説明

化粧用シート

【課題】 皮膚から角栓を除去する際に、皮膚に対する痛みを緩和することができ、かつ、皮膚からの角栓除去能力が従来品より優れている化粧用シートを提供すること。
【解決手段】 化粧用シートは、基材の一方の面に、水溶性高分子、及び、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、このポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが皮膚貼付層表面にブリードアウトしている。この湿潤粘着性組成物は、充填剤を更に含み、この充填剤が酸性を示す充填剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用シートに関し、特に、角栓除去等に使用される化粧用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の角栓除去に適した化粧用シートとして、不織布等からなる基材層の片面に、水溶性高分子を用いて皮膚貼付層を形成したものが知られている。この化粧用シートは、通常、まず、鼻部などの貼付される部位を予め水で濡らした後に貼付される。貼付された化粧用シートは、この状態で約10分間放置され、水分が蒸発した後、ゆっくりと剥離除去される。このような一連の操作を経て、水で溶解若しくは湿潤した皮膚貼付層が、毛穴内に存在する角栓と接触した後、乾燥することによって、角栓と一体化するので、皮膚貼付層を剥がすことによって角栓も除去できるのである。
【0003】
ところで、このように化粧用シートは既に乾燥して皮膚と接着あるいは粘着している状態で皮膚から引き剥がされるのであるから、剥離の際、皮膚に相当の痛みを与えることになる。特開平5−221843号公報には、皮膚に痛みを与えることなく角栓等を除去することができるものとして、塩生成基を有する高分子化合物と油剤とをパック剤の一成分として用いたシート状パックが開示されているが、油剤を併用するため角栓除去能力が低下する恐れがある。これに対し、パックの角栓除去能力を低下させることなく、皮膚から剥離する際の痛みを緩和することができるパック化粧料が、特開平11−199435号公報に開示されている。このパック化粧料は、鎮痛剤、止痒剤、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン界面活性剤、アルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコールのサリチル酸エステル及び高級脂肪酸とアミノアルコールの縮合物よりなる群から選ばれた1種又は2種以上の成分を含有している。
【0004】
しかしながら、このパック化粧料も未だ十分な角栓除去能力を有するものではなく、ユーザの高いニーズに応えることができるものではなかった。すなわち、ユーザは従来の化粧用シートの角栓除去能力では満足することができず、更に優れた除去能力を有する化粧用シートの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、皮膚に痛みを与えることなく、かつ、角栓を十分に除去することができる化粧用シートを提供することにある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−221843号公報
【特許文献2】特開平11−199435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明は、皮膚から剥離する際の痛みを緩和することができ、かつ、皮膚からの角栓除去能力が従来品より優れている化粧用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化粧用シートは、基材の一方の面に、水溶性高分子、及び、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、前記皮膚貼付層表面にブリードアウトしていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記湿潤粘着性組成物が充填剤を更に含むことが好ましい。
【0010】
また、前記充填剤は、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタンブラック、カーボンブラック、タルク、及び、薬用炭からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸は、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び、オレイン酸からなる群から選ばれる1つであることが好ましい。
また、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBが12以上であることができる。
【0012】
また、前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることができる。
また、前記水溶性高分子は、重量平均分子量が70万未満の水溶性高分子及び重量平均分子量が70万以上の水溶性高分子を含有することができる。
【0013】
本発明の化粧用シートは、前記湿潤粘着性組成物が、更に、保湿成分を含有することができる。
また、前記保湿成分は、グリセリン及び/又は多価アルコールであることができる。
【0014】
本発明の化粧用シートは、前記基材が透湿性基材であることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、皮膚から剥離する際の痛みを緩和することができ、かつ、皮膚からの角栓除去能力が従来品より優れている化粧用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化粧用シートは、基材の片面に皮膚貼付層を有し、この皮膚貼付層が、水溶性高分子とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する湿潤粘着性組成物を用いて形成されたものである。
