説明

化粧料

【課題】
化粧料において、シミやソバカスを隠しながらも、ぎらつき感の無い自然な仕上がりの化粧料、を提供すること。
【解決手段】
黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、5〜15重量%の酸化チタンの薄膜を被覆して、シミとソバカスを隠すことができるように反射干渉光の色調を変化させながら、表面反射光と反射干渉光を拡散させて正反射光を抑え、ぎらつき感の無い光沢を発するようにした複合粉体を作製し、これを化粧料に配合することで、シミやソバカスとその周りの健常な肌の色との差が無いように隠しながら、健常な肌表面での光の広がりと同じように自然でぎらつき感の無い仕上がりとなる化粧料を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、さらに酸化チタンを膜状に被覆させた複合粉体を含有することにより、シミやソバカスを隠しながらも、ぎらつき感の無い自然な仕上がりの化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の重要な機能の一つに、肌の色を整える機能がある。その中で、シミ、ソバカス等の色調トラブルを整えるためには、従来、主として隠ぺい力の高い酸化チタン等を用い、色調を酸化鉄で整えてきた。しかし、酸化チタンのように屈折率の高い物質は確かにシミやソバカスを隠蔽するものの、化粧の仕上がりが白く厚ぼったい仕上がりになり、人の肌が本来持つ質感とは異なり透明感の無い不自然な仕上がりになっていた。このため、屈折率の高い物質により肌を完全に覆い尽くすような考え方から、近年では、反射および透過干渉光を有する板状粉体(雲母チタン等)で、健常な肌と同じような微妙な発色と光沢を付与しようと試みられている。
【0003】
例えば特許文献1では黄〜赤色系反射干渉光を有する、酸化窒化チタン及び/または低次酸化チタンを含有するチタン化合物で被覆した雲母チタンをシミ、ソバカス用の肌色調整用組成物として用いている。さらに特許文献2では、調製しようとする肌色に対して補色の透過干渉光を有し微粒子酸化鉄を被覆した着色雲母チタンを用いて、赤色及び青色の濃色部分の補正を紹介している。
【0004】
【特許文献1】特許第3796278号
【特許文献2】特許第3456674号
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の酸化窒化チタン及び/または低次酸化チタンを含有するチタン化合物で被覆した雲母チタンは、反射干渉光を強め、光の彩度を高めることを目的としている(特許文献3〜5、非特許文献1)。また特許文献2記載の微粒子酸化鉄を被覆した着色雲母チタンは、微粒子酸化鉄の粒子径を小さくすることで着色力を下げ、雲母チタンの反射および透過干渉光を妨げないことを目的としている。このことから、シミ、ソバカス等の色調トラブルを整えるために、これらの雲母チタンを多く配合すると、その表面反射光や反射干渉光による正反射光が強くなり、ぎらつき感が出て、肌本来の見え方とは異なり不自然なメタリック感のある仕上がりになり易かった。
【0006】
【特許文献3】特公平5−8168号
【特許文献4】特公平4−61033号
【特許文献5】特公平5−76443号
【非特許文献1】最新粉体の材料設計 テクノシステム pp.524−526 (1988)
【0007】
そのため、ぎらつき感を抑え、暈し効果を付与するために、特許文献6では、中空構造の金属酸化物板状粉体と、板状の酸化アルミニウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素等の無機粉体とを含有する化粧料で、透明感を持たせつつシミやソバカスを見え難くする方法の提案、特許文献7では、反射および透過干渉光を有する物質と鉄含有微粒子酸化チタンの併用によってシミ等の色調トラブルをぎらつき感が無く改善できるという提案(特許文献8では、特許文献7の鉄含有微粒子酸化チタンを鉄含有酸化チタンに変更し、さらに球状樹脂粉末を併用)、特許文献9では、薄片状基質の表面に特定の粒子径範囲にある微粒子酸化チタンを散在状態で1層に付着させた体質顔料が、良好な感触であり、青みも無く、さらには反射光強度の視野角依存性が小さいことを見出した発明、特許文献10では、鱗片状粉体とパール光沢材料を混合粉砕して細かなパール顔料を用いる方法、特許文献11では、雲母チタン表面に突起状の硫酸バリウム粒子を付着した複合粉末を用いて、肌の凹凸及び肌の色彩的な欠点を補正する方法等が発明されている。
【0008】
【特許文献6】特許第3492966号
【特許文献7】特開2002−241231号
【特許文献8】特許第2002−241212号
【特許文献9】特許第3745688号
【特許文献10】特開2004−67535号
【特許文献11】特許第3671045号
【0009】
