説明

化粧建築板

【課題】インク受理層へのインクの定着性を高く、また、インク受理層の強度低下も防止することができる化粧建築板を提供する。
【解決手段】基材1の表面にインク受理層2を形成する。インク受理層2の表面にインクジェット印刷層3を形成した化粧建築板に関する。インク受理層2にアスペクト比の高いフィラーを配合する。そのアスペクト比が3〜70であることを特徴とする。フィラーがインク受理層2の表面にささくれ立つように配向しやすくなる。球状のフィラーを用いる場合に比べて、インク受理層2へのフィラーの配合量を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、窯業系の基材にインクジェット印刷による塗装を施して所望の模様を有する化粧建築板を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。このような化粧建築板では、インクジェット印刷で塗装されるインクの定着性を高くするために、基材の表面にインク受理層(インク受容層)を設け、このインク受理層の表面にインクジェット印刷によりインクを吹き付けて塗装するようにしている。
【0003】
このようなインク受理層にはインクの定着成分としてフィラーを配合しているが、フィラーとして球状のものを用いてこれの配合量を多くすると、インクの定着性は向上するが、インク受理層の強度が低くなって脆くなるという問題があり、クラックが生じてボロボロになったり基材から剥離して脱落したりするおそれがあった。
【特許文献1】特開2006−88502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、インク受理層へのインクの定着性を高く、また、インク受理層の強度低下も防止することができる化粧建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る化粧建築板は、基材1の表面にインク受理層2を形成し、インク受理層2の表面にインクジェット印刷層3を形成した化粧建築板において、インク受理層2にアスペクト比の高いフィラーを配合し、そのアスペクト比が3〜70であることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る化粧建築板は、基材1の表面にインク受理層2を形成し、インク受理層2の表面にインクジェット印刷層3を形成した化粧建築板において、インク受理層2にアスペクト比の高いフィラーを配合し、そのフィラーが繊維状、針状、板状の少なくとも一つであることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係る化粧建築板は、請求項1又は2に加えて、フィラーの長径が30μm以下、短径が0.1μm以上であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4に係る化粧建築板は、請求項1乃至3に加えて、インク受理層2を形成するための塗料に含有されている固形分の全量に対して、5〜100質量%のフィラーを配合して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、アスペクト比が3〜70である高アスペクト比のフィラーをインク受理層2に配合することによって、フィラーがインク受理層2の表面にささくれ立つように配向しやすくなり、インクジェット印刷層3を形成するインクの定着性を高くすることができるものである。このため、球状のフィラーを用いる場合に比べて、インク受理層2へのフィラーの配合量を少なくすることができ、インク受理層の強度低下も防止することができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、繊維状、針状、板状の少なくとも一つである高アスペクト比のフィラーをインク受理層2に配合することによって、フィラーがインク受理層2の表面にささくれ立つように配向しやすくなり、インクジェット印刷層3を形成するインクの定着性を高くすることができるものである。このため、球状のフィラーを用いる場合に比べて、インク受理層2へのフィラーの配合量を少なくすることができ、インク受理層の強度低下も防止することができるものである。また、繊維状、針状、板状のフィラーはアスペクト比の高いフィラーの中でも容易に入手が可能な形状のものであり、インクの定着性の高いインク受理層2を容易に形成することができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、長径が30μm以下、短径が0.1μm以上であるフィラーを用いるので、フィラーがインク受理層2中で折れ曲がったり折れて破損したりするのを少なくすることができ、フィラーがインク受理層2の表面にささくれ立つように配向しやすくなるものである。
【0012】
請求項4の発明では、インク受理層2を形成する塗料の固形分に対してフィラーを5質量%以上配合することによって、インク受理層2のインク定着性を損なわないようにすることができ、また、インク受理層2を形成する塗料の固形分に対してフィラーを100質量%以上配合することによって、塗料のチクソ性(チキソトロピー)が上がりすぎないようにして塗装時の取り扱い性が低下しないようにすることができ、しかも、インク受理層2の脆さを小さくすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明に係る化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、インク受理層2、インクジェット印刷層3、有機塗料層4、無機質塗料層5、光触媒塗料層6をこの順に積層することによって形成することができる。
【0015】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものであり、水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填材としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプあるいはそれらの混合物のパルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、長網式や丸網式などの各種の抄造法による抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、成形の後の抄造シート等の成形シートを、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って硬化することによって、外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。例えば、基材1を抄造法により成形する場合は、原料組成物としては、水硬性材料のセメント成分が30〜95質量%、シリカ、珪石粉、フライアッシュ等の充填材が2〜60質量%、パルプ等の補強繊維が3〜10質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水40〜100質量部程度の割合としたスラリーを用いることができる。
