説明

医用イメージング・システム間の同期

【課題】医用イメージング・システムによって与えられるデータ内容及び血管内センサによって与えられるデータ内容を同期させる。
【解決手段】侵襲型撮像において、第一のデータ系列を第二のデータ系列と同期させる同期方法であって、データは患者の関心領域を表わし、別々の医用システムにより取得されており、データはさらに、関心領域についての二つの異なる形式の情報に対応しており、当該方法は、患者の生理学的活動を表わす二つの信号に関してデータを互いに対して整列させるステップを含んでおり、信号は、データ取得に用いられたものと共通の時間尺度において医用システムによって記録されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用撮像の分野に関する。本発明はさらに具体的には、患者に施される手順時に医師によって用いられるデータ、特に画像の処理に関わる。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患の診断及び治療のために、血管の形態が解析される。
【0003】
この目的のために、医師は医用イメージング・システムに支援されながら患者の血管系の内部に外科器具を誘導して配置する。
【0004】
上述の医用イメージング・システムは、患者の血管系及び外科器具を表わす二次元画像(2D)の取得、処理及び実時間視覚化を可能にする。これらの画像を用いて、医師は血管系の内部に機器を誘導することができる。
【0005】
診断のために、狭窄(血管の異常な狭隘化)のような欠陥を検出しなければならない。
【0006】
このことを行なうために、医師に対し、造影剤を注入した患者における関心領域の放射線画像、又は血管内センサによって与えられる放射線画像若しくは該センサから導かれる他のデータを提供することができる。
【0007】
かかるデータは、センサを誘導するのを支援するために医師が血管の内面の像又は詳細な情報ばかりでなく全体像を得ることができるように、同時に提供されると有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すると、これら二つの形式のデータ内容すなわち医用イメージング・システムによって与えられるデータ内容及び血管内センサによって与えられるデータ内容を同期させるという問題が生ずる。
【0009】
これら異なるデータ内容は実効的には、取得速度の異なる二つの別個のイメージング・システムから導かれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、別々のイメージング・システムによって与えられる医療データを同期させることを可能にする。
【0011】
第一の観点によれば、本発明は、第一のデータ系列を第二のデータ系列と同期させる侵襲型撮像の方法に関し、データは患者の関心領域を表わし、別々の医用システムによって取得されており、データはさらに、関心領域についての二つの異なる形式の情報に対応しており、この方法は、患者の生理学的活動を表わす二つの信号に関して異なるデータを整列させるステップを含んでおり、信号は、データの取得と共通の時間尺度において医用システムによって記録されている。
【0012】
本発明の第一の観点による方法の他の特徴は以下の通りである。
・データ系列は、患者の関心領域を視覚化することのできる画像系列である。
・整列ステップは、信号同士の間での時間差を決定するために生理学的活動を表わす信号を同期させることから成っている。
・生理学的活動を表わす信号の同期は、各々のデータ集合に対応する患者の生理学的活動を表わす信号同士を相関付けすることから成っており、信号同士の間での時間差は最大相関に対応する。
・整列ステップはさらに、決定された時間差を、他方からずれているデータ集合の取得時刻に適用することから成っている。
・患者の生理学的活動を表わす信号は、患者の心運動又は呼吸運動である。
・患者の生理学的活動を表わす信号は、医用システムの一方又は他方の外部の発生源によって発生される非周期的外部信号によって部分的に又は完全に変調される。
・第一のデータ集合は血管内画像センサによって行なわれる取得から導かれ、第二のデータ集合はX線医用イメージング・システムによって行なわれる取得から導かれ、このデータは画像である。
・この方法は、異なるシステムからのデータ集合であって互いに対して整列しているデータ集合を表示するステップを含んでいる。
・この方法は、第一の医用システムによって第一のデータ集合及び患者の生理学的活動を表わす信号を取得するために第一の共通の時間尺度を用いるステップと、第二の医用システムによって第二のデータ集合及び患者の生理学的活動を表わす信号を取得するために第二の共通の時間尺度を用いるステップとを含んでいる。
【0013】
第二の観点によれば、本発明は、本発明の第一の観点による方法を具現化するコンピュータ・プログラム及び機械命令に関わる。
【0014】
第三の観点によれば、本発明は、少なくとも二つの医用イメージング・システムに接続されており、本発明の第一の観点による方法を具現化する手段を含む処理装置に関わる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、説明のためのみであって限定するものではなく添付図面と共に読まれるべき以下の説明からさらに明らかとなろう。
