化水素の少なくとも一部の触媒脱水素化を生じるのに十分であり、前記熱を伝達した後、前記過熱蒸気は、使用済みの蒸気となる、工程と、
c)前記使用済みの流れを、第1の部分および第2の部分に分割する工程と、
d)前記使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する工程と、
e)前記使用済みの蒸気の加圧された前記第1の部分を、前記加熱器の第1の加熱ゾーンへ再循環させる工程と、
f)前記第2の部分を、前記加熱器の第2の加熱ゾーンまで、前記加熱器の異なる部分へ再循環させる工程と、
g)前記第2の加熱ゾーンで過熱蒸気を再生成するために前記使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
h)前記過熱蒸気の少なくとも一部を、前記プロセス流と組み合わせる工程と、
を含む、方法。
(12) 実施態様11に記載の方法において、
前記熱を伝達する工程は、前記反応ゾーンと関連する少なくとも1つの熱交換器で実行される、方法。
(13) 実施態様11に記載の方法において、
前記使用済みの蒸気の一部を加圧する工程は、
使用済みの蒸気の前記一部を、サーモコンプレッサーに導入する工程、および、
圧縮蒸気を前記サーモコンプレッサーに導入する工程、
を含み、前記圧縮蒸気は、前記使用済みの蒸気より圧力が高い、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
製造される前記オレフィンは、スチレンであり、前記炭化水素は、エチルベンゼンである、方法。
(15) 実施態様11に記載の方法において、
製造される前記オレフィンは、スチレンであり、前記炭化水素は、エチルベンゼンである、方法。
【0054】
(16) 蒸気/油の質量比を有する蒸気とエチルベンゼンとの混合物を、脱水素化反応温度で脱水素化触媒と接触させることにより、反応ゾーンでスチレンを製造する方法において、
前記蒸気/油の質量比を1.0以下まで減少させるように、十分な希釈蒸気をエチルベンゼンと組み合わせる工程、
を含み、
815℃未満の温度の過熱蒸気は、前記エチルベンゼンおよび希釈蒸気を反応温度まで上昇させるように十分な熱を伝達するのに使用され、
前記過熱蒸気の少なくとも一部が、前記エチルベンゼンと組み合わせられて、前記希釈蒸気の少なくとも一部を提供する、方法。
(17) 実施態様16に記載の方法において、
前記エチルベンゼンおよび希釈蒸気への熱伝達により生じる、使用済みの蒸気が、加熱器へ送られて、過熱蒸気を再生成する、方法。
(18) 実施態様17に記載の方法において、
前記使用済みの蒸気は、2つの部分に分割され、少なくとも1つの部分は、サーモコンプレッサーで加圧される、方法。
(19) エチルベンゼンの触媒脱水素化によりスチレンを製造する方法において、
a)少なくとも第1および第2の反応ゾーンを提供する工程であって、各反応ゾーンは、それと関連した、触媒的に有効な量の脱水素化触媒を有する、工程と、
b)複数の加熱ゾーンを有する炉を提供する工程と、
c)約0.5以下の蒸気/油の重量比を有する水とエチルベンゼンとの蒸発混合物を含有する供給材料流を提供する工程と、
d)約1.0以下の蒸気/油の重量比を有する流体流を提供するよう、過熱蒸気の第1の流れと前記供給材料流を組み合わせる工程と、
e)第1の流出物をもたらすため、脱水素化反応条件下で、前記第1の反応ゾーンにおいて前記脱水素化触媒と前記流体流を接触させる工程と、
f)前記第2の反応ゾーンと関連する熱伝達ゾーンで、過熱蒸気の第2の流れからの熱を、前記第1の流出物に伝達する工程であって、前記過熱蒸気の第2の流れは、前記第1の流出物にその熱を伝達した後は、使用済みの蒸気の流れになる、工程と、
g)スチレンを含有する生成物流を提供するよう、脱水素化反応条件下で、前記第2の反応ゾーンにおいて脱水素化触媒と加熱された前記第1の流出物を接触させる工程と、
h)使用済みの蒸気の前記流れを、第1および第2の部分に分割する工程と、
i)使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する工程と、
j)前記第2の反応ゾーンと関連する前記熱伝達ゾーンまで上流へ再循環される過熱蒸気の前記第2の流れをもたらすため、前記炉の第1の加熱ゾーンで、使用済みの蒸気の加圧された前記第1の部分を加熱する工程と、
k)過熱蒸気の前記第1の流れをもたらすため、前記炉の第2の加熱ゾーンで、前記使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
を含む、方法。
(20) 実施態様19に記載の方法において、
過熱蒸気の第3の流れをもたらすため、前記炉の第2の加熱ゾーンで加熱される、使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
前記第1の反応ゾーンと関連する加熱ゾーンにおいて、過熱蒸気の前記第3の流れからの熱を、前記流体流に伝達する工程であって、過熱蒸気の前記第3の流れは、前記流体流にその熱を伝達すると、使用済みの蒸気の第2の流れになる、工程と、
供給材料と組み合わせられる過熱蒸気の前記第1の流れをもたらすため、前記炉の第3の加熱ゾーンで、使用済みの蒸気の前記第2の流れを加熱する工程と、
をさらに含む、方法。
【0055】
(21) 実施態様19に記載の方法において、
使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する前記工程は、使用済みの蒸気の前記部分をサーモコンプレッサーに導入する工程、および圧縮蒸気を前記サーモコンプレッサーに導入する工程を含み、前記圧縮蒸気は、前記使用済みの蒸気より圧力が高い、方法。
