説明

化粧建築板及びその製造方法

【課題】立体感、自然感を表出することができる化粧建築板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】窯業系材料からなると共に意匠面11に目地部13と凸部12とを設けてなる基板2と、基板2の意匠面11の全面に形成したシーラー層3と、シーラー層3の上から意匠面11の全面に形成した不透明な第1着色塗料層41と、第1着色塗料層41の上から意匠面11の凸部12に形成された不透明な第2着色塗料層42と、第2着色塗料層42の上から意匠面11の凸部12に部分的に形成され、第1着色塗料層41及び第2着色塗料層42と異なる色調を有する第3着色塗料層43と、第2着色塗料層42及び第3着色塗料層43の上から意匠面11の凸部12に形成した透明又は半透明のクリヤー層5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠面に着色模様を有する化粧建築板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、意匠面に着色模様を有する化粧建築板がある。
かかる化粧建築板の製造方法として、例えば、意匠面に凹凸を有する基板の上記意匠面の全面に、第1の色調を有する第1の不透明着色塗料を塗布し、基板の凸部にのみ、第1の色調と異なる第2の色調を有する第2の不透明着色塗料を塗布し、更に、鱗片状骨材を混入した透明又は半透明の樹脂を塗布することが開示されている(特許文献1参照)。
しかしながら、上記製造方法により得られる化粧建築板は、意匠面に奥行き感を得ることが困難であり、立体感、自然感を充分に表出することが困難である。
【0003】
【特許文献1】特許第2877664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、立体感、自然感を表出することができる化粧建築板及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、窯業系材料からなると共に、意匠面に目地部と該目地部の間に形成される凸部とを設けてなる基板と、
該基板の上記意匠面の全面に形成したシーラー層と、
該シーラー層の上から上記意匠面の全面に形成した不透明な第1着色塗料層と、
該第1着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に形成された不透明な第2着色塗料層と、
該第2着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に部分的に形成され、上記第1着色塗料層及び上記第2着色塗料層と異なる色調を有する第3着色塗料層と、
上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に形成した透明又は半透明のクリヤー層とを有することを特徴とする化粧建築板にある(請求項1)。
【0006】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記化粧建築板においては、上記第1着色塗料層が意匠面の目地部において外観上表出し、上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層が上記凸部において外観上表出する。これにより、意匠面において、目地部と凸部との奥行き感が強調される。
【0007】
また、上記クリヤー層が上記凸部に形成されているため、凸部のツヤや光沢感が表出され、凸部と目地部との間の視覚的な差異を表出することができる。即ち、視覚的に、凸部を目地部よりも前方へ引き出す効果を得ることができ、立体感を強調することができる。また、凸部に外界の景色が映り込み、更に立体感を得ることができる。
【0008】
そして、上記化粧建築板は、上記第3着色塗料層を上記凸部の一部に有する。これにより、化粧建築板の意匠面に、あたかも外界の景色が映り込んだかのような模様、即ち擬似陰影模様が形成される。この擬似陰影模様によって、上記化粧建築板に深い奥行き感を持たせ、立体感、自然感を表出することができる。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、立体感、自然感を表出することができる化粧建築板を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、窯業系材料からなると共に、意匠面に目地部と該目地部の間に形成される凸部とを設けてなる基板の上記意匠面の全面に、シーラーを塗布してシーラー層を形成するシーラー層形成工程と、
