説明

化粧品の滅菌方法及び滅菌装置

本発明は、化粧品の滅菌方法に関するものであり、該方法において、前記化粧品は圧力の下で滅菌循路(1)内を流動する液体によって構成されており、該圧力は、前記液体の粘度に応じて調節される。本発明は、また、そのような方法を実施する装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の滅菌方法に関するものであり、該方法において、前記化粧品は圧力の下で滅菌循路内を流動する液体によってなっており、前記化粧品を予熱し、前記化粧品を短時間で加熱し、前記化粧品を急速に冷却し、また、前記化粧品を滅菌雰囲気内で包装することを連続して行うことから構成されることを特徴とする。
【0002】
本発明は、美容の分野、特に化粧品の製造に関するものである。
【0003】
本発明は、より詳細には、化粧品の滅菌方法ならびにその実施装置に関するものである。
【背景技術】
【0004】
化粧品の保存性を改良するために、その組成には、前記化粧品を汚染から保護しながら、その特性を保持する役割を主に果たす防腐剤が含まれている。
防腐剤は、承認機関による識別リストに記載されたものである。
使用されている一群の防腐剤は、菌類ならびに細菌の成長を阻害するパラベンである。
しかしながら、これらの成分は人体に有害であるという欠点があり、使用者の健康に危険を及ぼす可能性がある。
【0005】
従って、製造者は、パラベンを、防腐剤として作用することが可能な他の化合物と代えることを試みた。
しかし、使用される化合物製品が許可されたリストに含まれていないこともあり、十分に満足をすることができない。
【0006】
従って、防腐剤を混ぜ入れる代わりに、化粧品を滅菌することが考え出された。
例えば、特許第60025907号明細書および特許第10025235号明細書に記載された従来技術のいくつかの装置および方法は、化粧品を50〜80℃の範囲の温度で加熱することで化粧品を滅菌することからなっている。
しかしながら、それらの装置は、十分に満足がいくだけの製品寿命をもたらすものではなく、また、実施が複雑なものである。
【0007】
従って、常に加熱浴および冷却浴を通過する循路を介した液体の流動の実施を通じて、約135〜150℃の極めて高温での滅菌が考え出された。
化粧品のような様々な種類の製品の滅菌を目的に、米国特許出願公開第2002/164159号明細書にそのような装置について記載されているが、その利用は、もっぱら乳液の滅菌に充てられている。
【0008】
この装置は、単一の製品の滅菌にしか充てられないという欠点を有する。
実際、ここでは、滅菌時間は循路の長さを増やしたり、減らしたりすることで、調整される。
従って、同じ設備は、所定の粘度の、単一の製品にしか使用することができない。
また、滅菌時間は、ジュール効果管状熱交換器による流動を介して、約80分と極めて長い。
この長い時間を高温と組み合わせると、製品の流動速度が、一秒につき約5mと、速いことが余儀なくされる。
【0009】
例えば、米国特許第5976592号明細書には、磁界を利用して、製品を照射し、それにより加熱し、約15℃の水およびグリコール浴で冷却するという他の解決法が提案されている。
このような装置は、特に、複雑さ、原価および使用コストの理由から、十分に満足のいくものではない。
また、同じ設備は、所定の粘度の、同一で単一の製品の滅菌にしか使用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、化粧品の組成への防腐剤の添加を必要としない化粧品の製造方法を提案することにより、従来技術の欠点を解消することを目的とするものである。
【0011】
また、単一の設備によって、密度または粘度の異なる複数の製品の滅菌が可能である。
本発明は、製品の流動圧力を適合することによって、その滅菌時間あるいは加熱および冷却を制御する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、特定の装置を介した高温での迅速な通過、そしてそれに続く急速な冷却によって化粧品を滅菌することからなる。
【0013】
従って、本発明は、化粧品の滅菌方法であり、該方法において、前記化粧品は粘度に応じて調節された圧力の下で、温度が一定に保たれた各浴を通過しながら滅菌順路内を流動する液体によってなっている。
