説明

化学物質検出センサおよび化学物質検出方法

【課題】高感度であり、小型であり、かつ安価な化学物質検出センサおよび化学物質検出方法を提供する。
【解決手段】本発明の一の態様によれば、カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガ2を備えることを特徴とする、特定の化学物質を検出するための化学物質検出センサ1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスジェニックカイコガを備えた化学物質検出センサ、およびトランスジェニックカイコガを用いて行う化学物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の種類を同定しあるいはその濃度を定量化することは、様々な局面において要請されている。例えば、半導体装置の製造プロセスにおいては、製造歩止まりを向上して高品質の半導体装置を製造するために、製造過程にある半導体基板上に付着した有機汚染物質などの化学物質を検出および管理することなどが必要である。
【0003】
このような化学物質を検出する装置としては、例えば、キャビティリングダウン(CRD)方式を用いた検出装置、イオン移動度スペクトル(IMS)方式を用いた検出装置、半導体検出器がある。
【0004】
CRD方式を用いた検出装置は、多重反射を用いて、化学物質の光吸収スペクトルを光学的に検出して、化学物質の検出を行うものである。この検出装置は、高感度であるが、非常に高価であり、かつ巨大であるという問題がある。
【0005】
IMS方式を用いた検出装置は、放射性同位体を用いて化学物質をイオン化し、そのイオンの移動度によって、化学物質の検出を行うものである。この検出装置も、高感度であるが、非常に高価であり、かつ巨大であるという問題がある。また、放射性同位体を扱うため、危険性を伴う。
【0006】
半導体検出器は、気体中に存在する分子を、アルミナ基板上に形成された金属酸化物半導体の表面に吸着させ、金属酸化物半導体の電気伝導度の変化を電気的に検出することにより化学物質の検出を行うものである。この検出器は、比較的安価であるが、感度が低いという問題がある。
【0007】
したがって、高感度、小型および安価の全ての条件を満たす検出装置はまだ開発されていないのが現状である。
【0008】
なお、非特許文献1および非特許文献2には、コナガ由来のフェロモン受容体タンパク質の遺伝子であるPxOR1をボンビコール受容細胞で異所的に発現するトランスジェニックカイコガが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“ACTIVATION OF BOMBYKOL RECEPTOR NEURONS BY ECTOPICALLY EXPRESSED OLFACTORY RECEPTOR TRIGGERS PHEROMONE SEARCHING BEHAVIOR IN MALE SILKMOTHS”, ISOT2008:The 15th International Symposium on Olfaction and Taste, San Francisco, July 21-28, 2008 : Abstracts p189 : Poster Session V #P482
【非特許文献2】櫻井健志等、「種認識における性フェロモン受容体の役割」、応用動物昆虫学会2009、第53回日本応用動物昆虫学会、北海道大学、2009年3月28日−30日、講演予稿集、P85、E225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、高感度であり、小型であり、かつ安価な化学物質検出センサおよび化学物質検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様によれば、カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガを備えることを特徴とする、特定の化学物質を検出するための化学物質検出センサが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガから切り取られた触角と、前記トランスジェニックカイコガの触角に接続された一対の電極と、前記一対の電極と電気的に接続された電位測定器とを備えることを特徴とする、特定の化学物質を検出するための化学物質検出センサが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガの少なくとも触角を用いて、特定の化学物質を検出することを特徴とする、化学物質検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一および他の態様の化学物質検出センサによれば、高感度であり、小型であり、かつ安価な化学物質検出センサを提供することができる。本発明の他の態様の化学物質検出方法によれば、高感度であり、小型であり、かつ安価で行い得る化学物質検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る化学物質検出センサの概略構成図である。
