説明

化学線または電子線硬化型電極結合剤及びそれを含む電極

電極の製造方法であって、電極結合剤ポリマーを電子線(EB)または化学線により硬化させるステップを含む方法を提供する。また、化学線または電子線硬化型化学前駆体を電極固体粒子と混合して混合物を調製するステップと、前記混合物を電極集電体上に塗布するステップと、前記集電体に塗布して前記混合物を化学線または電子線に曝露して硬化させ、それにより前記電極固体材料を集電体に結合させるステップとを含む方法も開示される。また、リチウムイオン電池、電気二重層コンデンサ、及びそれらを構成する成分も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリイオン二次(充電式)電池に使用可能な電極の技術分野に関し、特に、リチウムイオン二次電池、電気二重層コンデンサ及びそれらの製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電池や電気二重層コンデンサ(EDLC)などの電気化学的デバイスは、携帯機器の電源や自動車の補助電源などへの使用に非常に優れていることが知られている。例えば、リチウムイオン電池は、携帯電話、携帯音楽プレイヤー、携帯コンピュータなどの携帯用電子機器に使用される最も人気のある電池の種類の1つである。リチウムイオン電池は、エネルギー対重量比が非常に高く、メモリ効果は生じなく、かつ未使用時における充電電気の放電は緩やかである。また、リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いため、軍事、電気自動車、航空宇宙の用途でも人気が高まっている。
【0003】
リチウムイオン電池の基本作動単位は電気化学セルである。電気化学セルは、電解質によって互いに離間及び接続される一対の電極(アノードとカソード)を含んでいる。アノードは一般的に、銅などの導電性材料の薄い金属シート(アノード集電体と呼ばれる)であり、固体のアノード材料粒子がコーティングされている。前記固体粒子は、一般的には結合性及び硬さを保持しかつ使用中に膨張したり分解したりすることがないポリマーである結合剤によって前記アノード集電体に結合されるか、または前記粒子同士が互いに結合される。一般的なアノード粒子には、炭素(一般的にはグラファイト)またはシリコン系材料が含まれる。集電体にコーティングされる前記アノード材料の粒径は、公称径で数ナノメートルから数ミクロンの範囲である。
【0004】
リチウムイオン電池の電解質は、液体、固体またはゲルであり得る。液体電解質の場合、アノードをカソードから分離するためにセパレータが用いられる。一般的なセパレータは薄い多孔性ポリマーシートである。前記ポリマーの空隙に電解質が充填される。一般的な液体電解質は、有機カーボネートの混合物であり、そのようなものとしては、リチウムイオンの複合体を含んでいるアルキルカーボネートなどがある。前記リチウムイオン複合体は一般的に非配位アニオン塩であり、そのようなものとしては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ヘキサヘキサフルオロひ酸リチウム一水和物(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロほう酸リチウム(LiBF)、及びリチウムトリフラート(LiCFSO)などがある。一般的な固体電解質はポリマーである。様々な材料がゲル電解質として使用可能である。前記電解質は、アノード及びカソード間の電圧に耐えることができるようにデザインされており、可燃性の危険を伴うことなく、リチウムイオンの高い移動性を提供することができる。
【0005】
リチウムイオン電池に一般的に用いられるカソードは、例えばアルミニウムなどの導電性材料の薄い金属シート(カソード集電体と呼ばれる)を含み、固体のカソード粒子でコーティングされる。カソード固体粒子は、固体ポリペプチド結合剤によって前記カソード集電体に結合されるか、または前記粒子同士が互いに結合される。前記固体ポリペプチド結合剤は一般的に、結合性及び硬さを保持し、かつ使用中に膨張したり分解したりすることがないように作製されたポリマーである。一般的なカソード材料には、リチウム、コバルト、マグネシウム、ニッケルまたはバナジウムの酸化物や、他のリチウム化合物(例えばリン酸鉄リチウム)などの金属酸化物の粒子が含まれる。カソード材料は、多くの場合、導電性を向上させるために小量の炭素(アノードに含まれる炭素ほどグラファイト状ではないが)を含む。集電体上にコーティングされるカソード材料の粒径は、公称径で数ナノメートルから数ミクロンの範囲である。
【0006】
スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタとも呼ばれるEDLCは、従来のキャパシタと比較して非常に高いエネルギー密度を有する電気化学キャパシタである。EDLCは、介在物質により隔てられた、同一構造の2つの電極を含む。前記分離介在物質は、前記2つの電極層を非常に小さい物理的距離(ナノメーメートル単位)で隔てるにも関わらず、効果的な電荷分離を提供する。EDLCの電極は、集電体、一般的にリチウムイオン電池のカソードの集電体と同様の集電体(例えばアルミニウム)を用いる。エネルギー貯蔵密度を高めるために、多孔性材料、一般的にグラファイトまたは活性炭などの粒状炭素が、結合剤によって集電体の表面に塗布される。前記結合剤は一般的に、結合性及び硬さを保持し、かつ使用中に膨張したり分解したりすることがないように作製されたポリマーである。炭素の粒径は一般的に、公称径で数ナノメートルから数ミクロンの範囲である。その後、電極カーボンの孔に、介在物質、すなわち液体またはゲルの電解質が充填される。一般的な液体電解質は、選択されたリチウム塩を含むことができる有機アルキルカーボネートである。
【0007】
リチウムイオン電池またはEDLCに用いられる電極の一般的な作製方法は下記の通りである。
(1)ポリマー結合剤を溶媒で溶解させ、電極固体粒子との混合後に集電体に塗布するのに適切な粘度を有する溶液を調製する。
(2)前記低粘度結合剤溶液を、約20〜80重量%、とりわけ約50重量%の溶媒で前記電極固体粒子と混合し、ペーストを形成する。
(3)従来のコーティング技術を用いて前記ペーストを集電体上にコーティングし、薄層(一般的に10ないし200ミクロン)を形成する。
(4)コーティングされた集電体を熱乾燥オーブンに入れ、前記溶媒の蒸発除去及び前記結合剤ポリマーの硬化を行う。
(5)このようにして作製した電極集電体を、狭い隙間(例えば5〜200ミクロン)で互いに離間された一対の回転ローラの間に通して、集電体コーティングを所定の厚さに圧縮する。
(6)一般的には、電極集電体の両面をアノード/カソード粒子でコーティングし、上述したステップで処理する。
【0008】
電極の製造に関する上述の従来技術には、製造コストに直接的に影響するいくつかの問題点がある。そのような問題点には、これらに限定しないが、次のものがある。
(a)ポリマー結合剤を溶解させるのに用いられる溶媒を蒸発させなければならないので、大きな熱エネルギー入力が必要となる。
(b)熱乾燥に関連するエネルギー効率が非常に悪い。
(c)蒸発させた溶媒を回収し、廃棄するかまたは再利用する必要がある。
(d)ポリマー結合剤を乾燥させるのに必要なオーブンが大きな作業スペースを占めるので、大きな資本コストがかかる。
(e)乾燥オーブン内でポリマー結合剤を乾燥させるの時間がかかるため、前記電極の製造に要する時間が長くなる。
【0009】
したがって、当該技術分野では、電極を作製するための改良された材料と方法が求められている。例えば、リチウムイオン電池のカソード及びアノードやEDLC電極に用いられる改良された結合剤は、非常に有用になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,218,349号明細書
【特許文献2】米国特許第5,300,569号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によれば、本発明は、集電体(電流コレクタ)と、該集電体に結合された架橋化ポリマー層とを含む電極を提供する。前記ポリマー層は、ゴムポリマーから形成された架橋化マトリクスを含む。前記ゴムポリマーには、例えば、イソプレン、ブタジエン、シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンまたはビニルノルボルネンのモノマー単位、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。有利なことに、前記架橋化マトリクスは、化学線または電子線硬化により形成することができる。そのために、前記架橋化マトリクスは、前記架橋化ゴムポリマーと共有結合させた化学線/電子線反応硬化型架橋剤を含む。
【0012】
