説明

化粧料

【課題】従来の欠点を解決した有機微粒子を含む化粧料を提供すること。
【解決手段】機能性成分および/または意匠性成分を内包しているポリウレタンゲル粒子を含有する化粧料において、該ゲル粒子が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子の表面が、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子により被覆されているポリウレタンゲル粒子であることを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性成分および/または意匠性成分を内包しているポリウレタンゲル粒子を含む化粧料に関し、さらに詳しくは均一な粒子径であり、かつ機械強度、耐屈曲性、耐熱性、低温特性、耐摩耗性、耐薬品性に優れており、特に化粧料成分として必要とされる柔軟性(ソフトタッチ感)、滑り性、しっとり感、弾性、変形回復性、透過性、光拡散性、適度な光沢性、肌への伸展性、耐媒体性(膨潤しない)、耐油性(膨潤しない)、皮脂吸収性、皮膚への安全性などに優れ、さらには機能性成分などを内包してなるポリウレタンゲル粒子を含有するメイクアップ化粧料やスキンケアー化粧料などの化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に使用される微粒子としては、タルク、カオリン、マイカ、顔料などの微粒子が多く使用されている。さらに有機微粒子としては、ナイロン、結晶セルロース、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン・メチルメタクリラート共重合体などの有機微粒子が挙げられる。
【0003】
上記種々の有機微粒子に関しては、粒形においては真球状や非真球状なもの、多孔質球状微粒子、種々の粒子径、粒度分布、比重、硬度、表面処理(表面性質)など、様々な材料が検討されている。化粧料に使用される代表的な微粒子について述べる。
【0004】
ナイロン12微粒子は伸展性に優れ、高硬度のためサラサラ感があり、好評であるとともに、真球状で単一な粒度分布であり、耐溶剤性、耐薬品性、耐圧縮性、非熱流動性などの特性がある。しかしながら、ナイロン12微粒子は、高コストであり、防腐剤であるパラヒドロキシ安息香酸エステルやパラヒドロキシ安息香酸エチルなどを吸収しやすく、防腐効果をなくすことや、口紅など、高温加工する際に融点の問題から、化粧料成分と融着すると云った問題を引き起こす。
【0005】
アクリル微粒子は、低コストで伸展性がよくスライド感も良好で、メイクアップ化粧料、制汗剤やローションなどに使用されているが、上記アクリル微粒子は、柔軟性、フィット感、肌への密着性(化粧持ち)に乏しいといった課題もある。
【0006】
シリコーン微粒子は、高硬度のため伸展性がよく(動摩擦係数が低い)、撥水性、光拡散性や隠蔽性があるのでメイクアップ化粧料に使用される。しかしながら、上記シリコーン微粒子は柔軟性に乏しいことや皮脂の吸収性が悪いことなどが課題としてある。
【0007】
真球状有機微粒子を含有している化粧料は、皮膚に対する刺激性がなく、人体の安全性に問題がない素材であるとともに、滑らかで柔軟な感触性、皮膚への伸展性(ローリング性)、汗や皮脂の吸収性、通気性を付与させたり、透過性、光拡散性、隠蔽効果、光沢性などの光学特性を活かして、皺やしみを隠した自然な肌を演出したナチュラルカバー効果を発揮させたり、テカリ防止、色むら隠し、化粧持ち、小皺や毛穴を隠す機能などを目的に利用される。
【0008】
さらに上記微粒子は、化粧料としての機能の他に化粧料配合において、例えば、化粧料に使用される揮発性シリコンオイル、精製水、油剤、防腐剤などとの相溶性が良好で、かつ揮発性シリコンオイル、油剤、防腐剤の吸収性が少なく長期安定性が求められる。
【0009】
また、パウダーファンデーションなどは各製造方式(乾式法、湿式法)での成型性が重要であり、口紅では高温で加工するため、上記微粒子は耐熱性(加工温度で軟化しないこと)や極性が少なく粘着しないことなどの化粧料の加工適性が求められる。
【0010】
かかる問題を解決する方法として、化粧料に球状ポリウレタン粒子を配合する手法が提案されている(特許文献1)。この化粧料は、伸展性、感触性などには問題ないが、化粧料の特性である光拡散性や隠蔽性が乏しく、光学特性としては満足するものではない。
【0011】
また、化粧料にアクリル共重合体微粒子を配合する手法が提案されている(特許文献2)。該アクリル共重合体微粒子を含有させた化粧料は、伸展性などは良好であるものの、微粒子自体が高硬度(ガラス転移温度が高い)であり、人肌とは遠い感触となる。これらの従来の方法では、現在主流と言われる人肌に近い柔軟性が求められるとともに、自然に近いナチュラルカバー効果が得られないと云う問題が解決されない。
【特許文献1】特開平5−262622号公報
【特許文献2】特開2001−151626公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記有機微粒子は化粧料において各素材独自の優れた特徴があるものの、幾つかの問題があり、前記した全ての機能を満足するものでない。そのうえ、従来よりも高機能である有機微粒子素材および化粧料が要望されている。従って本発明の目的は、従来の上記の欠点を解決した有機微粒子を含む化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、機能性成分および/または意匠性成分(以下両者を「機能性成分など」と云う場合がある)を内包しているポリウレタンゲル粒子を含有する化粧料において、該ゲル粒子が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素基を有する化合物(以下単に「ポリオール」と云う場合がある)とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(以下単に「粒子A」と云う場合がある)の表面が、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(以下単に「粒子B」と云う場合がある)により被覆されているポリウレタンゲル粒子(以下単に「粒子C」と云う場合がある)であることを特徴とする化粧料を提供する。上記機能性成分などは、粒子Aおよび/または粒子Bに含まれている。