【図2】検出部の一例を示した概略構成図である。
【図3】第2の実施形態に係る化学物質検出センサの概略構成図である。
【図4】第2の実施形態に係る他の箇所に電極を配置した図である。
【図5】実施例1に係るトランスジェニックカイコガおよび比較例1に係るカイコガの11−シス−バクセニルアセテートに対する応答を示したグラフである。
【図6】実施例2に係る球と光学マウスを備える装置を用いて、カイコガが匂い源の探索行動を発現させていることを、目視ではなく、電気的に検知できることを示したグラフである。
【図7】実施例3に係るトランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する応答を示したグラフである。
【図8】実施例3に係る各種化学物質の濃度が1000ng/濾紙のときのトランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する行動発現率を示したグラフである。
【図9】実施例4に係るトランスジェニックカイコガの触角にボンビコールを含む空気を吹き付けたときのトランスジェニックカイコガの挙動を累積回転角度で表したグラフである。
【図10】実施例4に係るトランスジェニックカイコガの触角に11−シス−バクセニルアセテートを含む空気を吹き付けたときのトランスジェニックカイコガの挙動を累積回転角度で表したグラフである。
【図11】実施例5に係るトランスジェニックカイコガのフェロモン感受性感覚子を用いて、トランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する応答を電位で表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明による化学物質検出センサおよび化学物質検出方法について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<化学物質検出センサ>
図1は本実施形態に係る化学物質検出センサの概略構成図であり、図2は検知部の一例を示した概略構成図である。図1に示されるように化学物質検出センサ1は、トランスジェニックカイコガ2を備えるものである。また、図1に示される化学物質検出センサ1は、さらに、トランスジェニックカイコガ2を収容する筺体3と、外気を筺体3内に取り込む吸引ポンプ4、およびトランスジェニックカイコガ2の動作を検知する検知部5とを備えるものである。
【0018】
トランスジェニックカイコガ
トランスジェニックカイコガ2は、カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するものである。
【0019】
「昆虫」とは、動物界、節足動物門、昆虫綱に属する動物である。カイコガ以外の昆虫としては、例えば、原尾目、粘菅目、双尾目、総尾目、蜉蝣目、蜻蛉目、積翅目、欠翅目、直翅目、ナナフシ目、革翅目、蟷螂目、網翅目、シロアリ目、紡脚目、噛虫目、食毛目、シラミ目、アザミウマ目、半翅目、脈翅目、長翅目、毛翅目、カイコガ以外の鱗翅目、鞘翅目、双翅目、膜翅目、隠翅目、撚翅目等に属するものが挙げられる。これらの中でも、鱗翅目はカイコガが属する目であり、また長翅目、隠翅目、毛翅目および双翅目は、カイコガに比較的近い目であるので、カイコガ以外の昆虫としては、長翅目、隠翅目、毛翅目、双翅目および鱗翅目からなる群から選択されるいずれかの目に属する昆虫が好ましい。例えば双翅目短角亜目ハエ下目ショウジョウバエ科に属するキイロショウジョウバエ、双翅目長角亜目カ下目カ科に属するガンビエ種ハマダラカやステファンシ種ハマダラカ、鱗翅目コナガ科に属するコナガ等が挙げられる。
【0020】
カイコガ以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質としては、特に限定されないが、目的とする化学物質がフェロモン物質の場合には、フェロモン物質に対する検知感度が極めて高いことからフェロモン受容体タンパク質が好ましい。
【0021】
例えば、カイコガ以外の昆虫がキイロショウジョウバエの場合、フェロモン受容体タンパク質は配列番号1(別紙)に記載のアミノ酸配列で表わすことができ、このフェロモン受容体タンパク質をコードする遺伝子OR67dは配列番号2(別紙)に記載の塩基配列で表すことができる。
【0022】
なお、これらの受容体タンパク質には、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質の他、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質、(ii)配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子によりコードされ、かつ配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質、または(iii)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質が含まれる。