【0017】
ただし、本発明の化粧用シートは、皮膚貼付層の表面においてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしていることが必要である。すなわち、皮膚貼付層の皮膚と接触する表面付近にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが局在していることが必要である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルをブリードアウトさせるための手段の1つは、皮膚貼付層を形成するために用いられる湿潤粘着性組成物に更に充填剤を含有させることである。但し、ここで用いられる充填剤としてはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとの親和性が良好な材料はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしにくいので用いることができない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとの親和性が比較的良好な充填剤としては、塩基性を示し、かつ、親水性である充填剤が挙げられ、例えば、四酸化三鉄、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。したがって、本発明においては、これらの充填剤を湿潤粘着性組成物に含有させることはできない。一方、使用可能な充填剤としては、例えば、酸性を示す充填剤が挙げられる。充填剤としては無機充填剤及び有機充填剤が挙げられるが、無機充填剤を用いることが好ましい。使用可能な充填剤の具体例としては、シリカ(特に無水珪酸)、アルミナ、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、チタンブラック、薬用炭等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、特に、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタンブラック等が好ましく用いられる。
【0018】
これらの充填剤は、1種類のみを使用してもよいし、あるいは2種類以上を併用してもよい。本発明に使用される充填剤は、通常、粉体状態が好ましく、その形状は特に限定されないが、均一な分散性が得られることを考慮すると球形であることが好ましい。また、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、特に、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0019】
湿潤粘着性組成物に充填剤を含有させることによって、形成された皮膚貼付層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度を向上させることができる。また、充填剤を含有させることによって、貼付後、乾燥するのに要する乾燥所要時間を短縮させることができる。したがって、充填剤を含有させれば貼付層の厚みが厚くても、従来品のような長時間を要することはない。なお、乾燥所要時間が短くなる理由は、充填剤と、水溶性高分子及び液状可塑剤との界面が、水分逸散の通路として機能するものと推察される。
【0020】
充填剤は、水溶性高分子100重量部に対して通常、10〜200重量部の範囲内で使用することが好ましく、25〜100重量部の範囲内で使用することが更に好ましい。充填剤の使用量が10〜200重量部の範囲内であれば、形成された皮膚貼付層の柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットし難くなるようなことはなく、また、乾燥所要時間が長くなることもなく、かつ、皮膚貼付層を貼り付けて乾燥した後の機械的強度の改善効果が得られる。
【0021】
なお、本発明においては、上記充填剤を含有させなかったり、充填剤が含有してもポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを多量に用いることによってブリードアウトを生じさせてもよい。例えば、水溶性高分子100重量部に対してポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを40重量部より多く使用するとブリードアウトしやすくなる。
【0022】
本発明に係る湿潤粘着性組成物を構成するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、水溶性高分子100重量部に対して3重量部以上配合することが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量が3重量部未満であると、皮膚貼付層表面にブリードアウトしにくくなり、角栓除去能力を十分に発揮しない場合がある。
【0023】
本発明に係る湿潤粘着性組成物が上記充填剤を含有する場合には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、水溶性高分子100重量部に対して、3重量部以上、40重量部以下の範囲で配合されることが好ましく、5重量部以上、20重量部以下の範囲で配合されることが更に好ましい。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビットの高級脂肪酸エステルよりなる非イオン界面活性剤であり、水の中に油を乳化せしめる水中油滴型(o/w 型)である。また、界面活性剤分子中の親水基と親油基との相関関係を示す数値としてHLB(Hydrophile Lipophile Balance)があるが、このHLBが12以上であることが好ましく、さらに上限は20以下とすることが好ましく、14〜17であることが更に好ましく、特に15〜17であることが好ましい。本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、人体の頭皮や毛穴に付着したコレステロール、老廃物等の皮脂成分との相溶性が高い。