【0014】
上記機能性成分などとしては、保湿成分、ビタミン成分、抗酸化成分、血行促進成分、紫外線吸収成分、紫外線カット成分、抗菌、美白成分、老化防止、顔料、染料、パール、マイカおよび金属ペーストから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、上記成分割合が、粒子Cを構成している樹脂100重量部あたり0.1〜300質量部であることが好ましい。
【0015】
また、上記粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01〜1.0μmであること;粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていること;粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0016】
また、下記式1で示される粒子Cの円形度が、0.9〜1.0の範囲であること;上記粒子Cの圧縮強度が、0.01〜1.0MPaの範囲であり、回復率が60〜100%の範囲であること;および粒子Cの熱軟化点温度が、250℃以上であることが好ましい。
[式1] 円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記粒子Cが、機械強度、耐屈曲性、耐熱性、低温特性、耐摩耗性、耐薬品性などに優れており、化粧料成分として必要とされるナチュラルカバー効果のある適度な透明性、適度な光拡散性、適度な隠蔽性、適度な光沢性であり、テカリ防止、色むら隠し、小皺、毛穴隠し効果および感触(柔軟性(ソフトタッチ感)、滑り性、しっとり感)に優れており、弾性、変形回復性、肌への伸展性、吸油性、皮脂吸収性、皮膚への安全性などに優れ、特に柔軟性(ソフト性)、変形回復力および皮脂(オレイン酸)の吸収性能が高く、かつ粒度分布が狭いことから、これらの粒子に機能性成分などを含有させることで、前記従来技術の課題が解決されることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で用いる粒子Cは、ポリイソシアネートおよびポリオール(これらの少なくとも一方には、機能性成分などを内包させてある、以下同じ)を、ポリウレアコロイド溶液の存在下に不活性溶媒中で乳化分散後、重合させることによって得られる。このようにして得られる粒子Cは、粒子Aの表面が、ポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bによって被覆されている。機能性成分などは粒子Aに代えて、または加えて粒子B中に包含させることもできる。
【0019】
本発明で用いる粒子Cは上記方法によって得られるが、好ましい方法は、不活性溶媒中で撹拌機や乳化機付きのジャケット式合成釜に、ポリイソシアネートとポリオールとを仕込み、ポリウレアコロイド溶液により乳化分散し、これらの合成原料を反応させて粒子Aを合成した後、粒子Aの表面をポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bで均一に被覆させる方法である。
【0020】
合成温度は特に限定されないが、好ましい温度は40℃〜140℃である。また、合成時に使用するポリウレアコロイド溶液は、その固形分としての使用量で、粒子Aの原料換算で100質量部あたり0.01質量部以上を使用することができ、好ましくは0.1〜20質量部である。使用量が0.01質量部未満では粒子の乳化が不十分で、合成過程で粒子の大きい凝集塊が発生し、目的とする微細な粒子Cの分散体が得難い。一方、使用量が20質量部を越えると、粒子Aの乳化性には問題はなく、粒子Cは製造することができるが、乳化剤としての作用として過剰な量であり、特に利点はない。
【0021】
ポリイソシアネートとポリオールとの不活性溶媒中における濃度は、低い程小さい粒径の粒子Aまたは粒子Cが得られ易いが、生産性から好ましい濃度は20〜70質量%である。
【0022】
粒子Aについて以下に説明する。粒子Aの原料であるポリイソシアネートとポリオールとの少なくとも一方には、機能性成分などが加えられている。ここで機能性成分は、少しずつ徐放されて、目的とする機能を発揮する成分であり、意匠性成分は、意匠性の高い色相や光拡散による特異的な反射光を利用して美しい化粧肌を作り上げる成分である。上記機能性成分などの含有量は、粒子Cを構成している樹脂100重量部あたり0.1〜300質量部であることが好ましい。
【0023】
粒子Aの合成に使用される活性水素基を有する化合物としてのポリオールとしては、好ましくはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、活性水素基を有する化合物としてのポリアミンとしてはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジアミン、高分子ポリアミンなどが使用できるが、これらは特に限定されない。以下に使用するそれぞれの化合物について説明する。
【0024】
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)が挙げられる。
【0025】
また、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどの化合物が挙げられる。
【0026】
また、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなどのジオールおよび/または3官能以上ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0028】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなどのジオールおよび/または3官能以上のポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0029】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどのジオールおよび/または3官能以上のポリラクトンポリオールなどが挙げられる。