【0023】
本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の方法により、または天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされたことを意味する。アミノ酸の改変の個数は、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜2個である。
【0024】
受容体タンパク質の改変アミノ酸配列の例は、好ましくは、そのアミノ酸が、1または複数個(好ましくは、1ないし数個あるいは1、2、3、または4個)の保存的置換を有する配列番号1で表されるアミノ酸配列であることができる。
【0025】
本明細書において、「保存的置換」とは、1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0026】
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温下低塩濃度溶液中で行うことを意味し、例えば、0.5×SSC濃度(1×SSC:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)、60℃、15分間の洗浄条件、好ましくは0.5×SSC濃度、0.1%SDS溶液中で60℃、15分間の洗浄条件、を意味する。
【0027】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0028】
本明細書において、塩基配列またはアミノ酸配列についての「同一性」とは、比較される配列間において、各々の配列を構成する塩基またはアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いられる。本明細書において示した「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えばFASTA、BLAST等においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、容易に算出することができる。
【0029】
配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列は、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列であることができる。
【0030】
本明細書において、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するかどうかは配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の発現と関連する生体現象あるいは機能を評価することにより決定することができ、例えば、そのタンパク質を遺伝子組み換え技術により発現させることができるかどうかを評価することにより決定することができる。
【0031】
嗅覚受容体と言うカテゴリに含まれるタンパク質をコードする遺伝子であるならば、上記において例示したものと発現に至る形態が同一であるために機能を発現させることは可能である。したがって、上記において例示したものの他、例えばガンビエ種ハマダラカ由来のAgOR46遺伝子、ステファンシ種ハマダラカ由来のAsteOR15遺伝子、AsteOR30遺伝子、AsteOR46遺伝子、キイロショウジョウバエ由来のDmOR7a遺伝子、DmOR9a遺伝子、DmOR85b遺伝子等を導入してもよい。
【0032】
このような、トランスジェニックカイコガ2は、例えば、マイクロインジェクション法、ウイルス感染を用いた方法等の公知の遺伝子導入技術により得ることができる。これらの中でも、次代への導入遺伝子の伝達効率の点からマイクロインジェクション法が好ましい。
【0033】
具体的には、トランスジェニックカイコガ2は、以下の方法により作製することができる。例えば、野生型のカイコガの性フェロモン受容体に対応する遺伝子であるBmOR1上流配列の下流部に転写制御因子であるGAL4遺伝子を配置させたDNAコンストラクトを作成し、野生型のカイコガの卵のゲノム領域に組み込み、育成する。組み込まれたBmOR1のプロモーターにより、性フェロモン受容細胞でのみGAL4が発現する。
【0034】
また、導入する嗅覚受容体に対応する遺伝子の上流部にUAS(Upstream Activator Sequence)を組み込んだDNAコンストラクトを作成し、野生型のカイコガの卵のゲノム領域に組み込み、育成する。UASはGAL4の認識配列であり、GAL4の存在下においてUASの下流の任意の遺伝子の発現を誘導する。
【0035】