しかしながら、特許文献6記載の中空構造の金属酸化物板状粉体は、通常の雲母チタンより反射および透過干渉光が強く(特許文献12〜14)、特許文献7、8、10のように混合する方法では、表面反射光や反射干渉光を有する粉体と、その表面反射光や反射干渉光による正反射光を抑える粉体が複合化されてはいないので、その混合状態や個々の粉体の肌へのつき方の差により、必ずしも大きな改善にはつながらず、近づいて観察すると、表面反射光や反射干渉光を有する粉体による正反射光がマットな仕上がりの塗膜の中に散在するように見えることが多かった。また特許文献9はある程度の拡散反射率の角度依存性が改善されているものの正反射光の強度が依然強く暈しの効果は少なく、またシミ、ソバカス等の色調トラブルを整える効果はない。特許文献11では付着させた硫酸バリウムが脱落しやすいことや、被覆状態が一面に覆い尽くされているのではないため、これもやはり効果が低いものであった。
【0010】
【特許文献12】特公昭56−29708号
【特許文献13】特公昭63−58863号
【特許文献14】特許第3910670号
【0011】
以上の状況から、シミやソバカスを隠す効果に優れ、健常な肌と同じような微妙な発色と光沢を付与できる化粧料の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、シミやソバカスを隠しながらも、ぎらつき感の無い自然な仕上がりの化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、さらに5〜15重量%の酸化チタンを膜状に被覆させた複合粉体を化粧料に配合することにより、シミやソバカスを隠しながらも、健常な肌と同じような微妙な発色とぎらつき感の無い光沢の化粧料を提供できること、さらには夜間のフラッシュ撮影時等にファンデーションを塗布した顔が白く写ってしまう現象、いわゆる白浮き現象も抑えることができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、5〜15重量%の酸化チタンの薄膜を被覆して、シミとソバカスを隠すことができるように反射干渉光の色調を変化させながら、表面反射光と反射干渉光を拡散させて正反射光を抑え、ぎらつき感の無い光沢を発するようにした複合粉体を作製し、これを化粧料に配合すれば、シミやソバカスとその周りの健常な肌の色との差が無いように隠しながら、健常な肌表面での光の広がりと同じように自然でぎらつき感の無い仕上がりとなる化粧料を提供できることを見出した。
【0015】
本発明では、酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、さらに酸化チタンを膜状に被覆させ複合粉体を作成するがその方法は、例えば下記のようにして行う。
【0016】
被覆する酸化鉄被覆雲母チタンを、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール及び/又は水に分散させ、その後被覆する酸化チタン源であるチタニウムテトライソプロポキシド、硫酸チタニル、チタンペルオキソクエン酸アンモニウム等のチタン化合物を撹拌しながら混合する。その後、反応時間と温度を調整しながら、酸化チタンの被覆を行い、ろ過及び乾燥、又は噴霧乾燥法を用いることによって、酸化チタンを表面に被覆した酸化鉄被覆雲母チタンの複合粉体を取り出す。さらに仕上げとして必要に応じて焼成、解砕、分級を行ってもよい。また、本発明では、粒子径の大きい酸化鉄被覆雲母チタンを、アルコール及びチタン化合物を用いて、特許文献15の方法、すなわち原料物質を溶解又は分散した液状物質を噴霧法により任意の液滴径を有する液滴をつくり、さらに液滴径を制御して温度コントロール場へ輸送し、液滴中の分散媒体の乾燥が液滴周囲から起こる物理現象を利用する方法を適用しても構わない。
【0017】
【特許文献15】特開2005−219972
【0018】
本発明では、酸化チタンを被覆した後に複合粉体の拡散反射光と反射干渉光が、有効にシミやソバカスを隠すことができるように、複合化の母粉体として黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンを用いる。
【0019】
この酸化鉄被覆雲母チタンの光の色は、主に、雲母に被覆された酸化チタンや酸化鉄の量によって決まるが、良好な黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を有する市販品としてエンゲルハード社製DuocromeYGがあり、本発明ではこれを用いた。このDuocromeYGの組成に関する製品規格は、マイカが33〜51重量%、酸化チタンが46〜60重量%、酸化鉄が3〜7重量%であり、この組成範囲にあれば安定して、黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を有する酸化鉄被覆雲母チタンであると判断できる。また、本発明での酸化鉄被覆雲母チタンは、医薬部外品原料規格2006(薬事日報社発行)収載のベンガラ被覆雲母チタンにも該当する。
【0020】
本発明では、酸化鉄被覆雲母チタンに、さらに5〜15重量%の酸化チタンを被覆する(母粉体の酸化鉄被覆雲母チタンを100重量%としたとき、さらに被覆した酸化チタン量が5〜15重量%を示し、実質、複合粉体が105〜115重量%となることを本発明では示す。)。この濃度範囲であれば、黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光から、シミやソバカスの部分が健常な肌色の部分と比較して不足している色調の光である、青色〜緑色、及び、オレンジ色の反射干渉光を酸化チタンの被覆後に有するようになり、さらには表面反射光と反射干渉光の適度な拡散が生じ、正反射光が弱くなる。この濃度範囲よりも少ない量であれば、反射干渉光の色の変化が無かったり、反射干渉光の色の変化が少ない場合にはオレンジ色から黄味が高くなり、反射干渉光の拡散も少なくなる。反対に多い量であれば、オレンジ色が失われ赤味や青味が高くなったり、表面反射光や反射干渉光が極端に少なくなり透明感のある光を殆ど発しなくなる。