【図1】患者の関心領域の画像を取得する二つの医用イメージング・システムを示す図である。
【図2】患者の関心領域の放射線画像を示す図である。
【図3】血管内撮像センサによって与えられる画像を示す図である。
【図4】本発明による同期信号についての画像の同期を示す図である。
【図5】本発明による方法を用いて互いに対して整列した画像を示す図である。
【図6(A)】本発明による方法の各ステップを示す図である。
【図6(B)】本発明による方法の各ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、二つの別々の医用システム10、20を示す。
【0017】
第一及び第二のシステム10、20は、例えば医用イメージング・システムである。この場合には、第一の医用イメージング・システム10は、例えば造影剤を注入した患者(図示されていない)の関心領域11の放射線画像の取得を可能にする。
【0018】
このイメージング・システム10は例えば、X線源と、該線源に対面するように構成された検出器とを含んでおり、線源及び検出器はCアームを介して接続されている。検出器は、例えばアモルファス・シリコンのトランジスタ/フォトダイオード・アレイの上に設けられたヨウ化セシウム燐光体を含む半導体画像センサであってよい。他の適当な検出器は、CCDセンサすなわちX線をディジタル信号へ直接変換する直接式ディジタル検出器である。
【0019】
第二の医用イメージング・システム20は、例えば関心領域の動脈に挿入されるための血管内プローブ21を含んでいる。このプローブは、画像、又は単に例えば温度のような血管の局所的な特性を取得するのに用いられるセンサを含んでいる。
【0020】
この観点では、様々な形式のプローブが存在している。典型的には、医師はこのプローブ21を患者の関心領域まで誘導する。
【0021】
システム10、20は各々、患者の生理学的活動を表わす信号を取得する装置12、22を含んでいる。患者の生理学的活動とは、患者の心搏運動又は呼吸運動を意味する。
【0022】
有利には、患者の生理学的活動を表わす信号を取得する各装置は同じ形式の信号の取得を可能にする。
【0023】
一方、患者の生理学的活動を表わす信号を取得する各装置は同様に制御される訳ではなく、異なる取得速度を有する。
【0024】
医用システムは、制御部13、23及び記憶部14、24をそれぞれ含んでいる。
【0025】
第一の医用イメージング・システム10については、制御部13を用いて、例えばCアームの位置及び画像取得のための様々なパラメータを制御する。
【0026】
第二の医用システム20については、制御部23を用いて、例えば画像又はデータの取得のための様々なパラメータを制御する。
【0027】
制御部13、23は、命令媒体(図示されていない)、例えばディスケット、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBフラッシュ・ドライブ、又はさらに一般的には任意の着脱自在の記憶媒体から又は網接続を介して処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)、例えばディスケットク読み取り器、CD−ROM、DVD−ROM読み取り器、又は接続ポートを含み得る。
【0028】
記憶部14、24は、各々のシステム10、20によって与えられる取得画像/データの記憶及び患者の生理学的活動を表わす信号の記憶を可能にする。
【0029】
各々の医用システム10、20はさらに、表示部(図示されていない)を含み得る。二つのイメージング・システムに単一のみの表示部を設けてよい。
【0030】
表示部は、例えばコンピュータ・スクリーン、モニタ、フラット・スクリーン、プラズマ・スクリーン又は他の任意の公知の形式の表示装置である。
【0031】
最後に、二つの医用システムによって与えられる画像の整列を達成するために、各々のシステム10、20から導かれるデータ及び患者の生理学的活動を表わす信号は処理部30へ送信される。この処理部30は、例えば少なくとも一つのプロセッサ、少なくとも一つのマイクロコントローラ、少なくとも一つのプログラム可能型論理制御器、少なくとも一つの特定応用向け集積回路、他のプログラム可能型回路、又はワークステーションのようなコンピュータを含む他の装置である。
【0032】
一変形として、処理部30は、命令媒体(図示されていない)、例えばディスケット、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBフラッシュ・ドライブ、又は一般的には任意の着脱自在の記憶媒体から又は網接続を介して処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)、例えばディスケット読み取り器、CD−ROM、DVD−ROM読み取り器又は接続ポートを含み得る。
【0033】
各々の記憶部14、24から処理部30へ向けた転送は、コンピュータ網、有線接続又は無線接続を介して生じ得る。
《同期方法》