該シーラー層の上から上記意匠面の全面に、不透明な第1着色塗料を塗布して第1着色塗料層を形成する第1着色工程と、
該第1着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、不透明な第2着色塗料を塗布して第2着色塗料層を形成する第2着色工程と、
該第2着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、上記第1着色塗料及び上記第2着色塗料と異なる色調を有する第3着色塗料を、部分的に塗布して第3着色塗料層を形成する第3着色工程と、
上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、透明又は半透明のクリヤーを印刷してクリヤー層を形成するクリヤー層形成工程とを有することを特徴とする化粧建築板の製造方法にある(請求項8)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記製造方法により得られる化粧建築板においては、上記第1着色塗料層が意匠面の目地部において外観上表出し、上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層が上記凸部において外観上表出する。これにより、意匠面において、目地部と凸部との奥行き感が強調される。
【0012】
また、上記クリヤー層を上記凸部に形成するため、凸部のツヤや光沢感が表出され、凸部と目地部との間の視覚的な差異を表出することができ、立体感を強調することができる。また、凸部に外界の景色が映り込み、更に立体感を得ることができる。
そして、上記第3着色工程において、上記第3着色塗料層を上記凸部の一部に形成する。これにより、化粧建築板の意匠面に、あたかも外界の景色が映り込んだかのような模様、即ち擬似陰影模様が形成される。この擬似陰影模様によって、上記化粧建築板に深い奥行き感を持たせ、立体感、自然感を表出することができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、立体感、自然感を表出することができる化粧建築板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明(請求項1)又は上記第2の発明(請求項8)において、上記凸部は平坦面を有することが好ましい。この場合には、クリヤー層への外界景色の映り込みを効果的に得ることができる。
また、上記第1着色塗料層は、上記第2着色塗料層と異なる色調であることが好ましい。この場合には、凸部の間に形成される目地部の奥行きを効果的に強調することができる。
また、上記目地部は、上記基板の意匠面の端部にのみ設けてあってもよい。この場合、上記凸部は一つの基板につき1個形成されることとなる。
【0015】
また、上記第2着色塗料層と上記第3着色塗料層とは、互いの色差が1〜5であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記擬似陰影模様を効果的に表出することができる。
上記色差が1未満の場合には、上記擬似陰影模様が外観上表出されにくく、立体感を充分に得ることが困難となるおそれがある。一方、上記色差が5を超える場合には、上記擬似陰影模様が明確に表出されすぎ、自然な外観を得ることが困難となるおそれがある。
【0016】
ここで、上記色差とは、二つの色の間に近くされる色の隔たりを数値化した値であり、次のように求めることができる。即ち、JIS−Z−8729に規定されるL*a*b*表色系色度図において、二つの色の間のa*軸方向の差Δa*、b*軸方向の差Δb*、L*軸方向の差ΔL*を以下の式1に代入することにより、色差ΔE*が得られる。
ΔE*={(Δa*)2+(Δb*)2+(ΔL*)21/2 ・・・(式1)
【0017】
また、上記第3着色塗料層は、上記第2着色塗料層よりも彩度の低い色調を有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記第3着色塗料層が上記擬似陰影模様として表出されやすくなるという利点がある。
【0018】
また、上記第3着色塗料層は、上記凸部の10〜80%の面積を有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記擬似陰影模様をより効果的に表出することができる。
