説明

化粧水シート

【課題】化粧水シートをパッティングに使用した後、該化粧水シートを構成する複数枚の不織布を剥離して、パックに使用でき、化粧水シートが取り出しやすく、使用感が良好で、包装体のごみの発生の少ない化粧水シートを提供する。
【解決手段】不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートであって、複数枚の不織布の積層体が折りたたまれてなる基材に、化粧水が該不織布基材の質量に対して4〜11倍含浸され、該積層体を折りたたんだ折り目を外側にして容器に配列収納されている化粧水シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
美容意識の向上により化粧水による日常の肌の手入れは欠かせないものとなっている。
従来、化粧水は、容器から手に取り出して、又はコットン等のシート材に含浸させて、顔を軽くたたく(パッティング)ようにして使用されている。その用途に用いられるパッティング材として、特許文献1には、複数枚が積層されて側縁部近傍を圧着手段によって剥離可能に接合されたものが記載されており、該パッティング材に化粧水を浸潤させてパッティングした後、一枚毎剥離したシートを顔面の必要個所に所定時間装着させてパックする使い方が開示されている。しかしこの特許文献1に記載された化粧用パッティング材は、使用時に使用者が化粧水を含浸して使用するもので、含浸に手間がかかることや肌に適用される化粧水の量の過不足のため使用感が悪かったり、化粧効果が得られにくいなどの問題があった。
【0003】
一方、使用の便宜のため、予め化粧水を不織布等に含浸させたシート状化粧料が知られている(特許文献2,3)。更には、化粧水を含浸したシート材間に疎水性シート状フィルムを介挿して多層積層体としたものも知られている(特許文献4)。
この特許文献4に記載のシートタイプ化粧品は、各含浸シートが密着することなく、一枚ごとの剥離操作が容易となる。
しかし、剥離を容易にするために介挿されたシート状フィルムの廃棄処理や、袋状包装体からの取り出し性や、開封後の保管の問題があった。
また、かかる液含浸シートを積層した状態で容器に収容して製品化する場合、容器内での液移動による含浸量の不均一化が起こり易い。
【0004】
一方、化粧液が含浸された積層体をパッティングに使用した後、積層体を構成する不織布を引き剥がしてパックとして使用可能な化粧用シートとして、使用一単位毎にシール包装されたもの(1枚ピロー)が市販されている。しかし、包装体が、ラミネートフィルムによる個別包装であり、包装コストとピローの廃棄の問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−349143号公報
【特許文献2】特開平10−279429号公報
【特許文献3】特開2002−226355号公報
【特許文献4】特開2003−310347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧水シートをパッティングに使用した後、該化粧水シートを構成する複数枚の不織布を剥離して、パックに使用できる化粧水シートであって、化粧水シートが容器から取り出しやすく、個々の含浸シートにおける液含浸量が均一であり、使用感が良好で効果感も高く、包装体のごみの発生の少ない化粧水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、低粘度の化粧水を不織布の積層体に含浸させ、所定形状に折りたたんだ化粧水シートを横並びで容器に配列収納することにより上記課題が達成されることを見出した。
すなわち、本発明は、不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートであって、複数枚の不織布の積層体が折りたたまれてなる基材に、化粧水が該不織布基材の質量に対して4〜11倍含浸され、該積層体を折りたたんだ折り目を外側にして容器に配列収納されている化粧水シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧水シートは、化粧水含浸シートとしてパッティングに使用した後、該化粧水含浸シートを構成する複数枚の不織布を剥離して、パックに使用することができ、使用性に優れる。また、容器から取り出し易く、個々のシートの液含浸量にバラつきがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の化粧水シートは、不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートであって、複数枚の不織布の積層体に、低粘度の化粧水が特定量含浸されている。
