説明

化学的に明確な培地を用いた工業的規模での有用化合物の発酵生産

【課題】現在の工業現場における複合培地の通常の使用方法に伴う問題を回避するために、工業的規模の発酵において化学的に明確な処方を適用することが望まれている。
【解決手段】本発明は、工業的規模で有用化合物の発酵生産においての化学的に明確な培地の使用を開示する。化学的に明確な培地を用いての工業規模での発酵に適し得る微生物株には、真菌類、酵母およびバクテリア株がある。適切な株は、野外タイプの株として、あるいは変異誘発処理またはDNA形質転換後のスクリーニングと選択によって得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵の分野、即ち、一次または二次代謝生成物、製薬用タンパク質またはペプチド、または工業用酵素等の有用化合物の発酵生産に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの有用化合物が大規模な工業用ファーメンター内での発酵(培養)生産によって製造されている、即ち、興味ある有用化合物を産生する微生物を、10〜300mのファーメンター内でコントロールされた条件下で増殖させている。現在の工業的規模の発酵方法においては、生産用微生物は、典型的に複合発酵培地内で培養している。複合培地(complex medium)は、大豆ミール、綿実ミール、とうもろこし浸漬液、酵母抽出物、カゼイン加水分解物、糖蜜等等の複合窒素および/または炭素源を含む培地として理解されている。
【0003】
複合培地の利点は、構成複合原材料が高価でなく、容易に入手でき、且つ炭素および窒素源さらにビタミン類およびミネラル類を含有する微生物用の完全なあるいはほぼ完全な栄養源を構成することである。さらにまた、タンパク質、炭水化物、脂質等の複合原材料中に存在する生物学的巨大分子混合物は、その消費前に、微生物が分泌する酵素によって分解されることを必要とする。結果として、消費可能な小分子がファーメンター全体に亘ってまた発酵過程中に均一に利用でき、その結果、濃度勾配と混合問題を回避し、且つこれらの消費可能小分子レベルを抑制濃度以下に保っている。さらにまた、上記の巨大分子並びに複合培地中にこれまた存在する有機酸が培地に緩衝能力を与え、この方法でpHコントロールを容易にしている。
【0004】
上記の利点に加えて、複合発酵培地は、幾つかの重要な欠点も有する。最も重要なことは、複合原材料が、季節的変動および産出地の違い等によって、化学的に不明確な組成と品質変動性を有することである。発酵培地の組成は粘度、熱伝導および酸素移動等の発酵パラメーターに重要な影響を与えるので、複合原材料は、プロセス変動性の主要原因である。さらに、複合原材料は、下流の処理加工性を妨げ、最終生成物の品質に悪影響を及ぼし得る。例えば、発酵培養液、とりわけ繊維状微生物は、複合原材料を用いた場合、ろ過性の低下を示し得る。
【0005】
複合原材料は、最終生成物中に望まずとも蓄積して来るかあるいは最終生成物と共分離して来る化合物も含有し得る。重金属、殺虫殺そ剤または除草剤が、複合原材料中に存在し得る望ましくない化合物の例である。しかも、複合原材料は、毒素を含有するか、毒素の産生をもたらし得る。
【0006】
更なる欠点は、複合培地が滅菌中に好ましくない臭いを発生させ、望ましくない排出流を発生させることである。
【0007】
複合培地は、その使用に伴う上記の欠点にもかかわらず、工業的大規模発酵方法において依然として優先して用いられている。複合原材料を含有しない培地、即ち、化学的に明確な培地を工業的規模の発酵方法において使用することが考えれていないのは、種々の理由が存在する。1つの明らかな理由は、複合培地の使用における利点において見出される。より重要なことは、化学的に明確な培地を工業的規模で用いて得られる生成物収率は、典型的に、複合原材料を含有する培地を用いて得られる生成物収率よりも実質的に低いとみなされていることである。さらに、複合培地での工業的方法用に開発された高産生性微生物株は、化学的に明確な培地中ではその良好な性能を保持し得ない。化学的に明確な培地において不満足な性能である1つの理由は、現在の工業用株が、化学的に明確な培地においてその性能が考慮されずに、種々の範囲の変異誘発と選択を受けていることにあり得る。
【0008】
化学的に明確な培地は、これまでのところ、研究目的のみに、即ち、ペトリ皿および/または振盪フラスコでの実験室培養においてあるいは典型的に約20〜40Lの容量を超えない比較的小規模において用いられている。例えば、ペニシリン[Jarvis and Johnson,J.Am.Chem.Soc.69,3010−3017(1947);Stone and Farrell,Science 104,445−446(1946);White et al.,Arch.Biochem.8,303−309(1945)]、クラブラン酸(davulanic acid)[Romero et al.,Apphl.Env.Microbiol.52,892−897(1986)]、およびエリスロマイシン[Bushell et al.Microbiol.143,475−480(1997)]等の二次代謝物の発酵生産を参照されたい。
【0009】
しかし、そのように小さい研究規模での化学的に明確な培地の使用に関する研究は、典型的に約10m以上の容量規模を有する生産目的の大規模な工業的発酵方法におけるこれら化学的に明確な培地の応用について当業者に何ら教示を与えていない。
【0010】
【非特許文献1】Jarvis and Johnson,J.Am.Chem.Soc.69,3010−3017(1947)
【非特許文献2】Stone and Farrell,Science 104,445−446(1946)
【非特許文献3】White et al.,Arch.Biochem.8,303−309(1945)]
【非特許文献4】Romero et al.,Apphl.Env.Microbiol.52,892−897(1986)
【非特許文献5】Bushell et al.Microbiol.143,475−480(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在の工業現場における複合培地の通常の使用方法に伴う問題を回避するために、工業的規模の発酵において化学的に明確な処方を適用することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
今回、本発明者等は、工業的規模の発酵方法において化学的に明確な培地を用いて、一次または二次代謝物、製薬用タンパク質またはペプチド、または工業用酵素等の有用な化合物の発酵生産を経済的に魅力のある収率で可能にした(適切な株と組合せて)ことを開示する。
【0013】
本発明は、化学的に明確な構成成分から本質的になる化学的に明確な培地である発酵培地中で微生物株を発酵させ、発酵培養液から有用化合物を回収する各工程を含む有用化合物の工業的生産方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、化学的に明確な培地中で工業的規模で発酵させ得る、興味ある有用化合物を産生する微生物株の製造および/または改良方法に関し、その方法は、次の各工程を含む:適切な親株を、物理的手段および化学的変異誘発物質から選ばれた変異誘発処理、および/またはDNA形質転換に供すること、得られた変異株および/または形質転換株を、その化学的に明確な培地における増殖性能および上記興味ある有用化合物の産生レベルについてスクリーニングすること、上記親株と比較して、同様なまたは改良された化学的に明確な培地での増殖性能および/または改良された上記興味ある有用化合物の産生レベルを有する変異株を選択すること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、有用化合物を産生し得る適切な微生物株の工業的規模での発酵における化学的に明確な発酵培地の使用に関する。
【0016】
本発明の説明全体に亘って、工業的規模の発酵方法または工業的方法とは、≧10m、好ましくは≧25m、より好ましくは≧50m、最も好ましくは≧100mの容量規模での発酵方法に及ぶものと理解されたい。
【0017】