上記第3着色塗料層の面積が上記凸部の面積の10%未満の場合には、上記擬似陰影模様を充分に表出することが困難となるおそれがある。一方、上記第3着色塗料層の面積が上記凸部の面積の80%を超える場合には、上記擬似陰影模様によって自然な映り込み感を表出することが困難となるおそれがある。
【0019】
また、上記クリヤー層は、有色透明のカラークリヤー層と、鱗片状骨材を混入してなるパールクリヤー層と、上記カラークリヤー層及び上記パールクリヤー層よりも光沢度の高いツヤ出しクリヤー層とからなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、凸部のツヤや光沢感を一層表出すると共に、奥行き感を表出することができる。
【0020】
即ち、上記カラークリヤー層を設けることにより、深み付けや立体感を出すことができる。また、上記パールクリヤー層を設けることにより、鱗片状骨材による独特な光の反射効果を得て奥行き感、光沢感を表出することができる。そして、カラークリヤー層の色彩を穏やかな色彩に見せることができる。また、カラークリヤー層とパールクリヤー層を併用することにより、両者の相乗効果により一層の立体感を表出することができる。
また、上記ツヤ出しクリヤー層を設けることにより、凸部のツヤや光沢感を一層表出することができる。
これにより、凸部と目地部との間の視覚的な差異を一層表出して、立体感をより強調することができる。また、凸部に外界の景色がより映り込みやすくなる。
【0021】
なお、上記光沢度とは、JIS−Z−8741の光沢度測定方法により得られる値を言う。そして、クリヤー層として上記カラークリヤー層のみを形成した場合の意匠面の光沢度と、上記カラークリヤー層及びパールクリヤー層を形成した場合の意匠面の光沢度と、上記カラークリヤー層、パールクリヤー層、及びツヤ出しクリヤー層を順次形成した場合の意匠面の光沢度とを比較したとき、最後者の光沢度が最も高い。
また、鱗片状骨材は、例えば、プラスチック、セラミック、雲母、金属、紙等からなり、厚さに比べて面積の大きな扁平状のものを用いることができる。また、鱗片状骨材としては、一色のものを用いてもよいし、異なる複数の色調のものを混合して用いてもよい。
【0022】
また、上記パールクリヤー層の上記鱗片状骨材は、5〜100μmの粒径を有することが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記パールクリヤー層による奥行き感、光沢感表出の効果を確実に得ることができる。
上記粒径が5μm未満の場合には、上記鱗片状骨材による光反射効果を得ることが困難となり、奥行き感、光沢感を表出することが困難となるおそれがある。一方、上記粒径が100μmを超える場合には、上記鱗片状骨材の個々が目立ちすぎてしまい、自然な外観を得ることが困難となるおそれがある。
【0023】
また、上記パールクリヤー層は、上記鱗片状骨材を5〜30体積%混入していることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記第3着色塗料層による擬似陰影模様を充分に表出させつつ、パールクリヤー層による奥行き感、光沢感を充分に表出させることができる。
上記鱗片状骨材が5体積%未満の場合には、上記パールクリヤー層による奥行き感、光沢感を充分に表出することが困難となるおそれがある。一方、上記鱗片状骨材が30体積%を超える場合には、上記擬似陰影模様が隠れてしまい、充分な立体感、自然感を得ることが困難となるおそれがある。
【0024】
次に、上記第2の発明(請求項8)において、上記第3着色塗料は、上記第2着色塗料よりも彩度の低い色調を有することが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記第3着色塗料層が上記擬似陰影模様として表出されやすくなるという利点がある。
【0025】
また、上記第3着色塗料層は、上記凸部の10〜80%の面積を有することが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記擬似陰影模様をより効果的に表出することができる。
【0026】
また、上記クリヤー層を形成するに当っては、上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、有色透明のカラークリヤーを印刷してカラークリヤー層を形成し、次いで、鱗片状骨材を混入してなるパールクリヤーを印刷してパールクリヤー層を形成し、次いで、上記カラークリヤー層及び上記パールクリヤー層よりも光沢度の高いツヤ出しクリヤーを印刷してツヤ出しクリヤー層を形成することが好ましい(請求項11)。
