説明

化粧料

【課題】高粘度で白濁したクリーム状の外観でありながら、塗布時ののび、コク感、浸透感などの使用性が良好で、かつ塗布後のハリ感などの感触に優れた化粧料の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、
(B)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、
を含有し、成分(A)が連続相で成分(B)が孤立相を形成して相分離しており、25℃における粘度が10000mPa・s以上であり、550nmにおける光透過率が50%未満である化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感触に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な外観の水中油型乳化化粧料は、例えば高圧乳化機を使用して、乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下の微細化エマルションとすることにより製造される(例えば、特許文献1、特許文献2等)。しかしながら、高圧乳化法で得られる微細化エマルションは、一般に粘度が数十mPa・sと低く、用途が限られていた。
【0003】
粘度が比較的高いジェル状の乳化物は、上記の高圧乳化法で得られる微細化エマルションを水溶性高分子で増粘する方法(特許文献3等)や、固体脂を含有する油性成分及び水を、親水性界面活性剤とともに高圧乳化法を用いて乳化する方法(特許文献4等)などにより製造されている。これらの方法によって得られる化粧料は、透明な外観を有するものであり、優れた性能を有するものであるが、塗布時ののび、コク感、浸透感などの使用性や、感触などの点で、更に優れたものが求められていた。
【特許文献1】特開昭63−126543号公報
【特許文献2】特開平4−48925号公報
【特許文献3】特開2001−342113号公報
【特許文献4】特開2002−087931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高粘度で外観は白濁したクリーム状でありながら、塗布時ののび、コク感、浸透感などの使用性が良好で、かつ塗布後のハリ感などの感触に優れた化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、特定のO/W型(水中油型)乳化物と、アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液とを組み合わせることにより、高粘度で白濁したクリーム状の外観でありながら、塗布時ののび、コク感、浸透感などの使用性が良好で、かつ塗布後のハリ感などの感触に優れた化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、
(B)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、
を含有し、成分(A)が連続相で成分(B)が孤立相を形成して相分離しており、25℃における粘度が10000mPa・s以上であり、550nmにおける光透過率が50%未満である化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、高粘度で白濁したクリーム状の外観でありながら、塗布時ののび、コク感、浸透感などの使用性が良好で、かつ塗布後のハリ感などの感触に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化粧料は、前記成分(A)及び(B)を含有するものであり、(C)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、及び(D)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、を混合することにより製造される。
【0009】
混合する前の微細乳化物(C)と水性溶液(D)それぞれは透明(透過率75%以上)であるが、乳化物(C)と水性溶液(D)を混合した場合、前者が連続相で後者が孤立相を形成して相分離し、白濁した外観を呈する一方で、粘度が高い状態は維持される。
【0010】
平均粒径が0.2μm以上ある一般的な乳化物では、可視光の波長に比べて同等以上の大きさの乳化粒子滴によって光が散乱され、白濁した外観を呈する。しかし、本発明の化粧料では、該乳化粒子の微細な平均粒径は保持されており、白濁した外観は乳化物(C)と水性溶液(D)を混合したことによる乳化粒子の合一によって粒径が大きくために生じるものではない。本発明の化粧料が白濁する原因は、成分(B)が形成する孤立相、いわゆる海島型相分離構造の島の部分に相当する粒子径が、可視光の波長に比べて同等以上の大きさとなるため、光が散乱され白濁した外観を呈するものである。一般的な乳化物は通常その乳化粒子を光学顕微鏡で観察できるが、本発明の化粧料の乳化粒子は光学顕微鏡では観察できない。本発明の化粧料の相分離状態および乳化粒子は、電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。その電子顕微鏡像には、微細な乳化粒子を含有する連続相(海島型相分離構造の海の部分)とアニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液が構成する孤立相(海島型相分離構造の島の部分)が観察される。
【0011】
通常、水溶性高分子は化粧料の粘度を増加させる増粘剤として用いられる。しかし、本発明の化粧料において、水溶性高分子は孤立相に存在しているため、化粧料の粘度を高める機能を果たしていない。従って、連続相を形成している乳化物が高粘度であることが本発明の化粧料が高粘度である要因である。一方、化粧料を高粘度にするには一般的には水溶性高分子を多量に配合する。この場合、水溶性高分子によるべたつき、ぬるつきが問題になるが、本発明の化粧料ではそのような問題はなく、水溶性高分子による塗布後の良好なハリ感を付与することができる。このように、本発明の化粧料は、高粘度で白濁したクリーム状の外観でありながら、従来の一般的な乳化物とは明らかに異なる内部構造を有し、良好な使用性や感触をもたらすものと推察される。