前記架橋化ポリマー層は、粒状物質をさらに含む。前記粒状物質は、グラフェン、活性炭、グラファイト、低硫黄グラファイト、カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせなどの炭素であり得る。前記架橋化ポリマー層は、金属酸化物塩やリチウム化合物などの粒状物質を含み得る。
【0013】
随意的に、本発明の電極に隣接して、第2の電極、セパレータ、電解質層などの追加的な層を設けることができる。例えば、電池(例えばリチウムイオン電池)または電気二重層コンデンサ(EDLC)において、本発明の電極に隣接して別の電極を配置することができる。
【0014】
また、本発明は、電極の作製方法を提供する。例えば、本発明の方法は、結合剤コーティング組成物を電極粒状物質と混合して混合物を調製するステップを含む。前記結合剤コーティング組成物は、官能化ゴムポリマーを含む。加えて、前記結合剤コーティング組成物は、化学線または電子線に曝露したときに共有結合を形成することができる架橋剤を含む。前記結合剤コーティング組成物は、コーティング層を形成することができるように、約20パスカル秒未満の溶融粘度を有する。
【0015】
本発明の方法はまた、前記混合物を集電体の表面に塗布して混合物層を形成するステップと、前記混合物層を化学線または電子線に曝露し、それにより前記官能化ゴムポリマーを架橋結合させるステップとをさらに含む。
【0016】
前記結合剤コーティング組成物は、反応性希釈剤、湿潤剤または光開始剤などの追加的な物質をさらに含み得る。一実施形態では、前記架橋剤は希釈剤としての役割も果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に開示した電極製造工程の一実施形態の平面図である。
【図2】本明細書に開示した電極製造工程の別の実施形態の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるリチウムイオン電気化学セルの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるEDLCの断面図である。
【図5】本発明に従って作製された電気化学セル初期充電及び放電曲線である。
【図6】本発明に従って作製された電気化学セル初期充電及び放電曲線である。
【図7】本発明に従って作製された電気化学セル初期充電及び放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の様々な実施形態について詳細に説明し、1若しくはそれよりも多い実施例を以下に示す。各実施例は、説明のために与えられるものであり、本発明を限定するためのものではない。事実、様々な変更及び変形を、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく本発明に対して行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として説明または図示された特徴を別の実施形態に適用することにより、さらなる別の実施形態を生成することができる。したがって、本発明は、このような変更及び変形を包含することを意図している。
【0019】
一般に、本発明は、上述したコストのかかるオーブン乾燥または溶媒処理を必要としない電極の製造方法及び、該電極を組み込んだリチウムイオン電池やEDLCなどの製品に関する。より具体的には、本発明の電極は、化学線または電子線(EB)により硬化させることができるポリマー結合剤を含有する。本明細書で用いられる化学線なる用語は、光化学効果をもたらすことができる電磁光線を指すことを意図する。例えば、本発明のポリマー結合剤は、紫外(UV)スペクトルまたは可視スペクトルの化学線により硬化させることができる。本発明は、化学線またはEBにより硬化させることができる化学的前駆体を固体粒子と混合して調製した混合物を電極の集電体(電流コレクタ)に塗布した後、前記ポリマーを共有結合的架橋させて硬化させるために前記混合物がコーティングされた集電体を適切な光線に曝露し、それにより前記粒子を互いにあるいは前記架橋化ポリマーマトリクスに結合させ、また、前記電極物質を前記集電体に結合させる方法を提供する。
【0020】
今まで、従来のUV/EB硬化型結合剤樹脂は、電極の製造に成功的に使用されていなかった。一般的に、その理由は、電極の作動状態において存在する過酷な状況(例えば、リチウムイオン電池の加熱または腐食性)のためだと考えられている。従来の結合剤樹脂の大多数は、金属への結合性や、例えば電極材料に対する耐化学性が弱かった。
【0021】
本発明では、EB及び/または化学線により硬化させることができ、電極の製造において結合剤として用いることができる官能化ポリマーを提供する。本発明のポリマー材料は、集電体(例えば、銅またはアルミニウム)への良好な結合性を示し、かつ電池及びEDLCの両方において存在する過酷な作動状況や電極材料に対して必要とされる耐性を提供する。
【0022】
一実施形態では、官能化ポリマーは、ゴムポリマーをベースにして作製される。本発明での使用に適する例示的なゴムには、官能化されたポリイソプレン及び/またはポリブタジエンゴムが含まれる。引用により本明細書に援用される米国特許第4,218,349号(特許文献1)には、本発明での使用に適し得るポリイソプレン系ゴム組成物及びその作製方法が記載されている。また、引用により本明細書に援用される米国特許第5,300,569号(特許文献2)には、本発明での使用に適し得るポリブタジエン系ゴム組成物及びその製造方法が記載されている。なお、本発明の結合剤は、イソプレン及び/またはブタジエンポリマーのみを含有するゴム組成物には限定されない。本発明の結合剤の作製に使用され得る、官能化ゴムオリゴマーまたはポリマーには、イソプレン、ブタジエン、シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンまたはビニルノルボルネンモノマー単位のうちの少なくとも1つ、あるいはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0023】
ゴムポリマーまたはオリゴマーは、金属への結合性及び/またはEB/化学線架橋結合による硬化性を向上させる反応基を含めるために官能化される。例えば、電子線または化学線(紫外線)への曝露により硬化する、カルボキシ、アクリル、ビニル、ビニルエーテルまたはエポキシ官能化されたポリイソプレン及び/またはポリブチレンゴムを使用することができる。例示的な官能化ポリマーとしては、例えば、ニュージャージー州ハイツタウン所在のエレメンティス社(Elementis)から市販されているIsolene(登録商標)樹脂、コネチカット州ミドルベリ所在のケムチュラ社(Chemtura)から市販されているTrilene(登録商標)樹脂、テキサス州パサディナ所在のクラレ社(Kuraray Co.)から市販されている液状イソプレンゴム(LIR)、ペンシルベニア州エクストン所在のサートマー社(Sartomer Co.)から市販されているKraysol(登録商標)、Ricon(登録商標)、Riacryl(登録商標)及びPolybd(登録商標)樹脂などの液状ブタジエンゴム(LBR)、またはニューヨーク州ニューヨーク所在のサン・エステルズ社(San Esters)から市販されているBAC樹脂がある。
【0024】
一実施形態では、本発明の結合剤は、1若しくは複数の反応性官能基が結合したイソプレンバックボーンを有する。このような結合剤は、例えばリチウムイオン電池に有用なカソードまたはアノード電極などの電極を形成する際のポリマー結合剤として優れた結果を示すことが分かった。一実施形態では、好適な結合剤には、下記の化学式で表される、カルボキシル化メタアクリル化イソプレンバックボーンが含まれる。
【0025】
【化1】

【0026】
ただし、mは、約10ないし約1000、または約100ないし約1000、または約200ないし約500であり、nは、1ないし約20、または1ないし約10、または約2ないし約10、または約2ないし約5である。
【0027】
好適な結合剤の別の実施形態には、下記の化学式で表される、カルボキシル化メタアクリル化ブタジエンバックボーンが含まれる。
【0028】
【化2】

【0029】
ただし、mは、約10ないし約1000、または約100ないし約1000、または約200ないし約500であり、nは、1ないし約20、または約1ないし約10、または約2ないし約10、または約2ないし約5である。
【0030】
好適な結合剤の別の実施形態には、下記の化学式で表される、ブタジエンバックボーンが含まれる。
【0031】
【化3】

【0032】
ただし、nは、約5ないし約2000、または約10ないし約1500、または約100ないし約1000である。
【0033】