例えば、図1に示すように、本発明に用いられる化粧水シート1は、複数枚の不織布2が積層されている。不織布の積層枚数は、パックとして使用する1回分の枚数に応じて決定すればよい。
化粧水シートによるパッティングやパックは、多くの場合、顔面を対象とするので、前記積層体の大きさ、枚数は、頬、額を中心に手入れをしようとする部分を覆うことのできる大きさ、枚数であることが好ましい。具体的には、2〜8枚が好ましく、使い易さの観点から4枚が特に好ましい。
【0010】
用いられる不織布の材質は、化粧水の含浸性及び良好な肌触りを得る観点から、親水性の高い素材であるセルロース質繊維が好ましく、緩衝性とふんわり感を出す観点からは熱可塑性樹脂の短繊維が好ましい。また、それらを組み合わせて使用することもできる。
【0011】
セルロース質繊維としては、綿(コットン)、麻、パルプなどの天然繊維、レーヨン、リヨセル(ユニチカ製)等の再生繊維を挙げることができる。特に漂白された綿繊維が、綿繊維特有の吸水性と良好な肌触り感から好ましい。
【0012】
熱可塑性樹脂の短繊維としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる短繊維を挙げることができる。
繊度は、セルロース質繊維及び熱可塑性樹脂の短繊維共に、0.1〜10dtexが肌との接触感から好ましい。ここにdtex(デシテックス)は、10,000m当たりのグラム数で表した繊維の太さの単位である。
【0013】
セルロース質繊維と熱可塑性樹脂の短繊維とを組み合わせる場合、その混合比率(セルロース質繊維/熱可塑性樹脂の短繊維)は、50/50〜90/10(質量比)、特に60/40〜80/20(質量比)が、化粧水の含浸性と肌触りの観点から望ましい。
それらの構成繊維同士を三次元的に交絡させることにより、繊維間の空隙が十分に保たれ、また肌触りの良好な不織布となる。繊維同士を三次元的に交絡させるための手段としては、高圧水流処理(スパンレース)によるものが柔軟性、ドレープ性に優れるため好ましい。
かかる高圧水流処理による不織布は、特開2005−139594号公報に記載の方法により製造することができる。
【0014】
本発明の化粧水シートに用いる、不織布原反1枚の目付は、30〜80g/m2が好ましく、液(化粧水)含浸時の1枚の厚みが200〜800μm、特に300〜600μmとなるものが化粧水の含浸性と肌触りの観点から望ましい。また、上記不織布原反の複数枚を積層した積層体の厚みは、液含浸時で1,000〜3,000μm、さらには1,500〜2,500μmであるのが、化粧用コットンらしい使用感と肌触りの観点から好ましい。
ここに、不織布1枚又は積層体の厚みは、定圧厚み測定器PF−11(TECLOCK社製)を用い、荷重3.7g/cm2で測定して得たものである。
【0015】
本発明の化粧水シートにおいて、化粧水は、複数枚の不織布の積層体に含浸される低粘度の液体であり、その粘度は、30℃において1〜5,000mPa・sが好ましい。5,000mPa・s以下であれば製造時のシートに均一に含浸でき、1mPa・s以上であれば、保管時の化粧シート内での化粧水の移行による含浸量のばらつき等が生じることがなく、均一な化粧水シートとして使用できる。中でも、不織布への均一含浸性、不織布内での保持性、可逆移行性、使用時の取り出し性、さっぱり感等から、30℃における粘度が1〜500mPa・sが好ましく、特に、1〜50mPa・sであることが含浸の均一性と製造の容易さの点で好ましい。
【0016】
化粧水の粘度は、30℃にて回転粘度計を用いて測定することができ、
測定すべき試料の粘度に応じて、適切なロータと回転数を選択する。
【0017】
本発明の化粧水シートは、前記複数枚の不織布の積層体に、化粧水を不織布質量に対して4〜11倍含浸させてなる(含浸率400〜1,100%)。さらには、5〜10質量倍、特に7〜9質量倍含浸させたものが好ましい。化粧水シートにおける化粧水の含浸量は、化粧水らしいみずみずしい使用感と、パックとして使用する場合の肌との密着性及び化粧効果の点で重要である。
化粧水が不織布質量に対して4倍(含浸率400%)以上であれば、パックとして使用した化粧水シート(不織布)が肌から剥がれることがなく、11倍(含浸率1,100%)以下であれば、化粧水シートから液がしたたりこぼれることがない。
【0018】