図2は、造影剤を注入した患者の関心領域の画像を示す。この画像では、画像センサ201を挿入した血管200が観察され得る。第一のデータ集合は、この形式の画像系列すなわち患者の関心領域の画像から成っている。
【0034】
図3は、図2に示すもののような位置において画像センサ201によって取得される血管200の内部の画像を示す。ここでは第二のデータ集合は、この形式の画像系列から成っている。一般的には、画像センサ201は、画像でないデータを取得することができる。ここでの目的は、第一の医用イメージング・システムから導かれる画像をセンサ201から導かれるデータに一致させることである。
【0035】
各医用システムから導かれるデータは、それぞれの取得期間にわたり第一及び第二の取得速度又は第一及び第二の時間尺度においてそれぞれ取得され、これらのデータをAcq1、Acq2と表わす。ここでは、取得されたデータAcq1、Acq2は可変型であってよく、同様に一次元信号、又は二次元(2D)データ若しくは三次元(3D)データの何れであってもよい。取得期間は必ずしも同一でなくてよい。各々の医用システムはまた、1又は複数の生理学的信号を記録し、システムの各々は独立に、生理学的信号(1又は複数)の記録及び取得されたデータを当該システム固有の時間尺度において配置することが可能である。
【0036】
従って、各々の医用システムについて、データは、生理学的信号の記録と同じ速度又は共通の時間尺度において取得される。
【0037】
これら二つのデータ集合に結び付けられる生理学的信号の記録区間は、二つのデータ集合の同期が可能になるように重なり合っていなければならない。
【0038】
所与の医用システムについて、画像/データ内容を患者の生理学的活動を表わす信号の瞬間と整列させることが可能である。
【0039】
処理部30は、異なる医用システムから導かれるデータ集合の同期を可能にする。
【0040】
この目的のために、整列ステップEcにおいて、患者の生理学的活動を表わす信号が一致させられる。
【0041】
図4は、患者の生理学的活動を表わす二つの信号を示す。信号401(上側)は第一の医用システムによって取得される信号であり、信号402(下側)は第二の医用システムによって取得される信号である。
【0042】
この図において、これらの信号は二つの医用イメージング・システムによって取得される画像を表わし、データは画像である。
【0043】
加えて、画像の取得時刻が次のように示されている。すなわち時刻t1には第一のアセンブリの画像I11が取得され、時刻t2には第一のアセンブリの画像I21が取得され、時刻t′1には第二のアセンブリの画像I12が取得され、時刻t′2には第二のアセンブリの画像I22が取得され、時刻t′3には第二のアセンブリの画像I32が取得され、時刻t′4には第二のアセンブリの画像I42が取得される。
【0044】
用いられる医用システムに依存して、取得は数秒間にわたって生じ、30秒間を超える場合もある。
【0045】
患者の生理学的活動を表わす信号は、同じ発生源から導かれていても同じ原点を有しないことが認められる。
【0046】
取得は同時に開始しておらず、すなわち一方ではt=0に開始し、他方ではt′=0に開始している。
【0047】
従って、これら二つの取得の間には時間差Δtが存在しており、この時間差を決定して、相異なる取得時刻について同一の原点を得なければならない。
【0048】
従って、整列ステップは、各々の医用システムによって与えられる患者の生理学的活動を表わす信号を同期させることから成っている。
【0049】
これらの信号を同期させるために、相関付けによって二つの信号の間のあらゆる時間差Δtの決定から開始することが可能である。
【0050】
一旦、同期したら、各々のデータ内容は患者の生理学的活動を記述する信号と共通の時間尺度に配置され得るので、データ内容を整列させることが可能である。
【0051】
患者の生理学的活動の同期は、全てのデータについて単一のみの時間参照を得ることを可能にする。
【0052】
画像データについては、上述の画像の互いに対する整列は、血管内画像センサの位置をこの位置の血管の画像に関係付けることを可能にする。
【0053】
既に述べたように、温度のようなデータ内容を血管内センサの精密な位置と関係付けることも可能である。
【0054】
従って、整列済みのデータ内容が同時に表示されるので、医師に対して二つのデータ内容が同時に提供される。
【0055】
図5は、患者の生理学的活動を表わす信号(ここでは第二の医用イメージング・システムによって取得される信号)と整列した二つのデータ集合から導かれる画像を示す。
【0056】
表示Affのために、関心領域の画像を第一の線に表示し、患者の生理学的活動を表わす信号を第二の線に表示し、血管の内面の画像を第三の線に表示するように構成する。
【0057】
この態様で、患者の生理学的活動を表わす信号に対応する同期信号が全ての画像についての時間参照として作用する。
【0058】
データの整列のために、患者の生理学的活動を表わす信号を外部発生源から導かれる非周期信号によって変調することが可能である。生理学的信号の各々の取得について同じ非周期信号を用いる。
【0059】