“化学的に明確”なる用語は、化学的に明確な構成成分から本質的になる発酵培地において使用するものであることを理解されたい。化学的に明確な構成成分から本質的になる発酵培地は、複合炭素および/または窒素源を含有しない、即ち、化学的に不明確な組成を有する複合原材料を含有しない培地を含む。化学的に明確な構成成分から本質的になる発酵培地は、さらに、本質的に少量の、即ち、微生物の増殖を維持しおよび/または十分量のバイオマスの生成を保証するには典型的十分でない後述するような量の複合窒素および/または炭素源を含む培地を含み得る。
【0018】
その点、複合原材料は、例えば、これらの原材料が複合ヘテロ高分子化合物における多くの種々の化合物を含有するという事実に基づき、化学的に不明確な組成を有し、さらに、季節的変動および産出地の違いに基づく組成の変動を有する。発酵における複合炭素および/または窒素源として機能する複合原材料の典型的な例は、大豆ミール、綿実ミール、とうもろこし浸漬液、酵母抽出物、カゼイン加水分解物、糖蜜等である。
【0019】
本質的に少量の複合炭素および/または窒素源は、本発明による化学的に明確な培地中に、例えば、主発酵用の植込みからの持ち越し(carry−over)として存在し得る。主発酵用の植込み(inoculum)は、化学的に明確な培地での発酵によっては必ずしも得られない。殆どの場合、植込みからの持ち越しは、主発酵用の化学的に明確な培地中の少量の複合窒素源の存在によって検出可能であろう。
【0020】
主発酵用の植込みの発酵過程における複合炭素および/または窒素源の使用は、例えば、バイオマス生成を促進させるため、即ち、微生物の増殖速度を速め、および/または内部pHコントロールを容易にするために、有益であり得る。同じ理由で、本質的に少量の複合炭素および/または窒素源、例えば、酵母抽出物を主発酵の初期段階で添加することは、とりわけ発酵過程の早期段階でのバイオマス生成を促進するために、有益であり得る。
【0021】
本発明による化学的に明確な培地中に存在し得る本質的に少量の複合炭素および/または窒素源は、化学的に明確な培地中に存在する炭素および/または窒素(ケルダールN)総量の多くとも約10%の量、好ましくは上記炭素および/または窒素総量の多くとも5%の量、より好ましくは上記炭素および/または窒素総量の多くとも1%の量であるように制限される。最も好ましいは、複合炭素および/または窒素源は、本発明による化学的に明確な培地中には存在しないことである。
【0022】
本発明において用いるときの“化学的に明確な培地”なる用語は、すべての必要成分を発酵過程の開始前に加えた培地、さらには必要な成分の1部を開始前に加え、1部を発酵過程中に加える培地も含むものと理解すべきである。
【0023】
本発明は、さらに、微生物株が、工業的規模で、化学的に明確な培地の単純原材料を経済的に魅力ある量の有用な生成物に転化させ得ることも開示する。驚くべきことに、化学的に明確な培地中の微生物株の生産性が、工業的規模において測定したとき、複合培地中での生産性に匹敵するか、ある場合にはそれより幾分高いことを見出した。
【0024】
化学的に明確な培地の使用による更なる利点は、酸素の気相から液相への移動および二酸化炭素の液相から気相への移動が、複合培地の使用と比較したとき、実質的に改善されていることである。当業者において公知のとおり、溶解酸素濃度と溶解二酸化炭素濃度は、発酵過程のスケールアップにおいて重要なファクターであり、工業的方法の経済的成否を決定し得る。化学的に明確な培地を用いて得られたこの改良された物質(mass)移動は、これらの培地中に、気泡の凝集を促進する実質量の化合物が存在していないことに基づき得る。凝集促進性化合物は、例えば、複合原材料中に存在するある種の疎水性および/または高分子化合物において見出し得る。気泡の凝集は、低い物質移動係数を典型的にもたらす[van’t Riet and Tramper,in:Basic Bioreactor Design,pp.236−273,(1991)]。
【0025】
酸素移動は、多くの場合、発酵過程において特に繊維状微生物の培養において制限性のファクターである。発酵を本発明による化学的に明確な培地を用いて実施したときに得られる改良された酸素移動能力は、動力投入、導入空気の酸素富化またはファーメンター加圧等のハードウェアにおける投資によるよりもはるかに安価な生産性の最適化方法を提供する。
【0026】
工業的発酵方法においては、放線菌(Actinomycetes)等の繊維状バクテリア、またはペニシリウム(Penicillium)もしくはアスペルギラス(Aspergillus)等の糸状菌等の繊維状微生物は、典型的に、ペレット形態を示して増殖する。その点、複合発酵培地中に存在するタンパク質とペプチド類は、ふわふわしたペレットを産生する傾向を有し、このペレットは、複合培地を用いて典型的に得られる高増殖速度の結果として、極めて長く枝分かれした菌糸を有する分散菌糸体に簡単に離れ落ちる。従って、ふわふわしたペレット形態は、望ましくない高培養液粘度を一般に生じ得る。化学的に明確な培地の使用は、例えば発酵中に容易に離れ落ちない硬めのペレットを産生することにより、形態に好ましい影響を与える。この方法において、繊維状発酵培養液の有意の粘度低下を、化学的に明確な培地を使用することによって得ることができる。発酵培養液の低粘度は生成物の産生において有益であるので、粘度コントロールは、工業的規模の発酵過程において極めて重要である。
【0027】
化学的に明確な培地使用のもう1つの利点は、生成物の下流加工処理において見出される。ある種の株−生成物の組合せにおいて、とりわけ繊維状株を培養するときに、下流加工処理が化学的に明確な培地の使用により著しく改善される。
【0028】
本発明方法において使用する化学的に明確な培地は、いわゆる構成元素といわゆる触媒元素を典型的に含有すべきである。
【0029】
構成元素は、微生物マクロ分子の構成成分である元素、即ち、水素、酸素、炭素、窒素、リンおよびイオウである。構成元素の水素、酸素、炭素および窒素は、炭素および窒素源内に典型的に含有されている。リンとイオウは、リン酸塩、硫酸塩および/またはチオ硫酸塩イオンとして典型的に添加する。
【0030】
化学的に明確な培地において使用する炭素および窒素源の種類は、その炭素および窒素源が本質的に化学的に明確な特性を有する限り、本発明にとって臨界的ではない。
【0031】
好ましくは、炭素源は、グルコース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトデキストリン類、スターチおよびイヌリン等の炭水化物;グリセリン;植物油;炭化水素類;メタノールおよびエタノール等のアルコール類;酢酸塩およびより高級なアルカン酸等の有機酸からなる群から選ばれる。より好ましくは、炭素源は、グルコース、スクロースおよび大豆油からなる群から選ばれる。最も好ましくは、炭素源はグルコースである。“グルコース”なる用語は、グルコースシロップ、即ち、明確な量でグルコースオリゴマーを含有するグルコース組成物を含むものと理解すべきである。
【0032】
窒素源は、好ましくは、尿素;アンモニア;硝酸塩;硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩;並びにグルタミン酸塩およびリシン等のアミノ酸類からなる群から選ばれる。より好ましくは、窒素源は、アンモニア、硫酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムからなる群から選ばれる。最も好ましくは、窒素源はアンモニアである。窒素源としてのアンモニアの使用は、アンモニアがpH調整剤として付加的に作用し得るという利点も有する。硫酸アンモニウムおよび/またはリン酸アンモニウムを窒素源として用いる場合には、微生物のイオウおよび/またはリン要求量の一部または全部を満たし得る。
【0033】
触媒元素は、酵素類または酵素共因子の構成成分である元素である。これらの元素は、例えば、マグネシウム、鉄、銅、カルシウム、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン、セレン、ホウ素である。
【0034】
上記の構成元素および触媒元素の次に、カリウムおよびナトリウムイオン等のカチオン類が、カウンターイオンとして作用し且つ細胞内pHおよび浸透性のコントロールのために存在しなければならない。
【0035】
化学的に明確な培地に任意成分として含ませ得る化合物は、クエン酸等のキレート化剤、およびモノ−およびジ−リン酸カリウム、炭酸カルシウム等の緩衝剤等である。緩衝剤は、好ましくは、外部からのpHコントロールなしでプロセス処理する場合に添加する。さらに、発泡防止剤も、発酵処理前および/または処理中に添加し得る。