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのジオールおよび/または3官能以上のポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物などのジオールおよび/または3官能以上のポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0030】
(6)水素添加ダイマーポリオール、ヒマシポリオールなどのジオールおよび/または3官能以上のダイマーポリオールなどが挙げられる。
(7)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどのジオールおよび3官能以上のポリメタクリレートポリオールなどが挙げられる。
【0031】
これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、ポリイソシアネートと反応するものは全て使用可能であり、通常、数平均分子量は500〜2,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールとしては、活性水素基が2個以上のポリオールが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素基を有するポリオールである。
【0032】
前記粒子Aまたは粒子Bの合成に使用するポリイソシアネートとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネートとして好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0033】
また、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDIおよび水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0034】
また、これらの化合物をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもので従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0035】
これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】
本発明で用いる機能性成分としては、保湿成分、ビタミン成分、抗酸化成分、血行促進成分、紫外線吸収成分、紫外線カット成分、抗菌、美白成分、老化防止などに効能がある薬剤が挙げられる。例えば、保湿成分としては、グリセリン、スクワラン、1,3−ブタンジオール(トウモロコシ由来も含む)、ソルビトール、コラーゲン、アミノ酸、尿素、セリン、ゼラチン、植物エキス、マリンミネラル、ヒアロン酸、ヒアルロン酸、キトサン、アルロン酸、単糖類、多糖類(トレハロース)、ロイヤルゼリー、天然セラミドなどが挙げられる。
【0044】
ビタミン成分としては、抗酸化作用、美白効果および老化防止を防ぐ機能がある、例えば、ビタミンA、B、C、D、E、Kおよびその誘導体、ポリフェノールなどが挙げられる。血行促進成分としては、ビタミンE、植物抽出エキス、酵母エキス、ロイヤルゼリーなどが挙げられる。抗酸化成分としては、ビタミンCやビタミンEおよびその誘導体、アルブチン、甘草エキス、植物抽出エキス、カロチン、白金ナノコロイドなどが挙げられる。
【0045】
美白成分としては、メラニン生成を抑える美白成分であり、ビタミンCやその誘導体、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、甘草エキス、植物抽出エキスなどが挙げられる。紫外線吸収成分または紫外線カット成分としては、メトキシケイヒ酸オクチル、オキシベンゾン、サリチル酸オクチルおよびホモサレートなどの紫外線吸収剤や、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウムなどの紫外線カット成分などが挙げられる。
【0046】
抗菌成分としては、パラベンなどを使用するが、肌の弱い人やアレルギー体質の人には向いていない。天然エキスやカテキンなどが良いとされる。老化防止成分としては、大豆由来のサポニンとイソフラボン、天然ビタミンE、コエンザイムQ10などが挙げられる。芳香成分や消臭成分は、肌のトラブルの原因となり得るので、無臭タイプを推奨するが、必要に応じて極微量の芳香成分や消臭成分も使用可能である。
【0047】
本発明に使用される意匠性成分としては、顔料、蛍光顔料、染料、パール、マイカ、金属素材など、体質顔料としては、マイカ、タルク、カオリン、セリライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水珪酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウムなど、天然色素としては、カロチノイド系、フラボノイド系、フラビン系など、有機合成色素としては、法定色素I、II、IIIグループおよびFDA承認色素など、無機顔料としては、酸化鉄、カーボンブラック、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロムなど、白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0048】
また、アゾ系色素、ニトロ系色素、ニトロソ色素、キサンテン系色素、キノリン系色素、アントラキノン系色素、インジゴ系色素、トリフェニル系色素などのタール色素が挙げられる。
【0049】
パール顔料は、光を反射する微細な板状の物質からなり、化粧料の外観および塗布した際の皮膚表面にパールのような光沢感を出す顔料である。該パール顔料は、小さな板状の雲母を光反射する酸化チタン膜で覆った合成マイカと、ニシンや太刀魚の鱗から板状結晶を採取するものがある。特に、ホワイトパールを主剤とし、色材と混合して使用したり、シルバー調や様々な干渉色として使用している。金属素材としては、各種金属粉、金属のように光沢のある擬似加工品などが使用される。
【0050】