この場合には、凸部のツヤや光沢感を一層表出すると共に、奥行き感を表出することができる。
【0027】
また、上記パールクリヤーに混入された上記鱗片状骨材は、5〜100μmの粒径を有することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記パールクリヤー層による奥行き感表出の効果を確実に得ることができる。
【0028】
また、上記パールクリヤーは、上記鱗片状骨材を5〜30体積%混入してなることが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記第3着色塗料層による擬似陰影模様を充分に表出させつつ、パールクリヤー層による奥行き感、光沢感を充分に表出させることができる。
上記鱗片状骨材の混入割合が5体積%未満の場合には、上記パールクリヤーを塗布したとき、上記パールクリヤー層による奥行き感、光沢感を充分に表出させることが困難となるおそれがある。一方、上記鱗片状骨材の混入割合が30体積%を超える場合には、上記パールクリヤーを塗装したとき、上記擬似陰影模様が隠れてしまい、充分な立体感、自然感を得ることが困難となるおそれがある。
【0029】
また、上記第3着色塗料は、上記基板上に塗布された上記第2着色塗料が半乾燥状態にあるときに、上記第2着色塗料層の上に塗布することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記第3着色塗料が上記第2着色塗料と部分的に馴染み、融合し、第2着色塗料層と第3着色塗料層との間の境界線がぼけることとなり、より自然な擬似陰影模様を得ることができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる化粧建築板及びその製造方法につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例の化粧建築板1は、図1、図2に示すごとく、窯業系材料からなると共に意匠面11に目地部13と該目地部の間に形成される凸部12とを設けてなる基板2と、該基板2の意匠面11に順次形成したシーラー層3、第1着色塗料層41、第2着色塗料層42、第3着色塗料層43、及びクリヤー層5とを有する。
【0031】
上記シーラー層3は、基板2の意匠面11の全面に形成してある。
また、上記第1着色塗料層41は、シーラー層3の上から意匠面11の全面に形成された、不透明な層である。
第2着色塗料層42は、第1着色塗料層41の上から意匠面11の凸部12に形成された不透明な層である。
【0032】
上記第3着色塗料層43は、第2着色塗料層42の上から意匠面11の凸部12に部分的に形成され、第1着色塗料層41及び第2着色塗料層42と異なる色調を有する。
上記クリヤー層5は、第2着色塗料層42及び第3着色塗料層43の上から意匠面11の凸部12に形成された、透明又は半透明の層である。
【0033】
第2着色塗料層42と第3着色塗料層43とは、互いの色差が1〜5である。第3着色塗料層43は、第2着色塗料層42よりも彩度の低い色調を有する。例えば、第3着色塗料層43は、黒色系、黒灰色系、灰色等の色調を有し、上記第2着色塗料は、白色系、灰白色系、水色、クリーム色等の色調を有する。
また、第1着色塗料層41は、第2着色塗料層42と異なる色調を有する。例えば、第1着色塗料層41は、黒灰色系、白色系、灰白色系等の色調を有する。
【0034】
また、図3に示すごとく、第3着色塗料層43は、凸部12の10〜80%の面積を有する。そして、第3着色塗料層43は、平面視において、自然な風合いを表出するようなランダムな形状であることが好ましい。例えば巻雲、巻積雲、高積雲等の雲形状等といった形状とすることができる。
【0035】
また、クリヤー層5は、図2に示すごとく、有色透明のカラークリヤー層51と、鱗片状骨材521を混入してなるパールクリヤー層52と、カラークリヤー層51及びパールクリヤー層52よりも光沢度の高いツヤ出しクリヤー層53とからなる。
また、パールクリヤー層52には、5〜100μmの粒径を有する鱗片状骨材521が5〜30体積%混入されている。
鱗片状骨材521は、プラスチック、セラミック、雲母、金属、紙等からなり、厚さに比べて面積の大きな扁平状のものを用いる。また、鱗片状骨材521としては、一色のものを用いてもよいし、異なる複数の色調のものを混合して用いてもよい。
【0036】
図1、図2に示すごとく、上記凸部12は平坦面を有する。そして、複数の凸部12の間には目地部13が形成されている。目地部13の深さは、例えば2〜7mmである。そして、該目地部13が意匠面11において溝状に形成されることにより、複数の上記凸部12が形成されている。