【0025】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましいものとして挙げられる。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、親水性部分を形成するエチレンオキサイド(EO)の付加モル数が、例えば、4モル〜20モルであることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる水溶性高分子は、水または親水性媒体の存在により粘着性を発揮するものである。角栓除去に適した水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。また、水溶性高分子の分子量が大き過ぎると、湿潤粘着性組成物を用いて形成された皮膚貼付層は、水又は親水性媒体の存在によって粘着力が充分とならないことがあり、分子量が小さ過ぎると、皮膚貼付層の機械的強度が低下することがあって、貼付後、乾燥したシート状貼付材を貼付部位から剥離除去する際に皮膚貼付層の一部が残渣として残ることがあるので、これらの水溶性高分子は、重量平均分子量が5,000〜500万であることが好ましく、特に、2万〜120万であることが好ましい。
【0027】
粘着性を発揮させるために用いた水等を蒸発させるための乾燥時間を短縮させ、かつ、剥離時の痛みを更に和らげることを可能にするという観点からは、低分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万未満、好ましくは5,000〜30万の水溶性高分子と、高分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万以上、好ましくは100万〜500万の水溶性高分子とを混合して使用することが更に好ましい。高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子とを混合して用いる場合、その配合割合は、用いる水溶性高分子の分子量や使用目的等に応じて適宜決定されることが好ましいが、例えば、高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子との割合は、重量比で、おおよそ、5:95〜95:5であることが好ましく、さらに好ましくは20:80〜70:30である。角栓の除去効率、剥がす際の皮膚に与える痛みの軽減等の観点からは、低分子量の水溶性高分子の配合割合を多くすることが好ましい。本発明においては、例えば、重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンと重量平均分子量が45万のポリビニルピロリドンとを併用することが好ましい。併用する場合その使用割合は、重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンと重量平均分子量が45万のポリビニルピロリドンを重量比で30:70〜60:40の範囲内で併用することが好ましく、40:60〜50:50で併用することが更に好ましい。
【0028】
本発明に係る湿潤粘着性組成物には保湿成分を配合することができる。本発明に用いられる保湿成分としては、水溶性高分子に対して相溶性を有し、溶解して可塑化効果を示す材料が使用される。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、その他のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、その他のポリプロピレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、その他のポリグリセリン類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類、ラノリン、レシチン、オリーブ油等のグリセライド類、などが例示される。これらは1種類のみを使用してもよいし、あるいは、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
保湿成分の使用量が過大であると、形成された皮膚貼付層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度が乏しくなり易く、過小であると、柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットさせることが難しくなる傾向にある。したがって、保湿成分は、水溶性高分子100重量部に対して、1〜75重量部の範囲で使用することが好ましく、5〜50重量部の範囲で使用することが更に好ましい。
【0030】
本発明に係る湿潤粘着性組成物は、必要に応じて、化粧料、香料、防腐剤、着色剤、アルコール、薬剤、紫外線吸収剤、あるいは、その他の化粧用シートに通常使用される薬剤や添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでもよい。
【0031】
水溶性高分子及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、必要に応じて充填剤、保湿成分等とを含有する湿潤粘着性組成物は、エチルアルコール、メチルアルコール等の親水性媒体や水等と共に塗布液とした後、剥離処理が施された剥離シート、あるいは、基材上に塗布乾燥されて、シート状の皮膚貼付層が形成される。