【0012】
なお、乳化物(C)と水性溶液(D)を混合した際には、両者の間で多少の水及び/又は水性媒体の移動が生じる。そのため、成分(A)と乳化物(C)、成分(B)と水性溶液(D)は厳密に同じものではない。しかしながら、成分(A)の主たる組成は乳化物(C)と同一であり、成分(B)の主たる組成は水性溶液(D)と同一となっている。そこで、混合する組成物としての乳化物(C)と水性溶液(D)について説明する。
【0013】
O/W型乳化物(C)は、液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有するものである。
ここで用いられる液体油は、25℃で液体の油性成分であり、例えば、流動パラフィン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン等のエステル油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の飽和高級アルコール;オレイルアルコール、ラノリンアルコール等の不飽和高級アルコール;エイコセン酸、イソミリスチン酸、カプリン酸等の高級脂肪酸;ラウロイルラウリルアミン、ラウリン酸ブチルアミド等の高級脂肪酸アミド;オリーブ油、大豆油、綿実油等の油脂;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。
【0014】
特に、流動パラフィン、スクワラン、パルミチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノラウリルエーテル、パーフルオロポリエーテル、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0015】
また、固体脂は、25℃で固体又は半固体(ペースト状)の油性成分であり、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アミド誘導体及び脂肪族アミン誘導体等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等、炭素数12〜24の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等、炭素数12〜24の飽和脂肪酸が好ましい。脂肪族アミド誘導体としては、タイプI〜タイプVIの天然ラセミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルデカナミド等のセラミド類及びその類似物質等が好ましい。脂肪族アミン誘導体としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン及びこれらのN−メチル体又はN,N−ジメチル体等のスフィンゴシン類、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール等が好ましい。また、コレステロール、硫酸コレステロール、ポリオキシエチレンコレステロール、スチグマステロール、エルゴステロール等のステロール類も使用することができる。
【0016】
油性成分は2種以上用いることができ、乳化物(C)中に、0.1〜80質量%(以下、単に%と記載する)、特に1〜70%含有されるのが好ましい。
【0017】
乳化物(C)を製造する際には、アニオン界面活性剤を用いるのが好ましい。さらに、アニオン界面活性剤に加えて、両性界面活性剤、HLB9以上の非イオン界面活性剤を用いることも可能である。これらの親水性界面活性剤は、疎水基として、炭素数10〜24、特に12〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。
【0018】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0020】
非イオン界面活性剤は、安定な乳化系を与えるために、HLB9以上、特にHLB10〜17、さらにHLB12〜17のものが好ましい。ここに、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic Balance)を示す指標であり、小田・寺村らによる次式により定義される。
【0021】
【数1】

【0022】
このような非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、アルキルグルコシド系界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
界面活性剤は2種以上を用いても良く、乳化物(C)中に、0.05〜30%、特に0.05〜10%含有するのが好ましい。
【0024】
また、乳化物(C)中に、水は5〜99.85%、特に10〜98.9%含有するのが好ましい。
【0025】
また、水の他に水性溶剤を含有することが好ましい。水性溶剤としては、水相の表面張力を下げる点で水溶性アルコール類が好ましい。水溶性アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量400〜20000)、ソルビタン、ソルビトール、マルトース、マルトトリオース等が挙げられる。
乳化物(C)中に、これら水溶性アルコール類は0.2〜66%、特に1〜40%含有するのが好ましい。その他、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、薬効成分、植物成分等の水溶性成分を適宜含有することができる。
【0026】
乳化物(C)における乳化粒子の平均粒径は、0.2μm以下、例えば、0.01〜0.2μmの大きさを有するものとなる。平均粒径は0.02〜0.1μmであるのが好ましい。平均粒径はレーザー回折/散乱法で測定される。