【0021】
また、本発明では、酸化チタンの反応条件を任意に設定し、酸化チタンを膜状に被覆したものを用いる。膜状に被覆したものであれば、表面反射光と反射干渉光の拡散効果が大きく正反射光を弱める効果が大きい。尚、本発明で膜状とは、電子顕微鏡で10,000〜25,000倍で観察したとき、粒子であることが明瞭に判別できない或いは30nm未満の微細粒子様の酸化チタン層が緻密に隙間無く二次元方向へ連続的に広がりを持ち被覆されているものをいい、30nm以上の粒子や明らかに粒子と認められ粒子間の隙間がはっきり認められる酸化チタンで表面が覆われている表面形態ではない。例えば、図1では22,000倍での観察下で緻密な酸化チタン層の連続的な広がりが認められ(一部に母粉体表面の粒状形態が認められる被覆欠陥部分があり、膜状の部分と粒状の区別が明瞭にできる。)、これが膜状の形態である。一方、同倍率の図2は50〜100nm程度の粒子が認められ、粒子間の隙間があり、粒状の形態と判断できる。
【0022】
本発明で、酸化鉄被服雲母チタンへ膜状に被覆したものであれば、表面反射光や反射干渉光の拡散効果が大きく正反射光を弱める効果が大きいとする根拠は、酸化鉄被覆雲母チタンのように同じ板状の粉体であるセリサイトへ酸化チタンを被覆した前述の特許文献15において、実施例1のチタニア系化合物を膜状被覆したセリサイト複合粉体、実施例2の粒状被覆のセリサイト複合粉体、実施例3の針状被覆したセリサイト複合粉体と同じ手法で調製したセリサイト複合粉体に対し、本発明のために新たに変角光沢計にて入射角45°に固定し、受光角0〜85°で反射光強度を測定し、チタニア系化合物を膜状被覆したセリサイト複合粉体で正反射光の強度が明らかに弱くなる傾向が認められたことに起因する。
【0023】
さらに、膜状の被覆を安定して調製できるようにするためには、高温処理による粒子成長や酸化チタンの結晶系を考慮すると、乾燥温度や仕上げの焼成温度を500℃以下で行うのが好ましく、この処理温度範囲で生成する酸化チタンの結晶系は非晶質単独系、非晶質とアナターゼの混合系、アナターゼ単独系である。
【0024】
得られた複合粉体は、撥水性や撥油性を付与するために、金属石鹸処理、シリコーン処理、含フッ素化合物処理、アミノ酸処理等、各種表面処理を行って化粧品に配合しても良い。なお、これら処理は1種又は2種以上組み合わせて用いても構わない。
【0025】
本発明は、上述の複合粉体を含有する化粧料であるが、複合粉体の特性を考慮すると、化粧料の中でも、メイクアップ化粧料等への応用が好ましく、具体的には、化粧下地、パウダーファンデーション、クリームファンデーション、リキッドファンデーション、油性固型ファンデーション、乳化型固型ファンデーション、フェイスパウダー、コンシーラー、コントロールカラー等の化粧料である。
【0026】
また、これらの化粧料に配合する複合粉体の量としては、特に限定しないが、シミやソバカスへの自然な隠ぺい力、ぎらつき感の無い光の広がりと透明感を考慮すると、0.1〜20重量%が好ましい。特に、優れた隠ぺい力を求めると0.4〜20重量%であり、さらに優れた光の広がりと発色を生かして強い光の下でも白浮きが少なくなるようにするには2〜20重量%が良い。
【0027】
本発明の化粧料には、前述の複合粉体の他に、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合される成分である水、油脂、ロウ類、炭化水素、脂肪酸、アルコール、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン油、フッ素油、多価アルコール、糖類、高分子、界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、殺菌・防腐剤、染料、香料、色素、可塑剤、有機溶媒、薬剤、動植物抽出物、パール顔料、表面処理粉体、複合顔料、アミノ酸及びペプチド、ビタミン等を適宜配合することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明による化粧料により、シミやソバカスを隠しながらも、ぎらつき感の無い自然な仕上がりと、白浮き現象を抑えることとを、期待できる。また、白浮きを抑える効果も高いことから、照明の強い条件、例えば、舞台等のベースメイクに応用しても自然な素肌感の高い見映えとなると予想できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明では、黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、さらに5〜15重量%の酸化チタンを膜状に被覆させた複合粉体を調製し、これを化粧料へ配合する。
【0030】
次に、複合粉体例、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
複合粉体1