【0016】
このように作製される窯業系基材の外装材の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーにより目止めを行い、基材1表面への塗料などの吸い込みのばらつきを調整するようにしてもよい。使用されるシーラーとしては、特に限定されるものではないが、アクリル系やラテックス系のものを使用することができる。このシーラーの上には意匠性や耐久性の向上のために、アクリル系やラテックス系の有機塗膜を形成するようにしてもよい。その他、基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることができる。
【0017】
そして化粧建築板を製造するにあたっては、上記のような基材1の表面にまず、必須ではないが、一般的にはシーラー(図示省略)を塗る。ここで、シーラーとして着色したものを用いることで、基材1の表面を所望の色に着色することができる。また、基材1に顔料等を配合してその表面を所望の色に着色したものを用い、この表面に透明のシーラーを塗布しても良い。
【0018】
上記のようにシーラーを塗布して処理した後にインク受理層2を形成する。インク受理層2は、この上に形成されるインクジェット印刷層3のインクを定着させるために必要な層であり、水性塗料などをベース塗料として形成することができる。このように、水性塗料でインク受理層2を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。
【0019】
インク受理層2を形成するための水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。また、インク受理層2を形成するための塗料はベース塗料(水性塗料)にフィラーを配合して調製する。
【0020】
フィラーはインク受理層2にインクジェット印刷層3のインクを定着させるための成分であって、このフィラーによりインクの定着率が高まって印刷画像(印刷柄)が鮮明になるものであり、また、フィラーによりインク受理層2が補強されて耐久性が向上するものである。フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウム、二酸化チタン、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、シリカ、グラスウールなどの無機物で形成することができる。また、本発明で用いるフィラーは高アスペクト比を有するものである。ここで、アスペクト比とは、フィラーの長径と短径との比率であって、アスペクト比=長径/短径の式で規定されるものである。尚、フィラーが繊維状及び針状の場合は、長径として長さ、短径として直径を用いるものであり、フィラーが板状の場合は、長径として長辺、短径として厚みの各部分の寸法を用いるものである。また、本発明で用いるフィラーのアスペクト比は3〜70の高アスペクト比であることが好ましい。フィラーのアスペクト比が3よりも小さいと、インク受理層2をフィラーで補強することができず、インク受理層2の強度が低下するおそれがある。フィラーのアスペクト比が70よりも大きいと、インク受理層2を形成するための塗料のチクソ性が上がりすぎ、塗料の塗布時に粘度が大きくなって塗布しにくくなるなどの取り扱い性が低下するおそれがあり、また、インク受理層2の塗膜の脆さが顕著になるおそれがある。
【0021】
また、フィラーとしては、長径が30μm以下で且つ短径が0.1μm以上であるフィラーを用いるのが好ましい。フィラーの長径が30μmより大きかったり(長すぎたり)、短径が0.1μmよりも小さかったり(細すぎたり)すると、フィラー自身が折れ曲がったり折れて破損したりして、フィラーがインク受理層2の表面にささくれ立つように配向しなくなるおそれがある。尚、フィラーの長径の下限は1.0μm以上、短径の上限は1.0μm以下であることが、入手が容易であるため好ましい。
【0022】
また、フィラーとしては繊維状のもの、針状のもの、板状のものを単独で用いたりあるいは二種以上を併用したりすることができ、これにより、球状のフィラーを用いる場合に比べて、インク受理層2の表面にフィラーがささくれ立って(フィラーの先端が細かく裂けた状態)で配向しやすくなり、フィラーによるインクの捕捉性が高くなってインク受理層2のインクの定着性が向上するものである。また、このように繊維状、針状、板状のフィラーはインクの捕捉性が高いために球状のフィラーを用いる場合に比べてインク受理層2への配合量が少なくてもインク受理層2のインクの定着性が損なわれない。よって、インク受理層2へのフィラーの配合量を抑えることができ、インク受理層2の塗膜の強度低下を防止することができるものである。尚、インク受理層2へのフィラーの配合量を調整することにより球状のフィラーを用いる場合に比べてインク受理層2の塗膜の強度低下を向上させることができる場合もある。
【0023】
また、フィラーはインク受理層2を形成するための塗料に含有されている固形分の全量に対して、5〜100質量%配合するのが好ましい。フィラーの配合量がインク受理層2用の塗料の固形分に対して5質量%未満であると、インクの定着性が低くなるおそれがある。フィラーの配合量がインク受理層2用の塗料の固形分に対して100質量%を超えると、インク受理層2を形成するための塗料のチクソ性が上がりすぎ、塗料の塗布時に粘度が大きくなって塗布しにくくなるなどの取り扱い性が低下するおそれがあり、また、インク受理層2の塗膜の脆さが顕著になるおそれがある。尚、インク受理層2を形成するための塗料に含有されている固形分とは、該塗料の溶媒を除いた成分であり、インク受理層2として基材1の表面に残存する成分である。従って、インク受理層2を形成するための塗料のベース塗料の樹脂成分やフィラーなどが固形分である。
【0024】