当然ながら、本発明の結合剤は、複数の互いに異なるバックボーン部分を含むことができる。例えば、イソプレン−ブタジエンコポリマーが挙げられる。本発明の結合剤は一般的に、約7、000ないし約110、000、または約10、000ないし約100、000、または約10、000ないし約50、000、または約15、000ないし約40、000の分子量を有し得る。
【0034】
ゴム結合剤ポリマーは、結合剤コーティング組成物中に、該組成物の約20重量%ないし約100重量%、または約25重量%ないし約75重量、または約30重量%ないし約70重量%、または約40重量%ないし約60重量%の量で含有され得る。
【0035】
好適な官能化されたイソプレン系またはブタジエン系ゴムには、これらに限定しないが、テキサス州パサディナ所在のクラレ社から入手可能な製品UC−102、UC−105及びUC−203、並びに、ペンシルベニア州エクストン所在のサートマー社からCN301、CN303及びCN307の商品名で市販されているオリゴマーが含まれる。
【0036】
本明細書に開示した化学線/EB硬化型ポリマー結合剤は、約2000Pa・s未満、例えば、約5ないし約500Pa・s、または約20ないし約200Pa・sの溶融粘度(38℃において)を有する。本発明の結合剤を使用して電極を作製する際は、コーティングを容易にすべく溶融粘度を低下させるために、反応性希釈剤が加えられる。ポリマーの特性に応じて、結合剤コーティング組成物の溶融粘度を約10Pa・s未満、例えば、約5Pa・s、または約1.5Pa・s、または約1Pa・sまで低下させるために反応性希釈剤が加えられる。本明細書で用いられる結合剤コーティング組成物なる用語は、集電体に塗布される硬化前の組成物を指すことを意図しており、結合剤コーティング組成物と共に集電体に塗布される特定の物質は含まない。例えば、結合剤コーティング組成物なる用語は、リチウム金属酸化物粒子またはグラファイト微粒子と予混合される前の、かつ硬化前の組成物を指す。
【0037】
約2000Pa・s以上の溶融粘度を有するポリマーを使用することが望ましいが、そのような結合剤コーティング組成物の溶融粘度を好適なコーティング粘度まで減少させるためには大量の希釈剤が必要となる。希釈剤の量がポリマーの量を大幅に超過する場合、処理が困難となるだけでなく、架橋ポリマー結合剤の所望の特性を得ることが困難になる。一般的に、反応性希釈剤は、結合剤コーティング組成物の約90重量%以下、例えば、約10重量%ないし約90重量%、または約25重量%ないし約75重量%、または約40重量%ないし約60重量%の量で含有され得る。希釈剤は、集電体への結合性や、前記結合剤の化学耐性を低下させないよう選択される。加えて、希釈剤はポリマー結合剤に適合し、かつ結合剤コーティング組成物の混合中や塗布中などにポリマー結合剤から実質的に分離しない性質を有するものを使用する。
【0038】
反応性希釈剤は、硬化中に官能化ゴムポリマーと反応して前記マトリクスを架橋させる。したがって、反応性希釈剤は、本明細書を通じて架橋剤とも呼ばれる。本明細書に包含される反応性希釈剤の例には、これらに限定しないが、アクリル酸イソボルニル、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジアクリル酸ヘキサンジオール、ジアクリル酸アルコキシル化ヘキサン、並びに、硬化中に官能化ゴム反応物質と反応して結合剤コーティング組成物の溶融粘度を低下させることができるアクリル酸などの他の化合物が含まれる。
【0039】
結合剤コーティング組成物は、希釈剤としての役割を必ずしも果たさない、1若しくは複数の架橋剤を含み得る。例えば、希釈剤としての役割を果たさない架橋剤を使用することにより、溶融粘度が適切に低いポリマーを架橋させることができる。さらに、ポリマー結合剤コーティング組成物は架橋剤の組み合わせを含むことができ、例えば、反応性希釈剤としての役割を果たす架橋剤と希釈剤としての役割を果たさない架橋剤との組み合わせ、または2若しくはそれ以上の互いに異なる反応性希釈剤架橋剤の組み合わせ、または2若しくはそれ以上の互いに異なる、希釈剤としての役割を果たさない架橋剤の組み合わせを含むことができる。
【0040】
結合剤コーティング組成物の例示的な反応性架橋剤には、EB及び/または化学線に曝露したときに反応するものが含まれる。各架橋剤に適する光線は、当該技術分野では公知である。例えば、架橋剤は、UVスペクトルまたは可視スペクトルの化学線に曝露したときに反応するものを使用することができる。架橋剤の例には、これらに限定しないが、単官能アクリレート、二官能アクリレート、多官能アクリレート、及び他のビニル化合物が含まれる。好適なアクリレートは、線状、分岐状、環状または芳香族であり得る。線形アクリレートには、4個ないし20個の炭素原子を含むアクリル酸アルキルが含まれ得る。分岐型アクリレートには、例えば2−アクリル酸エチルヘキシルまたはアクリル酸イソステアリルなどの、4個ないし20個の炭素原子を含む分岐型アクリル酸アルキルが含まれ得る。環状アクリレートには、アクリル酸ジシクロペンタニルまたはn−ビニルカプロラクタムが含まれ得る。芳香族アクリレートには、アクリル酸フェノキシエチルが含まれ得る。二官能アクリレートまたは多官能アクリレートには、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートが含まれ得る。
【0041】
前記ポリマー結合剤は、光開始剤と共に架橋結合され得る。例えば、光開始剤は、希釈剤組成物の一成分であり得る。光開始剤は、結合剤コーティング組成物中に、該組成物の約20重量%以下、例えば、約1重量%ないし約15重量%、または約1重量%ないし約10重量%、または約1重量%ないし約7重量%の濃度で含有され得る。
【0042】
例示的な光開始剤には、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン、及び他のベンゾフェノン誘導体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1ブタノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−t−ブチル)フェニルプロパン−1−ノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオフェニル)]−2−モルホリノプロパノン、マレイミド、2,4,5−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルオキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、上記の物質に由来するポリマー光開始剤、並びにそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、プロパノン光開始剤が使用され、そのようなものとしては、ペンシルベニア州コンショホッケン所在のランベルティUSA社(Lamberti USA, Inc.)からEsacure(登録商標)KIP 150またはKIP 100Fの商品名で市販されている、約70重量%のオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンと約30重量%の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−ワンとの混合物がある。ランベルティUSA社からKIPまたはEsacure(登録商標)の商標で販売されている、例えばEsacure SM 303などの、他の光開始剤も使用することができる。他のポリマー光開始剤には、パレルモ・ルンダール・インダストリーズ社(Palermo Lundahl Industries)製のPL-816Aが含まれる。別の実施形態では、酸化物光開始剤が使用され得る。1つの好適な酸化物光開始剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)からIrgacure(登録商標)819の商品名で市販されているビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドである。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社からIrgacure(登録商標)の商品名で販売されている他の光開始剤も本発明での使用に適し得る。
【0043】
本発明の結合剤コーティング組成物は随意的に、所望するコーティング特性に適した他の処理剤を含み得る。前記処理剤は、結合剤コーティング組成物中に、該組成物の約10重量%以下、一実施形態では約5重量%以下、または一実施形態では約2重量%以下の量で含有され得る。本発明の結合剤コーティング組成物への使用に適した処理剤には、これらに限定しないが、結合剤または結合促進剤が含まれ得る。好適な結合剤は、ニューヨーク州アルバニー所在のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社(Momentive Performance Materials,)から市販されているSilquest(登録商標)A-187などのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0044】
