説明

区画用ベルト装置

【課題】 どのような柱状部材にでも取り付けることができ、また、柱状部材に限らず、壁面にも設置できるようにして汎用性を高め、部品点数が少なくコンパクトな構成で、簡単かつ迅速に設置することのできる区画用ベルト装置を提供する。
【解決手段】 本発明の区画用ベルト装置1は、長尺帯状のベルト2の両端に、ベルト2を巻き取り、かつ引き出しうる巻回機構部4,4がそれぞれ設けられ、各巻回機構部4は、スリット状のベルト引出口33が設けられた略円筒状のケース3にそれぞれ収納され、このケース3の外周面には、ベルト2の幅と略同寸のフック34を有する掛着手段が形成されており、通行を規制したり、整列方向を誘導したりするような場所に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行列を誘導したり、工事現場や道路への進入を規制したりするための区画用ベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工事現場等の危険場所、あるいは商業施設内において一般の進入を規制するような場所等の特定区域の境界部や、または行列を誘導する必要のある場所などに支柱を設置し、その支柱間に帯状ベルトを張って案内することがなされる。
【0003】
このような特定の場所を区画するベルト装置としては、設置の際の作業性をよくすることを目的として、支柱内にベルトを巻き込んだ状態で収容し、使用時にベルトを支柱から引き出してその先端部を他の支柱に係止する方式のもの(ベルトインポールタイプ)が製品化されている。しかし、かかるインポールタイプのベルト装置は、円筒形状の支柱内の狭い空間にベルトを巻き込む必要があるので、支柱の制作が難しく、また巻き込むベルトの量が支柱の径によって制限されるという問題があった。さらに、現場に設置するベルトの高さが、支柱へのベルトの収容位置(高さ)によってほぼ決まってしまうため、現場の状況に応じてベルトの設置高さを簡単に調整できないという問題もあった。
【0004】
このような問題点を改善するベルト装置として、例えば、特許文献1、2等に記載されているように、ベルト装置を支柱とは別体とし、必要時に、状況に応じて支柱にベルト装置を装着して使用するものが提案されている。
【0005】
特許文献1には、支柱間に張設するベルトを、支柱に着脱自在に装着できる取付具の内部に、引き出しおよび巻き込み自在に収容することで支柱の任意の高さ位置にベルトを簡単に装着できるように設計された区画用ベルトが開示されている。この区画用ベルトは取付具の支柱への取付部をV字形に加工することで、支柱の直径、形状等に関係なく設置できるようになっている。
【0006】
また、特許文献2には、本体部に形成された円筒状の軸体に柵テープが巻回されており、この柵テープを巻回した軸体に係合する係合爪が下面に形成された蓋部材と、柵テープの回動を規制する回動規制手段とを備えて、引き出した柵テープを蓋部材に形成したハンドルで巻き戻すことができるような構成の柵テープ支持具の技術が開示されている。この柵テープを保持する本体部の側方には、直径の異なる環状部材が上下に所定間隔で設けられており、これらの環状部材にカラーコーンの頂部を嵌装して、柵テープ支持具を固定するようになっている。
【特許文献1】特開平11−36671号公報
【特許文献2】特開2004−308184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の区画用ベルトは、ベルトを支柱に巻き付けて取り付けるものであるが、取付具自体を支柱に取り付けるためのベルトが、支柱間に張設するベルトとは別に設けられている。また、張設されるベルトは取付具の内部に全て巻き取られる構成であるので、ベルト量によって取付具の大きさが大型化するおそれがあった。
【0008】
また、前記特許文献2にあるような柵テープ支持具を用いて道路や工事現場などを取り囲む場合、2本のカラーコーンの一方に柵テープ支持具が取り付けられ、他方のカラーコーンには、同様の環状部材が設けられている柵テープの固定具を別途用意して取り付けなければならない。そして、それぞれの環状部材をカラーコーンの頂部に嵌装して、これらの柵テープ支持具および柵テープ固定具を設置後、柵テープ支持具から柵テープを引っ張り出して、柵テープ固定具に挟み込んで固定し、続いてハンドルを操作して柵テープの張り具合を調節し、柵テープを設置するという2段階の作業が必要とされる。