そして、それぞれ育成した、GAL4トランスジェニックカイコガと、UASトランスジェニックカイコガとを交配させて、二重トランスジェニック個体であるトランスジェニックカイコガ2を得る。この方法により作製したトランスジェニックカイコガ2は、GAL4が発現している性フェロモン受容細胞においてのみ、UASの下流に存在する目的の嗅覚受容体を発現させることができる。また、この方法で作製したトランスジェニックカイコガ2においては、一度このカイコガの育成を行なえば、次代以降のカイコガは全て同じトランスジェニックカイコガ2として育成できる。
【0036】
野生型の雄のカイコガは、雌のカイコガから発生されるフェロモン物質である下記式(1)で示されるボンビコール(Bombykol)を特異的に認識し、匂い源の探索行動(フェロモン源定位行動)が発現する。匂い源の探索行動とは、具体的には、普段は静止状態にあるカイコガが、羽ばたきを始め、化学物質の源を探索し動き始める行動のことを指す。この探索行動は、普段の静止状態とは明確に区別し得る。このボンビコールは、カイコガの触角に存在する嗅覚感覚子内にあるボンビコール受容細胞によって受容される。ボンビコールの受容によってボンビコール受容細胞の神経興奮が発生したときだけ匂い源の探索行動が発現する。なお、特異的に認識するとは、特定の化学物質にのみ匂い源の探索行動が発現することを示し、他の化学物質に関してはその探索行動が発現しないことを意味する。したがって、野生型のカイコガはボンビコールでは匂い源の探索行動が発現するが、他の化学物質には探索行動は発現しない。
【化1】

【0037】
これに対し、トランスジェニックカイコガ2は、ボンビコール受容細胞にボンビコール以外の化学物質と結合する昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、かつこの遺伝子が発現するものであるので、導入した受容体が結合する化学物質に対してボンビコール受容細胞の神経興奮が起こり、匂い源の探索行動が発現する。具体的には、トランスジェニックカイコガ2が導入した受容体が結合する化学物質を受容すると、羽ばたきを始めて、化学物質の源を探索し始める。したがって、この挙動をモニタリングすることによって、化学物質の検出が可能になる。また、導入する遺伝子を変えることによって、フェロモン物質のみならず、様々な化学物質の検出が可能になる。
【0038】
例えば、キイロショウジョウバエのOR67d遺伝子がカイコガに導入されて、ボンビコール受容細胞でこの遺伝子が発現すると、トランスジェニックカイコガ2はキイロショウジョウバエのフェロモン物質である下記式(2)で表わされる11−シス−バクセニルアセテート(11-cis-vaccenyl acetate)に対して匂い源の探索行動が発現するようになる。
【化2】

【0039】
さらに、ハマダラカのAgOR46遺伝子が導入されて、嗅覚受容細胞でこの遺伝子が発現すると、トランスジェニックカイコガ2は、AgOR46の機能を再現し、AgOR46が対応する受容物質である、イソブチルアセテート、プロピルアセテート、3-メチル,1-ブタノール、およびアンモニア等に対して匂い源の探索行動が発現するようになる。トランスジェニックカイコガ2の触角に導入された嗅覚受容体は、その元々の機能を再現し、それぞれ対応する受容物質に対して匂い源の探索行動が発現するようになる。一般に、フェロモン受容体以外の嗅覚受容体は、数種類の分子に対して応答を有する。
【0040】
筺体
筺体3は、少なくとも1匹のトランスジェニックカイコガ2を収容することができれば特に限定されないが、複数匹のトランスジェニックカイコガ2を収容できるものが好ましい。複数匹のトランスジェニックカイコガ2を用いることにより、化学物質を検出するセンサとしての正確性を向上させることができる。筺体3は吸気口3aおよび排気口3bを備えている。
【0041】
吸引ポンプ
吸引ポンプ4は、排気口3bに接続されている。吸引ポンプ4を作動させることにより、吸気口3aを介して外気を筺体3内に取入れることができる。
【0042】
検知部
検知部5としては、トランスジェニックカイコガ2の動作を直接的または間接的に検知することができれば特に限定されない。検知部5として、例えば、動体センサ、トランスジェニックカイコガ2の動作に伴う振動を検知する振動センサ、トランスジェニックカイコガ2の動作に伴う音を検知する音センサ等を用いることができる。なお、検知部5を設けずに目視によりトランスジェニックカイコガ2の動作を検知してもよい。
【0043】
また、検知部5として、図2に示されるようなトランスジェニックカイコガ2を吊下げる吊下部材5aと、吊下部材5aで吊下げられたトランスジェニックカイコガ2の足に接触し、かつ回転可能に設置された球5bと、球5bの動きを検知する例えば光学マウス等の動体センサ5cとを備えるものを使用してもよい。なお、球5bと動体センサ5cとを備えるトラックボールを用いてもよい。このような検知部5を用いることにより、トランスジェニックカイコガ2の動作を検知できるだけでなく、トランスジェニックカイコガ2の行動解析を行うことができる。
【0044】