化粧水が含浸された化粧水シートの液含浸量は、秤量した試料(W1g)を軽く絞って水洗いし、50℃、常圧にて12時間乾燥させた不織布基材の質量(W2g)を測定することで、(W1−W2)/W2により算出する。
本発明の化粧水シートの不織布基材への前記含浸量は、所定の容器に収容された包装体において達成されていればよい。
【0019】
不織布基材への化粧水の含浸方法としては、例えば、連続広幅状の不織布を所定の複数枚積層し、これを走行するローラー間に通して、ローラー間に設置されたスプレー装置、含浸槽、コーティングローラーなどの液体含浸手段で行われる。この段階での化粧水の含浸量は、所期の量(不織布基材の質量に対して4〜11倍)に達していなくてもよい。例えば、所定量の約半分の化粧水を含浸した不織布を、所定の長さに裁断して折りたたみ(例えば2つ折り又は3つ折りにする)、これを自動装填機で所定枚数、折りたたんだ状態で所定の容器に収納する。しかる後、容器に収納された化粧水シートに、残量の化粧水を注入して所定の含浸量に調整する。
【0020】
化粧水シートは、形状が長方形、正方形、楕円形などが一般的であり、大きさは化粧用に使用されているカット綿(いわゆる化粧用コットン)の大きさ程度が使いやすさの点から好ましく、例えば、方形の場合、幅25〜80mm、長さ40〜100mm程度が使い易さの点で好ましい。
【0021】
本発明において、不織布基材に含浸する化粧水には、通常、皮膚用外用剤として利用されるものの中から、例えば美白成分、皮膚保湿成分、血行促進成分、肌引き締め成分、リフトアップ成分、ターンオーバー促進成分などスキンケア効果の目的に応じて選択される成分を含む水性化粧水が用いられる。
例えば、脂質類、血行促進成分、美白成分を含有する化粧水の使用が推奨される。
【0022】
配合される前記脂質類としては、例えばコレステロール、コレステロールエステル、コレステロールサルフェート等のコレステロール類;天然セラミド;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール;ジグリセリン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0023】
また、血行促進成分としては、例えば、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、米胚芽油、ボダイジュエキス、マロニエエキス、ユズエキス等が挙げられる。かかる成分は、1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0024】
美白成分としては、例えば、L−アスコルビン酸及びその誘導体、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、コウジ酸及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、胎盤抽出物;カミツレ、茶、丁子、営実、地楡、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、桑白皮、厚朴、インチンコウ、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、コンフリー、ローズマリー、ロート等の植物抽出液などが挙げられる。かかる成分は、1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0025】
本発明に使用する化粧水には、使用感の向上と保湿性の観点から水溶性高分子を配合することが好ましい。水溶性高分子としては、化粧品用として一般に使用され得る、合成水溶性高分子、半合成水溶性高分子、天然水溶性高分子等が挙げられる。
【0026】
合成水溶性高分子としては、例えばアクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、等が挙げられる。これらの中でも使用性等の点から、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体(例えば、Noveon,Inc製の「PEMULEN TR−1」「PEMULEN TR−2」等)、カルボキシビニルポリマー(例えば、Noveon,Inc製の「カーボポール934」、「カーボポール980」、「カーボポール981」等)が好ましく用いられる。
【0027】
半合成水溶性高分子としては、例えばカルボキシメチルセルロースまたはその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系水溶性高分子;アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等のアルギン酸系水溶性高分子等が挙げられる。