【0036】
複合培地中に存在するマクロ分子と有機酸類は、これらの培地中で緩衝能力を与える。化学的に明確な培地中にはこれらの化合物が存在しないために、pHコントロールは、複合培地におけるよりも化学的に明確な培地においての方が難しい。本発明は、培養液中の発生pHにもよるが、酸または塩基のいずれかを添加できるというpHコントロールにより、化学的に明確な工業的規模のプロセスにおいて適切なpHプロフィルを与えていることを示している。
【0037】
ビタミン類は、微生物の正常な代謝に必要な構成的には無関係の有機化合物の一群である。微生物類は、その必要とするビタミン類を合成する能力において広く変化することが知られている。ビタミンは、そのビタミンを合成することのできない微生物の発酵培地に添加すべきである。典型的には、酵母またはバクテリア用の或いはある種の低級真菌、例えば、ムコラレス(Mucorales)用の化学的に明確な発酵培地は、1種以上のビタミンを補給し得る。高級真菌類は、ビタミンを必要としない。
【0038】
ビタミン類は、チアミン、リボフラビン、ピリドキサール、ニコチン酸またはニコチンアミド、パントテン酸、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン、リポ酸、プリン類、ピリミジン類、イノシトール、コリンおよびヘミン類からなる群から選ばれる。
【0039】
構成元素および触媒元素、並びに任意成分としてのビタミン類は、微生物の増殖、即ち、バイオマスの生成において必要である。
【0040】
本発明の化学的に明確な培地に添加すべき必要な化合物類、即ち、構成元素および触媒元素、並びに任意成分としてのビタミン類を含む化合物類の量は、主として、発酵過程において生成されるべきバイオマスの量に依存する。生成されるバイオマスの量は、広範に、典型的には約10〜約150g/l発酵培養液で変動し得る。一般に、約10g/l未満のバイオマス量を生成する発酵は、工業的価値はない。
【0041】
さらに、明確な培地の各構成成分の最適量、並びにどの化合物が不可欠か不可欠でないかは、明確な培地で発酵に供せられる微生物の種類、バイオマスの量、および産生すべき生成物に依存する。化学的に明確な培地の使用は、それによって各培地成分の濃度変動を他の成分とは独立して有利に行い得、この方法により培地組成の最適化を容易にする。
【0042】
生成物の産生においては、追加の化合物を含む化学的に明確な培地を補充することおよび/または化学的に明確な培地にすでに存在するある種の化合物濃度を微生物の増殖に必要である量以上に増大させることが必要であり得る。上記各化合物の機能は、各化合物が所望化合物の微生物による産生を誘起および/または促進させること、または各化合物が所望化合物の先駆体として機能することであり得る。
【0043】
化学的に明確な培地に増大量で補充および/または添加すべき化合物の例は、次のとおりである:β−ラクタム化合物生産用の増大量の硫酸塩、アミノ酸特に塩基性アミノ酸生産用の増大量の窒素含有化合物、ペニシリンG生産用のフェニル酢酸、ペニシリンV生産用のフェノキシ酢酸、アジビル−7−ADCAおよびアジピル−7−ACA生産用のアジピン酸、エリスロマイシン生産用のプロピオン酸。
【0044】
本発明による工業的発酵方法においては、化学的に明確な培地に添加する炭素源の総量は、培地1リットル当りの炭素量で示して、10〜200g/l好ましくは20〜200g/lで変化し得る。
【0045】
化学的に明確な培地に添加する窒素源の総量は、0.5〜50gN/l好ましくは1〜25gN/lで変化し得る(Nは、ケルダール窒素として示す)。
【0046】
発酵における炭素源と窒素源の比は、著しく変化し得るが、炭素源と窒素源の最適比決定要素の1つは、産生すべき生成物の元素組成である。リン酸塩、硫酸塩または痕跡量の元素類等の微生物の増殖に必要な追加化合物は、ガイドラインとして表1に示すような濃度範囲を用いて添加する。これら追加成分の濃度範囲は、微生物の種類間で、即ち、真菌、酵母およびバクテリア間で変化し得る。
【0047】
ビタミン濃度は、0.1(ビオチン)〜500(ミオ−イノシトール)mg/lの範囲内に一般にある。
【0048】
典型的には、微生物の増殖に必要な培地成分の量は、発酵に用いる炭素源の量に関連して決定し得る。何故ならば、産生するバイオマス量は、主として使用する炭素源量により決定されるからである。
【0049】
【表1】

【0050】
化学的に明確な培地を用いる本発明による工業的発酵方法は、バッチ、繰り返しのバッチ、給送バッチ(fed−batch)、繰り返しの給送バッチまたは連続発酵方法として実施できる。
【0051】
バッチ方法においては、全培地成分を、一緒に、発酵開始前の培地に直接加える。
【0052】
繰り返しのバッチ方法においては、完全培地の一部補充によって得られた培養液の部分的収集が任意の繰り返しの数回で起きる。
【0053】
給送バッチ方法においては、1種以上の構成元素および/または触媒元素を含む化合物を発酵開始前に培地に加えないかあるいは一部を加え、次いで、それぞれ、1種以上の構成元素および/または触媒元素を含む化合物の全部または残りを発酵過程中に給送する。給送用に選択した化合物は、一緒にまたは別々に発酵過程に給送できる。
【0054】
特に、元の発酵培地が1種以上の構成元素を含む化合物の供給によりおよそ2倍以上に希釈される発酵方法においては、給送物は、構成元素に次いで、触媒元素および追加の培地成分をさらに含み得る。
【0055】
繰り返しの給送バッチまたは連続発酵方法においては、完全出発培地を発酵中に付加的に給送する。出発培地は、構成元素給送物と一緒にまたは別々に給送してもよい。繰り返しの給送バッチ方法においては、バイオマスを含む発酵培養液の一部を定期的時間間隔で取出し、一方、連続方法においては、発酵培養液の一部取出しが連続して起きる。その発酵過程は、それによって取出した発酵培養液の量に相当する新鮮培地により補充される。
【0056】
本発明の好ましい実施態様においては、給送バッチまたは繰り返し給送バッチ方法を用いて、炭素および/または窒素源、および/またはリン酸塩を発酵過程に急送する。より好ましい実施態様においては、炭素および窒素源を発酵過程に給送する。最も好ましくは、炭素および窒素源をリン酸塩と一緒に給送する。この点に関して、好ましい炭素源はグルコースであり、好ましい窒素源はアンモニアおよび/またはアンモニウム塩である。
【0057】
給送バッチ方法の使用は、バッチ方法におけるよりも、かなり大量の炭素および窒素源の使用を典型的に可能にする。詳細には、給送バッチ方法において用いる炭素および窒素源の量は、バッチ方法において用いる最大量よりも少なくとも約2倍以上であり得る。このことは、給送バッチ方法においては著しく大量のバイオマス産生をもたらす。
【0058】
本発明のさらなる局面は、発酵培養液の下流加工処理の選択に関する。発酵過程を終了した後、有用な生成物は、必要に応じて、興味ある有用化合物用に開発された標準の技術を用いて発酵培養液から回収し得る。そのために用いる適切な下流加工処理技術は、有用化合物の性質および細胞位置に依存している。結局のところ、バイオマスは、発酵液から、例えば遠心またはろ過を用いて分離している。次いで、有用化合物は、その有用生成物が微生物細胞内に集積しているか微生物細胞と会合している場合には、バイオマスから回収する。一方、有用生成物は、微生物細胞から分泌している場合には、発酵液から回収する。
【0059】
興味ある有用化合物の工業的発酵生産においての化学的に明確な培地の使用は、副生成物の量が複合培地を用いたときよりも実質的に低いので、下流加工処理において多大な利点を提供している。しかも、生成物の品質は、望ましくない副生成物が興味ある化合物と共分離して来ないので、改善されている。
【0060】
本発明のさらなる局面においては、化学的に明確な培地を用いる工業的発酵方法に適する株を同定する。
【0061】
化学的に明確な培地を用いる工業的発酵方法に適する微生物株は、化学的に明確な培地において良好な増殖性能を有する限り、興味ある有用化合物を産生する任意の野性タイプの株であり得る。さらに、化学的に明確な培地を用いる工業的発酵方法に適する微生物株は、興味ある親株を古典的な変異誘発処理または組換えDNA形質転換に供することによって得られたおよび/または改良された株であってもよく、これら株においても、得られた変異株または形質転換微生物株が化学的に明確な培地において良好な増殖性能を有することを条件とする。得られた変異株または形質転換株が、親株と比較したとき、化学的に明確な培地において改良されたまたは同等な増殖性能を有すべきかどうかは、化学的に明確な培地における親株の増殖性能に依存している。