次に、このような化学物質検出センサ1の動作および作用について記載する。まず、吸引ポンプ4を作動させて、筺体3内に外気を取り込む。取り込まれた外気に目的とする化学物質が含まれていない場合には、トランスジェニックカイコガ2は特異的な挙動は示さない。これに対して、取り込まれた外気に目的とする化学物質が含まれていた場合には、トランスジェニックカイコガ2は羽ばたきを始め、化学物質の源の探索を始める。そして、この際の動作やこの際に発生する振動や音を検知部5で検知することにより、目的の化学物質を検出することができる。
【0045】
カイコガの触角は非常に高感度であるので、トランスジェニックカイコガ2においても、目的とする化学物質が例えば気体中に数100分子程度存在すれば、検知することができる。さらに、例えばマイクロインジェクション法等により子孫に導入遺伝子を伝達させることができる場合には、一度遺伝子をカイコガに導入すればよいので、トランスジェニックカイコガ2の飼育費用等を考慮しても、トランスジェニックカイコガ2を非常に安価で得ることができる。さらに、トランスジェニックカイコガ2は野生型のカイコガと同様に体長3cm程度であるので、小型のセンサを得ることができる。したがって、本実施の形態によれば、トランスジェニックカイコガ2を用いているので、高感度であり、小型であり、かつ安価な化学物質検出センサ1を提供することができる。
【0046】
また、空気中での化学物質の分布は、単純に拡散して連続的になっておらず、小さい多数の断続的な塊となって浮遊している。すなわち、発生源の近くでは濃度が高く、遠ざかるにつれて低くなるという単純な分布ではない。このため、化学物質の発生源の探索は困難であり、発生源の特定を行うには、濃度の高い方向へただ遡って行くだけでは不十分であり、高度な行動アルゴリズムが必要となる。
【0047】
一方で、野生型の雄のカイコガは非常に高度な行動アルゴリズムを用いて雌のカイコガを探索している。本実施形態によるトランスジェニックカイコガ2は、この高度な行動アルゴリズムを用いることができるので、目的とする化学物質の発生源を探索することができる。
【0048】
<化学物質検出方法>
本実施形態の化学物質検出方法は、トランスジェニックカイコガの少なくとも触角を用いて行うものである。ここで、このトランスジェニックカイコガは、上記トランスジェニックカイコガ2と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。また、この化学物質検出方法においては、トランスジェニックカイコガのみならず、化学物質検出センサ1を用いて化学物質の検出を行ってもよい。
【0049】
「トランスジェニックカイコガの少なくとも触角を用いて行う」とは、トランスジェニックカイコガ自体を用いて行うことと、トランスジェニックカイコガ自体から触角を含む部位を切除し、その切除した部位を用いて行うことの両方を含む意味である。例えば、第2の実施形態で説明するようにトランスジェニックカイコガから触角を切り取り、その切り取った触角を用いて行うことなどを指す。
【0050】
トランスジェニックカイコガ自体を用いて行う化学物質検出方法によれば、上述したように、トランスジェニックカイコガが目的の化学物質を受容すると、羽ばたきを始め、その後、化学物質の源を探索し始めるので、この挙動をモニタリングすることによって、目的の化学物質を検出することができる。
【0051】
また、この方法によれば、トランスジェニックカイコガを用いているので、高感度であり、小型であり、かつ安価な化学物質検出方法を提供することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態の化学物質検出センサについて、説明する。本実施形態においては、トランスジェニックカイコガの触角を切り取り、その切り取った触角を用いて化学物質を検出する化学物質検出センサについて説明する。図3は、第2の実施形態に係る化学物質検出センサの概略構成図であり、図4は第2の実施形態に係る他の箇所に電極を配置した図である。
【0053】
図3に示される化学物質検出センサ10は、トランスジェニックカイコガの触角11と、一対の電極12と、電位測定器13とを備えている。図3に示される化学物質検出センサ10は、さらに、触角11を収容する筺体14と、外気を筺体14内に取り込む吸引ポンプ15とを備えている。
【0054】
触角
触角11は、第1の実施形態で説明したトランスジェニックカイコガから切り取られたものである。
【0055】
電極
一対の電極12は、触角11に接続されている。図3に示される化学物質検出センサ10においては、一方の電極12(記録電極)が触角11の先端部11aに接続されており、他方の電極12(不関電極)は触角11の根元部11b、すなわち脳に繋がる神経の軸索部位に接続されている。なお、先端部11aは、電極12を接続する前に多少先端が切り落とされたものである。この場合には、その触角11に存在する全ての嗅覚感覚子からの電位の総和が得られる。
【0056】
また、電極12は、図4に示されるように触角11中に存在する一つの嗅覚感覚子16に接続してもよい。この場合には、一つの嗅覚感覚子11cから電位が得られる。