このような方法は、前記化粧品を事前熱浴で予熱し、前記化粧品を高温浴で数秒ほど迅速に加熱し、そして前記化粧品を、グリコールの冷却浴で急速にそして急激に冷却し、また、前記製品を滅菌雰囲気内で包装することを連続して行うことから構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、そのような滅菌方法の実施装置にも関するものであり、該装置は、調節された圧力の下で、温度が一定に保たれた製品浴の形態の前記液体の予熱手段と、高温に保たれた製品浴の形態の前記液体の高温加熱手段と、グリコール浴の形態の前記液体の冷却手段を連続して介して滅菌雰囲気下での包装手段へと向かう液体を、流動させるのに適した滅菌循路を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の工程を概略的に図示した添付図面を参照することにより、本発明の実施態様に従って行う以下の詳細な説明から明らかになるが、これらの実施態様は本発明を何ら限定する趣旨のものではない。
本発明は、化粧品の滅菌に関するものであり、前記化粧品の高温での滅菌、それに続くその急速な冷却にある。
【0017】
本発明の滅菌原理は、超高温を意味する「UHT」と呼ばれる、農産物加工分野での製品の滅菌に関連するものである。
【0018】
UHT滅菌は、製品を予熱し、そして、室温に冷却する前の短期間に高温にすることからなり、従って、このようにして加工された製品は無菌包装される。
【0019】
従って、本発明は、化粧品を予熱し、素早く高温に加熱し、そして冷却することからなる。
【0020】
本発明の特徴は、化粧品が滅菌循路1内を流動することにある。
それ以後製品は、その滅菌ならびに包装中に外部と接触することはなく、滅菌後の汚染の危険性を完全に防止する。
【0021】
実際、製品の包装は、滅菌雰囲気下で実施される。
この無菌域2は、好ましくは濾過された空気が送風される天井を備えることができる。
製品の包装は、あらゆる汚染を防止するために、そこで、空気を入れることなく真空で行われる。
【0022】
滅菌循路1は、圧力下の液体の流動に適するように設計されている。
このため、前記滅菌循路1は、導管3の形状を有しており、その内部では、入口4から出口5に向かって液体が加圧されている。
【0023】
入口4では、前記導管の一方の端部に、製品の供給と、前記滅菌循路1内の加圧を可能にする加圧手段6としてのポンプがある。
【0024】
出口5では、前記導管の反対側の端部に、無菌包装手段である無菌域2の位置に、圧力調節手段7、特に調節弁がある。
【0025】
一つの実施態様によると、滅菌循路1は、その内部を化粧品の液体が流動する、曲がりくねった管を備えている。
この曲がりくねった管の内径は、好ましくは、5mmである。
【0026】
好ましくは、一つの実施態様によると、前記滅菌循路1は、直径5〜10mmの導管を含めて、ステンレス材料で形成されている。
後ほど説明するそれぞれの浴内の曲がりくねった管の長さは、同一である。
また、特殊な形状、特に螺旋の形状は、そこを流動する製品の中心部までの均質な加熱および冷却を確実なものにする。
【0027】
従って、本発明の本質的な特徴は、化粧品が必ず液体の形態でなければならないということにあることが理解されよう。
滅菌循路1の内部の圧力は、その粘度に応じて調節される。
実施態様および滅菌循路1に入れられた液体によって、この圧力は8〜160バール、好ましくは、80〜120バールの範囲で変動する。
この高い圧力によって、製品、特に化粧品の優れた乳化を確実なものにする。
【0028】
滅菌循路1は、予熱手段8、加熱手段9および冷却手段10を順次通過するが、それに限定されるわけではない。
【0029】
好ましい実施態様によると、これらの予熱手段8、加熱手段9および冷却手段10は、温度が一定に保たれた製品の浴の形態を有するが、製品の温度は、加熱または冷却の浴の種類によって変化する。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によると、冷却手段10は、マイナス10℃のグリコール浴を備え、予熱手段8は、製品の中心を少なくとも70℃に確実に加熱するために90℃の浴を備えており、一方で、加熱手段9は、製品の中心を少なくとも135℃に確実に加熱するために180℃の熱浴を備えている。
しかしながら、様々な浴の温度の数値は、特に滅菌すべき製品に応じて変えることができる。
【0031】
多くの場合、浴の温度は安定して保持されており、変化するのは液体が前記浴内を通過する時間だけである。