【0028】
天然水溶性高分子としては、例えばプルラン、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等が挙げられる。これらの中でも使用性等の点から、プルラン、キサンタンガムが好ましく用いられる。
【0029】
これら水溶性高分子は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体、カルボキシビニルポリマー、プルランが好ましい。
【0030】
上記水溶性高分子の化粧水組成物中での含有量としては、好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0031】
また、本発明に用いる化粧水には、有機酸又はその塩を配合することにより、pHや粘度の調整ができる。特に、第1解離定数(pKa1)が4〜7で2価以上の有機酸又はその塩を用いれば、ある程度の防腐効果を示すので、防腐剤の使用量を低減することができる。更には、透明性の向上効果を発揮することもある。
【0032】
ここに、第1解離定数とは、解離段1段目の解離定数の逆数の対数値(pKa1)を表す。
このpKa1値は、化学便覧基礎編(改訂5版、日本化学会編、丸善株式会社発行)II334〜343頁に記載されている他、水酸化カリウム滴定により算出する方法、pKa1BASE(CompuDrug社製)により算出する方法、"Critical Stability Constants"(A. E. Martell他著. Vol. 1,2,3,5,Plenum Press(1974,1975,1977,1982)に記載の方法等により決定できる。
【0033】
本発明に使用される2価以上の有機酸の例としては、アジピン酸(pKa1=4.26)、アゼライン酸(pKa1=4.39)、o−アミノフェノール(pKa1=4.74)、グルタル酸(pKa1=4.13)、コハク酸(pKa1=4.00)、シス−ヘキサヒドロフタル酸(pKa1=4.40)、ピメリン酸(pKa1=4.32)等が挙げられ、特にアジピン酸又はその塩が好ましい。
有機酸及び/又は有機酸塩の配合量は、安定性の点から、化粧水中に0.01〜1質量%が好ましく、更に0.05〜0.5質量%が好ましい。
【0034】
さらに、本発明の化粧水には、前記成分の他に通常の化粧水に用いられる成分、例えば塩類、香料、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン、金属キレート剤、皮脂抑制剤、粉体、収斂剤、皮膚柔軟剤、界面活性剤、前記脂質以外の油等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0035】
これらの成分のうち、界面活性剤は、有効成分の可溶化剤として使用することができる。ここで界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリルトリイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン付加型界面活性剤の他、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0037】
陰イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸塩等が挙げられる。
【0038】
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、アルキルアミドベタインなどが挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えばジ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルポリオキシエチレン四級アンモニウム塩、ビス(ヒドロキシアルキル)四級アンモニウム塩、アミド/エステル結合を有する四級アンモニウム塩などが挙げられる。
界面活性剤の配合量は、全組成中に0〜10%、特に0.05〜5%が好ましい。
【0039】
本発明の化粧水シートは、折りたたんだ状態で、その折り目を外側にして容器に収納される。折りたたみの折り目が外側に向いているために、使用時に使用単位の化粧シートを取り出し易い。
より具体的な実施形態としては、一部切欠した斜視図として図2(A)に示すように、化粧水シート(4枚の不織布の積層体)を2つ折りにし、その折り目を上にして横並びに容器内に並べて収容されている。これにより、隣接する積層体との識別が容易となり、かつ取り出し易い。