【0057】
電位測定器
電位測定器13は、嗅覚感覚子が目的とする化学物質を受容したとき、触角全体または一つの嗅覚感覚子から発生する電位を測定するものである。図3のように触角11全体から発生する電位を測定する場合には、電位測定装置13としては、触角電図法(EAG: electroantennogram recording)を用いた装置が挙げられる。また、図4のように一つの嗅覚感覚子11cから発生する電位を測定する場合には、単一感覚子記録法(single sensillum recording)を用いた装置が挙げられる。
【0058】
筺体および吸引ポンプ
筺体14は、吸気口14aおよび排気口14bを備えている。また、吸引ポンプ15は、排気口15bに接続されている。吸引ポンプ15を作動させることにより、吸気口14aを介して外気を筺体14内に取入れることができる。
【0059】
次に、このような化学物質検出センサ10の動作および作用について記載する。まず、吸引ポンプ15を作動させて、筺体14内に外気を取り込む。取り込まれた外気に目的とする化学物質が含まれていない場合には、触角11は電気応答を示さない。これに対して、取り込まれた外気に目的とする化学物質が含まれていた場合には、触角11は電気応答を示し、電位が検知される。これにより、目的の化学物質を検出することができる。
【0060】
本実施の形態によれば、トランスジェニックカイコガ2から切り取った触角11を用いているので、高感度であり、安価であり、さらにより小型の化学物質検出センサ10を提供することができる。
【0061】
また、触角電図法では目的とする化学物質の濃度が高いほど、検知される電位が大きくなるので、電位の大きさによって目的とする化学物質の濃度を測定することができる。また、単一感覚子記録法では目的とする化学物質の濃度が高いほど、検知される活動電位数が増加するので、活動電位数の数によって目的とする化学物質の濃度を測定することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例に本発明が限定されるものではない。
【0063】
実施例1
まず、野生型の雄のカイコガの嗅覚感覚子に存在するボンビコール受容細胞に、キイロショウジョウバエのフェロモン受容体タンパク質をコードする遺伝子DmOR67d遺伝子を導入したトランスジェニックカイコガを作製した。
【0064】
具体的には、野生型のカイコガの嗅覚受容体に対応する遺伝子であるBmOR1上流配列の下流部にGAL4遺伝子を配置した組換え遺伝子をゲノムに保持するトランスジェニックカイコガを育成した。一方で、DmOR67d遺伝子の上流部にUASを組み込んだDNAコンストラクトを作成し、野生型のカイコガの卵のゲノム領域に組み込み、育成した。そして、それぞれ育成した、GAL4トランスジェニックカイコガと、UASトランスジェニックカイコガとを交配して、DmOR67d遺伝子が導入されたトランスジェニックカイコガを得た。
【0065】
そして、このトランスジェニックカイコガを円形のアクリルケースの中に22匹収容した。一方で、キイロショウジョウバエのフェロモン物質である11−シス−バクセニルアセテートを浸み込ませた濾紙を入れたパスツールピペットを作製した。そして、トランスジェニックカイコガが収容されているアクリルケース内にこのパスツールピペット内を通した清浄空気を導入し、そのときのトランスジェニックカイコガの挙動を観察した。
【0066】
比較例1
トランスジェニックカイコガの代わりに野生型の雄のカイコガを用いた以外、実施例1と同様に手法によりカイコガの挙動を観察した。
【0067】
以下、結果について述べる。図5は実施例1に係るトランスジェニックカイコガおよび比較例1に係るカイコガの11−シス−バクセニルアセテートに対する応答を示したグラフである。
【0068】
図5のグラフに示されるように、実施例1に係るトランスジェニックカイコガは11−シス−バクセニルアセテートに対して応答を示したが、比較例1に係るカイコガは11−シス−バクセニルアセテートに対して応答を示さなかった。
【0069】
これらの結果から、カイコガのボンビコール受容細胞にカイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子を導入して、トランスジェニックカイコガを作製した場合、導入した受容体の結合する化学物質をカイコガで応答させることができることが確認された。
【0070】
実施例2
野生型のカイコガをスタイロフォームの球の上に置き、吊下部材により野生型のカイコガを吊下げて固定した。その後、前方からカイコガのフェロモン物質であるボンビコールを吹き付けた。そして、野生型のカイコガの動きを光学マウスにより読み取り、野生型のカイコガの行動を解析した。
【0071】
以下、結果について述べる。図6は実施例2に係る球と光学マウスを備えた装置を用いて、野生型のカイコガのボンビコールに対する挙動を示したグラフである。
【0072】