実際、本発明は、製品をある熱区域から他の熱区域へと移動させることを利用すること、つまりは、該製品を晒す時間を調節することからなる。
【0032】
極めて高温の浴の通過は、数秒を越えない時間で、迅速に実施される。
特に、加熱手段9の通過時間は3秒でありうる。
【0033】
通過時間は、常に滅菌循路1を通過する液体の粘度に応じて、圧力の変化によって調節することができる。
【0034】
高温から極めて低温、好ましくは、マイナスの温度を順次通過することによって、滅菌と製品の保存性が改良される。
実際、製品がそれ自体はマイナスの温度を通過しなくても、この急激な冷却によって、前記製品の劣化が防止される。
【0035】
結局、いわゆるUHTの方法に類似した滅菌システムを介することにより、本発明は、設備を変更せずに、連続して、または、休止することなく、粘度の異なる化粧品を処理することができる。
【0036】
本発明による滅菌方法は、特に、温泉水を主成分とする化粧品の分野での用途があるであろう。
実際、高温での滅菌によって、水中に存在するミネラルおよび微量元素を保持することができる。
この分野では、特に、水性ローション、クレンジングローション、クレンジングジェル、シャンプー、水中油型乳剤などのような製品がある。
【0037】
本発明は、もちろん、図示および前記に説明した実施例に限定されるものでなく、本発明の範囲内での変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 滅菌循路
2 無菌域
3 導管
4 入口
5 出口
6 加圧手段
7 圧力調節手段
8 予熱手段
9 加熱手段
10 冷却手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/164159号明細書
【特許文献2】米国特許第5976592号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品の滅菌方法であり、該方法において、前記化粧品は粘度に応じて調節された圧力の下で、温度が一定に保たれた各浴を通過しながら滅菌順路(1)内を流動する液体によってなっており、
‐前記化粧品を事前熱浴で予熱し、
‐前記化粧品を高温の浴で数秒程度迅速に加熱し、そして前記化粧品を、グリコールの冷却浴で急速そして急激に冷却し、また、
‐前記化粧品を無菌域(2)内で包装することを連続して行うことから構成されることを特徴とする、化粧品の滅菌方法。
【請求項2】
調節された圧力の下で、
‐温度が一定に保たれた浴の形態の前記液体の予熱手段(8)と、
‐高温に保たれた浴の形態の前記液体の高温での加熱手段(9)と、
‐グリコールの浴の形態の前記液体の冷却手段(10)を連続して介して無菌域(2)での包装手段へと向かう液体を、流動させるのに適した滅菌循路(1)を備えることを特徴とする、請求項1の記載の滅菌方法を実施する化粧品の滅菌装置。
【請求項3】
前記滅菌循路(1)は、導管(3)によって構成されており、その一方の端部は、液体の加圧手段(6)を備えているのに対し、もう一方の端部は圧力調節手段(7)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
グリコール浴が、マイナス10℃であることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
予熱手段(8)の浴が、70℃であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
加熱手段(9)の熱浴が、135℃であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−541279(P2009−541279A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515934(P2009−515934)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051489
【国際公開番号】WO2007/148022
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508375620)セーエル テック (ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ) (1)
【氏名又は名称原語表記】CL TECH (SOCIETE PAR ACTIONS SIMPLIFIEE)
【Fターム(参考)】