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド1.1gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、ヤマト科学製パルビスミニスプレーGB−22型にて噴霧し、乾燥、反応させた(圧縮空気を用いた二流体ノズル方式、エアー圧力0.1〜0.5MPa、入り口温度150℃、試料送液毎分5〜10ml)。生成した複合粉体の回収は、液滴の搬送や発生したガス状物質の状態を乱しにくいサイクロン捕集により行った。さらに、得られた複合粉体を約300℃で1時間焼成した。得られた複合粉体の新たに被覆された酸化チタンは、医薬部外品原料規格の一般試験法「二酸化チタン定量法」により、複合化前の母粉体と複合粉体の酸化チタン量を定量して、母粉体に対して3.1重量%の被覆量であり、電子顕微鏡により膜状被覆であることを確認した。(新たに被覆された酸化チタンの定量は、初めに母粉体の酸化鉄被覆雲母チタンを100重量%として、予めその酸化チタン量とそれ以外の成分であるマイカと酸化鉄の量を見積もった。その後、新たに酸化チタンを被覆した複合粉体の酸化チタン量を定量し、被覆処理前後でマイカと酸化鉄を合わせた量は変化しないと仮定してこれを基準とすることにより、定量した酸化チタン量を補正し、酸化チタンの増加分を新たな被覆量とした。)
【0032】
複合粉体2
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド1.8gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、5.1重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体2を作製した。
【0033】
複合粉体3
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、10.0重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体3を作製した。
【0034】
複合粉体4
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド5.4gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、14.0重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体4を作製した。
【0035】
複合粉体5
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド7.2gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、19.7重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体5を作製した。
【0036】
複合粉体6
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様に操作したが、焼成温度は500℃とした。新たに被覆された酸化チタン量は9.9重量%であった。電子顕微鏡観察では膜状の被覆を確認した。
【0037】
複合粉体7
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様に操作したが、焼成温度は700℃とした。新たに被覆された酸化チタン量は10.1重量%であった。電子顕微鏡観察では、おおよそ膜状の被覆を確認した。
【0038】
複合粉体8
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを90gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様に操作したが、焼成温度は900℃とした。新たに被覆された酸化チタン量は10.0重量%であった。電子顕微鏡観察では粒状の被覆を確認した。
【0039】
複合粉体9
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gと100gのメタノールを混合した溶液へ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で十分に撹拌した。複合粉体1と同様にして、噴霧乾燥、300℃での焼成を行った。新たに被覆された酸化チタン量は9.8重量%であったが、被覆形態は粒状であった。
【0040】
複合粉体10
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYR、黄色の拡散反射光と赤色の反射干渉光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.9重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体10を作製した。
【0041】
複合粉体11
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYB、黄色の拡散反射光と青色の反射干渉光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.8重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体11を作製した。