図6から、フェロモン物質を受容したことによる匂い源の探索行動の発現を、目視ではなく、球と光学マウスを用いることで電気的に検出できることが確認された。
【0073】
実施例3
本実施例では、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガにおける匂いの選択性について調べた。具体的には、まず、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガを円形のアクリルケースの中に25匹収容した。一方で、キイロショウジョウバエのフェロモン物質である11−シス−バクセニルアセテートを浸み込ませた濾紙を入れたパスツールピペットを作製した。また、キイロショウジョウバエのフェロモン物質ではなく、かつ11−シス−バクセニルアセテートに類似する11−シス−バクセニルアルデヒド(11-cis-vaccenyl aldehyde)を浸み込ませた濾紙を入れたパスツールピペットと、キイロショウジョウバエのフェロモン物質ではなく、かつ11−シス−バクセニルアセテートに類似する11−シス−バクセニルアルコール(11-cis-vaccenyl alcohol)を浸み込ませた濾紙を入れたパスツールピペットをそれぞれ作製した。そして、トランスジェニックカイコガが収容されているアクリルケース内に順次、これらのパスツールピペット内を通した清浄空気を導入し、そのときのトランスジェニックカイコガの挙動を観察した。
【0074】
以下、結果について述べる。図7は実施例3に係るトランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する応答を示したグラフであり、図8は実施例3に係る各種化学物質の濃度が1000ng(1μg)/濾紙のときのトランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する行動発現率を示したグラフである。図7および図8のグラフに示されるように、このトランスジェニックカイコガは11−シス−バクセニルアセテートに対して応答を示したが、11−シス−バクセニルアルデヒドおよび11−シス−バクセニルアルコールに対しては応答を示さなかった。
【0075】
これらの結果から、カイコガのボンビコール受容細胞にカイコガ性フェロモン受容体以外のキイロショウジョウバエのフェロモン受容体タンパク質をコードする遺伝子DmOR67dを導入して、トランスジェニックカイコガを作製した場合、導入した受容体の結合する化学物質である11−シス−バクセニルアセテートに対し特異的に応答させることができ、このトランスジェニックカイコガは化学物質に対し選択性を有することが確認された。
【0076】
実施例4
カイコガのフェロモン源定位行動は、短い直進歩行と、それに続く左右へのジグザグ行動と、ループ行動とから構成されるが、本実施例では、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガがボンビコールによる刺激と同様にキイロショウジョウバエのフェロモン物質である11−シス−バクセニルアセテートによる刺激に対してもフェロモン源定位行動を起こすか否かについて調べた。具体的には、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガの触角にボンビコールを含む空気および11−シス−バクセニルアセテートを含む空気をそれぞれ吹き付けてトランスジェニックカイコガを刺激し、実施例2に係る球と光学マウスを備えた装置を用いて、刺激後のトランスジェニックカイコガの挙動に伴う累積回転角度を計測した。ボンビコールの濃度は40ng/濾紙とし、11−シス−バクセニルアセテートの濃度は120ng/濾紙とした。
【0077】
以下、結果について述べる。図9は実施例4に係るトランスジェニックカイコガの触角にボンビコールを含む空気を吹き付けたときのトランスジェニックカイコガの挙動を累積回転角度で表したグラフであり、図10は実施例4に係るトランスジェニックカイコガの触角に11−シス−バクセニルアセテートを含む空気を吹き付けたときのトランスジェニックカイコガの挙動を累積回転角度で表したグラフである。なお、ボンビコールによる刺激は図9中の矢印で示したタイミングで与え、11−シス−バクセニルアセテートによる刺激は図10中の矢印で示したタイミングで与えた。
【0078】
図9および図10から、11−シス−バクセニルアセテートを刺激として与えた場合、ボンビコールによる刺激と同様に、刺激後に左右にターンする行動を発現することが理解できる。したがって、この結果から、本来ボンビコールによる刺激のみにより引き起こされるフェロモン源定位行動が、DmOR67d遺伝子が発現したトランスジェニックカイコガでは11−シス−バクセニルアセテートによる刺激によっても引き起こされることが確認された。
【0079】
実施例5