【0032】
本発明において、皮膚貼付層の厚みは、10μm〜500μmであることが好ましく、50μm〜250μmであることが更に好ましい。また、基材の厚みは、10μm〜200μmであることが好ましい。
【0033】
本発明の化粧用シートは、基材の片面に皮膚貼付層を有する。ここで、基材としては、皮膚貼付層の乾燥速度の観点から透湿性のある透湿性基材を用いることが好ましい。その構造としては、織布、不織布、編布、紙等の繊維の集合体類、および、多孔性フィルム、透気性フィルム等のフィルム類などが例示される。これらのうち、貼付部位の曲面になじみやすい適度の伸縮性を有するものが特に好ましい。また、材料に関しては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、セルロース等の、合成あるいは天然の有機高分子類が例示される。
【0034】
本発明の化粧用シートは、例えば、剥離処理が施された剥離シートの剥離処理面に、湿潤粘着性組成物を水等に分散させた塗布液を塗布し、その上に基材を重ねて乾燥させることにより形成することができる。この化粧用シートは、基材/皮膚貼付層/剥離シートの構成を有し、任意の形状に裁断される。剥離シートは、使用時に剥がされるまで、皮膚貼付層を衛生面から、あるいは貼着力の面から保護することができる。また、剥離シートを有する構成であれば、化粧用シートを枚葉状に積み重ねて保存することもできるという利点もある。なお、剥離シートとしては、例えば、表面をポリマー処理した紙、フィルム、シート等を用いることができ、また、離型性のあるフィルム等を用いることができる。
【0035】
本発明の化粧用シートは、化粧用シート中の水分の揮散を防止するために不透湿性基材で包装されていてもよく、例えば、不透湿性基材等からなる袋等によって密閉保存されていてもよい。不透湿性基材としては、例えばアルミニウム等の金属箔等が好ましく使用されるが、プラスチックフィルム等との積層体でもよく、例えば、アルミニウムとポリエステルフィルムとの積層体等が好ましく使用される。
【0036】
本発明の化粧用シートを皮膚に貼付すると、皮膚貼付層と皮膚との界面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが貯留した状態になるので、油性を示す皮膚面に早く濡れていくことができ、角栓の除去性能を向上させることができる。また、充填剤が含まれていれば機械的強度にも優れた化粧用シートを実現することができる。
【0037】
本発明の化粧用シートは、ピールオフ型のパック等に代表されるような角栓除去シート、にきびシート等に有用であり、特に鼻部のように複雑に湾曲した肌にぴったりと貼付でき、鼻部の角栓除去シートとして有効に利用できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0039】
(実施例1)
水溶性高分子として重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンを58重量%、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしてソルビタンオレイン酸モノエステル(エチレンオキサイド20モル付加物、HLB 15.0)を6重量%、無水珪酸34重量%、及び、酸化チタン2重量%を用い、これらを適量の精製水を用いて攪拌、混合して塗布液を作製した。この塗布液を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンフィルム(厚み50μm)の剥離処理面に、塗布量が110g/mで均一な厚さとなるように塗布して皮膚貼付層を形成し、この皮膚粘着層の上に、ポリエステル繊維からなるスパンレース不織布(坪量:40g/m)を重ね、105℃で3分間乾燥させて、3層構造の化粧用シートを作製した。得られた化粧用シートの含水率は、15〜20重量%であった。ただし含水率は、温度30℃、湿度90%の環境下で約15分間調湿した後の重量変化より算出した。なお、得られた化粧用シートは、シート中の水分の揮散を防ぐために、アルミニウムとポリエステルフィルムが積層された保存袋に密閉保存された。
【0040】
得られた化粧用シートの皮膚貼付層表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしているか否かを、皮膚貼付層表面の接触角測定によって判断した。すなわち、皮膚貼付層表面の状態を確認するために接触角測定を実施した。接触角測定により、(固体)表面の情報を得ることができる。ここでは接触角測定装置を用いて、水に対する測定と、油(オレイン酸)に対する測定とを行ない、時間経過に伴う接触角の変化をグラフに示した。図1には皮膚貼付層表面の水に対する接触角経時変化を、図2には皮膚貼付層表面の油(オレイン酸)に対する接触角経時変化を示した。なお、参考のため、市販の角栓除去用の化粧シート(参考例)についても、水に対する接触角経時変化と、オレイン酸に対する接触角経時変化を測定し、それぞれ図1及び図2に示した。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしている場合には、水に対する接触角経時変化が大きく、かつ、オレイン酸に対する接触角経時変化が大きくなると考えられる。
【0041】
また、得られた化粧用シートについて、下記に示す角栓除去性の評価を行った。その結果を図3〜図5に示す。
【0042】
(比較例1)