【0042】
複合粉体12
母粉体となる酸化鉄紺青被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeGY、緑色の反射光と黄色の干渉光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.9重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体12を作製した。
【0043】
複合粉体13
母粉体となる酸化鉄被覆雲母(エンゲルハード社製Cloisonne Gold、黄色の反射光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.8重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体13を作製した。
【0044】
複合粉体14
母粉体となる雲母チタン(エンゲルハード社製Flamenco Green、緑色の反射干渉光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.9重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体14を作製した。
【0045】
複合粉体15
母粉体となる雲母チタン(メルク社製Timiron Splendid Copper、カッパー(赤味のある銅色)色の反射干渉光を有する。)10gを100gのメタノールへ投入し、約30℃、湿度約80%の環境下で撹拌した。十分に撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下した。その後、複合粉体1と同様にして、9.8重量%の膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体15を作製した。
【0046】
複合粉体16
0.25mol/l硫酸水溶液200mlに尿素1.2gを溶解し、そこへ硫酸チタニル2.0gを加え溶解した。溶解確認後、母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)9gを投入し、約80℃で2時間撹拌して反応させた。その後、ろ過と十分な洗浄後、300℃、1時間の乾燥及び焼成を行い、複合粉体16を得た。このときの酸化チタンの被覆量は、9.5重量%であり膜状の被覆であった。
【0047】
複合粉体17
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)100gに、添加物として水溶性チタニア系化合物(チタンペルオキソクエン酸アンモニウム、二酸化チタン換算で約5%濃度)250gを用いてスラリーを調製した。その後、複合粉体1と同じ装置を用いて約200℃で反応及び乾燥させた。このときの酸化チタンの被覆量は、10.3重量%であり膜状の被覆であった。
【0048】
複合粉体18
母粉体となる酸化鉄被覆雲母チタン(エンゲルハード社製DuocromeYG)10gを100gのメタノールへ投入し、チタニウムテトライソプロポキシド3.6gをシリンジにて徐々に滴下して、約40℃、湿度約90%の環境下で2時間撹拌した。その後、ろ過と十分な洗浄後、300℃、1時間の乾燥及び焼成を行い、複合粉体18を得た。このときの酸化チタンの被覆量は、9.3重量%であり膜状の被覆であった。
【0049】
光沢測定による複合粉体評価
ぎらつき感の無い自然な仕上がりの化粧料を実現するために、調製した複合粉体に対して、光沢測定による光の拡散反射特性から複合粉体のぎらつき感の程度を評価した。先ず、LENETA社製OPACITY CHARTSの黒い部分にニチバン社製両面テープ40mm幅を貼付し、化粧用パフにて均一に各複合粉体を塗布した。塗布したサンプルを、スガ試験機社製デジタル変角光沢計にて入射角45度に固定し、受光角20度と45度の光沢強度を測定した。
【0050】
表面反射光や反射干渉光による正反射光が弱く、ぎらつき感が少ないということは、45度の入射角に対して45度の角度で正反射する光、すなわち受光角45度での反射光強度と低角や広角での反射光強度との差が小さくなるという事である。そこで、ぎらつき感の無さを見積もるため、受光角45度の反射強度(I45)と20度の反射強度(I20)との強度差が少なければ正反射光が抑えられているとし、I45/I20を算出してこの比により
I45/I20=1以上1.75未満 :良好
I45/I20=1.75以上1.85未満:やや良
I45/I20=1.85以上 :不良
とした。
【0051】
各粉体のぎらつき感の無さを評価した結果を表1に示す。
【表1】

【0052】
表1より、正反射光が弱く、ぎらつき感の少ない粉体は、何れも膜状の酸化チタンの被覆を施したものであることが判る。また、複合粉体1及び2の結果から、被覆する酸化チタン量も5重量%以上が良好にぎらつき感を抑え、複合粉体6〜8の結果から、焼成温度は500℃以下が良く、さらには、複合粉体9の結果から焼成温度が300℃であっても原料の混合の仕方で粒状被覆になるものがあり、ぎらつき感の低減はできないことがわかる。