【0027】
このような微細乳化O/W型乳化物は、例えば高圧乳化法、すなわち、油性成分を界面活性剤及び水とともに、高剪断力で、例えば104-1以上、好ましくは104〜108-1、特に好ましくは107〜108-1の剪断速度が得られる乳化機(例えば高圧ホモジナイザー)、あるいは、超音波を使用した乳化機で乳化することにより製造することができる。また、系の温度を一旦、系の可溶化限界温度以上に上げ、その後に冷却することにより調製したものなど界面化学特性を利用しても製造できる。
【0028】
高圧ホモジナイザーで乳化する場合は、20℃で105-1以上、好ましくは107〜108-1で行うのがよい。このような高剪断力は、高圧乳化機、例えば、フィルミックス(特殊機化社製)、クレアミックス(エムテクニック社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)、DeBEE2000(B.E.E.インターナショナル社製)等により得ることができる。
【0029】
例えば、噴射圧力を300〜3000kg/cm2、温度5〜50℃の範囲に設定することによって、微細乳化エマルションを得ることができる。ただし、上記の圧力・温度等の運転条件は装置の仕様により異なるものであって、特に限定されるものではない。また、通常の乳化方法で得た予備エマルションに同様の高剪断力処理を施すことにより、所望の粒径の微細乳化粒子を有するエマルションを得ることもできる。また、必要に応じて、この高剪断力処理を繰り返し行なってもよい。更に、油性成分の濃度の高いエマルションを製造した後、水又は水性媒体で希釈し、所望の濃度のエマルションを得ることもできる。
【0030】
また、乳化物(C)は、25℃における粘度が、10000mPa・s以上、特に20000〜1000000mPa・sであるのが、化粧料の安定性を確保するために好ましい。
本発明において、粘度は、ブルックフィールド型(B型)回転粘度計を用い、100000mPa・s以下ではローターNo.1〜4を使用し、回転数6r/min、1分間の測定条件により測定され、100000mPa・s以上ではヘリパススタンドを併用し、T字型バー・スピンドルNo.T−A〜T−E、回転数5r/min、1分間の測定条件により測定される。
【0031】
一方、水性溶液(D)で用いるアニオン性水溶性高分子としては、合成高分子、天然高分子のいずれでも良い。
アニオン性水溶性合成高分子としては、ポリカルボン酸類(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(α−ヒドロキシカルボン酸)、ポリ(テトラメチレン−1,2−ジカルボン酸)等)、カルボキシビニルポリマー(例えば、カーボポール980、カーボポール981(Noveon,Inc.)平均分子量100万〜1000万)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、カーボポールETD2020、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2(Noveon,Inc.)平均分子量100万〜1000万)、ポリビニルスルホン酸、マレイン酸共重合体、水溶性セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース硫酸エステルナトリウム等)、デンプン誘導体(例えば、酸化デンプン、ジカルボン酸デンプン、リン酸化デンプン、カルボキシメチルデンプン等)、キチン・キトサン誘導体(例えば、カルボキシメチルキチン等)などが挙げられる。
【0032】
アニオン性水溶性天然高分子としては、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等が挙げられる。
【0033】
アニオン性水溶性高分子は、重量平均分子量が1万以上、特に10万〜1000万であるのが、相分離構造の形成のために好ましい。
水性溶液(D)中に含有されるアニオン性水溶性高分子の濃度は、0.01〜10%、特に0.05〜1%であるのが、化粧料の感触が向上するので好ましい。
【0034】
アニオン性水溶性高分子は、水又は水性溶剤に溶解され、水性溶液として用いられる。水性媒体としては、例えば水溶性アルコール類であって、水溶性アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量400〜10000)、ソルビタン、ソルビトール、マルトース、マルトトリオース等が挙げられ、これらの水との混合媒体であっても良い。
【0035】
水性溶液(D)中に、水性溶剤は、0.01〜40%、特に0.05〜10%含有するのが、化粧料の感触が向上するので好ましい。また、水は、99.9〜60質量%含有することが好ましい。
【0036】
このほか、前記成分以外に通常の化粧料に用いられる成分、例えば、保湿剤、粉体、香料、色素、紫外線吸収剤、防腐剤、美白剤、植物エキス等を適宜含有させて製造される。
【0037】
本発明の化粧料は、乳化物(C)と、水性溶液(D)を混合することにより製造することができるが、これらを混合する際の質量割合は、(C):(D)=60:40〜99:1、特に75:25〜95:5で、乳化物(C)の割合が多いのが好ましい。
【0038】
こうして得られた組成物は、成分(A)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、が連続相で、成分(B)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、が孤立相を形成して相分離している。そして、外観は白濁し、粘度が高い状態が維持されている。
【0039】
本発明の化粧料は、25℃における粘度が10000mPa・s以上、好ましくは20000〜1000000mPa・sのものである。粘度は、前記と同様にして、測定される。
【0040】
本発明の化粧料は、セル長10mm、550nmにおける光透過率が50%未満、好ましくは5%以下であり、白濁した外観を有するものである。光透過率は、紫外可視吸光光度計により測定される。