一実施形態では、湿潤剤を、本発明の結合剤コーティング組成物中に含めることができる。湿潤剤は、結合剤コーティング組成物、該結合剤コーティング組成物と混合される粒子、及び集電体基板の間の接触性あるいは湿潤性を向上させることができる。したがって、結合剤コーティング組成物に湿潤剤を含めることにより、本発明の結合剤の硬化後の様々な構成要素間の結合性を向上させることができる。
【0045】
湿潤剤は、結合剤コーティング組成物の硬化前または硬化中に蒸発する犠牲材料、または硬化後に製品中に残留する材料であり得る。例えば、本発明の結合剤の硬化後に、湿潤剤が電極として機能するようにすることもできる。例示的な湿潤剤には、これらに限定しないが、アセトン、イソプロピルアルコール、炭酸ジメチルなどが含まれる。一般的に、結合剤コーティング組成物、前記粒子及び集電体間の湿潤性あるいは接触性を向上させることができる任意の溶媒または電極材料を用いることができる。一実施形態では、沸点が低く早く蒸発する湿潤剤が好ましい。例えば、湿潤剤は、約71℃(160°F)以下の沸点を有し得る。有利なことに、低沸点の湿潤剤を使用することによりUV/EB硬化中に湿潤剤を蒸発させて消散させることができるので、従来公知の方法において必要とされる溶媒除去のための相当量の熱エネルギーの入力が不要になる。あるいは、硬化後に材料中に残留し、例えば電極として使用することができるようにデザインされた湿潤剤を使用することもできる。
【0046】
図1、2及び3を参照すると、電極粒状物質10(図3)及びポリマー結合剤コーティング組成物9(図3)を電極層5として電極集電体2に塗布した実施形態が示されている。図3では、電極粒状物質10及びポリマー結合剤コーティング組成物9は互いに別の層として示しているが、一般的には、電極粒状物質10及び結合剤コーティング組成物9の混合物が集電体2に塗布され、単一の電極層5が形成される。その後、化学線/電子線を用いて、電極層5のポリマーを集電体2上で硬化させる。架橋結合させることにより、集電体に結合されたマトリクスを形成した後、前記結合剤は、集電体に対する非常に優れた結合性を示すだけでなく、優れた化学耐性を示し、かつ高温時において電解液に不溶性である。
【0047】
電極に含められる粒状物質10には、当該技術分野で公知の任意の粒状物質が含まれ、そのようなものには、これらに限定しないが、例えば、グラフェン、活性炭素、グラファイト、低硫黄グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコン系材料などの炭素粒状物質や、リチウム、コバルト、マグネシウム、ニッケルまたはバナジウムの酸化物などの金属酸化物塩がある。例として、前記粒状物質にはリチウム化合物が含まれ、そのようなものには、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リン酸鉄リチウム、リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)、またはそれらの混合物などのリチウム化合物などがある。
【0048】
さらに詳細には、図1、2及び3を参照して、電極集電体供給ロール1が電極集電体2を供給する。塗布器3が、電極粒状物質10をポリマー結合剤コーティング組成物と混合し、その混合物の薄層5を走行中の集電体2上へ塗布する。当然ながら、電極粒状物質10及び結合剤コーティング組成物9の様々な成分は、塗布器3に充填する前に予混合され得る。例えば、まず、炭素粒状物質及び固体結合剤ポリマーを、例えば3ロール製粉機で粉砕しておく。そして、炭素及び結合剤ポリマーを混合して固体の粉状混合物を作製した後、該混合物にリチウム化合物及び適切な希釈剤(並びに、追加的な架橋剤や光開始剤などの任意の追加成分)を加えることにより前記混合物の溶融粘度を減少させ、塗布可能な適切な粘度を有するペーストを形成することができる。
【0049】
塗布器3は、前記混合物を電極層5として集電体2に塗布する。この塗布コーティングは、グラビア印刷、フレキソ印刷、スロットダイ、反転ロール、ロール式ナイフ、オフセットなどの従来のコーティング技術により達成することができる。
【0050】
電極層5の形成後、電極層5を化学線/電子線に曝露し、電極層5の官能化ゴムポリマーを架橋結合させる。例えば、結合剤コーティング組成物を、必要に応じて光開始剤の存在下でUV、可視光線または電子線に曝露したとき、前記組成物中の架橋剤が前記ゴムポリマーの反応性官能基と反応して電極層全体に渡って共有結合を形成する。このことにより、架橋結合されたネットワーク内に前記粒状物質をしっかりと封じ込めることができ、また、電極材料層5を集電体2に強固に結合させることができる。
【0051】
電極層5を電極集電体2に塗布した後、それらを化学線硬化器4及び電子線硬化器6の下を比較的短い時間で通過させて互いに架橋結合させることにより、製造速度の向上及びコストの削減を図ることができる。複数の塗布ステーション3を用いて、複数の電極コーティング材料層を形成することもできる。また、必要とされる最終的な厚さを高速度(例えば約20フィート/分ないし約400フィート/分)で実現するために、随意的に、前記複数の電極コーティング材料層間にセパレータ層を設けることもできる。
【0052】
前記複数の電極コーティング材料層間に配置され得るセパレータは、当該技術分野で公知の任意のセパレータであり得る。例えば、EDLCまたはリチウムイオン電池を作製するときは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、またはPP及びPEの融合層などのポリマーシートから作製したセパレータが、互いに隣接する複数の電極層間に配置され得る。
【0053】
結合剤コーティング組成物9は一般的に、電極層5中に、約1重量%ないし約20重量%、例えば、約2重量%ないし約12重量%、または約2重量%ないし約6重量%、または約3重量%ないし約5重量%の量で含有され得る。前記コーティング混合物は一般的に、非常に薄い層5として電極集電体2に塗布される。電極層5の厚さは、約1ないし約500ミクロン、または約5ないし約250ミクロン、または約5ないし約200ミクロン、または約5ないし約150ミクロンであり得る。電極層5は、集電体2の片方または両方の面に塗布され得る。図1及び2は、集電体2の両面に電極層5を塗布するシステムを示している。
【0054】
図1及び2は、化学線照射器4及び電子線照射器8の両方を利用するシステムを示している。結合剤コーティング組成物の特性に応じて、化学線照射器4、電子線照射器8、またはその両方が使用される。
【0055】
図1を参照して、電解質6が、電極集電体2及び電極層5と一体化される。当該技術分野で公知のように、電解質6は固体、液体またはゲルであり得る。例えば、電解液6は、炭酸塩などの有機電解質(例えば、リチウムイオンの複合体を含んでいるエチレンカーボネートまたはジエチルカーボネート)、あるいは、水酸化カリウム、硫酸または有機カーボネート(リチウムイオン複合体(LiPF、LiAsF、LiClO、LiBF及びLiCFSOなどの非配位アニオン塩)を含有しているアルキルカーボネートなど)の液体混合物などの水性電解質であり得る。電解質6が液体の場合、ポリマーセパレータが電解質層6に含まれ得る。これらの実施形態ではセパレータを用いているが、一般的に、電解質6が固体またはゲルの場合は電解質セパレータは不要である。電極層5を集電体2の両面に形成する場合、集電体2の各面に電解質6を一体化させる。そして、このようにして作製した構造体をカレンダロール7に通し、電極層5を所定の厚さに圧縮する。必要であれば、電子線照射器8は、電解質6を貫いて電子線を照射し、前記結合剤を硬化させる。
【0056】
図2は、電解質6を含んでいない電極の作製方法を説明するための図である。図2に示す技術を図1に示した技術と組み合わせることにより、図3に示すような電気化学セル11を作製することができる。例えば、図1に示す方法は、アノードまたはカソード(集電体2及び電極層5)及び電解質6を構成するのに用いることができる。図2に示す方法は、電解質6を含まない対向電極を構成するのに用いることができる。そして、図1及び2の方法により作製された構造体を互いに重ね合わせて一体化させることにより、電気化学セルを構成することができる。
【0057】