また、インク受理層2を形成するための塗料は、基材1の表面に塗布量30〜200g/m・wetで塗布するのが好ましく、その塗布方法としては、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。例えば、スプレー方式やベル方式でインク受理層2を形成するための塗料を塗布する場合、スプレーミストの固形分濃度(NV)が高い状態で塗着する、いわゆる「ドライミスト状態での塗布」によって、インク受理層2の表面に微細な凹凸を付けることができるので、この手法を利用してインク受理層2の表面粗さ(JIS B 0601で規定される平均算術粗さ(Ra))の調整を行うことができる。この場合、元々、NVの高い水性塗料を塗布するようにしてもよいが、NVが高いとスプレーやベルでの塗布に障害が起きる場合があるので、ガン距離を調整したり、ベルの回転数を調整したりしてドライミストの塗着状態を調整するのが好ましい。
【0025】
インク受理層2の厚みは20〜180μmであることが好ましい。インク受理層2の厚みが20μmより薄いと、基材1を十分に保護することができなくなったり、インクジェット印刷層3用の水性インクの吸収性が低下したりするおそれがあり、逆に、インク受理層2の厚みが180μmより厚いと、透明性が低下したり、乾燥性が悪く、タレが生じたり、クラックが生じたりするおそれがある。
【0026】
上記のようにして形成されるインク受理層2は着色顔料を配合し、着色化できる。また、インク受理層2の表面粗さは、JIS B 0601で規定される平均算術粗さ(Ra)で0.2〜10μmであることが好ましい。インク受理層2の表面粗さが0.2μm未満であると、インクジェット印刷層3のインクの定着性が低下する恐れがある。また、インク受理層2の表面粗さが10μmより大きくなってもインク顔料を定着する凹凸性に乏しくなり定着性低下を招くおそれがある。
【0027】
上記のようにしてインク受理層2を形成した後、その表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット印刷層3を形成する。ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、図2に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、噴射ノズル7を設けた塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7に水性インクを供給する塗料供給タンク9、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム10などを設けたインクジェット式塗装機11と、基材1を搬送する搬送コンベア12とを備えて形成されるものである。
【0028】
塗装ノズルヘッド8は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク9も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク9yは塗装ノズルヘッド8yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク9cは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク9mは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク9kは塗装ノズルヘッド8kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0029】
塗装制御システム10は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンのデータを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄のパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また、噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの各噴射ノズル7に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル7を制御するものである。各噴射ノズル7は例えばピエゾ制御方式や光熱交換素子にレーザー光を照射して制御する方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル7を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
【0030】
搬送コンベア12は、インクジェット式塗装機11の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
【0031】
そして、上記のように形成されるインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、まず、インク受理層2を形成した基材1を搬送コンベア12上に導入する。導入された基材1はそのまま送られてインクジェット式塗装機11の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア12で送りながら、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから水性インクを噴射させて塗着させることによって、インク受理層2の表面にインクジェット印刷層3を形成することができるものである。このように塗装された基材1はさらに送られ、次工程に搬出されるものである。
【0032】
ここで、インクジェット印刷により塗装された水性インクのインク受理層2への侵入深さ(浸透深さ)は0.2〜5μmであることが好ましい。これにより、水性インクの滲みを防止して、フルカラー印刷による鮮明な絵柄を得ることができるものである。しかし、水性インクのインク受理層2への侵入深さが0.2μm未満である場合は、水性インクが弾かれやすい場合であって、発色性が悪くなるおそれがあり、逆に、水性インクのインク受理層2への侵入深さが5μmを超える場合は、水性インクを多量に使用している場合であるが、その割には発色性が悪くなるおそれがある。なお、侵入深さの測定は、1000倍程度の倍率でマイクロスコープ又はSEMにより断面観察することによって行うことができる。
【0033】