【0053】
次に、表1の結果をもとに、ぎらつき感を抑える効果の有る複合粉体1〜7、複合粉体10〜18を用いて、下記処方のパウダーファンデーションを調製した。
【0054】
パウダーファンデーション処方
成分 配合量(重量%)
(1) シリコーン処理セイサイト 19.10
(2) シリコーン処理タルク 15.00
(3) シリコーン処理合成金雲母 10.00
(4) シリコーン処理酸化チタン 8.00
(5) シリコーン処理微粒子酸化チタン 7.00
(6) シリコーン処理酸化亜鉛 2.00
(7) ステアリン酸亜鉛 1.00
(8) メチルパラベン 0.50
(9) シリコーン処理黄酸化鉄 1.60
(10)シリコーン処理ベンガラ 0.50
(11)シリコーン処理黒酸化鉄 0.30
(12)無水ケイ酸 4.00
(13)硫酸バリウム 5.00
(14)窒化ホウ素 3.00
(15)(ジメチコン/ビニルジメチコン
/メチコン)クロスポリマー 1.00
(16)ポリメタクリル酸メチル 6.00
(17)各複合粉体 5.00
(18)メチルポリシロキサン 7.00
(19)コハク酸ジ2−エチルヘキシル 4.00
合計 100.00
【0055】
(調製方法)
成分(1)〜(17)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(17)の混合粉砕物と成分(18)及び(19)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合してアトマイザー粉砕後、ふるいを通し、中皿にプレスしてパウダーファンデーションを得た。
【実施例1】
【0056】
実施例1として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体2としたものを調製した。
【実施例2】
【0057】
実施例2として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体3としたものを調製した。
【実施例3】
【0058】
実施例3として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体4としたものを調製した。
【実施例4】
【0059】
実施例4として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体6としたものを調製した。
【実施例5】
【0060】
実施例5として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体7としたものを調製した。
【実施例6】
【0061】
実施例6として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体16としたものを調製した。
【実施例7】
【0062】
実施例7として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体17としたものを調製した。
【実施例8】
【0063】
実施例8として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体18としたものを調製した。
【0064】
比較例1として、上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を、前述の複合粉体1としたものを調製した。同様に、比較例2は複合粉体5、比較例3は複合粉体10、比較例4は複合粉体11、比較例5は複合粉体12、比較例6は複合粉体13、比較例7は複合粉体14、比較例8は複合粉体15を、それぞれ上記パウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体として用い、パウダーファンデーションを調製した。
さらに複合粉体の効果を明確に見分けるために、比較例0として、複合粉体を含まず、パウダーファンデーション処方中の成分(17)の各複合粉体を成分(1)のシリコーン処理セリサイトに置き換えて調製して、比較対照の標準品とした。
【0065】
調製したパウダーファンデーションの評価を次のように行った。
(パウダーファンデーション評価1)
シミ隠し効果を見積もるため、調製した各パウダーファンデーションを、シミがプリントされている肌模型を用いて評価した。
方法は、肌模型として人工皮膚模型にシミ評価用として市販されているビューラックス社製バイオプレートDS50/20を用い、下記処方の化粧下地0.05gを均一に塗布した後、パウダーファンデーションをパフにて叩き込むようにして均一に塗布した。
【0066】
用いた化粧下地処方
成分 配合量(重量%)
セスキステアリン酸メチルグルコシド 1.00
ステアロイル乳酸ナトリウム 0.20
硬化ナタネ油アルコール 3.50
スクワラン 6.00
ミリスチン酸オクチルドデシル 6.00
メチルフェニルポリシロキサン 6.00
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 2.00
トリイソステアリン酸ポリグリセリル 1.00
ブチルパラベン 0.10
精製水 56.44
合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム 1.30