例えば、図3は、本発明に従って作製することができるリチウムイオン電気化学セル11を概略的に示す。図示したように、セル11は集電体2を含み、集電体2の両面には電極層5が積層されている。電極層5は、アノード(−)またはカソード(+)活性物質10と、化学線/電子線硬化型ポリマー結合剤コーティング9とを含む。図3では、図示の都合上、電極物質10及び結合剤コーティング9は、互いに異なる層として示されている。電解質6及び随意的に電解質セパレータ(図示せず)が、各電極層5上に積層され得る。当業者には明らかなように、リチウムイオン電池は、所望に応じて直列または並列に接続される任意の数の電気化学セル11を含み得る。また、当業者には明らかなように、セル11に加えて、本発明に従って構成されたリチウムイオン電池は、絶縁材、ケーシング、制御回路、コネクタなどをさらに含み得る。さらに、リチウムイオン電池は、例えば、円筒型、角型、パウチ型、または当該技術分野では公知の他の任意の種類のリチウムイオン電池であり得る。
【0058】
また、第1の電極及びそれと同一の第2の電極を、それらの間に配置した適切な電解質及びセパレータと一体化させることによりEDLCを構成することができる。例えば、図4を参照して、EDLC40は、第1のアルミニウム集電体42と、第2のアルミニウム集電体43とを含むことができる。第1の集電体42及び第2の集電体43は、セパレータ46によって互いに隔てることができる。セパレータ46の両側に各々形成された第1の層44及び第2の層45は互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の層44及び第2の層45の両方は、化学線/電子線硬化型結合剤50及び粒状物質52(例えばグラファイト)の混合物を含むことができる。セパレータ46は、例えば多孔性PTFE膜などの、任意の標準的なセパレータであり得る。
【0059】
本発明は、様々な利点を提供することができる。例えば、本発明の方法は、電極及び該電極を含む製品の製造コストを大幅に削減することができる。本発明の利点は、これらに限定しないが、下記の(a)〜(d)を含むことができる。
(a)電極結合剤を硬化させるための処理時間を大幅に短縮することができる。
(b)熱硬化オーブン及びそれに関連するエネルギー効率の悪い熱乾燥の必要性を排除し、その代わりに化学線/電子線硬化ステーションを用いることにより、資本コスト及び操業コストを大幅に削減することができる。
(c)熱硬化に関連するスペース、建物、インフラ及びメンテナンスを大幅に減らすことができる。例えば、従来の熱硬化ラインは100ftの長さであり、ライン速度は10〜20ft/分である。一方、本発明では、2つのUVランプを(100フィートの製造ラインの代わりに)2フィートの長さに配置し、200ft/分で電池を製造する。熱硬化ラインの速度を200フィート/分にするためには、製造ラインの熱硬化セクションを1000〜2000ftの長さにする、すなわち建物の長さを0.2〜0.4マイルにする必要がある。
(d)有機溶媒の必要性を大幅に削減するかまたは排除することができるので、蒸発性有機化合物(VOC)の調達、回収及び廃棄コストを大幅に削減するかまたは排除することができる。
【0060】
以下の実施例を参照すれば、本発明をより良く理解することができるであろう。
【0061】
実施例1〜4
【0062】
化学線/電子線により硬化させてアルミニウム基板上に形成したコーティングが、リチウムイオン電池のシミュレート条件下で前記アルミニウム基板への結合を維持することができることを実証した。4つのサンプルを試験した。各サンプルの組成を下記の表1に示す。各組成の値は、重量%で示している。各サンプルについて、2インチ×2インチのアルミ箔上に結合剤コーティング組成物をコーティングした。各サンプルをUV硬化させた後、計量した。硬化させたサンプルを容器に入れ、40重量%のエチレンカーボネート及び60重量%のジメチルカーボネートの混合液中に浸漬した後、オーブンに入れた。前記オーブンを約60℃(140°F)に2週間保った。この試験期間の約1時間に渡って、前記オーブンの温度が約82℃(180°F)に達した。前記オーブンの温度及び雰囲気は、作動中のリチウムイオン電池において一般的に見られる温度及び電解質の組成をシミュレートする役割を果たす。試験結果を下記の表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
Sartomer Co.社(Exton, PA)製の反応性エポキシアクリレートオリゴマー/モノマー混合物
Ciba Specialty Chemicals社(Tarrytown, NY)製のUV光開始剤
Kuraray Co. Ltd.社(Pasadena, TX)製の反応性液状ゴムオリゴマー
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のポリエチレングリコール200ジアクリレート反応性希釈剤モノマー
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のイソボルニルアクリレート反応性希釈剤モノマー
Lamberti USA Inc.社(Conshohocken, PA)製のUV光開始剤
Ciba Specialty Chemicals社(Tarrytown, NY)製のUV光開始剤
Momentive Performance Materials社(Albany, NY)製の8γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン結合剤
【0065】
表1に示すように、UC−102(反応性液状ゴムオリゴマー)を含有しているサンプル1及び2では、アルミニウム基板に強固に結合するコーティングが形成された。サンプル1及び2をカーボネート混合物中に2週間浸漬した後の重量増加はごくわずかであった。一方、反応性エポキシアクリレートオリゴマー/モノマー混合物(20重量%のヘキサンジオールジアクリレートで希釈したビスフェノールエポキシアクリレートオリゴマー)を含有するサンプル3では、アルミニウム基板から剥離したコーティングが形成された。サンプル3の重量増加は21.7%であった。同様に、95重量%の反応性希釈剤モノマーと5重量%の光開始剤とから構成されているサンプル4でも、大幅に剥離したコーティングが形成された。サンプル4の重量増加は9.9%であった。上記のことから、サンプル1及び2が電極結合剤として適切な混合物であることが分かった。また、サンプル3及び4により、一般的なアクリレート混合物が電極結合剤として使用するのに適していないことが実証された。
【0066】
実施例5
【0067】
LiMn90重量%と、カーボンブラック6重量%と、UC−102(約50重量%)及びイソボルニル反応性希釈剤(50重量%)の混合物4重量%とからなる混合物200gを、実験室規模の磁気支援衝突コーティング装置(MAIC)を使用してバッチ方式で混合した。MAIC装置を使用して行ったこの試験の結果、LiMn及び炭素の固体粒子の表面に、UC−102(反応性液状ゴムオリゴマー)及びイソボルニルアクリレートの液体混合物をコーティングとして良好に分散させることができた。
【0068】
実施例6
【0069】
実施例5においてUC−102及びイソボルニルアクリレートの混合物でコーティングしたLiMn及び炭素の粒子をアルミ箔基板上に塗布し、乾燥させた。その後、アルミ箔基板上に塗布された前記コーティング材料を電子線(50Mrad)に曝露して硬化させた。電子線(EB)硬化後、アルミ箔基板を回転させ、その後、前記材料のアルミ箔基板への結合性を観察した。アルミ箔基板に結合したままの前記材料は実質的に存在しなかった。
【0070】
実施例7
【0071】
実施例5においてUC−102及びイソボルニルアクリレートの混合物でコーティングしたLiMn及び炭素粒子に約40体積%のアセトンを混合して作製したコーティング材料をアルミ箔基板上に塗布し、約10ミル(0.25mm)の層を形成した。約40体積%のアセトンを湿潤剤として加えると、前記材料の粘度が該材料をアルミ箔基板上にコーティングするのに十分な粘度まで低下した。その後、前記材料を数秒間空気乾燥させてアセトンを蒸発させた。アセトンを十分に蒸発させた後、前記材料を電子線(50Mrad)に曝露して硬化させた。電子線(EB)硬化後、アルミ箔基板を回転させ、その後、前記材料のアルミ箔基板への結合性を観察した。前記材料はアルミ箔基板に十分に結合したままだった。
【0072】
実施例8
【0073】
実施例5においてUC−102及びイソボルニルアクリレートの混合物でコーティングしたLiMn及び炭素粒子に約40体積%のジメチルカーボネート電解質を混合して作製したコーティング材料をアルミ箔基板上に塗布し、約10ミル(0.25mm)の層を形成した。湿潤剤としての約40体積%のジメチルカーボネート電解質は、前記材料とアルミ箔基板との間の結合性を高めるために加えた。その後、前記材料を電子線(50Mrad)に曝露して硬化させた。前記材料は、電子線(EB)硬化前に、完全に乾燥していなかった。電子線(EB)硬化後、アルミ箔基板を回転させ、その後、前記混合物のアルミ箔基板への結合性を観察した。前記材料はアルミ箔基板に十分に結合したままだった。この結果より、前記湿潤剤電解質が、結合剤が硬化したときにアルミ箔と良好に結合するように結合剤とアルミ箔との間の結合性を高めることができることが実証された。前記湿潤剤電解質はアルミ箔に結合せず、前記ポリマーの一部にはならない。