本発明に使用されるポリイソシアネートおよびポリオールなどの種類、使用量および使用比率は、得られる粒子Cの使用目的によって決定されるが、ポリイソシアネートおよびポリオールの少なくとも一方が3官能以上であることが必要である。例えば、ポリイソシアネートが2官能である場合には、ポリオールが3官能以上であり、また、ポリオールが2官能である場合には、3官能以上のポリイソシアネートが必要である。勿論、全ての成分が3官能以上であってもよい。また、NCO/OH比は、使用する化合物と生成物に要求される性能によって決定されるが、好ましくは0.5〜1.2の範囲である。
【0051】
上記全化合物の反応に使用し、生成する粒子の分散体の連続相を形成する不活性溶媒は、生成する粒子に対して実質的に非溶媒でありかつ、活性水素基を有さないものである。その例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられ、これらの不活性溶媒は、該不活性溶媒と合成された粒子Cの分離工程や生産性の点からは150℃以下の沸点を有するものが好ましい。粒子Cの合成に際しては公知の触媒を使用すれば、反応温度は低温でもよいが、作業面から40℃以上の反応温度が好ましい。
【0052】
上記粒子Aの合成時に乳化剤として使用するポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が好ましくは0.01〜1.0μmの粒子であり、かかるポリウレアコロイド溶液は、例えば、非水溶媒中で、油脂変性ポリオールとポリイソシアネート(またはこれらの化合物からなる末端NCOプレポリマー)とポリアミンとの反応で得られる。
【0053】
この反応では、反応が進むにつれて、ウレア結合同士の水素結合により、溶媒中に不溶解のウレアドメインが形成され、同時に油脂変性ポリオール鎖が溶媒中で溶媒和されることにより、非溶解性のウレアドメインの凝集などによる粒子Bの巨大化が防止され、安定なポリウレアコロイド溶液が容易に得られる。
【0054】
さらに、使用する油脂変性ポリオールが、非水溶媒中での結晶性が少なく、反応が進むにつれて生じる高分子化の過程でも、溶媒中で油脂変性ポリオールを主体とするポリマー鎖がある程度自由に動き得るために、非溶解性結晶部分と溶解性非結晶部分の分離が容易に行われ、ウレア結合同士の水素結合による非溶解性結晶部分を粒子の中心とするウレアドメインを形成し、その周囲に溶媒和されたポリマー鎖が規則正しく外向きに配向される。これは従来のミセル下に重合することにより得られる公知のコロイド溶液の製造方法における界面活性剤とは根本的に異なる作用である。
【0055】
上記ポリウレアコロイド溶液の製造方法をさらに具体的に説明する。先ず、最初に油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとを非水溶媒中または無溶媒で反応させ、NCO基を有するプレポリマーを合成する。次にこのプレポリマーを撹拌機付きのジャケット式合成釜に仕込み、濃度が5〜70質量%になるように非水系溶媒を添加して濃度を調整する。この溶液を撹拌しながら、予め1〜20質量%の濃度に調整したポリアミンの溶液を徐々に添加し反応を行い、ポリウレア化反応においてポリウレアコロイド溶液を製造する。
【0056】
ポリアミンの添加方法は、上記の方法の他にポリアミン溶液に前記プレポリマーまたはその溶液を添加する方法でもよい。ポリマー合成のための温度は特に限定されないが、好ましい温度は20〜140℃である。ポリマー合成のための反応濃度、温度、撹拌機の形態、撹拌力、ポリアミン溶液およびプレポリマーまたはその溶液の添加速度などは特に限定されないが、ポリアミンとプレポリマーのイソシアネート基との反応は速いので、急激な反応が行われないように、反応を制御することが好ましい。
【0057】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオールは、官能基が2個以下のポリオールであって、好ましい分子量は700〜3,000であるが、これに限定されない。油脂変性ポリオールの具体例としては、例えば、各種の油脂を低級アルコールやグリコールを用いてアルコリシス化する方法、油脂を部分鹸化する方法、水酸基含有脂肪酸をグリコールによりエステル化する方法などによって、油脂に約2個以下の水酸基を含有させたものが好ましく、上記の水酸基含有脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。
【0058】
油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、1<NCO/OH≦2の条件で行い、溶媒和されるプレポリマー鎖の分子量をコントロールする。このように合成されるプレポリマーの分子量は、特に限定されないが、好ましい範囲は約500〜15,000である。粒子Bの合成に使用されるポリイソシアネートとしては、公知のポリイソシアネートの全てが挙げられる。特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート、水添加TDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、水添XDIなどの脂肪族または脂環族系ジイソシアネートである。
【0059】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する非水系溶媒としては、使用原料である油脂変性ポリオール、ポリイソシアネートおよびポリアミンを溶解するもので、活性水素基を有さない全ての非水系溶媒を使用することができる。特に好ましいものはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられる。なお、本発明において「溶解」とは常温および高温下での溶解の両方を包含する。
【0060】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用するポリアミンとして、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族系ポリアミンおよびヒドラジンなどが挙げられる。短鎖ジアミンおよび脂肪族系ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、トリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンおよびポリオキシプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0061】