非周期性は、異なるイメージング・システムによって与えられる信号同士の間のあらゆる時間差を決定するための信号同士の間の相関付けを容易にする。
【0060】
以上の方法はさらに多数の医用システムに適用されることができ、この場合には多数の同期が可能である。
《コンピュータ・プログラム》
以上に述べた方法は有利には、上述の方法を実行する機械命令を含むコンピュータ・プログラムの形態として具現化され得る。
【符号の説明】
【0061】
10、20:医用システム
11:関心領域
12、22:信号を取得する装置
13、23:制御部
14、24:記憶部
21:血管内プローブ
30:処理部
200:血管
201:画像センサ
300:血管内撮像センサによって与えられる画像
401:第一の医用システムによって取得される信号
402:第二の医用システムによって取得される信号
11、I21:第一のアセンブリの画像
Acq1、Acq2:取得データ
c:整列ステップ
Aff.:表示ステップ
c1:信号同士の間での時間差を決定するために生理学的活動を表わす信号を同期させる
C2:決定された時間差をデータ集合の取得時刻に適用する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵襲型撮像において、第一のデータ系列を第二のデータ系列と同期させる方法であって、前記データは患者の関心領域を表わし、別々の医用システムにより取得されており、さらに前記関心領域についての二つの異なる形式の情報に対応しており、当該方法は、前記患者の生理学的活動を表わす二つの信号に関してデータを一致させる整列ステップ(Ec)を備えており、前記信号は、データ取得に用いられたものと共通の時間尺度において前記医用システムにより記録されている、方法。
【請求項2】
データ系列は、前記患者の前記関心領域を視覚化することのできる画像系列である、請求項1に記載の同期方法。
【請求項3】
前記整列ステップ(Ec)は、前記信号同士の間での時間差を決定するために前記生理学的活動を表わす信号を同期させること(Ec1)から成っている、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生理学的活動を表わす信号の前記同期(Ec1)は、各々のデータ集合に対応する前記患者の生理学的活動を表わす前記信号同士を相関付けすることから成っており、前記信号同士の間での前記時間差は最大相関に対応する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記整列ステップ(Ec)は、前記決定された時間差を、他方からずれている前記データ集合の前記取得時刻に適用すること(EC2)からさらに成っている、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の生理学的活動を表わす前記信号は、前記患者の心運動又は呼吸運動である、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の生理学的活動を表わす前記信号は、前記医用システムの一方又は他方の外部の発生源により発生される外部非周期信号により部分的に又は完全に変調される、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一のデータ集合の前記データは血管内画像センサによる取得から導かれ、前記第二のデータ集合の前記データはX線医用イメージング・システムによる取得から導かれ、前記データは画像である、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
互いに対して整列している前記異なるデータ集合の前記データを表示する表示ステップ(Aff.)を含んでいる請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の医用システムにより取得される前記第一のデータ集合及び前記患者の生理学的活動を表わす前記信号の第一の共通の時間尺度における取得ステップ(Acq1)と、前記第二の医用システムにより取得される前記第二のデータ集合及び前記患者の生理学的活動を表わす前記信号の第二の共通の時間尺度における取得ステップ(Acq2)とを含んでいる請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の方法を具現化する機械命令を備えたことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項12】
少なくとも二つの医用イメージング・システムに接続されて、請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の方法を具現化する手段を備えた処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【公開番号】特開2012−130680(P2012−130680A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−272925(P2011−272925)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】