【0074】
実施例6〜8に示すように、化学線/電子線による重合中に、結合剤、粒子及びアルミ箔基板の間の結合性を高めるためには、少量の湿潤剤が必要である。実施例8は、リチウムイオン電池に一般的に用いられる電解質物質を、前記粒子、結合剤及びアルミ箔基板の間の湿潤性を高めるための湿潤剤として使用することができることを示す。いくつかの電解質物質の親水性は、製造工程において湿度制御を必要とすることが知られている。
【0075】
実施例9
【0076】
90重量%のLiMnと、6重量%の結合剤コーティング組成物でコーティングされた4重量%の炭素粒子とを含む混合物を、磁気支援衝突コーティング技術を用いて調製した。前記結合剤コーティング組成物は、47重量%のUC−102(反応性液状ゴムオリゴマー)と、47重量%のイソボルニルアクリレートと、4重量%のEsacure KIP 100F光開始剤と、0.5重量%のIrgacure 819光開始剤と、1.5重量%のSilquest A-187結合剤とを含んでいる。このカソードコーティング材料を、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいた厚さ約26ミクロンのアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。コーティングされたアルミ箔をその後、2ローラジュエラーズプレス(two roller jeweler's press)に通して圧縮し、アルミ箔、固体粒子及び結合剤の間の接触性を高めた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器下に2回通過させて、前記構造体を化学線(UV)に曝露した。前記ジュエラーズプレスにおける前記カソードコーティング材料の圧縮比を約10%ないし約40%にして、この工程を繰り返した。UV硬化後、アルミ箔基板を回転させ、その後、前記カソード粒子のアルミ箔基板への結合性を観察した。全ての場合において、前記カソード粒子のアルミ箔基板への結合は不十分であり、結合率は5%未満であった。また、前記カソード粒子同士の結合も不十分であり、結合率は10%未満であった。
【0077】
実施例10
【0078】
90重量%のLiMnと、6重量%の結合剤コーティング組成物中に混合した4重量%の炭素粒子とを含む混合物を、磁気支援衝突コーティング技術を用いて調製した。前記結合剤コーティング組成物は、47重量%のUC−102と、47重量%のイソボルニルアクリレートと、4重量%のEsacure KIP 100F光開始剤と、0.5重量%のIrgacure 819光開始剤と、1.5重量%のSilquest A-187結合剤とを含んでいる。ビーカー内での単純な撹拌により、前記カソードコーティング材料を、湿潤剤としての約15重量%のイソプロピルアルコールと混合して混合物を調製した。前記混合物をアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。前記アルミ箔は、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器下に2回通過させて、前記コーティングされたアルミ箔を化学線(UV)に曝露した。ベルト速度は20フィート/分に設定した。ベルト速度を50フィート/分、100フィート/分、150フィート/分に設定してこの工程を繰り返した。UV硬化後、アルミ箔基板を回転させ、その後、結合性を観察した。20フィート/分、50フィート/分及び100フィート/分では、結合性が良好であった。150フィート/分では、結合性は一部の領域では良好であったが、他の領域では良好ではなかった。このことは、硬化速度は150フィート/分よりも遅い速度にする必要があることを示している。
【0079】
実施例11
【0080】
40重量%の炭素と60重量%の結合剤とを含む混合物を、標準的な700RPM撹拌器を使用して調製した。前記結合剤コーティング組成物は、47重量%のUC−102と、47重量%のイソボルニルアクリレートと、4重量%のEsacure KIP 100F光開始剤と、0.5重量%のIrgacure 819光開始剤と、1.5重量%のSilquest A-187結合剤とを含んでいる。この炭素結合剤混合物に、LiCoOと湿潤剤としてのイソプロピルアルコールとを、LiCoOの量を徐々に増やしながら混合し、7.5重量%の炭素結合剤混合物と、25重量%のイソプロピルアルコールと、67.5重量%のLiCoOとからなる最終混合物を調製した。前記混合物を、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいたアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して、前記コーティングされたアルミ箔を化学線(UV)に曝露した。ベルト速度は50フィート/分に設定した。前記粒子同士の結合性及び前記粒子のアルミ箔基板への結合性は良好であった。UVランプチャンバーへの短時間の曝露によって、イソプロピルアルコール湿潤剤を完全に蒸発させた。ベルト速度を100フィート/分、150フィート/分、200フィート/分に設定した。前記コーティングされたアルミ箔を折り畳んだり広げたりして、前記コーティングの結合性を試験した。3つの硬化速度の全てにおいて結合性は良好であった。このことから、堆積を容易にするため及びコーティング硬化の工程速度を200フィート/分まで速める(すなわち、UVランプへの曝露を1秒未満にする)ために湿潤剤を含有しているUV硬化型結合剤混合物を使用することにより、炭素及び一般的な活性リチウムカソード材料の集電体への十分な結合性を達成することができることが実証された。
【0081】
実施例12
【0082】
40重量%の炭素と60重量%の結合剤とを含む混合物を、標準的な700RPM撹拌器を用いて調製した。前記結合剤は、47重量%のCN301と、23.5重量%のイソボルニルアクリレートと、23.5重量%のSR-238 HDODAと、4.5重量%のSM303光開始剤と、1.5重量%のGenorad 51分散剤とを含んでいる。この炭素結合剤混合物に、LiCoOと湿潤剤としてのイソプロピルアルコールとを、LiCoOの量を徐々に増やしながら混合し、7.5重量%の炭素結合剤混合物と、25重量%のイソプロピルアルコールと、67.5重量%のLiCoOとからなる最終混合物を調製した。前記混合物を、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいたアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して、前記コーティングされたアルミ箔を化学線(UV)に曝露した。ベルト速度は50フィート/分に設定した。前記粒子同士の結合性及び前記粒子のアルミ箔基板への結合性は良好であった。ベルト速度を100フィート/分、150フィート/分、200フィート/分に設定し、前記コーティングされたアルミ箔を折り畳んだり広げたりして、前記コーティングの結合性を試験した。全てにおいて結合性は良好であった。
【0083】
実施例13
【0084】
40重量%の炭素と60重量%の結合剤とを含む混合物を、標準的な700RPM撹拌器を用いて調製した。前記結合剤は、47重量%のCN301と、47重量%のイソボルニルアクリレートと、4重量%のEsacure KIP 100F光開始剤と、0.5重量%のIrgacure 819光開始剤と、1.5重量%のSilquest A-187結合剤とを含んでいる。この炭素結合剤混合物に、LiCoOと湿潤剤としてのイソプロピルアルコールとを、LiCoOの量を徐々に増やしながら混合し、7.5重量%の炭素結合剤混合物と、25重量%のイソプロピルアルコールと、67.5重量%のLiCoOとからなる最終混合物を調製した。前記混合物を、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいたアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して、前記コーティングされたアルミ箔を化学線(UV)に曝露した。ベルト速度を200フィート/分に設定し、前記コーティングされたアルミニウムを折り畳んだり広げたりして、前記コーティングの結合性を試験した。結合性は良好であった。その後、前記コーティングされたアルミニウムクーポンを、60%/40%のジメチル/エチレンカーボネート混合液に浸漬し、約60℃(140°F)で2週間放置した。2週間の試験期間後の重量増加は実質的にゼロであり、前記アルミニウムへの結合性及び前記粒子同士の結合性は良好であった。このことから、UV硬化型結合剤混合物を塗布し、200フィート/分の工程速度、すなわちUV光線への曝露時間が1秒未満の工程で硬化させて形成したカソードコーティングは、リチウムイオン電池の電解質環境に2週間曝した後でも、結合性及び物理的完全性が保たれることが実証された。