インクジェット印刷層3を形成した後、図1に示すように、このインクジェット印刷層3の表面にクリアーな有機塗料層(クリアー層)4を形成することができる。有機塗料層4は、この下に形成されたインクジェット印刷層3を保護する層であり、有機溶剤で希釈した塗料で形成することもできるが、水性塗料で形成するのが好ましい。このように、水性塗料で有機塗料層4を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。有機塗料層4用の水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いるのが好ましい。これにより、後述する無機質塗料層5を有機塗料層4に強く付着させることができるものである。また、この水性塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくのが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。また、有機塗料層4を水性塗料で形成するにあたっては、インクジェット印刷層3の表面に水性塗料を塗布量20〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、100〜200℃、30秒以上の条件で行うのが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度等環境条件によって、化粧建築板の耐久性が低下しやすくなる場合がある。なお、この水性塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0034】
その後、図1に示すように、有機塗料層4の表面に無機質塗料層5を形成することができる。無機質塗料層5は、化粧建築板の耐候性等の耐久性を向上させる層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、紫外線吸収剤、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第3242442号公報や特許第3193832号公報に記載されたコーティング用組成物や、特開平9−249822号公報に記載された無機コーティング剤で形成することができる。
【0035】
無機質塗料の具体例として、特許第3242442号公報に記載されたコーティング用組成物を以下に挙げる。すなわち、
(A)一般式(I)
SiX4−n…(I)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液、
(B)平均組成式(II)
Si(OH)(4−a−b)/2…(II)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)で表わされ、成分中のRにフェニル基を全R基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン、および、 (C)(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する触媒を必須成分とし、(A)成分においてシリカを固形分として5〜95重量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、(A)成分1〜99重量部に対して(B)成分99〜1重量部が配合されているコーティング用組成物である。
【0036】
そして、無機質塗料層5を形成するにあたっては、有機塗料層4を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて無機質塗料を塗布することによって行うことができる。このとき、乾燥条件は、100〜200℃、1〜5分間であることが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度条件によっては、無機質塗料層5の耐久性能が発揮されないおそれがあると共に、後述する光触媒塗料層6の性能を十分に引き出すことができないおそれがある。また、無機質塗料層5を形成するにあたっては、有機塗料層4の表面に無機質塗料を塗布量4〜40g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が4g/m・dryより少ないと、耐候性等の耐久性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が40g/m・dryより多いと、硬化収縮が大きくなり、クラック等が発生するおそれがある。
【0037】
さらに、本発明においては、図1に示すように無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層6を形成するのが好ましい。光触媒塗料層6は、超親水性を有しており、化粧建築板の防汚性を向上させるために必要な層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、光触媒、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第2776259号公報に記載された抗菌性無機塗料や、松下電工(株)製「フレッセラPS1000」で形成することができる。
【0038】
光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて光触媒塗料層形成用塗料を塗布することによって行うことができる。このように、基材1をあらかじめ加温しておくことで、光触媒塗料層6を形成した後の乾燥工程でのエネルギーを小さく抑えることができるものである。また、光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層形成用塗料を塗布量0.5〜5g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が0.5g/m・dryより少ないと、防汚性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が5g/m・dryより多いと、化粧建築板が乳白色となり、意匠性が低下するおそれがある。
【0039】