【0037】
次に、上記化粧建築板1を製造するに当たっては、以下のシーラー層形成工程、第1着色工程、第2着色工程、第3着色工程、クリヤー層形成工程とを行う。
即ち、上記シーラー層形成工程においては、窯業系材料からなると共に意匠面11に目地部13を設けてなる基板2の意匠面11の全面に、シーラーを塗布してシーラー層3を形成する。
【0038】
上記第1着色工程においては、シーラー層3の上から意匠面11の全面に、不透明な第1着色塗料を塗布して第1着色塗料層41を形成する。
上記第2着色工程においては、第1着色塗料層41の上から意匠面11の凸部12に、第1着色塗料と異なる色調を有する不透明な第2着色塗料を塗布して第2着色塗料層42を形成する。
【0039】
上記第3着色工程においては、第2着色塗料層42の上から意匠面11の凸部12に、第1着色塗料及び第2着色塗料と異なる色調を有する第3着色塗料を、部分的に塗布して第3着色塗料層43を形成する。
上記クリヤー層形成工程においては、第2着色塗料層42及び第3着色塗料層43の上から意匠面11の凸部12に、透明又は半透明のクリヤーを印刷してクリヤー層5を形成する。
【0040】
この化粧建築板1の製造方法につき、図4を用いて詳説する。
まず、所定の形状に形成された基板2を塗装ラインに投入する(ステップS1)。上記基板2としては、例えば、木片とセメント等の水硬性結合材と水とを混合して得た原料混合物を型板上に散布して圧締プレスした後、養生硬化することにより得られる窯業系の板状体を用いることができる。
【0041】
次いで、基板2の裏側面26に、防水を目的としたバックシーラーを塗装し、乾燥する(ステップS2、S3)。
次いで、基板2の意匠面11の全面に防水用のシーラーをスプレー塗装し、乾燥することにより、シーラー層3を形成する(ステップS4、S5)。
【0042】
次いで、シーラー層3の上から、意匠面11の全面に第1着色塗料をスプレー塗装し、乾燥することにより、第1着色塗料層41を形成する(ステップS6、S7)。
次いで、第1着色塗料層41の上から、凸部12に第2着色塗料をロールコータを用いて塗布し、乾燥することにより、第2着色塗料層42を形成する(ステップS8、S9)。このとき、目地部13には第2着色塗料を塗布しない。また、第2着色塗料の乾燥は、いわゆる指触乾燥状態となるような半乾燥とする。
【0043】
次いで、半乾燥状態の第2着色塗料層42の上から、凸部13に部分的に第3着色塗料を塗布し、乾燥することにより、第3着色塗料層43を形成する(ステップS10、S11)。第2着色塗料と第3着色塗料とは、互いの色差が1〜5である。また、第3着色塗料は、第2着色塗料よりも彩度の低い色調を有する。
【0044】
次いで、第2着色塗料層42及び第3着色塗料層43の上から、凸部12に有色透明のカラークリヤー、鱗片状骨材を5〜30体積%混入したパールクリヤー、光沢度の高いツヤ出しクリヤーを、順次グラビア印刷した後、乾燥する(ステップS12〜S15)。これにより、カラークリヤー層51とパールクリヤー層52とツヤ出しクリヤー層53とからなるクリヤー層5を形成する。
以上により、化粧建築板1が得られ、該化粧建築板1を塗装ラインから取り出す(ステップS16)。
【0045】
カラークリヤー、パールクリヤー、及びツヤ出しクリヤーは、それぞれ、透明又は半透明の樹脂液からなる。該樹脂液としては、例えば、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、又はフッ素系樹脂を含む樹脂液を用いることができる。
【0046】
そして、カラークリヤーは、顔料を少量上記の樹脂液に添加することにより、有色透明状態となっている。また、パールクリヤーは、上述のごとく、上記樹脂液に鱗片状骨材521を混入してある。また、ツヤ出しクリヤーは、上記樹脂液をそのまま用いることにより、光沢度を確保している。
【0047】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記化粧建築板1においては、上記第1着色塗料層41が意匠面11の目地部13において外観上表出し、上記第2着色塗料層42及び上記第3着色塗料層43が上記凸部12において外観上表出する。これにより、意匠面11において、目地部13と凸部12との奥行き感が強調される。
【0048】