【0062】
微生物株は、その株が≧0.05h−1、好ましくは≧0.1h−1、より好ましくは≧0.2h−1、最も好ましくは≧0.4h−1である化学的に明確な培地での増殖速度比(specificgrowth rate)(μ)を有する場合、良好な増殖性能を有するものと理解する。化学的に明確な培地での微生物株の増殖性能は、比較的小規模の、例えば、振盪フラスコ培養または10Lベンチ発酵でのその株の化学的に明確な培地での発酵により都合良く分析し得る。この増殖性能の分析においては、pH、温度および酸素濃度コントロールによる10Lベンチ発酵を含むことが好ましい。
【0063】
本発明の1つの実施態様においては、化学的に明確な培地中で培養し得る微生物株は、UV照射等の物理的手段、またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンまたはエチルメタンスルホネート等の適切な化学変異誘発物質を用いて、興味ある親株を古典的な変異誘発処理に供することによって得られおよび/または改良される。本発明のもう1つの実施態様においては、化学的に明確な培地中で培養し得る微生物株は、興味ある親株を組換えDNA技術に供することによって得られおよび/または改良され、それによって親株は1種以上の興味ある機能性遺伝子により形質転換される。
【0064】
一般に、本発明は、2つの群の興味ある親株を古典的変異誘発および/またはDNA形質転換に供することを意図する。本発明の1つの実施態様においては、興味ある親株は、化学的に明確な培地において良好な増殖性能を有するが興味ある化合物の産生レベルに関しては改良する必要のない株の群から選ばれる。本発明のもう1つの実施態様においては、興味ある親株は、興味ある化合物の高産生レベルを有するが化学的に明確な培地において比較的良くない増殖性能を有する株の群から選ばれる。約0.05h−1未満の増殖速度比を有する微生物株は、化学的に明確な培地において比較的良くない増殖性能を有するものと理解する。
【0065】
両方法、即ち、古典的変異誘発処理とDNA形質転換の後、得られた変異株または形質転換株を、双方の化学的に明確な培地における増殖性能と興味ある化合物の産生レベルについてスクリーニングする。親株に比較して、化学的に明確な培地における良好な増殖性能および/または興味ある化合物の改良された産生レベルを有する変異株または形質転換株を選択する。
【0066】
幾つかの株、とりわけすでに広範な変異誘発処理に供されて産生レベルを改良されている工業的株は、化学的に明確な培地において良好に機能しないかあるいは全く増殖し得ないことに留意すべきである。変異誘発株のそ等の良好でない性能または増殖性の欠如は、化学的に明確な培地での増殖性が適切な変異株の選択基準として全く用いられていないという事実によって生じ得る。例えば、変異誘発株が未知の増殖要求を生ずる変異(未知の栄養素要求変異)を有することはあり得る。
【0067】
化学的に明確な培地を用いる工業的発酵に適し得る微生物株には、繊維状および非繊維状の株がある。例えば、化学的に明確な培地での発酵に適する微生物株には、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)またはムコラレス(Mucorales)等の真菌株;サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、ファフィア(Phaffia)またはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)株等の酵母株;および放線菌(Actinomycetes)等のバクテリア株がある。本発明による化学的に明確な培地の使用は、繊維状微生物の工業的発酵において特に有利である。
【0068】
化学的に明確な培地を用いる本発明による方法は、一次または二次代謝物、製薬用タンパク質またはペプチド類、または工業用酵素類等の任意の興味ある有用化合物の工業的規模での発酵生産において適している。好ましい有用化合物は、抗生物質またはβ−ラクタム化合物、特にβ−ラクタム抗生物質等の二次代謝物である。
【0069】
株−生成物の組合せの例としては、アミログルコシダーゼ用のA.niger、例えば、A.niger CBS 513.88;α−アミラーゼ用のA.oryzae;ロバスタチン用のA.terreus、例えば、A.terreus CBS 456.95;アラキドン酸またはアラキドン酸含有脂質用のMortierella alpina;プロテアーゼ用のMucor miehei;β−ラクタム化合物類(ペニシリンGまたはV)用のP.chrysogenum、例えば、P.chlysogenum CBS 455.95または他の適切な株;クラブラン酸(clavulanic acid)用のStreptomyces clavuligerus、例えば、S.clavuligerus ATCC 27064;テトラアセチル−フィトスフィンゴシン用のPichia ciferrii、例えば、P.ciferrii NRRLY−1031 F−60−10;アスタキサンチン用のPhaffia rhodozyma、例えば、P.rhodozyma CBS 6938;エリスロマイシン用のSaccharopolyspora erythraaea;ラクターゼ用のK.lactis;ナタマイシン用のStreptomyces natalensisがある。
【0070】
また、本発明は、微生物株を用い、この株を興味ある1種以上の機能性遺伝子で形質転換して、この株によりすでに産生されている生成物を重複発現(overexpress)し得る形質転換株を得るか、あるいはこの株によっては本来産生されない生成物を発現し得る形質転換株を得ることも意図する。
【0071】
どの株を形質転換用に選択するかは、選択した化合物が化学的に明確な培地で良好な増殖性能を有することを条件として、熟練者にゆだねる。例えば、すでに1回以上の変異誘発処理に供している株を形質転換用に選択し得る。また、変異誘発させてない株あるいは野性タイプの株を選択してもよい。所望化合物の発現レベル分析に次いで、興味ある1種以上の機能性遺伝子で選択株を形質転換した後に得られた形質転換株は、その化学的に明確な培地での増殖性能について分析すべきである。
【0072】
上記選択する株によっては本来産生されない生成物を産生する組換え株の例としては、次のものがある:
・Streptomyces lividans、例えば、グルコースイソメラーゼを発現し得る発現カセット、即ち、例えばActinoplanes missouriensis由来のグルコースイソメラーゼをコードする遺伝子を含有するS.lividans TK21;
・Penicillium chrysogenum、例えば、エクスパンダーゼ、および任意成分としてのヒドロキシラーゼおよび/またはアセチルトランスフェラーゼを発現し得る1個以上の発現カセット、即ち、例えばAcremonium chrysogenum由来のエクスパンダーゼ、ヒドロキシラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含有するP.chrysogenum CBS 455.95、または側鎖先駆体としてアジピン酸(EP 532341参照)または3−カルボキシメチルチオ−プロピオン酸(WO95/04148参照)を用いて、7−ADCAまたは7−ACA等のセファロスポリン化合物を産生し得るStreptomyces clavuligerus;
・Aspergillusniger、例えば、ヒトラクトフェリン(WO93/22348参照)またはウシキモシンを発現し得る発現カセットを含有するAspergillus nigerCBS 513.88;
・ウシキモシンまたはフォスフォィパーゼA2、インシュリンまたは組換えヒトアルブミンを発現し得る発現カセットを含有するKluyveromyces lactis。
【0073】
上記選択する株によってすでに産生されている酵素を重複産生する組換えの例としては、次のものがある:
・A.niger、例えば、フィターゼ(EP 420358参照)またはエンドキシラナーゼI(EP 463706参照)を重複発現し得る発現カセットを含有するA.niger CBS513.88。
【0074】
本発明を、化学的に明確な培地を用いての工業的規模の発酵方法により組換えストレプトマイセス(Streptomyces)株によるグルコースイソメラーゼの産生にすいて、また複合培地に比べて化学的に明確な培地の有利な使用によるジャージ(jarge)規模のペニシリウム発酵について具体的に説明する。
【0075】
さらなる実施例は、化学的に明確な培地において小規模で増殖させたときの像側性能および興味ある株の産生性を測定して、化学的に明確な培地において工業的規模で有用化合物の発酵生産に適する微生物株を同定し得るそ等の化学的に明確な培地に関する。
【実施例】
【0076】
実施例1
Streptomyces lividansを用いてのグルコースイソメラーゼの工業的生産
グルコースイソメラーゼを産生するストレプトマイセス株の構築
【0077】
Actinoplanes missouriensisのグルコースイソメラーゼ遺伝子を、E.coli Kl2株JM 101中の5.0kbのDNAフラグメントとして最初からクローン化した。
【0078】
5.0kbフラグメントに内在する1.7kbフラグメントは、A.missouriensisグルコースイソメラーゼおよびその上流調節領域の完全コード配列を示すことが分った(Amore and Hollenberg(1989),Nucl.Acids Res.17,7515も参照されたい)。
【0079】
改善された熱安定性を示すグルコースイソメラーゼ変異体を、グルコースイソメラーゼ遺伝子内でグルコースイソメラーゼタンパク質の253位置のリシンコードトリプレットAAGをアルギニンコードCGGに変えることによって得た(Quax et al.(1991),Bio/Tedmology 9,738−742)。
【0080】
ストレプトマイセス中でクローニングするために、プラスミドpIJ 486(Word et al.(1986),Mol.Gen,.Genet.,203,468−478)をベクターとして用いた。グルコースイソメラーゼをコードする1737塩基対A.missouriensis DNAを、pIJ486のラージPst I DNAフラグメントと結合させた。得られたプラスミド、いわゆるPWGx.GITは、プラスミド PIJ101の複製領域、チオストレプトン耐性遺伝子、およびGITをコードするA.missouriensis DNAフラグメントを本質的に含有していた。pWGx.GITの略図的マップを図1に示す。
【0081】
グルコースイソメラーゼ産生株は、プラスミドpWGx.GITでStreptomyces lividans株TK21(Hopwood et al.(1985),Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual.The John Foundation,Norwich,England)を形質転換することによって構築した。
【0082】
グルコースイソメラーゼの工業生産
実施例1で述べたようにして構築した産生株の業務用セルバンクを、チオストレプトン耐性コロニーをピッキングし、これを100mlの振盪フラスコ内のチオストレプトン(50mg/l)を含有する20mlのトリプトン ソイトーン ブロス(Tryptone Soytone Broth)中で30℃40〜48時間増殖させ、280rpmで振盪させることによって調製した。
【0083】
1mlの上記業務用セルバンク(新鮮な、または−80℃で凍結菌糸体として保存した)に等価の菌糸体を、500ml振盪フラスコ内の16g/Lのバクトペプトン(Difco 0123/01)、4g/Lのバクトソイトーン(Difco 0436/01)、20g/Lのカゼイン加水分解物(Merck 2239)、10g/Lのリン酸二カリウム.3aq(Merck分析級試薬)、16.5g/Lのグルコース.laq、0.6g/Lの大豆油および50mg/Lのチオストレプトンを含有する100mlの接種物蔵相区培地中に接種する。この培地のpHを水酸化ナトリウムおよび/または硫酸で滅菌前に7.0に調整する。グルコースとチオストレプトンは、滅菌後に別々に加える。チオストレプトンは、DMSOに50g/Lの濃度で溶解させ、0.2μmのナルジーン(Nalgene)フィルターでろ過滅菌する。培養物を280rpmのインキュベーターシェーカー内で24時間、30℃で増殖させる。
【0084】
得られた完全増殖培養物の50mlを、グルコース濃度2倍(33g/Lのグルコース.laq)、追加の発泡防止剤(SAG5693、0.6g/L;Basildon社からのシリコン発泡防止剤)およびチオストレプトン含まない以外は上述の培地と同じような組成を有する60mlの第2相接種物増殖培地に移す。グルコースをここでも別個に50%溶液中で滅菌し、培地の滅菌(60分、121℃)後に加える。培養物を、直径2mmの孔4つを有するノズルにより滅菌空気840L/hでエアレーションしている滅菌気泡カラム内で36時間増殖させ、温度を22℃に維持する。また、この第2相は、振盪フラスコ内(例えば、2Lのじゃま板付きエーレンマイヤーフラスコ内の12x500ml培地)で同様な接種比率で実施でき、軌道シェーカーインキュベーター内で280rpmで振盪させる。
【0085】
得られた完全増殖培養物を、16.3kgのクエン酸.laq、70.8gの硫酸第1鉄.7aq、109gの硫酸亜鉛.7aq、109gの硫酸マンガン.1aq、32.7gの二塩化コバルト.6aq、5.45gのモリブデン酸二ナトリウム.2aq、5.45gのホウ酸、5.45gの硫酸銅.5aq、10.9kgの硫酸二アンモニウム、10.9kgの硫酸マグネシウム.7aq、463gの塩化カルシウム.2aq、1090gの大豆油、21.8kgのリン酸一カリウム、139kgのグルコース.laqおよび5.9kgの酵母抽出物(乾燥重量基準で10%ケルダール窒素を含む醸造酵母)を含有する4.5m3の接種物培地を含む接種物ファーメンターに無菌的に移す。培地は、次のようにして調製する:グルコースを除く全成分を指示された順序で約2700Lの水道水中に入れる。pHを水酸化ナトリウムおよび/またはリン酸で4.5にセットし、培地を122℃で60分間滅菌した。グルコースは、pH4.5の水1000L中で別の容器内で122℃で60分間滅菌する。両方を冷却した後、グルコースを接種物容器に無菌的に移す。両成分を混合した後、pHをアンモニアで7.0にセットし、容量を滅菌水により4.5m3に調製した。発酵温度を30℃にコントロールし、ファーメンターを0.5〜1.0vvmでエアレーションし、その間pHをアンモニアガスで7.0±0.1に維持し、1.3〜1.4バールの過圧を維持する。発泡は、必要に応じて、大豆油とSAG5693等のシリコン発泡防止剤の3:1比滅菌混合物によりコントロールする。酸素濃度は、攪拌機速度(0.5〜3Kw/m)を調整することによって空気飽和の25%以上に維持する。培養物を、グルコースの全部が消費される前(前記の増殖各相におけるようにして)に、且つ酸素取込み速度が30ミリモル/l(培養液容量).hを越える前に主発酵に移す。
【0086】
主発酵培地は、245.1kgのクエン酸.1aq、1062gの硫酸第1鉄.7aq、1634gの硫酸亜鉛.7aq、1634gの硫酸マンガン.1aq、490gの二塩化コバルト.6aq、82gのモリブデン酸二ナトリウム.2aq、82gのホウ酸、82gの硫酸銅.5aq、163.4kgの硫酸二アンモニウム、163.4kgの硫酸マグネシウム.7aq、6.94kgの塩化カルシウム.2aq、16.3kgの大豆油、327kgのリン酸一カリウム、880kgの醸造酵母抽出物(乾燥重量基準で10%ケルダール窒素)、および556kgのグルコース.1aqを含有する。培地は、接種物発酵において述べたようにして調製する(グルコースは別個に滅菌する)。グルコースにおいては、DE−95シュガーシロップを代りに使用し得る。接種前の培地容量は、pHをアンモニアで7.0に補正した後で65mである。
【0087】
グルコース給送物は、グルコース.1aqとしてまたは〉90−DE−シロップからのグルコース等価物として、275〜550gグルコースル給送溶液で調製する。pHは、リン酸溶液で4.5〜5.0に調整する。滅菌は、バッチ(122℃、45分間)で、あるいはヒートショックまたはフィルターセットにより連続して実施する。
【0088】