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.06
キサンタンガム 0.20
1,3−ブチレングリコール 10.00
メチルパラベン 0.20
ジグリセリン 5.00
メチルポリシロキサン 1.00
合計 100.00
【0067】
前述のシミ評価用バイオプレートには、シミモデルとして直径約2cmのシミが5段階の濃淡で左右に2つずつ、合計10個書き込まれている(図3)。その片方に比較例0の標準ファンデーションを塗布し、もう片方に実施例1〜8及び比較例1〜8を塗布して、5段階の濃淡のシミを比較例0よりも優位に隠しているかを検証した。
判断としては、判定者3名により、
5段階のシミのうち淡い方から3段階まで比較例0と比較してシミが隠れて見えると判断されること、
シミ以外の肌色の部分がファンデーションの塗布によって元の肌色と大きく色調が変化していないこと
を、3名共に確認できた場合を良好の基準とした。その結果を表2に示す。(表2でシミの隠れ方の表中の数値は、シミモデルの淡い方から何段階目のシミまで隠れたかを、3人共に認識できた段階を示す。)
【0068】
【表2】

【0069】
評価の結果、ぎらつき感が無く、青色〜緑色とオレンジ色の反射干渉光を有する複合粉体を配合した実施例1〜8のパウダーファンデーションは何れも淡い方から3段階までシミを隠し、周りの部分の色調の変化も無かった。さらに、全体の見え方も、比較例0と比較して、ぎらつき感の無い明るさがあった。
【0070】
これに対し、比較例1は、ややぎらつき感が有り、シミの隠れ方も弱く周りの肌色部分の黄味が高いように感じられた。比較例2は、ぎらつき感は無いものの、シミの隠れ方が弱く周りの肌色の部分の黄味が高かった。従って、実施例との差から、酸化チタンの被覆量が5〜15重量%である複合粉体を配合したファンデーションが、シミを隠す効果の高いことがわかる。
【0071】
比較例3〜6は、ぎらつき感は無いものの、周りの肌色の部分の色調変化が大きく、違和感のある見え方であった。比較例7はぎらつき感も無くシミの隠れ方も良好であったが、周りの肌色の部分が、くすんだ明るさと白浮きの傾向があった。比較例8は、特に全体的青味が高く、シミも隠れにくく周りの色調変化が大きかった。したがって、母粉体の拡散反射光と反射干渉光の色調によって、シミを隠す効果と周りの肌色と馴染む特性が変化し、実施例との比較から黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を持つ酸化鉄被覆雲母チタンが複合粉体の母粉体として良好であることが示された。
【0072】
(パウダーファンデーション評価2)
次に、シミやソバカスのあるパネラー5人に、前述の化粧下地を塗布した後、シミを隠す効果があると判断した実施例1〜8の全てのパウダーファンデーションを塗布してもらった。その結果、肌模型による評価結果と同様に、何れもぎらつき感が無く、健常な肌と同じような微妙な発色がありシミやソバカスを隠す効果の高いパウダーファンデーションであった。特に、実施例2、4、6〜8の約10重量%前後の酸化チタンを被覆した複合粉体を配合したパウダーファンデーションはシミを隠す効果が高い。
【0073】
次に、シミを隠す効果の高かった複合粉体3を用いて複合粉体の配合濃度検討を行った。
【実施例9】
【0074】
実施例9として、前述のパウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を複合粉体3とし、その配合量を5重量%から0.1重量%へ変更して、過不足分を成分(1)のシリコーン処理セリサイトとしたものを調製した。
【実施例10】
【0075】
実施例10として、前述のパウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を複合粉体3とし、その配合量を5重量%から0.2重量%へ変更して、過不足分を成分(1)のシリコーン処理セリサイトとしたものを調製した。
【実施例11】
【0076】
実施例11として、前述のパウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を複合粉体3とし、その配合量を5重量%から2重量%へ変更して、過不足分を成分(1)のシリコーン処理セリサイトとしたものを調製した。
【実施例12】
【0077】
実施例12として、前述のパウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を複合粉体3とし、その配合量を5重量%から20重量%へ変更し調製した。このときファンデーションの外観色調整のため成分(9)〜(11)の配合量をもとの7割に減じた。過不足分は成分(1)のシリコーン処理セリサイトで調整した。
【0078】
比較例9として、前述のパウダーファンデーション処方の成分(17)各複合粉体を複合粉体3とし、その配合量を5重量%から30重量%へ変更し調製した。このときファンデーションの外観色調整のため成分(9)〜(11)の配合量をもとの7割に減じた。過不足分は、成分(3)を削除し、さらに成分(1)のシリコーン処理セリサイトで調整した。
【0079】
なお、評価検討のため、前述の比較例0、実施例2も加えて評価した。