また、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス−アミノプロピルピペラジン、チオ尿素、メチルイミノビスプロピルアミン、ノルボルナンジアミンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。また、ヒドラジンとしては、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、得られるプレポリマーの種類、使用量および使用比率は、使用する溶媒中での粒子Bの大きさおよび安定性などを制御する目的で決定される。すなわち、本発明で用いるポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒中で溶媒和されない結晶部分のウレアドメインと、そのウレアドメインから伸びて溶媒中で溶媒和されたポリマー鎖により形成されている。
【0063】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bのウレアドメインの大きさおよび溶媒和されたポリマー鎖の大きさと形態がポリウレアコロイド溶液の性質を左右する。このように、ウレアドメインと溶媒和されたポリマー鎖とで形成された粒子Bは、溶媒中で安定なポリウレアコロイド溶液であり、その溶液中の粒子Bのウレアドメインの粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、溶媒和されているポリマー鎖の1個の分子量は約500〜15,000であり、両者の質量比はウレアドメイン(ウレア結合またはポリアミン)/ポリマー鎖が0.5〜30の範囲が好ましい。
【0064】
ウレア結合の割合が上記範囲未満であると、得られる粒子B中の非溶媒和性ウレアドメインが形成されにくく、粒子Bが非水溶媒に溶解し易くなり、良好なポリウレアコロイド溶液が生成されない。一方、ウレア結合の割合が上記範囲を越えると、非溶媒和性ウレアドメインが大きくなり、得られるポリウレアコロイド溶液の安定性が低下し、粒子Bの凝集が生じ易くなる。
【0065】
本発明で使用する粒子Bの溶媒中における形態は、図1に示すようなものと想像される。この粒子Bの粒径の制御については、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインを含んだ粒子全体の大きさと、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインのそれぞれの大きさについて、両者ともに制御が可能である。なお、先に記載の粒子Bの粒径は、ウレアドメイン部分を表現している。
【0066】
安定に制御されたポリウレアコロイド溶液を製造するためには、図1のように、溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が明瞭に相分離しているのが望ましく、そのためには溶媒和されるポリマー鎖と結晶部分のウレアドメインとが混在しないように製造することが必要である。このためには、合成過程で溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が分離しやすい合成条件が要求される。
【0067】
ポリウレアコロイド溶液の合成は、NCO基を有するプレポリマーの溶液およびポリアミンの溶液の両方の濃度が低く、一方の溶液に他方の溶液を添加する添加速度が遅いほど良好な結果が得られ、撹拌はプロペラミキサー撹拌で充分である。また、原料溶液の濃度が高い場合や溶液の添加速度が速い場合には、ホモジナイザーなどの使用による高剪断力の混合を行いながら合成することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類と、その溶媒に対するウレアドメインの溶解度により決まるが、好ましい温度は合成を制御し易い20〜120℃であるが、この温度範囲に特に限定されない。ウレアドメインの形成は合成過程で形成する方法、或いは高温で合成したものを冷却過程で形成する方法でもよい。
【0068】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bの重要な因子は、その表面基の種類および濃度であり、さらには不活性溶媒中における分散性と分散粒径である。すなわち、ポリウレアコロイド溶液の乳化剤としての作用は、W/O、O/O型の乳化剤であり、ポリイソシアネートおよびポリオールの親水性、疎水性の強さと不活性溶媒との相関性で作用する。これらの条件を加味して検討を加えた結果として、ポリイソシアネートおよびポリオールに対するポリウレアコロイド溶液の添加量の調整で、粒子Cの粒径をコントロールすることが可能であり、前記の範囲で添加量が多い程粒径は小さくなり、少ない程粒径が大きくなる。
【0069】
以上の如き原材料から得られた粒子Cの分散溶液から、常圧または減圧下で不活性溶媒を分離することによって、本発明で使用する粒子Cが得られる。粒子化に用いる装置としてスプレイドライヤー、濾過装置付き真空乾燥機、撹拌装置付真空乾燥機、棚式乾燥機など公知のものがいずれも使用でき、好ましい乾燥温度は不活性溶媒の蒸気圧、ゲル粒子の軟化温度、粒径などに影響されるが、好ましくは減圧下40〜130℃である。
【0070】
このようにして製造された粒子Cの粒径は、0.5〜100μmで真球状である。粒径のコントロールは、粒子Cの組成が同一の場合、合成釜の乳化型式(プロペラ式、錨型式、ホモジナイザー、螺旋帯式など)および撹拌力の大小に左右されるが、特に不活性溶媒中のポリイソシアネート、ポリオールの濃度および機能性成分などの濃度、ポリウレアコロイド溶液の種類および添加量に影響される。ポリイソシアネート、ポリオール、機能性成分などを乳化するための機械的撹拌や剪断力は乳化の初期段階で決定され、これが強力な程分散体の粒径が小さくなる。その後の撹拌および剪断力は大きくは影響しない。かえってその力が強すぎると分散体同士の凝集を促進することになり好ましくない。
【0071】