主発酵は、30±0.5℃およびpH7.0±0.1(アンモニアおよびリン酸を用いてのpHコントロールによる)にコントロールする。空気流は0.5〜1.5vvmにセットし、過圧は0.5〜1.5バールであり、ファーメンターは、ルッシュトン(Rushton)タービンで0.5〜3Kw/m3の強度で攪拌して、酸素濃度が底部攪拌機高さで測定したときに0.2ミリモル/Lより低くなるのを防止する。グルコース給送は、酸素取込み速度の突然の落込みが生じ、溶解酸素濃度が上昇し、さらにpHが6.9から7.1になったときに開始する。培養液中のグルコース濃度は、この時点で<<0.2g/Lであるべきである。
【0089】
グルコース給送速度は、開始時で93kgグルコース/hであり、直線的に上昇して給送開始後64時間で186kg/hに達する。186kg/hでの給送100時間後、給送速度は、約200給送時間までに298kgグルコース/hに上昇する。
【0090】
発泡は、滅菌大豆油を5.5kg/hrで添加するか、または発酵の最初の100時間においては8時間毎に45kgの投込みによりコントロールする。必要ならば、さらなるコントロールを、大豆油とSAG471(Basildon社からのシリコン発泡防止剤)等のシリコン発泡防止剤との3:1比混合物により行う。
【0091】
アンモニア濃度は、12時間毎に測定し、500mgアンモニア/Lに等価の割合の滅菌硫酸アンモニウムをアンモニアレベルが1000mg/Lより低くなるや否や添加することによって、750〜1500mg/Lに維持する。
【0092】
培養物ろ液中のリン酸塩濃度は、500mg/Lに等価の割合の滅菌リン酸一カリウムを添加することにより、500mgPO/Lよりも高く維持すべきである。
【0093】
グルコースイソメラーゼの産生は、収集し培養液から精製し次いで当該技術で公知のタンパク質測定方法で決定したタンパク質として同定でき、あるいは安定化した培養液サンプルで行った酵素アッセイにおいてアッセイできる。培養液サンプルは、培養液2gを秤量し、12g/Lのトリスヒドロキシメチルアミノメタンと2.4g/LのCoCl.6aqを含有する5mlの安定剤溶液を添加し、その後73℃で30分間加熱することによって安定化する。冷却後、0.42mlの安定化サンプルを、0.8mlのグルコース溶液(27.25g/Lのトリス/HCl緩衝液pH8.2、グルコース67.56g/L、MgCl.6aq、22.33g/LのNa−EDTA2aq、および5mg/LのトリトンX−100を含有する)と混合し、60℃でインキュベートする。活性を、グルコースからフルクトースへの転換率を測定することによって測定し、GU/gとして表示する。(1GUは、1μモル フルクトース/分の生成に必要な酵素の量である。)タンパク質mg当り12単位の比活性を用いて、培養液kg当りのタンパク質量を測定できる。
【0094】
図2においては、産生した酵素の総量を示す。
【0095】
本実施例において示すように、850kgの酵素を、1回の給送バッチ生産操作において製造できる。
【0096】
実施例2
ペニシリンVの生産
【0097】
P.chrysogenum CBS 455.95(または、好ましくは後述等の方法で変異誘発し高産生性について選択することによってWisconsin 54.1255から誘導したもう1つの適切な株)の分生胞子柄を、以下の成分(g/l)を含有する生産培地中に10E5−10E6分生胞子器/mlで接種する:グルコース.HO)5;ラクトース.HO、80;NH)2CO、4.5;(NHSO、1.1;NaSO、2.9;KHPO、5.2;KHPO.3HO、4.8;痕跡量元素溶液(クエン酸.HO、150;FeSO.7HO、15;MgSO.7HO,150;HBO、0.0075;CuSO.5HO、0.24;COSO.7HO、0.375;ZnSO.7HO)1.5;MnSO.HO、2.28;CaCl.2HO、0.99)、10(ml/l);10%フェノキシ酢酸カリウム溶液、pH7、75(ml/l)。(滅菌前のpH6.5)。
【0098】
培養物を、280rpmの軌道シェーカー内で25℃で144〜168時間インキュベートする。発酵の終了時に、菌糸体を遠心またはろ過により除去し、量を定量し、培地を、当該技術において周知のHPLC方法により、産生したペニシリンについてアッセイする。
【0099】
実施例3
複合および明確培地による大規模ペニシリウム発酵
【0100】
Penicillium chrysogenum Wisconsin 54.1255を、化学的に明確な培地での増殖およびペニシリン産生について、実施例2に述べたようにして変異誘発し化学的に明確な培地で選択することによって最適化した。給送バッチ発酵を、50kg/m3のとうもろこし浸漬液を含有するHersbach等により開示されたような複合培地(Biotechnology of Industrial Antibiotics pp 45−140,Marcel Dekker Inc.1984,Table 4;培地Aで述べられているような塩類を含む培地B)で60m3規模で実施した。これと並行して、発酵を実施例2において述べたような明確培地において実施したが、各添加量は、これら給送バッチ発酵の高細胞密度特性故に、倍量であり、ラクトースとウレアム(ureum)は省いた。グルコースは、ファーメンターに、グルコース濃度を2g/Lより低く保って給送してグルコース抑制を回避した。アンモニア、硫酸二アンモニウムおよびフェニル酢酸をファーメンターに送って、pH並びにアンモニウム、硫酸塩およびフェニル酢酸の濃度を所望範囲にコントロールした(Hersbach 1984)。
【0101】
酸素移動は工業的発酵方法の経済的成否を決定する重要なパラメーターであるので、上記各発酵方法の性能を、各方法の酸素移動度合を測定することによって分析した。
【0102】
発酵過程において得られる酸素移動の良好な尺度は、1つの系統内で測定するような相対ka値である。kaは、酸素移動係数として定義されており、van’t RietおよびTramperに従って算出する(Basic Bioreactor Design,Marcel Dekker Inc.(1991),pp.236−273)。
【0103】
a値として算出した酸素移動能力は、発酵の主要部分において複合培地におけるよりも化学的に明確な培地において10〜20%高かった。
【0104】
実施例4
7−ADCAの生産
【0105】
実施例2に記載した方法を、エクスパンダーゼ発現カセット(エクスパンダーゼコード領域は、EP 532341に記載されているように、IPNSプロモーターにより得られる)で形質転換したP.chrysogenum CBS 455.95(または、好ましくは後述等の方法で変異誘発し高産生性について選択することによってWisconsin 54.1255から誘導したもう1つの適切な株)を用い、フェノキシ酢酸塩の代りに10%アジピン酸カリウム溶液を用い、フェノキシ酢酸塩の代りに400mlの10%アジピン酸カリウム溶液、pH5.5を含有する前記培地からの修正培地を用いて修正する(滅菌前の培地pHは、6.5の代りに5.5である)。
【0106】
その後、得られるアジポイル−7−ADCAを、WO95/04148の実施例4または5に実質的に記載されているような酵素脱アシル化法によって7−ADCAに転換する。
【0107】
実施例5
ロバスタチンの生産
【0108】
Aspergillus terreus 株 CBS 456.95(または、好ましくは後述等の方法で変異誘発し高産生性について選択することによってこの株から誘導した株)の分生胞子柄を、以下の成分(g/l)を含有する生産培地中に10E5−10E6 分生胞器/mlで接種する:デクストロース、40;CHCOONH、2.2;NaSO、4;KHPO、3.6;KHPO.3HO、35.1;痕跡量元素溶液(実施例2参照)、10(ml/l)。
【0109】
培養物を、220rpmの軌道シェーカー内で28℃で144〜168時間インキュベートする。発酵の終了時に、菌糸体を遠心またはろ過により除去し、量を定量し、培地を、当該技術において周知のHOLC方法により、産生したロバスタチンについてアッセイする。
【0110】
実施例6
クラブラン酸の生産
【0111】