【0085】
実施例14
【0086】
40重量%の炭素と60重量%の結合剤とを含む混合物を、標準的な700RPM撹拌器を用いて調製した。前記結合剤は、47重量%のCN301と、23.5重量%のイソボルニルアクリレートと、23.5重量%のCD563 AHDODAと、4.5重量%のSM303光開始剤と、1.5重量%のGenorad 51分散剤とから構成されている。この炭素結合剤混合物に、LiCoOと湿潤剤としてのイソプロピルアルコールとを、LiCoOの量を徐々に増やしながら混合し、7.5重量%の炭素結合剤混合物と、25重量%のイソプロピルアルコールと、67.5重量%のLiCoOとからなる最終混合物を調製した。前記混合物を、5%酢酸溶液に10秒間浸漬して洗浄しておいたアルミ箔基板上に塗布し、平坦なナイフを使用して約26ミクロンの厚さ及び1インチの幅に広げた。その後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して、前記コーティングされたアルミ箔を化学線(UV)に曝露した。ベルト速度を200フィート/分に設定し、前記コーティングされた前記アルミニウムを折り畳んだり広げたりして、前記コーティングの結合性を試験した。結合性は良好であった。その後、前記コーティングされたアルミニウムクーポンを、60%/40%のジメチル/エチレンカーボネートの混合液に浸漬し、約60℃(140°F)で2週間放置した。2週間の試験期間後の重量増加は実質的にゼロであり、前記アルミニウムへの結合性及び前記粒子同士の結合性は良好であった。
【0087】
実施例15−17
【0088】
複数サイクルを通じて十分に充電及び放電することができ、かつ例えばLiCoO及びLiMnなどの一般的な電極活性化合物を用いたリチウムイオン電池カソードにおいて一般的な性能を発揮することができるリチウムイオン電池カソードを、UV硬化型結合剤を使用して作製することができることを実証した。3つのサンプルを試験した。カソード集電体コーティング組成物を、下記の表2に示す。各サンプルは、約2インチ×6インチ、厚さ26ミクロンのアルミニウムシートに、結合剤混合物、炭素、リチウム化合物、及び湿潤剤としてのイソプロピルアルコールの組み合わせをコーティングしたものである。まず、テネシー州プレザントビュー所在のH・デューク・エンタープライゼス社(H. Duke Enterprises)から入手可能なD−10混合器を使用して、結合剤混合物及び炭素を互いに混合した。均一な混合物が得られるように、オクラホマ州オクラホマシティ所在のEXAKTテクノロジーズ社(EXAKT Technologies)から入手可能なEXAKT Model 80S スリーロールミル(Three Roll Mill)を使用してさらに混合した。下記の表2の「コーティング」の欄に示す比率で、結合剤混合物、炭素、リチウム化合物、及び湿潤剤としてのイソプロピルアルコールを互いに混合した。上記の成分の混合は、上述したD−10混合器を使用して行った。このようにして調製したコーティング混合物を、75ミクロンの厚さに設定されたマイクロメートル調整済みナイフエッジ塗布器を使用して、アルミニウムシート集電体に塗布した。前記コーティングされた集電体のサンプルを、2,600ワット/インチ、10インチ長さのD型UVランプ下で、表2に示す様々な速度で硬化させた。UV硬化工程の結果、炭素結合剤混合物とリチウム化合物だけが、下記の表2の「硬化したコーティング」の欄に示す比率で集電体上に残った。UV硬化ランプを通過した3つのサンプル全てが、炭素及びリチウム化合物粒子の集電体へのまたは前記粒子同士の良好な結合性を示した。75ミクロン厚さないし50ミクロン厚さのロールプレスで、3つのサンプルの全てをカレンダ処理した。電気化学試験のために、前記サンプルを米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所へ送った。
【0089】
アルゴンヌ国立研究所では、各サンプルから、2032コイン電池の直径と同一の直径の直径円形クーポンを切り取った。リチウム金属をアノードとして使用し、Celgard 2325(ノースカロライナ州シャーロット所在のセルガードLCC社(Celgard LCC)から入手可能なPP/PE/PP三層膜)をセパレータとして使用し、エチレンカーボネート:エチレンメチルカーボネート(重量比は3:7)中に含めた1.2モルのLiPFを電解質として使用して、UV硬化させたカソードから2032コイン形半電池を作製した。前記半電池をヘリウム充填グローブボックス内で組み立てた後、Maccor 4400電気化学試験装置を使用して電気化学充電/放電試験を行った。
【0090】
【表2】

【0091】
Chitec Technology Corp.社(Taipei, Taiwan)製の光開始剤
Chitec Technology Corp.社(Taipei, Taiwan)製の光増感剤
Ciba Specialty Chemicals社(Tarrytown, NY)製のUV光開始剤
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のイソボルニルアクリレート反応性希釈剤モノマー
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のヘキサンジオールアクリレート反応性希釈剤モノマー
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のポリブタジエンジメチルジメチルアクリレートオリゴマー
Rahn USA Corp社(Aurora, IL)製の分散剤
Chitec Technology Corp.社(Taipei, Taiwan)製の光開始剤
Sartomer Co.社(Exton, PA)製のアルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート反応性希釈剤モノマー
10Sigma-Aldrich Co社(St. Louis, MO)製の炭素粉末
11Sigma-Aldrich Co社(St. Louis, MO)製のリチウムコバルト酸化物
12Sigma-Aldrich Co社(St. Louis, MO)製のリチウムマグネシウム酸化物
13Chitec Technology Corp.社(Taipei, Taiwan)製の光開始剤
14Timcal Graphite and Carbon社(Westlake, Ohio)製のグラファイト
15Worldchem LTD社,(Hafei, Anhui, China)製のN−メチル−2−ピロリドン
【0092】
実施例15、16及び17の初期充電及び放電の電気化学試験の結果を、図5、6及び7にそれぞれ示す。サンプル1は実施例15(図5)に相当し、サンプル2は実施例16(図6)に相当し、サンプル3は実施例17(図7)に相当する。サンプル1(実施例15)について、充電及び放電サイクルを繰り返した。サンプル1は、24ミリアンペア/グラムのC/5率で充電及び放電を行った。10サイクル後のサンプル1の充電容量は、初期充電容量の61%だった。
【0093】
実施例15の組成物は、約7.4mg/cmの活性物質LiCoO/LiMnを含む。電流密度はC/5、24mA/gであり、カットオフ電圧は3.0〜4.3Vであった。充電容量は130mAh/gであり、放電容量は105mAh/gであった。
【0094】
実施例16の組成物は、約5.2mg/cmの活性物質LiCoO/LiMnを含む。電流密度はC/5、24mA/gであり、カットオフ電圧は3.0〜4.3Vであった。充電容量は101mAh/gであり、放電容量は61mAh/gであった。
【0095】
実施例17の組成物は、約5.2mg/cmの活性物質LiMnを含む。電流密度はC/5、24mA/gであり、カットオフ電圧は3.0〜4.3Vであった。充電容量は107mAh/gであり、放電容量は54mAh/gであった。
【0096】
実施例18
【0097】