本実施例では、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガのフェロモン感受性感覚子について単一感覚子記録を行い、トランスジェニックカイコガの匂いの選択性を調べた。具体的には、実施例1で用いたトランスジェニックカイコガのフェロモン感受性感覚子に11−シス−バクセニルアセテートを含む空気、11−シス−バクセニルアルデヒドを含む空気、11−シス−バクセニルアルコールを含む空気、およびボンビコールを含む空気をそれぞれ吹き付けて、フェロモン感受性感覚子で発生する電位を測定した。11−シス−バクセニルアセテート、11−シス−バクセニルアルデヒドおよび11−シス−バクセニルアルコールの濃度は30μg/濾紙とし、ボンビコールの濃度は3μg/濾紙とした。
【0080】
以下、結果について述べる。図11は実施例5に係るトランスジェニックカイコガのフェロモン感受性感覚子を用いて、トランスジェニックカイコガの各種化学物質に対する応答を電位で表したグラフである。図11のグラフに示されるように、このトランスジェニックカイコガは、11−シス−バクセニルアルデヒドおよび11−シス−バクセニルアルデヒドに対してはほぼ応答を示さなかったが、11−シス−バクセニルアセテートおよびボンビコールに対しては特異的に応答を示した。
【0081】
これらの結果から、カイコガのボンビコール受容細胞にカイコガ性フェロモン受容体以外のキイロショウジョウバエのフェロモン受容体タンパク質をコードする遺伝子DmOR67d遺伝子を導入して、トランスジェニックカイコガを作製した場合、ボンビコールの他、導入した受容体の結合する化学物質である11−シス−バクセニルアセテートに対し特異的に応答させることができることが確認された。また、トランスジェニックカイコガのフェロモン感受性感覚子を用いることによって、化学物質に対する応答を確認できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、ボンビコール受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガを備えることを特徴とする、特定の化学物質を検出するための化学物質検出センサ。
【請求項2】
前記トランスジェニックカイコガの動作を検知する検知部をさらに備える、請求項1に記載の化学物質検出センサ。
【請求項3】
前記検知部が、動体センサ、振動センサ、および音センサの少なくともいずれを備えている、請求項2に記載の化学物質検出センサ。
【請求項4】
前記検知部が、前記トランスジェニックカイコガを吊下げる吊下部材と、前記吊下部材で吊下げられた前記トランスジェニックカイコガの足に接触し、かつ回転可能に設置された球と、前記球の動きを検知する動体センサとを備える、請求項2に記載の化学物質検出センサ。
【請求項5】
カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、嗅覚受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガの少なくとも触角を用いて、特定の化学物質を検出することを特徴とする、化学物質検出方法。
【請求項6】
カイコガ性フェロモン受容体以外の昆虫の嗅覚受容体タンパク質をコードする遺伝子が導入され、嗅覚受容細胞で前記遺伝子を発現するトランスジェニックカイコガから切り取られた触角と、
前記トランスジェニックカイコガの触角に接続された一対の電極と、
前記一対の電極と電気的に接続された電位測定器と
を備えることを特徴とする、特定の化学物質を検出するための化学物質検出センサ。
【請求項7】
一方の前記電極が前記触角の先端部に接続され、かつ他方の前記電極が前記触角の根元部に接続されている、請求項6に記載の化学物質検出センサ。
【請求項8】
両方の前記電極が前記触角における一つの前記嗅覚感覚子の根元部に挿入されている、請求項6に記載の化学物質検出センサ。
【請求項9】
前記昆虫が長翅目、隠翅目、毛翅目、双翅目および鱗翅目からなる群から選択されるいずれかの目に属する昆虫である、請求項1ないし4、および6ないし8のいずれか1項に記載の化学物質検出センサ。
【請求項10】
前記昆虫が鱗翅目に属する昆虫である、請求項9に記載の化学物質検出センサ。
【請求項11】
前記昆虫が双翅目に属する昆虫である、請求項9に記載の化学物質検出センサ。
【請求項12】
前記昆虫が双翅目短角亜目ハエ下目ショウジョウバエ科に属する昆虫である、請求項11に記載の化学物質検出センサ。
【請求項13】
前記昆虫がキイロショウジョウバエである、請求項12に記載の化学物質検出センサ。
【請求項14】
前記遺伝子がキイロショウジョウバエ由来のOR67dである、請求項13に記載の化学物質検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−78351(P2012−78351A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192914(P2011−192914)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】