【0040】
折りたたみ数は、2つ折り又は3つ折りが取り出し易さ及び使用のし易さの点から好ましい。2つ折りの場合、図3(a)に示すように折り目3aが上となる逆U字状で容器に収容される。3つ折りの場合、同図(b)、(c)、(d)に示すように、C字状、Z字状又はS字状に折りたたんで、何れかの折り目を上にして容器に収容される。なお、逆U字状、C字状の場合、両端部を少しずらして折りたたむことで、所定の化粧用シートの大きさに広げやすい。
【0041】
次に本発明の化粧水シートを収納する容器について図2により説明する。
図2(A)に示す実施形態においては、包装体10は、プラスチックからなる容器本体11に、2つ折りされた折り目3aを外側(開口側)にして化粧水シート1が配列収納されており、該容器本体の開口部を覆い容器本体縁部に蓋シート12が熱融着等により固着されている。使用時には、蓋シートの一端側を容器本体縁部から剥離して開封し、化粧水シートを取り出すことができる。開封後は、開口部を覆う例えば平板状の蓋を載置する、あるいは、ポリ袋に入れて口を閉じる等の方法により、残りの未使用の化粧水シートから、含浸された化粧水が蒸発により減量することがない程度の密閉状で保管可能である。
【0042】
また、図2(B)に示す実施形態は、図2(A)の包装体10を2段重ねにして収納した外装容器20を示している。外装容器20は、プラスチック又はカートン紙等により形成される容器本体13と蓋体14とにより構成される。蓋体14は、開閉用のつまみ部14aを備え、容器本体13とヒンジ結合されている。
包装体10を外装容器20に収容することで、未使用の化粧水シートから、含浸された化粧水が蒸発により減量することなく保管可能である。
【0043】
次に、化粧水シートを収容する容器本体について更に詳しく説明する。図4(a)に示すように、容器本体11は、水溶液状の化粧水が含浸された化粧水シートを収納するので、液漏れがすることがなく、前述の折りたたみ状態の化粧水シートを所定枚数横並びに配列して収容できる底面積を有し、容器の深さは、折りたたみ状態の化粧水シートを少なくとも一段収納できる深さを有している。
【0044】
容器本体11の開口部上縁には、フランジ部15を有し、当該フランジ部15に、プラスチックフィルムを蓋シート12として当接して熱シールすることにより密閉状に梱包できる構造とすることが好ましい。熱シールを容易にするためには、フランジ部15に凸状部15aを設けておくことがより好ましい。
【0045】
容器本体11のプラスチックの材質は、化粧水に対する耐性や、汎用性、加工性等からポリオレフィン系のものが好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。容器本体11は、通常トレー状容器の製造に用いられている方法により製造できる。
容器本体の厚みは、耐変形性や剛性等の機能とコストを考慮して決定されるが、概ね300〜1,000μmが好ましい。
【0046】
また、容器本体は、図4(b)に示すように、容器本体の相対する側部16から容器内側に向けてリブ17を1対、又は図4(c)に示すようにリブ17を2対突設したり、図4(d)に示すように仕切り板18を設けて、収納された化粧水シートの倒れ防止を図りつつ、容器本体自体が変形し難い構造とすることができる。
さらに、開口部上縁のフランジ部15の端から下側に向けて折返し部を延設することによって、容器本体11をより変形し難い構造とすることもできる(図示省略)。
【0047】
本発明の化粧水シートが2つ折りの場合を例に、その使用方法について図5により説明する。(1)容器本体より2つ折りされた化粧水シート1を取り出し、折り目を広げていわゆる化粧用コットンのように使い易い大きさとした後、(2)これを用いて軽くたたくか、押さえるような感じでパッティングし、顔全体になじませる。(3)化粧水シート1は、不織布2が4枚積層されているので、これを1枚づつめくり、(4)顔の所望の部分にのせ、好きな時間(1〜10分程度)パックする。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(収納容器の準備)
厚み500μmのポリプロピレンシートを真空成形して、概略を図4(a)に示すように底面が幅65×長さ95mm×深さ25mm、開口部上縁に幅5.5mmのフランジ部15を有する容器本体11を準備した。なお、フランジ部15の中央には、蓋シートとして使用するフィルムをヒートシールするため幅1.5mm高さ0.5mmの凸状部15aを設けた。