水溶性高分子として重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンを57重量%、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしてソルビタンオレイン酸モノエステル(エチレンオキサイド20モル付加物、HLB 15.0)を6重量%、無水珪酸34重量%、及び、四酸化三鉄3重量%を用い、これらを適量の精製水を用いて攪拌、混合して塗布液を作製した。この塗布液を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンフィルム(厚み50μm)の剥離処理面に、塗布量が110g/mで均一な厚さとなるように塗布して皮膚貼付層を形成し、この皮膚粘着層の上に、ポリエステル繊維からなるスパンレース不織布(坪量:40g/m)を重ね、105℃で3分間乾燥させて、3層構造の化粧用シートを作製した。得られた化粧用シートの含水率は、15〜20重量%であった。ただし含水率は、温度30℃、湿度90%の環境下で約15分間調湿した後の重量変化より算出した。なお、得られた化粧用シートは、シート中の水分の揮散を防ぐために、アルミニウムとポリエステルフィルムが積層された保存袋に密閉保存された。
【0043】
得られた化粧用シートの皮膚貼付層表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしているか否かを確認するため、接触角測定を行った。すなわち、接触角測定装置を用いて、水に対する測定と、油(オレイン酸)に対する測定とを行ない、時間経過に伴う接触角の変化をグラフに示した。図1には皮膚貼付層表面の水に対する接触角経時変化を、図2には皮膚貼付層表面の油(オレイン酸)に対する接触角経時変化を示した。
【0044】
また、得られた化粧用シートについて、下記に示す角栓除去性の評価を行った。その結果を図3〜図5に示す。
【0045】
(比較例2)
水溶性高分子として重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンを51重量%、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしてソルビタンオレイン酸モノエステル(エチレンオキサイド20モル付加物、HLB 15.0)を15重量%、無水珪酸31重量%、及び、炭酸カルシウム3重量%を用い、これらを適量の精製水を用いて攪拌、混合して塗布液を作製した。この塗布液を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンフィルム(厚み50μm)の剥離処理面に、塗布量が110g/mで均一な厚さとなるように塗布して皮膚貼付層を形成し、この皮膚粘着層の上に、ポリエステル繊維からなるスパンレース不織布(坪量:40g/m)を重ね、105℃で3分間乾燥させて、3層構造の化粧用シートを作製した。得られた化粧用シートの含水率は、15〜20重量%であった。ただし含水率は、温度30℃、湿度90%の環境下で約15分間調湿した後の重量変化より算出した。なお、得られた化粧用シートは、シート中の水分の揮散を防ぐするために、アルミニウムとポリエステルフィルムが積層された保存袋に密閉保存された。
【0046】
得られた化粧用シートの皮膚貼付層表面にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしているか否かを確認するため、接触角測定を行った。すなわち、接触角測定装置を用いて、水に対する測定と、油(オレイン酸)に対する測定とを行ない、時間経過に伴う接触角の変化をグラフに示した。図1には皮膚貼付層表面の水に対する接触角経時変化を、図2には皮膚貼付層表面の油(オレイン酸)に対する接触角経時変化を示した。
【0047】
また、得られた化粧用シートについて、下記に示す角栓除去性の評価を行った。その結果を図3〜図5に示す。
【0048】
図1から明らかなように、実施例1の化粧用シートは短時間で接触角が小さくなっており、水に対する濡れ性が良好であり、水に対する親和性に優れていることが分かる。また、図2から、実施例1の化粧用シートは、オレイン酸に対する接触角が短時間で小さくなっており、比較例1、比較例2、参考例のいずれよりも濡れ性が良く、油に対する親和性が高いことが分かる。すなわち、図1及び図2から、実施例1の化粧用シートの皮膚貼付層は、水が貼付層中に浸入する速度、つまり水に対する溶解性に優れ、かつ、油に対する親和性も高いことが分かった。これは、実施例1の化粧用シートの皮膚貼付層の表面にはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが貯留しているので水に対する親和性と油に対する親和性とが高くなっているのである。この結果、油性を示す皮膚表面に早く濡れていき、角栓の除去性が向上するのであろう、と推測される。一方、参考例は水に対する親和性には優れているものの油に対する親和性に劣っており、油性を示す皮膚表面との親和性が劣ったものであった。
【0049】
上記実施例において使用された評価方法を下記に示す。
[角栓除去性の評価方法(1)]
化粧用シートを適当な大きさ(2.5cm×3.0cm)に裁断した。この化粧用シート試験片を、健常な成人ボランティア60名の鼻部の片方に水を適量塗布した後、貼付した。このように貼付した状態で約10分間放置し、化粧用シートが乾燥した後、剥離した。各ボランティアごとに剥離した化粧用シートの皮膚貼付層に付着した角栓の数を数えた。
【0050】
なお、試験は、60人のボランティアを3つのグループに分け、1つ目のグループには小鼻の片方の半分に実施例1の化粧用シート、他方の半分に比較例1の化粧用シートを貼付し、2つ目のグループには小鼻の片方の半分に比較例1の化粧用シート、他方の半分に比較例2の化粧用シートを貼付し、3つ目のグループには小鼻の片方の半分に比較例2の化粧用シート、他方の半分に実施例1の化粧用シートを貼付して試験を行った。
【0051】
上記方法にて求めた角栓除去の数を用いて、以下の評価を行った。すなわち、比較例1又は比較例2の化粧用シートを用いて除去された角栓数と、実施例1の化粧用シートを用いて除去された角栓数とを用い、下記判断基準に基づいて評価を行った。その結果を図3に示す。ただし、比較例1及び比較例2の結果データは併合した形で図3に示してある。