【0009】
しかしながら、道路や工事現場などの特定区域を取り囲んで通行を規制したり、行列を整然と並ばせたりする際には、できれば迅速かつ容易に柵テープ等のベルト体を張設して対応できることが好ましいが、前記した柵テープ支持具を用いると、部品点数が多く、2段階の設置作業により手間がかかるという問題点があった。また、前記柵テープ支持具を設置する対象はカラーコーンに特定されており、環状部材はカラーコーンの頂部にのみ対応する径で形成されているので、他の外径の異なる支柱部材に対しては設置することができないという問題点もあった。また、広範囲に柵テープを張設できるようにしようとすれば、巻き取る柵テープの量が多くなり、その分柵テープ支持具の本体部の大きさが大きくなり、持ち運びに不便になることもあった。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、カラーコーンに限定せず既存の支柱など、どのような柱状部材にでも取り付けることができ、また、柱状部材に限らず、壁面にも設置できるようにして汎用性を高め、部品点数が少なくコンパクトな構成で、簡単かつ迅速に設置することのできる区画用ベルト装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明に係る区画用ベルト装置は、長尺帯状のベルトの両端に、ベルトを引き出し、かつ巻き取りうる巻回機構部がそれぞれ設けられ、各巻回機構部は、スリット状のベルト引出口が設けられた略円筒状のケースにそれぞれ収納され、このケースの外周面には、ベルトの幅と略同寸のフックを有する掛着手段が形成されたことを特徴とするたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、両端のケース内にベルトをそれぞれ巻き取っているので、充分量のベルトであっても巻取径を小さくすることができ、ケースを大型化せずコンパクトなものにすることができる。また、引き出したベルトを柱状部材に巻き付け、ケース外周面に形成されたフックをベルトに掛着することで柱状部材に容易に装着することができ、柱状部材の外径にかかわらず設置することができる。また、柱状部材に限らず、フックを引っ掛けられる場所であれば壁面などにも設置することができ、汎用性を高めることができる。
【0013】
また、本発明は前記構成の区画用ベルト装置において、各巻回機構部として、ケース内に回動自在に設けられたベルト巻取軸と、一端をベルト巻取軸に、他端をケースに係止したゼンマイバネが内蔵されて、ベルト巻取方向の回転力を付与するようになっていてもよい。これによると、ケースから引き出して張設されたベルトは巻取方向に引っ張られているので、ベルトをたるみなく引張することができ、ケース内へベルトを収納するときも自ずと巻き取られるので容易に収納することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように構成される本発明の区画用ベルト装置によれば、どのような柱状部材にでも取り付けることができ、また、柱状部材に限らず、壁面にも設置できるようにして汎用性を高めることができる。さらに、ベルトは両端のケース内に収納されるので、ベルトの巻取径が小さくて済み、部品点数が少なくコンパクトな構成とすることができるとともに、両端から互いにベルトを巻取方向に引っ張っているので、ベルトをたるみなく引張することができる。また、かかる区画用ベルト装置の設置作業は、フック等の掛着手段を用いて簡単かつ迅速に終えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る区画用ベルト装置を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1〜図6は本発明の区画用ベルト装置を示し、図1は正面図、図2は側面図、図3は内部機構を示す説明図、図4は縦断面図、図5,6は使用状態を示す斜視図である。
【0017】
区画用ベルト装置1は、長尺帯状のベルト2の両端に、ベルト2を巻き取り、かつ引き出しうる巻回機構部4がそれぞれ設けられている。これらの各巻回機構部4には、巻き取られた状態のベルト巻回体20の軸芯21が嵌装されるベルト巻取軸41と、このベルト巻取軸41にベルト2の巻取方向の回転力を付与するゼンマイバネ42とを備えている。