また、比較例2の化粧水シートを2つ折りすることなく横並びで収納するための容器本体(図示省略)として、底面が幅65×長さ43mm×深さ50mmで開口部に容器本体11と同様のフランジ部を有するものを準備した。
【0049】
実施例1〜3及び比較例1、2及び参考例1
(不織布の積層及び予備含浸)
漂白綿70質量%と繊度1.45dtexのポリエステル30質量%とを水流絡合したユニチカ株式会社製スパンレース(商品名:C050E/A07、目付50g/m2、液含浸時の厚み470μm)を幅90mmにスリットし、これを上下に積層すべく4枚連続供給して、表1に示す組成の化粧水を含浸し、しかる後、幅方向に2つ折りして45mmとし、長さ65mmにカットした。なお、化粧水の含浸率はこの段階では、最終含浸率の1/2とした。
また、化粧水の粘度(30℃)は、TV−10型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した。実施例1〜3及び比較例1、2では、No.1ロータを用い、60r/minで、参考例1では、No.3ロータを用い、6r/minで測定した。
【0050】
(容器本体への化粧水シートの収納及び化粧水の追加含浸)
実施例1〜3及び比較例1、参考例1については、前記の容器本体に二つ折りされた化粧水シートの折り目を開口側として横並び24配列収納した後、残量の化粧水を均等に注入した。しかる後、化粧水シートが充填収納された状態で、開口部をポリプロピレン製フィルムで覆い、容器本体のフランジ部との接触部をヒートシールして密閉状態にした。
一方、比較例2では、前記の容器本体を用いて、化粧水シートを二つ折りすることなく横並びに配列して収納し、残量の化粧水を均等に注入した。そして、前記同様にポリプロピレン製フィルムで覆い、容器本体との接触部をヒートシールして密閉状態にした。
【0051】
(評価)
・化粧水シートの保存安定性:常温で密閉状で2ヶ月間保存し、シートからの化粧水の分離の有無を観察した。○:化粧水の分離が殆んどないもの。×:化粧水の分離が多いもの。
・化粧水シートの化粧水の含浸状態:シートに含浸している化粧水の均一性を観察した。
・使い易さ(取り出し性):取り出し易さを、フル充填状から連続して10枚取り出し、その所要時間及び、図5に示すように始めにパッティングに使用し、次いで4箇所にパックする場合の使い易さで判定した。
・化粧水シートの使用感:10名の成人女性パネルに、始め顔面にパッティングをさせ、その後パックする方法で、「パックのフィット感」、「液だれのなさ」及び「みずみずしさ」の各評価項目について以下の評価基準に従って官能評価させ、これらの総合で評価した。
〔評価基準〕
(1)「使い易さ」
A:使い易さが良好と評価したパネルの人数が9名以上の場合
B:使い易さが良好と評価したパネルの人数が7〜8名の場合
C:使い易さが良好と評価したパネルの人数が5〜6名の場合
D:使い易さが良好と評価したパネルの人数が3〜4名の場合
E:使い易さが良好と評価したパネルの人数が2名以下の場合
(2)「化粧水シートの使用感」
A:使用感が良好と評価したパネルの人数が9名以上の場合
B:使用感が良好と評価したパネルの人数が7〜8名の場合
C:使用感が良好と評価したパネルの人数が5〜6名の場合
D:使用感が良好と評価したパネルの人数が3〜4名の場合
E:使用感が良好と評価したパネルの人数が2名以下の場合
その結果を表1に示す。
【0052】
なお、実際の使用テストは、クレンジングクリームで洗顔し、タオルで水気をふき取った後、恒温恒湿度(20℃、65%RH)条件下で行った。
【0053】
【表1】

【0054】
*1:エマルゲン 1620G(花王株式会社製エーテル系非イオン性界面活性剤)
*2:アサピック(旭化成ケミカルズ社製、アジピン酸)
*3:アミノコート(旭化成ケミカルズ社製、トリメチルグリシン)
*4:PEG−1540(三洋化成社製、平均分子量1,540)
*5:ペムレンTR−1〔商品名、Noveon,Inc製、アクリル酸メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体〕
【0055】
表1から、実施例1〜3の化粧水シートは、「使い易さ」及び「使用感」ともにA,Bの評価であったが、比較例においては、比較例2は容器から取り出し難く、化粧水シートの化粧水濃度が不均一で使用感に劣り、化粧水の対不織布含浸率を1,500%とした比較例1では、液垂れ状でパックとしての使用感に劣り、化粧水の粘度が11,400mPaの参考例1では、ぬるつき感があり使用感に劣るものであった。