(22) 実施態様19に記載の方法において、
前記スチレンを含有する生成物流は、精製スチレンを含有する第1の成分、および、エチルベンゼンを含有する第2の成分に分けられる、方法。
(23) 実施態様19に記載の方法において、
前記蒸気/油の比は、約1.15以下であり、前記過熱蒸気は、約815℃以下の温度である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】化学変換プロセスの、プロセスの流れに感熱を供給する方法の、概略的なフローチャートである。
【図2】エチルベンゼンからスチレンを製造するシステムおよびプロセスの概略的なフローチャートである。
【図2A】エチルベンゼンからスチレンを製造するシステムおよびプロセスの代替的な実施形態の概略的なフローチャートである。
【図3】EB/SMスプリッターのコンデンサシステムを使用することによる供給材料の蒸発を示す概略的なフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの化学反応体を含む化学変換プロセス流に熱を提供する方法において、
a)熱伝達流体を過熱する工程と、
b)過熱された前記熱伝達流体からプロセス流へ熱を伝達する工程と、
c)前記熱伝達流体の少なくとも一部を、第1の部分および第2の部分に分割する工程と、
d)熱伝達流体の前記第1の部分を加圧する工程と、
e)熱伝達流体の加圧された前記第1の部分を過熱工程(a)に再循環させる工程と、
f)前記熱伝達流体の前記第2の部分を前記プロセス流に導入する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記熱を伝達する工程(b)の後、かつ前記分割する工程(c)の前に、前記熱伝達流体の少なくとも第3の部分を取り除く工程、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記再循環させる工程は、複数回、行われる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)の前に熱伝達流体の前記第2の部分を過熱する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)の前に熱伝達流体の前記第2の部分を過熱する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記熱伝達流体の前記第1の部分を加圧する工程(d)は、熱伝達流体の前記第1の部分をサーモコンプレッサーに導入する工程、および圧縮流体を前記サーモコンプレッサーに導入する工程を含み、前記圧縮流体は、熱伝達流体の前記第1の部分より圧力が高い、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記熱伝達流体および圧縮流体は、蒸気である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記熱伝達流体は、蒸気である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記化学変換プロセスは、脱水素化を含み、前記化学反応体は、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロパン、およびブタンからなる群から選択された化合物である、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記化学変換プロセスは、エチルベンゼンの前記脱水素化によるスチレンの製造を含む、方法。
【請求項11】
炭化水素の触媒脱水素化によりオレフィンを製造する方法において、
a)複数の加熱ゾーンを含む加熱器で蒸気供給材料流を過熱する工程と、
b)過熱蒸気からの熱を、希釈蒸気および前記炭化水素を含むプロセス流に伝達する工程であって、前記熱は、反応ゾーンにおいて前記炭化水素の少なくとも一部の触媒脱水素化を生じるのに十分であり、前記熱を伝達した後、前記過熱蒸気は、使用済みの蒸気となる、工程と、
c)前記使用済みの流れを、第1の部分および第2の部分に分割する工程と、
d)前記使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する工程と、
e)前記使用済みの蒸気の加圧された前記第1の部分を、前記加熱器の第1の加熱ゾーンへ再循環させる工程と、
f)前記第2の部分を、前記加熱器の第2の加熱ゾーンまで、前記加熱器の異なる部分へ再循環させる工程と、
g)前記第2の加熱ゾーンで過熱蒸気を再生成するために前記使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
h)前記過熱蒸気の少なくとも一部を、前記プロセス流と組み合わせる工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記熱を伝達する工程は、前記反応ゾーンと関連する少なくとも1つの熱交換器で実行される、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、
前記使用済みの蒸気の一部を加圧する工程は、
使用済みの蒸気の前記一部を、サーモコンプレッサーに導入する工程、および、
圧縮蒸気を前記サーモコンプレッサーに導入する工程、
を含み、前記圧縮蒸気は、前記使用済みの蒸気より圧力が高い、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