上記のようにして形成される化粧建築板にあっては、有機塗料層4の表面に無機質塗料層5が形成されているので、無機質塗料層5が形成されていない従来のものに比べて、耐候性等の耐久性を高く得ることができるものである。また、光触媒塗料層6を設けた化粧建築板にあっては、化粧建築板の表面に付着した有機物などの汚れは、光触媒塗料層6の光触媒作用によって分解されると共に、光触媒塗料層6が超親水性を発現することにより、分解した汚れを雨水等によって容易に除去することができるので、化粧建築板の防汚性を高く得ることができるものである。そして、本発明においては、特に、有機塗料層4、無機質塗料層5、光触媒塗料層6を形成した場合に、フルカラー印刷による鮮明な模様を長期間維持することができるものである。
【0040】
図3に本発明の他の実施の形態を示す。図1に示す化粧建築板では、基材1の表面全面にインク受理層2を形成したが、図3に示す化粧建築板ではインク受理層2を部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、この化粧建築板では必要な部分のみにインク受理層2を形成しているために、インク受理層2を形成するための水性塗料の使用量を少なくすることができ、インク受理層2を形成するための塗料の少量化を図ることができる。また、インク受理層2により基材1の表面の色の視認性が低下することが少なくなり、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用しやすくなるものである。
【0041】
図4に本発明の他の実施の形態を示す。図1に示す化粧建築板では、基材1の表面全面を平坦に形成したが、図4に示す化粧建築板では基材1の表面に複数本の溝部13を設け、この溝部13と隣り合う溝部13、13の間に形成される山部14とからなる凹凸面に基材1の表面を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、この化粧建築板では基材1の表面の凹凸によって、外観の意匠性を高めることができるものである。
【0042】
図5(a)(b)に本発明の他の実施の形態を示す。図4に示す化粧建築板では、基材1の表面全面にインク受理層2を形成し、溝部13の底面及び山部14の頂面の両方にインクジェット印刷層3を形成したが、図5(a)に示す化粧建築板ではインク受理層2を溝部13の底面のみに部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものであり、図5(b)に示す化粧建築板ではインク受理層2を山部14の頂面のみに部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、これら図5(a)(b)の化粧建築板は必要な部分のみにインク受理層2を形成しているために、インク受理層2を形成するための水性塗料の使用量を少なくすることができ、インク受理層2を形成するための塗料の少量化を図ることができる。また、インク受理層2により基材1の表面の色の視認性が低下することが少なくなり、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用しやすくなるものである。さらに、基材1の表面の凹凸により意匠性を高くすることができるものである。
【実施例】
【0043】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0044】
(実施例1)
表1の仕様に基づいて、以下のような化粧建築板を作製した。
【0045】
[基材の作製]
基材としては窯業系板材を用いた。この基材はセメントと補強繊維を主成分とするものであって、セメント系の水性スラリーを原料組成物として用いて、長網式の抄造法により抄造シートを作成した後、抄造シートを養生硬化することにより形成した。原料組成物としては、水硬性材料のセメント成分が50質量%、珪石粉(無機充填材)が45質量%、パルプ(補強繊維)が5質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水100質量部の割合としたスラリーを用いた。
【0046】
[シーラー層の形成](仕様1参照)
シーラーとしては、樹脂成分としてアクリルエマルションを含む塗料を用いた。この塗料は、BASFジャパン(株)製「アクロナールYJ1110D」(アクリルスチレン樹脂水性エマルション)を固形分量で70質量部、BASFジャパン(株)製「アクロナールYJ1120D」(アクリルスチレン樹脂水性エマルション)を固形分量で30質量部混合し、樹脂固形分の含有量が25重量部、水の含有量が45重量部となるように調製したものである。このシーラーを上記基材1の表面にロールコーターで塗装し、250℃、20分の条件で焼き付けすることによって、乾燥塗布量40g/mのシーラー層を形成した。
【0047】
[インク受理層の形成](仕様2−1参照)
インク受理層を形成するための塗料としては、樹脂成分としてアクリルエマルションを含むベース塗料(関西ペイント製のIMコート4100)に、繊維状のチタン酸カリウム(大塚化学製のティスモN)をフィラーとして配合することにより調製した。このフィラーは長径が10〜20μm、短径が0.3〜0.6μm、アスペクト比が17〜67であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して5質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚30μmに形成した。
【0048】
[インクジェット印刷層の形成](仕様3参照)
インクジェット印刷による塗装に用いるインクとしては水性インクを用いた。シアンのインクには顔料としてフタロシアニンを配合した。マゼンタのインクには顔料として弁柄を配合した。イエローのインクには顔料としてオーカを配合した。黒のインクには顔料としてカーボンを配合した。そして、図2に示すインクジェット装置を用いて吐出量27ピコリットルでインクをインク受理層に吐出してインクジェット印刷層をインク受理層の表面に形成した。
【0049】
[有機塗料層の形成](仕様4参照)
有機塗料層(クリアー層)を形成するための塗料としては、樹脂成分としてアクリルエマルションを含む塗料(関西ペイント製のIMコート4100クリア)を用いた。この塗料の固形分濃度は50質量%であった。この塗料をインクジェット印刷層及びインク受理層の表面にスプレーで塗装し、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥塗膜20μmの有機塗料層を形成した。
【0050】
[無機質塗料層の形成](仕様5参照)