【0056】
実施例4〜7及び参考例2〜7
実施例1と同じ不織布(目付50g/m2)と、目付のみ異なる不織布(目付20g/m2、30g/m2、80g/m2、100g/m2)を用いた例を示す。化粧水の配合は実施例1と同一とし、不織布基材の質量に対して8倍(含浸率800%)含浸させた。各例では、不織布原反1枚の目付と積層枚数が異なるので、化粧水含浸時の不織布1枚の厚み(μm)と積層体の厚みが異なる。それぞれ、幅45mm、長さ65mmにカットし、2つ折りにした試料で、化粧水シートとしての使用評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(評価)
・化粧用コットンらしい持ちやすさ:容器から取り出して使用する際の持ちやすさを評価した。◎:よい。○:ややよい。△:不適格。
・パックとしての貼りやすさ:積層体からはがして顔面にパックする際の貼りやすさ。◎:よい。○:ややよい。△:不適格。
・パック後のうるおい感:◎:よい。○:ややよい。△:不適格。
【0058】
【表2】

【0059】
表2より液(化粧水)含浸時の1枚の厚みは200〜800μm、特に300〜600μmが使用感の観点から望ましいことが確認された。また、複数枚を積層した積層体の厚みは、液含浸時で1,000〜3,000μm、さらには1,500〜2,500μmであるのが、使用感の観点から好ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の化粧水シートは、不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートであって、複数枚の不織布の積層体が折りたたまれてなる基材に化粧水が該不織布基材の質量に対して4〜11倍含浸されているので、使用感に富み、かつ、該積層体を折りたたんだ折り目を外側して容器に配列収納されているので、包装体から使用単位の一個を容易に取り出して、パッティングに使用した後、該化粧水シートを構成する複数枚の不織布を剥離して、パックに使用することができ、スキンケア化粧品として有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の化粧水シートの構成の説明図
【図2】A:本発明の化粧水シートを収納する容器状包装体の一例の説明図、B:容器状包装体を2個収納した包装形態の一例の説明図
【図3】本発明の化粧水シートの折りたたみ例の説明図
【図4】本発明の化粧水シートを収納する容器本体例の説明図
【図5】本発明の化粧水シートの使用例の説明図
【符号の説明】
【0062】
1 化粧水シート
2 不織布
3 折り目
10 包装体
20 外装容器
11、13 容器本体
12 蓋シート
14 蓋体
14a つまみ部
15 フランジ部
15a 凸状部
16 側面部
17 リブ
18 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材に化粧水が含浸された化粧水シートであって、複数枚の不織布の積層体が折りたたまれてなる基材に、化粧水が該不織布基材の質量に対して4〜11倍含浸され、該積層体を折りたたんだ折り目を外側にして容器に配列収納されている化粧水シート。
【請求項2】
前記積層体が2つ折り又は3つ折りで折りたたまれている請求項1記載の化粧水シート。
【請求項3】
化粧水の粘度が1〜5,000mPa・s(30℃)である請求項1又は2記載の化粧水シート。
【請求項4】
化粧水が水溶性高分子を0.01〜1質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の化粧水シート。
【請求項5】
前記水溶性高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である請求項4記載の化粧水シート。
【請求項6】
化粧水が、第1解離定数(pKa1)が4〜7で2価以上の有機酸又はその塩を0.01〜1質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の化粧水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−150317(P2008−150317A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339697(P2006−339697)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】