また、上記クリヤー層5が上記凸部12に形成されているため、凸部12のツヤや光沢感が表出され、凸部12と目地部13との間の視覚的な差異を表出することができる。即ち、視覚的に、凸部12を目地部13よりも前方へ引き出す効果を得ることができ、立体感を強調することができる。また、凸部12に外界の景色が映り込み、更に立体感を得ることができる。
【0049】
そして、上記化粧建築板1は、上記第3着色塗料層43を上記凸部12の一部に有する。これにより、図3に示すごとく、化粧建築板1の意匠面11に、あたかも外界の景色が映り込んだかのような模様、即ち擬似陰影模様6が形成される。この擬似陰影模様6によって、上記化粧建築板1に深い奥行き感を持たせ、立体感、自然感を表出することができる。
【0050】
また、第2着色塗料層42と第3着色塗料層43とは、互いの色差が1〜5であるため、上記擬似陰影模様6を効果的に表出することができる。
また、第3着色塗料層43は、第2着色塗料層42よりも彩度の低い色調を有するため、上記第3着色塗料層43が擬似陰影模様6として表出されやすくなるという利点がある。
また、第3着色塗料層43は、凸部12の10〜80%の面積を有するため、擬似陰影模様6をより効果的に表出することができる。
【0051】
また、クリヤー層5は、有色透明のカラークリヤー層51と、鱗片状骨材521を混入してなるパールクリヤー層52と、光沢度の高いツヤ出しクリヤー層53とからなる。そのため、凸部12のツヤや光沢感を一層表出すると共に、奥行き感を表出することができる。
【0052】
即ち、カラークリヤー層51を設けることにより、深み付けや立体感を出すことができる。また、パールクリヤー層52を設けることにより、鱗片状骨材521による独特な光の反射効果を得て奥行き感、光沢感を表出することができる。そして、カラークリヤー層51の色彩を穏やかな色彩に見せることができる。また、カラークリヤー層51とパールクリヤー層52を併用することにより、両者の相乗効果により一層の立体感を表出することができる。
また、ツヤ出しクリヤー層53を設けることにより、凸部12のツヤや光沢感を一層表出することができる。
これにより、凸部12と目地部13との間の視覚的な差異を一層表出して、立体感をより強調することができる。また、凸部12に外界の景色がより映り込みやすくなる。
【0053】
また、パールクリヤー層52の鱗片状骨材521は、5〜100μmの粒径を有するため、パールクリヤー層52による奥行き感、光沢感表出の効果を確実に得ることができる。
また、パールクリヤー層52は、鱗片状骨材を5〜30体積%混入してなる。そのため、第3着色塗料層43による擬似陰影模様6を充分に表出させつつ、パールクリヤー層52による奥行き感、光沢感を充分に表出させることができる。
【0054】
また、第3着色塗料層43を形成するに当り、第3着色塗料は、基板2上に塗布された第2着色塗料が半乾燥状態にあるときに、第2着色塗料層42の上に塗布する。これにより、第3着色塗料が第2着色塗料と部分的に馴染み、融合して、第2着色塗料層42と第3着色塗料層43との間の境界線がぼけることとなり、より自然な擬似陰影模様6を得ることができる。
【0055】
以上のごとく、本例によれば、立体感、自然感を表出することができる化粧建築板及びその製造方法を提供することができる。
【0056】
(実施例2)
本例は、第2着色塗料層42と第3着色塗料層43との色差により、化粧建築板1の外観がどのように変わるかを評価した例である。
評価方法としては、第2着色塗料層42と第3着色塗料層43との色差が異なる6種類の化粧建築板1を作製し、それぞれの外観を目視により確認した。色差の測定には、ミノルタ社製の色彩計(MINOLTA CR-300)を用いた。
また、評価対象の化粧建築板1は、上記色差以外については、実施例1に示した構成を有する。
【0057】
そして、外観の評価としては、自然な外観・立体感を表現できる程度によって、4段階に分けて行った。評価結果を表1に示す。表1において、「充分自然な外観・立体感を表現できるもの」を「◎」、「自然な外観・立体感を表現できるもの」を「○」、「若干落ちるが自然な外観・立体感を表現できるもの」を「△」、「自然な外観・立体感を表現できないもの」を「×」として表す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より分かるように、色差が1未満であると、自然な外観・立体感が得られない。また、色差が1〜5であれば、自然な外観・立体感を得ることは可能であるが、色差が3〜4であることがより好ましいことが分かる。
【0060】
(実施例3)
本例は、凸部12における第3着色塗料層43の面積の割合による化粧建築板1の外観の違いにつき評価した例である。