また、本発明では、上記の粒子Cの製造にあたり、原料の少なくとも一部または全部に機能性成分など以外の各種添加剤を混合して、粒子Cの合成を行い種々の用途に適した粒子Cを得ることも可能である。
【0072】
以上の如くして得られる粒子Cは、下記式1で示される粒子Cの円形度が、0.9〜1.0の範囲であることが好ましい。
[式1] 円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長
【0073】
ここで円形度は、株式会社セイシン企業の粒子形状画像解析装置PITA−1により算出されるものであり、円形度を円相当径(実際に撮像された周囲長と同じ投影面積を持つ真円の直径)から算出された周囲長を実際に撮像された粒子の周囲長で割った値として定義し、真円で1になり、形状が複雑になるほど小さい値となる。このため、円形度は0.9以上の極めて球状性が高い粒子が好ましく、粒子を水などに分散した分散体は、電荷的反発により、極めて安定的に分散しており、製品に使用した際には分散安定性、増粘効果を有する。なお、円形度が0.9より小さい場合には球形でなくなり、安定的な分散性を喪失するとともに、化粧料成分として用いたときにざらつき感やきしみ感を生じる。
【0074】
さらに、前記粒子Cは、その圧縮強度は、0.01から1.0MPaであり、回復率は、80%以上であることが好ましい。圧縮強度は、粒子Cが粒子Bによって被覆された粒子Aであることから、化粧料成分として用いたときに0.01MPa以上で十分なさらさら感を得ることができ、より肌に近い感触である柔軟性(ソフトタッチ感)、滑り性、しっとり感を得る観点から1MPa以下が好ましい。
【0075】
回復率は、圧力により変形した場合、力が解放されると同時に、元の形状に復元することが求められ、60〜100%の範囲であることが好ましい。ここで圧縮強度、回復率とは、粒子Cを株式会社島津製作所の微小圧縮試験機MCT−W500にて圧縮試験を行った場合に、粒子径に対して10%変形した時の荷重と粒子径から下記式2によって算出される値である。
[式2] 圧縮強度(MPa)=2.8×荷重(N)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}
【0076】
回復率は、粒子に50mNの圧力をかけ、変位した距離(L1)と圧力を解放した時に変位した距離(L2)から下記式3によって計算される値である。なお、粒子Cの圧縮強度、回復率は、粒子Aの構成成分であるポリイソシアネートおよびポリオールの種類と配合量を制御することにより調節できる。
[式3] 回復率(%)=L2/L1×100
【0077】
粒子Cの熱軟化点は250℃以上であることが好ましい。熱軟化点が上記温度より低いと、化粧料成分として用いたときに口紅などのスティック剤に加工するときに高温で溶融などの不具合が起こることがある。熱軟化点は熱機械分析装置(TMA、リガク(株))を用い、粒子と同じ樹脂組成のシートを作製し測定を行った。
【0078】
さらに、本発明においては、粒子Cを分散媒(重合媒体)から分離した状態において(乾燥粒子C)、通常の微粒子の場合、粘着性が強く二次凝集してしまうが、該粒子Cは、凝集物がなくサラサラした粒子の状態として取り出されるのが特徴である。この作用は従来公知の有機系乳化剤や分散安定剤とは根本的に異なる作用である。
【0079】
これらの粒子Cは、図2の電子顕微鏡写真(倍率500倍)に示すように、ほぼ完全に真球状の粒子であり、図3の想像図に示す如く個々の粒子Cの表面にはポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが付着或は被覆されておりかつ粒子Bが非粘着性と耐熱性に優れているため、該粒子Cを分散溶媒から単に除去するのみで極めて流動性に富んだ粒子となり、粒子化に当たっては従来技術における如き煩雑かつコスト高な粉砕工程や分級操作を何ら要しないなどの種々の利点を有している。
【実施例】
【0080】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0081】
(ポリウレアコロイド溶液の作成)
[合成例1]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部中にグルコシルトレハロース2部(機能性成分)とホワイトパール(意匠性成分)0.2部および黄酸化鉄(意匠性成分)0.1部を均一に分散させたものと、n−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。
【0082】
撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート47.3部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。この物の分子量は1,383である。
【0083】
上記のPP−1の40部と、n−オクタン60部を撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%のポリウレアコロイド溶液(固形分18.0%)(B−1)を得た。この溶液は青い乳白色の安定な溶液であった。
【0084】
[合成例2]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部中にビタミンE(トコフェロール)(機能性成分)1部とホワイトパール(意匠性成分)0.5部を均一に分散させたものと、n−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=1.1になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート26.0部を1時間掛けて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、4時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を0.36%含有するプレポリマー溶液(PP−2)を得た。この物の分子量は11,834である。
【0085】