Streptomyces clavuligerus株ATCC 27064またはその変異株を、下記の成分(g/l)からなる予備培養培地に接種する:(NHSO、2.75;KHPO、0.5;MgSO.7HO、0.5;CaCl.2HO、0.01;3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、21;グリセリン、19.9;コハク酸ナトリウム、5.5;痕跡量元素溶液(ZnSO.5HO、2.8;クエン酸第二鉄アンモニウム、2.7;CuSO.5HO、0.125;MnSO.HO、1;CoCl.6HO、0.1;Na.10HO、0.16;NaMoO.2HO、0.054)、0.06(ml/l)。
【0112】
培養物を、220rpmの軌道シェーカー内で28℃で48〜72時間インキュベートし、20容量の次の成分(g/l)を含有する生産培地に接種する(NHSO、2;アスパラギン、4;KHPO、1.5;MgSO.7HO、0.5;CaCl.2HO、0.01;3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、21;グリセリン、19.9;コハク酸ナトリウム、5.5;痕跡量元素溶液(上記参照)、0.06(ml/l);FeSO.7HO、0.5;MnCl.4HO、0.1;ZnSO.7HO、0.1。
【0113】
インキュベーションを、好ましくは50mlの培養物容量を含むじゃま板を備えた500mlエーレンマイヤーフラスコにおいて144時間続行する。発酵の終了時に、菌糸体を遠心またはろ過により除去し、量を定量し、炉液を当該技術において周知のHPLC方法によりアッセイする。
【0114】
実施例7
アミログルコシダーゼの生産
【0115】
Aspergillus niger株 CBS 513.88またはその変異株を、105〜106分生胞子柄数/mlで、次の成分(g/l)からなる発芽培地に接種する:KHPO.3HO、0.75;KHPO、6.6;Na3シトレート.3HO、5.3;クエン酸.HO、0.45;グルコース.HO、25;(NHSO、8;NaCl、0.5;MgSO.7HO、0.5;FeSO.7HO、0.1;ZnSO.7HO、0.05;CaCl、0.005;CuSO.5HO、0.0025;MnSO.4HO、0.0005;HBO、0.0005;NaMoO.2HO、0.0005;EDTA、0.13;Tween80、3。必要に応じて、50μg/mlのアルギニンおよび/またはプロリンを添加して発芽を改善し得る。
【0116】
培養物を、軌道シェーカー内で33℃、295rpmで48〜72時間インキュベートし、10〜20容量の次の成分(g/l)からなる生産培地に接種する:KHPO、1〜5;NaHPO4.HO、0.5;Naシトレート.3HO、53;クエン酸.HO、4.05;デキストロースポリマー、70;(NHSO、8;(NaCl、MgSO.7HO、FeSO.7HO、ZnSO.7HO、CaCl、CuSO.5HO、MnSO.4HO、HBO、NaMoO.2HO、EDTA):発芽培地に同じ。
【0117】
インキュベーションを、好ましくは100mlの培地を含む500mlエーレンマイヤーフラスコにおいて96時間続行する。発酵の終了時に、菌糸体を遠心またはろ過により除去し、量を定量し、ろ液をアミロース分解(amylolytic)活性についてアッセイする。
【0118】
実施例8
アスタキサンチンの生産
【0119】
Phaffia rhodozyma株CBS 6938またはその変異株を、酵母抽出物、10;ペプトン、20;グルコース、20(g/l)を含有する20mlの予備培養培地に接種する。培養物を、275rpmの軌道シェーカー内のじゃま板を備えた100mlエーレンマイヤーフラスコでインキュベートする。
【0120】
次いで、この予備培養物1mlを用いて、下記の成分(g/l)を含有する100mlの生産培地に接種する:グルコース、30;NHCl、4.83;MgSO.7HO、0.88;NaCl、0.06;CaCl.6HO、0.15;痕跡量元素溶液(クエン酸.HO、50;(NH4)2Fe(SO.6HO、90;ZnSO.7HO、16.7;CuSO.4HO、2.5;MnSO.4HO、2;HBO、2;NaMoO.2HO、2;KI、0.5;0.4NのHSO中)、0.3(ml/l);ビタミン類溶液(ミオーイノシトール、40;ニコチン酸、2;Ca−D−パントテネート、2;ビタミンB1、2;p−アミノ安息香酸、1.2;ビタミンB6、0.2;ビオチン、0.008;0.07NのHSO中)0.3(ml/l);プルロニック(pluronic)、0.04;KHPO、1;フタル酸水素カリウム、20(滅菌前pH5.4)。
【0121】
インキュベーションを、好ましくはじゃま板を備えた500mlエーレンマイヤーフラスコ中で96時間続行する。発酵終了時に、バイオマスのアスタキサンチン含有量(定量)を、溶媒抽出し、抽出物の光学密度を470〜490nmで測定することによって測定する。
【0122】
実施例9
アラキドン酸の生産
【0123】
−80℃で保存したMortierella alpina株ATCC 16266の1mlバイアル懸濁物1本を無菌的に開封し、内容物を用いて、次の成分(g/l)を含有する500mlの生産培地に接種する:グルコース、70;酵母抽出物、0.5;NHNO、3.0;KHPO、7.2;MgSO.7HO、1.5;痕跡量元素溶液(クエン酸.HO、50;(NHFe(SO.6HO、90;ZnSO.7HO、16.7;CuSO.5HO、2.5;MnSO.4HO)、;HBO、2;NaMoO.2HO、2;KI、0.5;0.4NのHSO中)、0.3(ml/l);(滅菌前のpH7.0)。
【0124】
培養物を、250rpmの軌道シェーカー内のじゃま板を備えた2リットル振盪フラスコ中で25℃、72時間インキュベートする。発酵終了時に、バイオマス量とバイオマスのアラキドン酸含有量を、遠心し、凍結乾燥し、溶媒抽出した後に、当該技術で周知のGC法によって測定する。
【0125】
実施例10
エリスロマイシンの生産
【0126】
Saccharopolyspora erythraea株NRRL2338またはその変異株(好ましくは後述ような方法で、増大した産生性について選択した)を、次の成分(g/l)を含有する25mlの予備培養培地に接種する:可溶性スターチ、15;NaCl、5;大豆ミール、15;CaCO、10;酵母抽出物、5;とうもろこし浸漬液固形分、5;CoCl.6HO、1g/l溶液の670μl。
【0127】
培養物を、じゃま板無しの100ml振盪フラスコ中で32〜34℃で3日間、250rpmのシェーカー−インキュベーター内でインキュベートする。
【0128】
培養物0.4mlを、次の成分(g/l)を含有する25mlの滅菌生産培地に接種する:クエン酸.HO、2;(NHSO、2;MgSO.7HO、2;CaCl2.2HO、0.085;KHPO、0.25;HEPES[=N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)]、5;グルコース、1.5;可溶性澱粉、20;大豆油、0.4;痕跡量元素溶液(250mlの蒸留水中のg:クエン酸.HO)、2.5;FeSO.7HO、0.8215;CuSO.5HO、0.0625;CoCl.HO、0.375;HBO、0.0625;ZnSO.7HO、1.25;MnSO.HO、1.25;NaMoO.2HO、0.0625)、3.6ml/l。pH=7.0。各フラスコには、0.25mlのn−プロパノールを加える。
【0129】
培養物を、じゃま板を備えた100ml振盪フラスコ中で32〜34℃で5日間、300rpmのシェーカーインキュベーター内でインキュベートする。発酵終了時に、培養液を遠心し、バイオマス量を定量する。上清のエリスロマイシン含有量を、当該技術で公知のHPLC法によって測定する。
【0130】
実施例11
β−カロチンの生産
【0131】
Blakeslea trispora CBS 130.59の胞子懸濁液を用いて、じゃま板なしの500ml振盪フラスコ内の114mlの予備培養培地(酵母抽出物10g/l;ペプトン20g/l;グルコース20g/l)に接種する。予備培養物を、250rpmの回転シェーカー上で26℃で42時間インキュベートする。バイオマスをろ過により収集し、100mlの滅菌脱ミネラル水で3回洗浄して予備培養培地の成分を除去する。その後、バイオマスを、小片のみが残るまで混練して均質化し、40mlの脱ミネラル水に再懸濁させる。
【0132】