本発明のUV硬化型結合剤を使用することにより、一般的なリチウムイオン電池電解質の存在下で完全性及び結合性を保つことができるリチウムイオン電池アノードコーティングを集電体上に形成することができることを実証した。本発明のUV硬化型結合剤混合物は、従来の混合技術を用いて、表2の「結合剤と炭素の混合物」の実施例18−19の欄に示す比率で調製した。従来の混合技術を用いて、グラファイトをUV硬化型結合剤に表2の「コーティング」の実施例18−19の欄に示す比率で加えて、アノードコーティング混合物を調製した。このようにして調製したコーティング混合物を、75ミクロンの厚さに設定されたマイクロメートル調整済みナイフエッジ塗布器を使用して銅箔集電体に塗布した後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して200フィート/分の速度で化学線に曝露した。UV線への曝露中にイソプロピルアルコールは蒸発した。前記硬化させたコーティングをカレンダ処理して50ミクロンの厚さにした。硬化処理及びカレンダ処理後、前記コーティングされた集電体の2インチ×2インチのクーポンを、60%/40%のジメチル/エチレンカーボネートの混合溶液に浸漬し、約60℃(140°F)で1週間放置した。1週間の試験期間後の重量増加は実質的にゼロであり、銅への結合性及び前記粒子同士の結合性は良好であった。
【0098】
実施例19
【0099】
本発明のUV硬化型結合剤を使用することにより、一般的なEDLC電解質の存在下での完全性及び接着性を保つことができる電気二重層コンデンサ(EDLC)電極コーティングを集電体上に形成することができることを実証した。本発明のUV硬化型結合剤は、従来の混合技術を用いて、表2の「結合剤と炭素の混合物」の実施例18−19の欄に示す比率で調製した。従来の混合技術を用いて、グラファイトをUV硬化型結合剤に表2の「コーティング」の実施例18−19の欄に示す比率で加えて、電極コーティング混合物を調製した。このようにして調製したコーティング混合物を、75ミクロンの厚さに設定されたマイクロメートル調整済みのナイフエッジ塗布器を使用して銅箔集電体に塗布した後、Miltec MP-400電源により駆動される2つの400ワット/インチD bulb及びFusion 1250照射器を使用して200フィート/分の速度で化学線に曝露した。UV線への曝露中にイソプロピルアルコールは蒸発した。前記硬化させたコーティングをカレンダ処理して50ミクロンの厚さにした。硬化処理及びカレンダ処理後、前記コーティングされた集電体の2インチ×2インチのクーポンを60%/40%のジメチル/エチレンカーボネートの混合溶液に浸漬し、約60℃(140°F)で1週間放置した。1週間の試験期間後の重量増加は実質的にゼロであり、アルミニウムへの結合性及び前記粒子同士の結合性は良好であった。
【0100】
上述した説明は、現在においてベストモードと考えられているものを当業者が実施することを可能にするが、上記した実施形態、方法及び実施例の様々な変形、組み合わせ及び均等物が存在することを当業者は理解できるであろう。したがって、本発明は、上述した実施形態、方法、実施例に限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態及び方法を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
集電体と、該集電体の表面に結合されたポリマー層とを含み、
前記ポリマー層が、官能化ゴムポリマーから形成された架橋化マトリクス及び導電性粒状物質を含み、
前記架橋化マトリクスが、前記官能化ゴムポリマーに共有結合された化学線/電子線反応硬化型架橋剤を含むことを特徴とする電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極であって、
前記官能化ゴムポリマーが、イソプレン、ブタジエン、シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンまたはビニルノルボルネンのモノマー単位のうちの少なくとも1つ、あるいはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする電極。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電極であって、
前記架橋剤が、前記官能化ゴムポリマーに、該ゴムポリマーのカルボキシ、アクリル、ビニル、ビニルエーテルまたはエポキシ反応性官能基を介して共有結合されていることを特徴とする電極。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電極であって、
前記官能化ゴムポリマーが、下記の化学式のいずれか1つで表されるバックボーンを有する(メタ)アクリル化ゴムポリマーであることを特徴とする電極。
(a)
【化1】

ただし、mは約100ないし約1500であり、nは1ないし約20である。
(b)
【化2】

ただし、mは約10ないし約1000であり、nは1ないし約20である。
(c)
【化3】

ただし、nは約5ないし約2000である。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電極であって、
前記粒状物質が、グラフェン、活性炭、グラファイト、低硫黄グラファイト、カーボンナノチューブまたはそれらの組み合わせ等の炭素を含むことを特徴とする電極。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電極であって、
前記粒状物質が金属酸化物塩またはリチウム化合物を含むことを特徴とする電極。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電極であって、
当該電極に隣接して、第2の電極またはセパレータ等の追加的な層が設けられ、
前記追加的な層の1若しくは複数が随意的に電解質を含むことを特徴とする電極。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の電極であって、
前記ポリマー層が約1ミクロンないし約500ミクロンの厚さを有することを特徴とする電極。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の電極を含む、リチウムイオン電池等の電池。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の電極を含む電気二重層コンデンサ。
【請求項11】
電極の作製方法であって、
官能化ゴムポリマー及び、化学線または電子線に曝露したときに共有結合を形成することができる架橋剤を含み、かつ約20パスカル秒未満あるいは約10パスカル秒未満の溶融粘度を有する結合剤コーティング組成物を電極粒状物質と混合して混合物を調製するステップと、
前記混合物を集電体の表面に塗布して混合物層を形成するステップと、
前記混合物層を化学線または電子線に曝露し、それにより前記官能化ゴムポリマーを架橋結合させるステップとを含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記結合剤コーティング組成物が、前記官能化ゴムポリマーを該組成物の約20重量%ないし100重量%の量で含有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の方法であって、
前記結合剤コーティング組成物が、反応性希釈剤、湿潤剤及び光開始剤のうちの1若しくは複数をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13のいずれか一項に記載の方法であって、
前記架橋剤が反応性希釈剤であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11ないし請求項14のいずれか一項に記載の方法であって、
前記電極粒状物質が、炭素、金属酸化物またはリチウム化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11ないし請求項15のいずれか一項に記載の方法であって、
前記官能化ゴムポリマー及び前記電極粒状物質を粉砕するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11ないし請求項16のいずれか一項に記載の方法であって、
前記電極に第2の電極を積層配置するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11ないし請求項17のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間にセパレータを配置するステップをさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−507738(P2013−507738A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533304(P2012−533304)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051736
【国際公開番号】WO2011/044310
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512089449)ミルテック・コーポレーション (2)
【出願人】(512089450)
【Fターム(参考)】