上記のPP−2の20部とn−オクタン80部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記プレポリマー溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの1%溶液14.4部を8時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン/プレポリマー鎖)×100=1.44%のポリウレアコロイド溶液(固形分8.9%)(B−2)を得た。この溶液は青い乳白色の安定な溶液であった。
【0086】
(粒子Cの製造)
[合成例3](実施例1)
平均分子量1,000のポリブチレンアジペートジオール20部中にヒアルロン酸(機能性成分)0.1部を均一に分散させたものを60℃で溶解し、さらに下記の構造式(化1)で示されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)7.3部を添加し均一に混合した。この物を予め1リットルのステンレス容器に準備した合成例1のポリウレアコロイド溶液(B−1)5.0部とn−オクタン25部の混合液の中に徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで、分離もなく安定な乳化液であった。
【0087】

【0088】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了し、粒子Cの溶液を得た。この溶液を100Torrで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離し、粒子C(1)を得た。このものは平均粒子径が5μmで円形度が0.92の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.35MPaで回復率は89%であった。
【0089】
[合成例4](実施例2)
500ミリリットルのセパラブルフラスコに、ポリウレアコロイド溶液(B−2)4部とイソオクタン150部とを仕込み混合した。次にこの液をホモミキサーで混合しながら予め50℃に加温した平均分子量785の3官能のポリラクトンポリオール100部中にビタミンC(機能性成分)1部と水酸化クロム(意匠性成分)0.2部を均一に分散した化合物を、徐々に添加して乳化させた。さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートアダクトポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネート24A−100、NC0%=23.5)68.3部を徐々に添加した。
【0090】

【0091】
次にホモミキサーを回転しながら、温度を80℃に上げ、3時間の反応後に反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.005部を加え、さらに4時間の反応を行ない、粒子Cの分散液を得た。この分散液から実施例1と同様にして粒子C(2)を得た。このものは平均粒子径が15μmで円形度が0.94の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.60MPaで回復率は92%であった。
【0092】
[合成例5](比較例1)
撹拌機および還流冷却器を具備した1,000ミリリットルのセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート50部、エチルアクリレート35部、プロピレングリコールジアクリレート5部、エチレングリコールジメタクリレート10部およびベンゾイルパーオキサイド0.3部を仕込み、さらに、ポリビニルアルコール(GH−17、日本合成化学工業社製)の5%水溶液30部およびイオン交換水250部を添加し、ホモミキサーにて4,000〜6,000rpmで10分間分散処理し分散液(1)を調製した。さらに分散液(1)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃、5時間ラジカル重合した。得られたアクリレート系粒子分散液を脱水、洗浄、乾燥後、解砕、篩いを掛けアクリル微粒子(3)を得た。このものは平均粒子径が10μmで円形度が0.93の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、7.1MPaで回復率は45%であった。
【0093】
(比較例2)
シリカ微粒子としてサイリシア350(富士シリシア化学社製、平均粒子径3.9μm、円形度0.74)を用いた。圧縮強度は、15.5MPaで回復率は、破壊してしまったため0%とした。
【0094】
(実施例1、2および比較例1、2の各粒子の評価)
<外観色調>
乾燥粒子を外観で確認した際の意匠性
○:意匠性が高い。
×:意匠性が低い。
【0095】
<分散性>
ディゾルバー攪拌機(1,000rpm)中のIPA(イソプロピルアルコール)100gに各粒子を5g添加し、20秒後の分散性を確認した。
評価基準;
○:均一に分散していた。
△:一部凝集物があった。
×:分散しない。
【0096】
<吸油量>
JIS−K5101に準じて測定した。
各粒子が化粧料に使用する油剤や防腐剤などを吸収すると、それらの効果を発揮できなくなるので、油剤などの例として亜麻仁油を使用してその吸油量を測定した。亜麻仁油の吸収性が低い方がよいとされる。オレイン酸は、人の皮脂成分の代替材料として測定した。オレイン酸の吸収性が高いほど人の皮脂を吸収するので良好とされる。化粧料に使用する油剤、防腐剤の吸収性が少なく、かつ皮脂(オレイン酸)の吸収は必要とされる。
【0097】
<分散安定性>
1,3−ブタングリコール、揮発性シリコーン、IPA100gに対して、各粒子10gを入れ、手攪拌で混合した際の分散安定性を確認した。
評価基準;
○:簡単に分散し3日間後、凝集・沈降もなく安定な溶液が保持できる。
△:簡単に分散するものの3日間後、一部に凝集・沈降が見られる。
×:分散しない。
【0098】
<膨潤性>
IPA中に、各粒子を24時間浸漬させた後、粒子径の増加率を比較した。
<光学特性>
試験片は、ニトロセルロースに各粒子を濃度10phrで調製した溶液を、塗布膜厚20μmでコーティングしたものの光学特性を測定した。全光線透過率は、数値が高いと透明感のある自然な肌を演出してよいとされる。また、拡散透過率は、適度な値(30〜50)が求められ、光の拡散効果で小皺、しみなどを隠す作用がある。