【0018】
ベルト巻取軸41は、外径がベルト巻回体20の軸芯21の内径とほぼ同じであって、ベルト巻回体20の軸芯21をずれなく保持するように構成されている。このベルト巻取軸41の下部には、円盤状の仕切板411が設けられており、ベルト巻取軸41に嵌装されたベルト巻回体20を支持するようになっている。
【0019】
このようなベルト巻取軸41において、仕切板411の下側にはゼンマイバネ42が備えられる。ベルト巻取軸41の下端には、このゼンマイバネ42の一端を係止するための係止溝412が形成されている。ゼンマイバネ42は、巻回らせん状のバネ体であり、他端が引っ張られてバネに張力がかかると、巻き戻し方向に回転しようとする力を生じる構成である。これにより、ベルト2が引っ張られると、ベルト巻回体20およびベルト巻取軸41が回転し、このゼンマイバネ42も連動して回転するのでバネに張力を生じ、ベルト2を巻き戻す方向に引っ張るようになされている。
【0020】
このような巻回機構部4は、略円筒状のケース3にそれぞれ収納されている。ケース3は、下方に開口し上部が閉じられた円筒状の外装筒体31と、この外装筒体31の下端部に内嵌される底キャップ32とを備えている。
【0021】
外装筒体31は、外周面にスリット状のベルト引出口33が設けられている。例示の形態では、ベルト引出口33は、外装筒体31の外周面下端に開口するスリットとして、ベルト2の厚みより僅かに大きい程度の幅で設けられている。また、外装筒体31の上面内側には、ベルト巻取軸41の上端部を受ける凹部311が略中央部に形成されている。
【0022】
底キャップ32は周縁部に、外装筒体31の内周面に嵌合しうるリブ321が立ち上げ形成され、このリブ321には一対のスリット322,322が設けられている。また、リブ321の外周面には、ベルト引出口33の下部開口部分に嵌合しうる位置決め突起323が突設されており、この位置決め突起323の反対側にも、同様の形態の位置決め突起324が突設されている。この位置決め突起324は、外装筒体31のベルト引出口33の反対側下端に設けられたガイドスリット312に嵌合しうるものである。また、底キャップ32の底面中央部には、ベルト巻取軸41の下端部を受ける凹部325が設けられている。
【0023】
図3に示すように、区画用ベルト装置1はベルト2の両端部において、それぞれ外装筒体31のベルト引出口33にベルト2を差し挟みつつ、ベルト巻回体20を保持したベルト巻取軸41に外装筒体31が被せられる。そして、このベルト巻取軸41は、外装筒体31の凹部311および底キャップ32の凹部325に嵌め込まれ、外装筒体31と底キャップ32との間に回動可能に支持されている。
【0024】
このように支持されるベルト巻取軸41の下部、すなわち、ケース3内の仕切板411によって区画された下部空間には、ゼンマイバネ42が納められことになる。前記したように、ゼンマイバネ42の一端はベルト巻取軸41の係止溝412に係止されている。また、ゼンマイバネ42の他端は、底キャップ32の一対のスリット322,322に差し込まれて係止され、底キャップ32の内側にゼンマイバネ42が収容されるようになっている。
【0025】
これにより、ベルト2を必要長さだけ引き出してベルト巻取軸41の回転が停止すると、ゼンマイバネ42にベルト2の巻取方向の力が生じ、ベルト2をたるませずに張設することができる。また、ベルト2を巻き取るときには、ベルト2を引き出した手を緩めると、自ずとベルト2をケース内に巻き取るので容易に収納することができる。
【0026】
また、本発明に係る区画用ベルト装置1には、ケース3の外周面に、ベルト2の幅と略同寸のフック34を有する掛着手段が形成されている。例示の形態では、掛着手段のフック34は、ベルト引出口33の反対側に配設されており、ケース3の外装筒体31の上面から延設されて、横断面が略楕円形の棒状体がケース3内のベルト巻取軸41の軸芯21と平行な方向に形成されている。かかる掛着手段は、外装筒体31の外周面に、ベルト2を差し挟むことができるスリットを2本設けて、そのスリットにベルトを掛着させるような構成であってもよい。
【0027】
以上のように構成される区画用ベルト装置1は、2本の支柱Pに装着して、これらの支柱P間にベルト2を張設して、通行を規制したり、整列方向を誘導したりするのに好適に利用することができる。