即ち、第3着色塗料層43の面積を種々変化させたとき、それぞれの意匠面11において、外界の景色があたかも映り込んでいるかのような自然な映り込み感がどの程度あるかを4段階で評価した。評価結果を表2に示す。表2において、「充分自然な映り込み感があるもの」を「◎」、「自然な映り込み感があるもの」を「○」、「若干落ちるが自然な映り込み感があるもの」を「△」、「自然な映り込み感がないもの」を「×」として表す。
また、評価対象の化粧建築板1は、上記第3着色塗料層43の面積比以外については、実施例1に示した構成を有する。
【0061】
【表2】

【0062】
表2より分かるように、第3着色塗料層43の面積比が10〜80%であれば、外界景色の自然な映り込み感を得ることが可能である。また、第3着色塗料層43が半分程度であることが特に好ましいことが分かる。
【0063】
(実施例4)
本例は、パールクリヤー層52における鱗片状骨材521の混入量による、化粧建築板1の外観の違いにつき評価した例である。
即ち、鱗片状骨材521の混入量を種々変化させたとき、それぞれの意匠面11において、奥行き感・立体感・自然感がどの程度あるかにより4段階で評価した。評価結果を表3に示す。表3において、「充分奥行き感・立体感・自然感があるもの」を「◎」、「奥行き感・立体感・自然感があるもの」を「○」、「若干落ちるが奥行き感・立体感・自然感があるもの」を「△」、「奥行き感・立体感・自然感がないもの」を「×」として表す。
また、評価対象の化粧建築板1は、上記鱗片状骨材521の混入量以外については、実施例1に示した構成を有する。
【0064】
【表3】

【0065】
表3より分かるように、パールクリヤー層52における鱗片状骨材521の混入量が5体積%以上であれば、奥行き感・立体感・自然感を得ることが可能である。また、混入量が5〜30体積%であることが好ましいことが分かる。
【0066】
(実施例5)
本例は、パールクリヤー層52における鱗片状骨材521の粒径による、化粧建築板1の外観の違いにつき評価した例である。
即ち、鱗片状骨材521の粒径を種々変化させたとき、それぞれの意匠面11において、奥行き感・立体感・自然感がどの程度あるかにより、実施例4と同様の4段階で評価した。評価結果を表4に示す。
また、評価対象の化粧建築板1は、鱗片状骨材521の粒径以外については、実施例1に示した構成を有する。
【0067】
【表4】

【0068】
表4より分かるように、パールクリヤー層52における鱗片状骨材521の粒径が5〜100μmであれば、奥行き感・立体感・自然感を得ることが可能である。また、鱗片状骨材521の粒径が5〜75μmであることが好ましいことが分かる。
【0069】
なお、上記実施例1においては、意匠面11の端部以外にも目地部13を設けて、凸部12を複数形成した化粧建築板1を示したが、目地部13は、意匠面11の端部にのみ設け、凸部12を1個とすることもできる。また、第1着色塗料層41と第2着色塗料層42とは、異なる色調であっても同じ色調であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1における、化粧建築板の断面説明図。
【図2】実施例1における、化粧建築板の意匠面に設けた塗料層及びクリヤー層の説明図。
【図3】実施例1における、意匠面の凸部の平面図。
【図4】実施例1における、化粧建築板の製造方法のフロー図。
【符号の説明】
【0071】
1 化粧建築板
11 意匠面
12 凸部
13 目地部
2 基板
3 シーラー層
41 第1着色塗料層
42 第2着色塗料層
43 第3着色塗料層
5 クリヤー層
51 カラークリヤー層
52 パールクリヤー層
53 ツヤ出しクリヤー層
6 擬似陰影模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯業系材料からなると共に、意匠面に目地部と該目地部の間に形成される凸部とを設けてなる基板と、
該基板の上記意匠面の全面に形成したシーラー層と、
該シーラー層の上から上記意匠面の全面に形成した不透明な第1着色塗料層と、
該第1着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に形成された不透明な第2着色塗料層と、
該第2着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に部分的に形成され、上記第1着色塗料層及び上記第2着色塗料層と異なる色調を有する第3着色塗料層と、