【0099】
<耐熱性>
熱機械分析(TMA、リガク(株))を用い、粒子と同じ樹脂組成のシートを作製して荷重10g、昇温速度10℃/min.の条件にて針進入法で測定を行った。
【0100】

【0101】
(実施例1、2および比較例1、2の各粒子の化粧料応用)
<クリーム処方>
・各粒子 12.0部
・シリコーン系界面活性剤 1.0部
・スクワラン 12.0部
・揮発性シリコーン 12.0部
・1,3−BG 5.0部
・精製水 58.0部
上記化粧処方にて以下の化粧料評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
<柔軟性>
適正量を手の甲に塗り、乾燥した状態で評価を行った。
○:ソフト性がある。
△:ソフト性が劣る。
×:ハード性が強い。
ソフト性が高いと人肌と近似した感覚であり評価される。
【0103】
<伸展性(ローリング性)>
適正量を手の甲に塗り、伸展性が良好であるか確認した。
○:伸展性がある。
△:伸展性が劣る。
×:伸展性が強い。
【0104】
<毛穴隠し効果>
適正量を手の甲に塗り、毛穴が隠れるか目視にて観察評価した。
○:毛穴隠し効果がある。
△:毛穴隠し効果が低い。
×:毛穴隠し効果がない。
【0105】
<機能性>
10人の女性にクリーム処方、リキッドファンデーション処方にて調整したサンプルを腕に塗布してもらい、5名以上が効果を確認した場合を効果ありとした。
【0106】

【0107】
<リキッドファンデーション処方>
・各粒子 10.0部
・シリコーン系界面活性剤 1.5部
・揮発性シリコーン 23.0部
・ジメチルシリコーン 5.0部
・酸化チタン 9.0部
・弁柄 0.6部
・黄色酸化鉄 0.2部
・タルク 2.0部
・プロピルパラベン(防腐剤) 0.5部
・1,3−ブタングリコール 10.0部
・ビタミンE 0.2部
・精製水 38.0部
上記化粧処方にて前記と同様に化粧料評価を行った。結果を表3に示す。
【0108】

【0109】
<パウダーファンデーション処方>
・各粒子 3.0部
・タルク 35.0部
・セリサイト 20.0部
・酸化チタン 9.0部
・弁柄 2.0部
・黄色酸化鉄 3.5部
・黒色酸化鉄 0.5部
・マイカ 15.0部
・スクワラン 6.0部
・ステアリルアルコール 3.0部
・ミツロウ 3.0部
上記化粧処方にて前記と同様に化粧料評価を行った。結果を表4に示す。
【0110】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は下記の効果を奏する。
1.粒径がコントロールされ、機能性成分などを含む粒子Cを含む化粧料の提供が可能である。
2.得られた粒子Cは真球状であり、該粒子Cは、粒子Aの表面にポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが均一に付着または被覆されているものであるため、該粒子Cは極めて流動性に優れ、取り扱いが容易であり、化粧料として種々の応用が可能である。
3.以上の効果から、本発明の粒子Cは、化粧料成分として有益である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明で使用するポリウレアコロイド溶液中の粒子Bの断面の想像図。
【図2】本発明で使用する粒子Cの写真。
【図3】本発明で使用する粒子Cの断面の想像図。
【符号の説明】
【0113】
1:溶媒和されているポリマー鎖(油脂セグメント)
2:非溶媒和部分のウレアドメイン
3:粒子A
4:粒子B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性成分および/または意匠性成分を内包しているポリウレタンゲル粒子を含有する化粧料において、該ゲル粒子が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(粒子A)の表面が、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(粒子B)により被覆されているポリウレタンゲル粒子(粒子C)であることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
機能性成分および/または意匠性成分が、粒子Aおよび/または粒子Bに含まれている請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
機能性成分が、保湿成分、ビタミン成分、抗酸化成分、血行促進成分、紫外線吸収成分、紫外線カット成分、抗菌、美白成分および老化防止から選ばれる少なくとも1種であり、意匠性成分が、顔料、染料、パール、マイカおよび金属ペーストから選ばれる少なくとも1種であり、上記成分割合が、粒子Cを構成している樹脂100重量部あたり0.1〜300質量部である請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01〜1.0μmである請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている請求項1に記載の化粧料。
【請求項6】
粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲である請求項1に記載の化粧料。
【請求項7】
下記式1で示される粒子Cの円形度が、0.9〜1.0の範囲である請求項1に記載の化粧料。
[式1] 円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長
【請求項8】
粒子Cの圧縮強度が、0.01〜1.0MPaの範囲であり、回復率が60〜100%の範囲である請求項1に記載の化粧料。
【請求項9】
粒子Cの熱軟化点温度が、250℃以上である請求項1に記載の化粧料。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−239542(P2008−239542A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81711(P2007−81711)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】