生産培地を、500mlのじゃま板付き振盪フラスコ内で100ml部で調製する。生産培地の組成は、次の如くである(g/l):グルコース、40;アスパラギンモノ水和物、2;KHPO、0.5;MgSO.7HO、0.25。さらに、次の組成を有する痕跡量元素溶液を添加する(0.3ml/l):クエン酸.HO、50;(NHFe(SO.6HO、90;ZnSO.7HO、16.7;CuSO.5HO、2.5;MnSO.4HO、2;HBO、2;NaMoO.2HO、2;KI、0.5;0.4NのHSO中。滅菌前に、培地pHを6.2に調整する。各フラスコを20分間、120℃で滅菌し、滅菌後、脱ミネラル水(ろ過滅菌した)中の塩酸チアミン1mg/ml溶液0.05mlを加える。
【0133】
生産培地培養物に、上記で調製したフラグメント化菌糸体懸濁液の0.5〜10mlを接種する。培養物を回転シェーカー上で139時間インキュベートする(250rpm、26℃)。真菌バイオマスをろ過により収集し、脱ミネラル水で洗浄して培地成分を除去し、定量する。
【0134】
産生したβ−カロチンの量は、アセトン抽出を行い、分光光度計でアセトンフラクションの450nmでの吸光を測定することによって測定する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、pWGx.GITの概略を示す。
【図2】図2は、発酵中に産生した総グルコースイソメラーゼの展開を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に化学的に明確な構成成分からなる化学的に明確な培地である発酵培地において工業的規模で微生物株の発酵を行うこと、および発酵培養液から有用化合物を回収することの各工程を含む有用化合物の生産方法。
【請求項2】
化学的に明確な培地が本質的に少量の複合炭素および/または窒素源を含有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
化学的に明確な培地の化学的に明確な構成成分が、グルコース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトデキストリン類、澱粉およびイヌリン等の炭水化物;グリセリン;植物油;炭化水素類;メタノールおよびエタノール等のアルコール類;酢酸塩およびより高級なアルカン酸等の有機酸からなる群から選ばれる炭素源と、尿素;アンモニア;硝酸塩;硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩;並びにグルタミン酸塩およびリシン等のアミノ酸類からなる群から選ばれる窒素源とを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
炭素源がグルコースであり、窒素源がアンモニアおよび/またはアンモニウム塩である請求項3記載の方法。
【請求項5】
発酵がバッチ、繰返しのバッチ、給送バッチ、繰返しの給送バッチまたは連続発酵過程で生ずる請求項1ないし4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
発酵が給送バッチ過程で生ずる請求項5記載の方法。
【請求項7】
炭素および/または窒素源を給送バッチ過程に給送する請求項6記載の方法。
【請求項8】
炭素源がグルコースであり、窒素源がアンモニアおよび/またはアンモニウム塩である請求項7記載の方法。
【請求項9】
有用化合物が、製薬用のタンパク質またはペプチド、一次または二次代謝物、または工業用酵素である請求項1ないし8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
有用化合物が二次代謝物である請求項9記載の方法。
【請求項11】
二次代謝物がβ−ラクタム化合物である請求項10記載の方法。
【請求項12】
有用化合物が酵素である請求項9記載の方法。
【請求項13】
微生物株が酵母である請求項1ないし9のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
酵母がファフィア ロードザイマ(Phaffia rhodozyma)であり、有用化合物がアスタキサンチンである請求項13記載の方法。
【請求項15】
微生物株が繊維状微生物株である請求項1ないし9のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
繊維状株が真菌である請求項15記載の方法。
【請求項17】
真菌がアスペルギルス(Aspergillus)株である請求項16記載の方法。
【請求項18】
真菌がアスペルギルス テリウス(Alpergillus terreus)であり、有用化合物がロバスタチンである請求項17記載の方法。
【請求項19】
真菌がペニシリウム(Penicillium)株である請求項16記載の方法。
【請求項20】
真菌がペニシリウム クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)であり、有用化合物がβ−ラクタム化合物である請求項19記載の方法。
【請求項21】
真菌がムコラレス(Mucorales)株である請求項16記載の方法。
【請求項22】
ムコラレス株がモーティアレラ(Mortierella)株である請求項21記載の方法。
【請求項23】
ムコラレス株がモーティアレラ アルピナ(Mortierella alpina)であり、有用化合物がアラキドン酸を含む脂質である請求項22記載の方法。
【請求項24】
アラキドン酸を含む脂質がトリグリセリドである請求項23記載の方法。
【請求項25】
ムコラレス株がブラケスレア(Blakeslea)株である請求項21記載の方法。
【請求項26】
ムコラレス株がブラケスレア トリスポラ(Blakeslea trispora)であり、有用化合物がβ−カロチンである請求項25記載の方法。
【請求項27】
繊維状株がバクテリアである請求項15記載の方法。
【請求項28】
バクテリアが放線菌(Actinomycete)である請求項27記載の方法。
【請求項29】
放線菌がストレプトマイセス(Streptomyces)株であり、有用化合物がグルコースイソメラーゼである請求項28記載の方法。
【請求項30】
放線菌がストレプトマイセス クラブリゲラス(Streptomyces clavuligerus)であり、有用生成物がクラブラン酸である請求項28記載の方法。
【請求項31】
放線菌がサッカロポリスポラ エリスラエ(Saccharopolyspora erythraea)であり、有用化合物がエリスロマイシンである請求項28記載の方法。
【請求項32】
化学的に明確な培地中で工業的規模で発酵させ得る、興味ある有用化合物を産生する微生物株の製造および/または改良方法において、
適切な親株を、物理的手段および化学的変異誘発物質から選ばれた変異誘発処理、および/またはDNA形質転換に供すること、
得られた変異株および/または形質転換株を、その化学的に明確な培地における増殖性能および興味ある有用化合物の産生レベルについてスクリーニングすること、
上記親株と比較して、化学的に明確な培地での良好な増殖性能および/または改良された上記興味ある有用化合物の産生レベルを有する変異株および/または形質転換株を選択すること、
の各工程を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項33】
親株が、化学的に明確な培地において良好な増殖性能を有するが、産生レベルについては改良する必要のある株からなる群から選ばれる請求項32記載の方法。
【請求項34】
親株が、所望化合物の高い産生レベルを有するが、化学的に明確な培地において比較的良くない増殖性能を有する請求項32記載の方法。
【請求項35】
工業的規模での微生物株の発酵による有用化合物の生産における化学的に明確な発酵培地の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−200053(P2008−200053A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126382(P2008−126382)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【分割の表示】特願平10−536284の分割
【原出願日】平成10年2月20日(1998.2.20)
【出願人】(500054868)コニンクリーケ デーエスエム ナムローゼ フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】