上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に形成した透明又は半透明のクリヤー層とを有することを特徴とする化粧建築板。
【請求項2】
請求項1において、上記第2着色塗料層と上記第3着色塗料層とは、互いの色差が1〜5であることを特徴とする化粧建築板。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記第3着色塗料層は、上記第2着色塗料層よりも彩度の低い色調を有することを特徴とする化粧建築板。
【請求項4】
請求項3において、上記第3着色塗料層は、上記凸部の10〜80%の面積を有することを特徴とする化粧建築板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記クリヤー層は、有色透明のカラークリヤー層と、鱗片状骨材を混入してなるパールクリヤー層と、上記カラークリヤー層及び上記パールクリヤー層よりも光沢度の高いツヤ出しクリヤー層とからなることを特徴とする化粧建築板。
【請求項6】
請求項5において、上記パールクリヤー層の上記鱗片状骨材は、5〜100μmの粒径を有することを特徴とする化粧建築板。
【請求項7】
請求項5又は6において、上記パールクリヤー層は、上記鱗片状骨材を5〜30体積%混入してなることを特徴とする化粧建築板。
【請求項8】
窯業系材料からなると共に、意匠面に目地部と該目地部の間に形成される凸部とを設けてなる基板の上記意匠面の全面に、シーラーを塗布してシーラー層を形成するシーラー層形成工程と、
該シーラー層の上から上記意匠面の全面に、不透明な第1着色塗料を塗布して第1着色塗料層を形成する第1着色工程と、
該第1着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、不透明な第2着色塗料を塗布して第2着色塗料層を形成する第2着色工程と、
該第2着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、上記第1着色塗料及び上記第2着色塗料と異なる色調を有する第3着色塗料を、部分的に塗布して第3着色塗料層を形成する第3着色工程と、
上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、透明又は半透明のクリヤーを印刷してクリヤー層を形成するクリヤー層形成工程とを有することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、上記第3着色塗料は、上記第2着色塗料よりも彩度の低い色調を有することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、上記第3着色塗料層は、上記凸部の10〜80%の面積を有することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項において、上記クリヤー層を形成するに当っては、上記第2着色塗料層及び上記第3着色塗料層の上から上記意匠面の凸部に、有色透明のカラークリヤーを印刷してカラークリヤー層を形成し、次いで、鱗片状骨材を混入してなるパールクリヤーを印刷してパールクリヤー層を形成し、次いで、上記カラークリヤー層及び上記パールクリヤー層よりも光沢度の高いツヤ出しクリヤーを印刷してツヤ出しクリヤー層を形成することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、上記パールクリヤーに混入された上記鱗片状骨材は、5〜100μmの粒径を有することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、上記パールクリヤーは、上記鱗片状骨材を5〜30体積%混入してなることを特徴とする化粧建築板の製造方法。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか一項において、上記第3着色塗料は、上記基板上に塗布された上記第2着色塗料が半乾燥状態にあるときに、上記第2着色塗料層の上に塗布することを特徴とする化粧建築板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−264036(P2006−264036A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83622(P2005−83622)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】