【0028】
図5に示すように、それぞれの支柱Pには、区画用ベルト装置1の他方のケース3から引き出したベルト2をその外周面に巻き付け、ベルト引出口33の近傍において、引き出されているベルト2にフック34を上方から引っ掛ける。他方のケース3から引き出したベルト2も同様に支柱Pの外周面に巻き付け、フック34を掛着させる。ケース3内の巻回機構部4により、ベルト2には巻取方向の張力が働いているので、各支柱Pの外周にベルト2がしっかりと巻き付いて、支柱Pの外径にかかわらず、区画用ベルト装置1を容易に取り付けることができる。また、支柱P間に張設されたベルト2にも、巻取方向の張力が働いているので、ベルト2にたるみを生じることがない。
【0029】
また、図6に示すように、区画用ベルト装置1を支柱Pに装着するのではなく、壁面に取り付けて、その壁面からベルト2を張設することもできる。この場合、壁面にフック34を引っ掛ける場所がなければ、例えば図示するような掛着用金具5を設置することで対応できる。掛着用金具5は、中央部にフック34の断面寸法よりもやや大きい凹部51が形成されており、この凹部51と壁面との間にフック34を差し込んで、ケース3を掛着することができる。
【0030】
このように、本発明に係る区画用ベルト装置1によれば、どのような柱状部材にでも取り付けることができ、また、柱状部材に限らず、フック34を引っ掛けられる場所であれば壁面などにも設置することができ、汎用性を高めることができる。また、区画用ベルト装置1は両端のケース3内にベルト2をそれぞれ巻き取っているので、ベルト巻回体20の径を小さくすることができ、各ケース3を大型化することなく必要充分な長さのベルト2をコンパクトに納めることができる。また、前記したように、区画用ベルト装置1の設置作業は、ベルト2を引き出してフック34をベルト2または壁面などに掛着させるだけで済むため、部品点数が少なく、簡単かつ迅速に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る区画用ベルト装置は、保護が必要な特定区域や危険場所への人の進入を規制するのに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る区画用ベルト装置の正面図である。
【図2】図1の区画用ベルト装置の側面図である。
【図3】前記区画用ベルト装置における内部機構を示す説明図である。
【図4】図1の区画用ベルト装置の縦断面図である。
【図5】本発明に係る区画用ベルト装置の使用形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る区画用ベルト装置の他の使用形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 区画用ベルト装置
2 ベルト
20 ベルト巻回体
3 ケース
31 外装筒体
32 底キャップ
33 ベルト引出口
34 フック(掛着手段)
4 巻回機構部
41 ベルト巻取軸
42 ゼンマイバネ
P 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のベルトの両端に、ベルトを引き出し、かつ巻き取りうる巻回機構部がそれぞれ設けられ、各巻回機構部は、スリット状のベルト引出口が設けられた略円筒状のケースにそれぞれ収納され、このケースの外周面には、ベルトの幅と略同寸のフックを有する掛着手段が形成されたことを特徴とする区画用ベルト装置。
【請求項2】
各巻回機構部は、ケース内に回動自在に設けられたベルト巻取軸と、一端をベルト巻取軸に、他端をケースに係止したゼンマイバネが内蔵されて、ベルト巻取方向の回転力を付与することを特徴とする請求項1に記載の区画用ベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−241883(P2006−241883A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60550(P2005−60550)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(595143056)ホクデン工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】