【実施例】
【0041】
製造例1(乳化物の製造)
表1に示す各組成を、80℃でプロペラ攪拌(200 r/min)で予備乳化した後、高圧乳化機マイクロフルイダイザー(マイクロフルインディックス社製)を使用して、噴射圧力2100kgf/cm2のもとで表1のPass回数の項目に示す回数の処理を行い、O/W型乳化物C−1〜C−7を製造した。なお、O/W型乳化物C−6は予備乳化のみで高圧乳化操作を行っていない。
得られたO/W型乳化物について、油滴の平均粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所製)を用い、定法によりサンプルを調整することにより測定した。粒径は算術平均径をいう。また、得られたO/W型乳化物の粘度を、B型粘度計(東機産業製)を用いて25℃で測定した。結果を表1に併せて示す。
【0042】
【表1】

【0043】
製造例2(ポリマー溶液の製造)
表2に示す組成のポリマー溶液D−1〜D−7を調製した。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例1〜10、比較例1〜12
表3及び表4に示した質量割合で、表1の乳化物(C)と表2の溶液(D)をプロペラ攪拌(200 r/min)で混合し、化粧料を製造した。得られた化粧料について、25℃における粘度を測定し、外観、光透過率、相分離構造を評価した。また、塗布時の使用性及び塗布後のハリ感を評価した。結果を表3及び表4に併せて示す。
【0046】
(評価方法)
(1)粘度:
B型粘度計(東機産業製)を用い、25℃で測定した。
【0047】
(2)外観:
製造直後の化粧料の外観を、目視で観察した。
【0048】
(3)光透過率:
波長550nmにおける光透過率(セル長10mm)を、紫外可視吸光光度計UV-160(島津製作所製)を用い、25℃で測定した。
【0049】
(4)相分離構造:
フリーズフラクチャー法による電子顕微鏡観察により、相分離による海島構造(O/W型乳化物が海で、ポリマー溶液が島)の有無を確認した。相分離による海島構造が確認できたものを「○」、できないものを「×」として示した。
なお、実施例2の化粧料についての電子顕微鏡写真を、図1に示す。図中、数十nmの粒子径の微細な粒子を含有する連続相が成分(A)、微細な粒子を含有しない数百nm程度の島状の孤立相が成分(B)である。
【0050】
(5)塗布時の使用性及び塗布後のハリ感:
女性専門パネラー10名により、クレンジングフォームにて洗顔の後、各化粧料を顔に塗布したとき、塗布時の使用性(塗布時ののび、コク感、浸透感)、および塗布後のハリ感を評価した。なお、塗布後のハリ感については、塗布終了後3分間待ち、塗布部のハリ感を顔に手で触れたときの感触で判断した。評価は、以下の5段階評価を行い、10名の平均を求めた。
5:良い。
4:やや良い。
3:どちらでもない。
2:やや悪い。
1:悪い。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
比較例13
表5に示す組成の全成分(表1の乳化物(C-6) 80部と表2の溶液(D-1) 20部を混合したときの組成に相当する全成分)を、80℃でプロペラ攪拌(200 r/min)で予備乳化した後、高圧乳化機マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)を使用して、噴射圧力2100kgf/cm2のもとで5回の処理を行って化粧料を製造した。
得られた化粧料について、実施例1〜10と同様にして、25℃における粘度を測定し、外観、光透過率、相分離構造を評価し、塗布時の使用性及び塗布後のハリ感を評価した。結果を5に併せて示す。
【0054】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例2の化粧料について、電子顕微鏡観察により確認した、相分離による海島構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、
(B)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、
を含有し、成分(A)が連続相で成分(B)が孤立相を形成して相分離しており、25℃における粘度が10000mPa・s以上であり、550nmにおける光透過率が50%未満である化粧料。
【請求項2】
(C)液体油及び固体脂を含む油性成分を乳化粒子として含有し、該乳化粒子の平均粒径が0.2μm以下であるO/W型乳化物、及び
(D)アニオン性水溶性高分子を含有する水性溶液、
を混合することにより製造される請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
乳化物(C)と溶液(D)の質量割合が、(C):(D)=60:40〜99:1である請求項2記載の化粧料。
【請求項4】
乳化物(C)の25℃における粘度が10000mPa・s以上である請求項2又は3記載の化粧料。
【請求項5】
乳化物(C)が、高圧乳化法により製造される微細乳化O/W型乳化物である請求項2〜4のいずれか1項記載の化粧料。
【請求項6】
乳化物(C)が、水、アニオン界面活性剤、液体油及び固体脂を含有する予備乳化物から、高圧乳化法により製造される微細乳化O/W型乳化物である請求項2〜5のいずれか1項記載の化粧料。
【請求項7】
溶液(D)に含まれるアニオン性水溶性高分子の重量平均分子量が1万以上で、濃度が0.01〜10質量%である請求項2〜6のいずれか1項記載の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−137956(P2008−137956A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326522(P2006−326522)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】