製造される前記オレフィンは、スチレンであり、前記炭化水素は、エチルベンゼンである、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、
製造される前記オレフィンは、スチレンであり、前記炭化水素は、エチルベンゼンである、方法。
【請求項16】
蒸気/油の質量比を有する蒸気とエチルベンゼンとの混合物を、脱水素化反応温度で脱水素化触媒と接触させることにより、反応ゾーンでスチレンを製造する方法において、
前記蒸気/油の質量比を1.0以下まで減少させるように、十分な希釈蒸気をエチルベンゼンと組み合わせる工程、
を含み、
815℃未満の温度の過熱蒸気は、前記エチルベンゼンおよび希釈蒸気を反応温度まで上昇させるように十分な熱を伝達するのに使用され、
前記過熱蒸気の少なくとも一部が、前記エチルベンゼンと組み合わせられて、前記希釈蒸気の少なくとも一部を提供する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記エチルベンゼンおよび希釈蒸気への熱伝達により生じる、使用済みの蒸気が、加熱器へ送られて、過熱蒸気を再生成する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記使用済みの蒸気は、2つの部分に分割され、少なくとも1つの部分は、サーモコンプレッサーで加圧される、方法。
【請求項19】
エチルベンゼンの触媒脱水素化によりスチレンを製造する方法において、
a)少なくとも第1および第2の反応ゾーンを提供する工程であって、各反応ゾーンは、それと関連した、触媒的に有効な量の脱水素化触媒を有する、工程と、
b)複数の加熱ゾーンを有する炉を提供する工程と、
c)約0.5以下の蒸気/油の重量比を有する水とエチルベンゼンとの蒸発混合物を含有する供給材料流を提供する工程と、
d)約1.0以下の蒸気/油の重量比を有する流体流を提供するよう、過熱蒸気の第1の流れと前記供給材料流を組み合わせる工程と、
e)第1の流出物をもたらすため、脱水素化反応条件下で、前記第1の反応ゾーンにおいて前記脱水素化触媒と前記流体流を接触させる工程と、
f)前記第2の反応ゾーンと関連する熱伝達ゾーンで、過熱蒸気の第2の流れからの熱を、前記第1の流出物に伝達する工程であって、前記過熱蒸気の第2の流れは、前記第1の流出物にその熱を伝達した後は、使用済みの蒸気の流れになる、工程と、
g)スチレンを含有する生成物流を提供するよう、脱水素化反応条件下で、前記第2の反応ゾーンにおいて脱水素化触媒と加熱された前記第1の流出物を接触させる工程と、
h)使用済みの蒸気の前記流れを、第1および第2の部分に分割する工程と、
i)使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する工程と、
j)前記第2の反応ゾーンと関連する前記熱伝達ゾーンまで上流へ再循環される過熱蒸気の前記第2の流れをもたらすため、前記炉の第1の加熱ゾーンで、使用済みの蒸気の加圧された前記第1の部分を加熱する工程と、
k)過熱蒸気の前記第1の流れをもたらすため、前記炉の第2の加熱ゾーンで、前記使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
過熱蒸気の第3の流れをもたらすため、前記炉の第2の加熱ゾーンで加熱される、使用済みの蒸気の前記第2の部分を加熱する工程と、
前記第1の反応ゾーンと関連する加熱ゾーンにおいて、過熱蒸気の前記第3の流れからの熱を、前記流体流に伝達する工程であって、過熱蒸気の前記第3の流れは、前記流体流にその熱を伝達すると、使用済みの蒸気の第2の流れになる、工程と、
供給材料と組み合わせられる過熱蒸気の前記第1の流れをもたらすため、前記炉の第3の加熱ゾーンで、使用済みの蒸気の前記第2の流れを加熱する工程と、
をさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、
使用済みの蒸気の前記第1の部分を加圧する前記工程は、使用済みの蒸気の前記部分をサーモコンプレッサーに導入する工程、および圧縮蒸気を前記サーモコンプレッサーに導入する工程を含み、前記圧縮蒸気は、前記使用済みの蒸気より圧力が高い、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法において、
前記スチレンを含有する生成物流は、精製スチレンを含有する第1の成分、および、エチルベンゼンを含有する第2の成分に分けられる、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法において、
前記蒸気/油の比は、約1.15以下であり、前記過熱蒸気は、約815℃以下の温度である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−520881(P2012−520881A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500840(P2012−500840)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/026910
【国際公開番号】WO2010/107651
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509317874)ラムス テクノロジー インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】LUMMUS TECHNOLOGY INC.
【住所又は居所原語表記】1515 Broad Street,Bloomfield,NJ 07003−3096(US).
【Fターム(参考)】