無機質塗料層を形成するための塗料は、樹脂成分としてポリオルガノシロキサンを含む塗料であって、(A)オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液を70質量部、(B)ポリオルガノシロキサンを30質量部、(C)N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを1質量部混合して得られたコーティング用組成物を用いて形成した。
【0051】
ここで、上記(A)成分は、次のようにして調製した。すなわち、攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計を取付けたフラスコ中にメタノール分散コロイダルシリカゾルMA−ST(粒子径10〜20mμ、固形分30重量%、日産化学工業社製)100重量部、メチルトリメトキシシラン68重量部、水10.8重量部を投入して攪拌しながら65℃の温度で約5時間かけて部分加水分解反応を行い冷却して(A)成分を得た。
【0052】
また、上記(B)成分は、次のようにして調製した。すなわち、攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート及び温度計を取付けたフラスコにメチルトリイソプロポキシシラン(0.95モル)とフェニルトリクロロシラン(0.05モル)とトルエン150重量部との混合液を計り取り、水150重量部を上記混合液に20分で滴下してメチルトリイソプロポキシシランを加水分解した。滴下40分後に攪拌を止め、二層に分離した少量の塩酸を含んだ下層の水・イソプロピルアルコールの混合液を分液し、次に残ったトルエンの樹脂溶液の塩酸を水洗で除去し、さらにトルエンを減圧除去した後、イソプロピルアルコールで希釈し平均分子量約2000のシラノール基含有オルガノポリシロキサンのイソプロピルアルコール40%溶液を得た。
【0053】
上記の塗料を有機塗料層の表面にスプレーで塗装し、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥塗膜10μmの無機質塗料層を形成した。
【0054】
[光触媒塗料層の形成](仕様6参照)
光触媒塗料層を形成するための塗料としては、樹脂成分としてポリオルガノシロキサンを含む塗料(松下電工(株)製「フレッセラPS1000」)を用いた。この塗料には酸化チタンが50質量%の濃度で含有されている。この塗料を無機質塗料層の表面にスプレーで塗装し、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥塗布量3g/mの光触媒塗料層を形成した。
【0055】
(実施例2)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、針状の酸化チタン(石原産業株式会社FTL100)を用いた。このフィラーは長径が1〜2μm、短径が0.1〜0.2μm、アスペクト比が5〜20であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して100質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚20μmに形成した(仕様2−2参照)。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0056】
(実施例3)
インク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して4質量%になるようにフィラーを配合した(仕様2−3参照)。その他の条件は実施例2と同様にして化粧建築板を作製した。
【0057】
(実施例4)
インク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して110質量%になるようにフィラーを配合した(仕様2−4参照)。その他の条件は実施例2と同様にして化粧建築板を作製した。
【0058】
(実施例5)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、針状の酸化チタン(石原産業株式会社FTL300)を用いた。このフィラーは長径が4〜6μm、短径が0.1〜0.3μm、アスペクト比が13〜60であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して80質量%になるように配合した(仕様2−5参照)。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚50μmに形成した。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0059】
(実施例6)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、板状のアルミナ(大明化学工業株式会社ベーマイトP10)を用いた。このフィラーは長径が約1μm、短径が約0.1μm、アスペクト比が約10であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して5質量%になるように配合した(仕様2−6参照)。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚50μmに形成した。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0060】
(実施例7)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、繊維状のホウ酸アルミニウム(四国化成工業株式会社アルボレックスM20)を用いた。このフィラーは長径が10〜30μm、短径が0.5〜1.0μm、アスペクト比が10〜60であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して8質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚30μmに形成した(仕様2−7参照)。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0061】
(実施例8)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、繊維状のグラスウール(旭ファイバーグラス株式会社MF06JB1−20)を用いた。このフィラーは長径が30〜100μm、短径が10μm、アスペクト比が3〜10であった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して5質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚50μmに形成した(仕様2−8参照)。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0062】