【0080】
(パウダーファンデーション評価3)
評価は、シミやソバカスのあるパネラー5人に、前述の化粧下地を塗布した後、実施例2、実施例9〜12、比較例0、比較例9を塗布してもらい、ぎらつき感の無い自然な仕上がり、シミ、ソバカスを隠す効果を、次のように評価してもらった。
それぞれの効果について、
良好:+1
どちらともいえない:0
悪い:−1
として、5人の評価結果の点数の和を表にまとめた。
また、各人の評価結果の終わりに暗室に入ってもらい、顔の正面からの写真をフラッシュ撮影して白浮きの程度も評価した。判断は各個人に自分の顔写真を見てもらい、
白浮き無く良好:+1
どちらともいえない:0
白浮きがある:−1
として、同様に5人の評価結果の点数の和を表にまとめた。その結果を表3にまとめた。
【0081】
【表3】

【0082】
表3より、ぎらつき感の無い自然な仕上がり、シミやソバカスへの自然な隠ぺい力があるのは実施例9の濃度以上で、比較例9では、ぎらつき感を感じ始めているので、それらの濃度を考慮すると、0.1〜20重量%が好ましいことが判る。また、特に、優れたシミとソバカスの隠し効果を求めると0.4重量%以上であり、さらに優れた光の広がりと発色を生かして白浮きが少なくなるようにするには、実施例11と比較例9の結果から2〜20重量%が良い。
【実施例13】
【0083】
次に、本発明における複合粉体を、シミ隠し用のスティックコンシーラーに応用した。その処方を実施例13として示す。
スティックコンシーラー処方
成分 配合量(重量%)
(1) 酸化チタン 30.00
(2) ナイロン末 8.00
(3) ベンガラ 0.60
(4) 黄酸化鉄 3.00
(5) 黒酸化鉄 0.20
(6) マイカ 1.15
(7) トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 21.00
(8) セスキオレイン酸ソルビタン 1.00
(9) 天然ビタミンE 0.05
(10)パラフィン 8.50
(11)マイクロクリスタリンワックス 2.00
(12)2−エチルヘキサン酸セチル 12.50
(13)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(1) 2.00
(14)複合粉体3 10.00
合計 100.00
【0084】
(調製方法)
成分(1)〜(9)を混合し三本ローラーで十分に分散させた。これを、成分(10)〜(13)までを加温溶解したものに加え、さらに加熱しながら十分に撹拌した。その後、成分(14)を加えて80℃で撹拌を続け、脱泡後、成形してスティックコンシーラーを得た。
【0085】
得られた実施例13のスティックコンシーラーは、特に濃いシミでも自然に隠すことのできる優れた化粧料であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明で用いた複合粉体を配合すれば、シミやソバカスを隠す目的の様々な化粧料の形態に適用でき、また、強いライトのもとでの白浮きも抑えられるので舞台用のメイクアップ化粧品にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】酸化チタンの膜状被覆形態(一部膜剥がれ有り)
【図2】酸化チタンの粒状被覆形態
【図3】シミ評価用バイオプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色の拡散反射光と緑色の反射干渉光を発する酸化鉄被覆雲母チタンの表面に、酸化鉄被覆雲母チタンに対して5〜15重量%の酸化チタンを膜状に被覆させた複合粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
酸化鉄被覆雲母チタンの組成が、マイカ33〜51重量%、酸化チタン46〜60重量%、酸化鉄3〜7重量%である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
酸化鉄被覆雲母チタンの表面に膜状に被覆した酸化チタンが、非晶質及び/又はアナターゼ型の結晶型である請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
酸化鉄被覆雲母チタンの表面に膜状の酸化チタンを被覆した複合粉体を0.1〜20重量%含有する請求項1〜3のいずれか一項記載の化粧料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−230997(P2008−230997A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70474(P2007−70474)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月12日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第87春季年会(2007)講演予稿集 CD−ROM」に発表
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【出願人】(591275665)三信鉱工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】