比較例1又は比較例2の角栓数/実施例1の角栓数≧1.2の場合には、比較例1又は比較例2が優れている
比較例1又は比較例2の角栓数/実施例1の角栓数≦0.8の場合には、実施例1が優れている
0.8<比較例1又は比較例2の角栓数/実施例1の角栓数<1.2の場合には、同等
【0052】
[角栓除去性の評価方法(2)]
上記角栓除去性の評価方法(1)と同様にして、比較例1の角栓数に基づいて、実施例1又は比較例2の角栓数の評価を行った。その結果を図4に示す。但し、実施例1及び比較例2の結果データは併合した形で図4に示してある。
【0053】
[角栓除去性の評価方法(3)]
上記角栓除去性の評価方法(1)と同様にして、比較例2の角栓数に基づいて、実施例1又は比較例1の角栓数の評価を行った。その結果を図5に示す。但し、実施例1及び比較例1の結果データは併合した形で図5に示してある。
【0054】
図3〜図5から以下のことが分かる。すなわち、図3において、実施例1の化粧用シートが優れていると判断されたものは50%であり、図4において、比較例1の化粧用シートが優れていると判断されたものは36%であり、図5において、比較例2の化粧用シートが優れていると判断されたものは13%である。したがって、実施例1の化粧用シート、すなわち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがブリードアウトしている化粧用シートは、ブリードアウトしていない比較例1及び比較例2よりも角栓の取れ性に優れていると判断されることが分かった。
【0055】
また、比較例2から明らかなように、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと親和性が良好な充填剤を用いた安定した皮膚貼付層を有する湿潤粘着性組成物にポリオキシソルビタン脂肪酸エステルを多量に添加しても、皮膚貼付層表面にブリードアウトせず、よって角栓の取れ性を向上させることはできず、かえって取れ性が低下すると判断される可能性が高いことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、化粧用シートの皮膚貼付層における、水に対する接触角経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、化粧用シートの皮膚貼付層における、オレイン酸に対する接触角経時変化を示すグラフである。
【図3】図3は、比較例1及び比較例2の化粧用シートと、実施例1の化粧用シートとの角栓除去性を比較した結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1及び比較例2と、比較例1の化粧用シートとの角栓除去性を比較した結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1及び比較例1と、比較例2の化粧用シートとの角栓除去性を比較した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、水溶性高分子、及び、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する湿潤粘着性組成物を用いて成る皮膚貼付層を有し、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、前記皮膚貼付層表面にブリードアウトしていることを特徴とする化粧用シート。
【請求項2】
前記湿潤粘着性組成物が充填剤を更に含むことを特徴とする請求項1記載の化粧用シート。
【請求項3】
前記充填剤が、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタンブラック、カーボンブラック、タルク、及び、薬用炭からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の化粧用シート。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸が、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び、オレイン酸からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBが12以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項6】
前記水溶性高分子が、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項7】
前記水溶性高分子が、重量平均分子量70万未満の水溶性高分子及び重量平均分子量70万以上の水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項8】
前記湿潤粘着性組成物が、更に保湿成分を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項9】
前記保湿成分が、グリセリン及び/又は多価アルコールであることを特徴とする請求項8記載の化粧用シート。
【請求項10】
前記基材が透湿性基材であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の化粧用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312601(P2006−312601A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135722(P2005−135722)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】