(比較例1)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、粒状のシリカ(デグサ社ACEMATT HK460)を用いた。このフィラーは粒子径が2μmであった。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して5質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚30μmに形成した(仕様7−1参照)。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0063】
(比較例2)
インク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して100質量%になるようにフィラーを配合した(仕様7−2参照)。その他の条件は比較例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0064】
(比較例3)
インク受理層を形成するための塗料に配合するフィラーとして、キュービック状のアルミナ(大明化学工業株式会社ベーマイトC20)を用いた。このフィラーは1.9μmのキューブ形状であり、アスペクト比は1となる。また、フィラーはインク受理層を形成するための塗料に含まれている固形分に対して5質量%になるように配合した。また、インク受理層は、インク受理層を形成するための塗料をシーラー層の表面に塗布した後、130℃、2分の条件で焼き付けすることによって、乾燥膜厚30μmに形成した(仕様7−3参照)。その他の条件は実施例1と同様にして化粧建築板を作製した。
【0065】
【表1】

【0066】
[性能評価]
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた化粧建築板について、以下の評価を行った。
【0067】
(インク受理層の塗装性)
上記[インク受理層の形成]において、インク受理層を形成するための塗料をバーコータで塗布した。そして、バーコーターを引く際の「引きやすさ」と「塗工後のレベリング(番線の跡:凹凸の残り度合い)」で塗装性を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0068】
「○」:インク受理層の塗料を抵抗なく引くことができ、塗工後のレベリングがよい。
【0069】
「△」:インク受理層の塗料を抵抗なく引くことができるが、塗工後のレベリングが悪く番線跡が見える。
【0070】
「×」:インク受理層の塗料を引くときに抵抗感があり、塗工後のレベリングが悪く番線跡が見える。
【0071】
(インクドットの状態(インク受理層のインクの定着性の評価))
上記の実施例1〜8及び比較例1〜3について、化粧建築板の表面のインクのドットを25倍ルーペで観察し、にじみ度合いを区分けした。評価基準は以下の通りである。
【0072】
「○」:ドットの形がきれいに粒状に見える。
【0073】
「△」:ドットは粒状に見えるが形がぼやけている。
【0074】
「×」:ドットがぼやけて粒状に見えない。
【0075】
(塗膜の脆さ(インク受理層の強度の評価))
上記の実施例1〜8及び比較例1〜3について、基材に上記[シーラーの形成]及び[インク受理層の形成]を行った後、これを1週間、室温にて養生した。この後、60℃温水8時間浸漬⇔室温16時間乾燥を1サイクルとして10サイクル繰り返した。評価基準は以下の通りである。
【0076】
「○」:塗装面に異常なし
「×」:塗装面にひび割れあり
上記の各評価を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例では、フィラーの濃度の増加に伴い、インクの滲み性は低下し、球状のフィラーを用いたインク受理層に比べてインクジェット印刷層の画像(柄や模様)が鮮明になった。また、実施例ではインク受理層中のフィラーの濃度を上げてもクラックが入ることはなかった。一方、比較例1では、球状のフィラーを5質量%配合してもインクドットの滲み性に寄与しなかった。また、比較例2ではフィラーの濃度が上がるとインクドットの滲み性が良くなったが、インク受理層にクラックが発生してボロボロになった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】本発明のインクジェット印刷で使用するインクジェット印刷機の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 基材
2 インク受理層
3 インクジェット印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にインク受理層を形成し、インク受理層の表面にインクジェット印刷層を形成した化粧建築板において、インク受理層にアスペクト比の高いフィラーを配合し、そのアスペクト比が3〜70であることを特徴とする化粧建築板。
【請求項2】
基材の表面にインク受理層を形成し、インク受理層の表面にインクジェット印刷層を形成した化粧建築板において、インク受理層にアスペクト比の高いフィラーを配合し、そのフィラーが繊維状、針状、板状の少なくとも一つであることを特徴とする化粧建築板。
【請求項3】
フィラーの長径が30μm以下、短径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧建築板。
【請求項4】
インク受理層を形成するための塗料に含有されている固形分の全量に対して、5〜100質量%のフィラーを配合して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧建築板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−63832(P2008−63832A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243067(P2006−243067)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】